説明

止水装置

【課題】湯沸器において、止水弁4の止水不能になる前段階を的確に検出して、止水弁4が止水不能になる前の適切な時期で湯沸器を使用禁止できるようにする。
【解決手段】電動モータ7はモータ制御部201により通電されてレバー83のカム82を回転する。レバー83は、カム82の回転に伴い揺動し、係合部833を弁棒492に当接させつつ、弁棒492をパイロット弁49の開弁方向へ連行し、パイロット弁49を強制的に開弁させ、止水弁4を開弁状態にする。通電量検出部204は電動モータ7の通電量を検出する。開弁禁止部206は、電動モータ7の通電量が所定の閾値以上になると、次に止水弁4が閉弁位置になりしだい、以降は、モータ制御部201による電動モータ7の駆動を禁止して、止水弁4が開弁位置にならないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯沸器の熱交換器を通る通水路を開閉する止水弁を備える止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の止水弁は、水が流入する弁室内に設けられた弁座と、弁座に対向し、弁座に開設した弁孔を弁座に着座して閉塞するダイヤフラムから成る主弁と、主弁の背面にダイヤフラムカバーにより画成され弁室にオリフィスを介して連通する背圧室と、背圧室に収納され、弁孔と背圧室とを連通するように主弁に形成したパイロット孔を開閉するパイロット弁とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このものでは、パイロット弁を閉弁すると、オリフィスを介しての弁室から背圧室への水の流入により背圧室の内圧が上昇し、主弁が背圧室の内圧に押されて弁座に着座して通水が停止される。また、パイロット弁を開弁すると、背圧室から弁孔にパイロット孔を介して水が流出して背圧室の内圧が低下し、弁室と背圧室との圧力差により主弁が弁座から離れて弁孔が開かれ、熱交換器に通水される。
【0004】
なお、パイロット弁は、パイロット孔を閉塞する閉弁方向にばねで付勢されると共に、ダイヤフラムカバーを貫通して該カバーの外方に突出する弁棒を有する。そして、弁棒をばねの付勢力に抗して引張ることによりパイロット弁が開弁されるようにしている。
【0005】
また、このような止水弁を電動モータにより連動機構を介して開閉するようにした電動式止水装置も従来知られている(例えば、特許文献2参照)。このものでは、連動機構は、電動モータにより回転されるカムと、一端にカムの外周面に当接するカムフォロアを有し、他端にパイロット弁の弁棒に係合してパイロット弁を閉弁方向と開弁方向とに押し引き可能な係合部とを有するレバーとを備えている。カムは径方向寸法の小さな小リフト部と径方向寸法の大きな大リフト部とを有し、カムフォロアが大リフト部の外周面に当接するようにカムを回転させたとき、レバーが開弁方向(係合部がパイロット弁用のばねの付勢方向と反対側に動く方向)に揺動され、係合部により弁棒がばねの付勢力に抗して引張られてパイロット弁が開弁される。また、カムフォロアが小リフト部の外周面に当接するようにカムを回転させると、レバーが閉弁方向に揺動され、ばねの付勢力によりパイロット弁が閉弁される。
【0006】
ところで、弁棒には、その摺動に対して背圧室の気密を保持するOリングに対してスムーズに摺動するようにグリースが塗布されているが、経年劣化によるグリースの硬化等で長期間使用するとOリングに対し弁棒のこじりを生ずることがある。ここで、上記従来例のものでは、カムをカムフォロアが小リフト部の外周面に当接する閉弁回転位置からカムフォロアが大リフト部の外周面に当接する開弁回転位置に回転させる際は、レバーがカムに押されて開弁方向に強制的に揺動されるが、カムを開弁回転位置から閉弁回転位置に回転させる際は、カムフォロアに当接するカムの部分の径が次第に減少するため、レバーにはカムからの力は作用しない。そのため、パイロット弁の開弁状態で弁棒のこじりを生ずると、カムを開弁回転位置から閉弁回転位置に回転させても、レバーは閉弁方向に揺動せず、パイロット弁が開弁されたままになって、止水できなくなる。
【0007】
このようなパイロット弁の弁棒のこじりに因る止水不良を解消するために、連動機構が、止水弁の開弁の際に、パイロット弁の弁棒をパイロット弁の開弁方向へ止水弁を強制的に開弁させるとともに、止水弁の閉弁の際にも、パイロット弁の弁棒をパイロット弁の閉弁方向へ連行して止水弁を強制的に閉弁させる湯沸器も従来知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第2572263号公報
