説明

歩行者検出装置及び歩行者保護装置

【課題】簡易な構造により、車両が衝突した衝突対象の質量に応じて、適切に衝撃吸収できるようにする。
【解決手段】車両前部10に設けられた本体チャンバ12と、該本体チャンバ12よりも容積が小さく構成されたサブチャンバ14と、本体チャンバ12とサブチャンバ14とを、互いの内部同士が連通するようにつなぐ連結部16と、該連結部16に設けられ、該連結部16を通る空気の流れに対して抵抗を付与する大オリフィス21(第1規制部)と、本体チャンバ12及びサブチャンバ14の少なくとも一方から外部への通気部32に設けられ、該通気部32を通る空気の流れに対して大オリフィス21(第1規制部)よりも大きな抵抗を付与する小オリフィス22(第2規制部)と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者検出装置及び歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衝突対象への接触を検出する第1センサと、車速センサと、衝突対象への衝突加速度を検出する第2センサとを有し、衝突対象への衝突時に、車速センサからの車速信号と、第2センサからの衝撃加速度信号波形とから、該衝突対象が子供等の低身長歩行者か大人等の高身長歩行者かを推定する車両用衝突対象推定装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
またこの推定に基づいて、フードの跳ね上げ量や跳ね上げタイミング、跳ね上げ作動速度を制御したり、二段バンパ構造の場合の低位バンパの高さを制御したり、該低位バンパを進退させるストローク型衝撃吸収部材の移動抵抗を制御することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−7059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来例に係る装置自体のように、複数のセンサからの信号により推定した衝突対象者の身長に応じて、各種衝撃吸収装置の作動を制御する構成では、各センサからの信号の演算等を行うための制御回路が必要となり、構成が複雑かつ高価になると考えられる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、簡易な構造により、車両が衝突した衝突対象が歩行者である場合にその体格を判別できる歩行者検出装置及び歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、車両前部のバンパリインフォースメントの前面に設けられた本体チャンバと、該本体チャンバよりも容積が小さく構成されたサブチャンバと、前記本体チャンバと前記サブチャンバとを、互いの内部同士が連通するようにつなぐ連結部と、該連結部に設けられ、該連結部を通る空気の流れに対して抵抗を付与する第1規制部と、前記本体チャンバ及び前記サブチャンバの少なくとも一方から外部への通気部に設けられ、該通気部を通る空気の流れに対して前記第1規制部よりも大きな抵抗を付与する第2規制部と、前記本体チャンバ内及び前記サブチャンバ内の少なくとも一方に設けられた圧力センサと、を有している。
【0008】
請求項1に記載の歩行者検出装置では、車両前部が衝突した衝突対象が子供の歩行者である場合、該衝突対象により本体チャンバが変形することで、該本体チャンバの内圧が高まり、これによって該本体チャンバ内の空気が、連結部を通じて、第1規制部の抵抗を受けつつサブチャンバ内へ流れる。一方、衝突対象が大人の歩行者である場合、該衝突対象により本体チャンバが更に変形することで、本体チャンバ内及びサブチャンバ内の空気が、通気部を通じて、第2規制部の抵抗を受けつつ外部へ押し出される。
【0009】
即ち、車両前部が衝突対象に衝突した際、該衝突対象の質量の大小によって本体チャンバやサブチャンバの内圧値が異なることとなるため、これを圧力センサにより検知することで、衝突対象の質量を推定することができる。従って、請求項1に記載の歩行者検出装置では、簡易な構造により、衝突対象が歩行者であるか否かを判別できると共に、衝突対象が歩行者である場合にその体格を判別することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の歩行者検出装置において、前記第1規制部は、開口断面積が大きい大オリフィスであり、前記第2規制部は、該大オリフィスよりも開口断面積が小さい小オリフィスである。
【0011】
請求項2に記載の歩行者検出装置では、第1規制部を大オリフィスとし、第2規制部を小オリフィスとするという極めて簡易な構造により、衝突対象の質量を推定することができ、衝突対象が歩行者である場合にその体格を判別することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の歩行者検出装置において、前記サブチャンバは、前記本体チャンバとは別体に構成され、該本体チャンバより車両内側に配置されている。
【0013】
請求項3に記載の歩行者検出装置では、サブチャンバが本体チャンバとは別体に構成され、該本体チャンバより車両内側に配置されているので、車両前部が衝突対象に衝突した際、該衝突対象からの荷重がサブチャンバに入力されることが抑制される。これにより、衝突対象からの荷重が本体チャンバに安定して入力されるので、該衝突対象の質量推定の精度を向上させることができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の歩行者検出装置において、前記サブチャンバは、前記本体チャンバと隣接して一体的に構成されている。
