説明

水なし印刷に有用な画像形成性要素

非アブレート性のネガ型画像形成性要素が、架橋型シリコーンゴム層下に第1及び第2のポリマー層を有している。これらの要素は、水なし印刷(ファウンテン溶液なし)に有用なリソグラフィ印刷版を提供するためにシンプルな方法で使用することができる。水、又は有機溶剤を極めて僅かにしか含有しない水溶液を使用して画像形成済領域を除去することにより、画像形成後の処理が比較的シンプルである。架橋型シリコーンゴム層はインク反発性であり、そして基板に最も近い第1層だけが、感熱性を提供するための赤外線吸収化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブレーションなしに画像形成し、そして水又は単純な水溶液で現像し、次いで「水なし」印刷のために使用することができる非アブレート性画像形成性要素を提供する。本発明はまた、このような非アブレート性画像形成性要素を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
コンベンショナルな印刷又は「湿式」平板印刷の場合、画像領域として知られるインク受容領域を親水性表面上に発生させる。この表面が水で湿潤され、そしてインクが着けられると、親水性領域は水を保持してインクを弾き、そしてインク受容領域はインクを受容して水を弾く。インクは画像が再現されるべき材料の表面に転写される。例えば、インクは中間ブランケットに先ず転写され、ブランケットは、画像が再現されるべき材料の表面にインクを転写するために使用される。
【0003】
1970年以来、水なし印刷版が知られて使用されている。これらの印刷版は、機上で湿し水(ファウンテン溶液)の必要なしに印刷するために使用することができる。ほとんどの水なし印刷版は、より高いインク受容性を有する輻射線感受性層及び基板に被さるインク反発層、例えば、シリコーン層を伴う。水なし印刷のいくつかの詳細及びその利点は、例えば、Waterless Printing Associationのウェブサイトであるインターネット(http://www.waterless.org)において提供されている。
【0004】
例えば、水なし印刷の利点のいくつかは、画像における一貫した色(より良い色忠実度)、より良い色飽和度、そしてより低いドットゲイン(より詳細)を含む。加えて、ファウンテン溶液が印刷中に使用されないので、コーティングされていない紙を含むより多様な紙を印刷に際して使用することができる。さらに、水なし印刷を用いると準備をより早く行うことができ、また小型のコンパクトなプレスを使用することができるので、より小さな設備内で印刷作業することが可能である(より低い設備投資)。ファウンテン溶液の使用を回避することにより、環境にとってより良い水なし印刷が行われる。印刷作業者はもはや、ファウンテン溶液と平板印刷インクとのバランスを注意深く取る必要がなくなり、これらの作業に伴う訓練を少なくすることができる。
【0005】
ネガ型ジアゾ樹脂を含有する画像形成性要素及びUV線から、ポジ型水なし印刷版が調製されている。UV線及びジアゾナフトキノン含有画像形成性要素又は酸触媒型化学反応を用いて、ネガ型水なし印刷版が得られる。
【0006】
初期の水なし印刷版の大部分は、写真用フィルムを使用して調製された。このようなフィルムの使用は高価であり、時間がかかる。これらの欠点は近年、コンピュータ・トゥ・プレス(CTP)技術で対処されている。この技術の場合、水なし印刷版は、コンピュータで生成された信号によって、1種又は2種以上のレーザーを用いて直接に画像形成される。
【0007】
水なし印刷版を調製する1つの方法は、輻射線感受性画像形成性要素上にコンタクト・マスクを生成することを含む。マスクは、デジタル装置、例えばインクジェット・プリンタ、電子写真プリンタ、又はデジタル制御式レーザーを具備するいずれかの他の装置を使用して製造することができる。レーザーアブレーション、レーザーアブレーション転写、又はレーザー誘起型色変化技術を用いてマスクを製造することもできる。しかしながら、水なし印刷版を製造するためにマスクを使用することは高価であり、また複雑な処理方法を必要とする。
【0008】
2つの商業的なタイプのサーマル(コンピュータ・トゥ・プレート、又は「CTP」)水なし印刷システムが知られている。1つの水なし印刷システムは、画像形成された層内の物質を破壊的に離脱させるか又は揮発させてこれを除去することを含むレーザーアブレーションによって画像形成することを含む。アブレート性画像形成は、極めて高い画像形成エネルギーを必要とし(画像形成性要素は、比較的遅い画像形成速度を有する)、そしてかなりの残屑及び気体流出物を形成し、これらは捕捉するか又は環境中に放出しなければならない。米国特許第5,339,737号明細書(Lewis他)及び同第5,353,705号明細書(Lewis他)には、水なし印刷版を形成するための多層のアブレーション可能な要素及び画像形成システムが記載されている。
【0009】
別の水なし印刷システムは、米国特許第4,342,820号明細書(Kinashi他)、同第6,074,797号明細書(Suezawa他)、同第6,284,433号明細書(Ichikawa他)、及び同第6,964,841(Iihara他)に記載されているように、画像形成された層を可溶化するために、レーザー(多くの場合マスクを通して)で熱画像形成することを必要とし、次いでこれらの層の画像形成された領域を、しばしば有機溶剤を含有する現像剤を使用して、又は前処理溶液を使用して、又はその両方によって除去する。
【0010】
米国特許第5,919,600号明細書(Huang他)に記載された2層非アブレート性画像形成性要素は、可溶化された画像形成性層又は上側のシリコーン層を除去するために溶剤含有現像剤を使用して、水なし印刷版を提供するために用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
水なし印刷は、ファウンテン溶液なしで用いることができ、そしていくつかの利点をもたらすことができる望ましい印刷技術である。従って、アブレーション画像形成を行うことなしに、そして主として有機溶剤を含有する現像剤を使用して現像することなしに、水なし印刷版を提供するために使用することができる画像形成性要素が必要である。現像中に要素からシリコーンが除去されるときに、シリコーン残屑が、処理装置を目詰まりさせない小片として除去されることも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基板を含む非アブレート性のネガ型画像形成性要素であって、該基板上に順番に:
第1ポリマーバインダーと赤外線吸収化合物とを含む第1層と、
第2ポリマーバインダーを含み、そして赤外線吸収材料を実質的に含まない第2層と、
第2層上に配置された架橋型シリコーンゴム層と
を有する要素を提供する。
【0013】
いくつかの態様の場合、
架橋型シリコーンゴム層が、下記に規定する組成物I又は組成物II、すなわち:
a)下記構造(PSR):
−[Si(R1)(R2)−O]−
(PSR)
(上記式中、R1及びR2は、独立してアルキル、アリール、及びアルケニル基であり、但し、少なくとも一方はアルケニル基である)
によって表される主としてジメチルシロキサン単位とシロキサン単位とを有するポリシロキサン材料、
b)SiH基を有するシラン架橋剤、
c)白金触媒、および
d)場合によっては安定剤、又は接着促進剤、又はその両方、
を含む組成物I、
a)SiOH、SiOR3、又はSiOCOR4末端基、又はこれらのいずれかの組み合わせを有するポリジメチルシロキサン(式中、R3及びR4は独立して、置換型又は非置換型アルキル、アリール、又はアルケニル基である)、
b)SiOH、SiOR3、又はSiOCOR4基のうちのいずれかのうちの少なくとも2つを有するシロキサン架橋剤(式中、R3及びR4は上で規定した通りである)、および
c)場合によっては触媒、又は接着促進剤、又はその両方、
を含む組成物II、
から誘導されている。
【0014】
本発明はまた、水なし印刷に適した画像形成された要素を形成する方法であって、この方法は、アブレーションなしに、
A)本発明の画像形成性要素に、赤外線を使用して像様露光を施すことにより、画像形成性要素内に露光された領域及び非露光領域の両方を提供し、そして
B)主として露光された領域内でだけ、シリコーンゴム層を除去することにより、画像形成された要素を提供する、
ことを含む、水なし印刷に適した画像形成された要素を形成する方法を提供する。
【0015】
本発明の別の態様の場合、水なし印刷によって印刷された画像を形成する方法であって、この方法が、アブレーションなしに、
A)本発明の画像形成性要素に、赤外線を使用して像様露光を施すことにより、画像形成性要素内に露光された領域及び非露光領域の両方を提供し、
B)主として露光された領域内でだけ、架橋型シリコーンゴム層及び第2層を除去することにより、画像形成された要素を提供し、そして
C)画像形成された要素を機上で平板印刷インクだけと接触させる
ことを含む、水なし印刷によって印刷された画像を形成する方法が提供される。
【0016】
本発明の方法のいくつかの態様において、シリコーンゴム層は厚さ0.5〜3.5μmであり、そして上記組成物I又は組成物IIから誘導された架橋型シリコーンゴムを含み、
赤外線吸収化合物は、少なくとも5質量%の量で第1層内だけに存在するIR吸収色素であり、そして
第1層内の第1ポリマーバインダーのTgは、第2層内の第2ポリマーバインダーのTgよりも、少なくとも10℃だけ高い。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、水なし印刷のためのネガティブ画像を提供するためにシンプルな方法で使用することができる非アブレート性画像形成性要素を提供する。本発明は、現行技術の既知の欠点を回避しつつ、水なし印刷から多くの利点を得るための手段を提供する。例えば、本発明の画像形成は、アブレーションなしで実施される。さらに、画像形成された要素の現像は、有機溶剤含有現像剤を必要としない。
【0018】
本発明の新規要素は、架橋型インク反発性シリコーンゴム層の下側に位置する少なくとも2つのポリマー層を有している。架橋型シリコーンゴム層の下側の、基板に最も近い層だけが、感熱性を提供する赤外線吸収化合物を含有する。
【0019】
画像形成中、熱エネルギーは、架橋型シリコーンゴム層と、下側のポリマー層との結合を断つ。いかなるメカニズムにも拘束されないが、熱画像形成が架橋型シリコーンゴム層のすぐ下の層を溶融し、そして、架橋型シリコーンゴム層との結合解離を生じさせる孔を形成すると考えられる。単純な溶液、例えば水又はアルカリ水溶液を使用すると、画像形成された架橋型シリコーンゴム層、及び下側のポリマー層のうちの一方又は両方を除去することにより、インク受容領域を提供する。いくつかの態様の場合、現像溶液は必要とされず、層材料は、機械的手段を使用して除去される。
【0020】
我々はまた、シリコーン残屑が現像中に比較的小さな片として除去されるので、処理装置の目詰まりの可能性は低くなることも見いだした。
【0021】
我々はさらに、本発明の非アブレート性画像形成性要素は、高い画像形成速度を有しており、また、アブレーション画像形成のために一般に用いられるエネルギーよりもかなり低い、110mJ/cm2という低さの画像形成エネルギーを用いて画像形成することができることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
特に断りのない限り、本明細書中に使用される「非アブレート性画像形成性要素」、「画像形成性要素」、及び「印刷版前駆体」という用語は、本発明の実施において有用な態様を意味するものとする。
【0023】
加えて、特に断りのない限り、本明細書中に記載された種々の成分、例えば、「第1ポリマーバインダー」、「第2ポリマーバインダー」、「輻射線吸収化合物」、「IR色素」、「ポリシロキサン材料」、「シラン架橋剤」、「ポリジメチルシロキサン」、「触媒」、「接着促進剤」、及び同様の用語はまた、このような成分の混合物も意味する。従って、単数を表す冠詞の使用は、単一の成分だけを必ずしも意味するものではない。
【0024】
現像中に「主として前記露光された領域だけを除去する」という用語によって、我々は、第2層及びシリコーンゴム層及び場合によっては第1層の露光された領域が、処理中に選択的且つ優先的に除去されるが、しかし非露光領域はいずれかの有意の程度までは除去されない(非露光領域は僅かに除去されることがある)ことを意味する。
【0025】
「コンピュータ・トゥ・プレス」によって、我々は、画像形成が、マスキング又はその他の中間画像形成フィルムを使用することなしに、画像形成性層に対して直接にコンピュータ管理型画像形成手段(例えばレーザー)を使用して行われることを意味する。
【0026】
「非アブレート性」によって、我々は、熱画像形成された領域が、単に画像形成するだけでは実質的に揮発又は除去されず、本発明の実施における熱画像形成中に、揮発性フラグメント及びガスがほとんど発生しないことを意味する。
【0027】
他の指定がない限り、パーセンテージは、画像形成性層配合物の乾燥固形分、又は層(例えば第1層、第2層、又はシリコーンゴム層)の乾燥塗布質量の、乾燥質量パーセントを意味する。他の指定がない限り、質量パーセント値は、層配合物又は乾燥された層塗膜に関するものとして解釈することができる。
【0028】
ポリマーに関連するあらゆる用語の定義を明らかにするために、International Union of Pure and Applied Chemistry(「IUPAC」)によって発行された「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」Pure Appl. Chem.、1996年、第68巻、p.2287−2311を参照されたい。しかし、本明細書中のあらゆる定義が支配的なものと見なされるべきである。
【0029】
他の指定がない限り、「ポリマー」という用語は、オリゴマーを含む高分子量及び低分子量ポリマーを意味し、ホモポリマー及びコポリマーを含む。
【0030】
「コポリマー」という用語は、2種又は3種以上の異なるモノマーから誘導されたポリマーを意味する。すなわちこれらは、少なくとも2種の異なる化学構造を有する繰り返し単位を含む。
【0031】
「主鎖」という用語は、複数のペンダント基が結合され得るポリマー中の原子鎖を意味する。このような主鎖の例は、1種又は2種以上のエチレン系不飽和型重合性モノマーの重合から得られた「全炭素」主鎖である。しかしながら、他の主鎖がヘテロ原子を含むこともでき、この場合、ポリマーは、縮合反応又は何らかの他の手段によって形成される。
【0032】
用途
本明細書中に記載された画像形成性要素は、数多くの形、例えば以下でより詳細に説明するように、前駆体から平板印刷版(又は「印刷版ブランク」)までの形で使用することができる。しかしながら、これはこれらの用途だけに限ることを意味するものではない。例えば、画像形成性要素は、熱パターニング・システムとして使用することもでき、また、マスキング要素及びプリント基板を形成するために使用することもできる。
【0033】
画像形成性要素
一般に、画像形成性要素は、基板と、第1層と、第1層上に配置された第2層と、架橋型シリコーンゴム層と、架橋型シリコーンゴム層上の所望による保護層とを含む。
【0034】
いくつかの態様の場合、
a)基板が、第1層及び第2層の組み合わされた色調とは異なる色調を有しているか、
b)第1層及び第2層が異なる色調を有しているか、又は、
c)基板が、第1層及び第2層の組み合わされた色調とは異なる色調を有しており、そして第1層及び第2層が異なる色調を有している。
【0035】
色調を制御するのに適した量で、第1層及び第2層内に着色剤を含むことができる。基板の色調は一般に、使用される特定の材料(例えば金属)によって、又はアルミニウム又はその他の金属表面の陽極酸化によって提供される。
【0036】
<基板>
画像形成性要素は、第1層配合物又は組成物を好適な基板上に好適に適用することによって形成される。この基板は未処理支持体材料であることも可能ではあるが、しかし通常は、これを低反射性にし、これにより第1層組成物の適用前に品質目的の画像検査を行い易くするように、また、上側の層との接着を改善するように、種々の方法で処理又は塗布される。基板は、画像形成性要素、例えば平板印刷版を調製するために従来使用されているいずれかの材料から成っていることが可能な支持体を含む。基板は、改善された接着のために「中間層」を提供するように処理することができ、そして第1層配合物は中間層上に適用される。
【0037】
基板は通常、シート、フィルム、又はフォイルの形態を成しており、そして強固であり、安定であり、そして可撓性であり、また色記録がフルカラー画像を見当合わせするような使用条件下では耐寸法変化性である。典型的には、支持体は、ポリマーフィルム(例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー、及びポリスチレンフィルム)、ガラス、セラミック、金属シート又はフォイル、又は剛性紙(樹脂塗布紙及び金属化紙を含む)、又はこれらの材料のうちのいずれかのラミネーション(例えばポリエステルフィルム上へのアルミニウムフォイルのラミネーション)を含むいかなる自立型材料であってもよい。金属支持体は、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン及びこれらの合金のシート又はフォイルを含む。