【特許文献2】特開平9−60754号公報
【特許文献3】特開2009−24751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
パイロット弁が通常に作動している状態では、湯沸し器が給湯を行っているときに、ユーザが操作スイッチにより出湯停止操作を行うと、止水弁が閉弁制御されて、止水弁が閉弁する。これにより、通水路の通水が停止して、ガス供給路の水圧応動弁が閉弁するため、バーナが直ちに消火状態になる。しかし、パイロット弁の弁棒のこじりのために止水弁の閉弁作動に支障が生じていると、ユーザが操作スイッチにおいて出湯停止操作をしても、止水弁が閉弁しないため、水圧応動弁が閉弁せず、バーナが消火されずに、給湯が継続してしまうことになる。したがって、止水不良に対しては、それが起きる前に湯沸器の使用を中止することが望まれる。従来技術には、止水不能になる前段階の状態を的確に検出するものは見当たらない。
【0010】
本発明の目的は、パイロット弁の止水不能になる前段階を的確に検出して、湯沸器の使用禁止時期を適格化できるようにした湯沸器の止水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明の湯沸器の止水装置は、湯沸器の熱交換器を通る通水路に介設される弁室内に設けられた弁座と、該弁座に対向し、該弁座に開設した弁孔を該弁座に着座して閉塞するダイヤフラムから成る主弁と、該主弁の背面にダイヤフラムカバーにより画成される、前記弁室にオリフィスを介して連通する背圧室と、該背圧室に収納され、前記弁孔と前記背圧室とを連通するように前記主弁に形成したパイロット孔を開閉するパイロット弁とを備え、該パイロット弁は、前記パイロット孔を閉塞する閉弁方向にばねで付勢されると共に、前記ダイヤフラムカバーを貫通して前記ダイヤフラムカバーの外方に突出する弁棒を有する止水弁と、前記パイロット弁の開弁方向へ前記弁棒を連行して前記パイロット弁を閉弁位置から開弁位置へ強制的に切替えると共に前記パイロット弁の開弁位置から閉弁位置へ切替では前記弁棒への作用力を解除して前記弁棒が前記ばねの付勢力により前記パイロット弁の閉弁方向へ変位させる操作機構と、変位する際の前記弁棒の摺動抵抗を検出する摺動抵抗検出手段と、検出した摺動抵抗が所定値以上であるときは前記操作機構によるその後の前記止水弁の開弁操作を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
パイロット弁の弁棒のこじりは、一気に生じず、その前段階として、変位時のパイロット弁の弁棒の摺動抵抗が徐々に増大していく期間が存在する。第1発明によれば、この期間を的確に検出して、弁棒のこじりに因る止水不能が生じる適切な時期に湯沸器の使用を禁止することができる。
【0013】
第2発明の湯沸器の止水装置では、第1発明の湯沸器の止水装置において、前記操作機構は前記弁棒を開弁方向へ連行する駆動力を発生するモータを含み、前記摺動抵抗検出手段は、所定の印加電圧範囲下の前記モータの通電量に基づき前記弁棒の摺動抵抗を検出し、前記禁止手段は、検出した通電量が所定の閾値以上となったときは、その後の前記モータの駆動による前記パイロット弁の開弁位置への切替を禁止することを特徴とする。
【0014】
第2発明によれば、弁棒を駆動するモータの負荷が弁棒の変位時の摺動抵抗と相関関係があることに着目し、該モータの通電量に基づき弁棒の変位時の摺動抵抗を的確に検出することができる。
【0015】
第3発明の湯沸器の止水装置では、第1発明の湯沸器の止水装置において、前記摺動抵抗検出手段は、前記通水路における水流の有無を検出する水流検出手段と、出湯中に前記操作機構が前記弁棒への作用力を解除した時から、前記水流検出手段が水流無しを検出する時までの遅れ時間を計測する遅れ時間計測手段とを備え、前記禁止手段は、計測した遅れ時間が所定の閾値以上であるときは、前記操作機構によるその後の前記止水弁の開弁位置への切替を禁止することを特徴とする。
【0016】