【0015】
請求項4に記載の歩行者検出装置では、サブチャンバが、本体チャンバと隣接して一体的に構成されているので、周辺部品の形状や配置に大きな変更を加えることなく、車両に搭載することができる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の歩行者検出装置が設けられ、前記車両前部のフードは、前記衝突対象への衝突時に跳ね上げ可能に構成され、前記圧力センサにより検知された内圧値に応じて、前記フードの跳ね上げ量を制御する調節手段が設けられている。
【0017】
請求項5に記載の歩行者保護装置では、車両前部が衝突対象に衝突した際に、歩行者検出装置の圧力センサにより検知された内圧値により該衝突対象の質量を推定し、調節手段により該衝突対象の質量に応じて車両前部のフードを跳ね上げる。このため、衝突対象が歩行者であり、フードに頭部が当たった際に、体格の大小にかかわらず、該頭部への衝撃を適切に緩和して、該歩行者を保護することができる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項5に記載の歩行者保護装置において、前記調節手段として、シリンダが車体側に連結され、ピストンロッドが前記フードの後端部に連結されると共に前記シリンダから2段階に伸出し可能に構成されたアクチュエータを有している。
【0019】
請求項6に記載の歩行者保護装置では、圧力センサにより衝突対象が例えば子供の歩行者であることを推定した際に、ピストンロッドが1段目まで伸び出すことで、フードの後端部が跳ね上げられる。
【0020】
一方、圧力センサにより衝突対象が例えば大人の歩行者であることを推定した際には、ピストンロッドが2段目まで伸び出すことで、フードの後端部がより多く跳ね上げられる。
【0021】
このように、請求項6に記載の歩行者保護装置では、アクチュエータのピストンロッドを2段階に伸出し可能に構成することで、衝突対象が歩行者であり、フードに頭部が当たった際に、その体格の大小にかかわらず、該頭部への衝撃を適切に緩和して、該歩行者を保護することができる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項5に記載の歩行者保護装置において、前記調節手段として、シリンダが車体側に連結され、該シリンダから伸出し可能なピストンロッドが前記フードの前端部に連結された前側アクチュエータと、シリンダが前記車体側に連結され、ピストンロッドが前記フードの後端部に連結されると共に該シリンダから前記前側アクチュエータよりも多く伸出し可能に構成された後側アクチュエータと、を有している。
【0023】
請求項7に記載の歩行者保護装置では、圧力センサにより衝突対象が例えば子供の歩行者であることを推定した際に、前側アクチュエータのピストンロッドがシリンダから伸び出すことで、フードの前端部が跳ね上げられる。
【0024】
一方、圧力センサにより衝突対象が例えば大人の歩行者であることを推定した際には、後側アクチュエータのピストンロッドが、シリンダから、前側アクチュエータよりも多く伸び出すことで、フードの後端部が跳ね上げられる。
【0025】
このように、請求項7に記載の歩行者保護装置では、衝突対象の質量に応じてフードの跳ね上げ方を変化させることで、衝突対象が歩行者であり、フードに頭部が当たった際に、その体格の大小にかかわらず、該頭部への衝撃を適切に緩和して、該歩行者を保護することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の歩行者検出装置によれば、簡易な構造により、車両が衝突した衝突対象が歩行者である場合にその体格を判別することができる、という優れた効果が得られる。
【0027】
請求項2に記載の歩行者検出装置によれば、極めて簡易な構造により、衝突対象の質量を推定することができ、衝突対象が歩行者である場合にその体格を判別することができる、という優れた効果が得られる。
【0028】
請求項3に記載の歩行者検出装置によれば、衝突対象からの荷重が本体チャンバに安定して入力される、という優れた効果が得られる。
【0029】
請求項4に記載の歩行者検出装置によれば、周辺部品の形状や配置に大きな変更を加えることなく、車両に搭載することができる、という優れた効果が得られる。
【0030】
請求項5に記載の歩行者保護装置によれば、衝突対象が歩行者であり、フードに頭部が当たった際に、体格の大小にかかわらず、該頭部への衝撃を適切に緩和して、該歩行者を保護することができる、という優れた効果が得られる。
【0031】
請求項6に記載の歩行者保護装置によれば、アクチュエータのアクチュエータを2段階に伸出し可能に構成することで、衝突対象が歩行者であり、フードに頭部が当たった際に、その体格の大小にかかわらず、該頭部への衝撃を適切に緩和して、該歩行者を保護することができる、という優れた効果が得られる。
【0032】
請求項7に記載の歩行者保護装置によれば、衝突対象の質量に応じてフードの跳ね上げ方を変化させることで、衝突対象が歩行者であり、フードに頭部が当たった際に、その体格の大小にかかわらず、該頭部への衝撃を適切に緩和して、該歩行者を保護することができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1から図10は、第1実施形態に係り、図1は、歩行者検出装置を示す側面図である。
【図2】歩行者検出装置を示す分解斜視図である。
【図3】本体チャンバの内部に仕切り状の連結部を設けて、該本体チャンバの一部をサブチャンバとした例を示す斜視図である。
【図4】サブチャンバを略直方体に構成し、本体チャンバの底面側に隣接して一体的に設けた例を示す斜視図である。
