説明

水上乗り物のロータリシステムにおける振動を軽減する方法、装置、およびシステム

貨物船(100)といった水上乗り物のロータリシステム(120、130、140)における振動を軽減する方法であって、ロータリシステム(120、30、140)を平衡化することを含む方法において、回転部材(300、302〜306)の回転軸(340)上に支点を有し、周方向平衡化領域(320)を有し、ある量のチキソトロピック平衡化物質(330)が部分的に充填されたチャンバ(310〜312)を有する回転部材(300、302〜306)を設けることを特徴とする方法。これに対応する装置およびシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明する本発明の各実施形態は概して、振動を軽減することに関し、特に、たとえばボートもしくは船舶などの船艇といった水上乗り物の、たとえばエンジンシステムもしくはモータシステムなどの機械的推進システム、動力伝達システム、またはプロペラといった、水上乗り物のロータリシステム、における振動を軽減する方法、装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動は、水上乗り物の主要な環境因子である。振動は安全および快適さに悪影響を及ぼす。安全に関しては、振動は安定性に直接影響し、材料の疲労および損傷を生じさせる可能性がある。主な振動源は、水上乗り物の、たとえばエンジンシステムもしくはモータシステムなどの機械的推進システム、または動力伝達システムといった、水上乗り物のロータリシステムである。振動には、一般にエンジンシステムもしくはモータシステムから発生する回転速度に依存する振動と、一般に動力伝達システムから発生する速度に依存する振動が含まれる。振動は、たとえばエンジン軸受あるいはシールとして使用される、たとえば玉軸受もしくはころ軸受といった回転要素軸受に損傷を与える可能性がある。
【0003】
エンジンシステムもしくはモータシステムおよび動力伝達システムが磨損および破断するため、水上乗り物における振動は一般に時間の経過とともに激しくなる。詳しく言えば、回転要素が磨損および破断するため、時間の経過とともに回転要素の重心(CofG)が移動して平衡が失われ振動が生じる。
【0004】
これらの理由およびその他の理由で、以下の各実施形態に記載される発明が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願第0281252号
【特許文献2】米国特許第4867792号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、たとえばボートもしくは船舶などの船艇といった水上乗り物の、たとえばエンジンシステムもしくはモータシステムなどの機械的推進システム、動力伝達システム、またはプロペラといった、水上乗り物のロータリシステム、における振動を軽減する方法、装置、およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、貨物船100といった水上乗り物のロータリシステム120、130、140における振動を軽減する方法であって、ロータリシステム120、130、140を平衡化することを含む方法において、回転部材300、302〜306の回転軸340上に支点を有し、周方向平衡化領域320を有し、ある量のチキソトロピック平衡化物質330が部分的に充填されたチャンバ310〜312を有する回転部材300、302〜306を設けることを特徴とする方法である。
【0008】
ロータリシステム120、130、140は、水上乗り物のエンジン、動力伝達系もしくは動力装置、またはプロペラであってよい。チキソトロピック平衡化物質330は、ロータリシステム120、130、140によって誘発される振動の作用の下で流動することができる。したがって、振動によって、チキソトロピック平衡化物質330はチャンバ310内で分散して振動を軽減するかあるいは最低限に抑える。その結果、ロータリシステム120、130、140の重心(CofG)350または回転中心(CofR)は理想的なCofR350の方へ移動し、この方法は、CofGの移動を補償する。さらなる結果として、振動が軽減され、結果として、安全性が増し、安定性が向上し、材料疲労が軽減される。さらなる結果として、快適さが向上し、騒音が低減し、したがって、水上乗り物の内部と外部の音響特性が改善される。また、水上乗り物、特にロータリシステム120、130、140の摩損および破断が軽減される。
【0009】
本発明の他の態様は、回転部材300、302〜306を回転軸340周りに回転させ、それによって、チキソトロピック平衡化物質330を液化させ周方向平衡化領域320に沿って分散させ、回転部材300、302〜306の不平衡を軽減することをさらに含む。
【0010】
本発明の他の態様は、回転軸340が水平方向に向けられるかあるいは垂直方向に向けられる方法である。
【0011】
本発明の他の態様は、回転部材300、302〜306がロータリシステム120、130、140のもともとの部材である方法である。その結果、チャンバ310自体の空間を不要にすることができ、結果として、チャンバ310を水上乗り物構成に容易に導入することができる。