第3発明によれば、パイロット弁の弁棒が、操作機構からの作用力を解除されて、ばねの付勢力により閉弁方向へ変位し、パイロット弁の開弁位置から閉弁位置へ切り替わり、この切り替わり時間が、弁棒の変位時の摺動抵抗と相関関係があることに着目する。そして、出湯期間に操作機構が弁棒への作用力を解除した時から、水流検出手段が水流無しを検出する時までの遅れ時間に基づき弁棒の変位時の摺動抵抗を的確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用される湯沸器の構成図。
【図2】湯沸器における制御ブロック図。
【図3】止水装置の主要部詳細図。
【図4】手動式止水装置の主要部詳細図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、バーナ1で加熱される熱交換器2を備える湯沸器を示している。熱交換器2を通る通水路3には、上流側から順に、止水弁4と水ガバナ5と手動式の水量調節弁6とが介設されている。止水弁4は、電動モータ7により後述する連動機構8を介して開閉される。通水路3の下流端には、熱交換器2で加熱された温水を出湯する出湯ヘッド9が接続されている。バーナ1に対するガス供給路10には、上流側から順に、電磁ガス弁11と水圧応動弁12とガスガバナ13と手動式のガス量調節弁14とが介設されている。水圧応動弁12は、熱交換器2への通水時に水ガバナ5に内蔵するダイヤフラムの動きに連動して開弁される。
【0019】
バーナ1には、点火電極15とフレームロッド16と熱電対17とが付設されている。また、湯沸器には、熱交換器2への通水時に水ガバナ5に内蔵するダイヤフラムの動きに連動してオンする水流スイッチ18と、出湯時及び出湯停止時に操作される操作スイッチ19と、フレームロッド16、熱電対17、水流スイッチ18及び操作スイッチ19からの信号を入力するコントローラ20とが設けられている。
【0020】
コントローラ20は、直流電源21からの電力により作動し、この湯沸器における各種制御を行う。直流電源21は、例えば2つの乾電池を直列接続したものから成り、2.0〜3.4Vの範囲での使用を意図されている。
【0021】
コントローラ20は、図2に示すように、モータ制御部201、電磁ガス弁制御部202、点火電極制御部203、通電量検出部204、遅れ時間計測部205及び開弁禁止部206を備える。通電量検出部204、遅れ時間計測部205及び開弁禁止部206については、後で詳説し、コントローラ20の標準的な装備であるモータ制御部201、電磁ガス弁制御部202及び点火電極制御部203について先に説明する。
【0022】
図1及び図2において、モータ制御部201は、操作スイッチ19からのオン信号が入力されると、電動モータ7を駆動して止水弁4を開弁する。電磁ガス弁制御部202は、操作スイッチ19からのオン信号が入力されると、電磁ガス弁11に通電してこれを開弁する。点火電極制御部203は、止水弁4の開弁による熱交換器2への通水で水流スイッチ18がオンしたとき、点火電極15での火花放電を行ってバーナ1に点火する。これにより熱交換器2で加熱された温水が出湯ヘッド9から出湯される。点火電極制御部203は、また、バーナ1の点火をフレームロッド16からの信号で確認すると、火花放電を停止する。電磁ガス弁制御部202は、その後一定時間経過するまで電磁ガス弁11に通電してこれを開弁状態に保持し、一定時間経過後は、熱電対17の起電力に基づいて電磁ガス弁11を開弁状態に保持する。不完全燃焼でバーナ1の炎がリフトすると、熱電対17の起電力が低下して、電磁ガス弁制御部202は電磁ガス弁11を閉弁する。
【0023】
出湯中に操作スイッチ19が再度オンされると、モータ制御部201は、電動モータ7を駆動して、止水弁4を閉弁する。これにより熱交換器2への通水が停止され、この通水停止で水圧応動弁12が閉弁して、バーナ1へのガス供給が停止し、バーナ1は消火される。
【0024】
次に、図3を参照して止水弁4について詳述する。止水弁4は、水が流入する弁室41内に設けられた弁座42と、弁座42に対向し、弁座42に開設した弁孔43を弁座に着座して閉塞するダイヤフラムから成る主弁44と、主弁44の背面にダイヤフラムカバー45により画成される、主弁44に形成したオリフィス46を介して弁室41に連通する背圧室47と、背圧室47に収納され、弁孔43と背圧室47とを連通するように主弁44に形成したパイロット孔48を開閉するパイロット弁49とを備える。
【0025】
