歩行者用エアバッグ装置
【課題】エアバッグカバーが、後方側に配設されるフロントウィンドシールドとの干渉を抑えて、円滑に、開き可能とされる歩行者用エアバッグ装置の提供。
【解決手段】本発明の歩行者用エアバッグ装置は、フードパネル13の後端付近に配設されて展開膨張時のエアバッグ43に押されて開くエアバッグカバー24を、備える。エアバッグカバー24が、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた長尺板状であって、フードパネル13と別体とした板金製とされる。エアバッグカバー24と突出用開口O周縁との間に、複数のストラップ33が配設されて、エアバッグカバー24を、前縁25b側を車両後方側にむけて、上方側へ回転させつつ、開き可能に構成される。ストラップ33が、長さ寸法を、エアバッグカバー24のフロントウィンドシールド10との干渉を抑制可能な寸法に、設定されている。
【解決手段】本発明の歩行者用エアバッグ装置は、フードパネル13の後端付近に配設されて展開膨張時のエアバッグ43に押されて開くエアバッグカバー24を、備える。エアバッグカバー24が、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた長尺板状であって、フードパネル13と別体とした板金製とされる。エアバッグカバー24と突出用開口O周縁との間に、複数のストラップ33が配設されて、エアバッグカバー24を、前縁25b側を車両後方側にむけて、上方側へ回転させつつ、開き可能に構成される。ストラップ33が、長さ寸法を、エアバッグカバー24のフロントウィンドシールド10との干渉を抑制可能な寸法に、設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の板金製のフードパネルの後端付近に配設されるとともに、膨張用ガスを流入させて上方に向かって展開膨張可能に折り畳まれて収納されるエアバッグと、収納されたエアバッグの上方を覆うように配設されるエアバッグカバーと、を備える構成の歩行者用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用エアバッグ装置では、フードパネルの後縁側の部位に、左右方向の全域にわたって、折り畳まれたエアバッグの上方を覆うエアバッグカバーが配設され、このエアバッグカバーは、エアバッグの展開膨張時に、後縁側をヒンジ部として前端側を車両後方側に向けるように開いて、エアバッグを突出させる突出用開口を形成する構成とされていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−108903号公報(図7及び8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、見栄えを向上させるためには、エアバッグカバーを、合成樹脂でなく、フードパネルと同質の板金製とすることが好ましい。しかし、フードパネルの後方側近傍には、フロントウィンドシールドが配設されることから、エアバッグカバーを板金製とする場合、板金製のエアバッグカバーを、開き時に、フロントウィンドシールドと干渉させない構成とすることが望ましい。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグカバーが、後方側に配設されるフロントウィンドシールドとの干渉を抑えて、円滑に、開き可能とされる歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置は、車両の板金製のフードパネルの後端付近に配設されるとともに、
膨張用ガスを流入させて上方に向かって展開膨張可能に、フードパネルの左右方向側の略全域にわたって折り畳まれて収納されるエアバッグと、
収納されたエアバッグの上方を覆うように、フードパネルの左右方向の略全域にわたって配設され、展開膨張時のエアバッグに押されて開き、エアバッグの突出用開口を形成するエアバッグカバーと、
を備える構成とされて、
フードパネルが、後縁近傍に配設されるフロントウィンドシールドの形状にあわせて、後縁側を、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた構成とされ、
エアバッグカバーが、フードパネルの後縁に沿うように、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた長尺板状に構成される歩行者用エアバッグ装置であって、
エアバッグカバーが、フードパネルと別体とした板金製とされて、
エアバッグカバーと突出用開口周縁との間に、可撓性を有した帯状のストラップが、左右方向に沿った複数箇所に、配設され、
ストラップが、それぞれ、
エアバッグカバーの後縁側と突出用開口の後縁近傍とを連結するように配設されて、エアバッグの突出時に、エアバッグカバーを、前縁側を後方側にむけて、上方側へ回転させつつ、車両後方側に向かって開き可能に構成されるとともに、
エアバッグカバー側の連結部位と突出用開口側の連結部位との間の長さ寸法を、エアバッグカバーの開き時において、エアバッグカバーのフロントウィンドシールドとの干渉を抑制可能な寸法に、設定して、構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグの展開膨張時において、突出するエアバッグに押されて開くエアバッグカバーが、ストラップにより開き動作を規制され、フロントウィンドシールドとの干渉を抑制される状態で、前縁側を後方側にむけて、上方側へ回転させつつ、車両後方側に向かって開きを完了させることとなる。その際、エアバッグカバーは、フードパネルの後縁に沿うような左右方向の中央付近を前方側に突出させたような形状として、かつ、開き動作がストラップにより規制されていても、意匠性を良好にできるように、フードパネルと同質の板金製としていることから、一部を塑性変形させつつ、突出用開口の全域を迅速に開口させるように、円滑に開くことができる。
【0007】
また、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグカバーが、一部を塑性変形させつつ開くことから、フロントウィンドシールドに、開く前の前縁が当接したとしても、その衝撃力を低減できて、フロントウィンドシールドとの干渉を抑制できることとなる。勿論、エアバッグカバーが、フロントウィンドシールドと当接せずに、開きを停止させれば、フロントウィンドシールドとの干渉自体を防止できて、一層、フロントウィンドシールドとの干渉を抑制できることとなる。
【0008】
従って、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグカバーを、後方側に配設されるフロントウィンドシールドとの干渉を抑えて、円滑に、開かせることができる。
【0009】
また、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグカバーを、剛性を有した剛性向上部位と、剛性向上部位より剛性を低下させた剛性低下部位と、を、左右方向に沿って交互に配設させた構成とすることが好ましい。
【0010】
上記構成の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグカバーが、剛性低下部位を備えていることから、突出するエアバッグに押圧された際に、左右方向に並設された剛性低下部位が、主に塑性変形することとなる。すなわち、上記構成の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグカバーの開き時における塑性変形部位を、剛性低下部位として変動しない定位置とすることができることから、エアバッグカバーの開き動作を安定させることができる。また、エアバッグカバーが、左右方向の中央付近を、左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成される場合、エアバッグカバーは、開き前の後縁が左右方向に圧縮され、開き前の前縁が左右方向に伸びるような状態で開くこととなるが、上記構成の歩行者用エアバッグ装置では、剛性低下部位が左右方向に並設されていることから、その圧縮や伸びの塑性変形を容易に行なうことができて、エアバッグカバーは、一層、円滑に開くこととなる。
【0011】
なお、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、フードパネルを、左右方向の中央付近を左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成し、
エアバッグカバーを、フードパネルに沿うように、左右方向の中央付近を左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成する場合、
ストラップは、具体的には、左右方向の中央付近に配設される中央ストラップにおけるエアバッグカバー側の連結部位と突出用開口側の連結部位との間の長さ寸法を、
エアバッグカバーを、左右方向の両縁付近に配設されたストラップにおける突出用開口側の連結部位付近を回転中心として、単体で後方側へ開かせた場合において、エアバッグカバーの左右方向の中央付近における開き前の後縁が、フロントウィンドシールドと当接する位置まで回転した際の側方から見た状態での突出用開口側の連結部位とエアバッグカバー側の連結部位とを結ぶ距離よりも、