【図5】(A)サブチャンバを、本体チャンバとは別体の円筒形に構成すると共に、該本体チャンバの車両後方側に縦置きに配置した例を示す斜視図である。(B)同様のサブチャンバを、本体チャンバの車両左側の側面に配置した例を示す斜視図である。
【図6】(A)車両前部が子供の歩行者に接触した状態を示す側面図である。(B)脚部が本体チャンバに食い込むように侵入し、該本体チャンバ内の空気が、大オリフィスによる抵抗を受けながら連結部を通じてサブチャンバ内へ流れ込む状態を示す横断面図である。
【図7】(A)車両前部が大人の歩行者に接触した状態を示す側面図である。(B)脚部が本体チャンバに食い込むように侵入し、該本体チャンバ内の空気が大オリフィスによる抵抗を受けながら、連結部を通じてサブチャンバ内へ流れ込み、更に小オリフィスにより抵抗を受けながら、通気部を通じて外部へ押し出される状態を示す横断面図である。
【図8】本体チャンバ内及びサブチャンバ内の圧力変化を示す線図である。
【図9】図9から図13は、第2実施形態に係り、図9は、歩行者保護装置を示す斜視図である。
【図10】(A)車体に連結されたアクチュエータを示す斜視図である。(B)ピストンロッドが1段目まで伸び出した状態を示す斜視図である。(C)ピストンロッドが2段目まで伸び出した状態を示す斜視図である。
【図11】(A)アクチュエータを示す断面図である。(B)ピストンロッドが1段目まで伸び出した状態を示す図である。(C)ピストンロッドが2段目まで伸び出した状態を示す断面図である。
【図12】コントロールユニットの制御の流れを示すフローチャートである。
【図13】(A)フードが、子供の歩行者に対応して跳ね上げられた状態を示す側面図である。(B)フードが、大人の歩行者に対応して跳ね上げられた状態を示す側面図である。
【図14】図14から図18は、第3実施形態に係り、図14は、歩行者保護装置を示す斜視図である。
【図15】(A)バンパリインフォースメントに連結された前側アクチュエータを示す斜視図である。(B)ピストンロッドが伸び出した状態を示す斜視図である。
【図16】(A)前側アクチュエータを示す断面図である。(B)ピストンロッドが伸び出した状態を示す断面図である。
【図17】コントロールユニットの制御の流れを示すフローチャートである。
【図18】(A)軽い障害物に衝突した場合に、フードの跳ね上げが行われない状態を示す側面図である。(B)フードの前端部が、子供の歩行者に対応して跳ね上げられた状態を示す側面図である。(C)フードの後端部が、大人の歩行者に対応して跳ね上げられた状態を示す側面図である。(D)過大な障害物に衝突しても、フードの跳ね上げが行われない状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0035】
[第1実施形態]
図1,図2において、本実施形態に係る歩行者検出装置S1は、車両前部10に設けられた本体チャンバ12と、サブチャンバ14と、連結部16と、第1規制部の一例たる大オリフィス21と、第2規制部の一例たる小オリフィス22とを有している。
【0036】
本体チャンバ12は、例えば車両前部10のバンパリインフォースメント18の前面18Aに設けられている。この本体チャンバ12は、バンパリインフォースメント18と同等の長さと高さHを有する、例えば合成樹脂の成形品である。本体チャンバ12は、衝突対象の一例たる子供の歩行者24(図6)や大人の歩行者34(図7)が車幅方向のいかなる位置に衝突しても変形するように、車幅方向の略全長に渡って内部が空洞として構成されている。ここで、子供の歩行者24は、例えば6歳児を想定したダミー人形であり、大人の歩行者34は、例えば米国人成人男性50%をカバーするダミー人形(AM50)である。
【0037】
バンパリインフォースメント18は、車幅方向に延びる強度部材であり、車両前部10において車両前後方向に延びる一対のサイドメンバ20の前端に設けられている。なお、該サイドメンバ20の前端に、車両前方からの大荷重入力時に軸圧縮変形して、衝撃吸収を行うための所謂クラッシュボックス(図示せず)を設けてもよい。
【0038】
本体チャンバ12は、例えば接着剤26を用いて、バンパリインフォースメント18の前面18Aに接着される。これ以外に、本体チャンバ12を、例えばボルト28を用いて、バンパリインフォースメント18の前面18Aに締結してもよい。更に、本体チャンバ12を、例えばバンド30を用いて、バンパリインフォースメント18の前面18Aに結束してもよい。
【0039】
図1,図2において、サブチャンバ14は、本体チャンバ12よりも容積が小さく構成された、例えば円筒形の圧力容器である。このサブチャンバ14は、本体チャンバ12とは別体に構成され、該本体チャンバ12より車両内側に配置されている。図1の例では、本体チャンバ12が車両前部10に設けられていることから、「車両内側」は車両後方側を意味する。具体的には、サブチャンバ14は、本体チャンバ12の車両左側の端部における車両後方側の斜め下側に、軸方向がバンパリインフォースメント18の長手方向となるように横置きに配置されている。衝突対象への衝突時に、該衝突対象がサブチャンバ14に当たらず、本体チャンバ12に当たるようにするためである。
【0040】
図6において、サブチャンバ14の容積は、本体チャンバ12が子供の歩行者24の脚部24Aに当たった際に変形する体積と同等に設定されている。例えば、図6(B)に示されるように、脚部24Aの断面積の半分が本体チャンバ12に食い込むと考え、脚部24Aの直径をD1とし、本体チャンバ12の高さH(図2)を用いると、該本体チャンバ12が変形する体積は、πD12 /4×H/2=πD12 H/8となる。
