説明

死角領域推定装置及びプログラム

【課題】、簡易な処理で、動的死角領域を推定することができるようにする。
【解決手段】存在確率変更部26によって、地図情報において、レーザレーダ12によって検出された現在の物体の位置に対応するブロックの存在確率を増加させると共に、自車両から検出された現在の物体の位置までの直線上に存在するブロックの存在確率を減少させることにより、静止物の位置を記録した地図情報を取得する。静的死角推定部28によって、取得された地図情報に記録された静止物の位置と、自車両の現在の位置とに基づいて、静的死角領域を推定する。現死角推定部30によって、レーザレーダ12によって検出された現在の物体の位置に基づいて、現在死角領域を推定する。動的死角推定部32によって、推定された現在死角領域と、推定された静的死角領域との差分に基づいて、動的死角領域を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、死角領域推定装置及びプログラムに係り、特に、移動体から見たときの動的死角領域を推定する死角領域推定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザレーダを用いて、自車周辺の障害物を検出し、自車周辺に存在する障害物によって生じる死角領域を推定する方法が知られている(例えば、特許文献1)。この方法では、レーザレーダによって障害物の路面上での位置を検出して、レーザの軌跡上で、検出位置よりも近い空間を、何も存在しない領域とし、その検出位置よりも遠くにある領域を、死角領域として推定している。
【0003】
この処理を視界全体(たとえば自車前方180°分)に対して行うことで、現在の周辺環境を、自由領域(障害物が存在しない領域)、障害物が存在する領域、及び障害物によって見えない死角領域に分類することができる。
【0004】
しかしながら、このように1回の計測によって得られる死角領域には、車両の表面以外の領域や建物内部の領域など、特に注意しなければならない二輪車などの移動物が存在する可能性のある死角以外の領域も含まれる。
【0005】
ここで、二輪車などの移動物が存在する可能性がある、移動物による死角領域(動的死角領域)を推定する場合には、計測された物体を移動物と静止物に分類し、分類された移動物による死角領域を算出する手法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−138186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の移動物と静止物とを分類して死角領域を算出する手法では、ロバストに移動物と静止物を分類することが難しく、ロバストかつ正確に分類を行うために、移動物の追跡などの計算量がかかる処理が必要となってしまう、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、簡易な処理で、動的死角領域を推定することができる死角領域推定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明に係る死角領域推定装置は、静止物の位置を記録した地図情報を取得する地図情報取得手段と、移動体の周辺に存在する現在の物体の位置を検出する物体位置検出手段と、前記移動体の現在の位置を取得する位置取得手段と、前記地図情報取得手段によって取得された前記地図情報に記録された静止物の位置と、前記位置取得手段によって取得された前記移動体の現在の位置とに基づいて、前記移動体から見たときの静止物によって形成された静的死角領域を推定する静的死角領域推定手段と、前記物体位置検出手段によって検出された現在の前記物体の位置に基づいて、前記移動体から見たときの現在の前記物体によって形成された現在死角領域を推定する現在死角領域推定手段と、前記現在死角領域推定手段によって推定された前記現在死角領域と、前記静的死角領域推定手段によって推定された前記静的死角領域との差分に基づいて、前記移動体から見たときの移動している前記物体によって形成された動的死角領域を推定する動的死角領域推定手段と、を含んで構成されている。
【0010】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、静止物の位置を記録した地図情報を取得する地図情報取得手段、移動体の周辺に存在する現在の物体の位置を検出する物体位置検出手段、前記移動体の現在の位置を取得する位置取得手段、前記地図情報取得手段によって取得された前記地図情報に記録された静止物の位置と、前記位置取得手段によって取得された前記移動体の現在の位置とに基づいて、前記移動体から見たときの静止物によって形成された静的死角領域を推定する静的死角領域推定手段、前記物体位置検出手段によって検出された現在の前記物体の位置に基づいて、前記移動体から見たときの現在の前記物体によって形成された現在死角領域を推定する現在死角領域推定手段、及び前記現在死角領域推定手段によって推定された前記現在死角領域と、前記静的死角領域推定手段によって推定された前記静的死角領域との差分に基づいて、前記移動体から見たときの移動している前記物体によって形成された動的死角領域を推定する動的死角領域推定手段として機能させるためのプログラムである。
【0011】
本発明によれば、地図情報取得手段によって、静止物の位置を記録した地図情報を取得する。物体位置検出手段によって、移動体の周辺に存在する現在の物体の位置を検出し、位置取得手段によって、移動体の現在の位置を取得する。
【0012】
そして、静的死角領域推定手段によって、地図情報取得手段によって取得された地図情報に記録された静止物の位置と、位置取得手段によって取得された移動体の現在の位置とに基づいて、移動体から見たときの静止物によって形成された静的死角領域を推定する。現在死角領域推定手段によって、物体位置検出手段によって検出された現在の物体の位置に基づいて、移動体から見たときの現在の物体によって形成された現在死角領域を推定する。
【0013】
そして、動的死角領域推定手段によって、現在死角領域推定手段によって推定された現在死角領域と、静的死角領域推定手段によって推定された静的死角領域との差分に基づいて、移動体から見たときの移動している物体によって形成された動的死角領域を推定する。
