説明

正確に制御されたマスク陽極酸化のための方法

【課題】基板上の陽極酸化可能な層、例えば犠牲層上に存在するアルミニウム層であって、該犠牲層は、マイクロ電気機械システム又はナノ電気機械システム(MEMS/NEMS)を備えたキャビティから除去する必要があるような層のマスク陽極酸化の方法を提供する。
【解決手段】Al層の陽極酸化は、細長い孔の形成につながり、該孔を通じて犠牲層を除去可能である。本発明の方法に従って、Al層の陽極酸化は、陽極酸化される領域21を規定する第1マスク20、及び陽極酸化される第2領域を規定する第2マスク22であって、前記第2領域は第1領域を包囲するようなマスクの補助がある状態で行う。第1マスク及び第2マスクが規定する領域の陽極酸化は、第1領域周囲の閉環形態における陽極酸化構造の形成につながり、第1領域内では不要な横方向陽極酸化に対するバリアを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク陽極酸化(masked anodization)プロセスを正確に制御するための方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、半導体デバイスを製造すること、特に封入(encapsulation)の方法及びかかるデバイスに関する。より明確には、それは、半導体デバイスの、ゼロレベル又はウエハレベルパッケージングに関するであろう。
【0003】
より具体的には、本発明は、ナノ電気機械システム及び/又はマイクロ電気機械システム(NEMS及び/又はMEMS)並びに前記システムを封入(若しくはパッケージング)するプロセスに関する。
【背景技術】
【0004】
マスク陽極酸化(ウェット電気化学酸化及び/又はエッチング)によって、導電性薄膜内に誘電体材料又は多孔質材料のパターンを作成することは、既在の薄膜堆積及びエッチング技術に対して種々の利点、例えば、製造プロセス及び該プロセスから生じる比較的平坦な(そして整列した)構造の単純化を有する。通常、マスク陽極酸化プロセスは、陽極酸化される層の上部にマスク構造を付加することによって実施する。該マスク構造は、既在のフォトリソグラフィによって(フォトレジストマスク)、又は陽極酸化プロセスに耐性を有する別の材料の堆積及びパターニングによって(ハードマスク)適用可能である。フォトレジストマスクは、ハードマスクに比べて実装するのがより単純であるが、通常、フォトレジストは、陽極酸化プロセス中に腐食され、陽極酸化パターンの横方向の広がりに対する制御が乏しくなる。
【0005】
高精度のマスク陽極酸化のための単純な技術を見出すことが、導電性薄膜内で誘電体材料又は多孔質材料の平面パターンを製造するのに必要である。かかるパターンは、例えば相互接続ライン間のキャパシタが減少するという利点をもたらす低誘電率の多孔質誘電体材料によって、互いに絶縁した相互接続金属ライン(パターン)を作成するのに有用である。これにより、これらの相互接続部を通じて伝送可能な信号速度を増加させることができ、異なる相互接続部間での交差連結(cross-coupling)を減らすことができ、集積回路についてのより優れた性能をもたらす。
【0006】
高精度のマスク陽極酸化を要求する別の応用は、ナノ電気機械システム及び/又はマイクロ電気機械システム(NEMS/MEMS)のパッケージング(封入)である。前記NEMS/MEMSシステムは、ダイシング(dicing)及び組立て中に容易に損傷する可能性がある、壊れやすく、及び/又は可動の自立(free-standing)パーツからしばしば構成されているので、プラスチック又はセラミックパッケージ、いわゆる第1レベルパッケージでは直接パッケージすることができない。かかる損傷を避けるために、ダイシングの前に、NEMS/MEMSデバイスをウエハレベルで保護する必要がある。これは、いわゆるゼロレベル又はウエハレベルパッケージング技術を用いて可能である。それゆえ、多くのNEMS/MEMSシステムは、真空下、又は制御された雰囲気及び圧力の下で封入し、優れた性能又は許容できる動作期間のいずれかを保証することを要求する。該封入は、NEMS/MEMSデバイス上に封止材料を直接堆積することなく実施する必要がある。かかる堆積は、デバイスに損傷を与える可能性があるからである。それゆえに、真空及び/又は制御された雰囲気を実現し、続いて封止層を堆積できるホール(細孔(pore))を有する層から成る封入物を最初に堆積する必要がある。単純かつ安価なプロセスにより多孔質薄膜を有するNEMS/MEMSデバイスを封入するアイデアに至った。薄膜の細孔を通じてデバイスを除去することができるので、フォトリソグラフィを使用して薄膜にアクセスホールを成形する必要を無くすことができ、デバイスの製造が容易になる。
【0007】
基板1(例えばSi)の概略図を表す図1に示すようなNEMS/MEMSデバイスの前記薄膜真空パッケージングにおいて、近年、多孔質皮膜(membrane)として使用するために、多孔質のアルミナ(AlO)皮膜が研究されている。基板1は、表面上でMEMSデバイス2を支持し、多孔質皮膜3によって封入される。該皮膜3は、封止層4に覆われる。多孔質皮膜3は、pHの低い電解液中でのアルミニウム薄膜(誘電体薄膜の上部に堆積した)の陽極酸化、及びマスクとしてパターニングしたフォトレジスト層を使用することによって得られる。陽極酸化プロセスは、フォトレジストマスクを使用して、マスクしたAl層上で実施してもよい(論文:ヘリンリコら J. Electrochem. Soc. Vol. 154, No. 9 (2007))。細孔5(スケールどおり図示していない)は、皮膜の厚さ方向に貫通する細長い開口部であり、該細孔を通じてMEMSデバイス2の放出(release)が生じ、それが皮膜層3の堆積の前にMEMSデバイス上で堆積した犠牲層を除去する。図2に示すように、フォトレジストを使用するこのマスク陽極酸化プロセスは、陽極酸化プロセスを所望の領域に適切には制限しないという欠点を有する。本図は基板1を示しており、基板表面上に薄膜11を有し、該薄膜11上に皮膜層12を有する。フォトレジストマスク13は、陽極酸化される皮膜領域を規定する部分14を除いて皮膜を覆う。さらに詳細に説明するように、通常、陽極酸化は、陽極酸化浴に基板を浸すことによって行う。基板を陽極酸化浴に必要以上に長い時間放置した場合、陽極酸化が続いて必要以上に広い陽極酸化領域15(境界16参照)が形成される。即ち、陽極酸化領域の不要な継続的成長が発生する。
