説明

気液分離器

【課題】気液分離器において、さらに効率よく気液分離を行うことである。
【解決手段】気液分離器10は、気液分離後の水素を通過させ気液分離後の水を収容する収容空間を有する下部容器部12と、下部容器部12の上方に設けられ、下部容器部12の収容空間に連通する開口部を有し、側壁に排気ガス4が導入される入口孔40を有する気液分離流路部14と、気液分離流路部14と隔壁18を介して下部容器部12の上方に設けられ、下部容器部12の収容空間に連通する開口部を有し、気液分離後の水素6を外部に排出する排気孔50を有する気体出口流路部16とを含んで構成される。ここで、排気ガス4が流れる気液分離流路と、気液分離後の水素が流れる気体出口流路とは、流れる方向が互いに直交し相互に離間されて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離器に係り、特に、液体交じりの排気ガスを気体と液体に分離する気液分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に与える影響が少ないことから、車両に燃料電池の搭載が行われている。燃料電池は、例えば燃料電池スタックを構成する単位セルのアノード側に水素等の燃料ガスを供給し、カソード側に酸素を含む酸化ガス、例えば空気を供給し、電解質膜を通しての反応によって必要な電力を取り出す。
【0003】
このとき、カソード側に反応生成物として水が生成される。生成された水は電解質膜を通してアノード側にも浸透してくるので、アノード側から排出される使用済みガスには水分が含まれている。アノード側から排出される使用済みガスはいわば排気ガスではあるが、燃料電池で反応に使われなかった水素が含まれているので、これを回収し、再びアノード側に供給することが行われる。この際に、アノード側から排出される液体交じりの排気ガスを気体と液体に分離する必要があり、そのために気液分離器が用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、直接液体燃料電池の気液分離装置として、ハウジングに設けられる開孔部をカバーするように気体を選択的に透過させる気体抽出膜が設けられ、ハウジング内部には液体を選択的に透過させる液体抽出膜が設けられてこれによって第1チャンバと第2チャンバとに分けられ、開孔側である第1チャンバの側壁には液体及び気体をハウジングの内部にガイドする引き込み口が設けられ、第2チャンバの底面には液体を外にガイドする排出口が設けられる構成が開示されている。そして、気体抽出膜と液体抽出膜との作用によって、液体は第2チャンバに、気体は第1チャンバにそれぞれ分離され、ハウジングが傾いても液体は第1チャンバに侵入せず、気体は第2チャンバに侵入しないと述べられている。
【0005】
また、特許文献2には、車載燃料電池用気液分離器として、オフガス導入管が側壁に設けられオフガスに含まれる水を分離して、分離後のオフガスを排出するオフガス排出管が上方斜め方向に突き出して設けられる上側チャンバと、分離された水を排出する排水孔が底面に形成された下側チャンバと、その間を仕切る仕切りプレートを含む構成が開示されている。そして、下側チャンバの底面は略四角錐形状で内部はこれに沿った凹状とされ、仕切りプレートの上側チャンバ側には、上側チャンバに導入されたオフガスが蛇行するように流路形成リブが立設され、上側チャンバと下側チャンバとを連通する複数の連通孔がオフガス導入管から離れるように仕切りプレートの中央部からオフセットして設けられることが述べられている。
【0006】
また、特許文献3には、気液分離器として、上下を密閉した円筒状の本体部と、本体部の円筒部の上部で切線方向に設けられた入口管と、本体部の天板部の中央部に本体部の内外に突出するように設けられた出口管と、本体部の下部に設けられた排水口と、入口管の近傍から出口管を取り巻いて終端が本体部の内壁に至る渦巻き状の邪魔板とを備える構成が開示されている。この邪魔板の巻き始めの幅が少なくとも入口管の直径と同じで、終端に向かって細くすることで、入口管に導入された排気ガスが邪魔板に当り壁面で液状となって排気ガスの流れに導かれて邪魔板を外周方向に移動し、本体部内壁を経由して排水口から排水され、出口管から出る水分を抑制することができると述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−214103号公報
【特許文献2】特開2006−120503号公報