【0014】
このように、検出された移動体の周辺に存在する現在の物体の位置に基づいて推定される現在死角領域と、静止物の位置を記録した地図情報に基づいて推定される静的死角領域との差分に基づいて、動的死角領域を推定することにより、簡易な処理で、動的死角領域を推定することができる。
【0015】
本発明に係る死角領域推定装置は、物体位置検出手段によって現在の物体の位置が繰り返し検出される毎に、移動体の運動を推定する運動推定手段と、運動推定手段によって推定された現在の移動体の運動に基づいて、地図情報における現在の移動体の位置を繰り返し更新する位置更新手段と、物体位置検出手段によって現在の物体の位置が検出される毎に、物体位置検出手段によって検出された現在の物体の位置を、地図情報における位置に変換し、地図情報に、変換された現在の物体の位置を静止物の位置として記録すると共に、移動体から変換された現在の物体の位置までの間における静止物の位置の記録を減少させる検出位置記録手段と、を更に含み、地図情報取得手段は、検出位置記録手段によって静止物の位置が過去に記録された地図情報を取得することができる。これによって、移動体の周辺に存在する現在の物体の位置が検出される毎に、地図情報において、検出された現在の物体の位置を静止物の位置として記録すると共に、移動体から検出された現在の物体の位置までの間における静止物の位置の記録を減少させることにより、移動物の情報を除去して、移動体の周辺に存在する静止物の位置を精度よく記録した地図情報を生成することができる。
【0016】
また、上記の地図情報は、格子状に分割された複数のブロックで表されると共に、各ブロックには静止物が存在する存在確率が記録され、検出位置記録手段は、地図情報における変換された現在の物体の位置に対応するブロックの存在確率を増加させることにより、変換された現在の物体の位置を静止物の位置として記録し、移動体から変換された現在の物体の位置までの直線上にあるブロックの存在確率を減少させることにより、静止物の位置の記録を減少させることができる。
【0017】
本発明に係る死角領域推定装置は、物体位置検出手段によって現在の物体の位置が繰り返し検出される毎に、移動体の運動を推定する運動推定手段と、前回更新された地図情報を、運動推定手段によって推定された現在の移動体の運動に基づいて、現在の移動体から見た地図情報に繰り返し更新する地図更新手段と、物体位置検出手段によって現在の物体の位置が検出される毎に、更新された地図情報に、物体位置検出手段によって検出された現在の物体の位置を静止物の位置として記録すると共に、移動体から検出された現在の物体の位置までの間における静止物の位置の記録を減少させる検出位置記録手段と、を更に含み、地図情報取得手段は、検出位置記録手段によって静止物の位置が過去に記録された地図情報を取得することができる。これによって、移動体の周辺に存在する現在の物体の位置が検出される毎に、地図情報において、検出された現在の物体の位置を静止物の位置として記録すると共に、移動体から検出された現在の物体の位置までの間における静止物の位置の記録を減少させることにより、移動物の情報を除去して、移動体の前方に存在する静止物の位置を精度よく記録した地図情報を生成することができる。
【0018】
また、上記の地図情報は、格子状に分割された複数のブロックで表されると共に、各ブロックには静止物が存在する存在確率が記録され、検出位置記録手段は、地図情報における検出された現在の物体の位置に対応するブロックの存在確率を増加させることにより、検出された現在の物体の位置を静止物の位置として記録し、移動体から検出された現在の物体の位置までの直線上にあるブロックの存在確率を減少させることにより、静止物の位置の記録を減少させることができる。
【0019】
上記の運動推定手段は、物体位置検出手段によって異なる時刻で検出された物体の位置の変化に基づいて、移動体の運動を推定することができる。これによって、簡易な構成で移動体の運動を推定することができる。
【0020】
上記の物体位置検出手段は、レーザ又は電磁波を前記移動体の周辺に1次元に走査しながら出力すると共にレーザ又は電磁波の反射によって周辺に存在する物体の位置を検出することにより、移動体の周辺に存在する物体の位置を繰り返し検出することができる。
【0021】
上記の静的死角推定手段は、地図情報取得手段によって取得された地図情報に記録された静止物の位置のうち、位置取得手段によって取得された移動体の現在の位置からの各方向について最も近い位置に基づいて、静的死角領域を推定することができる。
【0022】
上記の物体位置検出手段は、移動体の現在の位置からの各方向について現在の前記物体の位置を検出し、現在死角推定手段は、物体位置検出手段によって移動体の現在の位置からの各方向について検出された現在の前記物体の位置に基づいて、移動体から見たときの現在の物体によって形成された現在死角領域を推定することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の死角領域推定装置及びプログラムによれば、検出された移動体の周辺に存在する現在の物体の位置に基づいて推定される現在死角領域と、静止物の位置を記録した地図情報に基づいて推定される静的死角領域との差分に基づいて、動的死角領域を推定することにより、簡易な処理で、動的死角領域を推定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る運転支援装置を示すブロック図である。
【図2】レーザレーダによる検出された物体の2次元位置を示すイメージ図である。
【図3】地図情報の各ブロックの存在確率の増減を説明するための図である。
【図4】自車両の周辺環境を示すイメージ図である。
【図5】2次元ブロック図である地図情報の例を示すイメージ図である。
【図6】自車両の周辺環境を示すイメージ図である。
