説明

残存型枠製造装置

【課題】 蒸気養成室などの加熱設備によらなくても高い生産性を可能としあるいは蒸気養成工程でもコンクリートの沸騰を回避してより高い生産性を実現する残存型枠製造装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 残存型枠製造装置1はコンクリート製の残存型枠2の表面側を形成する発泡ポリプロプレン製合成樹脂部材からなる表面形成型3(下型)、裏面を形成する裏面成形型4(上型)、側面を形成する側面成形型5、6、7、8とからなる成形型群9と、この成形型群9を組立てた状態を保持する鋼製の支持枠体10とからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に道路壁、護岸壁、河川壁、建築壁などの擁護壁を足場を組むことなく構築して行くことを可能としている主にコンクリート製の残存型枠(設置場所にそのまま残す型枠)の製造に適した製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の特開平11−81533に開示されているようなコンクリート製残存型枠の製造は、鋼材で形成した金型(成形型)にコンクリートを流し込み製造していた。
【特許文献1】 特開平11−81533
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、次に述べるような欠点があった。
(1)鋼製金型は熱放熱性が高いために打設コンクリートの硬化熱を奪いコンクリートの硬化時間を長くしてしまうため、生産性が悪いという欠点があったし、生産性を上げるためには蒸気養成室(加熱室)での蒸気養成工程を行わなければならないので、その設備や設備の運転にも経費が掛かるという欠点があった。
また鋼製金型は熱伝導性が高いために、生産性を高めようと蒸気養成室で加熱(65度C程度)した場合には、打設したコンクリートの発熱とあいまってコンクリートが沸騰してしまり(特に高流動コンクリートで著しい)、品質が劣化してしまうという欠点があった。
(2)鋼材の金型(成形型)は高価であり、特に表面を割り石模様にするなど複雑な模様を有する化粧板のものは大変高価であり、その凸凹が深い場合には強度の点から型枠の厚みを均一に得るために裏面も表面と同じような凸凹形態に形成しなければならず、この場合は上型と下型の両金型が高価なものになるという欠点があった。
実際の製品の発売の段階では、注文者のニーズおよび多様な壁構築環境に対応した幾種類もの模様形態に応えられるよう、幾種類もの金型を準備することが販売戦略上必要になるため、初期投資が膨大になるものであった。
したがって、資金の乏しい中小企業が参入し難いという問題をもっていた。
(3)鋼材金型は重量があるために、重機によりセットや取り外しや運搬を行わなければならず、作業性および安全性が良くないという欠点があった。
【0004】
本発明は以上のような従来技術の欠点に鑑みてなされたものであって、その目的は、蒸気養成室などの加熱設備によらなくても高い生産性を可能としあるいは蒸気養成工程でもコンクリートの沸騰を回避してより高い生産性を実現する残存型枠製造装置を提供することを目的としている。
また本発明の他の目的は、少ない資金でも幾種類ものコンクリート型枠の製造を可能する残存型枠製造装置を提供することを目的としている。
【0005】
本発明の前記ならびのそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は以下に述べるような構成となっている。
<請求項1記載の発明>
設置箇所にそのまま残存させる主にコックリート製の残存型枠の表面を形成する表面形成型と裏面を形成する裏面形成型を具備した残存型枠の製造装置において、
前記表面形成型を断熱性部材で形成してなる残存型枠製造装置を構成している。
<請求項2記載の発明>
請求項1記載の発明の構成において、裏面形成型を鋼製部材やゴム製部材などの耐久性部材で形成してなる残存型枠製造装置を構成している。
<請求項3記載の発明>
請求項1記載の発明の構成において、裏面形成型を断熱性部材で形成してなる残存型枠製造装置を構成している。
<請求項4記載の発明>
請求項3記載の発明の構成において、残存型枠の側部面を形成する側部形成型を鋼製部材やゴム製部材などの耐久性部材で形成してなる残存型枠製造装置を構成している。
<請求項5記載の発明>
請求項1、2、3、4いずれか記載の発明の構成において、断熱性部材が発泡ポリプロピレン製樹脂部材などの発泡樹脂製部材である残存型枠製造装置を構成している。