【特許文献3】特開2002−143617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように様々な構成の気液分離器の構成が提案され用いられている。例えば、車両に搭載される燃料電池に接続される気液分離器としては、車両における搭載スペースに制約があることから、排気ガスから燃料ガスをできるだけ効率よく分離して回収できる小型のものが要求される。
【0009】
本発明の目的は、さらに効率よく気液分離を行うことができる気液分離器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る気液分離器は、液体交じりの排気ガスを気体と液体に分離する気液分離器であって、気液分離後の気体を通過させ気液分離後の液体を収容する収容空間を有する下部容器部と、下部容器部の上方に設けられ、下部容器部の収容空間に連通する開口部を有し、側壁に排気ガスが導入される入口孔を有する気液分離流路部と、気液分離流路部と隔壁を介して下部容器部の上方に設けられ、下部容器部の収容空間に連通する開口部を有し、気液分離後の気体を外部に排出する排気孔を有する気体出口流路部と、を備え、入口孔から気液分離流路部に排気ガスが導入される水平方向を第1方向とし、排気孔へ向かって気液分離後の気体が案内される鉛直上方向を第2方向として、第1方向と第2方向とは互いに直交し、第1方向と第2方向に共に直交する方向を第3方向とするとき、第1方向の中心軸と第2方向の中心軸とは、第3方向に互いに離間して配置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る気液分離器において、気液分離流路は、第1方向に沿った流路高さが第3方向に沿った流路幅よりも大きく、入口孔から第1方向に延びて突当り壁に至る細長断面流路を有し、突当り壁は、第1方向から下部容器部側に向かう方向に曲がる曲面を有する曲面壁であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る気液分離器において、入口孔は、気液分離流路部の流路断面積と同じ大きさの開口孔であることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る気液分離器において、下部容器部の収容空間の上方側であって、気液分離流路部との間の開口部と、気体出口流路液分離流路部との間の開口部のそれぞれよりも下方側に設けられる吸水性中敷部材を備えることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る気液分離器において、下部容器部は、外部底面の周辺部から中央部に対し突き出す外形を有し、内部空間はその突き出す外形に対応して凹状の内部底面を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成により、気液分離器は、入口孔から気液分離流路部に排気ガスが導入される水平方向を第1方向とし、排気孔へ向かって気液分離後の気体が案内される鉛直上方向を第2方向として、第1方向と第2方向とは互いに直交し、第1方向と第2方向に共に直交する方向を第3方向とするとき、第1方向の中心軸と第2方向の中心軸とは、第3方向に互いに離間して配置される。このように、液体混じりの排気ガスが流れる気液分離流路と、気体液分離後の気体が案内される気体出口流路との間で、流れる方向を互いに直交して相互に離間するようにして明確に区分したので、気液分離後の気体に再び液体が混入することを防止でき、より効率的に気体の回収を行うことができる。
【0016】
また、気液分離器において、気液分離のための流路は、第1方向に沿った流路高さが第3方向に沿った流路幅よりも大きく、入口孔から第1方向に延びて突当り壁に至る細長断面流路であり、突当り壁は、第1方向から下部容器部側に向かう方向に曲がる曲面を有する曲面壁である。このように流れが突き当たるところを曲面壁とすることで流れに遠心力が働き、より効率的に気体と液体の分離が行われる。
【0017】
また、気液分離器において、入口孔は、気液分離流路部の流路断面積と同じ大きさの開口孔である。例えば、入口孔よりも気液分離のための流路断面積を広くすると、排気ガスに含まれる液体と気体との拡散がしやすくなる反面、排気ガスに含まれるミスト状の液体や液滴を巻き上げることが生じ、かえって気液分離が不十分となる。上記構成によれば、入口孔の開口面積と同じ断面積の流路を排気ガスが流れるので、ミストや液滴を巻き上げることを抑制し、気体と液体の分離をさらに効率よく行うことができる。
【0018】