パイロット弁49を閉弁すると、オリフィス46を介しての弁室41から背圧室47への水の流入により背圧室47の内圧が上昇し、主弁44が背圧室47の内圧に押されて弁座42に着座して通水が停止される。また、パイロット弁49を開弁すると、背圧室47から弁孔43にパイロット孔48を介して水が流出して背圧室47の内圧が低下し、弁室41と背圧室47との圧力差により主弁44が弁座42から離れて、弁孔43が弁室41に連通し、熱交換器2に通水される。
【0026】
ここで、パイロット弁49は、パイロット孔48を閉塞しパッキンから成る弁体493と、弁体493の背面側に一端を結合しダイヤフラムカバー45を貫通して該カバー45の外方に突出する弁棒492と、弁体493がパイロット孔48を閉塞する閉弁方向に弁体493を付勢する圧縮コイルばね491とを有する。そして、電動モータ7により連動機構8を介して弁棒492を圧縮コイルばね491の付勢力に抗して引張ることでパイロット弁49が開弁されるようにしている。
【0027】
なお、バルブガイド45aがダイヤフラムカバー45に内装され、Oリング45bは、バルブガイド45aの内周の環状溝に嵌着されて、弁棒492の摺接に対する背圧室47の水密を保持する。Oリング45bは、バルブガイド45aの内周ではなく、弁棒492の周部に嵌着されるようになっていてもよい。
【0028】
連動機構8は、電動モータ7により減速機7aを介して一方向(図3の反時計方向)に回転されるカム82と、カム82に連動するレバー83とを備える。カム82は、径方向寸法の小さな小リフト部821と径方向寸法の大きな大リフト部822とを有する非円形に形成されている。レバー83は、図示省略したブラケットに中間部で軸831により揺動自在に軸支されている。また、レバー83の一端には、カム82の外周面に当接するピン形状のカムフォロア832が設けられ、レバー83の他端には係合部833がレバー83の本体から直角に折り曲げられて形成されている。
【0029】
係合部833には、弁棒492の変位方向に対して直角でかつレバー83の回転軸線に対して直角の方向に延びるスリット又は長孔(符号無し)が形成され、弁棒492は、該スリット又は長孔を貫通し、先端に駒492aを固着される。レバー83が止水弁4から遠ざかる方向、すなわちパイロット弁49の開弁方向へ揺動する際には、係合部833が駒492aに当接して、弁棒492を連行し、パイロット弁49を強制的に開弁させる。
【0030】
これに対して、レバー83が止水弁4へ接近する方向、すなわちパイロット弁49の閉弁方向へ揺動する際には、係合部833は、駒492aから離反して、駒492aに先行して、ダイヤフラムカバー45の方へ変位するので、弁棒492へなんらの作用力を及ぼすことはなく、弁棒492は、圧縮コイルばね491の付勢力により主弁44の方へ変位する。
【0031】
Oリング45bには、十分なグリースが塗布されているが、使用の経過に伴い、しだいに潤滑性が失われていき、それが原因になってOリング45bと弁棒492との間にこじりが生じることがある。こじりが生じても、パイロット弁49の開弁は、レバー83の係合部833が弁棒492をパイロット弁49の閉弁方向へ強制的に連行することにより行われるので、特に問題は生じない。
【0032】
しかし、パイロット弁49の閉弁は、閉弁方向へのレバー83による弁棒492の強制的な変位に依ることなく、圧縮コイルばね491の付勢力により行われるので、パイロット弁49が、弁棒492とOリング45bとの間のこじりのために開弁位置から閉弁位置へ切り替わらず、止水弁4が止水不良状態になる。
【0033】
湯沸器では、バーナ1におけるガス燃焼は、通水路3における水流が所定の閾値未満になったことが水流スイッチ18により検出されると、停止するようになっているが、止水不良のために、ユーザは出湯を停止操作したにもかかわらず、バーナ1におけるガス燃焼は継続することがあり、好ましくない。したがって、止水不良に対しては湯沸器の使用を中止することが望ましい。
【0034】
本願発明者は、こじりのために止水弁4が止水不良状態になる前段階として、パイロット弁49が開弁位置から閉弁位置へ戻り難くなる段階が生じることに着目し、後述するように、この湯沸器では、この段階を的確に検出して、こじりに因る止水不良が起きる前の適切な時期に湯沸器を使用禁止状態にする。
【0035】