小さく設定させることが好ましい。
【0012】
中央ストラップを上記長さ寸法に設定すれば、エアバッグの展開膨張時において、エアバッグカバーの開き前の後縁が、フロントウィンドシールドと当接する位置まで移動しない。すなわち、エアバッグカバーは、開き前の前縁を、開き前の後縁より後方側へ回転させて開くこととなるが、開き前の後縁が、フロントウィンドシールドの下端より前方側で停止されることから、仮に、フロントウィンドシールドと当接する部位が発生しても、開き前の前縁の左右方向の中央付近だけがフロントウィンドシールドと当接する状態となって、傷付けるようなフロントウィンドシールドとの干渉を抑えることが可能となる。さらに、一部を塑性変形させつつ開くエアバッグカバーでは、開く前の上面側を、フロントウィンドシールドと略平行にして、フロントウィンドシールドに当接しない状態で、エアバッグカバーを停止させることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書では、前後の方向は、車両の前後方向に沿う方向を基準とし、左右の方向は、車両の前方側から後方側を見た際の車両の左右の方向に沿う方向を基準とする。
【0014】
実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mは、図1〜6に示すように、車両Vのフードパネル13の後端付近に配設されるもので、エアバッグ43と、エアバッグ43に膨張用ガスを供給するインフレーター39と、エアバッグ43とインフレーター39とを収納するケース17と、エアバッグ43の上方を覆うように配設されるエアバッグカバー24と、を備えて構成されている。
【0015】
フードパネル13は、車両Vにおける図示しないエンジンルームの上方側を覆うように配設されるもので、左右方向の両端側における後縁13a付近となる位置において、図示しないヒンジを使用して、車両Vのボディ1側に対して前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル13は、ともにアルミニウム(アルミニウム合金)製とされて、上面側のアウタパネル14と、アウタパネル14の下面側に配設されるインナパネル15と、を備えて構成されている。また、フードパネル13は、後縁13a側を、後方側に配設されるフロントウィンドシールド10に合わせて、上方から見て、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように、湾曲させて構成されている。また、フードパネル13は、左右方向の中央付近を上方に突出させるように、湾曲した構成とされている。フードパネル13とフロントウィンドシールド10との間の部位には、カウルパネル8と、カウルパネル8の上方に配設されるカウルルーバ7と、から構成されるカウル6が、配設されている。
【0016】
また、フードパネル13には、エアバッグ装置Mを収納させる収納凹部13bが、形成されている。収納凹部13bは、フードパネル13の後縁13aに沿って、上方から見て、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲して形成されるとともに、フードパネル13の左右方向の略全域にわたって、配設されている。収納凹部13bは、アウタパネル14を切り欠いて形成される開口14aと、開口14aの下方においてインナパネル15を凹ませて形成される収容部15aと、から構成されている。アウタパネル14における開口14aの周縁には、エアバッグカバー24における後述する取付部26の下面を支持する段差状の支持部14bが、配設されている。収容部15aは、エアバッグ装置Mを収納させた際にケース17の前後左右の周囲に配設される周壁部15bと、周壁部15bの下部側を塞ぐように配設されてケース17の下方に配設される底壁部15cと、から構成されている。底壁部15cには、ケース17から突出しているインフレーター39のボルト40a及びナット41を下方に突出可能とする切欠部15dが、形成されている。また、底壁部15cには、ケース17をインナパネル15に固定させるためのボルト21を挿通可能な複数の挿通孔15eが形成されている。
【0017】
ケース17は、板金製とされて、図2・3に示すように、フードパネル13の左右方向の略全域にわたって、配設されるもので、フードパネル13の後縁13aに略沿わせるように、上方側から見て、左右方向の中央付近に位置する部位を左右方向に沿って配設させるとともに、中央部位の左右両側に配設される部位を、それぞれ、左右両端側を後方に位置させるように傾斜させるようにして、構成されている(図2・3参照)。そして、実施形態の場合、ケース17は、上端側を開口させた略四角筒形状の周壁部18と、周壁部18の下端側を閉塞するように配設される底壁部20と、を備えた略箱形状とされている。実施形態の場合、ケース17の上端側に形成される開口17aが、エアバッグ43を突出可能な突出用開口Oを構成することとなる。周壁部18の上端側には、前後左右に突出するように、フランジ部19が、全周にわたって形成されている。このフランジ部19は、突出用開口Oの周縁を構成する部位であり、エアバッグカバー24の後述する本体部25にあわせて、左右方向の中央付近を上方側に突出させるように、形成されている。フランジ部19には、エアバッグカバー24に配設される後述するクリップ31を、周縁において係合可能な多数(実施形態の場合10個)の係合孔19aが、形成されている。底壁部20には、インフレーター39の後述するボルト40aを挿通可能な挿通孔20aが、形成されている。また、底壁部20には、ケース17をインナパネル15に固定させるための複数のボルト21が、下方に突出するように、固着されている。実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース17は、底壁部20に固着させた各ボルト21を、インナパネル15の挿通孔15eに挿通させ、インナパネル15から突出したボルト21に、ナット22を締結させることにより、インナパネル15に固定されることとなる。
【0018】
エアバッグカバー24は、意匠性が良好となるように、フードパネル13と同質材のアルミニウム(アルミニウム合金)製とされて、図7〜10に示すように、ケース17の開口17aを塞ぎ可能に配設される略平板状の本体部25と、本体部25の周縁25aをケース開口17a周縁のフランジ部19側に係合させるクリップ31と、を備えて構成されている。
【0019】
本体部25は、フードパネル13の左右方向の略全域にわたって、配設されるもので、フードパネル13の後縁13aに略沿わせるように、上方から見て、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように、湾曲させた長尺板状とされている。また、本体部25は、周囲のフードパネル13にあわせて、左右方向の中央付近の部位25dを、左右両縁側の部位25eよりも上方に突出させるように、湾曲した構成とされている(図1・2・8参照)。そして、本体部25の周縁25aの下部側となる部位には、全周にわたって、取付部26が、形成されている。この取付部26は、本体部25の縁部から下方に向かって突出する縦壁部26aと、縦壁部26aの先端から内周側に向かって突出するように形成される横壁部26bと、を備えて構成されている。
【0020】
そして、横壁部26bは、実施形態の場合、図8に示すごとく、本体部25との離隔距離を異ならせるように、左右方向に沿って、段差状に配設されている。すなわち、横壁部26bは、本体部25との離隔距離を大きく設定される離隔部26cと、本体部25との離隔距離を小さく設定される近接部26dと、を、交互に配設させた構成とされている。離隔部26cの部位においては、本体部25を構成する板金の板厚に対して縦壁部26aの部位の曲率半径が大きく設定されることとなり、剛性が向上されることとなる。そして、近接部26dの部位においては、縦壁部26aの部位の曲率半径が小さく設定されることとなり、離隔部26cの部位に比較して、剛性が低下されることとなる。この離隔部26cと近接部26dとは、本体部25の前縁25bと後縁25cとにおいて、それぞれ、前後で対応した位置に配設されることとなり、実施形態のエアバッグカバー24では、図7に示すように、本体部25において、前後を離隔部26c・26cで挟まれた部位が剛性向上部位28を構成することとなり、前後を近接部26d・26dで挟まれた部位が剛性低下部位29を構成することとなる。すなわち、実施形態のエアバッグカバー24では、剛性向上部位28と剛性低下部位29とが、それぞれ、前後方向に沿って配設されるとともに、左右方向に沿って交互に並設されることとなる。また、実施形態のエアバッグカバー24では、剛性向上部位28が、左右方向の幅寸法を、剛性低下部位29よりも大きくして、領域を大きくするように、構成されている。そして、剛性向上部位28を構成する取付部26の離隔部26cの部位に、クリップ31が、下方に突出するように、固定されている。
【0021】