【0038】
ポリマーフィルム支持体の一方又は両方の表面を、付着特性又は反射特性を高めるために「下塗り」層で改質することができ、或いは、平坦性を高めるために、紙支持体を同様に塗布することができる。下塗り層材料としては、アルコキシシラン、アミノ−プロピルトリエトキシシラン、グリシジオキシプロピル−トリエトキシシラン、及びエポキシ官能性ポリマー、並びに、コンベンショナルな下塗り材料が挙げられるが、これらには限定されない。
【0039】
有用な基板は、物理的グレイニング、電気化学的グレイニング、化学的グレイニング、及び陽極酸化を含む、当業者に知られた技術によって塗布又は処理することができるアルミニウム含有支持体から構成される。
【0040】
例えばケイ酸塩、デキストリン、フッ化カルシウムジルコニウム、ヘキサフルオロケイ酸、リン酸塩/フッ化物、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸−アクリル酸コポリマー、ポリ(アクリル酸)、又は(メタ)アクリル酸コポリマー溶液、又はこれらの混合物でアルミニウム支持体を処理することにより、所望による中間層を形成することができる。
【0041】
基板の厚さは多様であることが可能であるが、しかし、印刷から生じる摩耗に耐えるのに十分な厚さを有し、しかも印刷版の周りに巻き付けるのに十分に薄くあるべきである。好ましい態様は典型的には、厚さ100μm〜600μmの処理されたアルミニウム・フォイルを含む。
【0042】
基板の裏側(非画像形成側)には、画像形成性要素の取り扱い及び「感触」を改善するために、静電防止剤及び/又はスリップ層又は艶消し層を被覆することができる。
【0043】
基板は、層組成物が適用された円筒形表面であってもよく、ひいては印刷プレスの一体部分、又はプレス胴上へ組み込まれたスリーブの一体部分であってもよい。このような画像形成された胴の使用は、例えば米国特許第5,713,287号明細書(Gelbart)に記載されている。
【0044】
<第1層>
第1層は、第2層と基板との間に配置されている。典型的には、第1層は基板(上述のようないずれかの塗膜を含む)上に直接的に配置されている。第1層は、画像形成手順(下記)のタイプに応じて、現像中に部分的又は全体的に除去されてよい第1ポリマーバインダーを含む。加えて、第1ポリマーバインダーは普通、第2層を塗布するのに使用される溶剤中には不溶性なので、第2層は、第1層を溶解させることなしに、第1層上に塗布することができる。これらの第1ポリマーバインダーの混合物を、所望の場合には第1層内に使用することができる。
【0045】
第1層内に使用されるポリマーバインダーは、現像時に使用されてよい化学溶剤に対して、そして平板印刷インク及び印刷プレス・クリーニング流体に対して高い抵抗性を有していると有利である。このような抵抗性は、特定の溶剤又は化学薬品中に種々の時間にわたって要素を浸し、そして残りの塗膜の質量を測定することにより、測定することができる。残留塗膜質量が大きいほど、耐化学薬品性が高いことを示す。
【0046】
例えば、塗布・乾燥された第1層配合物(アルミニウム基板上)を、2−ブトキシエタノール(ブチルセルソルブ(Butyl Cellusolve)):水の80:20質量混合物中に室温で5分間にわたって浸漬し、そしてその層を再び乾燥させた後、層の質量損失パーセンテージを測定することにより、第1層の耐溶剤性を評価することができる。例えば、第1層配合物は、上記試験を用いた塗膜質量損失が35%未満であると、所望の耐溶剤性を有している。しかしながら、塗膜質量損失が既知の層配合物よりも小さい場合には、耐化学薬品性のいずれかの改善が明らかである。ブチルセルソルブは、UV洗剤(機上にある印刷版及びブランケット・ローラからUVインクを取り除くために使用される流体)中に一般に使用される溶剤である。他のグリコールエーテルがUV洗剤中に使用されることもあるが、しかし上記混合物中の耐ブチルセルソルブ性が、特にUVインクが印刷時に使用される場合、印刷中に使用される全ての溶剤に対する耐化学薬品性の良好な指標であると考えられる。
【0047】
第1層のための有用な第1ポリマーバインダーは、(メタ)アクリロニトリル又はN置換型環状イミド(特にN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−(4−カルボキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、又はこれらの混合物)のうちの1種又は2種から誘導された繰り返し単位を含み、そして場合によっては、(メタ)アクリルアミド、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルコキシアルキルメタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、及びN−ヒドロキシメチルメタクリルアミドから誘導された繰り返し単位を含む。例えば第1ポリマーは、N置換型環状イミド、(メタ)アクリロニトリル、及び(メタ)アクリルアミドから少なくとも一部が誘導されていてよい。例えば、(メタ)アクリロニトリルから誘導された繰り返し単位の量は、20〜50モル%であることが可能であり、N置換型環状イミドから誘導された繰り返し単位の量は、20〜75モル%であることが可能であり、そして他のモノマー、例えば(メタ)アクリルアミドから誘導された繰り返し単位の量は、0〜50モル%であることが可能である。
【0048】
第1層は、上記耐化学薬品性が依然として満たされる限り、活性化メチロール及び/又は活性化アルキル化メチロール基を有する樹脂である1種又は2種以上の二次的なポリマー材料を含んでもよい。第1層内のこれらの「二次的なポリマー材料」は、第2層内に使用される「第2ポリマーバインダー」と混同されるべきではない。
【0049】
二次的な付加的ポリマー材料としては、例えば、レゾール樹脂、及びこれらのアルキル化類似体、メチロールメラミン樹脂、及びこれらのアルキル化類似体(例えばメラミン−ホルムアルデヒド樹脂)、メチロールグリコルリル樹脂、及びアルキル化類似体(例えばグリコルリル−ホルムアルデヒド樹脂)、チオ尿素−ホルムアルデヒド樹脂、グアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、及びベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂を挙げることができる。商業的に入手可能なメラミン−ホルムアルデヒド樹脂及びグリコルリル−ホルムアルデヒド樹脂としては、例えばCYMEL(登録商標)樹脂(Dyno Cyanamid)及びNIKALAC(登録商標)樹脂(Sanwa Chemical)が挙げられる。
【0050】
活性化メチロール及び/又は活性化アルキル化メチロール基を有する樹脂は、好ましくはレゾール樹脂又はレゾール樹脂の混合物である。レゾール樹脂は当業者によく知られている。これらは、過剰のフェノールを使用して塩基性条件下で、フェノールとアルデヒドとを反応させることにより調製される。商業的に入手可能なレゾール樹脂としては、例えばGP649D99レゾール(Georgia Pacific)、及びBSK-5928レゾール樹脂(Union Carbide)が挙げられる。
【0051】
有用な二次的な付加的ポリマー材料としては、N−フェニルマレイミドから誘導された25〜75モル%の繰り返し単位、メタクリルアミドから誘導された10〜50モル%の繰り返し単位、メタクリル酸から誘導された5〜30モル%の繰り返し単位を含むコポリマーを挙げることができる。これらの二次的な付加的コポリマーは、米国特許第6,294,311号明細書及び同第6,528,228号明細書(両方とも上記)に開示されている。
【0052】
第1層内において有用な第1ポリマーバインダー、並びに二次的なポリマー材料は、いくつかの商業的供給元から購入することができ、或いは、当業者によく知られており、Macromolecules、1984年、第2巻、第2版、H.G. Elias, Plenum、New Yorkの第20章及び21章に記載されている方法、例えばラジカル重合によって調製することができる。上記第1ポリマーバインダーは一般に、少なくとも50質量%、そして典型的には60〜90質量%を占め、そしてこの量は、どのような他のポリマー及び化学成分が存在するかに応じて変化することができる。いかなる二次的なポリマー材料(例えばノボラック、レゾール、又は上記コポリマー)も、5〜45質量%の量で存在することができる。
【0053】
第1層は、他の成分、例えば界面活性剤、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、粘度上昇剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、抗酸化剤、及び着色剤を含むこともできる。
【0054】
第1層はまた、600〜1500nm、そして典型的には700〜1200nmの輻射線を吸収するとともに、300〜600nmにおいて最小吸収を有する、1種又は2種以上の赤外線吸収化合物(「IR吸収化合物」)を含む。
【0055】
好適なIR色素としては、アゾ色素、スクアリリウム色素、トリアリールアミン色素、チアゾリウム色素、インドリウム色素、オキソノール色素、オキサゾリウム色素、シアニン色素、メロシアニン色素、フタロシアニン色素、インドシアニン色素、インドトリカルボシアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、オキサトリカルボシアニン色素、チオシアニン色素、チアトリカルボシアニン色素、メロシアニン色素、クリプトシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリアニリン色素、ポリピロール色素、ポリチオフェン色素、カルコゲノピリロアリーリデン及びビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン色素、オキシインドリジン色素、ピリリウム色素、ピラゾリンアゾ色素、オキサジン色素、ナフトキノン色素、アントラキノン色素、キノンイミン色素、メチン色素、アリールメチン色素、ポリメチン色素、スクアリン色素、オキサゾール色素、クロコニン色素、ポルフィリン色素、及び前記色素クラスのいずれかの置換形態又はイオン形態が挙げられるが、これらには限定されない。好適な色素は、例えば米国特許第4,973,572号明細書(DeBoer)、及び同第5,208,135号明細書(Patel他)、同第5,244,771号明細書(Jandrue Sr.他)、及び同第5,401,618号明細書(Chapman他)、及び欧州特許出願公開第0823327号明細書(Nagasaka他)に開示されている。
【0056】
アニオン性発色団を有するシアニン色素も有用である。例えば、シアニン色素は、2つの複素環式基を有する発色団を有することができる。別の態様の場合、シアニン色素は、少なくとも2つのスルホン酸基、より具体的には2つのスルホン酸基と2つのインドレニン基とを有することができる。このタイプの有用なIR感光性シアニン色素が、米国特許出願公開第2005−0130059号明細書(Tao)に記載されている。好適なシアニン色素の1クラスに関する全般的な説明が、国際公開第2004/101280号(Munnelly他)の段落[0026]における式によって示されている。
【0057】
低分子量IR吸収色素に加えて、ポリマーに結合されたIR色素部分を使用することもできる。さらに、IR色素カチオンを使用することができ、すなわち、このカチオンは、カルボキシ、スルホ、ホスホ、又はホスホノ基を側鎖内に含むポリマーとイオン相互作用する色素塩のIR吸収部分である。
【0058】
近赤外線吸収シアニン色素も有用であり、そして例えば米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)、同第6,264,920号明細書(Achilefu他)、同第6,153,356号明細書(Urano他)、同第5,496,903号明細書(Watanabe他)に記載されている。好適な色素は、コンベンショナルな方法及び出発材料を用いて形成することができ、或いは、American Dye Source(カナダ国ケベック州Baie D'Urfe)及びFEW Chemicals(ドイツ国)を含む種々の商業的供給元から得ることができる。近赤外線ダイオード・レーザービームのための他の有用な色素が、例えば米国特許第4,973,572号明細書(DeBoer)に記載されている。
【0059】
有用なIR吸収化合物はまた、カーボンブラック、例えば当業者によく知られているように可溶化基で表面官能化されたカーボンブラックを含む種々の顔料を含む。親水性、非イオン性ポリマーにグラフトされるカーボンブラック、例えばFX-GE-003(Nippon Shokubai製)、又はアニオン基で表面官能化されたカーボンブラック、例えばCAB-O-JET(登録商標)200又はCAB-O-JET(登録商標)300(Cabot Corporation製)も有用である。他の有用な顔料としては、ヘリオゲン・グリーン、ニグロシン・ベース、酸化鉄(III)、酸化マンガン、プルシアン・ブルー、及びパリス・ブルーが挙げられる。顔料粒子のサイズは、画像形成性層の厚さを上回るべきではない。
【0060】
輻射線吸収化合物は一般に、少なくとも5質量%から30質量%まで、典型的には8〜25質量%(乾燥層総質量を基準とする)の量で画像形成性要素内に存在している。この目的に必要な特定の量は、使用される具体的な化合物、及び使用されるべきアルカリ現像剤の特性に応じて、当業者には容易に明らかである。
【0061】
第1層は、他の成分、例えば界面活性剤、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、粘度上昇剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、抗酸化剤、及び着色剤、又はこれらの組み合わせを、全て既知の量で含むこともできる。第1層は、好適な架橋剤、例えばジビニルベンゼンで架橋することもできる。
【0062】
第1層の乾燥塗膜被覆率は一般に、0.5〜5g/m2、典型的には0.7〜3g/m2である。
【0063】
<第2層>
画像形成性要素の第2層は、第1層上に配置されており、そして大抵の態様の場合、第1層と第2層との間には中間層はない。第2層は、赤外線吸収化合物を実質的には含まず(3質量%未満)、このことは、これらの化合物のいずれも第2層内に意図的に含まれることはなく、そして他の層から第2層内に拡散する量は僅かであることを意味する。
【0064】
1種又は2種以上の第2ポリマーバインダーは一般に、50〜100質量%、典型的に70〜98質量%の乾燥被覆率で第2層内に存在する。ポリマーバインダーを含む第2層内の材料は、層の感熱性に関与する。換言すれば、第2層は、本発明に基づいて用いられる熱画像形成によって容易に変形され不安定化される。
【0065】
第2層内に使用される第2ポリマーバインダーは一般に、熱画像形成によって溶融され得る。第1層内の第1ポリマーバインダー(又はこれらの混合物)のTgは、第2層内の第2ポリマーバインダーのTgよりも、少なくとも10℃、典型的には25℃だけ高い。Tgは、熱機械分析又は示差走査熱量測定を用いることにより測定することができる。
【0066】
第2ポリマーバインダーは、下記7クラスのポリマー:
a):ノボラック樹脂、レゾール樹脂、分枝状又は非分枝状ポリヒドロキシスチレン(又はポリビニルフェノール)、ペンダント・フェノール基を有するポリビニルアセタール、又はこれらのいずれかの組み合わせ、
b):ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及びこれらの混合物から成る群から選択された基(a)の1種又は2種以上のモノマーから誘導された繰り返し単位と、無水マレイン酸、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混合物から成る群から選択された基(b)の1種又は2種以上のモノマーから誘導された繰り返し単位とを有するポリマー、
c):無水マレイン酸と、式CH2=CH(C641)のモノマー及びこれらの混合物とから誘導されたコポリマー(式中R1は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルホンアミド、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシル、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混合物である)、
d):メチルメタクリレートと、カルボン酸含有モノマー又はカルボン酸含有モノマーの混合物とから誘導されたコポリマー、
e):ポリマー主鎖に結合された−X−C(=T)−NR−S(=O)2−部分を有するポリマー(式中、−X−はオキシ又は−NR’−基であり、TはO又はSであり、R及びR’は独立して水素、ハロ、又は炭素原子数1〜6のアルキル基である)、及び、
f):下記構造(I−F)又は(II−F):
【0067】
【化1】

