説明

毛髪処理剤

【課題】毛髪への塗布作業に好適な粘度を有し、毛髪に塗布する際の操作性、含有成分や剤の安定性が高い上に、処理後の毛髪に、しっとりと潤った触感および艶を充分に与え、滑らかな指通りを達成できる、毛髪処理剤を提供すること。
【解決手段】過酸化水素を含有する剤であって、ノニオン性界面活性剤を含有せず、特定のカチオン性界面活性剤に加え、特定の油剤および特定の高級アルコール、サリチル酸をそれぞれ特定の量で含有しており、さらに必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい毛髪処理剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪処理剤に関する。より詳しくは、本発明は、過酸化水素を含有し、酸化染毛剤の酸化剤、毛髪脱色剤、2浴式パーマネントウエーブ剤の第2剤として好適な毛髪処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2浴式パーマネントウエーブ剤の第2剤、とくにアイロンを用いたストレートパーマ用の第2剤には、過酸化水素含有タイプとブロム酸ソーダ含有タイプとがあった。これらのうち、過酸化水素含有タイプの剤は、ブロム酸ソーダ含有タイプの剤と比較して、毛髪に塗布してからの放置時間が短いという利点があるが、逆に放置時間を長くすると毛髪に余計なダメージを与えるおそれがあった。
【0003】
すなわち、過酸化水素含有タイプの第2剤を毛髪に塗布する場合、塗布作業に必要以上に時間がかかると、最初に塗布した毛髪の箇所と最後に塗布した毛髪の箇所との放置時間に大きな差が生じることになり、放置時間のより長い、前者がダメージを被るおそれがあった。このような塗布作業は、一般にアプリケーターと呼ばれる、上部先端に孔が設けられた容器に、塗布しようとする剤を充填した後、該アプリケーターを上下反転させ、剤を孔から毛髪上に流下あるいは押出すことにより行われるため、塗布しようとする剤には、アプリケーターの孔から出しやすく、かつ、一旦毛髪上に塗布した後は、毛髪上に留まり垂れ落ちない程度の粘度を有することが要求される(以下、これらをまとめて、操作性ともいう)。
【0004】
さらに、過酸化水素含有タイプの第2剤には、経時による、過酸化水素の分解や剤自体の分離など、含有成分や剤の安定性に問題があり、その向上も望まれていた。
これに対し、毛髪への塗布作業に要する時間の短縮を目的として、過酸化水素含有タイプの第2剤の粘度を塗布しやすい粘度に調節した、乳液状の毛髪処理剤が既に提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、含有成分や剤の安定性の向上を目的として、過酸化水素、高級アルコール、特定の2種のノニオン性界面活性剤を配合した乳液状の毛髪処理剤(特許文献2参照)や、過酸化水素と特定の酸化防止剤に加え、さらにカチオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との双方を配合した乳液状の毛髪処理剤(特許文献3参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開平10-87445号公報
【特許文献2】特開2005-162665号公報
【特許文献3】特開2004-315412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、既に提案されたこれらの毛髪処理剤を使用した場合には、毛髪へ潤いを充分に与えることができず、処理後の毛髪がぱさついて軽すぎる触感になる、指通りが悪い、充分な艶を毛髪に付与できないという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、毛髪への塗布作業に好適な粘度を有し、毛髪に塗布する際の操作性、含有成分や剤の安定性が高い上に、処理後の毛髪に、しっとりと潤った触感および艶を充分に与え、滑らかな指通りを達成できる、毛髪処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記実情に鑑みて鋭意検討した結果、既存の毛髪処理剤では、剤の安定性向上目的で配合されたノニオン性界面活性剤が、剤中に含まれる高級アルコールやエステル油などのトリートメント成分の毛髪への付着を阻害していること、過酸化水素を含有する剤であっても、このようなノニオン性界面活性剤を配合せず、特定のカチオン性界面活性剤に加え、特定の油剤および特定の高級アルコール、サリチル酸などをそれぞれ特定の量で配合すれば、毛髪に塗布する際の操作性、含有成分や剤の安定性を高く保持できる上に、処理後の毛髪にしっとりと潤った触感および艶を充分に与え、滑らかな指通りを達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、たとえば以下の事項に関する。