クリップ31は、本体部25の周縁25a近傍の略全周にわたって配設されるもので、実施形態の場合、本体部25における前縁25b側と後縁25c側とに、それぞれ5個ずつ、計10個配設されている。各クリップ31は、合成樹脂製とされて、下方(ケース17側)に突出する軸部31aと、軸部31a先端側から元部側にかけて拡開するように突出する係止脚部31bと、を備える構成である。係止脚部31bは、ケースフランジ部19の係合孔19a周縁に係合されるもので、エアバッグ43の膨張初期において本体部25が膨張するエアバッグ43に押し上げられた際に、係合孔19aから引き抜き可能とするように、構成されている。
【0022】
また、実施形態のエアバッグカバー24は、本体部25の後縁25c側の部位が、ケース開口17a周縁の後縁近傍部位に対して、ストラップ33により連結されて、エアバッグ43の展開膨張時に、前縁25b側を後方側に向けて、上方へ回転させつつ開くように、構成されている。ストラップ33は、アラミド繊維等から構成される可撓性を有した帯状とされており、本体部25の左右両端近傍に配設される端側ストラップ34・34と、本体部25の左右方向の中央付近に配設される中央ストラップ35と、を備えている。実施形態の場合、各端側・中央ストラップ34・34・35は、本体部後縁25c側の部位における横壁部26bの部位と、ケース周壁部18における後壁部18aの上端近傍部位と、を連結するように、配設されている。具体的には、中央ストラップ35は、図6に示すごとく、アウタパネル14の支持部14bとフランジ部19との間を挿通させるようにして、長手方向の両端側に配設される連結部35a・35bを、それぞれ、リベット37を利用して、横壁部26の部位と、後壁部18aの上端近傍部位と、に、連結されている。端側ストラップ34・34も、図示しないが、中央ストラップ35と同様にして、アウタパネル14の支持部14bとフランジ部19との間を挿通させるようにして、長手方向の両端側に配設される連結部34a・34bを、それぞれ、リベット37を利用して、横壁部26の部位と、後壁部18aの上端近傍部位と、に、連結される構成である。
【0023】
各端側ストラップ34は、連結部34a・34b間の長さ寸法L1(図7参照)を、本体部25の開き時に、本体部25の左右両縁側における後端の部位25dが、アウタパネル14の開口14a周縁と干渉しない程度の寸法で、極力小さな寸法に設定されている。中央ストラップ35は、連結部35a・35b間の長さ寸法L2(図7参照)を、端側ストラップ34の長さ寸法L1よりも大きく設定されて、かつ、エアバッグカバー24の開き完了時に、本体部25の後縁25cがフロントウィンドシールド10と干渉しない寸法に、設定されている。具体的には、中央ストラップ35の長さ寸法L2は、図3・12の二点鎖線に示すごとく、エアバッグカバー本体部25を、端側ストラップ34におけるケース17側の連結部34a付近を回転中心X(図3参照)として、単体で後方側へ開かせた場合において、エアバッグカバー本体部25の左右方向の中央付近における後縁25cが、フロントウィンドシールド10と当接する位置まで回転した際の側方から見た状態でのケース17側の連結部35aと本体部25側の連結部35bとを結んだ距離L3(図11における連結部35aから屈曲点Pまでの直線距離D1と、屈曲点Pから連結部35bまでの直線距離D2と、の和)よりも、小さく設定されている。
【0024】
インフレーター39は、実施形態の場合、図2・3に示すごとく、ケース17の左右両端側となる2箇所に、配設されて、それぞれ、図示しないガス吐出口を備えた略円柱状とされている。各インフレーター39は、左右方向に略沿って配設されるもので、略円柱状の本体部39aと、本体部39aにおける軸方向に沿った側であってケース17の左右方向の端部側となる端部から突出するように配設される小径部39bと、を備えて構成されている。各インフレーター39の小径部39bには、図示しないガス吐出口が配設されており、各インフレーター39は、エアバッグ43内に膨張用ガスを流出可能なように、小径部39bの部位において、エアバッグ43に連結されている。また、各インフレーター39は、図3に示すように、本体部39aの部位において板金製のブラケット40により保持されている。実施形態の各インフレーター39は、ブラケット40から延びるボルト40aを、挿通孔20aを介してケース底壁部20から突出させ、突出したボルト40aにナット41を締結させることにより、ケース底壁部20に取付固定されている。
【0025】
エアバッグ43は、インフレーター39から吐出される膨張用ガスを内部に流入させて展開膨張可能に、インフレーター39と連結されるもので、実施形態の場合、ポリエステルやポリアミド糸等を使用した織布から形成された袋状としている。エアバッグ43は、図2の二点鎖線及び図12に示すごとく、膨張完了時の形状を、正面側から見て、左右方向に幅広とした略U字形状に形成されるもので、左右方向に沿って配設される横膨張部44と、横膨張部44の左右両端からフロントピラー11の下部前面側を覆うように後方側に延びる縦膨張部45・45と、を備えて構成されている。横膨張部44は、エアバッグ43の膨張完了時において、ケース17の上方からフロントウィンドシールド10の下部前面付近にかけてを、左右方向の略全域にわたって覆うように、構成されている。
【0026】
車両Vには、図1・2に示すごとく、フロントバンパ3に、歩行者との衝突を検知若しくは予知可能なセンサ4が配設され、図示しないエアバッグ作動回路が、歩行者との衝突を検知した信号をセンサ4から入力させた際、インフレーター39を作動させて、エアバッグ43を展開膨張させるように、構成されている。
【0027】
そして、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mは、以下のようにして、車両Vに搭載されることとなる。なお、エアバッグカバー24の本体部25とケース17とは、予め、ストラップ33(端側ストラップ34・中央ストラップ35)により連結させておく。そして、まず、折り畳まれたエアバッグ43に、ブラケット40に保持されたインフレーター39を接続させる。その後、底壁部20の挿通孔20aからボルト40aを突出させるようにして、エアバッグ43とインフレーター39とを、開口17aからケース17内に収納させ、ケース底壁部20から突出しているボルト40aに、ナット41を締結させて、インフレーター39とエアバッグ43とをケース17に取付固定させる。
【0028】
その後、エアバッグカバー本体部25の周縁25aに配設される各クリップ31を、ケース開口17a周縁のフランジ部19に形成される係合孔19aに挿入させて、係止脚部31bを係合孔19a周縁に係合させ、エアバッグカバー24をケース17に固定させて、エアバッグ組付体を形成する。
【0029】
そして、フードパネル13の収納凹部13b内にエアバッグ組付体を収納させ、インナパネル15の挿通孔15eから突出しているボルト21にナット22を締結させれば、エアバッグ装置Mをフードパネル13に固定させることができる。そして、フードパネル13を、図示しないヒンジを利用して、車両Vのボディ1側に固定させれば、歩行者用エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。なお、エアバッグ装置Mの車両への搭載手順はこれに限られるものではなく、予め車両に固定させたフードパネル13に、エアバッグ装置Mを固定させてもよい。
【0030】
実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、車両搭載状態において、インフレーター39に作動信号が入力されれば、インフレーター39から膨張用ガスが吐出され、エアバッグ43が、膨張用ガスを流入させて膨張することとなる。そして、エアバッグカバー24の本体部25がエアバッグ40に押されて、クリップ31のケース開口17a周縁への係合を解除されるようにして開き、エアバッグ43が、開いた突出用開口Oから、上方に向かって突出し、図1・2の二点鎖線及び図11・12に示すごとく、膨張を完了させることとなる。
【0031】
そして、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ43の展開膨張時において、突出するエアバッグ43に押されて開くエアバッグカバー24の本体部25が、ストラップ33により開き動作を規制され、フロントウィンドシールド10との干渉を抑制される状態で、前縁25b側を後方側に向けて、上方側へ回転させつつ、車両後方側に向かって開きを完了させることとなる。その際、エアバッグカバー24の本体部25は、フードパネル13の後縁13aに沿うような左右方向の中央付近を前方側に突出させたような形状として、かつ、開き動作がストラップ33により規制されていても、意匠性を良好にできるように、フードパネル13と同質の板金製としていることから、一部を塑性変形させつつ、開くこととなる。
【0032】
特に、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25が、剛性向上部位28と剛性低下部位29とを左右方向に沿って交互に配設させた構成とされている。そのため、突出するエアバッグ43に押圧された際に、左右方向に並設された剛性低下部位29が、主に塑性変形することとなる。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー本体部25の開き時における塑性変形部位を剛性低下部位29として変動しない定位置とすることができることから、エアバッグカバー24の開き動作を安定させることができる。