【0068】
(式中、nは1〜3であり、Rs及びRtは独立して水素又はアルキル又はハロ基であり、Xは多価結合基であり、Yはオキシ又は−NR−であり、ここでRは水素又はアルキル又はアリール基であり、そしてZは一価有機基である)、
によって表される繰り返し単位を有するポリマー、
のうちの少なくとも1種又は2種から選択することができる。
【0069】
<クラスa)ポリマー>
クラスa)ポリマーとしては、ポリ(ヒドロキシスチレン)、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ペンダント・フェノール基を有するポリ(ビニルアセタール)、及びこれらの樹脂のうちのいずれかのものの混合物(例えば1種又は2種以上のノボラック樹脂と、1種又は2種以上のレゾール樹脂との混合物)が挙げられるが、これらには限定されない。ノボラック樹脂が最も好ましい。
【0070】
一般に、このような樹脂の数平均分子量は、コンベンショナルな手順を用いて測定して、少なくとも3,000〜最大200,000であり、典型的には6,000〜100,000である。これらのタイプの樹脂のほとんどは商業的に入手可能であるか、又は周知の反応物質及び手順を用いて調製される。例えば、ノボラック樹脂は、酸触媒の存在において、フェノールとアルデヒドとの縮合反応によって調製することができる。典型的なノボラック樹脂としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及びピロガロール−アセトン樹脂、例えばm−クレゾール、m,p−クレゾール混合物とホルムアルデヒドとを、コンベンショナルな条件を用いて反応させることから調製されたノボラック樹脂が挙げられるが、これらには限定されない。例えば、いくつかの有用なノボラック樹脂としては、キシレノール−クレゾール樹脂、例えばSPN400、SPN420、SPN460、及びVPN1100(AZ Electronicsから入手可能)、及びより高い分子量、例えば少なくとも4,000のEP25D40G及びEP25D50Gが挙げられるが、これらには限定されない。
【0071】
他の有用なクラスa)樹脂としては、フェノールヒドロキシル基を有するポリビニル化合物、例えばポリ(ヒドロキシスチレン)、及びヒドロキシスチレンの繰り返し単位を含有するコポリマー、及び置換型ヒドロキシスチレンの繰り返し単位を含有するポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0072】
例えば米国特許第5,554,719号明細書(Sounik)、米国特許第6,551,738号明細書(Ohsawa他)、米国特許出願公開第2003/0050191号明細書(Bhatt他)、及び米国特許出願公開第2005/0051053号明細書(Wisnudel他)、及び同時係属中の同一譲受人による米国特許出願第11/474,020号明細書(Levanon他により2006年6月23日付け出願)に記載されているように、4−ヒドロキシスチレンから誘導された複数の分枝状ヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する分枝状ポリ(ヒドロキシスチレン)も有用である。例えばこのような分枝状ヒドロキシスチレンポリマーは、ヒドロキシスチレン、例えば4−ヒドロキシスチレンから誘導された繰り返し単位を含み、これらの繰り返し単位はさらに、ヒドロキシ基に対してorthoに位置する反復ヒドロキシスチレン単位(例えば4−ヒドロキシスチレン単位)で置換されている。これらの分枝状ポリマーの質量平均分子量(Mw)は、1,000〜30,000、典型的には1,000〜10,000、又は3,000〜7,000であり得る。加えて、これらの多分散度は2未満、好ましくは1.5〜1.9であってよい。分枝状ポリ(ヒドロキシスチレン)は、非分枝状のヒドロキシスチレン繰り返し単位を有するホモポリマー又はコポリマーであることが可能である。
【0073】
いくつかの有用なポリ(ヒドロキシスチレン)が、欧州特許出願公開第1,669,803号明細書(Barclay他)に記載されている。
【0074】
他の有用なポリマーバインダーは、下記構造(POLYMER):
【0075】
【化2】

【0076】
で表される改質ノボラック又はレゾール樹脂であり、
上記式中、
Yは
【0077】
【化3】

【0078】
であり、
aは、90〜99モル%(典型的には92〜98モル%)であり、bは、1〜10モル%(典型的には2〜8モル%)であり、R1及びR3は独立して水素又はヒドロキシ、アルキル、又はアルコキシ基であり、R2は水素又はアルキル基であり、Xはアルキレン、オキシ、チオ、−OC(=O)Ar−、−OC(=O)CH=CH−、又は−OCO(CH2)n4−基であり、Arはアリール基であり、m及びpは独立して1又は2であり、n1は0又は最大5の整数(例えば0、1、2、又は3)であり、n2は0又は最大5の整数(例えば0、1、又は2)であり、n3は0又は1(典型的には0)であり、n4は少なくとも1(例えば最大8)であり、そしてZは−C(=O)OH、−S(=O)2OH、−P(=O)(OH)2、又は−OP(=O)(OH)2である。
【0079】
一次的なポリマーバインダー中に存在するアルキル及びアルコキシ基(R1、R2及びR3に対応)は、非置換型であってよく、或いは1つ又は2つ以上のハロ、ニトロ、又はアルコキシ基で置換することもでき、また1〜3つの炭素原子を有することができる。このような基は線状、分枝状、又は環状であり得る(すなわち本発明の目的上、「アルキル」は「シクロアルキル」をも含む)。
【0080】
Xがアルキレンの場合、これは炭素原子数1〜4であることが可能であり、そしてアルキル及びアルコキシ基と同様にさらに置換することができる。加えて、アルキレン基は、環及び鎖内の炭素原子数が少なくとも5の置換型又は非置換型シクロアルキレン基であってよい。Arは置換型又は非置換型の6又は10員炭素環式芳香族基、例えば置換型又は非置換型フェニル及びナフチル基である。典型的には、Arは非置換型フェニル基である。
【0081】
いくつかの態様の場合、ポリマーバインダーは、aが92〜98モル%であり、bが2〜8モル%であり、そしてZが−C(=O)OHである構造(POLYMER)によって表される繰り返し単位を含み、そして層の総乾燥質量を基準として15〜100質量%の乾燥被覆率で存在する。
【0082】
<クラスb)ポリマー>
クラスb)ポリマーとしては、グループ(a1)のモノマーに由来する少なくとも15モル%の繰り返し単位と、グループ(b1)のモノマーに由来する少なくとも10モル%の繰り返し単位とを含む、下記グループ(a1)のモノマーと下記グループ(b1)のモノマーとから少なくとも一部が誘導されたコポリマーが挙げられるが、これらには限定されない。電子不足オレフィン、例えば無水マレイン酸又はマレイミドがグループ(b1)のモノマーとして使用される場合には、1:1の交互コポリマー(すなわち50モル%のグループ(a1)のモノマー、及び50モル%のグループ(b1)のモノマー)が典型的には生成される。
【0083】
グループ(a1)のモノマーは、ノルボルネン、又はノルボルネン誘導体、例えば:
【0084】
【化4】