【0041】
図1,図2において、連結部16は、本体チャンバ12とサブチャンバ14とを、互いの内部同士が連通するようにつなぐ管状部材である。この連結部16は、本体チャンバ12の後面12Bと、サブチャンバ14の中央部とをつないでいる。サブチャンバ14が本体チャンバ12の車両後方側の斜め下側に配置されていることから、連結部16は例えば円弧状に湾曲して構成されている。本体チャンバ12はバンパリインフォースメント18の前面18Aに設けられることから、バンパリインフォースメント18には、連結部16との干渉を抑制するための切欠き18Nが形成されている。
【0042】
図2において、大オリフィス21は、連結部16における例えば本体チャンバ12側の端部に設けられ、該連結部16を通る空気の流れに対して抵抗を付与するように構成されている。小オリフィス22は、本体チャンバ12及びサブチャンバ14の少なくとも一方、例えば本体チャンバ12から外部への通気部32に設けられ、該通気部32を通る空気の流れに対して大オリフィス21よりも大きな抵抗を付与するように構成されている。通気部32は、例えば本体チャンバ12の車両左側の側面12Cに設けられている。大オリフィス21は、開口断面積が大きく、小オリフィス22は、該大オリフィス21よりも開口断面積が小さく設定されている。
【0043】
なお、サブチャンバ14の形状や車幅方向位置、配置数は任意である。サブチャンバ14を複数個設ける場合には、1個あたりの容積は例えばその設置数によって等分される。また図3に示されるように、例えば本体チャンバ12の内部に仕切り状の連結部16を設けて、該本体チャンバ12の一部をサブチャンバ14としてもよい。即ち、サブチャンバ14を本体チャンバ12と隣接して一体的に構成してもよい。ここで、「隣接して」とは、本体チャンバ12とサブチャンバ114とが、仕切り状の連結部16を介して隣り合っていることをいう。この場合、大オリフィス21は、仕切り状の連結部16に設けられる。小オリフィス22は、例えばサブチャンバ14から外部への通気部32に設けられる。
【0044】
また図4に示されるように、サブチャンバ14を例えば略直方体に構成し、本体チャンバ12の底面側に隣接して一体的に設けてもよい。この場合、本体チャンバ12の底面又はサブチャンバ14の上面が連結部16となり、該連結部16に大オリフィス21が設けられる。
【0045】
更に図5(A)に示されるように、サブチャンバ14を、本体チャンバ12とは別体の円筒形に構成すると共に、該本体チャンバ12の車両後方側に、軸方向がバンパリインフォースメント18の高さ方向となるように縦置きに配置してもよい。この配置は、本体チャンバ12の下側にサブチャンバ14の配置スペースがない場合に有効である。
【0046】
また図5(B)に示されるように、同様のサブチャンバ14を、本体チャンバ12の例えば車両左側の側面12Cに配置してもよい。この配置は、本体チャンバ12の車両後方側及び下側にサブチャンバ14の配置スペースがない場合に有効である。
【0047】
図5(A),(B)に示される例では、何れも連結部16が真直な管状に構成され、また小オリフィス22がサブチャンバ14の上面に設けられている。サブチャンバ14の長さLは、バンパリインフォースメント18の高さHと例えば同等である。何れにしても、サブチャンバ14は、本体チャンバ12の変形に影響を与えないように、該本体チャンバ12の後面12B又は側面12Cから連結部16を延設し、その先に設けることが望ましい。周辺部品との干渉を抑制すると共に、衝突対象への衝突時に該衝突対象がサブチャンバ14に当たらず、本体チャンバ12に当たるようにするためである。
【0048】
小オリフィス22は、図1,図2,図4に示される例では本体チャンバ12に設けられ、図3,図5に示される例ではサブチャンバ14に設けられているが、これに限られず、本体チャンバ12及びサブチャンバ14の少なくとも一方に設けられていればよい。従って、本体チャンバ12及びサブチャンバ14の双方に小オリフィス22を設けてもよい。
【0049】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。本実施形態に係る歩行者検出装置S1では、車両前部10が衝突対象に衝突した際、該車両前部10側に設けられている本体チャンバ12が、該衝突対象から受ける荷重に応じて変形する。衝突対象の質量がごく小さい場合には、本体チャンバ12が小変形する。このときの本体チャンバ12の変形と、圧力センサ36により検知される該本体チャンバ12内の圧力(内圧)の変化との関係について、図8に示される線図を用いて説明すると、本体チャンバ12の変形が小変形に留まることから、該本体チャンバ12の内圧は、該小変形に対応する例えば圧力P3まで上昇するに留まる(線分d参照)。
【0050】
次に、図6(A)に示されるように、衝突対象が、より質量の大きい子供の歩行者24である場合、図6(B)に示されるように、該子供の歩行者24の脚部24Aが本体チャンバ12に食い込むように侵入し、該脚部24Aからの荷重Fが本体チャンバ12に入力される。これによって本体チャンバ12が変形することで、該本体チャンバ12の内圧が高まる。図8において、内圧が概ね圧力P1(線分d1の上端位置)に達すると、図6(B)に示されるように、本体チャンバ12内の空気が、連結部16を通じて、相対的に内圧が低いサブチャンバ14内へ、矢印A方向に流れ、サブチャンバ14の内圧が上昇して行く。このとき、連結部16に設けられた大オリフィス21により、該連結部16を通る空気の流れに対して抵抗が付与される。
【0051】