なお、こじり対策として、駒492aに係合部833とは反対側から当接する係合部をレバー83に追加し、レバー83が止水弁4側に揺動する際に、この追加係合部により弁棒492をパイロット弁49の閉弁方向へ強制連行する方法も考えられるが、その場合、パイロット弁49の弁体493は、閉弁位置において常時、弁棒492を介して閉弁方向へ大きな荷重を受け続けることになる。これは弁体493のパッキンのへたりを促進させ、弁体493の水密性を悪化させて、好ましくない。この湯沸器では、後述するように、弁体493のへたりの問題を回避することができる。
【0036】
この湯沸器におけるパイロット弁49の弁棒492の摺動不良状態の検出に係る構成等を説明する前に、該湯沸器における出湯開始及び停止時の作動について説明する。操作スイッチ19は、押下中、オンになり、押下解除中はオフになる。操作スイッチ19がオンになるごとに、切替指示が、開弁位置への切替指示と閉弁位置への切替指示とに入れ替わる。モータ制御部201は、操作スイッチ19が押下されるごとに、電動モータ7を介してカム82を半回転させて、出湯開始及び停止を交互に切り替える。
【0037】
出湯開始時では、モータ制御部201は、電動モータ7を介してカム82を半回転させて、カム82の回転位置を、カムフォロア832が小リフト部821の外周面に当接する閉弁回転位置(図3(a)の位置)からカムフォロア832が大リフト部822の外周面に当接する開弁回転位置(図3(b)の位置)へ切り替える。なお、カム82が開弁回転位置に到達すると、図外のリミットスイッチがこれを検出し、モータ制御部201は、このリミットスイッチからの信号を受けて電動モータ7を停止させる。
【0038】
このようにカム82を開弁回転位置に回転させると、レバー83がカム82に押されてパイロット弁49の開弁方向に強制的に揺動され、係合部833により弁棒492が圧縮コイルばね491の付勢力に抗して引張られてパイロット弁49が開弁される。
【0039】
また、出湯停止時は、モータ制御部201は、電動モータ7を介してカム82を出湯開始時と同一の回転方向へ半回転させて、カム82を開弁回転位置から閉弁回転位置へ切り替える。なお、カム82が閉弁回転位置に到達すると、図外のリミットスイッチがこれを検出し、モータ制御部201は、このリミットスイッチからの信号を受けて電動モータ7を停止させる。このようにカム82を閉弁回転位置に回転させると、カムフォロア832が当接するカム82の部分の径が次第に減少し、これに伴いレバー83が捩じりコイルばね84の付勢力で閉弁方向に揺動して、パイロット弁49は圧縮コイルばね491の付勢力で閉弁される。
【0040】
この湯沸器におけるパイロット弁49の弁棒492の摺動不良状態の検出に係る構成部分について説明する。図2において、コントローラ20は、すでに作用について説明したモータ制御部201、電磁ガス弁制御部202及び点火電極制御部203の他に、通電量検出部204、遅れ時間計測部205及び開弁禁止部206を備える。
【0041】
このコントローラ20は、通電量検出部204及び遅れ時間計測部205の両方を装備するが、一般的には、一方のみを装備し、他方は省略する。また、コントローラ20は、通電量検出部204及び遅れ時間計測部205の両方からの入力に基づき止水弁4の開弁を禁止してもよいし、一方からの入力のみに基づき止水弁4の開弁を禁止してもよい。
【0042】
なお、連動機構8は本発明における操作機構に相当し、水流スイッチ18は本発明における水流検出手段に相当し、通電量検出部204は本発明における摺動抵抗検出手段又は通電量検出手段に相当し、遅れ時間計測部205は本発明における摺動抵抗検出手段又は遅れ時間計測手段に相当し、開弁禁止部206は本発明における禁止手段に相当する。
【0043】
通電量検出部204は、モータ制御部201が電動モータ7を回転駆動する際の電動モータ7の通電量を検出する。電動モータ7には、それがカム82を回転させる際の負荷として、止水弁4を閉弁位置から開弁位置へ切り替える回転期間では、捩じりコイルばね84のばね力に対抗する力の他に、圧縮コイルばね491の付勢力に対する対抗力、及びOリング45bに対する弁棒492の摺動抵抗がかかる。
【0044】
電動モータ7の負荷は、止水弁4を開弁位置から閉弁位置へ切り替える回転期間では、ほぼ0である。モータ制御部201から電動モータ7へ供給する通電量は、電動モータ7の負荷にほぼ比例する。通電量検出部204は、該通電量を検出する。グリースの潤滑性の低下に伴い、止水弁4における弁棒492とOリング45bとの摺動抵抗は増大し、電動モータ7による止水弁4の閉弁位置から開弁位置への切替期間の電動モータ7の通電量は該摺動抵抗の増大に連れて増大する。