【0085】
及びこれらの混合物を含む。
【0086】
グループ(b1)のモノマーは、
【0087】
【化5】

【0088】
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、ヒドロキシスチレン、CH(R11)CH(CO212)、CH(R11)CH(CON(R12)2)、CH2CH(OR12)、及びこれらの混合物から成る群から選択される。R1、R2、R4、及びR5はそれぞれ独立して、水素、フェニル、置換型フェニル、ハロゲン、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシル、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混合物である。置換型フェニル基は、例えば、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−t−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、3−エトキシフェニル、4−シアノフェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−アセトキシフェニル、4−カルボキシフェニル、4−カルボキシメチルフェニル、4−カルボキシエチルフェニル、3,5−ジクロロフェニル、及び2,4,6−トリメチルフェニルを含む。ハロゲンは、フルオロ、クロロ、及びブロモを含む。例は、CH3CO−(アセチル)、CH3CH2CO−、CH3(CH2)2CO−、CH3(CH2)3CO−、(CH3)3CCO−、及び(CH3)3CCH2CO−である。炭素原子数1〜7のアシルオキシ基は、−OC(O)R基(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である)であり、例えば上記のような基である。例は、H3CC(=O)O−(アセチルオキシ)、CH3CH2C(=O)O−、CH3(CH2)2C(=O)O−、CH3(CH2)3C(=O)O−、(CH3)3CC(=O)O−、及び(CH3)3CCH2C(=O)O−である。炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ基は、−C(=O)OR基(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である)であり、例えば上記のような基である。例は、−C(=O)OCH3(カルボメトキシ)、−C(=O)OCH2CH3、−C(=O)O(CH2)2CH3、−C(=O)O(CH2)3CH3、−C(=O)OC(CH3)3(カルボ−t−ブトキシ)、−C(=O)OCH2C(CH3)3、−C(=O)O(CH2)4CH3、及び−C(=O)O(CH2)5CH3である。R3、R6、及びR7はそれぞれ−CH2−である。各R8及びR9はそれぞれ独立して、水素又はメチル、又はこれらの混合物であり、典型的には水素である。R10は、水素、ヒドロキシル、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、置換型フェニル、ベンジル、又はこれらの混合物である。各R11は独立して、水素、メチル、又はこれらの混合物である。各R12は独立して、水素、炭素原子数1〜6のアルキル、フェニル、又はこれらの混合物であり、典型的には水素、メチル、又はこれらの混合物である。
【0089】
より具体的には、グループ(a1)のモノマーとしては、ノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)及びその誘導体、例えばメチル−5−ノルボルネン−2−カルボキシレート、t−ブチル5−ノルボルネン−2−カルボキシレート、及び5−ノルボルネン−2−カルボン酸のその他のエステル;cis−5−ノルボルネン−endo−2,3−ジカルボン酸無水物、及び対応するイミド、例えばN−メチル、N−ヒドロキシル、N−フェニル、N−シクロヘキシル、及びN−ベンジルイミド;テトラシクロドデセン(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス−3−エン)及びその誘導体、例えば(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス−3−エン−8−カルボン酸のエステル、例えばメチル(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス−3−エン)−8−カルボキシレート、エチル(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス−3−エン)−8−カルボキシレート、及びt−ブチル(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス−3−エン)−8−カルボキシレート;(テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデス−3−エン−endo−8,9−ジカルボン酸及びその対応イミド、例えばN−メチル、N−ヒドロキシル、N−フェニル、N−シクロヘキシル、及びN−ベンジルイミド;及びこれらの混合物が挙げられるが、これらには限定されない。
【0090】
グループ(b1)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ヒドロキシスチレン、アクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、及びフェニルアクリレート;メタクリル酸エステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びフェニルメタクリレート;メタクリルアミド及びアクリルアミド、例えばメタクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、及びp−アミノ安息香酸のアクリルアミド及びメタクリルアミド;無水マレイン酸;マレイン酸イミド、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド;ビニルエーテル、例えばメチルビニルエーテル及びエチルビニルエーテル;及びこれらの混合物が挙げられるが、これらには限定されない。
【0091】
クラスb)ポリマー及びこれらの製造方法の更なる詳細が、米国特許第6,969,570号明細書(Kitson)に示されている。
【0092】
<クラスc)ポリマー>
クラスc)ポリマーとしては、無水マレイン酸と、スチレン又は置換型スチレン又は置換型スチレンの混合物とから少なくとも一部が誘導されたコポリマー(スチレン誘導体)が挙げられるが、これらには限定されない。無水マレイン酸から誘導された繰り返し単位は典型的には、コポリマーの1〜50モル%、より高い可能性としては15〜50モル%を占める。
【0093】
典型的には、スチレン及び置換型スチレンは、式CH2=CH(C641)によって表すことができる。置換基R1は、ビニル(CH2=CH−)基に対してo−、m−、又はp−であってよい。R1は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルホンアミド、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシル、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混合物であり得る。ハロゲンは、フルオロ、クロロ、及びブロモを含む。スルホンアミド基の一例は、−S(=O)2NH2である。炭素原子数1〜7のアシルは、−C(=O)R基であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、例えば上記のものである。例は、CH3CO−(アセチル)、CH3CH2CO−、CH3(CH2)2CO−、CH3(CH2)3CO−、(CH3)3CCO−、及び(CH3)3CCH2CO−である。炭素原子数1〜7のアシルオキシ基は、−OC(O)R基(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である)であり、例えば上記のような基である。例は、H3CC(=O)O−(アセチルオキシ)、CH3CH2C(=O)O−、CH3(CH2)2C(=O)O−、CH3(CH2)3C(=O)O−、(CH3)3CC(=O)O−、及び(CH3)3CCH2C(=O)O−である。炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ基は、−CO2R基(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である)であり、例えば上記のような基である。例は、−C(=O)OCH3(カルボメトキシ)、−C(=O)OCH2CH3(カルボエトキシ)、−C(=O)O(CH2)2CH3、−C(=O)O(CH2)3CH3、−C(=O)OC(CH3)3(カルボ−t−ブトキシ)、−C(=O)OCH2C(CH3)3、−C(=O)O(CH2)4CH3、及び−C(=O)O(CH2)5CH3である。有用なモノマーはスチレンであり、R1は上記式中、水素である。
【0094】
追加のモノマー、例えばアクリレート及びメタクリレート・モノマー(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレート)、アクリロニトリル;メタクリロニトリル、メタクリルアミド(例えばメタクリルアミド及びN,N−ジメチルメタクリルアミド)、及びアクリルアミド(例えばアクリルアミド及びN,N−ジメチルアクリルアミド)が存在してもよいが、しかし必要というわけではない。
【0095】
クラスc)コポリマー及びこれらの製造方法の更なる詳細が、例えば米国特許出願公開第2007/0065737号明細書(Kitson)に示されている。
【0096】
<クラスd)ポリマー>
クラスd)ポリマーとしては、メチルメタクリレートと、カルボン酸含有モノマー、典型的には炭素原子数14以下のカルボン酸含有モノマー、より典型的には炭素原子数9以下のカルボン酸含有モノマーとから少なくとも一部が誘導されたコポリマーが挙げられるが、これらには限定されない。カルボン酸含有モノマーの混合物が使用されてもよい。典型的なカルボン酸含有モノマーはアクリル酸、メタクリル酸、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、イタコン酸、マレイン酸、及び、ヒドロキシル含有モノマー(例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート)と、環状無水物(例えば無水コハク酸又は無水フタル酸)との反応によって形成されたモノマーが挙げられる。特に有用なカルボン酸含有モノマーはメタクリル酸である。
【0097】
メチルメタクリレートから誘導された繰り返し単位と、カルボン酸含有モノマーから誘導された繰り返し単位とのモル比は一般に、80:20〜98:2であり、そして典型的には、90:10〜95:5である。
【0098】
追加のモノマー、例えばアクリレート及び他のメタクリレート・モノマー(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレート)、無水マレイン酸、ビニルエーテル(例えばメチルビニルエーテル)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリルアミド(例えばメタクリルアミド及びN,N−ジメチルメタクリルアミド)、及びアクリルアミド(例えばアクリルアミド及びN,N−ジメチルアクリルアミド)が存在してもよいが、しかし必要というわけではない。典型的には、コポリマーは本質的に、メチルメタクリレートと、カルボン酸含有モノマー又はカルボン酸含有モノマーの混合物とから成っている。クラスd)コポリマーの分子量は一般に200,000未満である。クラスd)コポリマー及びこれらの製造方法の更なる詳細も、例えば米国特許出願公開第2007/0065737号明細書(Kitson)に示されている。
【0099】
<クラスe)ポリマー>
クラスe)ポリマーとしては、所望のpKaを提供するであろう十分な量でポリマー主鎖に直接的又は間接的に結合される種々の基(通常は、ポリマー主鎖に対するペンダント基)、例えばメルカプト基、スルホンアミド基、及びN置換型スルホンアミド基(アルキル、アシル、アルコキシカルボニル、アルキルアミノカルボニル、及びβ−ケトエステル置換型スルホンアミド基が挙げられるが、これらには限定されない)、α−シアノエスエル、α−シアンケトン、ベータ−ジケトン、及びα−ニトロエステルを含む、pKaが6〜9(典型的には6〜8)であるポリマーバインダーが挙げられるが、これらには限定されない。非置換型及び置換型スルホンアミド基が有用である。これらのバインダーは、ポリマー主鎖に沿って上記ペンダント基の混合物を含むこともできる。
【0100】
より具体的には、クラスe)ポリマーのそれぞれは、ポリマー主鎖と、このポリマー主鎖に結合され且つこのポリマー主鎖に沿った−X−C(=T)−NR−S(=O)2−部分とを含むことができ、−X−はオキシ(−O−)又は−NR’−基であり、TはO(オキソ基を形成)又はS(チオキソ基を形成)であり、R及びR’は独立して、水素、ハロ、又は炭素原子数1〜6の置換型又は非置換型アルキル基である。例えば、Rは水素であり、TはOであり、そしてXはオキシ又は−NH−基である。
【0101】
いくつかの態様において、クラスe)ポリマーは、1種又は2種以上のエチレン系不飽和型重合性モノマーから誘導された1種又は2種以上のアクリル樹脂を含み、これらのモノマーのうちの少なくとも1種が、下に規定されるペンダント−X−C(=T)−NR−S(=O)2−R3基を含む。
【0102】
より具体的には、クラスe)ポリマーは、下記構造(E):
【0103】
【化6】

【0104】
によって表すことができ、
上記式中、R1は水素、炭素原子数1〜6の置換型又は非置換型アルキル基(例えばメチル、エチル、クロロメチル、イソ−プロピル、及びベンジル)、又はハロ基(例えばフルオロ、クロロ、又はブロモ)である。好ましくは、R1は、水素、置換型又は非置換型メチル又はクロロ基であり、より好ましくは、R1は水素、又は非置換型メチルである。
【0105】
2は−X−C(=T)−NR−S(=O)2−R3基を表し、X、T、及びRは上に規定した通りであり、そしてR3は、炭素原子を介して−S(=O)2−に直接的に結合された置換型又は非置換型脂肪族基又は置換型又は非置換型アリール基である。より具体的には、R3は、炭素原子数1〜12の置換型又は非置換型アルキル基、環内炭素原子数5〜10の置換型又は非置換型シクロアルキレン基、環内炭素原子数6〜10の置換型又は非置換型アリール基、又は置換型又は非置換型複素環式基、又は直接的に結合されるか、或いはオキシ、カルボニル、アミド、チオ、又は当業者には容易に明らかな他の基と一緒に結合されたこれらの基のいずれかの組み合わせである。最も好ましくは、R3は、置換型又は非置換型フェニル基である。
【0106】
Lは、直接結合、又は結合基であり、置換型又は非置換型のアルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、二価複素環、カルボニルオキシ、チオ、オキシ、又はアミド基、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。置換型又は非置換型アルキレン基は炭素原子数が1〜6であってよく(例えばメチレン、1,2−エチレン、1,1−エチレン、n−プロピレン、イソ−プロピレン、t−ブチレン、n−ブチレン、及びn−へキシレン基)、置換型シクロアルキレン基は、環内炭素原子数が5〜7であってよく(例えばシクロペンチレン及び1,4−シクロへキシレン)、置換型又は非置換型アリーレン基は、芳香環内炭素原子数が6〜10であってよく(例えば1,4−フェニレン、ナフチレン、2−メチル−1,4−フェニレン、及び4−クロロ−1,3−フェニレン基)、また置換型又は非置換型の芳香族又は非芳香族二価複素環基は、環内の炭素原子数が5〜10であり、そしてヘテロ原子(窒素、酸素、又は硫黄原子)数が1又は2以上であってよい(例えばピリジレン、ピラジレン、ピリミジレン、又はチアゾリレン基)。これらの二価結合基のうちの2つ又は3つ以上の組み合わせを使用することができる。
【0107】
Lは、カルボン酸エステル基、例えば置換型又は非置換型の−C(=O)O−アルキレン、−C(=O)O−アルキレン−フェニレン、又は−C(=O)O−フェニレン基を表す(アルキレンの炭素原子数は1〜4である)ことが有用である。より好ましくは、Lは、−C(=O)O−アルキレン、−C(=O)O−アルキレン−フェニレン、又は−C(=O)O−フェニレン基であり、そして最も好ましくは、Lは、−C(=O)O−アルキレン基であり、アルキレンの炭素原子数は1又は2である。
【0108】
上記構造(E)中、Bは、R2基を含有しない1種又は2種以上のエチレン系不飽和型重合性モノマーから誘導された繰り返し単位を表し、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルケトン、オレフィン、不飽和型イミド(例えばマレイミド)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、(メタ)アクリロニトリル、不飽和型無水物、又はスチレンモノマーから誘導された繰り返し単位が挙げられるが、これらには限定されない。好ましくは、B繰り返し単位は、1種又は2種以上の(メタ)アクリレート、スチレンモノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、又はこれらの組み合わせから誘導される。構造(E)中の「B」によって表される繰り返し単位の混合物を提供するために、モノマーの混合物を使用することができる。
【0109】
構造(E)において、xは20〜85質量%であり、そしてyは15〜80質量%である。
【0110】
これらのポリマーバインダーに有用なR2基を含有する有用なモノマーの例は、下記エチレン系不飽和型重合性モノマーA−1〜A−6:
【0111】
【化7】