【図7】(A)現在の死角マップを示すイメージ、(B)静的死角マップを示すイメージ図、及び(C)動的死角マップを示すイメージ図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る運転支援装置における静止物地図生成処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る運転支援装置における動的死角推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る運転支援装置を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る運転支援装置における静止物地図生成処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る運転支援装置を示すブロック図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る運転支援装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、車両に搭載された運転支援装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0026】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る運転支援装置10は、自車両の前方に対してレーザを1次元(水平方向)に走査しながら照射し、レーザの反射によりレーザが照射された物体の2次元位置を検出するレーザレーダ12と、自車両の車速を検出する車速センサ及び自車両のハンドル操舵角を検出するハンドル角センサを含む車両センサ14と、レーザレーダ12によって検出された物体の2次元位置、及び車両センサ14の検出結果に基づいて、静止物の存在を記録した地図情報を生成すると共に、地図情報から自車両からの動的死角領域を推定し、前方カメラ17によって撮像された前方画像に基づいて、警報装置18による警報によって運転支援を行なうコンピュータ16とを備えている。
【0027】
また、レーザレーダ12は、車両前方に設置され、装置を基準とする車両前方に存在する物体までの距離を検出する装置であり、出力するレーザを水平方向に走査することで、レーザの反射により自車両前方に存在する複数の物体表面上の複数の点の位置を検出することができる。レーザレーダ12による検出結果は、図2に示すように、自車両前方に存在する物体表面のある点の位置を表す2次元座標の集合である。レーザレーダ12による検出処理は一定サイクルで実行され、レーザレーダ12は、各時点での自車両前方に存在する物体表面の複数の点の2次元位置を示すデータをコンピュータ16に出力する。
【0028】
コンピュータ16は、CPU、後述する静止物地図生成処理ルーチン及び動的死角推定処理ルーチンを実行するためのプログラムを記憶したROM、データ等を記憶するRAM、及びこれらを接続するバスを含んで構成されている。このコンピュータ16をハードウエアとソフトウエアとに基づいて定まる機能実現手段毎に分割した機能ブロックで説明すると、図1に示すように、レーザレーダ12により検出された物体の2次元位置を取得する物体位置取得部20と、車両センサ14による検出結果に基づいて、自車両の運動を推定する自車運動推定部22と、自車両の運動に基づいて、一時刻前までの地図情報における自車両の位置を、地図情報における現在の自車両の位置に更新する地図上位置更新部24と、検出された現在の物体の2次元位置を、地図情報における位置に変換して、地図情報における静止物の存在確率を変更する存在確率変更部26と、地図情報の静止物の存在確率及び現在の自車両の位置に基づいて、静止物によって形成された自車両から見た静的死角領域を推定する静的死角推定部28と、検出された現在の物体の2次元位置に基づいて、現時点での自車両前方に存在する物体によって形成された自車両から見た現死角領域を推定する現死角推定部30と、推定された静的死角領域及び現死角領域に基づいて、移動している物体によって形成された自車両から見た動的死角領域を推定する動的死角推定部32と、推定された動的死角領域及び前方カメラ17によって撮像された前方画像を用いて、運転支援を行なう運転支援部34とを備えている。
【0029】
なお、存在確率変更部26が、本発明の検出位置記録手段の一例であり、地図上位置更新部24が、本発明の位置取得手段の一例である。本実施の形態では、各セルがそこに静止物が存在する確率を表現する2次元グリッド地図(占有格子地図)を更新していくことで静止物のみを含んだ地図を出力する場合を例に説明する。この2次元グリッド地図が、本発明の地図情報の一例である。2次元グリッド地図は、一定の大きさの格子(ブロック)によって分割された複数のブロックで表される地図である。各ブロックにはその位置に静止物が存在する確率が記録され、静止物が確実に存在する場合には存在確率として1が記録され、静止物が存在しない場合には存在確率として0が記録される。また、他の物体によって隠されているなどの原因によって、その位置の情報が得られていない場合には、存在確率として初期値である0.5が記録される。
【0030】
物体位置取得部20は、レーザレーダ12による計測が行われると、レーザレーダ12により検出された物体の2次元位置を取得する。また、自車運動推定部22は、レーザレーダ12による計測が行われると、レーザレーダ12による前回の計測が行われてから現在までの間における、車両センサ14の車速センサにより検出された現在の車速、及び車両センサ14のハンドル角センサにより検出された現在のハンドル操舵角を取得し、レーザレーダ12による前回の計測から現在までの自車両の運動を推定する。
【0031】
地図上位置更新部24は、自車運動推定部22によって推定された自車両の運動に基づいて、一時刻前までの2次元グリッド地図(地図情報)における自車両の位置を、2次元グリッド地図における現在の自車両の位置に更新する。
【0032】
存在確率変更部26は、地図上位置更新部24によって更新された現在の自車両の位置に従って、検出された物体の2次元位置を、2次元グリッド地図の座標系に変換し、図3に示すように、現在物体が存在するブロック(検出された物体の2次元位置に対応するブロック)の存在確率を増加させ、自車両の位置から物体位置までの直線上に存在するブロックの存在確率を減少させる。
【0033】
