説明

歩行補助装置

【課題】 膝関節と足首関節を補助する動作と、膝関節の補助をなくし、足首関節を補助する動作とを実行することができる歩行補助装置を提供する。
【解決手段】 ユーザの上腿から下腿にかけて装着できるように構成されており、膝関節にトルクを加えるアクチュエータ38を有する膝装具30と、ユーザの下腿から足にかけて装着できるように構成されており、足首関節にトルクを加えるアクチュエータ58を有する短下肢装具50を備えており、膝装具30が短下肢装具50から分離されていることを特徴とする歩行補助装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの歩行動作を補助する歩行補助装置に関する。特に、歩行動作のリハビリ用に適した歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの歩行動作を補助する装置が開発されている。例えば特許文献1には、ユーザの股関節と膝関節にトルクを加えるアクチュエータを備えた装着型の歩行補助装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−230099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の歩行補助装置は、重量物を運ぶ作業を補助する目的で作られたものであり、いわゆるパワードスーツと呼ばれるタイプである。特許文献1の技術は、例えば片方の脚を円滑に動かすことができない非健常者のためのリハビリ用装置にも適用することが可能であると考えられている。
【0005】
特許文献1の技術をリハビリ用装置に適用することを想定した場合、特に、重度の非健常者のためのリハビリ用装置に適用することを想定した場合には、次の2点を考慮する必要がある。一つは、歩行動作が円滑となるように補助するためには、膝関節だけでなく足首関節にもトルクを与えることが好ましいことである。他の一つは、リハビリの効果が上がって非健常者の歩行動作が円滑になるにつれて、膝関節の補助をなくし、足首関節を補助してリハビリを行うことが好ましいことである。本発明の目的は、そのような要求に応える歩行補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行補助装置は、膝装具と短下肢装具を有している。膝装具は、ユーザの上腿から下腿にかけて装着できるように構成されており、膝関節にトルクを加えるアクチュエータを有する。短下肢装具は、ユーザの下腿から足にかけて装着できるように構成されており、足首関節にトルクを加えるアクチュエータを有する。膝装具は短下肢装具から分離されている。
【0007】
この歩行補助装置では、膝装具によって膝関節にトルクを与えることができ、短下肢装具によって足首関節にトルクを与えることができる。これにより、重度の非健常者の歩行動作をより円滑に補助することができる。また、膝装具と短下肢装具が分離されているので、リハビリにより歩行動作が円滑になったときには、膝装具を装着せずに短下肢装具を装着することができる。これによって、膝関節を補助することなく、足首関節を補助して歩行補助を行うことができる。
【0008】
上述した歩行補助装置は、膝装具のアクチュエータと短下肢装具のアクチュエータを制御するコントローラをさらに備えていることが好ましい。また、膝装具が、上腿の傾斜角を検知する姿勢角センサを有しており、短下肢装具が、足が床に接地したことを検知する接地センサを有していることが好ましい。さらに、コントローラが、姿勢角センサと接地センサのセンサデータを用いて膝装具のアクチュエータと短下肢装具のアクチュエータを制御する協調制御モードと、姿勢角センサのセンサデータを用いずに接地センサのセンサデータを用いて短下肢装具のアクチュエータを制御する独立制御モードを切り換え可能に構成されていることが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、膝装具と短下肢装具を装着しているときには、姿勢角センサのセンサデータと接地センサのセンサデータを用いて、膝装具のアクチュエータと短下肢装具のアクチュエータを制御することができる。また、膝装具を装着せずに短下肢装具を装着しているときには、姿勢角センサのセンサデータを用いずに接地センサのセンサデータを用いて、短下肢装具のアクチュエータを制御することができる。膝装具と短下肢装具を装着している場合でも、膝装具を装着せずに短下肢装具を装着している場合でも、コントローラが適切にアクチュエータを制御することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、膝関節と足首関節を補助する歩行補助に用いることができ、かつ、膝関節を補助せずに足首関節を補助する歩行補助に用いることもできる歩行補助装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】膝装具30を含む歩行補助装置10を装着したユーザの正面図。