【0033】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、フードパネル13の湾曲形状に沿って、エアバッグカバー24の本体部25も、左右方向の中央付近の部位25dを、左右両縁側の部位25eよりも上方に突出させるように、湾曲した構成とされているため、エアバッグカバー24の本体部25は、開き時に、後縁25c側が左右方向に圧縮され、前縁25b側が左右方向に伸びるような状態で開くこととなるが、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25が、左右方向に沿って並設される剛性低下部位29を備えることから、その圧縮や伸びの塑性変形を容易に行なうことができて、エアバッグカバー24の本体部25を、突出用開口Oの全域を迅速に開口させるように、円滑に開くことができる。
【0034】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25が、一部を塑性変形させつつ開くことから、仮に、フロントウィンドシールド10に、前縁25bが当接したとしても、その衝撃力を低減できて、フロントウィンドシールド10との干渉を抑制できることとなる。
【0035】
さらに、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー本体部25の後縁25cにおける左右方向の中央付近をケース17側に連結させる中央ストラップ35が、長さ寸法L2を、図11における連結部35bから屈曲点Pまでの直線距離D1と、屈曲点Pから連結部35bまでの直線距離D2と、の和L3よりも、小さく設定されている。すなわち、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、中央ストラップ35の長さ寸法L2が、本体部25を、左右両縁近傍部位のみを回転中心X(図3参照)としてフロントウィンドシールドに当接するまで回転させた際の後縁25c側における左右方向の中央部位の移動距離よりも、小さく設定されることとなる。そのため、エアバッグ43の展開膨張時において、エアバッグカバー本体部25の後縁25cが、フロントウィンドシールド10と当接する位置まで移動しない。実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25は、前縁25bを、後縁25cより後方側へ回転させて開くこととなるが、図11に示すごとく、後縁25cが、フロントウィンドシールド10の下端より前方側で停止されることから、仮に、フロントウィンドシールド10と当接する部位が発生しても、前縁25bの左右方向の中央付近だけがフロントウィンドシールド10と当接する状態となって、傷付けるようなフロントウィンドシールド10との干渉を抑えることが可能となる。さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25は、一部を塑性変形させつつ開くことから、図11に示すごとく、上面側を、フロントウィンドシールド10と略平行として、フロントウィンドシールド10に当接しない状態で、開きを停止することとなる。
【0036】
従って、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24を、後方側に配設されるフロントウィンドシールド10との干渉を抑えて、円滑に、開かせることができる。
【0037】
なお、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、中央ストラップ35の長さ寸法を短く設定するとともに、エアバッグカバー24の本体部25に、剛性向上部位28と剛性低下部位29とを左右方向に沿って交互に配設させている構成であるが、勿論、中央ストラップのみを短くしてエアバッグカバーに剛性向上部位と剛性低下部位とを配設させない構成としてもよく、さらには、中央ストラップを短く設定せずにエアバッグカバーに剛性向上部位と剛性低下部位とを配設させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の側面図である。
【図2】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
【図3】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両において、フードパネル後縁近傍の部位を示す部分拡大平面図である。
【図4】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図3のIV−IV部位に対応する。
【図5】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図3のV−V部位に対応する。
【図6】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、車両前後方向に沿った概略拡大縦断面図である。
【図7】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置において使用されるエアバッグカバーの底面図である。
【図8】図7のVIII−VIII部位の概略断面図である。
【図9】図7のIX−IX部位の概略断面図である。
【図10】図7のX−X部位の概略断面図である。
【図11】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略断面図である。
【図12】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の車両の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…ボディ、
10…フロントウィンドシールド、
13…フードパネル、
13a…後縁、
17…ケース、
17a…開口、
24…エアバッグカバー、
25…本体部、
28…剛性向上部位、
29…剛性低下部位、
31…クリップ、
33…ストラップ、
35…中央ストラップ、
39…インフレーター、
43…エアバッグ、
O…突出用開口、
V…車両、
M…歩行者用エアバッグ装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の板金製のフードパネルの後端付近に配設されるとともに、膨張用ガスを流入させて上方に向かって展開膨張可能に折り畳まれて収納されるエアバッグと、収納されたエアバッグの上方を覆うように配設されるエアバッグカバーと、を備える構成の歩行者用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者用エアバッグ装置では、フードパネルの後縁側の部位に、左右方向の全域にわたって、折り畳まれたエアバッグの上方を覆うエアバッグカバーが配設され、このエアバッグカバーは、エアバッグの展開膨張時に、後縁側をヒンジ部として前端側を車両後方側に向けるように開いて、エアバッグを突出させる突出用開口を形成する構成とされていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−108903号公報(図7及び8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、見栄えを向上させるためには、エアバッグカバーを、合成樹脂でなく、フードパネルと同質の板金製とすることが好ましい。しかし、フードパネルの後方側近傍には、フロントウィンドシールドが配設されることから、エアバッグカバーを板金製とする場合、板金製のエアバッグカバーを、開き時に、フロントウィンドシールドと干渉させない構成とすることが望ましい。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグカバーが、後方側に配設されるフロントウィンドシールドとの干渉を抑えて、円滑に、開き可能とされる歩行者用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る歩行者用エアバッグ装置は、車両の板金製のフードパネルの後端付近に配設されるとともに、
膨張用ガスを流入させて上方に向かって展開膨張可能に、フードパネルの左右方向側の略全域にわたって折り畳まれて収納されるエアバッグと、
収納されたエアバッグの上方を覆うように、フードパネルの左右方向の略全域にわたって配設され、展開膨張時のエアバッグに押されて開き、エアバッグの突出用開口を形成するエアバッグカバーと、
を備える構成とされて、
フードパネルが、後縁近傍に配設されるフロントウィンドシールドの形状にあわせて、後縁側を、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた構成とされ、
エアバッグカバーが、フードパネルの後縁に沿うように、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた長尺板状に構成される歩行者用エアバッグ装置であって、
エアバッグカバーが、フードパネルと別体とした板金製とされて、