【0112】
(上記式中、Xは上記で規定した通りである)、
【0113】
【化8】

【0114】
である。
【0115】
クラスe)ポリマー及びこれらの製造方法の更なる詳細が、例えば米国特許第7,241,556号明細書(Saraiya他)に示されている。
【0116】
<クラスf)ポリマー>
クラスf)ポリマーとしては、これらのポリマーの製造に関する詳細をも示す米国特許第7,169,518号明細書(Savariar-Hauck他)に記載されたポリマーが挙げられるが、これらには限定されない。具体的には、これらのポリマーバインダーは、一般に下記構造(I−F)又は(II−F):
【0117】
【化9】

【0118】
によって表されるペンダント・カルボキシ基を有する繰り返し単位を含み、これらの繰り返し単位はポリマーバインダー中の総繰り返し単位の少なくとも3モル%を占め、上記式中、nは1〜3(好ましくは1又は2)である。Rs及びRtは独立して、水素、炭素原子数1〜7の置換型又は非置換型のアルキル基(例えばメチル、エチル、t−ブチル、又はベンジル)、又はハロ基(例えばクロロ又はブロモ)である。例えば、Rs及びRtは独立して、水素、又は置換型又は非置換型のメチル基又はクロロ基である。
【0119】
Xは、例えば多価脂肪族及び芳香族結合基、及びこれらの組み合わせを含む多価結合基である。大抵の態様の場合、Xは二価結合基である。このような基は、アルキレン、アリーレン、アルキレンアリーレン、アリーレンアルキレン、アルキレンオキシアルキレン、アリーレンオキシアリーレン、及びアルキレンオキシアリーレン基を含むことができ、これらの全ては非置換型であるか、又は第2ポリマーバインダーの性能に不都合な影響を及ぼさない1種又は2種以上の置換基で置換することができる。好ましくは、Xは、特にnが1である場合、置換型又は非置換型のフェニレン基である。
【0120】
構造(II−F)において、Yは、オキシ又は−NR−であり、Rは水素、又は炭素原子数1〜10の置換型又は非置換型のアルキル基(例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、n−ヘキシル、及びベンジル基)又は置換型又は非置換型のアリール基(例えばフェニル基)である。
【0121】
また構造(II−F)において、Zは、例えば一価脂肪族及び芳香族基、及びこれらの組み合わせを含む一価有機基である。このような基は、Xに関して上述した多価基と同様に規定されるが、しかし、カルボニル基[C(=O)]又はアミド基(−NH−)基、又はこれらの組み合わせの有無にかかわらず、アリーレン又はアルキレン基、又はこれらの組み合わせを含むこともできる。例えば、有用なZ基は、−R’−NHC(=O)R’’基を含み、R’は、炭素原子数2〜6の置換型又は非置換型のアルキレン基(例えばエチレン及びイソ−プロピレン)であり、そしてR’’は、炭素原子数1〜10の置換型又は非置換型のアルキル基(例えばメチル、メトキシメチル、エチル、イソ−プロピル、n−ヘキシル、及びベンジル基)である。1つの特に有用なZ基は、CH2CH2NHC(=O)−フェニル基である。
【0122】
Zは、炭素原子数1〜10の置換型又は非置換型のアルキル基(例えばメチル、エチル、イソ−プロピル、t−ブチル、n−ヘキシル、及びベンジル基)であってもよい。Zに対応する特に有用なアルキル基は、炭素原子数1〜8のアルキル基を含む(直鎖及び分枝ブチル基を含む)。
【0123】
クラスf)ポリマーバインダーは一般に、少なくとも20mgKOH/g、典型的には25〜45mgKOH/gの酸価を有しており、また、周知の技術を用いて測定して、1,000〜250,000、典型的には10,000〜150,000の数平均分子量を有している。
【0124】
クラスf)ポリマーバインダーは、下記構造(III−F):
【0125】
【化10】

【0126】
によって表すこともでき、上記式中、Aは、構造(I−F)又は(II−F)、又は両構造(I−F)及び(II−F)によって規定された繰り返し単位を表す。このように、複数のタイプのモノマーを、A繰り返し単位を提供するために使用することができる。構造(III−F)において、xは3〜15モル%であり、そしてyは85〜97モル%である。
【0127】
Bは、Aによって表されるものとは異なる繰り返し単位を表す。これらは、無水マレイン酸を含む、A繰り返し単位がそこから誘導されるモノマーと共重合することができる1種又は2種以上のエチレン系不飽和重合性モノマーから誘導することができる。B繰り返し単位の代表的な有用なモノマーとしては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルエステル、ビニルケトン、オレフィン、N−マレイミドを含む不飽和イミド、不飽和無水物、例えば無水マレイン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、(メタ)アクリロニトリル、又はスチレンモノマー、又はこれらのモノマーのいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。これらのクラス及び類似のクラスの具体的なモノマーが、例えば米国特許出願公開第2004/013766号明細書(欧州特許出願公開第1,433,594号明細書)の段落[0044]〜[0054]に記載されている。
【0128】
例えば、Bは、1種又は2種以上の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、又は(メタ)アクリルアミド、例えばN−アルコキシアルキルメタクリルアミド、又はこのようなモノマーのうちの2種又は3種以上の組み合わせから誘導された構造(III−F)に対応する繰り返し単位を表す。B繰り返し単位がそこから誘導されるいくつかの特に有用なモノマーとしては、メチルメタクリレート、スチレン、ペンダント環状尿素基を有するエチレン系不飽和重合性モノマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0129】
1種又は2種以上の(いずれかのクラスの)ポリマーバインダーは、15〜100質量%、典型的には30〜95質量%の乾燥被覆率で第2層内に存在することができる。
【0130】
加えて、第2層内には溶解抑制成分を含むことができる。このような成分は、ポリマーバインダーのための溶解抑制成分として機能する溶解抑制剤として作用する。溶解抑制剤は典型的には、ポリマーバインダー中の種々の基との水素結合のための受容体部位として作用すると考えられる極性官能基を有している。受容体部位は、高い電子密度を有する原子を含み、そして電子陰性第1周期元素、例えば炭素、窒素、及び酸素から選択することができる。アルカリ現像剤中に可溶性の溶解抑制剤が好ましい。溶解抑制剤のための有用な極性基としては、エーテル基、アミン基、アゾ基、ニトロ基、フェロセニウム基、スルホキシド基、スルホン基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケト基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、トリアリールメタン基、オニウム基(例えばスルホニウム、ヨードニウム、及びホスホニウム基)、窒素原子が複素環内に内蔵される基、及び正電荷原子を含有する基(例えば四級化アンモニウム基)が挙げられるが、これらには限定されない。溶解抑制剤として有用な正電荷窒素原子を含有する化合物は、例えばテトラルキルアンモニウム化合物、及び四級化複素環化合物、例えばキノリニウム化合物、ベンゾチアゾリウム化合物、ピリジニウム化合物、及びイミダゾリウム化合物を含む。更なる詳細及び溶解抑制剤として有用な代表的な化合物が、例えば米国特許第6,294,311号明細書(上記)に記載されている。有用な溶解抑制剤は、トリアリールメタン色素、例えばエチル・バイオレット、クリスタル・バイオレット、マラカイト・グリーン、ブリリアント・グリーン、ビクトリア・ブルーB、ビクトリア・ブルーR、及びビクトリア・ピュアブルーBO、BASONYL(登録商標)バイオレット610及びD11(仏国Longjumeau在、PCAS)を含む。
【0131】
第2層は一般に着色剤をも含む。有用な着色剤は、例えば米国特許第6,294,311号明細書(上記)に記載されており、トリアリールメタン色素、例えばエチル・バイオレット、クリスタル・バイオレット、マラカイト・グリーン、ブリリアント・グリーン、ビクトリア・ブルーB、ビクトリア・ブルーR、及びビクトリア・ピュアブルーBOが挙げられている。これらの化合物は、現像された画像形成性要素内に露光された領域から非露光領域を区別するコントラスト色素として作用することができる。
【0132】
第2層は場合によっては、コントラスト色素、プリントアウト色素、塗膜界面活性剤、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、粘度上昇剤、乾燥剤、消泡剤、pH調整剤、保存剤、抗酸化剤、レオロジー調整剤、現像助剤、又はこれらの組み合わせを既知の量で含むこともできる。一般に、第2層は架橋されない。
【0133】
第2層は、第2層とシリコーンゴム層との接着を促進する接着促進化合物を含むこともできる(下記)。接着促進化合物は一般に、1種又は2種以上のビニル、SiH、SiOH、SiOR3、又はSiOCOR4、又はエポキシ基を含み、R3及びR4は独立して、置換型又は非置換型アルキル、又はアリール基であり、アルキル基の炭素原子数は1〜20であることが可能であり、そしてアリール基は一般にフェニル又はナフチル基である。
【0134】
第2層の乾燥塗膜被覆率は一般に、0.5〜3.5g/m2、典型的に0.4〜2g/m2である。
【0135】
他の配合物の塗布前に溶剤を除去するために、種々の層配合物の適用の間に、中間乾燥工程を用いることができる。乾燥工程は、種々の層の混和を防止するのを助けることもできる。
【0136】
第1層と第2層との間に存在し、しかも第1層及び第2層と接触している分離層が設けられていてよい。この分離層は、第1層から第2層への輻射線吸収化合物の移動を最小化するためのバリアとして作用することができる。この分離「バリア」層は一般に、第3ポリマーバインダーを含む。この第3ポリマーバインダーが、第1層内の第1ポリマーバインダーとは異なる場合、これは典型的には、第1層の第1ポリマーバインダーが不溶性である少なくとも1種の有機溶剤中に可溶性である。有用な第3ポリマーバインダーは、ポリ(ビニルアルコール)である。一般に、このバリア層は第1層の5分の1未満の厚さであるべきであり、そして典型的に第1層の10分の1未満の厚さであるべきである。
【0137】
架橋型シリコーンゴム層をその上に配置することができる、既に塗布された第1層及び第2層の有用な例は、Eastman Kodak Company(ニューヨーク州Rochester)から入手することができる、商業的に入手可能なKODAK SWORD(登録商標)、SWORD EXCEL(登録商標)、及びSWORD ULTRA(登録商標)印刷版前駆体である。このような印刷版前駆体及び第1層及び第2層の組成に関するいくつかの具体的な詳細は、例えば米国特許第6,843,176号明細書(Ray他)及び第7,723,689号明細書(Wieland他)に提供されている。これらの両明細書を、このような前駆体についての教示内容に関して本明細書中に引用する。
【0138】
<架橋型シリコーンゴム層>
第2層上に配置された架橋型シリコーンゴム層は、付加タイプのシリコーンゴム又は縮合タイプのシリコーンゴムから形成されてよいインク反発性層である。
【0139】
一般に、シリコーンゴムは、以下に規定する組成物I又は組成物IIから誘導された架橋型シリコーンゴム層である。
【0140】
組成物I:
a)下記構造(PSR):
−[Si(R1)(R2)−O]−
(PSR)
(上記式中、R1及びR2は、少なくとも一方がアルケニル基である限り、独立してアルキル、アリール、及びアルケニル基である)
によって表される主としてジメチルシロキサン単位とシロキサン単位とを有するポリシロキサン材料、
b)SiH基を有するシラン架橋剤、
c)白金触媒、および
d)場合によっては安定剤、又は接着促進剤、又はその両方。
【0141】
上記成分a)の場合、R1及びR2のアルキル基は同じか又は異なるものであってよく、置換型又は非置換型であってよく、そして炭素原子数が1〜50である。同様に、アルケニル基も、同じか又は異なるものであってよく、置換型又は非置換型であってもよく、そして炭素原子数が2〜50である。アリール基は、同じか又は異なるものであってよく、置換型又は非置換型であってよく、そして炭素環内の炭素原子数が6、10、又は14である。
【0142】
1及びR2の少なくとも50%が、インク反発性を促進するためにメチル基であることが有用な場合がある。構造(PSR)によって規定された単位を有する、結果としてのポリシロキサン材料の分子量は、5,000〜5,000,000又は典型的には50,000〜2,500,000であってよい。組成物I中のポリシロキサン材料の量は一般に、総固形分質量を基準として、少なくとも60%〜最大99%であり、典型的には70〜99%である。
【0143】
分子鎖内に又はその末端にSiH基[成分b)]を有するポリシロキサン材料の代表例が、下記(PSR−I)、(PSR−II)、(PSR−III)、(PSR−IV)、及び(PSR−V):
【0144】
【化11】