この存在確率の変更処理を各時刻(レーザレーダ12による計測が行われた各時刻)で行い、結果を蓄積することで、一定期間以上、対応する位置で物体が検出されたブロックの存在確率は高くなり、物体が一時的にしか検出されないブロックの存在確率は低くなる。図4のような周辺環境である場合には、図5に示すように、静止物の存在する領域、物体が存在しない領域、未知の領域を表す静止物地図を生成する。このとき、車両などの移動物は各時刻で位置が変化するため、移動物が一時的に存在するセルの値(存在確率)はほとんど増加せず、毎時刻同じセル上に存在する静止物の位置の存在確率は急激に増加する。この結果、多くの移動物が存在する走行環境においても、比較的長時間同じ位置に観測される路側物などの静止物の位置情報のみが記憶され、静止物のみを安定して検出可能である。
【0034】
現死角推定部30は、検出された現在の物体の2次元位置を物体位置取得部20から取得し、現在の死角領域を表わす現在の死角マップを出力する。死角領域を表現する死角マップとして、2次元グリッド地図と同様にグリッド地図を利用し、自車前方の現在計測可能な範囲の死角を表現する。このグリッドの各ブロックには、そのブロックに対応する領域の現在の状態が格納される。状態として、何も障害物が存在しない状態(可視領域)、死角になっている状態(死角領域)の2値が、以下のように記録される。
【0035】
まず、グリッドの全てのセルは死角領域を表す値で初期化される。次に、自車両の位置から、レーザレーダ12により検出された現在の物体の2次元位置を結ぶ直線上にあるセルに自由領域を表す値を割り振る。これを、検出された物体の全ての2次元位置について繰り返す。この処理によって対象領域が死角領域と可視領域とに分類される。図7(A)は、図6に示した現在の計測可能範囲内での死角マップの例で、灰色部分が死角領域を表し、それ以外の白の部分は可視領域を示す。推定された現在の死角マップは、動的死角推定部32へと出力される。
【0036】
静的死角推定部28は、一時刻前まで存在確率が変更された2次元グリッド地図を取得し、図6に示すような周辺環境である場合には、一時刻前の2次元グリッド地図と、地図上位置更新部24によって得られた現在の自車の位置とに基づいて、現在の自車両から見たときの静止物によって死角となっている領域を表す静的死角マップを生成する(図7(B))。
【0037】
まず、2次元グリッド地図上で、現在の自車両の位置から一定角度ごとに2次元グリッド地図上を走査して、最も近い静止物の位置を求める。この処理を前方180°で行うことによって、レーザレーダ12と同様の物体位置情報を得ることができる。こうして得られる物体位置情報には静止物の位置のみが含まれ、一時的な移動物の位置情報は含まれない。
【0038】
そのため、この静止物体位置情報を使って、現死角推定部30と同様に死角を推定すると、静止物による死角のみが推定可能である。この静止物による死角をここでは静的死角と呼ぶ。静的死角領域を表わす静的死角マップは、現死角マップと同様に死角領域と可視領域を表す2値を記録するグリッド地図として出力される。
【0039】
動的死角推定部32は、現在の死角マップと静的死角マップを取得し、それらの死角領域の差分をとることによって動的死角領域を推定する。現在の死角マップには、現在観測可能な静止物と移動物両方によって生じる死角領域が含まれている。この死角から、静止物によって生じる静的死角領域のみを記録した部分を取り除くことによって、移動物によって生じた死角のみを含んだ動的死角マップを生成することができる。現在の死角マップと静的死角マップとは同じ大きさのグリッドであるので、グリッド内の各セルで値を比較して、現在の死角マップのみで死角となっているセルを抽出することで、図7(C)に示す斜線領域のように、動的死角領域を推定することができる。ここで、動的死角マップが表わす動的死角領域は、静的死角マップを推定するときに参照する地図情報が生成された時点(例えば、一時刻前)に比べて移動している物体によって形成された死角領域である。
【0040】
運転支援部34は、前方カメラ17によって撮像された前方画像において、推定された動的死角領域に対応する領域を含む探索範囲を設定し、設定された探索範囲内から、歩行者や二輪車などを検出する。運転支援部34は、検出された歩行者や二輪車と衝突する危険がある場合には、警報装置18による警報を出力させる。
【0041】
次に、本実施の形態に係る運転支援装置10の作用について説明する。
【0042】
まず、レーザレーダ12によって、レーザが自車両の前方を水平方向に走査されて、走査方向に並んだレーザ照射位置としての物体の2次元位置の各々までの距離が計測され、自車両の前方に存在する物体の2次元位置が検出される。レーザレーダ12によって検出される2次元位置は、レーザを走査する毎に得られる。
【0043】
そして、コンピュータ16によって、図8に示す静止物地図生成処理ルーチンが実行される。
【0044】
まず、ステップ100において、レーザレーダ12によってレーザが走査されると、レーザレーダ12から、前方に存在する物体の2次元位置(走査方向に並んだ各2次元位置までの計測距離)を示すデータを取得すると共に、前回のレーザの走査から現在までの、車両センサ14の車速センサにより検出された車速及び車両センサ14のハンドル角センにより検出されたハンドル操舵角を取得する。
【0045】
そして、ステップ102において、上記ステップ100で取得した車速及びハンドル操舵角に基づいて、前回のレーザの走査から現在までの自車両の運動を推定する。次のステップ104では、前回算出された地図情報の座標系における自車両の位置と、上記ステップ102で推定された自車両の運動とに基づいて、地図情報(2次元グリッド地図)の座標系における現在の自車両の位置を更新する。
【0046】
そして、ステップ106において、上記ステップ104で更新された地図情報の座標系における現在の自車両の位置に基づいて、上記ステップ100で取得した前方に存在する物体の2次元位置を、地図情報の座標系における位置に変換する。次のステップ108では、上記ステップ106で変換された、地図情報の座標系における自車両前方に存在する物体の位置に基づいて、地図情報において、自車両前方に存在する物体の位置に対応するブロックの存在確率を増加させると共に、自車両の位置から物体の位置までの直線上に存在するブロックの存在確率を減少させることにより、現在物体が存在しない位置を地図上に記録して、上記ステップ100へ戻り、次のレーザの走査に応じて上記処理を繰り返す。
