説明

歩行支援装置

【課題】ユーザに違和感を与えることなく歩行動作を歩行支援装置を提供する。
【解決手段】歩行支援装置100は、ユーザの下肢に装着される下肢リンク12、足に装着される足リンク20を備える。足リンク20はジョイント14によって下肢リンク12に揺動可能に連結されている。足リンク20は、モータ16によって揺動する。モータ16はコントローラ10によって制御される。足リンク20には、足が接地しているか否かを検知する接地センサ22が備えられている。コントローラ10は、接地センサ22の出力に基づいて脚が遊脚期間にあるか立脚期間にあるかを判定する。そして、コントローラ10は、立脚期間には出力トルクが目標トルクに一致するようにモータ16をトルク制御する。他方コントローラ10は、遊脚期間には足リンク20の揺動角度が目標角度に一致するようにモータ16を角度制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの歩行動作を支援する歩行支援装置に関する。特に、足首関節の動きを支援する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脚の関節にトルクを加えて歩行動作を支援する装置が開発されている。そのような歩行支援装置の一つに、足首関節にトルクを加える装置がある(特許文献1参照)。特許文献1の装置は、ユーザの下肢と足にそれぞれ装着される下肢リンクと足リンクを備えている。足リンクは、アクチュエータによって底背屈する。この装置はさらに、足底に圧センサを備えている。この装置は、圧センサによって足が接地しているか否かを検知し、その結果によってユーザの歩行周期の位相を判断する。そして、位相に応じてアクチュエータを制御し、足首関節を底背屈させる。特許文献1において「位相」とは、踵接地、足底接地、立脚中期、踵離地、足尖離地、遊脚初期、及び、遊脚後期のいずれかの状態を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、位相に応じて足リンクの揺動角度が所定の目標角度に一致するようにアクチュエータを制御する。即ち、特許文献1の装置は、アクチュエータを角度制御する。発明者らの検討によると、遊脚期間においては角度制御でよいが、立脚期間においては角度制御ではユーザに違和感を与える可能性があることが判明した。ユーザが意図する足首関節の動きと、アクチュエータの動きとの間にずれが生じるとユーザに違和感を与える。本発明は、上記課題に鑑みて創作された。本発明は、ユーザに違和感を与えることなく歩行動作、特に足首関節の動きを支援する装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する新規な歩行支援装置は、ユーザの下肢(下腿)に装着される下肢リンクとユーザの足に装着される足リンクを備える。足リンクはジョイントによって下肢リンクに揺動可能に連結されている。ジョイントは、ユーザが下肢リンクと足リンクを装着すると足首ピッチ軸と同軸に位置する。足リンクは、アクチュエータによって揺動(底背屈)する。アクチュエータはコントローラによって制御される。足リンクには、足が接地しているか否かを検知する接地センサが備えられている。コントローラは、接地センサの出力に基づいて脚が遊脚期間にあるか立脚期間にあるかを判定する。そして、コントローラは、立脚期間にはアクチュエータの出力トルクが目標トルクに一致するようにアクチュエータをトルク制御する。コントローラは例えば、立脚期間には足リンクの揺動の向きとは反対の向きに一定のトルクを発生するようにアクチュエータをトルク制御する。他方コントローラは、遊脚期間には下肢リンクに対する足リンクの揺動角度が目標角度に一致するようにアクチュエータを角度制御する。
【0006】
上記の歩行支援装置のコントローラは、遊脚期間は足リンクを角度制御する。望ましくは、コントローラは、遊脚期間は下肢リンクと足リンクのなす角度が略直角となるように足リンクを角度制御する。そのような制御により、遊脚期間において足先が下方へ垂れ下がることが防止される。遊脚の足先と歩行面との間のクリアランスを確保でき、ユーザが躓かないようにする。
【0007】