図8の線図を用いて説明すると、本体チャンバ12の変形に対するサブチャンバ14の内圧が、線分dで示されるように上昇して行くことで、本体チャンバ12の内圧の上昇が抑制され、該内圧は略一定となる(線分d2参照)。サブチャンバ14の内圧が圧力P1に達した後は、線分d3で示されるように、本体チャンバ12の内圧は、該本体チャンバ12の変形に伴って再度上昇し始める。衝突対象が子供の歩行者24である場合には、サブチャンバ14の容積の設定により、本体チャンバ12の内圧は、圧力P2には達しない。従って、本体チャンバ12の内圧が圧力P1以上、P2未満であるとき、衝突対象が子供の歩行者24であると判別することができる。
【0052】
図7(A)に示されるように、衝突対象が、更に質量の大きい大人の歩行者34である場合、図7(B)に示されるように、該大人の歩行者34の脚部34Aが更に大きく本体チャンバ12にめり込むことで、本体チャンバ12の内圧が圧力P2に達する。すると、本体チャンバ12内及びサブチャンバ14内の空気が、通気部32を通じて外部へ矢印B方向に押し出される。このとき、該通気部32に設けられた小オリフィス22により、この空気の流れに対して大オリフィス21よりも大きな抵抗が付与される。
【0053】
図8の線図を用いて説明すると、線分d4で示されるように、本体チャンバ12の内圧が圧力P2に達した後は、該本体チャンバ12の変形量が増加しても、該内圧は略一定となる。従って、本体チャンバ12の内圧がP2に達しているとき、衝突対象が大人の歩行者34であると判別することができる。
【0054】
車両同士の衝突等、衝突対象の質量がより一層大きい場合には、本体チャンバ12の車両後方のバンパリインフォースメント18やサイドメンバ20等に衝突荷重が伝達される。
【0055】
このように、本実施形態では、車両前部10が衝突対象に衝突した際、該衝突対象の質量の大小によって本体チャンバ12やサブチャンバ14の内圧値が異なることとなるため、これを圧力センサ36により検知することで、衝突対象の質量を推定することができる。従って、本実施形態では、第1規制部を大オリフィス21とし、第2規制部を小オリフィス22とするという極めて簡易な構造により、簡易な構造により、衝突対象が歩行者であるか否かを判別できると共に、衝突対象が歩行者である場合にその体格を判別することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、サブチャンバ14が本体チャンバ12とは別体に構成され、該本体チャンバ12より車両内側(車両後方側の斜め下方)に配置されているので、車両前部10が衝突対象に衝突した際、該衝突対象からの荷重Fがサブチャンバ14に入力されることが抑制される。これにより、衝突対象からの荷重Fが本体チャンバ12に安定して入力されるので、該衝突対象の質量推定の精度を向上させることができる。
【0057】
また図3,図4に示される例では、サブチャンバ14が、本体チャンバ12と隣接して一体的に構成されているので、周辺部品の形状や配置に大きな変更を加えることなく、車両に搭載することができる。
【0058】
なお本実施形態では、第1規制部の一例として大オリフィス21を挙げ、第2規制部の一例として小オリフィス22を挙げたが、これらの規制部は何れもオリフィスに限られるものではなく、スリット、ベンチュリ、所定の圧力で破断して開口する破断予定部等であってもよい。
【0059】
[第2実施形態]
図9において、本実施形態に係る歩行者保護装置S2では、車両前部10のフード38の後端部38Rが、衝突対象への衝突時に、例えば前端部38Fのヒンジ39を中心として跳ね上げ可能に構成されている。また歩行者保護装置S2は、歩行者検出装置S1における圧力センサ36により検知された内圧値に応じて、フード38の跳ね上げ量を制御する調節手段40として、アクチュエータ42を有している。このアクチュエータ42は、例えばフード38の後端部38Rの左右に一対設けられている。
【0060】
図10(A)に示されるように、アクチュエータ42におけるシリンダ46は、取付けブラケット52及び固定部材54を用いて、車体48側に連結されている。固定部材54としては、ボルトやリベット等が用いられる。シリンダ46から伸出し可能なピストンロッド50は、例えば取付けブラケット56及びピン58を介してフード38(図9)に連結されている。ピン58の軸方向は、車幅方向となっている。取付けブラケット56は、フード38に対して、該ピン58を中心として回動自在となっている。
【0061】
図9において、圧力センサ36は、配線62を介してコントロールユニット60に接続され、アクチュエータ42は、配線64を介してコントロールユニット60に接続されている。圧力センサ36からの信号は、配線62を通じてコントロールユニット60に送られるようになっている。コントロールユニット60は、圧力センサ36により検知された本体チャンバ12等の内圧値に応じて、配線64を通じて、アクチュエータ42に作動電流を流すようになっている。なお、調節手段40に、該コントロールユニット60を含めてもよい。
【0062】
図11(A)に示されるように、シリンダ46の底部には、仕切り板70を介して2つの火薬室が設けられ、一方の火薬室に火薬66が、他方の火薬室に火薬68が充填されている。このうち火薬66は、ピストンロッド50側に位置している。
【0063】
シリンダ46の車両上方側の端部の内周面には、シール47と、突起部46Aが設けられている。通常時には、該突起部46Aと、ピストンロッド50との間の摩擦力により、ピストンロッド50がシリンダ46から伸び出さないようになっている。ピストンロッド50の外周面における軸方向の2箇所には、該ピストンロッド50の1段目の伸出し時に該突起部46Aと係合する凹部50Aと、2段目の伸出し時に該突起部46Aと係合する凹部50Bとが形成されている。