【0008】
特に、陽極酸化される層を有するフルウエハ又は大面積基板に陽極酸化電圧を印加し、基板(ウエハ)を陽極酸化浴に放置した場合、フォトレジストマスクが規定する制限を越えて、前記陽極酸化領域の不要な継続的成長が発生する。フルウエハスケールでマスク陽極酸化プロセスを実施する場合の課題は、基板(ウエハ)のエッジ周辺に存在するマスクが規定する領域が既に完全に陽極酸化され、過陽極酸化(over-anodized)に至ることになる状態で、基板(ウエハ)表面の中心領域(中間)に存在するマスクが規定する領域は、未だ完全には陽極酸化されていないことである。不要な継続的成長という課題は、
(1)酸性度の高い電解液による腐食、
(2)AlO薄膜の拡張、
(3)陽極酸化プロセス中に発生するガスの構成
に起因するフォトレジストマスクのエッジ剥離(peeling)(「アンダーカット」(undercut)を生じる)によって生じる。
【0009】
従って、現在、フォトレジストマスクを使用して、正確に規定した陽極酸化パターンを導電性層内に設けるために、信頼性の高い制御可能な方法を提供するための最先端の技術、及び、例えばNEMS/MEMS用に薄膜真空パッケージングを提供するためのかかる陽極酸化パターンの適用における課題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、マスク陽極酸化によって、陽極酸化可能な(anodizable)層内で陽極酸化材料の正確なパターンを作成するための進んだ方法を提供することである。より明確には、マスク陽極酸化を使用して、導電性薄膜内で誘電体材料又は多孔質材料の正確なパターンを作成することである。具体的には、(フル)ウエハスケールで半導体デバイスを製造して、半導体デバイスの大きいスケールの製造に適用可能な陽極酸化プロセスを作成する際に用いるための、費用効率の高い、進んだマスク陽極酸化プロセスを提供することが目的である。
【0011】
本発明の実施形態の更なる目的は、陽極酸化可能な層、例えば導電性(金属)層を局所的に変形して陽極酸化(anodized)層、例えば誘電体層又は多孔質層にする、ウェット陽極酸化プロセスを実施するための、信頼性が高く制御可能な方法を提供することである。本発明の目標は、(フル)ウエハスケールで、均一に前記陽極酸化を実施することである。
【0012】
更なる目的は、ナノ電気機械システム及びマイクロ電気機械システム(NEMS/MEMS)のためのマイクロ電気プロセス技術を提供して、前記NEMS/MEMSデバイスのための制御可能で均一な(フル)ウエハスケール封入又はパッケージングプロセスを達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、本発明に係る方法及びデバイスによって達成される。本発明は、追加の包囲マスク構造を有する一群の(複数の)マスク構造を包囲することによって、均一で制御可能な陽極酸化を達成するという課題を解決する。換言すると、陽極酸化中のマスク層の層間剥離又はアンダーカットにつながる過陽極酸化に至らないで、陽極酸化プロセスに選択的に曝される表面上の小領域を規定する、高精度の追加の包囲フォトレジスト又は他のマスク構造を使用することによって該課題を解決する。前記追加のマスク構造の存在により、陽極酸化境界が前記境界内の陽極酸化領域と同時に陽極酸化(酸化)されるため、自己制限が生じる。その結果、前記境界はさらに、陽極酸化電流がマスク構造の陽極酸化領域に達するのを妨げ、不要な更なる陽極酸化を避ける。陽極酸化プロセスのために必要とされる電流は基板のエッジ(周辺部)で供給されるため、追加の包囲マスク構造(陽極酸化材料の境界線を規定する)を有する陽極酸化マスク上の全ての構造群を包囲することにより、陽極酸化プロセスの自己制限が生じる。これは、陽極酸化境界が同時に陽極酸化(酸化)された状態になり、更なる陽極酸化電流が陽極酸化領域に達するのを妨げるからである。陽極酸化プロセスのためのマスクデザイン中に、さまざまな寸法の追加の包囲マスク構造(境界線又は保護環を規定する)を付加してもよい(即ち、境界線は、小構造群又は大構造群を包囲可能であり、又は基板(ウエハ)全体を包囲することができる)。追加の包囲マスク構造及び包囲領域の幅を選択して(又は適合させて)封入された構造の完全な縦方向陽極酸化を保障することができ、同時に陽極酸化プロセスの横方向の大きい拡張からこれらの構造を保護することができる。
【0014】
本発明に係るマスク陽極酸化プロセスをNEMS/MEMSデバイスのためのパッケージングプロセスに付加することにより、追加の包囲マスク構造が、一群の個々のNEMS/MEMSデバイスを包囲し、陽極酸化プロセスの自己制限を生じることになる。これは、陽極酸化境界が同時に陽極酸化(酸化)された状態になり、更なる陽極酸化電流が陽極酸化領域に達するのを妨げ、更なる不要な陽極酸化を避けるからである。
【0015】
本発明に係る実施形態の利点は、包囲マスク構造を設けることは、別の加工ステップを必要としないことである。これは、前記追加のマスク構造を、第1マスク構造を設けるのと同時に設けるからである。
【0016】
本発明は、添付の請求項で開示する方法に関する。本発明の特定かつ好ましい態様は、添付する独立請求項及び従属請求項において詳説する。従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と、適切及び単に請求項に明記されただけでないものとして組み合わせてもよい。
【0017】
このように、本発明は、マスク陽極酸化のための方法に関し、前記方法は、
基板を準備するステップと、
前記基板上に、陽極酸化可能な層を設けるステップと、
前記陽極酸化可能な層上に、少なくとも、陽極酸化される1つ以上の第1構造を規定する第1マスク、及び陽極酸化される第2構造を規定する追加の第2マスクを設けるステップと、