【図2】膝装具30を含む歩行補助装置10を装着したユーザの側面図。
【図3】膝装具30を除く歩行補助装置10を装着したユーザの側面図。
【図4】協調制御プログラムにより規定された処理を示すフローチャート。
【図5】独立制御プログラムにより規定された処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
実施例に係る歩行補助装置について説明する。図1、2は、ユーザに装着された状態の歩行補助装置10の概略構成を示している。図1、2に示すように、歩行補助装置10は、ボックス20と、膝装具30と、短下肢装具50を有している。ボックス20と、膝装具30と、短下肢装具50は、それぞれ別体により構成されている。ボックス20は、ユーザの腰に装着される。膝装具30と短下肢装具50は、ユーザの非健常脚に装着される。なお、歩行補助装置10は、図1、2に示すようにボックス20と膝装具30と短下肢装具50を装着して使用することができる一方で、図3に示すように、膝装具30を装着せずに、ボックス20と短下肢装具50だけを装着して使用することができる。
【0013】
図1、2に示すように、ボックス20は、ユーザの腰に装着される。ボックス20は、バッテリとコントローラを内蔵している。ボックス20は、コード42によって膝装具30に接続されている。また、膝装具30は、コード44によって短下肢装具50に接続されている。なお、コード42、44は、接続対象に対してコネクタ接続されており、接続対象から取り外すことができる。コード42、44は、電源供給ラインとアナログデータラインを有している。ボックス20に内蔵されているバッテリは、コード42、44の電源供給ラインを介して、膝装具30と短下肢装具50に電力を供給する。ボックス20に内蔵されているコントローラは、コード42、44のアナログデータラインを介して、膝装具30及び短下肢装具50と通信する。なお、図3に示すように、歩行補助装置10は、膝装具30を装着せずに、ボックス20と短下肢装具50のみを装着して使用することもできる。この場合、ボックス20は、コード46によって短下肢装具50と接続される。コントローラは、膝装具30が装着されている場合に実行する協調制御プログラムと、膝装具30が装着されていない場合に実行する独立制御プログラムを記憶している。また、ボックス20には、操作用のスイッチ等が設けられている。
【0014】
膝装具30は、ユーザの膝関節の動きを補助する。膝装具30は、上腿固定部32と、下腿固定部34を有している。上腿固定部32は、ユーザの上腿に固定(装着)される。下腿固定部34は、ユーザの下腿(膝下)に固定(装着)される。下腿固定部34は、膝関節部36で上腿固定部32に接続されている。下腿固定部34は、膝関節部36を軸として上腿固定部32対して回動することができる。膝装具30は、膝関節部36がユーザの膝関節と同軸に回転できる位置に装着される。膝関節部36には、モータ38が設置されている。モータ38は、エンコーダを内蔵するサーボモータである。モータ38には、コントローラから、制御指令値が入力される。モータ38は、入力された制御指令値に従って、下腿固定部34を上腿固定部32対して回動させる。上腿固定部32には、姿勢角センサ40が設置されている。姿勢角センサ40は、ピッチ軸回りにおける上腿固定部32の姿勢角(鉛直方向に対する傾斜角)を検出する。姿勢角センサ40は、図2の矢印90に示す向きをプラスとして姿勢角を検出する。姿勢角センサ40が検出する姿勢角は、コントローラに入力される。
【0015】