エアバッグカバーと突出用開口周縁との間に、可撓性を有した帯状のストラップが、左右方向に沿った複数箇所に、配設され、
ストラップが、それぞれ、
エアバッグカバーの後縁側と突出用開口の後縁近傍とを連結するように配設されて、エアバッグの突出時に、エアバッグカバーを、前縁側を後方側にむけて、上方側へ回転させつつ、車両後方側に向かって開き可能に構成されるとともに、
エアバッグカバー側の連結部位と突出用開口側の連結部位との間の長さ寸法を、エアバッグカバーの開き時において、エアバッグカバーのフロントウィンドシールドとの干渉を抑制可能な寸法に、設定して、構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグの展開膨張時において、突出するエアバッグに押されて開くエアバッグカバーが、ストラップにより開き動作を規制され、フロントウィンドシールドとの干渉を抑制される状態で、前縁側を後方側にむけて、上方側へ回転させつつ、車両後方側に向かって開きを完了させることとなる。その際、エアバッグカバーは、フードパネルの後縁に沿うような左右方向の中央付近を前方側に突出させたような形状として、かつ、開き動作がストラップにより規制されていても、意匠性を良好にできるように、フードパネルと同質の板金製としていることから、一部を塑性変形させつつ、突出用開口の全域を迅速に開口させるように、円滑に開くことができる。
【0007】
また、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグカバーが、一部を塑性変形させつつ開くことから、フロントウィンドシールドに、開く前の前縁が当接したとしても、その衝撃力を低減できて、フロントウィンドシールドとの干渉を抑制できることとなる。勿論、エアバッグカバーが、フロントウィンドシールドと当接せずに、開きを停止させれば、フロントウィンドシールドとの干渉自体を防止できて、一層、フロントウィンドシールドとの干渉を抑制できることとなる。
【0008】
従って、本発明の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグカバーを、後方側に配設されるフロントウィンドシールドとの干渉を抑えて、円滑に、開かせることができる。
【0009】
また、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグカバーを、剛性を有した剛性向上部位と、剛性向上部位より剛性を低下させた剛性低下部位と、を、左右方向に沿って交互に配設させた構成とすることが好ましい。
【0010】
上記構成の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグカバーが、剛性低下部位を備えていることから、突出するエアバッグに押圧された際に、左右方向に並設された剛性低下部位が、主に塑性変形することとなる。すなわち、上記構成の歩行者用エアバッグ装置では、エアバッグカバーの開き時における塑性変形部位を、剛性低下部位として変動しない定位置とすることができることから、エアバッグカバーの開き動作を安定させることができる。また、エアバッグカバーが、左右方向の中央付近を、左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成される場合、エアバッグカバーは、開き前の後縁が左右方向に圧縮され、開き前の前縁が左右方向に伸びるような状態で開くこととなるが、上記構成の歩行者用エアバッグ装置では、剛性低下部位が左右方向に並設されていることから、その圧縮や伸びの塑性変形を容易に行なうことができて、エアバッグカバーは、一層、円滑に開くこととなる。
【0011】
なお、上記構成の歩行者用エアバッグ装置において、フードパネルを、左右方向の中央付近を左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成し、
エアバッグカバーを、フードパネルに沿うように、左右方向の中央付近を左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成する場合、
ストラップは、具体的には、左右方向の中央付近に配設される中央ストラップにおけるエアバッグカバー側の連結部位と突出用開口側の連結部位との間の長さ寸法を、
エアバッグカバーを、左右方向の両縁付近に配設されたストラップにおける突出用開口側の連結部位付近を回転中心として、単体で後方側へ開かせた場合において、エアバッグカバーの左右方向の中央付近における開き前の後縁が、フロントウィンドシールドと当接する位置まで回転した際の側方から見た状態での突出用開口側の連結部位とエアバッグカバー側の連結部位とを結ぶ距離よりも、
小さく設定させることが好ましい。
【0012】
中央ストラップを上記長さ寸法に設定すれば、エアバッグの展開膨張時において、エアバッグカバーの開き前の後縁が、フロントウィンドシールドと当接する位置まで移動しない。すなわち、エアバッグカバーは、開き前の前縁を、開き前の後縁より後方側へ回転させて開くこととなるが、開き前の後縁が、フロントウィンドシールドの下端より前方側で停止されることから、仮に、フロントウィンドシールドと当接する部位が発生しても、開き前の前縁の左右方向の中央付近だけがフロントウィンドシールドと当接する状態となって、傷付けるようなフロントウィンドシールドとの干渉を抑えることが可能となる。さらに、一部を塑性変形させつつ開くエアバッグカバーでは、開く前の上面側を、フロントウィンドシールドと略平行にして、フロントウィンドシールドに当接しない状態で、エアバッグカバーを停止させることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本明細書では、前後の方向は、車両の前後方向に沿う方向を基準とし、左右の方向は、車両の前方側から後方側を見た際の車両の左右の方向に沿う方向を基準とする。
【0014】
実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mは、図1〜6に示すように、車両Vのフードパネル13の後端付近に配設されるもので、エアバッグ43と、エアバッグ43に膨張用ガスを供給するインフレーター39と、エアバッグ43とインフレーター39とを収納するケース17と、エアバッグ43の上方を覆うように配設されるエアバッグカバー24と、を備えて構成されている。
【0015】
フードパネル13は、車両Vにおける図示しないエンジンルームの上方側を覆うように配設されるもので、左右方向の両端側における後縁13a付近となる位置において、図示しないヒンジを使用して、車両Vのボディ1側に対して前開きで開閉可能に連結されている。フードパネル13は、ともにアルミニウム(アルミニウム合金)製とされて、上面側のアウタパネル14と、アウタパネル14の下面側に配設されるインナパネル15と、を備えて構成されている。また、フードパネル13は、後縁13a側を、後方側に配設されるフロントウィンドシールド10に合わせて、上方から見て、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように、湾曲させて構成されている。また、フードパネル13は、左右方向の中央付近を上方に突出させるように、湾曲した構成とされている。フードパネル13とフロントウィンドシールド10との間の部位には、カウルパネル8と、カウルパネル8の上方に配設されるカウルルーバ7と、から構成されるカウル6が、配設されている。
【0016】
また、フードパネル13には、エアバッグ装置Mを収納させる収納凹部13bが、形成されている。収納凹部13bは、フードパネル13の後縁13aに沿って、上方から見て、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲して形成されるとともに、フードパネル13の左右方向の略全域にわたって、配設されている。収納凹部13bは、アウタパネル14を切り欠いて形成される開口14aと、開口14aの下方においてインナパネル15を凹ませて形成される収容部15aと、から構成されている。アウタパネル14における開口14aの周縁には、エアバッグカバー24における後述する取付部26の下面を支持する段差状の支持部14bが、配設されている。収容部15aは、エアバッグ装置Mを収納させた際にケース17の前後左右の周囲に配設される周壁部15bと、周壁部15bの下部側を塞ぐように配設されてケース17の下方に配設される底壁部15cと、から構成されている。底壁部15cには、ケース17から突出しているインフレーター39のボルト40a及びナット41を下方に突出可能とする切欠部15dが、形成されている。また、底壁部15cには、ケース17をインナパネル15に固定させるためのボルト21を挿通可能な複数の挿通孔15eが形成されている。
【0017】