第1マスク及び第2マスクによって規定される領域内で、前記陽極酸化可能な層を陽極酸化し、陽極酸化構造を作成するステップと、
第1マスク及び第2マスクを除去するステップとを含み、
前記第2構造は、前記1つ以上の第1構造を包囲する。
ここで、「第1マスク及び第2マスクによって規定される領域内で、前記陽極酸化可能な層を陽極酸化する」という表現は、層が前記領域内で厚さ全体に渡って陽極酸化されるまで、陽極酸化が続くということを意味する。また、「包囲する(surrounding)」は、第2構造が第1構造の周囲に閉環構造を形成することを意味する。
【0018】
好ましい実施形態に従って、前記陽極酸化可能な層を陽極酸化するステップは、基板を電解液中に挿入し、前記基板に電圧(又は電流)を印加することによって実施する。
【0019】
前記陽極酸化可能な層を陽極酸化するステップはまた、第1陽極酸化層を形成する第1陽極酸化ステップと、それに続く第1陽極酸化層をエッチング除去した後の第2陽極酸化ステップを含む、2ステップ陽極酸化プロセスを使用して実施してもよい。
【0020】
好ましい実施形態に従って、陽極酸化するステップは、硫酸、リン酸、シュウ酸、フッ化水素酸、エタノール、イソプロピルアルコール及びこれらの化学物質の混合物から成る群から選択した電解液中に基板を挿入することによって実施してもよい。
【0021】
好ましい実施形態に従って、前記陽極酸化するステップは、前記陽極酸化構造に伸長した(elongate)細孔を作成する。前記細孔は、前記陽極酸化可能な層の前面から後面まで延びる。
【0022】
実施形態に従って、陽極酸化可能な層はAl層であり、陽極酸化するステップは、基板を、20〜40℃の範囲にある温度の硫酸ベースの電解液中に基板を挿入することによって実施する。
【0023】
実施形態に従って、陽極酸化可能な層は、陽極酸化されて金属酸化物層を形成する金属層であり、前記陽極酸化浴は前記酸化物をエッチングするのに好適なエッチング液を含み、前記陽極酸化ステップは、前記電圧が印加される間の第1時間間隔と、前記第1時間間隔に続く第2時間間隔とを含み、前記電圧は、前記第1時間間隔の終わりで取り除かれ、前記第2時間間隔中、基板は前記陽極酸化浴に放置され、それにより、前記細孔の底部でバリア層が除去される。この実施形態において、前記金属はアルミニウムでもよく、前記エッチング剤はリン酸でもよい。
【0024】
実施形態に従って、前記基板を準備するステップは、犠牲層をベース基板上に堆積することを含み、
陽極酸化可能な層は、前記犠牲層上に設けられ、
前記第1マスクは、陽極酸化構造を規定し、
前記陽極酸化ステップは、前記陽極酸化構造において、伸長した細孔を製造し、前記細孔は、前記陽極酸化可能な層の前面から後面まで延び、
少なくとも犠牲層の一部が、キャビティ(cavity)を形成するために、前記細孔を通じて除去され、
封止層が、前記陽極酸化構造上に付加されて前記キャビティを封止する。
【0025】
この実施形態において、犠牲層は、多結晶SiGe、酸化物ベース又は窒化物ベースの膜、ポリマー、単結晶Si、多結晶Siから成る群から選択された材料で構成することができる。この実施形態において、前記基板は、NEMS/MEMSデバイスを含み、該デバイスは前記キャビティ内に封入される。
【0026】
この場合、少なくとも犠牲材料の一部を除去するステップは、封入されたNEMS/MEMSデバイスを損なわない選択的ウェットエッチング又はドライエッチングを使用して実施される。
【0027】
この実施形態において、犠牲層は、シリコン酸化物でもよく、選択的エッチングは、減圧チャンバ内の他のガス、例えば窒素、エタノール蒸気又は水蒸気と混合した気相のフッ化水素(HF)酸を使用して実施してもよい。
【0028】
犠牲層はポリマーベースの材料でもよく、選択的エッチングは、酸素イオンが存在する低圧チャンバ内でのドライプラズマエッチングを使用して実施してもよい。
【0029】
この実施形態において、封止層は、
・導電性層、例えばAl、Cu、Ni、多結晶Si若しくは多結晶SiGe層、
・又は誘電体材料、例えば酸化物ベース若しくは窒化物ベースのシリコン化合物、
・又はポリマー、
・又は2つ以上の材料の組み合わせ若しくは積層体(stack)でもよく、
前記封止層は、低圧チャンバ内での蒸着技術、化学気相成長法(CVD)又は物理気相成長法(PVD)を使用して堆積してもよい。
【0030】
本発明の方法において、陽極酸化可能な層は、金属層又は半導体層でもよい。前記陽極酸化可能な層は、Al、Ta、Ti、Cu、Ni、多結晶Si、多結晶SiGeから成る群から選択してもよい。
【0031】
本発明の方法において、マスク構造は、感光性層のフォトリソグラフパターニングによって形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】先行技術において既知の、多孔質皮膜を使用した薄膜MEMSパッケージングの概念図を示す。
【図2】フォトレジストマスクを使用したAl陽極酸化プロセスの横方向の大きな拡張(本発明が解決する課題)を示す。
【図3a】本発明の陽極酸化プロセス中の中間段階を示しており、縦方向陽極酸化が終了する前は、陽極酸化電流は、未だ陽極酸化領域に達する可能性がある。
【図3b】いくつかのマスクを備え、ウエハの周囲に沿って配置された環状電極を設けたウエハの上面である。
【図3c】本発明の陽極酸化プロセスの最終段階を示しており(縦方向陽極酸化は終了している)、境界線は完全に陽極酸化(酸化)されており、該陽極酸化領域周辺に、陽極酸化に必要とされる電荷の更なる供給をブロックする誘電体の絶縁環を形成する
【図4a】図4a〜図4dは、本発明の実施形態に係るNEMS/MEMSデバイスの薄膜パッケージングについて、マスク陽極酸化プロセスを使用するための好適なプロセスフローにおけるさまざまなステップを示す。図4aは、NEMS/MEMS構造及び相互接続部を覆う犠牲層の上部に金属層を堆積するステップを示す。
【図4b】マスク陽極酸化層及び薄いバリア酸化層を除去するステップを示す。
【図4c】犠牲層を除去し、封止層を堆積するステップを示す。