【0012】
本発明の他の態様は、回転部材300、302〜306がロータリシステム120、130、140の交換部材である方法である。その結果、チャンバ310自体の空間を不要にすることができ、結果として、チャンバ310を水上乗り物構成に容易に導入することができる。さらなる結果として、回転部材300、302〜306をもともとの回転部材に適合させることができ、結果として、回転部材300、302〜306を使用して水上乗り物の性能を向上させることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、回転部材300、302〜306がロータリシステム120、130、140の補助部材である方法である。その結果、回転部材300、302〜306をもともとの回転部材に適合させることができ、結果として、回転部材300、302〜306を使用して水上乗り物の性能を向上させることができる。
【0014】
本発明の他の態様は、回転部材300、302〜306が中空の軸または管状の軸であり、回転部材300、302〜306が関節軸、たとえば、カルダン軸である方法である。
【0015】
本発明の他の態様は、ロータリシステム120、130、140が水上乗り物のエンジンシステム120であるか、回転部材300、302〜306がクランクシャフトであるか、あるいはその両方である方法である。
【0016】
本発明の他の態様は、ロータリシステム120、130、140が水上乗り物のたとえば動力伝達系または動力装置といった動力伝達システム130であるか、回転部材300、302〜306がたとえばプロペラ駆動シャフト、はずみ車もしくはコンテナ、あるいはそれらの組み合わせといった駆動軸としての軸302である方法である。
【0017】
本発明の他の態様は、チャンバ310が環状またはリング状である方法である。その結果、チャンバ310は、直径が大きいため、チキソトロピック平衡化物質330を効率的に使用するのを可能にし、結果として、チキソトロピック平衡化物質330の量を減らすことができる。さらなる結果として、チキソトロピック平衡化物質330は、断面が矩形、半円形、またはベル形であるため、最も効果的に動作することができ、さらなる結果として、チキソトロピック平衡化物質330の量をさらに減らすことができる。さらなる結果として、断面が円形であるため、空気抵抗を弱くすることができ、さらなる結果として、安定性を向上させることができる。
【0018】
本発明の他の態様は、チャンバ310が円筒形である方法である。その結果、チャンバ310は小形であってよく、結果として、チャンバ310は空間をほとんど必要としない。
【0019】
本発明の他の態様は、チャンバ310が矩形、方形、半円形、ベル形、または円形の断面を有する方法である。
【0020】
本発明の他の態様は、チャンバ310の直径が約0.01mから約1mの間であるか、または約0.02mから約0.5mの間であるか、または約0.05mから約0.2mの間であるか、または約0.1mであるか、チャンバ310の長さが約0.01mから約2mの間であるか、または約0.02mから約10mの間であるか、または約0.05mから約5mの間であるか、または約0.1mから約2mの間であるか、または約0.5mであるか、あるいはそれらのことが組み合わされる方法である。しかし、直径、長さ、またはその両方を利用可能な空間によって決定してもよい。
【0021】
本発明の他の態様は、チキソトロピック平衡化物質330の量が約0.01kgから約1000kgの間であるか、または約0.1kgから約200kgの間であるか、または約0.2kgから約100kgの間であるか、または約0.5kgから約50kgの間であるか、または約1kgから約20kgの間であるか、または約5kgであるか、チャンバ310に充填するチキソトロピック平衡化物質330の量が約1%から約90%の間であるか、または約10%から約80%の間であるか、または約25%から約75%の間であるか、または約50%であるか、あるいはそれらのことが組み合わされる方法である。
【0022】
本発明の態様は、チャンバ310が、たとえば、ナノ粒子を含むワニスのような材料によって形成されるか、あるいは平衡化領域320上にインプリントされた、ナノ構造を有する周方向平衡化領域320を有する方法である。ナノ構造は、材料を平衡化領域上に分散させ、たとえば、噴霧して乾燥または硬化させることによって設けられてよい。乾燥または硬化させることは、たとえば、紫外線(UV)放射、すなわちUV光を使用して、ナノ材料、すなわちナノワニスを硬化させることを含む。この材料、すなわちナノ材料はナノ構造をナノ基板として形成することができる。ナノ材料は2つ以上の成分、たとえば、第1の成分A(たとえば樹脂)と第2の成分B(たとえば硬化剤)とを含んでもよい。ナノ材料は2成分材料であってもよい。ナノ材料、すなわち第1の成分Aと第2の成分Bは、化学的架橋または重合化によって反応してもよい。化学的架橋反応は、第1の成分Aと第2の成分Bを混合した直後または混合後まもなくして開始することができる。その結果、平衡化領域320上のチキソトロピック平衡化物質330の可動性を向上させることができ、結果として、平衡化作用を向上させることができる。