【0045】
弁棒492とOリング45bとの間のこじりのために、パイロット弁49が開弁位置から閉弁位置への切替が不能になって、止水不良が起きる前に、弁棒492とOリング45bとの間の摺動抵抗が徐々に増大して、該摺動抵抗はやがて所定値Cに達する。なお、所定値Cは、該摺動抵抗が該所定値Cに達した時点でも、パイロット弁49の開弁位置から閉弁位置への切替は、多少時間がかかるものの、許容時間内に行われるものとして、すなわちこじりにより閉弁位置への変位が不能になる前の値として設定されている。
【0046】
ここで、摺動抵抗についての所定値Cに対応する電動モータ7の通電量を閾値C1と定義する。直流電源21は、例えば2本の乾電池の直列接続から成り、2.0〜3.4Vの範囲で使用される。例えば、ユーザが湯沸器を購入して使用開始する初期時の止水弁4の閉弁位置から開弁位置への切替のための電動モータ7の通電量は70mA程度である。Oリング45bと弁棒492との間の摺動抵抗が正常範囲にある場合、止水弁4の耐久期間内では電動モータ7の通電量は120mA以下に留まるように、止水弁4は設計されている。これに対して、Oリング45bと弁棒492との間にこじりが生じると、電動モータ7の通電量は240mA以上に倍増する。したがって、C1は、例えば120mAと240mAとの中間の値に設定することができる。
【0047】
開弁禁止部206は、通電量検出部204が検出した通電量が閾値C1以上になったことを検出すると、次に、止水弁4が閉弁位置に戻り次第、モータ制御部201による電動モータ7の通電作動を禁止する。これにより、これ以降は、ユーザが操作スイッチ19を操作して止水弁4の開弁を指示しても、止水弁4は開弁されない。すなわち、ユーザによるこの湯沸器の使用は禁止される。
【0048】
開弁禁止部206によるこの湯沸器の使用禁止は、通電量検出部204が検出した通電量が初めて閾値C1以上になった時の次の止水弁4の開弁作動からとしているが、(a1)通電量検出部204が検出した通電量が初めて閾値C1以上になった時に代えて、次の時を採用してもよい。
(a2)モータ制御部201による止水弁4の閉弁位置から開弁位置への切替作動に対して、電動モータ7の通電量が閾値C1以上になることが複数の所定回数、連続した時。
(a3)モータ制御部201による止水弁4の閉弁位置から開弁位置への切替作動に対して、電動モータ7の通電量が閾値C1以上になることが所定の頻度以上で起きた時。
【0049】
湯沸器を例えば冬季のみ使用し、冬季以外の季節では使用しないようなユーザ使用状況では、冬季の最初の湯沸器の使用では、Oリング45bと弁棒492との間のこじりが生じていないものの、両者間の摺動抵抗が一時的に増大することがあり、この場合には、2回目以降、通常値に戻る。この対処策として、上記(a2)及び(a3)は有効である。
【0050】
次に、遅れ時間計測部205について説明する。遅れ時間計測部205は、出湯ヘッド9からの出湯中にユーザが操作スイッチ19において出湯停止を指示した場合に、その指示時点から、水流スイッチ18が水流無しを検出する時点までの時間としての遅延時間を計測する。該遅延時間は、パイロット弁49が開弁位置から閉弁位置へ切り替わるまでの時間を反映している。パイロット弁49の開弁位置から閉弁位置への切替は、レバー83による弁棒492の強制的な変位は行われず、圧縮コイルばね491の付勢力のみにより行われる。したがって、弁棒492とOリング45bとの間の潤滑性低下に因る摺動抵抗の増大に伴い、遅延時間は増大する。
【0051】
Oリング45bと弁棒492との間の摺動抵抗を計測する遅延時間の本質は、パイロット弁49が開弁位置から閉弁位置へ切り替わるのに要する時間であり、遅延時間の開始時点の変形例として、(u1)ユーザが操作スイッチ19において出湯停止を指示した信号が入力された時点に代えて、(u2)止水弁4の開弁位置への切替のために電動モータ7に通電電流を供給開始した時点や、(u3)ユーザからの出湯停止指示に伴い電磁ガス弁へそれを閉弁位置に切り替える信号を出力した時点を選択することもできる。
【0052】
摺動抵抗についての所定値Cに対応する電動モータ7の通電量を閾値C1と定義したように、遅延時間についても、摺動抵抗についての所定値Cに対応する閾値C2を定義する。Oリング45bと弁棒492との間の摺動抵抗が正常範囲にあっても、ユーザが出湯ヘッド9における出湯中に操作スイッチ19を押下した時点から、出湯ヘッド9からの出湯が停止する時点まで、約1秒の遅延時間が存在する。したがって、閾値C2は例えば2秒以上の値に設定される。