本発明に係る毛髪処理剤は、過酸化水素を含む毛髪処理剤であって、さらに、塩化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化ステアリルトリメチルアンモニウムからなる群より選ばれる、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤を0.35〜2.45重量%、ケイ素数が2〜8の揮発性シリコーン、イソノナン酸エステル、沸点が100〜260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素からなる群より選ばれる、少なくとも1種の油剤を8.0〜15.0重量%、ミリスチルアルコールおよびベヘニルアルコールからなる群より選ばれる、少なくとも1種の高級アルコールを1.0〜6.0重量%、サリチル酸を0.01〜0.5重量%の量で含み、かつ、ノニオン性界面活性剤を含まないことを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明の毛髪処理剤は、イソノナン酸エステル以外の室温で液状のエステル油を1.0〜7.0重量%で含むことが好ましい。
また本発明の毛髪処理剤は、さらに水を含むことが好ましい。
【0011】
本発明の毛髪処理剤は、乳化状態にある剤であることが望ましい。
なお、本発明の毛髪処理剤は、2浴式パーマネントウエーブ剤の第2剤として、好適に用いられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の毛髪処理剤によれば、毛髪に塗布する際の操作性、含有成分や剤の安定性を高く保持できる上に、処理後の毛髪にしっとりと潤った触感および艶を充分に与え、滑らかな指通りを達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の毛髪処理剤は、過酸化水素を含有する剤であって、ノニオン性界面活性剤を含有せず、特定のカチオン性界面活性剤に加え、特定の油剤および特定の高級アルコール、サリチル酸などをそれぞれ特定の量で含有しており、さらに必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
【0014】
以下、各成分について説明した後、本発明の毛髪処理剤について説明する。
<過酸化水素>
過酸化水素は、酸化剤として、本発明の毛髪処理剤に配合される。
【0015】
過酸化水素は、該毛髪処理剤100重量%中に、通常0.5〜12.0重量%、好ましくは0.5〜6.0重量%の量で含まれていることが望ましい。過酸化水素は、程度の差こそあれ、剤中で経時的に分解していくことは避けられないが、本発明の毛髪処理剤の配合組成によれば、その分解をより抑制し、毛髪処理剤本来の酸化力を長期にわたって維持できる。
【0016】
<カチオン性界面活性剤>
さらに、本発明の毛髪処理剤は、該毛髪処理剤100重量%中に、塩化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化ステアリルトリメチルアンモニウムからなる群より選ばれる、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤を通常は0.35〜2.45重量%、好ましくは0.70〜1.75重量%の量で含有している。
【0017】
塩化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化ステアリルトリメチルアンモニウムは、それぞれ1種単独で使用してもよく、これら2種を組み合わせて使用してもよい。2種を組み合わせて使用する場合には、その合計量が上記範囲内の量となるように使用する。
【0018】
上述したように従来、過酸化水素を含有する毛髪処理剤の良好な乳化状態を保持し、剤の分離を防ぐには、ノニオン性界面活性剤の添加が効果的であると考えられていた。しかし、本発明者の検討により、このようなノニオン性界面活性剤が、剤中に含まれる高級アルコールやエステル油などのトリートメント成分の毛髪への付着を阻害する結果、パーマネントウエーブ処理後の毛髪がぱさついて軽すぎる触感になる、指通りが悪い、充分な艶を毛髪に付与できないという問題を引き起こす要因となっていることがわかった。
【0019】
これに対し、過酸化水素に加えて、上記特定のカチオン性界面活性剤を上記範囲内の量で、後述する特定の油剤、特定の高級アルコールおよびサリチル酸とともに特定の量で配合した毛髪処理剤は、高い操作性および良好な乳化状態を保ちつつ、処理後の毛髪に、しっとりと潤った触感および艶を充分に与え、滑らかな指通りをより確実に達成できる。
【0020】
なかでも、とくに上記特定のカチオン性界面活性剤は、剤中に含まれるトリートメント成分の毛髪への付着を阻害することがないため、処理後の毛髪にトリートメント成分を充分に付着させることができ、良好な触感、艶、指通りなどの使用感の実現に資することができる。
【0021】
<油剤>
さらに、本発明の毛髪処理剤は、該毛髪処理剤100重量%中に、ケイ素数が2〜8の揮発性シリコーン、イソノナン酸エステル、沸点が100〜260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素からなる群より選ばれる、少なくとも1種の油剤を、通常は8.0〜15.0重量%、好ましくは10.0〜15.0重量%の量で含有している。
【0022】
これらは、それぞれ1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、これらの合計量が上記範囲内の量となるように使用する。