短下肢装具50は、ユーザの足首関節の動きを補助する。短下肢装具50は、下腿固定部52と、足固定部54を有している。下腿固定部52は、ユーザの下腿(足首の上)に固定(装着)される。足固定部54は、ユーザの足に固定(装着)される。足固定部54は、足首関節部56で下腿固定部52に接続されている。足固定部54は、足首関節部56を軸として下腿固定部52に対して回動することができる。短下肢装具50は、足首関節部56がユーザの足首関節と同軸に回転できる位置に装着される。足首関節部56には、モータ58が設置されている。モータ58は、エンコーダを内蔵するサーボモータである。モータ58には、コントローラから制御指令値が入力される。モータ58は、入力された制御指令値に従って、足固定部54を下腿固定部52に対して回動させる。足固定部54の底部には、3つの接地センサ55a〜55cが設置されている。接地センサ55aは、ユーザの踵に相当する位置に設置されている。接地センサ55bは、ユーザの拇指球(親指の付根)に相当する位置に設置されている。接地センサ55cは、ユーザのつま先に相当する位置に設置されている。接地センサ55a〜55cは、足固定部54の底部の対応する部分が接地したときにオンし、接地していないときにオフする。すなわち、接地センサ55a〜55cは、オン−オフ信号を出力する。出力されたオン−オフ信号はコントローラに入力される。
【0016】
次に、歩行中に各センサが出力するセンサデータについて説明する。膝装具30を装着している場合は、姿勢角センサ40が非健常脚の上腿の姿勢角を定期的に出力する。また、非健常脚の足裏全体が接地している状態(例えば、図2の状態)では、3つの接地センサ55a〜55cの全てがオンする。この状態から健常脚(歩行補助装置10を装着していない脚)を踏み出すと、非健常脚の踵が浮く。したがって、踵の接地センサ55aがオフする。その後、非健常脚を踏み出すときに、非健常脚が拇指球、つま先の順に離地する。したがって、先に拇指球の接地センサ55bがオフし、その後、つま先の接地センサ55cがオフする。遊脚となった非健常脚は、前方に振り出される。したがって、非健常脚の上腿の姿勢角(すなわち、姿勢角センサ40が検出する姿勢角)が増加する。前方への非健常脚の振り出しが終了すると、非健常脚が踵から接地するように動かされる。この動作中(非健常脚の前方への振り出しが終了してから、非健常脚の踵が接地するまでの動作中)は、非健常脚の上腿の姿勢角(すなわち、姿勢角センサ40が検出する姿勢角)は減少する。非健常脚の踵が接地すると、踵の接地センサ55aがオンする。その後、非健常脚側にユーザの体重が移動することで、非健常脚が、拇指球、つま先の順に接地する。したがって、先に拇指球の接地センサ55bがオンし、次に、つま先の接地センサ55cがオンする。歩行中は、以上の動作が繰り返される。したがって、接地センサ55a〜55c及び姿勢角センサ40のセンサデータから、非健常脚の状態を特定することができる。
【0017】
次に、歩行補助装置10の動作について説明する。最初に、ボックス20と膝装具30と短下肢装具50を装着して使用するときの歩行補助装置10の動作について説明する。図1、2に示すように歩行補助装置10を装着し、ボックス20の操作スイッチにより所定の操作を行うことで、歩行補助装置10が動作を開始する。動作を開始すると、最初に、コントローラが、膝装具30から信号が入力されているか否かを判定する。膝装具30から信号が入力されている場合には、コントローラは、協調制御プログラムを実行する。
【0018】
図4のフローチャートは、協調制御プログラムにより規定された処理を示している。
図4のステップS2では、コントローラは、接地センサ55a〜55cの何れかがオンしているか否かを判定する。すなわち、コントローラは、非健常脚が接地脚であるか遊脚であるかを判定する。非健常脚が遊脚である場合(ステップS2でNOの場合)には、コントローラは、ステップS4を実行する。ステップS4では、コントローラは、姿勢角センサ40が出力する姿勢角の経時変化に基づいて、上腿がプラス側に揺動(スイング)しているか否かを判定する。上腿がプラス側に揺動されている場合(ステップS4でYESの場合)には、コントローラは、ステップS6、S8を実行する。
【0019】
ステップS6では、コントローラは、姿勢角センサ40が出力する姿勢角に基づいて、膝装具30の膝関節部36を角度制御する。歩行中における膝関節の適切な角度は、上腿の姿勢角に応じて決まる。コントローラには、上腿が前方に揺動されている場合における膝関節部36の目標角度が、上腿の姿勢角に応じて記憶されている。コントローラは、姿勢角センサ40により検出される姿勢角に対応する目標角度をモータ38に出力する。これにより、膝関節部36を目標角度に制御する。
【0020】
ステップS8では、コントローラは、短下肢装具50の足首関節部56を角度制御する。ステップS8では、コントローラは、90度に設定された目標角度をモータ58に出力する。これにより、足首関節部56の角度が90度を維持するように制御される。
【0021】