【0047】
上述したように、静止物地図生成処理ルーチンが繰り返し実行されることにより、地図情報における静止物の位置の記録が随時更新される。
【0048】
なお、生成される地図情報は、上記の静止物地図生成処理ルーチンが所定回数繰り返されたときに有効とされるようにしてもよい。この場合には、上記静止物地図生成処理ルーチンが所定回数繰り返された後に、地図情報が、静的死角推定部28及び現死角推定部30に出力されるようにすればよい。
【0049】
また、コンピュータ16によって、上記静止物地図生成処理ルーチンと並行して、図9に示す動的死角推定処理ルーチンが実行される。
【0050】
まず、ステップ120において、レーザレーダ12によってレーザが走査されると、静止物地図生成処理ルーチンによって、一時刻前(前回のレーザの走査に応じた処理)において生成された地図情報を取得する。
【0051】
そして、ステップ122において、レーザレーダ12から、前方に存在する物体の2次元位置(走査方向に並んだ各2次元位置までの計測距離)を示すデータを取得すると共に、前回のレーザの走査から現在までの、車両センサ14により検出された車速及びハンドル操舵角を取得する。
【0052】
そして、ステップ124において、上記ステップ122で取得した車速及びハンドル操舵角に基づいて、前回のレーザの走査から現在までの自車両の運動を推定する。次のステップ126では、前回算出された地図情報の座標系における自車両の位置と、上記ステップ124で推定された自車両の運動とに基づいて、地図情報の座標系における現在の自車両の位置を演算する。
【0053】
次のステップ128では、上記ステップ120で取得した地図情報に記録された静止物の位置と、上記ステップ126で演算された地図情報の座標系における現在の自車両の位置とに基づいて、静的死角マップを生成する。
【0054】
そして、ステップ130において、上記ステップ122で取得した前方に存在する物体の2次元位置に基づいて、現死角マップを生成する。次のステップ132では、上記ステップ130で生成された現死角マップにおける死角領域のセルと、上記ステップ128で生成された静的死角マップにおける死角領域のセルとの差分に基づいて、動的死角領域を表わす動的死角マップを生成して、運転支援部34へ出力し、上記ステップ120へ戻り、次のレーザの走査に応じて上記処理を繰り返す。
【0055】
運転支援部34では、動的死角マップが出力される毎に、出力された動的死角マップに基づいて、前方カメラ17によって現在撮像された前方画像において、推定された動的死角領域に対応する領域を含む探索範囲を設定し、設定された探索範囲内から、歩行者や二輪車などを検出し、検出された歩行者や二輪車と衝突する危険がある場合に、警報装置18による警報を出力させる。
【0056】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る運転支援装置によれば、レーザレーダによって検出された自車両の前方に存在する現在の物体の位置に基づいて推定される現在の死角領域と、静止物の位置を記録した地図情報に基づいて推定される静的死角領域との差分に基づいて、動的死角領域を推定することにより、簡易な処理で、動的死角領域を推定することができる。
【0057】
また、レーザレーダによって前方に存在する現在の物体の位置が検出される毎に、地図情報において、検出された現在の物体の2次元位置に対応するブロックの存在確率を増加させると共に、自車両の位置から検出された現在の物体の2次元位置までの直線上に存在するブロックの存在確率を減少させることにより、移動物の情報を除去して、静止物の位置を精度よく記録した地図情報を生成することができる。
【0058】
また、移動している他の車両などによって生じる死角である動的死角領域には、現在見えていない歩行者や二輪車などが存在する可能性が高く、特に注意が必要な領域であると考えられるため、走行環境において、動的死角領域を路面平面上で推定し、運転支援部に提供して、動的死角領域周辺を重点的に監視することで、現在見えていない潜在的な危険にいち早く対応することが可能になる。
【0059】
また、移動物による死角を推定するために、計測した物体位置情報を静止物と移動物に分類し、移動物として分類された物体によって生じる死角を算出する手法が従来技術として考えられるが、正確な分類を行うためには移動物追跡などの処理が必要である。それに比べて、本実施の形態では、移動物と静止物を陽に判別することなく、レーザレーダにより計測された距離情報を時間的に蓄積した地図と、レーザレーダにより計測された現在の距離情報から求めた死角との単純な差分のみで、動的な死角を算出可能であるため、短時間で安定した動的死角領域の推定が可能である。
【0060】
また、車両の予防安全や危険予知において現在見えていないが危険が存在する可能性が高い死角領域は重要である。特に車両などの移動物で一時的に隠されて見えない領域には、他の車両や歩行者などが存在する可能性が高く、注意が必要であるため、レーザレーダなどで観測可能な障害物によって隠されている死角領域の中で、より危険が存在する可能性の高い、車両などの移動物による死角領域(動的死角領域)のみを推定ことができる。
【0061】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
第2の実施の形態では、自車両から見た局所地図情報に、静止物の位置を記録している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0063】
図10に示すように、第2の実施の形態に係る運転支援装置210のコンピュータ216は、物体位置取得部20と、自車運動推定部22と、自車両の運動に基づいて、一時刻前までの局所地図情報を現在の自車両から見た座標系の局所地図情報に更新する局所地図更新部224と、検出された現在の物体の2次元位置に基づいて、更新された局所地図情報における静止物の存在確率を変更する存在確率変更部226と、一時刻前からの自車両の運動に基づいて、局所地図情報の座標系における現在の自車両の位置を演算する自車位置演算部227と、局所地図情報の静止物の存在確率及び局所地図情報の座標系における現在の自車両の位置に基づいて、静的死角領域を推定する静的死角推定部228と、現死角推定部30と、動的死角推定部32と、運転支援部34とを備えている。なお、自車位置演算部227が、本発明の位置取得手段の一例である。