【発明の効果】
【0007】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
設置箇所にそのまま残存させる主にコックリート製の残存型枠の表面を形成する表面形成型(一般的には下型)と裏面を形成する裏面形成型(一般的には上型)を具備した残存型枠の製造装置において、前記表面形成型を断熱性部材で形成してなる残存型枠製造装置を構成しているので、
(1)成形型に断熱性部材(試験で発泡ポロプロピレン製樹脂製部材)使用することにより、鋼製型ではコンクリートの硬化に夏場で略8時間ほど掛かるのに対して、発泡ポロプロピレン製樹脂製部材型では略5時間程度で硬化させることができるという、生産性を1.5〜1.7倍程度向上させることができるという効果を得ることができる。
(2)より熱硬化速度を速めて生産性を向上させるために、蒸気養成工程において加熱しても、成形型に断熱性部材を使用しているので養成熱により成形型が急激に熱くなることがなく、打設したコンクリートが沸騰するほどまでに熱くならず、高速なコンクリートの熱硬化を実現して品質の劣化なく生産性を高めることができるという効果を得ることができる。
(3)「表面形成型を断熱性とし裏面形成型を鋼製部材やゴム製部材などの耐久性部材で形成してなる」ものは、形成枠体と裏面形成型を一体化させて操作することができ且つ汚れを落とす作業が鋼製であるので型を傷める心配なく素早く短時間で行え、且つ、蒸気養成工程を行った場合において、打設コンクリートの鋼製面であるので熱伝導性良好により裏面側が熱くなり、一方表面側は断熱材に覆われているで熱伝導性が悪くコンクリートが沸騰するほどには熱くならない、これにより、装飾面である表面は高品質の仕上がりを実現しながら、裏側からの加熱効果により高速硬化を実現するので、品質を保持しながら生産性を向上させるという硬化を得ることができる。
また、両面を断熱性部材としてなるものに比べると、製品の成形回数を向上させることができる。
つまり、両面断熱性部材の場合、裏面を形成する上型はコンクリート硬化後に上から引き剥がす操作により引き剥がすものであるので、引き剥がす際に上型に一部が反ったり、一部分に負荷か掛かったりして部分が欠けり、折れたりし易く損傷が下型に比べて早く損傷することが多いのであるが、この問題を解消してより製品の成形数を増やすことができるので、コスト低減を図れるという効果を得ることができる。
また、両面断熱性部材の形成型では、上型が破損しやすいので慎重に行わなくてはならず剥がすのに時間が掛かかるのであるが、裏面形成型を鋼製とすることにより、この剥がし時間がなくなり、この点でも生産性を向上させることができるという効果を得ることができる。
裏面形成型は鋼製にしても、単純な形でよく安価にできる。
(4)「表面形成型も裏面形成型も断熱性部材により形成してなる」ものは、断熱性部材を発泡ポリプロピレン製樹脂部材などの安価な部材により形成できるので、少ない資金の投入で生産が行えるという効果を得ることができる。
(5)上型、下型、側部型の全ての型を断熱性部材で形成してなるものは、最も安価に型を取得することができ、これを保持する支持枠も四角箱形態の単純で安価なものを使用できるので、生産設備に経費がかからずコストの安いものを製造できるという効果を得ることができる。
(6)「断熱性部材が発泡ポリプロピレン製樹脂部材などの発泡樹脂製部材」としてなるものは、材料が安価である上に100パーセントをリサイクルできるという効果を得る。
現在の段階で本願発明者および出願人が知りうる素材では、発泡ポリプロピレン製樹脂部材が耐久性、高品質形成、価格で最も優れている。両面形成型で50枚ほど製品を形成できる。表面形成型が発泡ポリプロピレン製樹脂部材で裏面形成型を鋼製としたものでは80枚ほどの製品を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面に示す発明を実施するための最良の形態により、本発明を詳細に説明する。
【0009】
<第1の実施の形態>
図1ないし図6に示す本発明を実施するための最良の第1の実施の形態において1は残存型枠製造装置であって、この残存型枠製造装置1はコンクリート製の残存型枠2の表面側を形成する発泡ポリプロプレン製合成樹脂部材からなる表面形成型3(下型)、裏面を形成する裏面成形型4(上型)、側面を形成する側面成形型5、6、7、8とからなる成形型群9と、この成形型群9を組立てた状態を保持する鋼製の支持枠体10とからなっている。側面成形型5、6、7、8には残存型枠2の側部同士と上下同士あるいはいずれか一方が嵌込関係となるように適宜に凸部や凹部が形成されている。