【0023】
過酸化水素に加えて、上記油剤を上記範囲内の量で、上述したカチオン性界面活性剤、後述する高級アルコールおよびサリチル酸とともに特定の量で配合した毛髪処理剤は、高い操作性と良好な乳化状態を保ちつつ、処理後の毛髪に、しっとりと潤った触感および艶を充分に与え、滑らかな指通りをより確実に達成できる。
【0024】
なかでも、とくに上記油剤は、ノニオン性界面活性剤を使用せず、上述した特定のカチオン性界面活性剤を使用する場合においても、高い操作性と良好な乳化状態の実現に資することができる。さらに該油剤は、トリートメント成分の1つとして、後述する高級アルコールなどと相まって、処理後の毛髪に良好な使用感を与えるという側面もある。
【0025】
より具体的には、上記油剤のうち、ケイ素数が2〜8の揮発性シリコーンとしては、ケイ素数が2〜8の、環状シリコーンおよび鎖状シリコーンが挙げられる。該環状シリコーンとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン
、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが好ましく挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、該鎖状シリコーンとしては、たとえば、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製のシリコーンSH−200などの上市されているものを使用することができる。
【0026】
また、上記油剤のうち、イソノナン酸エステルは、いわゆるエステル油の一種であり、室温で液状のエステル油であるが、本明細書ではその働きに着目して、後述する室温で液状の他のエステル油とは区別して、特定の油剤として分類する。該イソノナン酸エステルとしては、たとえば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、これらは、上市されており、たとえば、高級アルコール工業製のKAK99、KAK109、KAK139などとして入手できる。
【0027】
また、上記油剤のうち、沸点が100〜260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素としては、たとえば、軽質流動イソパラフィンが挙げられる。このような軽質流動イソパラフィンは、上市されており、たとえば、出光石油化学株式会社製のIPソルベント2028(5cs)などとして入手できる。
【0028】
<高級アルコール>
さらに、本発明の毛髪処理剤は、該毛髪処理剤100重量%中に、ミリスチルアルコールおよびベヘニルアルコールからなる群より選ばれる、少なくとも1種の高級アルコールを通常は1.0〜6.0重量%、好ましくは2.0〜4.0重量%の量で含有している。
【0029】
なお、一般に高級アルコールとは、炭素数が6以上のアルコールを指すが、本明細書中では、別途特筆しない限り、ミリスチルアルコールおよびベヘニルアルコールからなる群より選ばれる、少なくとも1種を意味する。
【0030】
これらは、それぞれ1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、これらの合計量が上記範囲内の量となるように使用する。
【0031】
過酸化水素に加えて、上記高級アルコールを上記範囲内の量で、上述したカチオン性界面活性剤および油剤、後述するサリチル酸とともに特定の量で配合した毛髪処理剤は、高い操作性と良好な乳化状態を保ちつつ、処理後の毛髪に、しっとりと潤った触感および艶を充分に与え、滑らかな指通りをより確実に達成できる。
【0032】
なかでも、とくに上記高級アルコールは、毛髪処理剤全体の粘度を調節し、高い操作性の実現に資すると考えられる。さらに該高級アルコールは、トリートメント成分の1つとして、上述した油剤などと相まって、処理後の毛髪に良好な使用感を与える他、毛髪処理剤の乳化状態にも少なからぬ影響を与えると推測される。
【0033】
<サリチル酸>
さらに、本発明の毛髪処理剤は、該毛髪処理剤100重量%中に、サリチル酸を通常は0.01〜0.5重量%、好ましくは0.1〜0.2重量%の量で含んでいる。
【0034】
サリチル酸は、過酸化水素の分解抑制やpH調節の役割を担い、サリチル酸を上記範囲の量で、上述した特定量の各成分と共に配合した毛髪処理剤は、剤中の過酸化水素の分解が有効に抑制される上に、剤全体の安定性や塗布する際の操作性も向上する。
【0035】
<その他の成分>
さらに、本発明の毛髪処理剤は、本発明の目的を損なわない限り、必要に応じて、上述した成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
【0036】
((イソノナン酸エステル以外の室温で液状のエステル油))
上記その他の成分の1つとしては、イソノナン酸エステル以外の室温で液状のエステル油が挙げられる。イソノナン酸エステル以外の室温で液状のエステル油とは、20〜30℃の温度において、流動性を有するエステル油のうち、イソノナン酸エステル以外のものを意味し、なかでも融点が20℃未満であるものが望ましい。