【図4d】電気的アクセスのための金属パッドを覆う層を除去するステップと、最終のNEMS/MEMSデバイスの封入を示す。
【図5】アルミニウム層の陽極酸化によって形成される細孔、及び該細孔の底部で形成される酸化バリア層の形状を示す。
【図6】本発明に係る環状構造を規定するマスクデザインの例を示す。
【0033】
図面は概略的なものに過ぎず、限定的でない。図面において、いくつかのエレメントの大きさは、説明目的のため、誇張し、及びスケールどおり描いていないことがある。請求項中のどの参照符号も、範囲を限定するものと解釈すべきでない。異なる図面において、同じ参照符号は同一又は類似のエレメントを参照する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の態様に従って、均一で制御可能な、マスク陽極酸化を提供するための方法であって、前記方法は少なくとも、
基板(10,11)を準備する(即ち、供給する、又は製造する)ステップと、
前記基板上に、陽極酸化可能な層(12)を設けるステップと、
前記陽極酸化可能な層(12)上に、陽極酸化される1つ以上の第1構造(21)の寸法を規定する少なくとも1つの第1マスク(20)、及び陽極酸化される第2構造(23)を規定する第2マスク(22)を設けるステップと、
第1マスク(20)及び第2マスク(22)によって規定される領域内で、前記陽極酸化可能な層を陽極酸化し、陽極酸化構造(21,23)を作成するステップと、
マスク構造(20,22)を除去するステップとを含み、
前記第2構造は、前記第1構造(21)を包囲する(図3を参照)。
【0035】
図3aはまた、基板10を示す。本実施形態において(本発明の技術的範囲を限定するものではないが)、誘電体層11を基板上に堆積する。該誘電体層11は、例えば犠牲層でもよい。層12は皮膜層であり、層13はマスク層であり、好ましくはパターニングしたフォトレジスト層である。本発明に従って、マスク層は、少なくとも第1マスク20を有し、陽極酸化される領域21を規定する。マスク層はさらに、陽極酸化される前記1つ以上の第1領域21を包囲する領域23を規定する第2マスク22を有し、前記領域21の周囲に、閉環構造(必ずしも円形とは限らない)を形成する。図3bは、陽極酸化される領域21を規定する複数のマスク20を有するマスク層13を表面上で保持する半導体ウエハ30の上面図を示す。各マスク20の周囲で(従って、領域21の各群の周囲で)、マスク層は、マスク20を包囲する、陽極酸化される環構造23を規定する。従って、「第2マスク構造」22は、マスク層13全体からマスク構造20を除いたものに一致する。
【0036】
ウエハのエッジ30に沿って電極31を配置する。該電極31は、陽極酸化される層12(好ましくは金属層、以下を参照)と電気的に接触する。電極31は、陽極酸化中、アノードの役割を果たすことになる。この集合体を、電解液で満ちた陽極酸化浴に浸す。第2電極(カソード)は、陽極酸化浴の一部(好ましくは、ウエハの前面、即ちマスク20,22を支持する面に対向し、陽極酸化浴に浸した、金属板)である。陽極酸化が開始すると、電荷は、図3a及び図3bに矢印32で示した方向に流れる。即ち、ウエハの外エッジ30及び各マスク20の外エッジから開始して、中央へ向かって流れる。
【0037】
図3aは、本発明の陽極酸化プロセス中の中間段階を示しており、陽極酸化電流(
電荷の流れ)は、縦方向の陽極酸化が終了する前に、さらに陽極酸化領域21に達する可能性がある。図3cは、本発明の陽極酸化プロセスの最終段階(縦方向の酸化が終了した時点)を示しており、環構造23は、完全に陽極酸化(酸化)されて境界線として作用し、そして陽極酸化領域21の周囲に誘電体絶縁環を形成する。該環構造23は、陽極酸化に必要とされる電荷の更なる供給をブロックする。
【0038】
実施形態に従って、陽極酸化層12として使用するための材料は、金属層、又はAl、Ta、Ti、Cu、Ni、多結晶Si、多結晶SiGeなどから選択される半導体層でもよい。例えば、低温で実施するスパッタリングプロセスを使用することによって堆積した、厚さ約0.5〜10μmのアルミニウム層を使用してもよい。陽極酸化に先立って、脱イオン水の超音波浴内に置くことで、Al層を洗浄してもよい。
【0039】
実施形態に従って、第1マスク構造20及び第2マスク構造22を、最先端の感光層(レジスト)のフォトリソグラフィックパターニングによって形成してもよい。フォトレジスト(感光層)を使用する利点は、別のマスク材料の堆積及びパターニング(化学エッチング又は物理エッチングによって)を含む他の技術と比較した場合の、マスク構造を形成する容易さである。
【0040】
実施形態に従って、前記陽極酸化可能な層12を陽極酸化するステップは、多孔質(金属)層の形成につながるだろう。前記多孔質層における細孔(ホール)は、幅の10倍以上の長さを有してもよい。幅は、5〜200nmの範囲にあって例えば20nmであり、又は20nm〜200nmの範囲にあり、又は5〜20nmの範囲にある。
【0041】
実施形態に従って、前記陽極酸化可能な(金属)層12を陽極酸化するステップは、1ステップの陽極酸化プロセスによって実施してもよい。前述のように、前記1ステップ陽極酸化プロセスは、基板を電解液に挿入し、前記基板に電圧(又は電流)を印加することによって実施してもよい。前記電解液は、硫酸、リン酸、シュウ酸、フッ化水素酸、エタノール、イソプロピルアルコール若しくはこれらの化学物質の混合物又は他の化学物質でもよい。5〜200Vの範囲の電圧を印加することによって、ランダムに、又は六角形配置で分布した、陽極酸化可能な(金属)層の表面上に細孔を形成する。細孔のよりよい六角形配置を達成するために、多孔質層について最大の体積膨張因子に達するように、最適化したプロセス条件(陽極酸化電圧、電解液及び温度)を選択するべきである。
【0042】