【0064】
局所地図更新部224は、一時刻前までに更新された局所地図情報を、推定された自車両の運動に従って、現在の自車から見た座標系へと変換することで、現在の自車両から見た前方領域を表わす局所地図情報を生成する。また、局所地図更新部224は、局所地図情報の更新を繰り返し行う。局所地図情報は、上記図3に示すように、自車両前方の一定領域内を、一定の大きさの格子(ブロック)によって分割した複数のブロックで表される地図である。各ブロックにはその位置に静止物が存在する確率が記録され、静止物が確実に存在する場合には存在確率として1が記録され、静止物が存在しない場合には存在確率として0が記録される。また、他の物体によって隠されているなどの原因によって、その位置の情報が得られていない場合には、存在確率として初期値である0.5が記録される。
【0065】
存在確率変更部226は、局所地図更新部224により局所地図情報が更新される毎に、物体位置取得部20によって取得された現在の物体の2次元位置それぞれに基づいて、更新された局所地図情報において、その物体の2次元位置に対応するブロックの存在確率を増加させ、自車両からその物体の2次元位置までの直線上に存在するブロックの存在確率を減少させる。このように存在確率を変更することにより、一定期間以上、対応する位置で物体が検出されたブロックの存在確率は高くなり、物体が一時的にしか検出されないブロックの存在確率は低くなる。この結果、多くの移動物が存在する走行環境においても、比較的長時間同じ位置に観測される路側物などの静止物のみを安定して検出可能である。
【0066】
自車位置演算部227は、一時刻前から現在までの推定された自車両の運動に基づいて、一時刻前に更新された局所地図情報の座標系における現在の自車両の位置を演算する。
【0067】
静的死角推定部228は、一時刻前まで存在確率が変更された局所地図情報を取得し、局所地図情報と、自車位置演算部227によって得られた現在の自車の位置とに基づいて、現在の自車両から見たときの静止物によって死角となっている領域を表す静的死角マップを生成する。
【0068】
次に、第2の実施の形態における静止物地図生成処理ルーチンについて図11を用いて説明する。なお、第1の実施の形態と同様の処理については、同一符号を付して説明を省略する。
【0069】
まず、ステップ100において、レーザレーダ12によってレーザが走査されると、レーザレーダ12から、前方に存在する物体の2次元位置を示すデータを取得すると共に、前回のレーザの走査から現在までの、検出された車速及び検出されたハンドル操舵角を取得する。
【0070】
そして、ステップ102において、上記ステップ100で取得した車速及びハンドル操舵角に基づいて、前回のレーザの走査から現在までの自車両の運動を推定する。次のステップ250では、後述するステップ252で前回更新された局所地図情報を、上記ステップ102で推定された自車両の運動に応じて、現在の自車両から見た座標系で表わされる局所地図情報に更新する。
【0071】
次のステップ252では、上記ステップ100で取得した自車両前方に存在する物体の2次元位置に基づいて、上記ステップ250で更新された局所地図情報において、自車両前方に存在する物体の2次元位置に対応するブロックの存在確率を増加させると共に、自車両から物体の2次元位置までの直線上に存在するブロックの存在確率を減少させることにより現在物体が存在しない位置を地図上に記録して、上記ステップ100へ戻り、次のレーザの走査に応じて上記処理を繰り返す。
【0072】
上述したように、静止物地図生成処理ルーチンが繰り返し実行されることにより、局所地図情報における静止物の位置の記録が随時更新される。
【0073】
また、第1の実施の形態と同様に、静止物地図生成処理ルーチンと並行して、動的死角推定処理ルーチンを実行する。
【0074】
このように、現在の自車両から見た局所地図情報に更新する毎に、検出された現在の物体の2次元位置に対応するブロックの存在確率を増加させると共に、自車両の位置から検出された現在の物体の2次元位置までの直線上に存在するブロックの存在確率を減少させることにより、自車両の前方に存在する静止物の位置を精度よく記録した局所地図情報を生成することができる。
【0075】
次に、第3の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となる部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
第3の実施の形態では、レーザレーダによる検出結果を用いて、自車両の運動を推定している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0077】
図12に示すように、第3の実施の形態に係る運転支援装置310は、レーザレーダ12と、コンピュータ316と、前方カメラ17と、警報装置18とを備えている。
【0078】
コンピュータ316では、自車運動推定部322によって、異なる2時刻の各々で検出された物体の2次元位置の変化に基づいて、自車両の運動を推定する。例えば、自車運動推定部322は、物体位置取得部20によって取得された、レーザレーダ12により検出された現在の物体の2次元位置と、一時刻前の物体の2次元位置とに基づいて、検出された物体を静止物とみなして、2時刻間における静止物体のみかけの動きを抽出する。また、自車運動推定部322は、現在の物体の2次元位置と一時刻前の物体の2次元位置とから、抽出された静止物のみかけの動きに従って2次元位置が変化していない物体の2次元位置を除外して、再び、検出された物体を静止物とみなして、静止物体のみかけの動きを抽出することにより、一時刻前から現在までの自車両の運動を推定する。
【0079】
なお、第3の実施の形態に係る運転支援装置の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