【0053】
開弁禁止部206は、遅れ時間計測部205が計測した遅延時間が閾値C2以上になったことを検出すると、以降、ユーザによるこの湯沸器の使用を禁止するために、モータ制御部201による電動モータ7の通電作動を禁止する。これにより、これ以降は、ユーザが操作スイッチ19を操作して止水弁4の開弁を指示しても、止水弁4は開弁されない。
【0054】
開弁禁止部206によるこの湯沸器の使用禁止は、遅れ時間計測部205が計測した遅延時間が初めて閾値C2以上になった時以降の止水弁4の開弁作動からとしているが、(b1)通電量検出部204が計測した遅延時間が初めて閾値C2以上になった時に代えて、次の時を採用してもよい。
(b2)出湯ヘッド9からの出湯中の操作スイッチ19における止水弁4の開弁位置から閉弁位置への切替指示に対して、計測遅延時間が閾値C2以上になることが複数の所定回数、連続した時。
(b3)出湯ヘッド9からの出湯中の操作スイッチ19における止水弁4の開弁位置から閉弁位置への切替指示に対して、計測遅延時間が閾値C2以上になることが所定の頻度以上で起きた時。
【0055】
変形例では、上記(a1)〜(a3)の1つと(b1)〜(b3)の1つとの組合せの対を設定する。そして、対における両方が成立した時点以降の止水弁4の開弁作動から開弁禁止部206による湯沸器の使用を禁止するようにしてもよい。
【0056】
図4は、電動モータ7を使用しないで止水弁4の開弁及び閉弁の切替を手動力のみで行う湯沸器に本発明を適用した実施例に関する。図4の湯沸器は、操作スイッチ19を省略されて、代わりに回転式操作部50を有している。図4の回転式操作部50は、その背面側から見ており、カム82の回転中心に中心をもち、ユーザの回転操作に伴いカム82と一体回転する。周壁51は、回転式操作部50の本体の周縁に沿って背面側の方へ所定寸法、張り出して周縁を一周している。
【0057】
切欠き52は、回転式操作部50の周方向所定位置において周壁51に穿設されている。電磁ソレノイド55は、突出量を大小に切替自在のプランジャ56を有し、回転式操作部50がパイロット弁49の閉弁位置に対応する回転位置Aにある時の切欠き52に、プランジャ56が対向する位置に配備される。切欠き52の幅は、切欠き52へのプランジャ56の円滑な出入りを許容しつつ、プランジャ56の径にほぼ等しい寸法とする。なお、切欠き52に代えて、プランジャ56が挿入可能である挿通孔としてもよい。
【0058】
電磁ソレノイド55がプランジャ56を回転式操作部50から引き込んでいるときには(図4(a))、回転式操作部50は自由に回転できる状態になっている。これに対し、電磁ソレノイド55がプランジャ56を突出させると、プランジャ56の先端部は回転式操作部50の回転に伴い周壁51の外周面を摺動し、回転式操作部50が回転位置Aになり次第、切欠き52内へ突入し、回転式操作部50は回転を拘束される(図4(b))。
【0059】
ユーザは、湯沸器を使用するときは、回転式操作部50を手動で図4の回転位置Aから半回転させる。これにより、図1の湯沸器と同様に、カム82が半回転し、止水弁4は閉弁位置から開弁位置へ切り替えられる。ユーザは、出湯ヘッド9における出湯を中止するときは、さらに、回転式操作部50を手動で半回転させて、図4の回転位置Aへ戻す。これにより、止水弁4は開弁位置から閉弁位置へ切り替えられる。
【0060】
図4の湯沸器のコントローラ20は、図3のモータ制御部201及び通電量検出部204は装備しておらず、遅れ時間計測部205及び開弁禁止部206は装備している。開弁禁止部206は、モータ制御部201の代わりに電磁ソレノイド55の通電を制御して、この湯沸器の使用禁止を制御する。
【0061】
遅れ時間計測部205は、ユーザが回転式操作部50を出湯中に出湯停止指示の回転位置にした時点から、水流スイッチ18が水流無しを検出する時点までの遅延時間を計測する。開弁禁止部206は、遅れ時間計測部205が計測した遅延時間が閾値C2以上になったことを検出するまでは、電磁ソレノイド55への通電は行わない。これにより、プランジャ56は、図4(a)のように、回転式操作部50から引き込まれていて、切欠き52に嵌入することはなく、回転式操作部50は回転自由の状態ある。したがって、ユーザによる回転式操作部50の回転操作に伴い、回転式操作部50は回転し、止水弁4は開弁位置又は閉弁位置へ切り替えられる。