また、気液分離器において、下部容器部の収容空間の上方側であって、気液分離流路部との間の開口部と、気体出口流路液分離流路部との間の開口部のそれぞれよりも下方側に吸水性中敷部材が設けられる。その吸水性によって、水分を適当に含むことができ、気液分離後の気体を液体が収容される下部容器部側を通さずに、吸水性中敷部材の上を通すことができる。これにより、気液分離後の気体に再び液体が混入することを防止でき、より効率的に気体の回収を行うことができる。また、気液分離器がある程度傾斜しても、この吸水性中敷部材の吸水性によって、収容空間の水が気液分離流路や気体出口流路にあふれることを防止できる。
【0019】
また、気液分離器において、下部容器部は、外部底面の周辺部から中央部に対し突き出す外形を有し、内部空間はその突き出す外形に対応して凹状の内部底面を有するので、収容空間に液体を底部にまとまって収容でき、液体の排出がより効率的に行うことができる。また、気液分離器がある程度傾斜しても、この凹状の空間があることで、収容空間の液体が気液分離流路側や気体出口流路側にあふれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態における気液分離器の斜視図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の気液分離器において、排気ガス導入側から見た図である。
【図3】本発明に係る実施の形態の気液分離器において、上面側から見た平面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の気液分離器において、排気ガス導入側と反対側から見た正面図である。
【図5】図3のA−A線に沿った断面図である。
【図6】図4のB−B線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、気液分離器として、車両に搭載される燃料電池のアノード側の排出口に接続されて用いられるものを説明するが、これ以外の使用形態であっても、液体混じりの排気ガスを気体と液体とに分離するために用いられるものであればよい。
【0022】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0023】
図1は、気液分離器10の全体外観を示す斜視図である。気液分離器10は、車両に搭載される燃料電池のアノード側の排出口に接続されて用いられ、排出口から排出される液体混じりの排気ガスを気体と液体とに分離する機能を有する装置である。すなわち、燃料電池においては、アノード側に燃料ガスである水素を供給し、カソード側に酸化ガスとして空気を供給し、電解質膜を通しての電気化学反応によって必要な電力を取り出すが、アノード側に供給された水素は、電気化学反応後に排出口から使用済みガスとして排出される。
【0024】
燃料電池における電気化学反応においては反応生成物としての水がカソード側に生成されるが、一部は電解質膜を通してアノード側にも浸透してくるので、アノード側の排出口からは水分混じりの水素が排気ガスとして排出される。排気ガス中の水素は、燃料電池における電気化学反応で使用されなかったものであるので、これを回収して再びアノード側に供給することができる。気液分離器10は、この排気ガス中の水素を再び利用できるように、水分混じりの使用済みガスを水素と水とに分離する機能を有する。以下では水分混じりの使用済みガスのことを、特に断らない限り、単に排気ガスとして述べることにする
【0025】
気液分離器10は、気液分離に適した形状に作られ、排気ガス4が導入される入口孔40と、気液分離後の水素6を外部に排出する排気孔50と、図示されていないが気液分離後の水を排水する排水口を除いて、密閉された容器である。
【0026】
気液分離器10は、気液分離後の水素を通過させ気液分離後の水を収容する収容空間を有する下部容器部12と、下部容器部12の上方に設けられ、下部容器部12の収容空間に連通する開口部を有し、側壁に排気ガス4が導入される入口孔40を有する気液分離流路部14と、気液分離流路部14と隔壁18を介して下部容器部12の上方に設けられ、下部容器部12の収容空間に連通する開口部を有し、気液分離後の水素6を外部に排出する排気孔50を有する気体出口流路部16とを含んで構成される。
【0027】
ここで、上部、下部とは、相対的な位置関係を示すものであるので、図1に直交する3つの座標軸としてX軸、Y軸、Z軸を示した。上部とは、Z軸に沿って+側の方向であり、下部とはZ軸に沿って−側の方向である。気液分離器10が車両に搭載されるとき、XY平面が路面、Z軸方向が重力方向となるように設置される。そして、+Z方向が上空方向で、−Z方向が路面に向かう方向であり、XY平面は水平面となる。