支持枠体10は底部枠11と、この底部枠11の各側部にヒンジ手段(図示せず)により回動可能に設けられた側部枠12、13、14、15と、側部枠15にヒンジ手段(図示せず)により回動可能に設けられた上部枠16とからなっている。
表面形成型3の内側面は化粧面形成面17が形成されている。裏面成形型4にはコンクリート注入口18、19が設けられている。
図5に示す残存型枠2は型枠本体20と、この型枠本体20の補強スリットの入った凹形態の裏面21と、型枠本体20の表面である化粧面22とからなっている。
<残存型枠2の成形工程>
図4を参照しながら残存型枠製造装置1による残存型枠2の成形工程を説明する。
(1)支持枠体10を地面や床に展開する。(図4中のa)
(2)成形型群9を図2のごとく組立て底部枠11上に載せ、側部枠12、13、14、15を立ち上げ固定し、上部枠16を被せ固定して組立てられた成形型群10を完全に支持枠体10で覆う。(図4中のb :図ではふしぜんであるが内部が分かるようにした表現をしている。)
上部枠や側部枠の固定はボルトなどの締め付け部品や締め付け具によるもの、各枠フランジを設けこのフランジ同士を合わせて連結金具や締め付け金具や接合金具などで固定するもの、錘によるもの、枠体と錘によるものなど多様な形態でおこなうことができる。
(3)コンクリート注入口18、19から高流動コンクリート32を注ぎいれ打設し、高流動コンクリート32が硬化するまで放置する。硬化速度を速めるために蒸気養成室などで加熱するのもよい。(図4中のc)
(4)高流動コンクリート32が硬化したら、支持枠体10を展開し組立てられた成形型群9を分解して成形された残存型枠2を取り出す。(図4中のd)
<残存型枠2による擁護壁形成例>
図6を参照しながら残存型枠製造装置1により成形した残存型枠2を用いた擁護壁23とその施工について説明する。
(1)地面を掘り基礎24を形成する。
(2)基礎24の前部と背部に安価な鋼製のメッシュ残存型枠25を鉄筋28により所定の位置に固定してコンクリート26を打設して地中埋設部27を形成する。
(3)地中埋設部27の前部に残存型枠2を背部にメッシュ残存型枠25を鉄筋28により所定の位置傾きに固定してコンクリート26を打設する。この工程を繰り返し行うことにより高くして行き所定の高さの擁壁23を完成させる。
擁壁23の露出表面29は整列された残存型枠2の化粧面22により装飾される。
【0010】
(発明を実施するための異なる形態)
次に、図7ないし図10に示す本発明を実施するための異なる形態について説明する。なお、これら本発明を実施するための異なる形態の説明に当たって、本発明を実施するための最良の第1の実施の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0011】
<第2の実施の形態>
図7ないし図9に示す本発明を実施するための第2の実施の形態において前記本発明を実施するための第1の実施の形態と主に異なる点は、側面成形型5、6、7、8を設けずこの側面成形型5、6、7、8に変わる側面形成部位を鋼製の側部形成型枠35、36、37、38として設けてなる支持枠体39を形成し、支持枠39と表面形成型3と裏面成形型4とからなる残存型枠製造装置40を形成した点にある。側部形成型枠35、36、37、38の嵌合部となる突起や凹部位をゴム製部材などの鋼製以外の耐久性の有る部材で形成してもよい。
<残存型枠2の成形工程>
図9を参照しながら残存型枠製造装置40による残存型枠2の成形工程を説明する。
(1)支持枠体39を地面や床に展開し表面形成型3を底部枠11上にセットする。(図9中のa)
(2)側部形成型枠35、36、37、38を立ち上げ固定し、裏面成形型4をセットし上部枠16を被せ固定する。(図9中のb :図ではふしぜんであるが内部が分かるようにした表現をしている。)
(3)コンクリート注入口18、19から高流動コンクリート32を注ぎいれ打設し、高流動コンクリート32が硬化するまで放置する。硬化速度を速めるために蒸気養成室などで加熱するのもよい。(図9中のc)
(4)高流動コンクリート32が硬化したら支持枠体39を展開し、裏面成形型4を剥がし取り、成形された残存型枠2を取り出す。(図9中のd)
【0012】
<第3の実施の形態>
