説明

比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法

【課題】低透磁率を有する磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法を提供する。
【解決手段】Cr:50〜70原子%を含有し、残部がCoからなる成分組成を有する第一CoCr合金粉末、Cr:5〜15原子%を含有し、残部がCoからなる成分組成を有する第二CoCr合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することを特徴とし、前記第一CoCr合金粉末および前記第二CoCr合金粉末のいずれか一方または両方の粉末は、さらにB:0.5〜8原子%を含有しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハードディスクの高密度磁気記録媒体に適用される磁気記録膜、特に垂直磁気記録媒体に適用される磁気記録膜を形成するためのスパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置は一般にコンピューターやデジタル家電等の外部記録装置として用いられており、記録密度の一層の向上が求められている。そのため、近年、超高密度の記録を実現できる垂直磁気記録方式が注目されてきた。この垂直磁気記録方式は、従来の面内記録方式と異なり、原理的に高密度化するほど記録磁化が安定すると言われており、すでに実用化されている。この垂直磁気記録方式のハードディスク媒体の磁気記録層に適用する材料の有力な候補としてCoCrPt−SiOグラニュラ磁気記録膜が提案されており、この磁気記録膜は高性能な磁気記録膜であることが必要である。これに適用可能な磁気記録膜の一つとしてCoCrPt−SiOグラニュラ磁気記録膜が提案されており、このCoCrPt−SiOグラニュラ磁気記録膜はCrおよびPtを含むCo基焼結合金相と二酸化珪素相の混合相を有するCo基焼結合金スパッタリングターゲットを用いてマグネトロンスパッタ法により作製することが知られている(非特許文献1参照)。
このCo基焼結合金スパッタリングターゲットは、通常、二酸化珪素粉末、Cr粉末、Pt粉末およびCo粉末を、二酸化珪素:2〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち、ホットプレスまたは熱間静水圧プレスなどの方法で加圧焼結することにより作製されることが知られている(特許文献1、特許文献2などを参照)。
さらに、二酸化珪素:2〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成にさらにB:0.5〜8モル%を含有するターゲットも知られている(特許文献5参照)。
さらに、前記非磁性酸化物はSiOのほかにTiO、Cr、TiO、Ta、Al、BeO、MgO、ThO、ZrO、CeO、Yなどの非磁性酸化物が使用できることが知られている(特許文献3、4参照)。
【非特許文献1】「富士時報」Vol.75No.3 2002(169〜172ページ)
【特許文献1】特開2001‐236643号公報
【特許文献2】特開2004‐339586号公報
【特許文献3】特開2003‐36525号公報
【特許文献4】特開2006‐24346号公報
【特許文献5】特開2004‐310910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来の方法で作製したCo基焼結合金スパッタリングターゲットは比透磁率が高いために、ターゲット上空に漏れ出る磁束が少ないマグネトロンスパッタリングに適用した際には成膜速度が低下しさらにターゲットの利用効率が低下するという問題点があった。したがって、一層比透磁率の低いCo基焼結合金からなるスパッタリングターゲットが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者は、比透磁率の一層低いCo基焼結合金スパッタリングターゲットを得るべく研究を行なったところ、
原料粉末としてCr:50〜70原子%を含有し、残部がCoからなる成分組成を有するCr含有量が多いCoCr合金粉末(以下、第一CoCr合金粉末という)と、Cr:5〜15原子%を含有し、残部がCoからなる成分組成を有する前記第一CoCr合金粉末よりもCr含有量の少ないCoCr合金粉末(以下、第二CoCr合金粉末という)、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、
非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することにより得られた磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットは、従来法である二酸化珪素粉末、Cr粉末、Pt粉末およびCo粉末を、二酸化珪素:2〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜30モル%を含有し、残部:Coからなる組成となるように配合し混合したのち、ホットプレスまたは熱間静水圧プレスなどの方法で加圧焼結することにより作製されたCo基焼結合金スパッタリングターゲットに比べて、成分組成が同じであっても比透磁率が低くなる、というという研究結果が得られたのである。
【0005】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)Cr:50〜70原子%を含有し、残部がCoからなる成分組成を有する第一CoCr合金粉末、Cr:5〜15原子%を含有し、残部がCoからなる成分組成を有する第二CoCr合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結する比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法、に特徴を有するものである。
【0006】
一般に、磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットは、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成を有することが知られているが、これにさらにB:0.5〜8モル%含有する成分組成を有しても良く、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成を有する磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットも知られている。
このBを含有する磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットは、前記第一CoCr合金粉末および前記第二CoCr合金粉末のいずれか一方または両方の粉末に、さらにB:0.5〜8原子%を含有する成分組成を有する粉末にPt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することにより比透磁率の一層低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットを製造することができる。
【0007】
したがって、この発明は、
(2)前記第一CoCr合金粉末および前記第二CoCr合金粉末のいずれか一方または両方の粉末は、さらにB:0.5〜8原子%を含有する成分組成を有する粉末であり、これら粉末にPt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結する前記(1)記載の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法、に特徴を有するものである。
【0008】
一層具体的には、原料粉末として、前記Cr含有量の多い第一CoCr合金粉末にさらにB:0.5〜8原子%を含有する成分組成を有する粉末(以下、第一CoCrB合金粉末という)および前記第一CoCr合金粉末に比べてCr含有量の少ない前記第二CoCr合金粉末にさらにB:0.5〜8原子%を含有する成分組成を有する粉末(以下、第二CoCrB合金粉末という)を更に用意し、これら原料粉末を、
(イ)前記第一CoCr合金粉末、前記第二CoCrB合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することにより得られた磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲット、
(ロ)前記第一CoCrB合金粉末、前記第二CoCr合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することにより得られた磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲット、並びに
(ハ)前記第一CoCrB合金粉末、前記第二CoCrB合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することにより得られた磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットは、