実施形態に従って、前記陽極酸化可能な(金属)層12を陽極酸化するステップは、2ステップの陽極酸化プロセスによって実施してもよい。前記2ステップ陽極酸化プロセスは、最初、陽極酸化可能な(金属)層12の表面をパターン化する、短い陽極酸化ステップを適用することによって実施してもよい。次に、このパターン化した表面は、第2陽極酸化ステップのための自己集積化した標識(mark)として作用する[論文:メイら、"Formation mechanism of alumina nanotubes and nanowires from highly ordered porous anodic alumina template," Journal of Applied Physics, Vol. 97, 034305 (2005)]。第1陽極酸化層をエッチング除去した後の、広範囲の第2陽極酸化ステップは、セル(cell)配置の規則性を改善するだけでなく、欠陥及び転移の数を減少させる。第3陽極酸化ステップは、細孔の配列及び好適に配列した領域の大きさをあまり改善しない。
【0043】
実施形態に従って、陽極酸化可能な(金属)層の陽極酸化を達成するために印加する電圧は、基板上の陽極酸化可能な(金属)層と、電解液又は該電解液中の参照電極との間に印加する。陽極酸化するために印加する電圧は、数ボルト〜数百ボルトである。例えば、20℃〜40℃の範囲内の温度の硫酸ベースの電解液中で陽極酸化を実施する場合、20Vの電圧が使用可能である。
【0044】
実施形態に従って、追加構造23の陽極酸化(縦方向の陽極酸化)が終了する際に、前記追加構造は、陽極酸化に必要とされる電荷の更なる供給をブロックし、追加構造23に包囲された陽極酸化構造21の不要な拡張を避ける誘電体絶縁環として作用する保護構造23を形成する。
【0045】
実施形態に従って、陽極酸化可能な(金属)層はアルミニウム層であり、陽極酸化プロセス条件、例えば陽極酸化電圧、陽極酸化温度及び酸濃度などを、所定の電極について最適化してもよい。多孔質のアルミニウム酸化物(AlO)皮膜の合成は、スパッタ堆積又は蒸着したAl膜から開始可能である。選択する主な陽極酸化パラメータは、電解液の種類に依存する。なぜなら、電解液の種類は、細孔の直径、細孔間の距離、電圧及び温度、並びに陽極酸化ステップの順序に影響を与えるからである。陽極酸化は、導電性参照電極を挿入する、ガラスベース又はテフロン(登録商標)ベースのチャンバ内で起こるだろう。陽極酸化電解液との接触から基板のエッジ及び後面を保護するテフロンベース又はポリマーベースのホルダを用いて、陽極酸化される金属層12を支持する基板30を陽極酸化チャンバ内に挿入してもよい。陽極酸化プロセスは、参照電極と基板上の陽極酸化可能な(金属)層12との間に、陽極酸化電圧(電流)を印加することによって実施してもよい。縦方向の陽極酸化が一旦終了し、絶縁環23(境界線)が追加のマスク構造22内に形成されると、陽極酸化プロセスは、電荷が絶縁環を通って移動できないことに起因して自動的にストップする。
【0046】
本発明の更なる態様に従って、半導体デバイス内のキャビティを(密閉)封止し、先の実施形態で説明した、均一で制御可能な、マスク陽極酸化プロセスを使用するための方法を提供する。前記方法は、
基板上に犠牲層(40)を設けるステップと、
該犠牲層(40)の上部に、0.5ミクロンより大きい厚さを有する金属皮膜層(41)を設けるステップと、
前記金属層(41)上に、陽極酸化される第1構造43の寸法を規定する第1マスク((42)を設けるステップと、
前記金属層(41)を陽極酸化して、前記多孔質の金属酸化物層(43)の前面から前記多孔質の金属酸化物層(43)の後面に向かって延びる細孔(ホール)を有する多孔質の金属酸化物層(43)を形成するステップと、
多孔質の金属酸化物層(43)を通じて、マスク構造及び少なくとも犠牲層(40)の一部を除去し、マイクロキャビティ(44)を形成するステップと、
封止層45を用いて前記多孔質層の細孔を封止(閉鎖)して、(密閉)封止したキャビティ(44)を形成するステップとを含み、
前記マイクロキャビティは、前記犠牲層(40)に位置し、
前記基板は、ベース基板10と、誘電体層11と、MEMS又はNEMSデバイス50とを備え、
前記犠牲層(40)には、前記デバイス50との電気接続構造51が設けられており、
前記寸法は、キャビティ及び前記第1構造(43)を包囲する、陽極酸化構造(不図示)を規定する追加の第2マスクの寸法に対応する。
【0047】
図4a〜図4dは、NEMS/MEMSデバイスの薄膜パッケージングに対してマスク陽極酸化プロセスを使用するための、好適なプロセスフローにおけるさまざまなステップを示している。
【0048】
実施形態に従って、基板(10,11,50,51)及び犠牲層(40)は、半導体加工、より明確にはNEMS/MEMS加工と一緒に使用し、該加工に適合するいずれの基板及び層でもよい。使用する基板の例は、例えば単結晶Si又は多結晶Si、単結晶Ge又は多結晶Ge、ガラス、石英、ポリマーなどでもよい。
【0049】
図のように、壊れやすいデバイス50をキャビティ内に配置してもよい。前記壊れやすいデバイスは、真空又は制御された雰囲気及び圧力封入を必要とするいずれのNEMS/MEMSデバイスでもよい。
【0050】
実施形態に従って、犠牲層40は、多結晶SiGe、酸化物ベース又は窒化物ベースの膜、ポリマー、単結晶Si又は多結晶Siなどから選択される材料でできていてもよい。前記犠牲材料は、封入されたNEMS/MEMSデバイスを大きくは損なわないウェットエッチング又はドライエッチング技術(選択的エッチング)を使用して除去可能な材料でもよい。例えば、シリコン酸化物犠牲層40は、減圧チャンバ内で、他のガス(例えば窒素及びエタノール蒸気又は水蒸気)と混合した気相フッ化水素(HF)酸によって除去可能することができる。かかる希釈した気相HFの混合物は、NEMS/MEMSデバイスと反応しないで犠牲シリコン酸化物層を除去することができ、又はキャビティを包囲する多孔質層を除去することができる。
【0051】
実施形態に従って、犠牲材料40は、前記皮膜層41の下に存在するキャビティ44を満たしている。さらに、キャビティは、NEMS/MEMSデバイス50を含むことができ、その機能及び構造は、前記犠牲材料エッチング液に不活性である。それは、壊れやすい物体を備えることができ、デバイスの適正な動作及び寿命を保証するための閉鎖プロセス中には、該物体上にいずれの材料も実質的に堆積することができない。特定の実施形態において、キャビティ44は、前記細孔、及び選択的に通気孔(不図示)を除いて閉鎖する。通気孔は、キャビティと外側とをつなぐ追加のホールである。