【0145】
【化12】

【0146】
(上記各構造内の「n」は2以上の整数であり、そして「m」は1以上の整数である)によって示されているが、これらの構造だけがポリシロキサン材料の考えられ得る構造であると解釈されるべきではない。
【0147】
SiH基含有ポリシロキサン材料中のSiH基の量は、数において少なくとも2であり、通常、数において3よりも大きい。組成物Iにおけるポリシロキサン材料の量は一般に、総固形分を基準として、少なくとも0.1〜最大20%であり、典型的には1〜15%である。ポリシロキサン材料とポリジメチルシロキサンとの量の比は、一般に、1.5〜30であり、典型的に10〜20であることが可能である。
【0148】
組成物I中の成分c)として有用な触媒は、白金化合物である。白金化合物としては、白金、塩化白金、塩化白金酸、オレフィン配位型白金、白金のアルコール改質型錯体、及び白金のメチルビニルポリシロキサン錯体が挙げられるが、これらには限定されない。触媒は、総組成物固形分(又は乾燥シリコーンゴム層)を基準として、一般に0.01〜20%、又は典型的には0.1〜10%の量で、硬化性組成物I中に存在してよい。硬化された層内の白金の量は一般に10〜1000ppmであり、典型的には100〜500ppmである。
【0149】
成分d)としての組成物I中に存在し得る所望による安定剤としては、窒素含有化合物、リン含有化合物、及び不飽和型アルコール、例えばアセチレン含有アルコールが挙げられるが、これらには限定されない。このような化合物は、組成物I中の総固形分を基準として、0.01〜10%、典型的には0.1〜5%の量で存在することが可能である。
【0150】
組成物Iのための所望による接着促進剤は、ヒドロキシ含有オルガノポリシロキサン又は加水分解性官能基含有シラン又はシロキサンを含む。組成物は、充填剤、例えばシリカ又はシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、又はアルミニウム系カップリング剤を含んでいてもよい。有用なシランカップリング剤としては、アルコキシシラン、アセトキシシラン、ケトキシミンシラン、及びビニル含有カップリング剤が挙げられるが、これらには限定されない。
【0151】
組成物II:
a)SiOH、SiOR3、又はSiOCOR4末端基、又はこれらのいずれかの組み合わせを有するポリジメチルシロキサン(式中、R3及びR4は独立して、置換型又は非置換型アルキル、アリール、又はアルケニル基である)、
b)SiOH、SiOR3、又はSiOCOR4基のうちのいずれかのうちの少なくとも2つを有するシロキサン架橋剤(式中、R3及びR4は上記で規定した通りである)、および
c)場合によっては触媒、又は接着促進剤、又はその両方。
【0152】
組成物IIの成分a)は、上で規定した構造(PSR)によって表されるヒドロキシ含有ポリジメチルシロキサンであることが可能であるが、しかし、これに加えて、化合物は、分子末端に位置するSiOH、SiOR3、又はSiOCOR4基を有しており、R3及びR4は、炭素原子数が1〜50の同じか又は異なる置換型又は非置換型アルキル基、炭素原子数が2〜50の同じか又は異なる置換型又は非置換型アルケニル基、又は炭素環内の炭素原子数が6、10、又は14の同じか又は異なる置換型又は非置換型アリール基であってよい。
【0153】
上記末端基を有する結果としてのポリジメチルシロキサンの分子量は、10,000〜600,000又は典型的には30,000〜200,000であってよい。組成物II中のポリシロキサン材料の量は一般に、総固形分質量を基準として、少なくとも60%〜最大99%であり、典型的には70〜99%である。
【0154】
組成物IIにおいて有用なシロキサン架橋剤としては、アセトキシシラン、アルコキシシラン、ケトキシミンシラン、アリルオキシシラン、及び下記構造(SILANE):
(R6)4-pSiXp
(SILANE)
によって表すことができる当業者に知られている他のものが挙げられるが、これらには限定されない。上記式中、pは整数2〜4(典型的には3又は4)であり、そしてR6は、炭素原子数1〜50の置換型又は非置換型アルキル基、炭素原子数2〜50の置換型又は非置換型アルケニル基、芳香環内炭素原子数6、10又は14の置換型又は非置換型アリール基、又はアルキル基、アルケニル基、及びアリール基のうちの2つ又は3つ以上を組み合わせることにより形成される基を表す。Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシミン基、アミノキシ基、アミド基、及びアルケニルオキシ基から選択された官能基を表す。
【0155】
シロキサン架橋剤[組成物IIの成分b)]としては、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルメチルビス(メチルエチルケトキシミン)シラン、メチルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ビニルトリ(メチルエチルケトキシミン)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシミン)シラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、トリイソプロペノキシジメチルシラン、及びトリアリルオキシシランが挙げられるが、これらには限定されない。アセトキシシラン及びケトキシミンシランが特に有用である。
【0156】
組成物II中に存在するシロキサン架橋剤の量は一般に、総組成物固形分を基準として、少なくとも1.5%〜最大20%であり、典型的には3%〜10%である。組成物II中のシロキサン架橋剤とポリジメチルシロキサンとの比は、架橋剤の官能基「X」とポリジメチルシロキサン中のヒドロキシ基に対するモル比が概ね1.5〜10となるように設定される。
【0157】
組成物IIの成分c)のための所望による触媒としては、酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、及びマレイン酸を含む有機カルボン酸、トルエンスルホン酸、ホウ酸、及び当業者には容易に明らかなその他のもの、アルカリ、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウム、アミン、金属アルコキシド、例えばチタニウムテトラプロポキシド及びチタニウムテトラブトキシド、金属ジケテネート、例えば鉄アセチルアセトネート及びチタニウムアセチルアセトネートジプロポキシド、及び金属の有機酸塩、例えば錫、鉛、鉄、コバルト、カルシウム、及びマンガンの酸塩が挙げられるが、これらには限定されない。具体的な有用な触媒は、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、亜鉛オクチレート、及び鉄オクチレートである。触媒は、総固形分を基準として、0.01〜20%、典型的には0.1〜10%の量で、組成物II中に存在していてよい。
【0158】
組成物II中に存在していてよい接着促進剤としては、同様の量の、組成物Iに関して上述した接着促進剤が挙げられるが、これらには限定されない。加えて、充填剤、例えばシリカが組成物II中に存在してよい。
【0159】
架橋型シリコーンゴム層は、所望のインク反発性、耐引掻き性、及び印刷耐久性を提供するように、0.5〜3.5g/m2、典型的には1〜3g/m2に相当する0.5〜3.5μmの乾燥厚さを有している。
【0160】
画像形成性要素の調製
多層画像形成性要素は順次、基板の表面(及びその上に設けられたいずれかのその他の接着層)上に第1層配合物を適用し、コンベンショナルな塗布法又はラミネーション法を用いて第1層上に第2層配合物を適用し、次いで第2層上にシリコーンゴム組成物を適用することによって調製することができる。
【0161】
例えば、第1層及び第2層は、好適な塗布用溶剤中に所望の成分を分散又は溶解させることにより適用することができ、そしてその結果生じた配合物は、好適な装置及び手順、例えばスピン塗布、ナイフ塗布、グラビア塗布、ダイ塗布、スロット塗布、バー塗布、ワイヤロッド塗布、ローラ塗布、又は押出しホッパー塗布を用いて、基板に順次又は同時に適用される。配合物は、好適な支持体(例えばオン・プレス印刷胴)上に噴霧することにより適用することもできる。
【0162】
第1層及び第2層の両方を塗布するために使用される溶剤は、第1及び第2のポリマーバインダー、他のポリマー材料、及び配合物中のその他の成分の性質に応じて選択される。第2層配合物を適用するときに、第1層配合物と第2層配合物とが混ざり合うこと、又は第1層が溶解することを防止するために、第2層配合物は、第1層のポリマーバインダーが不溶性である溶剤から塗布されるべきである。
【0163】
一般に、第1層配合物は、メチルエチルケトン(MEK)と1−メトキシ−2−プロピルアセテート(PMA)とγ−ブチロラクトン(BLO)と水との溶剤混合物、MEKとBLOと水と1−メトキシプロパン−2−オール(Dowanol(登録商標)PM又はPGMEとしても知られる)との混合物、ジエチルケトン(DEK)と水と乳酸メチルとBLOとの混合物、DEKと水と乳酸メチルとの混合物、又は乳酸メチルとメタノールとジオキソランとの混合物から塗布される。
【0164】
第2層配合物は、第1層を溶解させない溶剤又は溶剤混合物から塗布することができる。この目的に典型的な溶剤しては、ブチルアセテート、イソ−ブチルアセテート、メチルイソ−ブチルケトン、DEK、1−メトキシ−2−プロピルアセテート(PMA)、イソ−プロピルアルコール、PGME、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらには限定されない。特に有用なのは、DEKとポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(PGMEA)との混合物、又はDEKとPMAとイソプロピルアルコールとの混合物である。
【0165】
或いは、それぞれの層組成物の溶融混合物から押出し塗布法によって第1層及び第2層を適用することもできる。典型的には、このような溶融混合物は、揮発性有機溶剤を含有しない。
【0166】
他の配合物の塗布前に溶剤を除去するために、種々の層配合物の適用の間に、中間乾燥工程を用いることができる。乾燥工程は、種々の層の混和を防止するのを助けることもできる。
【0167】
次いで、シリコーンゴム層組成物I又はIIを、好適な様式(例えばラミネーション)で第2層上に適用し、そして最大4分間にわたって50〜200℃で熱処理することにより、硬化又は架橋を生じさせることができる。
【0168】
シリコーンゴム層上に保護層が配置されてよい。このような保護層は、ポリエスエル、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアセテートコポリマー鹸化化合物、又はポリ塩化ビニリデン膜であることが可能である。保護層又は保護膜は、既知の手順を用いてシリコーンゴム層に形成又はラミネートすることができる。層の乾燥厚は10〜100μmであることが可能である。保護層は一般に、画像形成後、現像及び印刷の前に、剥離されるか又は他の形で除去される。
【0169】
画像形成及び現像
画像形成性要素は、例えば平らなプレート、印刷胴、印刷スリーブ(中実又は中空コア)、及び印刷テープ(可撓性印刷ウェブを含む)を含むいかなる有用な形態をも有することができる。例えば、画像形成性部材は、平板印刷版を提供するのに有用な印刷版前駆体であり得る。
【0170】
印刷版前駆体は、好適な基板上に配置された所要の第1層及び第2層及び架橋型シリコーンゴム層を有する、いずれかの有用なサイズ及び形状(例えば正方形又は長方形)から成ることができる。印刷胴及びスリーブは、円筒形態の基板と所要の層とを有する回転印刷部材として知られる。印刷スリーブのための基板として、中空又は中実の金属コアを使用することができる。
【0171】
使用中、画像形成性要素は、波長700nm〜1500nm、典型的には波長700nm〜1200nmの好適な赤外線源に当てられる。画像形成性要素に露光を施すために使用されるレーザーは、ダイオード・レーザー・システムの信頼性及びメンテナンスの手間の少なさにより、通常、ダイオード・レーザーであるが、しかし他のレーザー、例えば気体又は固体レーザーを使用することもできる。レーザー画像形成のための出力、照度、及び露光時間の組み合わせは、当業者には容易に明らかである。目下、商業的に入手可能な画像セッターにおいて使用される高性能レーザー又はレーザー・ダイオードは、波長800〜850nm又は1040〜1120nmの赤外線を放射する。
【0172】
画像形成装置は、版セッターとしてだけ機能することができ、或いは、平板印刷プレス内にこれを直接的に内蔵することもできる。後者の場合、印刷は画像形成直後に開始することができ、これによりプレス準備時間をかなり軽減することができる。画像形成装置は、画像形成性部材をドラムの内側又は外側の円筒面に装着した状態で、平床型記録器として、又はドラム型記録器として構成することができる。有用な画像形成装置の例は、波長830nmの近赤外線を発光するレーザー・ダイオードを含有する、Eastman Kodak Company(カナダ国ブリティッシュコロンビア州Burnaby)から入手可能なKodak(登録商標)Creo Trendsetter画像セッターのモデルとして入手することができる。他の好適な輻射線源は、波長1064nmで作動するCrescent 42T Platesetter、及びScreen PlateRite 4300シリーズ又は8600シリーズの版セッター(イリノイ州Chicago在、Screenから入手可能)を含む。更なる有用な輻射線源は、前駆体が印刷版胴に取り付けられている間に前駆体に画像を形成するために使用することができるダイレクト画像形成プレスを含む。好適なダイレクト画像形成印刷プレスの例は、Heidelberg SM74-DI及びQMDIプレス(オハイオ州Dayton在、Heidelbergから入手可能)を含む。
【0173】
画像形成速度は、75〜300mJ/cm2、そして典型的には110〜170mJ/cm2であってよい。例えば、本発明の方法における画像形成は、アブレーションによって除去されるのが第1層及び第2層の30質量%以下であるように、実施されるべきである。
【0174】
本発明の実施においてはレーザー画像形成が有用であるが、熱エネルギーを像様に提供するいずれかの他の手段によって画像形成を行うこともできる。例えば、米国特許第5,488,025号明細書(Martin他)に記載されているように、また、感熱式ファクシミリ機及び昇華式プリンタにおいて使用されているように、「サーマル印刷」として知られるものにおいて、熱抵抗ヘッド(サーマル印刷ヘッド)を使用して画像形成を達成することができる。サーマル印刷ヘッドは商業的に利用可能である(例えばFujitsu Thermal Head FTP-040 MCS001、及びTDK Thermal Head F415 HH7-1089)。