従来の純Co粉末、純Cr粉末、Pt粉末、B粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することにより得られた磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットに比べて比透磁率が一層低くなる、という研究結果が得られ、この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、
(a)第一CoCr合金粉末、第二CoCrB合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結する比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法、
(b)第一CoCrB合金粉末、第二CoCr合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結する比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法、
(c)第一CoCrB合金粉末、第二CoCrB合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結する比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法、に特徴を有するものである。
【0009】
この発明の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法で使用する非磁性酸化物粉末は、二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムのうちのいずれかであり、特に二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウムのうちのいずれかであることが好ましいことはすでに知られている。したがって、この発明は、
(3)前記非磁性酸化物粉末は、二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムのうちのいずれかである前記(1)または(2)記載の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法、に特徴を有するものである。
【0010】
前記加圧焼結は、具体的には、ホットプレスまたは熱間静水圧プレスであることが好ましい。したがって、この発明は、
(4)前記加圧焼結は、ホットプレスまたは熱間静水圧プレスである前記(1)、(2)または(3)記載の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法、に特徴を有するものである。
【0011】
この発明の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法において原料粉末として第一CoCr合金粉末、第二CoCr合金粉末、第一CoCrB合金粉末および第二CoCrB合金粉末を使用する理由は、第一CoCr合金粉末および第一CoCrB合金粉末はCoとCrが非磁性体の金属間化合物を生成する組成域であることから低透磁率化に有効であり、なおかつ金属間化合物中のCrは酸化しにくくなってパーティクルの原因となるCrの酸化凝集体を生じにくくすることから、出発原料粉末として非常に有効であるからである。しかし、この高Cr含有の第一CoCr合金粉末または第一CoCrB合金粉末を使用する際に、目標のターゲット組成を得るためには残量のCoを純Co粉末で供給すると透磁率が上昇する。これを抑制するためにCoに少量のCrを加えて、ある程度透磁率を下げた低Cr組成の第二CoCr合金粉末または第二CoCrB合金粉末からCoを供給することが有効であるからである。
【0012】
次に、この発明の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法において使用する第一CoCr合金粉末および第一CoCrB合金粉末のCrを50〜70原子%とし、一方、第二CoCr合金粉末および第二CoCrB合金粉末のCrを5〜15原子%に限定した理由を説明する。
第一CoCr合金粉末および第一CoCrB合金粉末のCr含有量を50〜70原子%としたのは、この範囲を外れると、粉末中のCoCrの金属間化合物が少なくなり、Cr酸化防止効果が小さくなるので好ましくないからであり、一方、第二CoCr合金粉末および第二CoCrB合金粉末のCrを5〜15原子%としたのは、5原子%未満ではCo合金粉末の透磁率が高くなりすぎるので好ましくなく、15原子%を超えて含有するとターゲット全体としてCrが高Cr含有の第一CoCr合金粉末よりも低Cr含有の第二CoCr合金粉末の方に多く存在することとなり、低透磁率化およびCr酸化防止の観点から好ましくない理由によるものである。一層好ましくは、7〜12原子%である。
また、Bを第一CoCr合金粉末および第二CoCr合金粉末に添加して第一CoCrB合金粉末および第二CoCrB合金粉末として添加するのは、Bを単独粉末で加えると、製造工程中にB粉末が酸化し易いために好ましくなく、Bの酸化防止のためにはBを合金粉末として添加するのが好ましいからである。
【0013】
この発明の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法において使用する第一CoCr合金粉末、第二CoCr合金粉末、第一CoCrB合金粉末および第二CoCrB合金粉末は、50%粒径が150μmを越えると混合粉砕時に粉砕が十分に進まないことから、粒径は50%粒径が150μm以下であることが好ましく、微細であるほど好ましいところから分級などにより50%粒径が75μm以下にすることが一層好ましく、さらに50%粒径が45μm以下とすることがさらに一層好ましい。前記原料粉末の混合は不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。これは混合中にCrが酸素と結合してクロム酸化物凝集体が形成されるのをより一層防止するからである。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、一層比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットまたは磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットを提供することができ、コンピューター並びにデジタル家電等の産業の発展に大いに貢献し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
市販の50%粒径:10μmのCo粉末、50%粒径:15μmのPt粉末、50%粒径:5μmのB粉末を用意し、さらに非磁性酸化物粉末として50%粒径:3μmのSiO粉末、50%粒径:3μmのTiO粉末、50%粒径:3μmのTa粉末および50%粒径:3μmのAl粉末を用意し、さらに50%粒径:15μmのCr粉末を用意した。
【0016】
実施例1
さらに、第一CrCo合金粉末としてCo50Cr50合金粉末、第二CoCr合金粉末としてCo88Cr12合金粉末(但し、Co50Cr50合金粉末およびCo88Cr12合金粉末の組成比は原子%を示す)をガスアトマイズ法により作製し、これらにPt粉末およびSiO粉末を表1に示される組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉し、この容器をボールミルで12時間回転させることにより混合粉末を作製した。
【0017】
得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1000℃、圧力:35MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより表1に示される成分組成を有するホットプレス体を作製し、このホットプレス体を切削加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有するターゲットを作製することにより本発明法1を実施し、前記本発明法1で作製したターゲットの面内方向の最大比透磁率を測定し、その結果を表1に示した。
【0018】
従来例1
先に用意したCo粉末、Pt粉末、SiO粉末およびCr粉末を表3に示される割合で配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉し、この容器をボールミルで12時間回転させることにより混合粉末を作製した。
得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1000℃、圧力:35MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより表1に示される成分組成を有するホットプレス体を作製し、このホットプレス体を切削加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有するターゲットを作製することにより従来法1を実施し、従来法1で得られたターゲットの面内方向の最大比透磁率を測定し、その結果を表1に示した。
【0019】
【表1】