図10に示す本発明を実施するための第3の実施の形態において前記本発明を実施するための第2の実施の形態と主に異なる点は、裏面成形型4を設けずこれに代わる鋼製や高耐久性のあるゴム製部材などの裏面形成型45を上部枠16の内側に固定し設けた支持枠体46を形成し、支持枠体46と表面形成型3とで残存型枠製造装置47を形成した点にある。
(1)支持枠体39を地面や床に展開し表面形成型3を底部枠11上にセットする。(図10中のa)
(2)側部形成型枠35、36、37、38を立ち上げ固定し、上部枠16を被せ固定する。(図10中のb :図ではふしぜんであるが内部が分かるようにした表現をしている。)
(3)コンクリート注入口18、19から高流動コンクリート32を注ぎいれ打設し、高流動コンクリート32が硬化するまで放置する。硬化速度を速めるために蒸気養成室などで加熱するのもよい。(図10中のc)
(4)高流動コンクリート32が硬化したら支持枠体39を展開し、成形された残存型枠2を取り出す。(図10中のd)
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明はコンクリート壁を製造する産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態の成形型群の組立分解図。
【図2】図1の組立図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の支持枠体の展開平面図および展開正面図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の成形工程図。
【図5】本発明の第1の実施の形態の装置により成形される残存型枠の裏面図、A−A線切断端面図およびB−B線切断端面図。
【図6】図5の残存型枠を用いた擁護壁とその施工例。
【図7】本発明の第2の実施の形態の支持枠の展開斜視図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の支持枠の展開図平面図および展開正面図。
【図9】本発明の第2の実施の形態の成形工程図。
【図10】本発明の第3の実施の形態の成形工程図。
【符号の説明】
【0015】
1:残存型枠製造装置、
2:残存型枠、
3:表面形成型、
4:裏面成形型、
5:側面成形型、
6:側面成形型、
7:側面成形型、
8:側面成形型、
9:成形型群、
10:支持枠体、
11:底部枠、
12:側部枠、
13:側部枠、
14:側部枠、
15:側部枠、
16:上部枠、
17:化粧面形成面、
18:コンクリート注入口、
19:コンクリート注入口、
20:型枠本体、
21:裏面、
22:化粧面、
23:擁護壁、
24:基礎、
25:メッシュ残存型枠、
26:コンクリート、
27:地中埋設部、
28:鉄筋、
29:露出表面、
30:鉄筋、
31:アンカー、
32:高流動コンクリート、
35:側部形成型枠、
36:側部形成型枠、
37:側部形成型枠、
38:側部形成型枠、
39:支持枠体、
40:残存型枠製造装置、
45:裏面形成型、
46:支持枠体、
47:残存型枠製造装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置箇所にそのまま残存させる主にコックリート製の残存型枠の表面を形成する表面形成型と裏面を形成する裏面形成型を具備した残存型枠の製造装置において、
前記表面形成型を断熱性部材で形成してなることを特徴とする残存型枠製造装置。
【請求項2】
裏面形成型を鋼製部材やゴム製部材などの耐久性部材で形成してなることを特徴とする請求項1記載の残存型枠製造装置。
【請求項3】
裏面形成型を断熱性部材で形成してなることを特徴とする請求項1記載の残存型枠製造装置。
【請求項4】
残存型枠の側部面を形成する側部形成型を鋼製部材やゴム製部材などの耐久性部材で形成してなることを特徴とする請求項3記載の残存型枠製造装置。
【請求項5】
断熱性部材が発泡ポリプロピレン製樹脂部材などの発泡樹脂製部材であることを特徴とする請求項1、2、3、4いずれか記載の残存型枠製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−116929(P2006−116929A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336633(P2004−336633)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(597123320)東横テクノプラン株式会社 (5)
【Fターム(参考)】