【0064】
凹部50Aは例えばピストンロッド50の軸方向の中央部に形成され、凹部50Bは例えばピストンロッド50の軸方向の末端部(車両下方側の端部)に形成されている。なお、突起部46Aの形状や配置は図示の例には限られない。凹部50A,50Bの形状や配置は、該突起部46Aに対応して適宜設定される。
【0065】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0066】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図9において、本実施形態に係る歩行者保護装置S2では、車両前部10が衝突対象に衝突した際に、第1実施形態と同様に、本体チャンバ12内及びサブチャンバ14内の少なくとも一方に設けられた圧力センサ36により検知したチャンバの内圧値に基づいて、衝突対象の質量を推定することができる。これにより、衝突対象が歩行者であるか否かを判別できると共に、衝突対象が歩行者である場合にはその体格を判別することができる。
【0067】
更に、本実施形態では、衝突対象の質量に応じて、調節手段40により車両前部10のフード38の後端部38Rを跳ね上げることができる。この制御は、例えば図12に示されるフローチャートに沿って行われる。
【0068】
まず、ステップST11において、圧力センサ36(図9)により検知した内圧値(圧力P)が入力される。次に、ステップST12において、圧力Pと圧力P1とを比較し、P≧P1でない場合には、ステップST11に戻り、同じ処理を繰り返す。P≧P1である場合には、続くステップST13において、圧力Pと圧力P2とを比較する。P≧P2でない場合には、アクチュエータ42の火薬66を着火する。この際、図9に示されるように、コントロールユニット60から左右のアクチュエータ42に、配線64を通じて夫々点火電流が流される。
【0069】
ここで、圧力P1とは、車両前部10が、ある速度で子供の歩行者24に衝突した際に検出される圧力よりも若干低く、バケツ等の比較的軽量な障害物76(図18(A))よりも高く設定されている。圧力P1は、一定値としてもよいし、速度によって異なる値としてもよい。P≧P1であり、かつP≧P2でない場合には、衝突対象が子供の歩行者24であることが推定できる。P≧P1でない場合には、衝突対象が子供の歩行者24よりも軽い障害物76(図18(A))であると推定できるので、フード38の跳ね上げは行われない。
【0070】
また圧力P2とは、車両前部10が、ある速度で大人の歩行者34に衝突した際に検出される圧力よりも若干低く、かつ圧力P1よりも高く設定されている。この圧力P2は、一定値としてもよいし、速度によって異なる値としてもよい。
【0071】
図11(A)において、火薬66が着火されると、該火薬66の量に応じた燃焼ガスが発生し、火薬室の内圧が上昇することで、ピストンロッド50が押し上げられる。これによって、図11(B)に示されるように、凹部50Aがシリンダ46の突起部46Aに係合する位置まで、ピストンロッド50が該シリンダ46から伸び出す(図10(B)も参照)。これによって、図9,図13(A)に示されるように、フード38の後端部38Rが、前端部38Fのヒンジ39を中心として跳ね上げられる。この場合、燃焼する火薬量が比較的少ないため、フード38の跳ね上げ量も少なくなる。従って、フード38に子供の歩行者24の頭部24Hが当たった際に、該頭部24Hへの衝撃が適切に緩和される。
【0072】
一方、図12のステップST13において、P≧P2である場合には、続くステップST15において、P>>P2であるかどうかを判定する。ここで、P>>P2とは、例えばP>P2×10の場合をいう。P>>P2でない場合には、続くステップST16において、アクチュエータ42の火薬68を着火する。この際、図9に示されるように、コントロールユニット60から左右のアクチュエータ42に、配線64を通じて夫々点火電流が流される。P≧P2であり、かつP>>P2でない場合には、衝突対象が大人の歩行者34であることが推定できる。
【0073】
図11(C)に示されるように、火薬66に続いて火薬68が着火されると、該火薬68の量に応じた燃焼ガスが発生し、火薬室の内圧が上昇することで、ピストンロッド50が更に押し上げられ、凹部50Bがシリンダ46の突起部46Aに係合する位置まで、ピストンロッド50がアクチュエータ42から伸び出す(図10(C)も参照)。これによって、図9,図13(B)に示されるように、フード38の後端部38Rが、前端部38Fのヒンジ39を中心として跳ね上げられる。この場合、燃焼する火薬量が比較的多いため、フード38の跳ね上げ量も多くなる。従って、フード38に大人の歩行者34の頭部34Hが当たった際には、該頭部34Hへの衝撃が適切に緩和される。
【0074】
図12のステップST15において、P>>P2である場合には、図18(D)に示されるように、衝突対象が、大人の歩行者34と比較して質量が過大な車両等の重い障害物92であると推定できるので、フード38の跳ね上げを行わずに処理を終了する。
【0075】
このように本実施形態では、衝突対象が歩行者であり、フード38に頭部が当たった際に、体格の大小にかかわらず、該頭部への衝撃が適切に緩和される。このため、本体チャンバ12及びフード38の双方で、衝突対象に対する衝撃を夫々適切に吸収することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、アクチュエータ42内に火薬66,68を設ける構造としたが、これに限られず、インフレータ等のガス発生源を別個に設けるようにしてもよい。