【0062】
これに対し、開弁禁止部206は、通電量検出部204の検出した通電量が閾値C1以上になったことを検出すると、又は遅れ時間計測部205の計測した遅延時間が閾値C2以上になったことを検出すると、電磁ソレノイド55を通電する。これにより、プランジャ56は、回転式操作部50から大きく突出して、回転式操作部50が回転位置Aになりしだい、図4(b)のように、切欠き52に嵌入し、以降、回転式操作部50は回転を拘束される。したがって、ユーザによる回転式操作部50の回転操作は禁止され、湯沸器の使用が禁止される。
【0063】
上記した各種実施例及び変形例以外は本発明をそれらに限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内においてその他の種々の変形例も含む。
【符号の説明】
【0064】
1・・・バーナ、2・・・熱交換器、3・・・通水路、4・・・止水弁、8・・・操作機構、20・・・コントローラ、204・・・通電量検出部、205・・・遅れ時間計測部、206・・・開弁禁止部、55・・・電磁ソレノイド、41・・・弁室、42・・・弁座、43・・・弁孔、44・・・主弁、45・・・ダイヤフラムカバー、46・・・オリフィス、47・・・背圧室、48・・・パイロット孔、49・・・パイロット弁、491・・・圧縮コイルばね、492・・・弁棒、50・・・回転式操作部、55・・・電磁ソレノイド、7・・・電動モータ、8・・・操作機構、82・・・カム、83・・・レバー、832・・・カムフォロア、833・・・係合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯沸器の熱交換器を通る通水路に介設される弁室内に設けられた弁座と、該弁座に対向し、該弁座に開設した弁孔を該弁座に着座して閉塞するダイヤフラムから成る主弁と、該主弁の背面にダイヤフラムカバーにより画成される、前記弁室にオリフィスを介して連通する背圧室と、該背圧室に収納され、前記弁孔と前記背圧室とを連通するように前記主弁に形成したパイロット孔を開閉するパイロット弁とを備え、該パイロット弁は、前記パイロット孔を閉塞する閉弁方向にばねで付勢されると共に、前記ダイヤフラムカバーを貫通して前記ダイヤフラムカバーの外方に突出する弁棒を有する止水弁と、
前記パイロット弁の開弁方向へ前記弁棒を連行して前記パイロット弁を閉弁位置から開弁位置へ強制的に切替えると共に前記パイロット弁の開弁位置から閉弁位置へ切替では前記弁棒への作用力を解除して前記弁棒が前記ばねの付勢力により前記パイロット弁の閉弁方向へ変位させる操作機構と、
変位する際の前記弁棒の摺動抵抗を検出する摺動抵抗検出手段と、
検出した摺動抵抗が所定値以上であるときは前記操作機構によるその後の前記止水弁の開弁操作を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする湯沸器における止水装置。
【請求項2】
請求項1の湯沸器の止水装置において、
前記操作機構は前記弁棒を開弁方向へ連行する駆動力を発生するモータを含み、
前記摺動抵抗検出手段は、所定の印加電圧範囲下の前記モータの通電量に基づき前記弁棒の摺動抵抗を検出し、
前記禁止手段は、検出した通電量が所定の閾値以上となったときは、その後の前記モータの駆動による前記パイロット弁の開弁位置への切替を禁止することを特徴とする湯沸器における止水装置。
【請求項3】
請求項1の湯沸器の止水装置において、
前記摺動抵抗検出手段は、
前記通水路における水流の有無を検出する水流検出手段と、
出湯中に前記操作機構が前記弁棒への作用力を解除した時から、前記水流検出手段が水流無しを検出する時までの遅れ時間を計測する遅れ時間計測手段とを備え、
前記禁止手段は、計測した遅れ時間が所定の閾値以上であるときは、前記操作機構によるその後の前記止水弁の開弁位置への切替を禁止することを特徴とする湯沸器における止水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−57787(P2012−57787A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204850(P2010−204850)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】