一方、非健常脚が接地脚である場合(ステップS2でYESの場合)、または、非健常脚が遊脚であるが、上腿がプラス側に揺動していない場合(ステップS4でNOの場合)には、コントローラは、ステップS10、S12を実行する。
【0022】
ステップS10では、コントローラは、姿勢角センサ40が出力する姿勢角に基づいて、膝装具30の膝関節部36を角度制御する。コントローラには、非健常脚が接地脚である場合、及び、上腿がプラス側に揺動していない場合における膝関節部36の目標角度が、上腿の姿勢角に応じて記憶されている。なお、この目標角度は、ステップS6で使用される目標角度とは別に設けられている。コントローラは、姿勢角センサ40により検出される姿勢角に対応する目標角度をモータ38に出力する。これにより、膝関節部36の角度を目標角度に制御する。
【0023】
ステップS12では、コントローラは、短下肢装具50の足首関節部56をトルク制御する。すなわち、コントローラは、モータ58にトルク目標値を入力する。モータ58は、入力された目標値に相当するトルクが、足固定部54に対して下腿固定部52が揺動する方向と反対の方向に加わるように駆動する。このときモータ58に入力されるトルク目標値は、非健常脚の接地状態に応じて変更される。
全ての接地センサ55a〜55cがオンしているときには、コントローラは、絶対値が大きい第1トルク目標値をモータ38に入力する。それ以外の場合には、コントローラは、絶対値が第1トルク目標値よりも小さい第2トルク目標値をモータ38に入力する。
【0024】
コントローラは、図4に示す処理を繰り返し実行する。次に、図4に示す処理をより具体的に説明する。
非健常脚が遊脚であり、非健常脚の上腿をプラス側に揺動させる動作が実行されている場合には、ステップS2でNOと判定されるとともにステップS4でYESと判定される。したがって、コントローラは、ステップS6、S8を実行する。ステップS6では、コントローラは、膝関節部36を上腿の姿勢角に応じた角度に角度制御する。ステップS8では、コントローラは、足首関節部56を90度に角度制御する。上腿をプラス側に揺動させる動作が実行されている間は、ステップS6、S8が繰り返し実行されることにより、膝関節部36と足首関節部56が制御される。膝関節部36は、上腿が揺動するに従って、上腿の姿勢角に応じた角度に制御される。足首関節部56の角度は、90度に固定される。これによって、非健常脚を前方に振り出すときに、足先が下方へ垂れ下がることが防止される。したがって、足先と歩行面との間のクリアランスが確保され、ユーザが躓くことが防止される。
【0025】
非健常脚の上腿をプラス側へ揺動させる動作が終了すると、踵から接地するように非健常脚が動かされる。この動作の間(上腿をプラス側に揺動させる動作が終了してから踵が接地するまでの間)は、ステップS2でNOと判定されるとともにステップS4でNOと判定される。したがって、コントローラはステップS10、S12を繰り返し実行する。ステップS10では、コントローラは、膝関節部36を上腿の姿勢角に応じた角度に角度制御する。ステップS12では、コントローラは、足首関節部56をトルク制御する。ステップS12では、接地センサ55a〜55cが全てオフしているので、コントローラは、足首関節部56を第2トルク目標値(小さいトルク目標値)に従って制御する。踵が接地するまでの間は、ステップS10、S12が繰り返し実行されることにより、膝関節部36と足首関節部56が制御される。膝関節部36は、上腿が揺動するに従って、上腿の姿勢角に応じた角度に制御される。足首関節部56は、揺動方向と逆の方向に一定のトルク(低いトルク)が加わるように制御される。トルク制御では足首関節部56の角度が固定されないので、ユーザは足首関節を動かすことができる。非健常脚が接地する直前から足首関節を動かすことができるので、ユーザは違和感なく非健常脚を接地させることができる。また、トルク制御によって足首関節が支持されるので、接地時に足首関節に過大な負担がかかることもない。
【0026】
非健常脚の踵が接地すると、踵の接地センサ55aがオンする。したがって、ステップS2でYESと判定される。このため、踵が接地した以降も、コントローラは、ステップS10、S12を繰り返し実行する。踵が接地した段階では、接地センサ55b、55cがオフしているので、ステップS12では第2トルク目標値(小さいトルク目標値)に従って足首関節部56が制御される。踵が接地すると足が底屈方向に揺動し、非健常脚の拇指球とつま先が地面に向かう。低いトルク目標値が与えられた足首関節部56は、足の底屈方向の揺動に対して、いわゆる粘性抵抗を与えるように駆動する。この粘性抵抗により、足の底屈方向への揺動が緩やかとなり、非健常脚の拇指球やつま先が着地する際の衝撃が和らげられる。