ケース17は、板金製とされて、図2・3に示すように、フードパネル13の左右方向の略全域にわたって、配設されるもので、フードパネル13の後縁13aに略沿わせるように、上方側から見て、左右方向の中央付近に位置する部位を左右方向に沿って配設させるとともに、中央部位の左右両側に配設される部位を、それぞれ、左右両端側を後方に位置させるように傾斜させるようにして、構成されている(図2・3参照)。そして、実施形態の場合、ケース17は、上端側を開口させた略四角筒形状の周壁部18と、周壁部18の下端側を閉塞するように配設される底壁部20と、を備えた略箱形状とされている。実施形態の場合、ケース17の上端側に形成される開口17aが、エアバッグ43を突出可能な突出用開口Oを構成することとなる。周壁部18の上端側には、前後左右に突出するように、フランジ部19が、全周にわたって形成されている。このフランジ部19は、突出用開口Oの周縁を構成する部位であり、エアバッグカバー24の後述する本体部25にあわせて、左右方向の中央付近を上方側に突出させるように、形成されている。フランジ部19には、エアバッグカバー24に配設される後述するクリップ31を、周縁において係合可能な多数(実施形態の場合10個)の係合孔19aが、形成されている。底壁部20には、インフレーター39の後述するボルト40aを挿通可能な挿通孔20aが、形成されている。また、底壁部20には、ケース17をインナパネル15に固定させるための複数のボルト21が、下方に突出するように、固着されている。実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース17は、底壁部20に固着させた各ボルト21を、インナパネル15の挿通孔15eに挿通させ、インナパネル15から突出したボルト21に、ナット22を締結させることにより、インナパネル15に固定されることとなる。
【0018】
エアバッグカバー24は、意匠性が良好となるように、フードパネル13と同質材のアルミニウム(アルミニウム合金)製とされて、図7〜10に示すように、ケース17の開口17aを塞ぎ可能に配設される略平板状の本体部25と、本体部25の周縁25aをケース開口17a周縁のフランジ部19側に係合させるクリップ31と、を備えて構成されている。
【0019】
本体部25は、フードパネル13の左右方向の略全域にわたって、配設されるもので、フードパネル13の後縁13aに略沿わせるように、上方から見て、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように、湾曲させた長尺板状とされている。また、本体部25は、周囲のフードパネル13にあわせて、左右方向の中央付近の部位25dを、左右両縁側の部位25eよりも上方に突出させるように、湾曲した構成とされている(図1・2・8参照)。そして、本体部25の周縁25aの下部側となる部位には、全周にわたって、取付部26が、形成されている。この取付部26は、本体部25の縁部から下方に向かって突出する縦壁部26aと、縦壁部26aの先端から内周側に向かって突出するように形成される横壁部26bと、を備えて構成されている。
【0020】
そして、横壁部26bは、実施形態の場合、図8に示すごとく、本体部25との離隔距離を異ならせるように、左右方向に沿って、段差状に配設されている。すなわち、横壁部26bは、本体部25との離隔距離を大きく設定される離隔部26cと、本体部25との離隔距離を小さく設定される近接部26dと、を、交互に配設させた構成とされている。離隔部26cの部位においては、本体部25を構成する板金の板厚に対して縦壁部26aの部位の曲率半径が大きく設定されることとなり、剛性が向上されることとなる。そして、近接部26dの部位においては、縦壁部26aの部位の曲率半径が小さく設定されることとなり、離隔部26cの部位に比較して、剛性が低下されることとなる。この離隔部26cと近接部26dとは、本体部25の前縁25bと後縁25cとにおいて、それぞれ、前後で対応した位置に配設されることとなり、実施形態のエアバッグカバー24では、図7に示すように、本体部25において、前後を離隔部26c・26cで挟まれた部位が剛性向上部位28を構成することとなり、前後を近接部26d・26dで挟まれた部位が剛性低下部位29を構成することとなる。すなわち、実施形態のエアバッグカバー24では、剛性向上部位28と剛性低下部位29とが、それぞれ、前後方向に沿って配設されるとともに、左右方向に沿って交互に並設されることとなる。また、実施形態のエアバッグカバー24では、剛性向上部位28が、左右方向の幅寸法を、剛性低下部位29よりも大きくして、領域を大きくするように、構成されている。そして、剛性向上部位28を構成する取付部26の離隔部26cの部位に、クリップ31が、下方に突出するように、固定されている。
【0021】
クリップ31は、本体部25の周縁25a近傍の略全周にわたって配設されるもので、実施形態の場合、本体部25における前縁25b側と後縁25c側とに、それぞれ5個ずつ、計10個配設されている。各クリップ31は、合成樹脂製とされて、下方(ケース17側)に突出する軸部31aと、軸部31a先端側から元部側にかけて拡開するように突出する係止脚部31bと、を備える構成である。係止脚部31bは、ケースフランジ部19の係合孔19a周縁に係合されるもので、エアバッグ43の膨張初期において本体部25が膨張するエアバッグ43に押し上げられた際に、係合孔19aから引き抜き可能とするように、構成されている。
【0022】
また、実施形態のエアバッグカバー24は、本体部25の後縁25c側の部位が、ケース開口17a周縁の後縁近傍部位に対して、ストラップ33により連結されて、エアバッグ43の展開膨張時に、前縁25b側を後方側に向けて、上方へ回転させつつ開くように、構成されている。ストラップ33は、アラミド繊維等から構成される可撓性を有した帯状とされており、本体部25の左右両端近傍に配設される端側ストラップ34・34と、本体部25の左右方向の中央付近に配設される中央ストラップ35と、を備えている。実施形態の場合、各端側・中央ストラップ34・34・35は、本体部後縁25c側の部位における横壁部26bの部位と、ケース周壁部18における後壁部18aの上端近傍部位と、を連結するように、配設されている。具体的には、中央ストラップ35は、図6に示すごとく、アウタパネル14の支持部14bとフランジ部19との間を挿通させるようにして、長手方向の両端側に配設される連結部35a・35bを、それぞれ、リベット37を利用して、横壁部26の部位と、後壁部18aの上端近傍部位と、に、連結されている。端側ストラップ34・34も、図示しないが、中央ストラップ35と同様にして、アウタパネル14の支持部14bとフランジ部19との間を挿通させるようにして、長手方向の両端側に配設される連結部34a・34bを、それぞれ、リベット37を利用して、横壁部26の部位と、後壁部18aの上端近傍部位と、に、連結される構成である。
【0023】
各端側ストラップ34は、連結部34a・34b間の長さ寸法L1(図7参照)を、本体部25の開き時に、本体部25の左右両縁側における後端の部位25dが、アウタパネル14の開口14a周縁と干渉しない程度の寸法で、極力小さな寸法に設定されている。中央ストラップ35は、連結部35a・35b間の長さ寸法L2(図7参照)を、端側ストラップ34の長さ寸法L1よりも大きく設定されて、かつ、エアバッグカバー24の開き完了時に、本体部25の後縁25cがフロントウィンドシールド10と干渉しない寸法に、設定されている。具体的には、中央ストラップ35の長さ寸法L2は、図3・12の二点鎖線に示すごとく、エアバッグカバー本体部25を、端側ストラップ34におけるケース17側の連結部34a付近を回転中心X(図3参照)として、単体で後方側へ開かせた場合において、エアバッグカバー本体部25の左右方向の中央付近における後縁25cが、フロントウィンドシールド10と当接する位置まで回転した際の側方から見た状態でのケース17側の連結部35aと本体部25側の連結部35bとを結んだ距離L3(図11における連結部35aから屈曲点Pまでの直線距離D1と、屈曲点Pから連結部35bまでの直線距離D2と、の和)よりも、小さく設定されている。
【0024】
インフレーター39は、実施形態の場合、図2・3に示すごとく、ケース17の左右両端側となる2箇所に、配設されて、それぞれ、図示しないガス吐出口を備えた略円柱状とされている。各インフレーター39は、左右方向に略沿って配設されるもので、略円柱状の本体部39aと、本体部39aにおける軸方向に沿った側であってケース17の左右方向の端部側となる端部から突出するように配設される小径部39bと、を備えて構成されている。各インフレーター39の小径部39bには、図示しないガス吐出口が配設されており、各インフレーター39は、エアバッグ43内に膨張用ガスを流出可能なように、小径部39bの部位において、エアバッグ43に連結されている。また、各インフレーター39は、図3に示すように、本体部39aの部位において板金製のブラケット40により保持されている。実施形態の各インフレーター39は、ブラケット40から延びるボルト40aを、挿通孔20aを介してケース底壁部20から突出させ、突出したボルト40aにナット41を締結させることにより、ケース底壁部20に取付固定されている。
【0025】
エアバッグ43は、インフレーター39から吐出される膨張用ガスを内部に流入させて展開膨張可能に、インフレーター39と連結されるもので、実施形態の場合、ポリエステルやポリアミド糸等を使用した織布から形成された袋状としている。エアバッグ43は、図2の二点鎖線及び図12に示すごとく、膨張完了時の形状を、正面側から見て、左右方向に幅広とした略U字形状に形成されるもので、左右方向に沿って配設される横膨張部44と、横膨張部44の左右両端からフロントピラー11の下部前面側を覆うように後方側に延びる縦膨張部45・45と、を備えて構成されている。横膨張部44は、エアバッグ43の膨張完了時において、ケース17の上方からフロントウィンドシールド10の下部前面付近にかけてを、左右方向の略全域にわたって覆うように、構成されている。