このように、車両センサを用いずに、レーザレーダの計測結果を用いて、自車両の運動をすることができるため、簡易な装置構成とすることができる。
【0081】
次に、第4の実施の形態について説明する。なお、第4の実施の形態に係る運転支援装置の構成は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0082】
第4の実施の形態では、前回走行したときに生成された地図情報に基づいて、静的死角領域を推定している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0083】
自車両の走行時に、コンピュータ16の物体位置取得部20、自車運動推定部22、地図上位置更新部24、及び存在確率変更部26によって、静止物の位置を記録した地図情報(2次元グリッド地図)を生成して、メモリ(図示省略)に記憶しておく。
【0084】
静的死角推定部28は、前回の走行時に生成された2次元グリッド地図をメモリから読み出し、読み出した2次元グリッド地図と、地図上位置更新部24によって得られた現在の自車の位置とに基づいて、現在の自車両から見たときの静止物によって死角となっている領域を表す静的死角マップを生成する。
【0085】
第4の実施の形態に係る運転支援装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
次に、第5の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成となっている部分については、同一符号を付して説明を省略する。
【0087】
第5の実施の形態では、予め用意された、静止物の位置を記録された地図情報に基づいて、静的死角領域を推定している点が、第1の実施の形態と異なっている。
【0088】
図13に示すように、第5の実施の形態に係る運転支援装置510のコンピュータ516は、物体位置取得部20と、自車運動推定部22と、地図上位置更新部24と、静止物の位置を記憶した2次元グリッド地図である地図情報を記憶した地図記憶部526と、静的死角推定部28と、現死角推定部30と、動的死角推定部32と、運転支援部34とを備えている。
【0089】
地図記憶部526に記憶されている地図情報は、従来既知の方法により静止物(ガードレールなど)の位置が予め記録された2次元グリッド地図である。
【0090】
静的死角推定部28は、2次元グリッド地図をメモリから読み出し、読み出した2次元グリッド地図と、地図上位置更新部24によって得られた現在の自車の位置とに基づいて、現在の自車両から見たときの静止物によって死角となっている領域を表す静的死角マップを生成する。
【0091】
第5の実施の形態に係る運転支援装置のコンピュータ516では、静止物地図生成処理ルーチンを実行しない。また、コンピュータ516は、第1の実施の形態と同様に、動的死角領域推定処理ルーチンを実行する。
【0092】
第5の実施の形態に係る運転支援装置の他の構成及び作用については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
なお、上記の第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、レーザレーダの検出結果や車速センサ及びハンドル角センサの検出結果を用いて、自車両の運動を推定している場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、GPSセンサによる自車位置の検出結果を用いて自車両の運動を推定するようにしてもよい。また、レーザレーダ、車速センサ、ハンドル角センサ、及びGPSセンサの検出結果を組み合わせて、自車両の運動を推定するようにしてもよい。
【0094】
また、レーザレーダによりレーザを前方に走査して物体の位置を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、ミリ波などの電磁波を前方に走査して物体の位置を検出するようにしてもよい。
【0095】
また、レーザレーダによって自車両前方の物体の位置を検出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ステレオカメラによって撮影された前方画像から、自車両前方の物体の位置を検出するようにしてもよい。
【0096】
また、静止物の位置を記憶した地図情報を、自車両の運転支援装置内で生成し、又は予め記憶しておく場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、車車間通信によって他車両から地図情報を取得したり、無線通信で他の装置から地図情報を取得したりするようにしてもよい。
【0097】
また、動的死角領域の推定結果を、歩行者や二輪車の検出に利用する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、推定された動的死角領域に対応する領域を、ディスプレイに表示された前方画像上に表示して、ドライバに提示することにより、動的死角領域への注意を喚起するようにしてもよい。
【0098】
本発明のプログラムを、記憶媒体に格納して提供することも可能である。
【符号の説明】
【0099】
10、210、310、510 運転支援装置
12 レーザレーダ
14 車両センサ
16、216、316、516 コンピュータ
20 物体位置取得部
22、322 自車運動推定部
24 地図上位置更新部
26、226 存在確率変更部
28、228 静的死角推定部
30 現死角推定部
32 動的死角推定部
34 運転支援部
224 局所地図更新部
227 自車位置演算部
526 地図記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止物の位置を記録した地図情報を取得する地図情報取得手段と、
移動体の周辺に存在する現在の物体の位置を検出する物体位置検出手段と、
前記移動体の現在の位置を取得する位置取得手段と、
前記地図情報取得手段によって取得された前記地図情報に記録された静止物の位置と、前記位置取得手段によって取得された前記移動体の現在の位置とに基づいて、前記移動体から見たときの静止物によって形成された静的死角領域を推定する静的死角領域推定手段と、