【0052】
実施形態に従って、金属層41として使用するための材料は、Al、Ta、Ti、Cu、Ni、多結晶Si、多結晶SiGeなどから選択した金属層又は半導体層でもよい。例えば、厚さ約0.5〜10μmのアルミニウム層を、低温で実施するスパッタリングプロセスによって堆積してもよい。陽極酸化の前に、脱イオン水の超音波浴内に置いて洗浄してもよい。
【0053】
実施形態に従って、前記金属層を陽極酸化して多孔質金属酸化物層を形成するステップにより、多孔質皮膜とも呼ばれる細孔(ホール)を有する層が得られるようにする。前記多孔質皮膜は、前記皮膜内に前主面及び後主面並びに細孔(ホール)を有し(ホールは、一組のサブ表面(sub-surface)相互接続細孔が可能である)、該細孔は、前主面から後主面まで延びる。
【0054】
実施形態に従って、前記多孔質層の細孔(ホール)は、幅の10倍大きい長さを有してもよく、幅は、5〜200nmの範囲、例えば20nm、20nm〜200nmの範囲、又は5〜200nmの範囲を有してもよい。
【0055】
本発明に従って、追加構造の陽極酸化(縦方向の陽極酸化)が終了する場合、陽極酸化に必要となる電荷の更なる供給をブロックし、追加構造が包囲する陽極酸化構造の不要な拡張を避けるNEMS/MEMSデバイスを包囲する誘電体絶縁環として作用するように保護構造を形成する。
【0056】
実施形態に従って、薄い酸化物バリア層は、陽極酸化の後、多孔質酸化物層43の細孔(ホール)の底部に存在してもよく、縦方向の陽極酸化の終了後(陽極酸化電流の停止後)に、陽極酸化電解液中により長い時間ウエハを放置することによって、又はさらに少量のエッチング剤を陽極酸化電解液に追加することによって除去してもよい。これにより、陽極酸化電解液(混合物)及び温度を選択して多孔質酸化物層のスローエッチングを提供することができるので(例えば、アルミニウム酸化物のエッチング液であるリン酸を少量追加することによって)、多孔質層のほんの一部だけをケミカルエッチングすることができる。バリア酸化物層の除去を陽極酸化電解液中で実施する利点は、陽極酸化プロセスの終了時に、細孔(ホール)の内部表面が既に浸されており、細孔底部へのエッチング剤の進入が容易になることである。代替として、酸化物バリア層は、陽極酸化ステップの後のウェット又はドライケミカルエッチングステップによって除去してもよい。ここで、多孔質アルミニウム酸化物は疎水性を有し、エッチング剤が狭い細孔を貫通してバリア酸化物層に達するのを妨げる可能性があるので、ウェットエッチング技術の使用を試みる場合は困難が予想される。
【0057】
図5aは、上述のバリア層を示す。本図は、図3cに示す陽極酸化領域内の細孔60の伸長した形状を示す。バリア層は、細孔60の底部にある少量の酸化物61によって形成される。陽極酸化電流が停止した後、陽極酸化浴内に基板を所定の時間放置することにより、該浴内の追加のエッチング液が確実にバリア層を除去する(図5b参照)。
【0058】
実施形態に従って、多孔質Al層(皮膜)の下の犠牲材料40を除去するステップは、前記多孔質層43の細孔60(ホール)を通じて前記犠牲材料を少なくとも部分的に除去(エッチング除去)するまでは、エッチング液を使用して実施してもよい。犠牲材料は、酸化物ベースの化合物(例えばSiO)でもよく、この材料の除去は、犠牲材料のエッチング液(例えばフッ化水素酸)の蒸気、及び他のガス、例えばエタノール蒸気、窒素又は水蒸気を含むガスの混合物を含んだ減圧チャンバ内で実施してもよい。代替として、犠牲層40は、ポリマーベースの材料、例えばフォトレジストでもよく、酸素イオンの存在する減圧チャンバ内でのドライプラズマエッチングにより、前記多孔質層43の細孔を通じて除去することができる。犠牲材料の除去により、NEMS/MEMS構造を受入れる(host)のに使用可能なキャビティ44が得られる。
【0059】
実施形態に従って、低圧チャンバ内での蒸着技術又は化学気相成長法(CVD)若しくは物理気相成長法(PVD)を用いて封止層45を堆積してもよい。前記封止層45は、導電性層、例えばAl、Cu、Ni、多結晶Si又は多結晶SiGeでもよい。代替として、封止層45は、誘電体材料、例えば酸化物若しくは窒化物ベースのシリコン化合物又はポリマーでもよい。代替として、封止層は2つ以上の材料の組み合わせ又は積層体でもよい。多孔質皮膜43の細孔60の非常に大きいアスペクト比が、NEMS/MEMS構造50上での封止層45の堆積を妨げ、その結果NEMS/MEMS構造の損傷又は改変を妨げる。封止層の堆積により、NEMS/MEMSデバイスを受入れ可能な封止キャビティ44が得られる。
【0060】
実施形態に従って、封止層を堆積するのに使用するチャンバ内に存在するガス及び圧力を制御することによって、制御された雰囲気及び圧力下でキャビティ44を封止してもよい。封止層は細孔(ホール)60を順に閉鎖し、これが制御された雰囲気及び圧力を有する封止キャビティ44の形成につながる。
【0061】
(定義)
本発明の実施形態において、用語「制御された雰囲気」は、周囲ガスの制御された組成を意味する。「水平(horizontal)」という概念は、重量場、例えば地球の重量場の方向に実質的に垂直な方向と定義する。
【0062】
本開示において、「原則として、どの材料も開口部を通過しない」という概念は、「開口部に入る、及び/又は開口部を通過する材料の量はゼロである、又は限られている」と理解するべきである。壊れやすいデバイスを備えたキャビティの封止との関連で、好適なデバイスの動作は、通過する限られた量の材料に影響を受けないようにする必要がある。
【0063】
本開示において、用語「マイクロ電気機械システム」及び「ナノ電気機械システム」
(NEMS/MEMS)は、電気的機能及び非電気的(例えば機械的)機能の両方を有する微小なシステムを指す。NEMS/MEMSデバイスの例は、インクジェットプリンタのヘッド、微小機械式スイッチ及び加速度計(例えば車のエアバッグのための)及びジャイロスコープ(例えば車のロールオーバ検出のための)を含む応用のためのセンサである。