【0028】
図1に示されるように、入口孔40から気液分離流路部14に排気ガス4が導入される方向を第1方向とすれば、第1方向はX方向に平行であり、排気孔50へ向かって気液分離後の水素6が案内される方向を第2方向とすれば、第2方向はZ方向に平行である。そして、第1方向と第2方向に共に直交する方向を第3方向とすれば、第3方向はY方向に平行であるが、第1方向の中心軸と、第2方向の中心軸とは、第3方向に沿って互いに離間して配置される。
【0029】
つまり、入口孔40から気液分離流路部14に排気ガス4が導入される方向の中心軸と、排気孔50へ向かって気液分離後の水素6が案内される方向の中心軸とは、互いに交わることがなく、完全に分離されている構成となっている。
【0030】
気液分離器10のさらに詳細な構造とその作用を、図2から図6を用いて説明する。図2から図4は、気液分離器10の外観を3方向から見た様子を示す図で、図2は、排気ガス4の導入側から見た背面図であり、図3は、上面側から見た平面図であり、図4は、排気ガス4の導入側と反対側から見た正面図である。図5と図6は、気液分離器10の内部における流れの様子によって気液分離を説明するための図で、図5は、図3のA−A線に沿った断面図であり、図6は、図4のB−B線に沿った断面図である。なお、これらの図において、XYZの方向をそれぞれ示してある。
【0031】
下部容器部12は、気液分離器10の下部側に配置され、上方側が開口して、収容空間52を形成する容器状の部分である。図5に示されるように、下部容器部12は、側壁部54と、底壁部56とで構成され、これらで囲まれた空間が収容空間52である。収容空間52には、気液分離後の水74が収容される。
【0032】
下部容器部12は、図2,4,5に示されるように、外部底面の周辺部から中央部に対し突き出す外形を有している。すなわち、下方に向かって次第に断面積が小さくなるように、下尖り形状を有する。これに対応し、図5に示されるように、内部空間である収容空間52は、その突き出す外形に対応して凹状の内部底面を有する。
【0033】
下部容器部12の底面側をこのような下尖り形状とすることで、収容空間52に水74を底部にまとまって収容でき、水74の排水がより効率的に行うことができる。また、気液分離器10が搭載される車両がある程度傾斜しても、この凹状の空間があることで、収容空間52の水74が気液分離流路部14の側や気体出口流路部16の側にあふれることを防止できる。
【0034】
図6に破線で示されている排水路62は、下部容器部12に収容されている水74を外部に排水8として排出するためのパイプである。水74の排出は、適当な高低差を利用して、あるいは、適当な排水ポンプを用いて、排水路62を経由して行うことができる。
【0035】
気液分離流路部14は、図5,6に示されるように、下部容器部12の上方に設けられ、入口孔40から内部に導入された排気ガス4を、水素70と水72とに分離する機能を有する部分である。気液分離は、水分混じりの排気ガス4が、周囲を壁部で囲まれた流路を流れる際に、壁部に衝突し、あるいは流れの方向を曲げられることで、質量の差によって気体と液体とに分かれることで行われる。
【0036】
気液分離流路部14は、図5に示すように下部容器部12の上方開口部を覆う部分を蓋部13と呼ぶことにすると、蓋部13の天井部分が突き出すように盛り上がって形成された部分である。図5に示されるように、この蓋部13において盛り上がって形成された壁部32,34に囲まれた部分が、導入された排気ガス4が流れる気液分離流路30である。
【0037】
気液分離流路30の入口は、図1,2に示されるように、気液分離流路部14の−X方向の端部に設けられる側壁板20に開口する入口孔40である。入口孔40は、Z方向に沿った孔高さがY方向に沿った孔幅よりも大きい細長孔である。
【0038】
気液分離流路30は、この入口孔40の開口孔の大きさと同じ流路断面積を有し、すなわち、やはりZ方向に沿った流路高さがY方向に沿った流路幅よりも大きく、図6にしめされるように、入口孔40からX方向に延びて突当り壁38に至る細長断面流路である。
【0039】
突当り壁38は、X方向から下部容器部12側に向かう方向に曲がる曲面を有する曲面壁である。すなわち、図6に示されるように、気液分離流路30の突当りのところは、角部が丸くされて、円弧状の曲面に形成される。
【0040】
気液分離流路30はこのように突当り壁38を有する行き止まりのあるトンネル形状の流路であるが、図5に示されるように、その底面側は開口部36となっていて、下部容器部12の収容空間52に連通している。