【0077】
[第3実施形態]
図14において、本実施形態に係る歩行者保護装置S3では、調節手段40として、フード38の後端部38Rに対応した後側アクチュエータ72と、該フード38の前端部38Fに対応した前側アクチュエータ74とを有している。後側アクチュエータ72及び前側アクチュエータ74の内部構造や動作原理は同様であるが、前側アクチュエータ74の方が、ピストンロッド80の伸出し量が多くなるように設定されている。前側アクチュエータ74は、配線90を介してコントロールユニット60に接続されている。
【0078】
図15(A)に示されるように、前側アクチュエータ74におけるシリンダ78は、取付けブラケット82及び固定部材84を用いて、例えばバンパリインフォースメント18の後面18Bに連結されている。固定部材84としては、ボルトやリベット等が用いられる。シリンダ78から伸出し可能なピストンロッド80は、例えば取付けブラケット86及びピン88を介してフード38(図14)に連結されている。ピン88の軸方向は、車幅方向となっている。取付けブラケット86は、フード38に対して、該ピン88を中心として回動自在となっている。
【0079】
図16(A)に示されるように、シリンダ78の底部には、1つの火薬室が設けられ、該火薬室に火薬96が充填されている。
【0080】
シリンダ78の車両上方側の端部の内周面には、シール47と、突起部78Aが設けられている。通常時には、該突起部78Aと、ピストンロッド80との間の摩擦力により、ピストンロッド80がシリンダ78から伸び出さないようになっている。ピストンロッド80の外周面における軸方向の2箇所には、該ピストンロッド80の1段目の伸出し時に該突起部78Aと係合する凹部80Aが形成されている。凹部50Aは、例えばピストンロッド80の軸方向の末端部(車両下方側の端部)に形成されている。なお、突起部78Aの形状や配置は図示の例には限られない。凹部80Aの形状や配置は、該突起部78Aに対応して適宜設定される。
【0081】
フード38の後端部38Rに対応して設けられる後側アクチュエータ72の車両前部10への取付けは、第2実施形態におけるアクチュエータ42と同様である。また後側アクチュエータ72の構造は、前側アクチュエータ74と同様であるが、ピストンロッド80はより長く構成され、火薬96はより多く充填されている。
【0082】
他の部分については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0083】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図14において、本実施形態に係る歩行者保護装置S3では、車両前部10が衝突対象に衝突した際に、第1実施形態と同様に、本体チャンバ12内及びサブチャンバ14内の少なくとも一方に設けられた圧力センサ36により検知したチャンバの内圧値に基づいて、衝突対象の質量を推定することができる。これにより、衝突対象が歩行者であるか否かを判別できると共に、衝突対象が歩行者である場合にはその体格を判別することができる。
【0084】
更に、本実施形態では、衝突対象の質量に応じて、調節手段40により車両前部10のフード38を跳ね上げることができる。この制御は、例えば図17に示されるフローチャートに沿って行われる。
【0085】
まず、ステップST21において、圧力センサ36(図14)により検知した内圧値(圧力P)が入力される。次に、ステップST22において、圧力Pと圧力P1とを比較し、P≧P1でない場合には、ステップST21に戻り、同じ処理を繰り返す。車両前部10が衝突対象に衝突したとしても、P≧P1でなければ、図18(A)に示されるように、該衝突対象が子供の歩行者24よりも軽い障害物76であると推定できるので、フード38の跳ね上げは行われない。
【0086】
P≧P1である場合には、続くステップST23において、圧力Pと圧力P2とを比較する。P≧P2でない場合には、ステップST24において前側アクチュエータ74を作動させる。この際、図14において、コントロールユニット60から左右の前側アクチュエータ74に、配線90を通じて夫々点火電流が流される。
【0087】
図16(A)において、火薬96が着火されると、該火薬96の量に応じた燃焼ガスが発生し、火薬室の内圧が上昇することで、ピストンロッド80が押し上げられる。これによって、図16(B)に示されるように、凹部80Aがシリンダ46の突起部46Aに係合する位置まで、ピストンロッド80がシリンダ78から伸び出す(図15(B)も参照)。
【0088】
これによって、図18(B)に示されるように、フード38の前端部38Fが、後側アクチュエータ72のピン88(図15(A)参照)を中心として跳ね上げられる。前側アクチュエータ74では、ピストンロッド80の伸出し量が比較的少ないため、フード38の前端部38Fの跳ね上げ量も少なくなる。従って、フード38に子供の歩行者24の頭部24Hが当たった際に、該頭部24Hへの衝撃が適切に緩和される。
【0089】
一方、図17のステップST23において、P≧P2である場合には、続くステップST25において、P>>P2であるかどうかを判定する。ここで、P>>P2とは、例えばP>P2×10の場合をいう。P>>P2でない場合には、続くステップST26において、後側アクチュエータ72を作動させる。この際、図14において、コントロールユニット60から左右の後側アクチュエータ72に、配線64を通じて夫々点火電流が流される。すると、上記した前側アクチュエータ74と同様に、ピストンロッド80がシリンダ78から伸び出す。
【0090】