【0027】
非健常脚の踵が接地してからユーザの体重が非健常脚側に移動すると、非健常脚の拇指球とつま先が接地する。すなわち、接地センサ55a〜55cの全てがオンする。この場合にも、ステップS2でYESと判定され、コントローラは、ステップS10、S12を繰り返し実行する。但し、この場合には、全ての接地センサ55a〜55cがオンしているので、コントローラは、ステップS12において第1トルク目標値(大きいトルク目標値)により足首関節部56を制御する。このように、ユーザの体重の大部分が非健常脚に加わっている状態では、足首関節部56が大きいトルク目標値に従って制御される。足裏全体が接地している間は、非健常脚全体が接地点を支点として前方へ揺動する。大きいトルク目標値は、この非健常脚全体の前方への揺動に対して抵抗を付与する。これによって、非健常脚の足首関節への負担がより軽減され、非健常脚のふらつきが防止される。
【0028】
その後、健常脚が踏み出されると、ユーザの体重が健常脚側に移動する。すると、非健常脚の踵が離地し、踵の接地センサ55aがオフする。この場合にも、接地センサ55b、55cがオンしているので、ステップS2でYESと判定される。このため、コントローラは、ステップS10、S12を繰り返し実行する。また、接地センサ55aがオフしているので、ステップS12では、コントローラは第2トルク目標値(小さいトルク目標値)に従って足首関節部56を制御する。このように、踵の離地後においても、足首関節部56の揺動に対して抵抗が付与され、足首関節が補助される。その後に非健常脚が再び遊脚となると、再度、ステップS6、S8の処理が実行される。
【0029】
以上に説明したように、ボックス20と膝装具30と短下肢装具50を装着した場合には、膝関節部36が姿勢角センサ40のセンサデータに基づいて制御されるとともに、足首関節部56が、姿勢角センサ40と接地センサ55a〜55cのセンサデータに基づいて制御される。
【0030】
次に、膝装具30を装着せずに、ボックス20と短下肢装具50のみを装着して使用するときの歩行補助装置10の動作について説明する。図3に示すように歩行補助装置10を装着し、ボックス20の操作スイッチにより所定の操作を行うことで、歩行補助装置10が動作を開始する。この場合には、膝装具30からの信号がコントローラに入力されないので、コントローラは独立制御プログラムを実行する。
【0031】
図5のフローチャートは、独立制御プログラムにより規定された処理を示している。
図5のステップS22では、コントローラは、接地センサ55a〜55cの何れかがオンしているか否かを判定する。すなわち、コントローラは、非健常脚が接地脚であるか遊脚であるかを判定する。
【0032】
非健常脚が遊脚である場合(ステップS22でNOの場合)には、コントローラは、ステップS24を実行する。ステップS24では、コントローラは、短下肢装具50の足首関節部56を角度制御する。ステップS24では、足首関節部56の90度に設定された目標角度をモータ58に入力する。これにより、足首関節部56が90度に制御される。非健常脚が遊脚であるときには、足首関節部56の角度が90度に固定されるので、足先が下方へ垂れ下がることが防止される。
【0033】
一方、非健常脚が接地脚である場合(ステップS22でYESの場合)には、コントローラは、ステップS26を実行する。ステップS26では、コントローラは、短下肢装具50の足首関節部56をトルク制御する。すなわち、コントローラは、モータ58にトルク目標値を入力する。モータ58は、入力された目標値に相当するトルクが、足固定部54に対して下腿固定部52が揺動する向きと反対向きに加わるように駆動する。このときモータ58に入力されるトルク目標値は、上述したステップS12と同様に変更される。
したがって、非健常脚が接地脚である場合には、ユーザは足首関節を意図した角度に動かすことができるとともに、揺動方向と逆の方向に抵抗(トルク)が付与される。これにより、歩行動作がスムーズとなるように、足首関節が補助される。また、ユーザの体重の大部分が非健常脚に加わっている場合(接地センサ55a〜55cの全てがオンしている場合)には、第1トルク目標値(大きいトルク目標値)により足首関節が補助される。これによって、足首関節への負担がより軽減され、非健常脚のふらつきが防止される。非健常脚にそれほど体重が加わっていない場合(接地センサ55a〜55cの何れかがオフしている場合)には、第2トルク目標値(小さいトルク目標値)により足首関節が補助されるので、ユーザによる足角度の調整を妨げることなく、かつ、急な揺動を抑えることができる。