【0041】
このような気液分離流路30の構造によって、入口孔40から導入された排気ガス4は、気液分離流路30を直進して突当り壁38のところで円弧状にその流れ方向を変換されて、下部容器部12側に向かうことになる。この途中で、気液分離流路30の周囲壁に衝突した排気ガス4は、水素と水の質量差によって気液分離する。また、突当り壁38のところで円弧状に流れ方向を変換されることで、排気ガス4に遠心力80が働き、これによっても効果的に水素70と水72に分離する。
【0042】
また、上記のように、入口孔40は、気液分離流路30の流路断面積と同じ大きさの開口孔であるので、入口孔40に導入された排気ガス4はそのまま、流れの断面積を変更することなく、気液分離流路30を直進することができる。
【0043】
従来技術における気液分離器では、入口孔よりも気液分離のための流路断面積を広くしている。これは、排気ガスに含まれる液体と気体との拡散をしやすくするためであるが、その反面、排気ガスに含まれるミスト状の液体や液滴を巻き上げることが生じて、かえって気液分離が不十分となることがある。上記構成によれば、入口孔40の開口面積と同じ断面積の気液分離流路30を排気ガス4が流れるので、ミストや液滴を巻き上げることを抑制し、気体と液体の分離をさらに効率よく行うことができる。
【0044】
なお、場合によっては、突当り壁38を曲面形状でない構成とすることもできる。また、入口孔40の開口面積と、気液分離流路の流路断面積を完全に一致させる必要はなく、ミストや液滴の巻き上げの影響の大小等を考慮し、いずれかの面積を他方の面積より大きくすることも可能である。
【0045】
気体出口流路部16は、図5に示されるように、下部容器部12の上方に設けられ、気液分離流路部14の機能によって水72と分離された水素70を集めて、排気孔50から外部に排出する部分である。ここでは、水素70が空気よりも軽い性質を利用して、上方に延びる気体出口流路42を通して水素70を上方に導き、その上部に開口して設けられた排気孔50から外部に排出するように構成されている。
【0046】
気体出口流路部16は、このようにZ方向に延びる気体出口流路42を有するが、X方向に延びる気液分離流路30とは互いに延びる方向が直交するように配置される。さらに、気体出口流路42の中心軸と、気液分離流路30の中心軸とは、Y方向にかなり離されて配置される。
【0047】
このように、気体出口流路42と気液分離流路30とが全く交わることがないように配置されるのは、気液分離後の水素に、水分混じりの排気ガスが入り込まないようにするためである。そのために、下部容器部12の上方開口部を覆う部分である蓋部13としては、図5に示されるように、気液分離流路部14で盛り上がって形成される壁部34を一旦下方に下げて、水平方向に延ばされている部分と接続し、そして、適当なY方向の間隔をおいて隔壁18として再び上方に立ち上げる構成となっている。
【0048】
気体出口流路部16は、蓋部13から煙突のように上方に延ばされて形成された部分である。図5に示されるように、この蓋部13において上方に延ばされて形成された壁部44と隔壁18とに囲まれた部分が、気液分離されて集められた水素70が、空気よりも軽い性質によって上方に流れる気体出口流路42である。
【0049】
気体出口流路42は、上記のように煙突状に上方に延びる流路であるが、その入口は、底面側の開口部46である。この開口部46は、下部容器部12の収容空間52に連通している。また、その出口は、図1に示されるように、気体出口流路部16の上方に設けられた天井板22に開口する排気孔50である。
【0050】
このように、下部容器部12の上方開口部を覆う蓋部13に、気液分離流路部14と気体出口流路部16とが形成される。図5に示されるように、気液分離流路部14の底面側は開口部36で、気体出口流路部16の底面側は開口部46で、いずれも下部容器部12の収容空間52と連通する。
【0051】
したがって、気液分離流路部14において気液分離された水素70は、気液分離流路部14の底面側の開口部36から流れ出て、空気よりも軽い性質によって蓋部13の天井面に沿って流れ、気体出口流路部16の底面側の開口部46を通って気体出口流路42に入り、上方に流れて排気孔50から外部に排出される。
【0052】
一方、気液分離流路部14において気液分離された水72は、空気よりも重い性質によって気液分離流路部14の底面側の開口部36から下方に落ちて、下部容器部12に集められる。
【0053】