【0064】
本開示において、用語「ゼロレベルパッケージング」は、個々のNEMS/MEMS構造をダイシングする前の、ウエハレベルでのNEMS/MEMS構造の封入を指す。NEMS/MEMS構造それ自体は、しばしば自立していて壊れやすいので、それらは、ウエハレベルで封入して、ウエハのダイシング及び使用中の損傷を避ける必要がある。加えて、多孔質薄膜(皮膜)は、前記封入物の一部でもよい。好ましくは、皮膜はNEMS/MEMSデバイスの上方に直接設ける。皮膜を通じて犠牲層(NEMS/MEMS構造を包囲する)を除去した後、皮膜を封止して所望のゼロレベル封入をもたらし、キャビティ中に所望の圧力の必要とされる雰囲気を封入する。本アプローチの一利点は、それが、既在のアプローチと比較して、パッケージしたデバイスの厚さ及び面積を減少させることである。
【実施例】
【0065】
例として、いくつかの更なる実施例を以下で説明し、本発明に係る実施形態の特徴及び利点を示す。但し、本発明の実施形態はそれに限定されることはない。
【0066】
第1の実施例において、厚さ1μmのAl層(200mmのSiウエハ上にあるシリコン酸化層の上部にスパッタリングによって堆積した)の陽極酸化は、図2に示す160μm〜800μmの陽極酸化領域幅の不要な大きい拡張をもたらす境界線構造を含まないフォトレジストマスクを使用して実施した。陽極酸化プロセスは、硫酸ベースの電解液を保管するテフロンベースのチャンバ内で実施する。ここで使用する陽極酸化温度及び陽極酸化電圧は、それぞれ20〜30℃、10〜20Vの範囲内である。図6に示すような他の複数の構造21を包囲する境界線23(環)を規定するフォトレジストマスクを使用したAl層の同じ陽極酸化プロセスを実施することによって、陽極酸化領域幅は、陽極酸化領域21のエッジの横方向の拡張を約6μmしか生じないフォトレジストマスクにより、好適に制御されてきた。これは、領域25において、フォトレジストのアンダーカットが実質的に起こらないことを意味している。これは、陽極酸化領域を包囲する境界線(環)を含む単純なフォトレジストマスクを使用する、陽極酸化プロセスの優れたコントロールの実例であり、また、本発明に係る実施形態の利点を示している。
【0067】
第2の実施例において、薄膜真空パッケージは、本発明の実施形態及び図4a〜図4dのプロセスフローに従い、次のステップに従って構成した。
1.200mmのSiウエハ(10+11)の上部での、厚さ3μmのシリコン酸化物層の堆積及びパターニング。
2.図4aに示す、犠牲層の上部での、厚さ1.5μmのAl層41のスパッタ堆積。
3.図4bに示す、定電圧20Vを印加することによる、30℃の硫酸ベースの電解液中での、フォトレジストマスク42を使用したAl層のマスク陽極酸化。
4.縦方向陽極酸化プロセスが終了し、陽極酸化電流が停止する際に、生じる多孔質AlO構造43を陽極酸化電解液中に20〜30分放置することで、AlO層のわずか一部をウェットケミカルエッチングし、細孔(ホール)底部に存在するバリアAlO層61を(少なくとも部分的に)除去することができる(図5参照)。
5.ウエハを低圧チャンバ内に配置し、HF蒸気、エタノール蒸気及び窒素の混合物に曝し、多孔質AlO構造43の下にある犠牲層40を除去する結果、図4cに示すようなキャビティ44が得られる。
6.図4cに示すように、PECVD技術を使用して、厚さ4μmのシリコン窒化物層45の堆積によって真空チャンバ内でキャビティ44を封止する結果、図4dに示すように、薄膜真空パッケージが得られる。
【0068】
本発明は、図面及び先の説明において、詳細に図示され、説明されているが、かかる図示及び説明は、説明目的又は例示的なものであり、限定的と考えるべきではない。本発明は、開示した実施形態に限定されない。開示した実施形態に対する他の変形が、図面、開示内容及び添付した請求項の研究から、請求項の発明を実施する際に、当業者によって理解され達成されるであろう。請求項において、「備える、含む」(comprising)は、他のエレメント又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの」(a又はan)は複数を除外しない。単一の処理装置又は他のユニットは、請求項で記載した種々の項目の機能を達成するであろう。ある手段が異なる従属請求項に相互に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用することができないことを言うものではない。請求項におけるどの参照符号も範囲を狭く限定するものと解釈すべきでない。
【0069】
先の説明は、本発明の特定の実施形態を詳細に述べている。しかしながら、どれほど詳細に先の説明を明細書にて行っても、本発明は多くの方法で実施でき、また開示した実施形態に限定されないことが理解されるだろう。本発明のある特徴又は態様を述べる場合の特定の用語の使用は、その用語が関係する本発明の特徴又は態様のいかなる特定の特徴も含むように限定するように、その用語が本明細書で再定義されるということを暗示するように取られるべきではないことに注目すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10,11)を準備するステップと、
前記基板上に、陽極酸化可能な層(12)を設けるステップと、
前記陽極酸化可能な層上に、少なくとも、陽極酸化される1つ以上の第1構造(21)を規定する第1マスク(20)、及び陽極酸化される第2構造(23)を規定する追加の第2マスク(22)を設けるステップと、
第1マスク及び第2マスク(20,22)によって規定される領域内で、前記陽極酸化可能な層(12)を陽極酸化し、陽極酸化構造(21,23)を作成するステップと、
第1マスク及び第2マスク(20,22)を除去するステップとを含み、
前記第2構造は、前記1つ以上の第1構造(21)を包囲するようにした方法。
【請求項2】