他方、コントローラは、立脚期間は足リンクをトルク制御する。アクチュエータが発生するトルクの向きは、足リンクの揺動の向きとは反対方向である。そのような制御により、脚を倒れ難くすることができる。即ちそのような制御は、ユーザを転倒に難くさせ、安定感を与えることができる。立脚期間はトルク制御であるので、アクチュエータが発生するトルクは揺動角度に依存しない。そのため、ユーザが意図する足首関節の動き(即ち、ユーザが合わせようとする揺動角度)と、アクチュエータの動き(アクチュエータの制御目標角度)との間にずれが生じることがなく、ユーザにさほど違和感を与えない。トルク制御の具体例の詳細については後述する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザに違和感を与えることなく歩行動作を支援する装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】歩行支援装置の模式図を示す。
【図2】歩行支援装置の制御フローチャートを示す。
【図3】揺動角度とトルクの変化を示すグラフである。
【実施例】
【0010】
図面を参照して実施例の歩行支援装置を説明する。図1は、本実施例の歩行支援装置100の模式的側面図である。以下、「歩行支援装置100」を単に「支援装置100」と略称する。支援装置100は、主な構成部品として、下肢リンク12、足リンク20、及び、ジョイント14を備えている。下肢リンク12と足リンク20はジョイント14によって連結されている。下肢リンク12はユーザの下肢に装着され、足リンク20はユーザの足に装着される。なお、本明細書における「下肢」は、膝と足首の間の部分を意味する。
【0011】
ユーザが支援装置100を装着すると、ジョイント14は足首関節のピッチ軸と同軸に位置する。ピッチ軸とは、ユーザの体側方向(ラテラル方向)に伸びる軸を意味する。ジョイント14にはモータ16(アクチュエータ)とエンコーダ18が内蔵されている。支援装置100は、モータ16の駆動力によって足リンク20に背屈方向或いは底屈方向のトルクを加えることができる。モータ16の出力トルクが外力に抗する程に大きければ、足リンク20は揺動する。エンコーダ18は、足リンク20の揺動角度を計測する。コントローラ10が、エンコーダ18及び、後述する接地センサ22のセンサデータに基づいてモータ16を制御する。
【0012】
足リンク20の底面には3個の接地センサ22(22a、22b、及び、22c)が取り付けられている。接地センサ22aは、つま先に相当する部分に配置されている。接地センサ22bは、拇指球に相当する部分に配置されている。接地センサ22cは、踵に相当する部分に配置されている。接地センサ22a、22b、及び、22cは、それぞれの位置が接地しているか否かを検知する。各接地センサは、接地を検知しているときにはON信号を出力し、接地を検知していない場合にはOFF信号を出力する。「接地を検知していない場合」とは、別言すれば「非接地を検知している」ということである。接地センサ22のセンサデータはコントローラ10に送られる。
【0013】
図1の他の符号について説明する。符号Asは、足リンク20の揺動角度を示す。揺動角度Asは、下肢の長手方向に沿って伸びる直線から足底面までの角度で表される。揺動角度As符号は、下肢から下肢前方へ向かう向きを正とする。別言すれば、底屈方向を正とし、背屈方向を負とする。図1の状態は揺動角度Asがほぼ直角の状態を示している。揺動角度Asは、エンコーダ18によって計測される。符号Tsは、モータ16の出力トルクを示す。トルクTsの向きも、揺動角度Asと同様に、下肢から下肢前方へ向かう向き(底屈方向)を正とする。
【0014】
この支援装置100は、モータ16の動力によって足のピッチ軸周りの揺動を補助する。別言すれば、支援装置100は、ユーザの足首関節にトルクを加えてユーザの足の動きを補助する。詳しくは後述するが、支援装置100は、支援装置100を装着している脚が遊脚期間にある場合には足リンク20の揺動角度を所定の目標角度に追従させる角度制御を実行し、立脚期間にある場合にはジョイント14が足首関節に加えるトルクを目標トルクに追従させるトルク制御を実行する。なお、足の動きを補助する装置は、短下肢装具(AFO:Ankle Foot Orthosis)と呼ばれることがある。
【0015】
コントローラ10の制御ルールについて説明する。図2にコントローラ10が実行する処理のフローチャートを示す。図2のフローチャートの処理は制御周期毎に実行される。コントローラ10はまず、エンコーダ18と接地センサ22からセンサデータを取得する(S2)。コントローラ10は、接地センサ22のセンサデータから脚が遊脚期間にあるか立脚期間にあるかを判断する(S4)。ここでコントローラ10は、3個の接地センサ22a、22b、及び22cのいずれか1個でも接地を検知していれば脚が立脚期間にあると判断する。逆にコントローラ10は、3個全ての接地センサ22が接地を検知していない場合(非接地を検知している場合)、脚が遊脚期間にあると判断する。
【0016】