【0026】
車両Vには、図1・2に示すごとく、フロントバンパ3に、歩行者との衝突を検知若しくは予知可能なセンサ4が配設され、図示しないエアバッグ作動回路が、歩行者との衝突を検知した信号をセンサ4から入力させた際、インフレーター39を作動させて、エアバッグ43を展開膨張させるように、構成されている。
【0027】
そして、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mは、以下のようにして、車両Vに搭載されることとなる。なお、エアバッグカバー24の本体部25とケース17とは、予め、ストラップ33(端側ストラップ34・中央ストラップ35)により連結させておく。そして、まず、折り畳まれたエアバッグ43に、ブラケット40に保持されたインフレーター39を接続させる。その後、底壁部20の挿通孔20aからボルト40aを突出させるようにして、エアバッグ43とインフレーター39とを、開口17aからケース17内に収納させ、ケース底壁部20から突出しているボルト40aに、ナット41を締結させて、インフレーター39とエアバッグ43とをケース17に取付固定させる。
【0028】
その後、エアバッグカバー本体部25の周縁25aに配設される各クリップ31を、ケース開口17a周縁のフランジ部19に形成される係合孔19aに挿入させて、係止脚部31bを係合孔19a周縁に係合させ、エアバッグカバー24をケース17に固定させて、エアバッグ組付体を形成する。
【0029】
そして、フードパネル13の収納凹部13b内にエアバッグ組付体を収納させ、インナパネル15の挿通孔15eから突出しているボルト21にナット22を締結させれば、エアバッグ装置Mをフードパネル13に固定させることができる。そして、フードパネル13を、図示しないヒンジを利用して、車両Vのボディ1側に固定させれば、歩行者用エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。なお、エアバッグ装置Mの車両への搭載手順はこれに限られるものではなく、予め車両に固定させたフードパネル13に、エアバッグ装置Mを固定させてもよい。
【0030】
実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、車両搭載状態において、インフレーター39に作動信号が入力されれば、インフレーター39から膨張用ガスが吐出され、エアバッグ43が、膨張用ガスを流入させて膨張することとなる。そして、エアバッグカバー24の本体部25がエアバッグ40に押されて、クリップ31のケース開口17a周縁への係合を解除されるようにして開き、エアバッグ43が、開いた突出用開口Oから、上方に向かって突出し、図1・2の二点鎖線及び図11・12に示すごとく、膨張を完了させることとなる。
【0031】
そして、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグ43の展開膨張時において、突出するエアバッグ43に押されて開くエアバッグカバー24の本体部25が、ストラップ33により開き動作を規制され、フロントウィンドシールド10との干渉を抑制される状態で、前縁25b側を後方側に向けて、上方側へ回転させつつ、車両後方側に向かって開きを完了させることとなる。その際、エアバッグカバー24の本体部25は、フードパネル13の後縁13aに沿うような左右方向の中央付近を前方側に突出させたような形状として、かつ、開き動作がストラップ33により規制されていても、意匠性を良好にできるように、フードパネル13と同質の板金製としていることから、一部を塑性変形させつつ、開くこととなる。
【0032】
特に、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25が、剛性向上部位28と剛性低下部位29とを左右方向に沿って交互に配設させた構成とされている。そのため、突出するエアバッグ43に押圧された際に、左右方向に並設された剛性低下部位29が、主に塑性変形することとなる。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー本体部25の開き時における塑性変形部位を剛性低下部位29として変動しない定位置とすることができることから、エアバッグカバー24の開き動作を安定させることができる。
【0033】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、フードパネル13の湾曲形状に沿って、エアバッグカバー24の本体部25も、左右方向の中央付近の部位25dを、左右両縁側の部位25eよりも上方に突出させるように、湾曲した構成とされているため、エアバッグカバー24の本体部25は、開き時に、後縁25c側が左右方向に圧縮され、前縁25b側が左右方向に伸びるような状態で開くこととなるが、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25が、左右方向に沿って並設される剛性低下部位29を備えることから、その圧縮や伸びの塑性変形を容易に行なうことができて、エアバッグカバー24の本体部25を、突出用開口Oの全域を迅速に開口させるように、円滑に開くことができる。
【0034】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25が、一部を塑性変形させつつ開くことから、仮に、フロントウィンドシールド10に、前縁25bが当接したとしても、その衝撃力を低減できて、フロントウィンドシールド10との干渉を抑制できることとなる。
【0035】
さらに、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー本体部25の後縁25cにおける左右方向の中央付近をケース17側に連結させる中央ストラップ35が、長さ寸法L2を、図11における連結部35bから屈曲点Pまでの直線距離D1と、屈曲点Pから連結部35bまでの直線距離D2と、の和L3よりも、小さく設定されている。すなわち、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、中央ストラップ35の長さ寸法L2が、本体部25を、左右両縁近傍部位のみを回転中心X(図3参照)としてフロントウィンドシールドに当接するまで回転させた際の後縁25c側における左右方向の中央部位の移動距離よりも、小さく設定されることとなる。そのため、エアバッグ43の展開膨張時において、エアバッグカバー本体部25の後縁25cが、フロントウィンドシールド10と当接する位置まで移動しない。実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25は、前縁25bを、後縁25cより後方側へ回転させて開くこととなるが、図11に示すごとく、後縁25cが、フロントウィンドシールド10の下端より前方側で停止されることから、仮に、フロントウィンドシールド10と当接する部位が発生しても、前縁25bの左右方向の中央付近だけがフロントウィンドシールド10と当接する状態となって、傷付けるようなフロントウィンドシールド10との干渉を抑えることが可能となる。さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24の本体部25は、一部を塑性変形させつつ開くことから、図11に示すごとく、上面側を、フロントウィンドシールド10と略平行として、フロントウィンドシールド10に当接しない状態で、開きを停止することとなる。
【0036】
従って、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー24を、後方側に配設されるフロントウィンドシールド10との干渉を抑えて、円滑に、開かせることができる。
【0037】
なお、実施形態の歩行者用エアバッグ装置Mでは、中央ストラップ35の長さ寸法を短く設定するとともに、エアバッグカバー24の本体部25に、剛性向上部位28と剛性低下部位29とを左右方向に沿って交互に配設させている構成であるが、勿論、中央ストラップのみを短くしてエアバッグカバーに剛性向上部位と剛性低下部位とを配設させない構成としてもよく、さらには、中央ストラップを短く設定せずにエアバッグカバーに剛性向上部位と剛性低下部位とを配設させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態である歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の側面図である。
【図2】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両の平面図である。
【図3】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置を搭載させた車両において、フードパネル後縁近傍の部位を示す部分拡大平面図である。