【0037】
該イソノナン酸エステル以外の室温で液状のエステル油は、本発明の毛髪処理剤100重量%中に、通常は1.0〜7.0重量%、好ましくは3.0〜5.5重量%の量で含まれるように使用することが望ましい。
【0038】
該イソノナン酸エステル以外の室温で液状のエステル油としては、たとえば、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル、乳酸イソステアリル、トリオクタン酸グリセリル、オクタン酸セチルなどが挙げられる。これらのうちでは、乳化安定性と酸化安定性、質感に優れる点から、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチルなどが好ましく挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、これらの合計量が上記範囲内の量となるように使用する。
【0039】
本発明の毛髪処理剤に、上記特定のエステル油を上記範囲内の量で含まれるように配合すると、これらの良好な酸化安定性と、毛髪へのトリートメント効果により、剤の乳化状態の安定性をより向上させ、処理後の毛髪の触感、艶、指通りなどの使用感をさらに高めることができる。
【0040】
((水))
また、上記その他の成分の1つとして、水が挙げられる。水は、上述した各成分の溶解や分散、剤全体の粘度調節が容易となる点から媒体として、本発明の目的を損なわない範囲内の量で配合してもよい。水としては、とくに限定されないが、イオン交換水、蒸留水などの精製水が好ましく挙げられる。
【0041】
((その他))
さらに上述したもの以外のその他の成分としては、塩化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化ステアリルトリメチルアンモニウム以外のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、ミリスチルアルコールおよびベヘニルアルコール以外の高級アルコール(ただし、セタノールを除く)、サリチル酸以外の安定剤など、化粧料に用いられる公知の成分が挙げられる。これらは、本発明の目的を損なわない範囲内の量で、本発明の毛髪処理剤に適宜、配合できる。
【0042】
上記塩化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化ステアリルトリメチルアンモニウム以外のカチオン性界面活性剤としては、たとえば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(別名;ベヘントリモニウムクロリド)、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム(5E.O.)、塩化ジ(ポリオキシエチレン)
オレイルメチルアンモニウム(2E.O.)、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セ
チルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム;脂肪酸アミドアミン塩;アルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩;ベンザルコニウム塩;ベンゼトニウム塩;ピリジウム塩;イミダゾリニウム塩などが挙げられる。
【0043】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレン(以下、POEと略す)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのPOEアルキル/アルキルアリルエーテル硫酸塩;スルホコハク酸塩;N−アシルスルホン酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩;α−オレフィンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;N−アシルアミノ酸塩;POEアルキルエーテルリン酸およびその塩などが挙げられる。
【0044】
両イオン性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのベタイン型;2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウムなどのイミダゾリン型;アミノ酸型などが挙げられる。
ミリスチルアルコールおよびベヘニルアルコール以外の高級アルコール(ただし、セタノールを除く)としては、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノールなどが挙げられる。これらのうち、ヘキシルデカノールおよび/またはオクチルドデカノールを、ミリスチル
アルコールやベヘニルアルコールと併用すると、毛髪処理剤の乳化状態の安定性がより向上することが期待できる。
【0045】
サリチル酸以外の安定剤としては、リン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、エデト酸塩、エチドロン酸塩、フェナセチン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0046】