これによって、図14,図18(C)に示されるように、フード38の後端部38Rが、前側アクチュエータ74のピン88(図15(A)参照)を中心として跳ね上げられる。後側アクチュエータ72では、ピストンロッド80の伸出し量が比較的多いため、フード38の前端部38Fの跳ね上げ量も多くなる。従って、フード38に大人の歩行者34の頭部34Hが当たった際に、該頭部34Hへの衝撃が適切に緩和される。なお、フード38の高さが低い車種の場合には、衝撃緩和性能を高めるために、後側アクチュエータ72に加えて、前側アクチュエータ74を作動させてもよい。
【0091】
図17のステップST25において、P>>P2である場合には、図18(D)に示されるように、衝突対象が、大人の歩行者34と比較して質量が過大な車両等の重い障害物92であると推定できるので、フード38の跳ね上げを行わずに処理を終了する。
【0092】
このように、本実施形態では、衝突対象が歩行者であり、フード38に頭部が当たった際に、体格の大小にかかわらず、該頭部への衝撃が適切に緩和される。また衝突対象が歩行者でなく、子供の歩行者24より軽い障害物76や、大人の歩行者34より重い障害物92である場合には、フード38の跳ね上げを行われない。従って、衝突対象が歩行者である場合に、フード38の跳ね上げ量を適切に調整し、衝突対象に対する衝撃を夫々適切に緩和して、該歩行者を保護することができる。
【0093】
なお上記各実施形態では、歩行者検出装置S1が、何れも車両前部10のバンパリインフォースメント18の前面18Aに設けられるものとしたが、これに限られず、車両後部等に適用することも可能である。
【0094】
また調節手段40として、アクチュエータ42、後側アクチュエータ72、前側アクチュエータ74を挙げたが、調節手段40はこれに限られず、フード38を跳ね上げ量を制御できるものであれば、どのような構造であってもよい。
【0095】
更に歩行者検出装置S1は、車両前部10が衝突した衝突対象の質量に応じて衝撃吸収を行うバンパ型の衝撃吸収構造として用いることも可能である。この場合、圧力センサ36は不要である。
【符号の説明】
【0096】
10 車両前部
12 本体チャンバ
14 サブチャンバ
16 連結部
18 バンパリインフォースメント
18A 前面
21 大オリフィス(第1規制部)
22 小オリフィス(第2規制部)
24 子供の歩行者(衝突対象)
32 通気部
34 大人の歩行者(衝突対象)
36 圧力センサ
38 フード
38F 前端部
38R 後端部
40 調節手段
42 アクチュエータ(調節手段)
46 シリンダ
50 ピストンロッド
72 後側アクチュエータ(調節手段)
74 前側アクチュエータ(調節手段)
76 障害物(衝突対象)
78 シリンダ
80 ピストンロッド
92 障害物(衝突対象)
S1 歩行者検出装置
S2 歩行者保護装置
S3 歩行者保護装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のバンパリインフォースメントの前面に設けられた本体チャンバと、
該本体チャンバよりも容積が小さく構成されたサブチャンバと、
前記本体チャンバと前記サブチャンバとを、互いの内部同士が連通するようにつなぐ連結部と、
該連結部に設けられ、該連結部を通る空気の流れに対して抵抗を付与する第1規制部と、
前記本体チャンバ及び前記サブチャンバの少なくとも一方から外部への通気部に設けられ、該通気部を通る空気の流れに対して前記第1規制部よりも大きな抵抗を付与する第2規制部と、
前記本体チャンバ内及び前記サブチャンバ内の少なくとも一方に設けられた圧力センサと、
を有する歩行者検出装置。
【請求項2】
前記第1規制部は、比較的開口断面積が大きい大オリフィスであり、
前記第2規制部は、該大オリフィスよりも開口断面積が小さい小オリフィスである請求項1に記載の歩行者検出装置。
【請求項3】
前記サブチャンバは、前記本体チャンバとは別体に構成され、該本体チャンバより車両内側に配置されている請求項1又は請求項2に記載の歩行者検出装置。
【請求項4】
前記サブチャンバは、前記本体チャンバと隣接して一体的に構成されている請求項1又は請求項2に記載の歩行者検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の歩行者検出装置が設けられ、
前記車両前部のフードは、前記衝突対象への衝突時に跳ね上げ可能に構成され、
前記圧力センサにより検知された内圧値に応じて、前記フードの跳ね上げ量を制御する調節手段が設けられた歩行者保護装置。
【請求項6】
前記調節手段として、
シリンダが車体側に連結され、ピストンロッドが前記フードの後端部に連結されると共に前記シリンダから2段階に伸出し可能に構成されたアクチュエータを有する請求項5に記載の歩行者保護装置。
【請求項7】
前記調節手段として、シリンダが車体側に連結され、該シリンダから伸出し可能なピストンロッドが前記フードの前端部に連結された前側アクチュエータと、シリンダが前記車体側に連結され、ピストンロッドが前記フードの後端部に連結されると共に該シリンダから前記前側アクチュエータよりも多く伸出し可能に構成された後側アクチュエータと、
を有する請求項5に記載の歩行者保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−111339(P2012−111339A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261511(P2010−261511)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】