【図4】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図3のIV−IV部位に対応する。
【図5】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置における車両前後方向に沿った概略縦断面図であり、図3のV−V部位に対応する。
【図6】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、車両前後方向に沿った概略拡大縦断面図である。
【図7】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置において使用されるエアバッグカバーの底面図である。
【図8】図7のVIII−VIII部位の概略断面図である。
【図9】図7のIX−IX部位の概略断面図である。
【図10】図7のX−X部位の概略断面図である。
【図11】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略断面図である。
【図12】同実施形態の歩行者用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態の車両の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…ボディ、
10…フロントウィンドシールド、
13…フードパネル、
13a…後縁、
17…ケース、
17a…開口、
24…エアバッグカバー、
25…本体部、
28…剛性向上部位、
29…剛性低下部位、
31…クリップ、
33…ストラップ、
35…中央ストラップ、
39…インフレーター、
43…エアバッグ、
O…突出用開口、
V…車両、
M…歩行者用エアバッグ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の板金製のフードパネルの後端付近に配設されるとともに、
膨張用ガスを流入させて上方に向かって展開膨張可能に、前記フードパネルの左右方向側の略全域にわたって折り畳まれて収納されるエアバッグと、
収納された該エアバッグの上方を覆うように、前記フードパネルの左右方向の略全域にわたって配設され、展開膨張時の前記エアバッグに押されて開き、前記エアバッグの突出用開口を形成するエアバッグカバーと、
を備える構成とされて、
前記フードパネルが、後縁近傍に配設されるフロントウィンドシールドの形状にあわせて、後縁側を、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた構成とされ、
前記エアバッグカバーが、前記フードパネルの後縁に沿うように、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた長尺板状に構成される歩行者用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグカバーが、前記フードパネルと別体とした板金製とされて、
前記エアバッグカバーと前記突出用開口周縁との間に、可撓性を有した帯状のストラップが、左右方向に沿った複数箇所に、配設され、
前記ストラップが、それぞれ、
前記エアバッグカバーの後縁側と前記突出用開口の後縁近傍とを連結するように配設されて、前記エアバッグの突出時に、前記エアバッグカバーを、前縁側を後方側にむけて、上方側へ回転させつつ、車両後方側に向かって開き可能に構成されるとともに、
前記エアバッグカバー側の連結部位と前記突出用開口側の連結部位との間の長さ寸法を、前記エアバッグカバーの開き時において、前記エアバッグカバーの前記フロントウィンドシールドとの干渉を抑制可能な寸法に、設定して、構成されていることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグカバーが、剛性を有した剛性向上部位と、該剛性向上部位より剛性を低下させた剛性低下部位と、を、左右方向に沿って交互に配設させた構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記フードパネルが、左右方向の中央付近を、左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成され、
前記エアバッグカバーが、前記フードパネルに沿うように、左右方向の中央付近を、左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成されて、
前記ストラップが、前記エアバッグカバーにおける左右方向の中央付近となる位置に、配設される中央ストラップを備える構成とされ、
該中央ストラップが、前記エアバッグカバー側の連結部位と前記突出用開口側の連結部位との間の長さ寸法を、
前記エアバッグカバーを、左右方向の両縁付近に配設されたストラップにおける前記突出用開口側の連結部位付近を回転中心として、単体で後方側へ開かせた場合において、前記エアバッグカバーの左右方向の中央付近における開き前の後縁が、前記フロントウィンドシールドと当接する位置まで回転した際の側方から見た状態での前記突出用開口側の連結部位と前記エアバッグカバー側の連結部位とを結ぶ距離よりも、
小さく設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項1】
車両の板金製のフードパネルの後端付近に配設されるとともに、
膨張用ガスを流入させて上方に向かって展開膨張可能に、前記フードパネルの左右方向側の略全域にわたって折り畳まれて収納されるエアバッグと、
収納された該エアバッグの上方を覆うように、前記フードパネルの左右方向の略全域にわたって配設され、展開膨張時の前記エアバッグに押されて開き、前記エアバッグの突出用開口を形成するエアバッグカバーと、
を備える構成とされて、
前記フードパネルが、後縁近傍に配設されるフロントウィンドシールドの形状にあわせて、後縁側を、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた構成とされ、
前記エアバッグカバーが、前記フードパネルの後縁に沿うように、左右方向の中央付近を前方側に突出させるように湾曲させた長尺板状に構成される歩行者用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグカバーが、前記フードパネルと別体とした板金製とされて、
前記エアバッグカバーと前記突出用開口周縁との間に、可撓性を有した帯状のストラップが、左右方向に沿った複数箇所に、配設され、
前記ストラップが、それぞれ、
前記エアバッグカバーの後縁側と前記突出用開口の後縁近傍とを連結するように配設されて、前記エアバッグの突出時に、前記エアバッグカバーを、前縁側を後方側にむけて、上方側へ回転させつつ、車両後方側に向かって開き可能に構成されるとともに、
前記エアバッグカバー側の連結部位と前記突出用開口側の連結部位との間の長さ寸法を、前記エアバッグカバーの開き時において、前記エアバッグカバーの前記フロントウィンドシールドとの干渉を抑制可能な寸法に、設定して、構成されていることを特徴とする歩行者用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグカバーが、剛性を有した剛性向上部位と、該剛性向上部位より剛性を低下させた剛性低下部位と、を、左右方向に沿って交互に配設させた構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記フードパネルが、左右方向の中央付近を、左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成され、
前記エアバッグカバーが、前記フードパネルに沿うように、左右方向の中央付近を、左右両縁付近よりも上方に突出させるように構成されて、
前記ストラップが、前記エアバッグカバーにおける左右方向の中央付近となる位置に、配設される中央ストラップを備える構成とされ、
該中央ストラップが、前記エアバッグカバー側の連結部位と前記突出用開口側の連結部位との間の長さ寸法を、
前記エアバッグカバーを、左右方向の両縁付近に配設されたストラップにおける前記突出用開口側の連結部位付近を回転中心として、単体で後方側へ開かせた場合において、前記エアバッグカバーの左右方向の中央付近における開き前の後縁が、前記フロントウィンドシールドと当接する位置まで回転した際の側方から見た状態での前記突出用開口側の連結部位と前記エアバッグカバー側の連結部位とを結ぶ距離よりも、
小さく設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行者用エアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−96290(P2006−96290A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287540(P2004−287540)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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