その他、ポリペプチド、シリル化ポリペプチド、アミノ酸、ピロリドンカルボン酸誘導体、擬似セラミドなどの毛髪保護剤;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの湿潤剤:メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、フェノキシエタノール、安息香酸ナトリウムなどの防腐剤;養毛剤;紫外線吸収剤;香料;色素;パール剤;植物抽出液などが挙げられる。
【0047】
<毛髪処理剤>
本発明の毛髪処理剤は、上述した各成分を、公知の方法で適宜、撹拌、混合、加熱、冷却、溶解、分散(乳化)等することによって製造できる。
【0048】
なお、本発明の毛髪処理剤の形態はとくに限定されないが、毛髪への塗布作業時の操作性および剤中の過酸化水素の分解抑制の点からは、乳化状態にある剤であることが好ましい。
【0049】
また、その剤型もとくに限定されないが、アプリケーターから流下あるいは押出し易く、塗布後に毛髪から垂れ落ちないことが要求される点からは、乳液状あるいはクリーム状の剤であることが望ましい。すなわち、軸No.3、回転数30rpmの条件下、BH型粘度計で測定した25℃での粘度が1000〜10000mPa・s、より好ましくは2000〜9000mPa・s、特に好ましくは3000〜8000mPa・sであるのが望ましい。
【0050】
さらに、本発明の毛髪処理剤の用途は、とくに限定されないが、酸化染毛剤の酸化剤、脱色剤、2浴式パーマネントウエーブ剤の第2剤などに用いることができる。これらのうちでは、2浴式パーマネントウエーブ剤の第2剤として好適に用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例中、「%」は重量基準である。
また、各例中で得られた毛髪処理剤は、以下の評価方法及び評価基準に従い評価した。
【0052】
<操作性評価>
以下の2点(操作性(I)、操作性(II))について20名の専門テスターが、実際の縮毛
矯正施術を行い評価した。
【0053】
・操作性(I)
毛髪処理剤を通常、パーマネントウエーブを行なう際に用いられる、市販のアプリケーター(孔径1.00mm)に入れた際に無理なく塗布することが出来るか。
【0054】
評価基準: アプリケーターを振らなくても毛髪処理剤が孔から出る:◎
アプリケーターを1回振れば毛髪処理剤が孔から出る:○
アプリケーターを数回振らなければ毛髪処理剤が孔から出ない:△
アプリケーターを振っても毛髪処理剤が孔から出ない:×
・操作性(II)
アプリケーターに充填した毛髪処理剤を髪に塗布した際に、床に垂れ落ちずに毛髪上に留まる事が出来るか。
【0055】
評価基準: 毛髪処理剤が毛髪上に留まり、全く垂れ落ちない:◎
毛髪処理剤が毛髪上に留まるが、少し垂れ落ちる:○
毛髪処理剤が毛髪上に留まるが、ほとんど垂れ落ちる:△
毛髪処理剤が毛髪上にほとんど留まらず、垂れ落ちる:×
<処理後の使用感評価>
各例中で得られた毛髪処理剤を用いて、20〜50代のモデル100人に対して縮毛矯正施術を行い評価した。具体的な施術方法は、下に示す組成の2浴式パーマネントウエーブ剤の第1剤を、モデルの毛髪量に応じて80〜100g塗布し、数分間放置後、水洗し、ドライヤーで乾かした後、表面温度を160℃に設定した高温整髪用アイロンを毛髪の根元から毛先にかけて滑らせた。
【0056】
その後、各例中で得られた毛髪処理剤を、第2剤として用い、これを100gずつ塗布し、室温で10分間放置した後、水洗し、ドライヤーで乾燥させて終了とした。
第1剤の組成: 50%チオグリコール酸アンモニウム 14.0%
セタノール 4.0%
塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.0%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O) 1.5%
モノエタノールアミン pH9.0に調整
イオン交換水 加えて合計100%とした。
【0057】
評価項目: (1) 処理後の毛髪の艶感
(2) 処理後の毛髪の指通り
(3) 処理後の毛髪のしっとり感
なお、各(1)〜(3)の項目とも下記の基準に従い評価した。
【0058】
評価基準: 非常に良い:◎
良い:○
あまり良くない:△
悪い:×
<安定性評価>
・安定性(I)(乳化状態の安定性)
各例中で得られた毛髪処理剤(乳化物)を、高温(50℃)および低温(5℃)条件下で1ヶ月間保存し、各々保存後の毛髪処理剤状態(分離の有無)を目視で観察して双方の
温度環境下における保存性を以下の基準に基づいて総合評価するとともに、25℃にてガラス棒でかき混ぜた時の感触により、毛髪処理剤の粘度を以下の基準に基づいて官能評価した。
【0059】
評価基準: 全く分離が見られず、粘度がほぼ一定であった:◎
全く分離は見られないが、粘度に変化が見られた:○
わずかに分離が見られた:△
明らかな分離が見られた:×
・安定性(II)(過酸化水素の安定性)