コントローラ10は、脚が遊脚期間にある場合には、モータ16を角度制御する(S6)。他方コントローラ10は、脚が立脚期間にある場合には、モータ16をトルク制御する(S8)。
【0017】
コントローラ10が実行する制御ルールについて詳しく説明する。コントローラ10は、遊脚期間と立脚期間で異なる制御を実行するが、遊脚期間の制御ルールと立脚期間の制御ルールは次の(数1)で統一的に表される。
【0018】
【数1】

【0019】
(数1)において、Trはモータ16に与える指令トルク(目標トルク)を表す。Arは、目標角度(目標揺動角度)を表し、dArは目標角速度を表す。Asは前述したようにエンコーダ18によって計測される足リンク20の実際の揺動角度(計測揺動角度)を表す。dAsは、足リンク20の実際の揺動角速度(計測揺動角速度)を表す。計測揺動角速度dAsは、例えば計測揺動角度Asの時間差分によって求められてよい。Kp、Ki、Kdは夫々比例ゲイン、積分ゲイン、微分ゲインを表す。即ち、(数1)の右辺第1項はフィードバック制御における比例項を表し、第2項は積分項を表し、第3項は微分項を表す。(数1)の右辺第1項から第3項まででいわゆるPIDフィードバック制御ルールが構成される。
【0020】
(数1)の右辺第4項は、トルク制御の際に用いる項である。「sgn(dAs)」は、dAsが正値のときに「+1」を返し、dAsが負値のときには「−1」を返すいわゆる符号関数(signature function)である。符号Tcは、目標トルクの大きさを表す定数であり、ここでは「目標トルク値」と称する。右辺第4項は、足リンク20の揺動方向とは逆を向く指令トルクを生成する。
【0021】
角度制御について説明する。コントローラ10は、脚が遊脚期間にある場合は、(数1)において目標トルク値Tcにゼロを代入する。そうすると、(数1)は、足リンク20の計測揺動角度Asを目標角度Arに一致させるPID角度制御ルールに相当する。目標角度Arは、90度に設定される。この角度制御は、遊脚期間において足先が下方へ垂れ下がることを防止する。これによって足先と歩行面との間のクリアランスを確保でき、ユーザが躓かないようにすることができる。
【0022】
トルク制御について説明する。コントローラ10は、脚が立脚期間にある場合は、(数1)においてゲインKp、Ki、Kdにゼロを代入する。そうすると、(数1)は、足リンク20の揺動の向きとは反対の向きに一定の目標トルクTcを発生させるトルク制御ルールに相当する。支援装置100は、立脚期間においてはモータ16をトルク制御するから、立脚期間においては、モータ16の出力トルクは揺動角度に依存しない。即ち、力制御においては目標角度が存在しない。従って、ユーザが意図する足首関節の動き(ユーザが合わせようとする揺動角度)と、モータ16の動作の動き(目標角度)との間にずれが生じることがなく、ユーザにさほど違和感を与えない。なお、コントローラ10は、3個の接地センサ22a、22b、及び22cの出力信号の組み合わせによって目標トルク値Tcを異なる値に切り換える。
【0023】
図3を用いて、目標トルク値Tcの切り換え制御について説明する。図3の上側のグラフは、揺動角度の経時変化を示すグラフであり、下側のグラフは、トルクの経時変化を示すグラフである。なお、Tsはジョイント14が実際に出力するトルク(出力トルク)を示している。いずれのグラフも横軸は時間軸に相当する。
【0024】
トルク制御の説明の前に、歩行時の足接地の経時変化について説明する。歩行動作を詳しく観察すると、次のとおりである。立脚期間の中期には、足裏全体が接地している。立脚期間から遊脚期間に切り換わるときには、まず拇指球とつま先が接地したまま、踵のみが離地する。次に拇指球が離地し、最後につま先が離地する。遊脚期間から立脚期間に切り換わるときには、まず踵だけが接地し、次に拇指球が接地し、最後につま先が接地する。足裏に配置した3個の接地センサ22は、以上の接地/離地シーケンスを検知するために備えられている。
【0025】
図3において、時刻t0は、脚の離床タイミングを示す。時刻t0は、拇指球下と踵下に配置した接地センサ22b、22cの信号がOFF(非接地)を示しており、つま先下に配置した接地センサ22aの信号がONからOFFに変化するタイミングに相当する。時刻t1は、脚の着地タイミングを示す。時刻t1は、踵下に配置した接地センサ22cの信号がOFFからONに切り換わるタイミングに相当する。なお、このとき、つま先下と拇指球下に配置した接地センサ22a、22bはOFF信号を出力している。時刻t2は、踵の接地に続き、拇指球下の接地センサ22bの信号がOFFからONに切り換わるタイミングに相当する。なお、時刻t2に続いてつま先下の接地センサ22aの信号がOFFからONに切り換わる。時刻t3は、拇指球下とつま先下に配置した接地センサ22b、22aの信号がONを維持したまま、踵下の接地センサ22cの信号がONからOFFに切り換わるタイミングに相当する。時刻t4は、脚が再び遊脚に切り換わるタイミングに相当し、時刻t0の場合と同じである。各タイミングはコントローラ10が接地センサのセンサデータに基づいて判断する。