【0034】
以上に説明したように、膝装具30を装着せずに、ボックス20と短下肢装具50のみを装着した場合には、短下肢装具50の足首関節部56が接地センサ55a〜55cのセンサデータに基づいて制御される。膝装具30を装着しない場合でも、ユーザの歩行を適切に補助することができる。
【0035】
以上に説明したように、実施例の歩行補助装置10は、膝装具30と短下肢装具50が別体により構成されている(分離されている)。したがって、リハビリ初期においては、膝装具30と短下肢装具50を装着して歩行訓練を行うことができる。また、リハビリにより歩行動作が円滑になれば、膝装具30を装着せずに短下肢装具50を装着して歩行訓練を行うことができる。また、膝装具30と短下肢装具50が別体により構成されているので、これらを装着するときに装着位置の調節が容易となる。
【0036】
また、歩行補助装置10では、コントローラが、膝装具30が装着されているか否かを検知し、短下肢装具50の足首関節部56の制御方法を切り換える。膝装具30の装着の有無に応じて、適切に足首関節部56を制御することができる。
【0037】
なお、上述した実施例では、接地センサ55a〜55cが、接地したか否かに応じてオン−オフ信号を出力したが、接地センサ55a〜55cは、圧力を検出する圧力センサであってもよい。圧力センサの場合、検出された圧力が閾値以上であるときに、コントローラが接地していると判断することができる。また、圧力が増加するときと圧力が低下するときとで閾値の値を変更してもよい。例えば、圧力が低下しているときには第1閾値を下回ったときを接地と判断し、その後に圧力が上昇したときには第2閾値を上回ったときを離地と判断することができる。このように閾値を変更すると、接地/非接地を正確に判別できる。
【0038】
また、上述した実施例では、ボックス20内にバッテリとコントローラが内蔵されていた。しかしながら、バッテリとコントローラは、短下肢装具50に設置されていてもよい。バッテリとコントローラを短下肢装具50に設置すれば、ボックス20は無くても構わない。また、上述した実施例では、コントローラが、各センサ及び各サーボモータと有線により通信していたが、無線により通信する構成としてもよい。
【0039】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
10:歩行補助装置
20:ボックス
30:膝装具
32:上腿固定部
34:下腿固定部
36:膝関節部
38:モータ
40:姿勢角センサ
50:短下肢装具
52:下腿固定部
54:足固定部
55a:接地センサ
55b:接地センサ
55c:接地センサ
56:足首関節部
58:モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの上腿から下腿にかけて装着できるように構成されており、膝関節にトルクを加えるアクチュエータを有する膝装具と、
ユーザの下腿から足にかけて装着できるように構成されており、足首関節にトルクを加えるアクチュエータを有する短下肢装具と、
を備えており、
膝装具が短下肢装具から分離されていることを特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
膝装具のアクチュエータと短下肢装具のアクチュエータを制御するコントローラをさらに備えており、
膝装具は、上腿の傾斜角を検知する姿勢角センサを有しており、
短下肢装具は足が床に接地したことを検知する接地センサを有しており、
コントローラが、姿勢角センサと接地センサのセンサデータを用いて膝装具のアクチュエータと短下肢装具のアクチュエータを制御する協調制御モードと、姿勢角センサのセンサデータを用いずに接地センサのセンサデータを用いて短下肢装具のアクチュエータを制御する独立制御モードを切り換え可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−182991(P2011−182991A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52213(P2010−52213)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】