【0175】
画像形成のためには一般に、ダイレクト・デジタル画像形成が用いられる。画像信号は、コンピュータ上のビットマップ・データ・ファイルとして記憶される。このようなファイルを生成するためには、ラスター画像プロセッサー(RIP)、又はその他の好適な手段が使用されてよい。ビットマップは、カラーの色相、並びにスクリーンの頻度及び角度を規定するために構成される。
【0176】
画像形成性要素に画像を形成することにより、画像形成された(露光された)領域と非画像形成(非露光)領域とから成る潜像を含む平板印刷版を生成する。
好適な水溶液(下記)で画像形成された要素を現像することにより、主として、架橋型シリコーンゴム層、及び第1層と第2層とのいずれか又は両方の露光された領域だけが除去される。架橋型シリコーンゴム層の露光された(又は画像形成された)領域がインク受容性であるのに対して、非露光(又は非画像形成)領域はインク反発性である。好適な水溶液による現像は、同じか又は異なる水溶液を使用して1つ又は2つの工程で実施することができ、そしていずれの工程も、下記の機械的除去手段を使用することによって達成することができる。
【0177】
本発明のいくつかの態様は、次のように説明することができる:
1態様の場合、赤外線によって画像形成を行い、続いて、水又は8質量%未満の有機溶剤(例えば事実上界面活性剤から成る)を有する水溶液、及び機械的除去手段、例えばブラッシングによって現像を行うことにより、シリコーンゴム層及び第2層の画像形成された領域を除去する。画像形成は第2層内の変形を促進し、そしてこの変形は、上側の架橋型シリコーンゴム層とともに除去することができる。画像形成された領域内の第1層は、印刷版上に残され、そして、印刷中インクを受容するのに対して、架橋型シリコーンゴム層の非画像形成領域はインクを弾く。基板はインクを受容又は反発するように処理される必要はないが、画像形成及び現像の後に残された第1層に対する接着を促進するように、好適な形式(上記)で処理することができる。
【0178】
別の態様の場合、画像形成が赤外線によって行われ、続いて、水及び機械的除去手段、例えばブラッシングを用いて第1現像工程を実施し、続いて、アルカリ現像剤を用いて第2現像工程を実施することにより、架橋型シリコーンゴム層、及び第1層及び第2層の双方の画像形成された領域を除去する。第1工程は、架橋型シリコーンゴム層を除去し、そしてアルカリ現像剤が第1層及び第2層に浸透してこれらを除去するのを可能にする。露出された基板(例えばアルミニウム)は、印刷中インクを受容するのに対して、架橋型シリコーンゴム層の非画像形成領域はインクを弾く。基板は意図的に、親水性となるように処理はされない。それというのも、基板は架橋型シリコーンゴム層よりも高親油性であることが必要であるからである。
【0179】
さらに別の態様の場合、画像形成が赤外線によって行われ、架橋型シリコーンゴム層及び第2層の画像形成された領域が、真空を伴って又は伴わずに機械的ブラッシングによって除去される。現像溶液は使用されず、そして上記第1態様におけるように、第1層は依然として、印刷中にインクを受容する。
【0180】
現像中に1つ又は2つ以上の層を除去するための機械的手段は、種々の払拭手段(例えば、布切れ、スポンジ、又は布地)又は柔らかいブラシを含む。
【0181】
アルカリ現像剤が使用される態様の場合、このような現像剤は、ポジ型平板印刷版前駆体を処理するために当業者に広く使用されるもののうちのいずれかであってよく、一般に8〜14、より典型的には少なくとも12、又は少なくとも13のpHを有する水性アルカリ現像剤が挙げられるが、これらには限定されない。有用なアルカリ性水性現像剤は、3000 Developer、9000 Developer、GoldStar(登録商標)Developer、GoldStar(登録商標)Plus Developer、GoldStar(登録商標)Premium、GREENSTAR Developer、ThermalPro Developer、PROTHERM Developer、MX1813 Developer、及びMX1710 Developer(全てEastman Kodak Companyから入手可能)、並びにFuji HDP7 Developer(Fuji Photo)及びEnergy CTP Developer(Agfa)を含む。これらの組成物はまた一般に、界面活性剤、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸の塩)、及びアルカリ成分(例えば無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物、及び重炭酸塩)を含む。このような現像剤は、有機溶剤を事実上含まない(8質量%未満)。
【0182】
有機溶剤を含有するものとして当業者に知られている他の現像剤を、本発明の実施において使用してもよいが、しかしこれらは好ましくなく、有機溶剤含有溶液を廃棄する必要がないという更なる利点を提供するために、所望の場合には回避することができる。このような現像剤は一般に、より低いpH(例えば12未満)を有し、そして一般に、水と混和可能な1種又は2種以上の有機溶剤の単一相溶液、例えば2−エチルエタノール及び2−ブトキシエタノールである。代表的な有機溶剤含有アルカリ現像剤は、ND-1 Developer、955 Developer、956 Developer、989 Developer、及び980 Developer(全てEastman Kodak Companyから入手可能)、HDN-1 Developer(Fujiから入手可能)、及びEN 232 Developer(Agfaから入手可能)を含む。
【0183】
1種又は2種以上の界面活性剤(及び8質量%未満の有機溶剤)を含有する水溶液を現像のために使用する場合、これらの溶液は一般に、6よりも大きく12までのpHを有する。界面活性剤はアニオン性であり、そしてカルボン酸、スルホン酸、又はホスホン酸基(又はこれらの塩)を有する界面活性剤を含む。スルホン酸基(又はこの塩)を有するアニオン界面活性剤が特に有用である。例えば、このようなアニオン性界面活性剤は、脂肪酸塩、アビエテート、ヒドロキシアルカンスルホネート、アルカンスルホネート、ジアルキルスルホスクシネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、分枝アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルフェノキシポリオキシ−エチレンプロピルスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテルの塩、ナトリウムN−メチル−N−オレイルタウレート、モノアミドジナトリウムN−アルキルスルホスクシネート、石油スルホネート、硫酸化ひまし油、硫酸化タロー油、脂肪族アルキルエステルの硫酸エステルの塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシ−エチレンアルキルエーテルの硫酸エステル、脂肪族モノグリセリドの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、アルキルリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステルの塩、無水スチレンマレイン酸コポリマーの部分鹸化化合物、オレフィン−無水マレイン酸コポリマーの部分鹸化化合物、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物を含むことができる。アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(例えば、ナトリウムドデシルフェノキシベンゼンジスルホネート)、アルキル化ナフタレンスルホン酸、硫酸化アルキルジフェニルオキシド、及びメチレンジナフタレンスルホン酸が、一次又は「第1」アニオン性界面活性剤として特に有用である。このような界面活性剤は、McCutcheon's Emulsifiers & Detergents、2007年版に記載されているように、種々の供給元から入手することができる。
【0184】
このような界面活性剤の具体例としては、ナトリウムドデシルフェノキシオキシベンゼンジスルホネート、アルキル化ナフタレンスルホネートのナトリウム塩、ジナトリウムメチレン−ジナフタレンジスルホネート、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、スルホン化スルホン化アルキル−ジフェニルオキシド、アンモニウム又はカリウムペルフルオロアルキルスルホネート及びナトリウムジオクチルスルホスクシネートが挙げられる。
【0185】
1種又は2種以上のアニオン性界面活性剤は一般に、(溶液の質量を基準として)少なくとも1質量%、そして典型的には1〜45質量%、又は1〜30質量%の量で存在する。
【0186】
水溶液は、欧州特許第1,751,625号明細書(上記)の[0029]に記載された非イオン性界面活性剤又は[0024]に記載された親水性ポリマーを含んでいてよい。特に有用な非イオン性界面活性剤は、Mazol(登録商標)PG031-K(トリグリセロールモノオレエート)、Tween(登録商標)80(ソルビタン誘導体)、Pluronic(登録商標)L62LF(プロピレンオキシドとエチレンオキシドとのブロック・コポリマー)、及びZonyl(登録商標)FSN(フルオロカーボン)を含む。これらの非イオン性界面活性剤は、最大10質量%、しかし通常は2質量%未満の量で存在することができる。
【0187】
現像のために使用される水溶液の他の所望による成分は、無機塩(例えば、上記米国特許出願公開第2005/0266349号明細書の[0032]に記載されたもの)、湿潤剤(例えばグリコール)、金属キレート剤、防腐剤、消泡剤、インク受容剤(例えば米国’349の[0038]に記載されたもの)、及び上記のような粘度増大剤を含む。このような成分の有用な量は当業者に知られている。金属イオンキレート材料が特に有用であり、ポリアミノポリカルボン酸、アミノポリカルボン酸、又はこれらの塩、[例えばエチレンジアミン四酢酸の塩(EDTA、ナトリウム塩)]、有機ホスホン酸及びこれらの塩、及びホスホノアルカン三酢酸及びこれらの塩が挙げられるが、これらには限定されない。有機アミンが有用な場合もある。
【0188】
一般に現像溶液(例えば水)は、擦り着け、噴霧、噴射、浸漬、塗布、又は払拭によって画像形成された要素に現像溶液を着けることにより、又は、水溶液を含有するローラー、含浸パッド、又はアプリケータにより、画像形成された要素に適用される。例えば、画像形成された要素には、水溶液をブラシ塗布することができ、或いは、例えば欧州特許第1,788,431号明細書(上記)の[0124]に記載されているようなスプレーノズルシステムを使用して、露光された領域を除去するのに十分な力で第2層に噴霧することにより、水溶液を第2層上に注ぐか、又は適用することもできる。ここでもやはり、画像形成された要素は、水溶液中に浸漬し、そして手によって又は機械的払拭手段を用いて擦り着けることができる。
【0189】
水溶液は、ユニット又はステーション内で適用することもできる。このユニット又はステーションは、水溶液が現像中に適用される間、画像形成された要素を擦るか又はブラッシングするための少なくとも1つのローラーを有している。水溶液をタンク内に集め、そして数回使用し、必要な場合には水溶液のリザーバから補充することができる。補充溶液は、処理中に用いられるのと同じ濃度を有することができ、或いは濃縮形態で提供して適当な時に水で希釈することができる。
【0190】
処理に続いて、画像形成された要素は、好適な様式で乾燥させることができる。画像形成・現像された要素は、この要素を機上で平板印刷インクだけ(ファウンテン溶液は存在しない)と接触させることにより、印刷のために使用することができる。平版印刷・インクだけ(ファウンテン溶液)を画像形成された要素の印刷面に、印刷のために適用することができる。架橋型シリコーンゴム層の非露光領域はインクを弾き、そして画像形成・現像過程によって露出された露光された領域(基板又は第1層)はインクを受容する。インクは次いで、その上に画像の1つ又は2つ以上の所望の刷り(インプレッション)を提供するために、好適な受容材料(例えば布地、紙、金属、ガラス、又はプラスチック)に転写される。所望の場合、画像形成された部材から受容材料へインクを転写するために、中間「ブランケット」ローラーを使用することができる。画像形成された部材は、所望の場合には、コンベンショナルなクリーニング手段及び化学薬品を使用して、刷りの間にクリーニングすることができる。
【実施例】
【0191】
下記例は、本発明の実施を例示するために提供されるものであって、本発明を限定しようと意図するものでは決してない。
【0192】
<材料及び方法>
Byk(登録商標)307は、25質量%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液中の、Byk Chemie(コネチカット州Wallingford)から入手可能なポリエトキシル化ジメチルポリシロキサンコポリマーである。
【0193】
BLOは、γ−ブチロラクトンを表す。
【0194】
コポリマーAは、コンベンショナルな条件及び手順を用いて、N−フェニルマレイミド、メタクリルアミド、及びメタクリル酸(45:35:20モル%)から誘導された繰り返し単位を有するコポリマーを表す。
【0195】
DEKはジエチルケトンを表す。
【0196】
Dow Syloff 297は、Dow Corning(米国ミシガン州)から入手可能なアセトキシ及びエポキシ官能シルセスキオキサンである。
【0197】
エチル・バイオレットは、C.I.42600(CAS2390−59−2、λmax=596nm)に割り当てられ、p−(CH3CH2)2NC64)3+Cl-の式を有する。
【0198】
加熱マントル、温度調節器、機械的攪拌器、凝縮器、均圧添加漏斗、及び窒素入口を備えた500mlの4首グランドグラス・フラスコ内に、ジメチルアセトアミド(246.6g)、HEMA、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(65g)、及びジブチル錫ジラウレート(0.42g)を入れることにより、中間体Aを調製した。反応混合物を窒素雰囲気下で60℃まで加熱した。次いで、p−トルエンスルホニルイソシアネート(98.6g)を加えて、1時間にわたって60℃で加熱した。2275cm-1のイソシアネート赤外線吸収帯の消失によって測定して、反応は6時間で完了した。反応終了時に、メタノール(5g)を添加した。結果として生じた中間体は酸価163.6であり、これをコポリマーCを調製するために使用した。
【0199】
IR色素Aは、Eastman Kodak(ニューヨーク州Rochester)によって供給される赤外線吸収色素であり、下記構造を有する。
【0200】
【化13】