【0026】
コントローラ10は、踵下の接地センサ22cが接地を検知(時刻t1)してから拇指球下の接地センサ22bが接地を検知(時刻t2)するまでの踵接地期間Iと、踵接地期間Iに続き、拇指球下と踵下の接地センサ22b、22cが接地を検知している主接地期間IIを判別する。コントローラ10は、踵接地期間Iでは目標トルク値Tc1を設定し、主接地期間IIでは目標トルク値Tc2を設定する。主接地期間IIにおける目標トルク値の大きさ|Tc2|は、踵接地期間Iにおける目標トルク値の大きさ|Tc1|よりも大きい値に定められている。
【0027】
また、コントローラ10は、主接地期間IIに続き、踵下の接地センサ22cが非接地を検知(時刻t3)してからつま先下の接地センサ22aが非接地を検知(時刻t4)するまでのつま先接地期間IIIを判別する。コントローラ10は、つま先接地期間IIIでは目標トルクを再びTc1に変更する。即ち、主接地期間IIにおける目標トルクの大きさ|Tc2|は、つま先接地期間IIIにおける目標トルクの大きさ|Tc1|よりも大きい値に定められている。
【0028】
出力トルクTsの正負について説明する。踵接地期間I(踵が接地してから拇指球が接地するまでの期間)は、足が底屈方向に揺動する。図1を用いて前述したように、本実施例では底屈方向を正方向に定めている。従って、図3下側のグラフが示すように、踵接地期間Iでは出力トルクは負値となる。主接地期間II(踵接地期間Iに続き、拇指球と踵が接地している期間)は、足全体が接地したまま、踵を中心に下肢が前方へ揺動する。即ち、主接地期間IIでは、足は背屈方向に揺動する。従って、図3下側のグラフが示すように、主接地期間IIでは出力トルクは正値となる。つま先接地期間III(主接地期間IIに続き、踵が離地してからつま先が離地するまでの期間)は、再び足は底屈方向に揺動する。従って、図3下側のグラフが示すように、つま先接地期間IIIでは出力トルクは再び負値となる。いずれの期間にしても、出力トルクは、足の揺動方向とは逆の方向を向く。このことは、(数1)の第4項からも明らかである。なお、上記から明らかであるが、時刻t2で揺動角度Asは最も大きくなる。(足リンク20が最も底屈する)。また、時刻t3で揺動角度Asは最も小さくなる。(足リンク20が最も背屈する)。
【0029】
主接地期間IIは、一本の立脚だけで体を支える期間であり、この期間において立脚はふらつく虞が高い。支援装置100は、この主接地期間IIにおいて絶対値の大きな目標トルク値Tc2を採用する。支援装置100は、主接地期間IIにおいて、下肢の揺動(この期間では足全体が接地しているので相対的に下肢が揺動する)を妨げる向きに大きなトルクを出力し、立脚を安定させる。
【0030】
他方、踵接地期間Iとつま先接地期間IIIは、遊脚期間と立脚期間との間の過渡期である。これらの期間では、足首関節が滑らかに動くことが円滑な歩行動作につながる。支援装置100は、これらの期間では比較的小さい目標トルク値Tc1を採用する。比較的小さい目標トルク値Tc1の採用によって、支援装置100は、足リンク20の揺動角度が急激に変化することを防止しつつ、足リンク20の円滑な動きを許容する。立脚期間において上記の通りに目標トルク値Tcの大きさを適宜に切り換えることによって、支援装置100は、歩行動作を効果的に補助する。具体的には支援装置100は、立脚期間と遊脚期間との間の過渡期には足リンク20の急激な揺動角度変化を防止しつつ、足リンク20の円滑な動きを許容する。他方、支援装置100は、踵と拇指球が接地している間は、下肢の揺動を妨げる向きに大きなトルクを出力して立脚を安定させる。
【0031】