【0020】
表1に示される結果から、本発明法1で作製したターゲットと従来法1で作製したターゲットを比較すると、得られたターゲットの成分組成は同じであっても、本発明法1で作製したターゲットは従来法1で作製したターゲットよりも面内方向の最大比透磁率が低いことがわかる。
【0021】
実施例2
第一CoCr粉末としてCo55Cr45合金粉末、第二CoCrB合金粉末としてCo90.5Cr6.03.5合金粉末(但し、Co55Cr45合金粉末およびCo90.5Cr6.03.5合金粉末の組成比は原子%を示す)をガスアトマイズ法により作製し、これらにPt粉末およびTiO粉末を表2に示される組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉し、この容器をボールミルで12時間回転させることにより混合粉末を作製した。
得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1000℃、圧力:35MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより表2に示される成分組成を有するホットプレス体を作製し、このホットプレス体を切削加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有するターゲットを作製することにより本発明法2を実施し、前記本発明法2で作製したターゲットの面内方向の最大比透磁率を測定し、その結果を表2に示した。
【0022】
従来例2
先に用意したCo粉末、Pt粉末、TiO粉末、B粉末およびCr粉末を表4に示される割合で配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉し、この容器をボールミルで12時間回転させることにより混合粉末を作製した。
得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1000℃、圧力:35MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより表2に示される成分組成を有するホットプレス体を作製し、このホットプレス体を切削加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有するターゲットを作製することにより従来法2を実施し、前記従来法2で作製したターゲットの面内方向の最大比透磁率を測定し、その結果を表2に示した。
【0023】
【表2】