【0201】
P3000は、1,2−ナフタキノン−5−スルホニルクロリドと、ピロガロールアセトン凝縮物(PCAS、フランス国Longjumeau)との反応生成物を表す。
【0202】
PGMEは、1−メトキシプロパン−2−オール(Dowanol(登録商標)PMとして入手可能)を表す。
【0203】
PGMEAは、Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州Milwaukee)から入手したポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート(50%の水)を表す。
【0204】
SD140Aはノボラック樹脂、75%m−クレゾール、25%p−クレゾール、MW7000である(ケンタッキー州Louisville、Borden Chemical)。
【0205】
基板Aは、電気的グレイニング、陽極酸化、そしてポリ(ビニルホスホン酸)による処理を施された0.3mmゲージのアルミニウム・シートである。
【0206】
【表1】

【0207】
【表2】

【0208】
【表3】

【0209】
発明例1:
0.012インチ(0.030cm)巻線バーを使用して第1層配合物を基板Aに適用し、そして90秒間にわたって100℃で乾燥させることにより、ほぼ2g/m2の乾燥塗膜質量を提供することによって、三層平板印刷版前駆体を調製した。次いで、0.006インチ(0.030cm)巻線バーを使用して乾燥された第1層上に第2層配合物1を適用し、そして90秒間にわたって100℃で乾燥させることにより、ほぼ0.7g/m2の乾燥塗膜質量を提供した。
これらの2つの層配合物を、商業的に入手可能なKodak SWORD平板印刷版前駆体において使用する。
【0210】
次いで、シリコーンゴム層配合物を乾燥された第2層に適用することにより、140℃で4分間にわたって硬化させた後、乾燥シリコーンゴム厚1.9μmを提供した。
【0211】
結果として生じた非アブレート性のネガ型画像形成性要素の例を、70mJ/cm2〜250mJ/cm2の種々の画像エネルギーで、20mJ/cm2ずつ増大させながらKodak CTP Thermal Headを使用して画像形成した。画像形成ファイルは、0〜100%のティントと1〜4画素とを含んでいた。次いで、画像形成された要素を水で払拭することによって、非露光領域内のシリコーンゴム層を除去することにより、画像形成された要素を現像し、そして結果として生じた印刷版をインク着けし、そして印刷のために使用した。印刷された刷りから、要素を画像形成するには、110mJ/cm2では十分でなく、130mJ/cm2で十分であることが明らかであった。全てのティントをそのエネルギー(2〜100%、200lpi)で印刷した。版を、70,000部の刷りを印刷するために使用した。
【0212】
発明例2及び3:
発明例1において記載された画像形成性要素を、そこに記載の通り画像形成したが、しかし例2の場合には、Tween(登録商標)80非イオン性界面活性剤(1質量%)の水溶液、又は例3の場合には、Zonyl(登録商標)FTS非イオン性界面活性剤(1質量%)の水溶液を使用して処理した。双方の事例において、好適な画像が得られ、次いでこの画像を、許容し得る水なし印刷のために使用した(1〜100%ティント、200lpi)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を含む非アブレート性の画像形成性要素であって、該基板上に順番に:
第1ポリマーバインダーと赤外線吸収化合物とを含む第1層、
第2ポリマーバインダーを含み、そして赤外線吸収材料を実質的に含まない第2層、および、
前記第2層上に配置された架橋型シリコーンゴム層、
を有する要素。
【請求項2】
前記第1ポリマーバインダーのTgは、前記第2ポリマーバインダーのTgよりも、少なくとも10℃だけ高い、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記第1層が、アルミニウム基板上に単独で存在する乾燥された前記第1層を、2−ブトキシエタノール:水の80:20質量溶液中に室温で5分間にわたって浸漬することにより実施して、乾燥塗膜質量の損失が35%未満であるような耐化学薬品性を有している、請求項1に記載の要素。
【請求項4】
前記第1ポリマーバインダーが、(メタ)アクリロニトリル及びN置換型環状イミドから少なくとも一部が誘導されており、また場合によってはこれに加えて(メタ)アクリルアミドからも誘導されている、請求項1に記載の要素。
【請求項5】
前記赤外線吸収化合物が、少なくとも5質量%の量で前記第1層内だけに存在するIR吸収色素である、請求項1に記載の要素。
【請求項6】
前記架橋型シリコーンゴム層が、下記に規定する組成物I又は組成物II、すなわち:
a)下記構造(PSR):
−[Si(R1)(R2)−O]−
(PSR)
(上記式中、R1及びR2は、独立してアルキル、アリール、及びアルケニル基であり、但し、少なくとも一方がアルケニル基である)
によって表される主としてジメチルシロキサン単位とシロキサン単位とを有するポリシロキサン材料、
b)SiH基を有するシラン架橋剤、
c)白金触媒、および
d)場合によっては安定剤、又は接着促進剤、又はその両方、
を含む組成物I、
a)SiOH、SiOR3、又はSiOCOR4末端基、又はこれらのいずれかの組み合わせを有するポリジメチルシロキサン(式中、R3及びR4は独立して、置換型又は無置換型アルキル、アリール、又はアルケニル基である)、
b)SiOH、SiOR3、又はSiOCOR4基のうちのいずれかのうちの少なくとも2つを有するシロキサン架橋剤(式中、R3及びR4は上で規定した通りである)、および、
c)場合によっては触媒、又は接着促進剤、又はその両方、
を含む組成物II、
のいずれかから誘導されている、請求項1に記載の要素。
【請求項7】
前記第2ポリマーバインダーが、下記ポリマー材料群:
クラスa):ノボラック樹脂、レゾール樹脂、分枝又は非分枝ポリヒドロキシスチレン、ペンダント・フェノール基を有するポリビニルアセタール、又はこれらのいずれかの組み合わせ、
クラスb):ノルボルネン、テトラシクロドデセン、及びこれらの混合物から成る群から選択された基(a)の1種又は2種以上のモノマーから誘導された繰り返し単位と、無水マレイン酸、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、及びこれらの混合物から成る群から選択された基(b)の1種又は2種以上のモノマーから誘導された繰り返し単位とを有するポリマー、
クラスc):無水マレイン酸と、式CH2=CH(C641)のモノマー及びこれらの混合物とから誘導されたコポリマー(式中R1は水素、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、スルホンアミド、炭素原子数1〜6のアルキル、炭素原子数1〜6のアルコキシル、炭素原子数1〜7のアシル、炭素原子数1〜7のアシルオキシ、炭素原子数1〜7のカルボアルコキシ、又はこれらの混合物である)、
クラスd):メチルメタクリレートと、カルボン酸含有モノマー又はカルボン酸含有モノマーの混合物とから誘導されたコポリマー、
クラスe):ポリマー主鎖に結合された−X−C(=T)−NR−S(=O)2−部分を有するポリマー(式中、−X−はオキシ又は−NR’−基であり、TはO又はSであり、R及びR’は独立して水素、ハロ、又は炭素原子数1〜6のアルキル基である)、及び、
クラスf):下記構造(I−F)又は(II−F):
【化1】

(式中、nは1〜3であり、Rs及びRtは独立して水素又はアルキル又はハロ基であり、Xは多価結合基であり、Yはオキシ又は−NR−であり、ここでRは水素又はアルキル又はアリール基であり、そしてZは一価有機基である)
によって表される繰り返し単位を有するポリマー、
のうちの1種又は2種以上から選択される、請求項1に記載の要素。
【請求項8】
アルミニウム含有基板を有する平板印刷版前駆体である、請求項1に記載の要素。
【請求項9】
前記第1ポリマーバインダーが、少なくとも60質量%の量で前記第1層内に存在しており、そして前記第1層の乾燥被覆率は0.7〜3g/m2であり、前記第2ポリマーバインダーが、少なくとも50質量%の量で前記第2層内に存在しており、そして前記第2層の乾燥被覆率は0.3〜2g/m2であり、また前記架橋型シリコーンゴム層の乾燥厚が0.5〜3.5μmである、請求項1に記載の要素。
【請求項10】
a)前記基板が、前記第1層及び第2層の組み合わされた色調とは異なる色調を有しているか、
b)前記第1層及び第2層が異なる色調を有しているか、又は、
c)前記基板が、前記第1層及び第2層の組み合わされた色調とは異なる色調を有しており、そして前記第1層及び第2層が異なる色調を有している、
請求項1に記載の要素。
【請求項11】
前記第2層が、前記第2層と前記架橋型シリコーンゴム層との接着を促進する接着促進化合物を含み、そして、前記接着促進化合物は、1つ又は2つ以上のビニル、SiH、SiOH、SiOR3、又はSiOCOR4、又はエポキシ基を含み、式中、R3及びR4は独立して、置換型又は無置換型アルキル又はアリール基である、請求項1に記載の要素。
【請求項12】
さらに、前記架橋型シリコーンゴム層上に配置された保護層を含む、請求項1に記載の要素。
【請求項13】
水なし印刷に適した画像形成された要素を形成する方法であって、前記方法が、アブレーションなしに、
A)請求項1に記載の画像形成性要素に、赤外線を使用して像様露光を施すことにより、前記画像形成性要素内に露光された領域及び非露光領域の両方を提供し、そして
B)主として前記露光された領域内でだけ、該架橋型シリコーンゴム層及び第2層を除去することにより、画像形成された要素を提供する、
ことを含む、水なし印刷に適した画像形成された要素を形成する方法。
【請求項14】
前記架橋型シリコーンゴム層および第2層が、前記露光された領域内で、
a)前記像様露光された画像形成性要素と、水又は8質量%未満の有機溶剤を含む水溶液とを接触させること;
b)機械的除去手段を適用すること、又は
c)前記要素と、水又は8質量%未満の有機溶剤を含む水溶液とを接触させること、及び、機械的除去手段を適用することの両方によって、
除去される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記像様露光された画像形成性要素の前記第1層が、工程B中に実質的に除去されない、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記像様露光は、前記第1層及び第2層の30質量%超をアブレートすることになるエネルギーを下回るエネルギーで実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記像様露光は、70〜300mJ/cm2で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記第1層内の前記第1ポリマーバインダーのTgは、前記第2層内の前記第2ポリマーバインダーのTgよりも、少なくとも10℃だけ高い、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第1ポリマーバインダーが、(メタ)アクリロニトリル及びN置換型環状イミドから少なくとも一部が誘導されており、また場合によってはこれに加えて(メタ)アクリルアミドからも誘導されている、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
工程B中、前記第1層も前記露光された領域内で除去される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
工程B中、前記第2層及びシリコーンゴム層が、水又は8質量%未満の有機溶剤を含む水溶液、及び、機械的除去手段を使用して除去され、そしてその後、前記第1層が、アルカリ現像剤を使用して前記露光された領域内で除去される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
水なし印刷によって印刷された画像を形成する方法であって、前記方法が、アブレーションなしに、
A)請求項1に記載の画像形成性要素に、赤外線を使用して像様露光を施すことにより、前記画像形成性要素内に露光された領域及び非露光領域の両方を提供し、
B)主として前記露光された領域内でだけ、該架橋型シリコーンゴム層及び第2層を除去することにより、画像形成された要素を提供し、そして
C)前記画像形成された要素を機上で平板印刷インクだけと接触させる
ことを含む、水なし印刷によって印刷された画像を形成する方法。

【公表番号】特表2011−516919(P2011−516919A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502979(P2011−502979)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/002037
【国際公開番号】WO2009/151499
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】