前記陽極酸化可能な層(12)を陽極酸化するステップは、電解液中に基板を挿入し、前記基板に電圧(又は電流)を印加することによって実施される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記陽極酸化可能な層を陽極酸化するステップは、第1陽極酸化層を形成するための第1陽極酸化ステップと、それに続く第1陽極酸化層をエッチング除去した後の第2陽極酸化ステップとを含む、2ステップ陽極酸化プロセスを使用して実施される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
陽極酸化するステップは、硫酸、リン酸、シュウ酸、フッ化水素酸、エタノール、イソプロピルアルコール及びこれらの化学物質の混合物から成る群から選択される電解液中に基板を挿入することにより実施される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記陽極酸化するステップは、前記陽極酸化構造(21)において伸長した細孔(60)を製造し、前記細孔は、前記陽極酸化可能な層(12)の前面から後面まで延びる請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
陽極酸化可能な層(12)はAl層であり、陽極酸化するステップは、20℃〜40℃の範囲にある温度の硫酸ベースの電解液中に基板を挿入し、約20Vの電圧を印加することによって実施される請求項5記載の方法。
【請求項7】
陽極酸化可能な層(12)は、陽極酸化されて金属酸化物層を形成する金属層であり、
前記陽極酸化浴は、前記酸化物をエッチングするのに好適なエッチング液を含み、
前記陽極酸化ステップは、前記電圧が印加される間の第1時間間隔と、前記第1時間間隔に続く第2時間間隔とを含み、
前記電圧は、前記第1時間間隔の終わりで取り除かれ、
前記第2時間間隔中、基板は前記浴に放置され、それにより、前記細孔(60)の底部でバリア層(61)が除去されるようにした請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記金属はアルミニウムであり、前記エッチング液はリン酸である請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記基板を準備するステップは、犠牲層(40)をベース基板(10,11,50,51)上に堆積することを含み、
陽極酸化可能な層(41)は、前記犠牲層(40)上に設けられ、
前記第1マスク(42)は、陽極酸化構造(43)を規定し、
前記陽極酸化するステップは、前記陽極酸化構造において、伸長した細孔(60)を製造し、
前記細孔は、前記陽極酸化可能な層の前面から後面まで延び、
少なくとも犠牲層(40)の一部が、キャビティ(44)を形成するために、前記細孔を通じて除去され、
封止層(45)が、前記陽極酸化構造(43)上に付加されて前記キャビティ(44)を封止する請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
犠牲層(40)は、多結晶SiGe、酸化物ベース又は窒化物ベースの膜、ポリマー、単結晶Si、多結晶Siから成る群から選択される材料から成る請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記基板は、NEMS/MEMSデバイス(50)を含み、該デバイスは前記キャビティ(44)内に封入される請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも犠牲材料(40)の一部を除去するステップは、封入されたNEMS/MEMSデバイス(50)を損なわない選択的ウェットエッチング又はドライエッチングを使用して実施される請求項11記載の方法。
【請求項13】
犠牲層(40)はシリコン酸化物であり、選択的エッチングは、減圧チャンバ内の他のガス、例えば窒素、エタノール蒸気又は水蒸気と混合した気相のフッ化水素(HF)酸を使用して実施される請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
犠牲層(40)はポリマーベースの材料であり、選択的エッチングは、酸素イオンが存在する低圧チャンバ内でのドライプラズマエッチングを使用して実施される請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
封止層(45)は、
導電性層、例えばAl、Cu、Ni、多結晶Si若しくは多結晶SiGe層、
又は誘電体材料、例えば酸化物ベース若しくは窒化物ベースのシリコン化合物、
又はポリマー、
又は2つ以上の材料の組み合わせ若しくは積層体であり、
前記封止層は、低圧チャンバ内での蒸着技術、化学気相成長法(CVD)又は物理気相成長法(PVD)を使用して堆積される請求項9〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
陽極酸化可能な層は、金属層又は半導体層である請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
陽極酸化可能な層は、Al、Ta、Ti、Cu、Ni、多結晶Si、多結晶SiGeから成る群から選択される請求項16記載の方法。
【請求項18】
マスク構造は、感光性層のフォトリソグラフィックパターニングによって形成される請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−117144(P2012−117144A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−90274(P2011−90274)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(591060898)アイメック (302)
【氏名又は名称原語表記】IMEC
【出願人】(599098493)カトリーケ・ウニフェルジテイト・ルーベン・カー・イュー・ルーベン・アール・アンド・ディ (83)
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven,K.U.Leuven R&D
【Fターム(参考)】