【0024】
表2に示される結果から、本発明法2で作製したターゲットと従来法2で作製したターゲットを比較すると、得られたターゲットの成分組成は同じであっても、本発明法2で作製したターゲットは従来法2で作製したターゲットよりも面内方向の最大比透磁率が低いことがわかる。
【0025】
実施例3
第一CoCrB粉末としてCo28Cr65合金粉末、第二CoCr合金粉末としてCo90Cr10合金粉末(但し、Co28Cr65合金粉末およびCo90Cr10合金粉末の組成比は原子%を示す)をガスアトマイズ法により作製し、これらにPt粉末およびTa粉末を表3に示される組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉し、この容器をボールミルで12時間回転させることにより混合粉末を作製した。
得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1000℃、圧力:35MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより表5に示される成分組成を有するホットプレス体を作製し、このホットプレス体を切削加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有するターゲットを作製することにより本発明法3を実施し、前記本発明法3で作製したターゲットの面内方向の最大比透磁率を測定し、その結果を表3に示した。
【0026】
従来例3
先に用意したCo粉末、Pt粉末、Ta粉末、B粉末およびCr粉末を表3に示される割合で配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉し、この容器をボールミルで12時間回転させることにより混合粉末を作製した。
得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1000℃、圧力:35MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより表3に示される成分組成を有するホットプレス体を作製し、このホットプレス体を切加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有するターゲットを作製することにより従来法3を実施し、前記従来法3で作製したターゲットの面内方向の最大比透磁率を測定し、その結果を表3に示した。
【0027】
【表3】

【0028】
表3に示される結果から、本発明法3で作製したターゲットと従来法3で作製したターゲットを比較すると、得られたターゲットの成分組成は同じであっても、本発明法3で作製したターゲットは従来法3で作製したターゲットよりも面内方向の最大比透磁率が低いことがわかる。
【0029】
実施例4
第一CoCrB粉末としてCo41Cr55合金粉末、第二CoCrB合金粉末としてCo87Cr合金粉末(但し、Co41Cr55合金粉末およびCo87Cr合金粉末の組成比は原子%を示す)をガスアトマイズ法により作製し、これらにPt粉末並びにAl粉末を表4に示される組成となるように配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉し、この容器をボールミルで12時間回転させることにより混合粉末を作製した。
得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1000℃、圧力:35MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより表4に示される成分組成を有するホットプレス体を作製し、このホットプレス体を切削加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有するターゲットを作製することにより本発明法4を実施し、前記本発明法4で作製したターゲットの面内方向の最大比透磁率を測定し、その結果を表4に示した。
【0030】
従来例4
先に用意したCo粉末、Pt粉末、Al粉末、B粉末およびCr粉末を表4に示される割合で配合し、得られた配合粉末を粉砕媒体となるジルコニアボールと共に10リットルの容器に投入し、この容器内の雰囲気をArガス雰囲気中で置換し、その後、容器を密閉し、この容器をボールミルで12時間回転させることにより混合粉末を作製した。
得られた混合粉末を真空ホットプレス装置に充填し、真空雰囲気中、温度:1000℃、圧力:35MPa、3時間保持の条件で真空ホットプレスすることにより表4に示される成分組成を有するホットプレス体を作製し、このホットプレス体を切加工して直径:152.4mm、厚さ:6mmの寸法を有するターゲットを作製することにより従来法4を実施し、前記従来法4で作製したターゲットの面内方向の最大比透磁率を測定し、その結果を表4に示した。
【0031】
【表4】

【0032】
表4に示される結果から、本発明法4で作製したターゲットと従来法4で作製したターゲットを比較すると、得られたターゲットの成分組成は同じであっても、本発明法4で作製したターゲットは従来法4で作製したターゲットよりも面内方向の最大比透磁率が低いことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cr:50〜70原子%を含有し、残部がCoからなる成分組成を有する第一CoCr合金粉末、Cr:5〜15原子%を含有し、残部がCoからなる成分組成を有する第二CoCr合金粉末、Pt粉末および非磁性酸化物粉末を、
非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することを特徴とする比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項2】
前記第一CoCr合金粉末および前記第二CoCr合金粉末のいずれか一方または両方の粉末は、さらにB:0.5〜8原子%を含有する成分組成を有する粉末であり、これら粉末にPt粉末および非磁性酸化物粉末を、非磁性酸化物:0.5〜15モル%、Cr:4〜20モル%、Pt:5〜25モル%、B:0.5〜8モル%を含有し、残部がCoおよび不可避不純物からなる成分組成となるように配合し、混合したのち加圧焼結することを特徴とする請求項1記載の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項3】
前記非磁性酸化物粉末は、二酸化珪素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化トリウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウムおよび酸化イットリウムのうちのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項4】
前記加圧焼結は、ホットプレスまたは熱間静水圧プレスであることを特徴とする請求項1または2記載の比透磁率の低い磁気記録膜形成用Co基焼結合金スパッタリングターゲットの製造方法。

【公開番号】特開2009−108336(P2009−108336A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278315(P2007−278315)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】