図3についてさらに説明を補足する。遊脚期間では、コントローラ10はモータ16を角度制御する。従って出力トルクTsはコントローラ10にとって不定となる。逆に、立脚期間では、コントローラ10はモータ16をトルク制御するので、足リンク20の揺動角度Asはコントローラ10にとって不定となる。ここで、「出力トルクTsがコントローラ10にとって不定となる」とは、出力トルクの大きさがどの位となるかはコントローラが定めることではなく、ユーザの動作に起因して従属的に定まることを意味する。同様に、「足リンク20の揺動角度Asがコントローラ10にとって不定となる」とは、足リンク20の揺動角度がどの位となるかはコントローラが定めることではなく、ユーザの動作に起因して従属的に定まることを意味する。即ち、遊脚期間においては足首関節に加わるトルクの大きさはユーザが決める事項となり、立脚期間においては、揺動角度はユーザが決める事項となる。遊脚期間においては、トルクの大きさはユーザが決められるが、揺動角度は一定に保たれるので足が下方に垂れ下がることがない。これによって躓くことが防止される。立脚期間においては、ユーザは、下肢が揺らぐのを防止するトルクを受けながらも、揺動角度は自らの意思で決めることができる。これによって、支援装置100が勝手に動作するという感覚をユーザに与えることがない。即ち、ユーザに違和感を与えることがない。
【0032】
また、コントローラ10は、立脚期間において新たな目標トルクを設定する際、目標トルクTcの大きさをゼロから定められた目標トルクの大きさ(Tc1又はTc2)まで漸増させる。そのため、図3に示すように、時刻t1直後、時刻t2直後、及び、時刻t3直後の出力トルクTsの応答がやや緩やかとなっている。このように目標トルクを漸増させる処理によって、出力トルクTsが急激に変化することを防止している。
【0033】
支援装置100についての留意点を述べる。支援装置100は両方の足夫々に装着される一対の装具を備えていてもよいし、いずれか一方の足に装着される一つの装具だけから構成されていてもよい。下肢リンク12と足リンク20を連結するジョイント14は足リンク20のピッチ軸周りの回転を許容するが、足首関節のロール軸周りの揺動は拘束している。「ロール軸」とは、ユーザの前後方向に伸びる軸に相当する。そのようなロール軸周りの拘束によって、支援装置100は、足を挫き難くしている。
【0034】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
10:コントローラ
12:下肢リンク
14:ジョイント
16:モータ(アクチュエータ)
18:エンコーダ
20:足リンク
22a、22b、22c:接地センサ
100:歩行支援装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの歩行動作を補助する歩行支援装置であり、
ユーザの下肢に装着される下肢リンクと、
ユーザの足に装着される足リンクと、
下肢リンクと足リンクがユーザに装着されると足首ピッチ軸と同軸に位置し、足リンクを下肢リンクに揺動可能に連結するジョイントと、
下肢リンクに対して足リンクを揺動させるアクチュエータと、
足が接地しているか否かを検知する接地センサと、
アクチュエータを制御するコントローラとを備えており、
コントローラは、
接地センサの出力に基づいて脚が遊脚期間にあるか立脚期間にあるかを判定し、
立脚期間にはアクチュエータの出力トルクが目標トルクに一致するようにアクチュエータをトルク制御し、遊脚期間には下肢リンクに対する足リンクの揺動角度が目標角度に一致するようにアクチュエータを角度制御することを特徴とする歩行支援装置。
【請求項2】
コントローラは、立脚期間には足リンクの揺動の向きとは反対の向きに一定のトルクを発生するようにアクチュエータをトルク制御することを特徴とする請求項1に記載の歩行支援装置。
【請求項3】
足リンクは、ユーザの踵と拇指球に相当するそれぞれの部分に接地センサを備えており、
コントローラは、踵の接地センサが接地を検知してから拇指球の接地センサが接地を検知するまでの踵接地期間と、踵接地期間に続き、踵と拇指球の接地センサが接地を検知している主接地期間を判別し、
主接地期間における目標トルクの大きさが踵接地期間における目標トルクの大きさよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の歩行支援装置。
【請求項4】
足リンクは、ユーザの踵とつま先に相当するそれぞれの部分に接地センサを備えており、
コントローラは、踵とつま先の接地センサが接地を検知している主接地期間と、主接地期間に続き、踵の接地センサが非接地を検知してからつま先の接地センサが非接地を検知するまでのつま先接地期間を判別し、
主接地期間における目標トルクの大きさがつま先接地期間における目標トルクの大きさよりも大きいことを特徴とする請求項2又は3に記載の歩行支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−206289(P2011−206289A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77271(P2010−77271)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】