各例中で得られた毛髪処理剤(乳化物)を、45℃にて1ヶ月間保存し、その酸化力を下記の方法で測定した。
【0060】
試料1mLを200mLの共せん三角フラスコに正確にとり、水10mL及び30%硫酸5mLを加え、直ちに密栓して軽く1〜2回振り混ぜた。次いで、ヨウ化カリウム試薬5mLを注意しながら加え、密栓して30分間暗所に放置したのち、0.1Nチオ硫酸ナトリウム液で滴定し、その消費量をAmLとした。過酸化水素の含有量率はAに0.17007を掛けた値とした。
【0061】
その結果から過酸化水素の安定性を、以下の評価基準に従い評価した。
評価基準:
保存前と比較して保存後の過酸化水素含有量が90%以上:◎
保存前と比較して保存後の過酸化水素含有量が80%以上90%未満:○
保存前と比較して保存後の過酸化水素含有量が70%以上80%未満:△
保存前と比較して保存後の過酸化水素含有量が60%未満:×
[実施例1〜8]
表1に示した実施例1〜8の成分及び配合割合にしたがって、毛髪処理剤(乳化物)を調製した。得られた毛髪処理剤を、上述した評価方法及び評価基準に沿って評価した。
【0062】
その結果を表1に示す。
[比較例1〜5]
表1に示した比較例1〜5の成分及び配合割合にしたがって、毛髪処理剤(乳化物)を調製した後、実施例1〜8と同様にして、毛髪処理剤を評価した。
【0063】
その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
[実施例9〜15]
表2に示した実施例9〜15の成分及び配合割合にしたがって、毛髪処理剤(乳化物)を調製した後、実施例1〜8と同様にして、毛髪処理剤を評価した。
【0066】
その結果を表2に示す。
[比較例7〜10]
表2に示した比較例7〜10の成分及び配合割合にしたがって、毛髪処理剤(乳化物)を調製した後、実施例1〜8と同様にして、毛髪処理剤を評価した。
【0067】
その結果を表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
[実施例16〜26]
表3に示した実施例16〜26の成分及び配合割合にしたがって、毛髪処理剤(乳化物)を調製した後、実施例1〜8と同様にして、毛髪処理剤を評価した。
【0070】
その結果を表3に示す。
[比較例11〜12]
表3に示した比較例11〜12の成分及び配合割合にしたがって、毛髪処理剤(乳化物)を調製した後、実施例1〜8と同様にして、毛髪処理剤を評価した。
【0071】
その結果を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
[実施例27〜34]
表4に示した実施例27〜34の成分及び配合割合にしたがって、毛髪処理剤(乳化物)を調製した後、実施例1〜8と同様にして、毛髪処理剤を評価した。
【0074】
その結果を表4に示す。
[比較例13〜15]
表4に示した比較例13〜15の成分及び配合割合にしたがって、毛髪処理剤(乳化物)を調製した後、実施例1〜8と同様にして、毛髪処理剤を評価した。
【0075】
その結果を表4に示す。
【0076】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素を含む毛髪処理剤であって、さらに、
塩化セチルトリメチルアンモニウムおよび塩化ステアリルトリメチルアンモニウムからなる群より選ばれる、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤を0.35〜2.45重量%、
ケイ素数が2〜8の揮発性シリコーン、イソノナン酸エステル、沸点が100〜260℃の範囲にあるイソパラフィン系炭化水素からなる群より選ばれる、少なくとも1種の油剤を8.0〜15.0重量%、
ミリスチルアルコールおよびベヘニルアルコールからなる群より選ばれる、少なくとも1種の高級アルコールを1.0〜6.0重量%、
サリチル酸を0.01〜0.5重量%の量で含み、かつ、
ノニオン性界面活性剤を含まないことを特徴とする、毛髪処理剤。
【請求項2】
さらに、イソノナン酸エステル以外の室温で液状のエステル油を1.0〜7.0重量%で含むことを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤。
【請求項3】
さらに、水を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の毛髪処理剤。
【請求項4】
乳化していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪処理剤。
【請求項5】
2浴式パーマネントウエーブ剤の第2剤として用いられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪処理剤。

【公開番号】特開2008−115086(P2008−115086A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297608(P2006−297608)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(595082283)株式会社アリミノ (38)
【Fターム(参考)】