前記物体位置検出手段によって検出された現在の前記物体の位置に基づいて、前記移動体から見たときの現在の前記物体によって形成された現在死角領域を推定する現在死角領域推定手段と、
前記現在死角領域推定手段によって推定された前記現在死角領域と、前記静的死角領域推定手段によって推定された前記静的死角領域との差分に基づいて、前記移動体から見たときの移動している前記物体によって形成された動的死角領域を推定する動的死角領域推定手段と、
を含む死角領域推定装置。
【請求項2】
前記物体位置検出手段によって現在の物体の位置が繰り返し検出される毎に、前記移動体の運動を推定する運動推定手段と、
前記運動推定手段によって推定された現在の前記移動体の運動に基づいて、前記地図情報における現在の前記移動体の位置を繰り返し更新する位置更新手段と、
前記物体位置検出手段によって現在の物体の位置が検出される毎に、前記物体位置検出手段によって検出された現在の物体の位置を、前記地図情報における位置に変換し、前記地図情報に、前記変換された現在の物体の位置を前記静止物の位置として記録すると共に、前記移動体から前記変換された現在の物体の位置までの間における前記静止物の位置の記録を減少させる検出位置記録手段と、を更に含み、
前記地図情報取得手段は、前記検出位置記録手段によって前記静止物の位置が過去に記録された地図情報を取得する請求項1記載の死角領域推定装置。
【請求項3】
前記物体位置検出手段によって現在の物体の位置が繰り返し検出される毎に、前記移動体の運動を推定する運動推定手段と、
前回更新された前記地図情報を、前記運動推定手段によって推定された現在の前記移動体の運動に基づいて、現在の前記移動体から見た地図情報に繰り返し更新する地図更新手段と、
前記物体位置検出手段によって現在の物体の位置が検出される毎に、前記更新された地図情報に、前記物体位置検出手段によって検出された現在の物体の位置を前記静止物の位置として記録すると共に、前記移動体から前記検出された現在の物体の位置までの間における前記静止物の位置の記録を減少させる検出位置記録手段と、を更に含み、
前記地図情報取得手段は、前記検出位置記録手段によって前記静止物の位置が過去に記録された地図情報を取得する請求項1記載の死角領域推定装置。
【請求項4】
前記地図情報は、格子状に分割された複数のブロックで表されると共に、各ブロックには静止物が存在する存在確率が記録され、
前記検出位置記録手段は、前記地図情報における前記変換された現在の物体の位置に対応するブロックの前記存在確率を増加させることにより、前記変換された現在の物体の位置を前記静止物の位置として記録し、前記移動体から前記変換された現在の物体の位置までの直線上にあるブロックの前記存在確率を減少させることにより、前記静止物の位置の記録を減少させる請求項2記載の死角領域推定装置。
【請求項5】
前記地図情報は、格子状に分割された複数のブロックで表されると共に、各ブロックには静止物が存在する存在確率が記録され、
前記検出位置記録手段は、前記地図情報における前記検出された現在の物体の位置に対応するブロックの前記存在確率を増加させることにより、前記検出された現在の物体の位置を前記静止物の位置として記録し、前記移動体から前記検出された現在の物体の位置までの直線上にあるブロックの前記存在確率を減少させることにより、前記静止物の位置の記録を減少させる請求項3記載の死角領域推定装置。
【請求項6】
前記運動推定手段は、前記物体位置検出手段によって異なる時刻で検出された物体の位置の変化に基づいて、前記移動体の運動を推定する請求項2〜請求項5の何れか1項記載の死角領域推定装置。
【請求項7】
前記物体位置検出手段は、レーザ又は電磁波を前記移動体の周辺に1次元に走査しながら出力すると共に前記レーザ又は前記電磁波の反射によって周辺に存在する物体の位置を検出することにより、前記移動体の周辺に存在する物体の位置を繰り返し検出する請求項1〜請求項6の何れか1項記載の死角領域推定装置。
【請求項8】
前記静的死角推定手段は、前記地図情報取得手段によって取得された前記地図情報に記録された静止物の位置のうち、前記位置取得手段によって取得された前記移動体の現在の位置からの各方向について最も近い位置に基づいて、前記静的死角領域を推定する請求項1〜請求項7の何れか1項記載の死角領域推定装置。
【請求項9】
前記物体位置検出手段は、前記移動体の現在の位置からの各方向について現在の前記物体の位置を検出し、
前記現在死角推定手段は、前記物体位置検出手段によって前記移動体の現在の位置からの各方向について検出された現在の前記物体の位置に基づいて、前記移動体から見たときの現在の前記物体によって形成された現在死角領域を推定する請求項1〜請求項8の何れか1項記載の死角領域推定装置。
【請求項10】
コンピュータを、
静止物の位置を記録した地図情報を取得する地図情報取得手段、
移動体の周辺に存在する現在の物体の位置を検出する物体位置検出手段、
前記移動体の現在の位置を取得する位置取得手段、
前記地図情報取得手段によって取得された前記地図情報に記録された静止物の位置と、前記位置取得手段によって取得された前記移動体の現在の位置とに基づいて、前記移動体から見たときの静止物によって形成された静的死角領域を推定する静的死角領域推定手段、
前記物体位置検出手段によって検出された現在の前記物体の位置に基づいて、前記移動体から見たときの現在の前記物体によって形成された現在死角領域を推定する現在死角領域推定手段、及び
前記現在死角領域推定手段によって推定された前記現在死角領域と、前記静的死角領域推定手段によって推定された前記静的死角領域との差分に基づいて、前記移動体から見たときの移動している前記物体によって形成された動的死角領域を推定する動的死角領域推定手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−123551(P2011−123551A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278581(P2009−278581)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】