図5,6に示されている吸水性中敷部材60は、下部容器部12の収容空間52の上方側であって、気液分離流路部14の底面側の開口部36と、気体出口流路部16の底面側の開口部46のそれぞれよりも下方側に設けられ、気液分離後の水素70が水72と混じらないように分離するための部材である。
【0054】
吸水性中敷部材60は、例えば、多孔質で親水性のプラスチック材料、繊維材料等を用いた板材である。吸水性中敷部材60は、水分を含まない状態では水も水素も通すことができるが、水分を含むと水を通すことができても、多孔質の孔が水で覆われて水素を通すことが困難になる性質を有する。
【0055】
これにより、気液分離後の水素70が下部容器部12に収容される水72と混入されることを防止でき、より効率的に気体の回収を行うことができる。また、気液分離器10を搭載する車両がある程度傾斜しても、この吸水性中敷部材60の吸水性によって、収容空間52の水が気液分離流路部14や気体出口流路部16の方にあふれることを防止できる。
【0056】
このように、水分混じりの排気ガス4が流れる気液分離流路30と、気体液分離後の水素70が案内される気体出口流路42との間で、流れる方向を互いに直交して相互に離間するようにして明確に区分したので、気液分離後の水素70に再び水72が混入することを防止でき、より効率的に気体の回収を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る気液分離器は、燃料電池等の排気ガスを液体と気体に分離するために利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
4 排気ガス、6,70 水素、8 排水、10 気液分離器、12 下部容器部、13 蓋部、14 気液分離流路部、16 気体出口流路部、18 隔壁、20 側壁板、22 天井板、30 気液分離流路、32,34,44 壁部、36,46 開口部、38 突当り壁、40 入口孔、42 気体出口流路、50 排気孔、52 収容空間、54 側壁部、56 底壁部、60 吸水性中敷部材、62 排水路、72,74 水、80 遠心力。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体交じりの排気ガスを気体と液体に分離する気液分離器であって、
気液分離後の気体を通過させ気液分離後の液体を収容する収容空間を有する下部容器部と、
下部容器部の上方に設けられ、下部容器部の収容空間に連通する開口部を有し、側壁に排気ガスが導入される入口孔を有する気液分離流路部と、
気液分離流路部と隔壁を介して下部容器部の上方に設けられ、下部容器部の収容空間に連通する開口部を有し、気液分離後の気体を外部に排出する排気孔を有する気体出口流路部と、
を備え、
入口孔から気液分離流路部に排気ガスが導入される水平方向を第1方向とし、排気孔へ向かって気液分離後の気体が案内される鉛直上方向を第2方向として、第1方向と第2方向とは互いに直交し、第1方向と第2方向に共に直交する方向を第3方向とするとき、第1方向の中心軸と第2方向の中心軸とは、第3方向に互いに離間して配置されることを特徴とする気液分離器。
【請求項2】
請求項1に記載の気液分離器において、
気液分離流路部は、第1方向に沿った流路高さが第3方向に沿った流路幅よりも大きく、入口孔から第1方向に延びて突当り壁に至る細長断面流路を有し、
突当り壁は、第1方向から下部容器部側に向かう方向に曲がる曲面を有する曲面壁であることを特徴とする気液分離器。
【請求項3】
請求項1に記載の気液分離器において、
入口孔は、気液分離流路部における流路断面積と同じ大きさの開口孔を有することを特徴とする気液分離器。
【請求項4】
請求項1に記載の気液分離器において、
下部容器部の収容空間の上方側であって、気液分離流路部との間の開口部と、気体出口流路液分離流路部との間の開口部のそれぞれよりも下方側に設けられる吸水性中敷部材を備えることを特徴とする気液分離器。
【請求項5】
請求項1に記載の気液分離器において、
下部容器部は、外部底面の周辺部から中央部に対し突き出す外形を有し、内部空間はその突き出す外形に対応して凹状の内部底面を有することを特徴とする気液分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−234289(P2010−234289A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85846(P2009−85846)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(308039414)株式会社FTS (60)
【Fターム(参考)】