【0023】
本発明の他の態様は、回転部材300、302〜306が、たとえば鋼またはアルミニウムといった金属、あるいは、たとえばガラス繊維補強材料または炭素繊維補強材料といった複合材料、あるいは、たとえばプラスチックまたはプレキシグラスといった合成材料を含む方法である。この材料は、水上乗り物内の他の場所、特にロータリシステム120、130、140で使用される材料であることが好ましい。その結果、非適合性による問題を解消することができ、したがって、水上乗り物、ロータリシステム120、130、140、またはその両方の寿命を延ばすことができ、メンテナンスを簡略化することができる。
【0024】
本発明の他の態様は、チキソトロピック平衡化物質330の降伏応力値が約1Paから約400Paの間であり、たとえば、約2Paから約260Paの間であり、たとえば約30Paである方法である。その結果、チキソトロピック平衡化物質330の分散を向上させることができ、結果として、平衡化作用を改善することができる。
【0025】
本発明の他の態様は、チキソトロピック平衡化物質330が、
1)以下の一般式(I)または一般式(II)による1つまたは2つ以上のエチレン/プロピレングリコール共重合体エーテルあるいはその混合物を含み、
R−O{[CH(CH3)CH2−O−]m[CH2−CH2−O−]n}H (I)
R1−(O−{[CH(CH3)CH2−O−]m[CH2−CH2−O−]n}H)2 (II)
上式で、
Rが、水素または2個〜8個の炭素原子のアルキル基であり、
R1が、同じ炭素原子上に2つの置換基が担持されることのない2個〜8個の炭素原子のアルキレン部分であり、
mが、1つまたは2つ以上のエチレン/プロピレングリコール共重合体部分におけるプロピレングリコールのモル百分率であり、
nが、1つまたは2つ以上のエチレン/プロピレングリコール共重合体部分中のエチレングリコールのモル百分率であり、比n:mが35:65から80:20の範囲であり、
各グリコール共重合体化合物の数平均分子量が2000〜10000の範囲である、85〜97重量%のグリコールエーテル成分と、
2)3〜15重量%のヒュームドシリカゲル形成剤と、を含み、
粘弾性であり、貯蔵弾性率(G’)が22℃で1500Paから5000Paの間であり、クロスオーバ周波数が10〜40Hzまでのときに損失弾性率(G”)が貯蔵弾性率よりも低く、臨界降伏応力が2Paよりも高い平衡化ゲル組成である方法である。
【0026】
本発明の他の態様は、1つまたは2つ以上のグリコールエーテル成分の数平均分子量が3000〜10000の範囲である方法である。
【0027】
本発明の他の態様は、比n:mが35:65から80:20の範囲であるか、あるいは40:60から75:22の範囲であるか、あるいは40:60から60:40の範囲であるか、あるいは50:50である方法である。
【0028】
本発明の他の態様は、ヒュームドシリカゲル形成剤が、BET表面積が90〜400m/gであり、好ましくは200〜300m/gである親水性ヒュームドシリカであるか、あるいはヒュームドシリカゲル形成剤が、BET表面積が50〜300m/gであり、好ましくは250〜350m/gである疎水化ヒュームドシリカであるか、あるいはそのような親水性ヒュームドシリカゲル形成剤と疎水化ヒュームドシリカゲル形成剤の混合物である方法である。
【0029】
本発明の他の態様は、1つまたは2つ以上のグリコールエーテル成分の、ISO3448に従って判定される粘度等級が500よりも高く、好ましくは800〜1200の範囲である方法である。
【0030】
本発明の他の態様は、重り体が、チキソトロピック平衡化物質330に接触する方法である。その結果、重り体は、ロータリシステム120、130、140を平衡化することができ、結果として、平衡化作用を向上させることができ、チキソトロピック平衡化物質330の量を減らすことができる。
【0031】
本発明の他の態様は、重り体が、チキソトロピック平衡化物質330が上記の振動および撹拌状態の変化を受けたときに重り体表面とチキソトロピック平衡化物質330との付着を妨げるような、重り体の重り体サイズによって定められる重り体表面積および重り体重量を有する方法である。その結果、この重り体サイズでは、重り体が、チキソトロピック平衡化物質330を含むチャンバ310内で移動することができ、結果として、平衡化作用を向上させることができる。
【0032】
本発明の他の態様は、重り体が好ましくはボールである方法である。重り体サイズはボールの直径に相当する。この直径は、表面構造、すなわち粗度および付着に関与する、A=4πrによる重り体表面積と、重り体密度および重り体重量に関与する、V=4/3・πrによる重り体体積との比によって決定されてよい。半径rを大きくする場合、重り体体積、したがって、重り体重量は重り体表面積よりも速く増大する。その結果、チャンバ310内の重り体の可動性を高めることができ、結果として、平衡化作用を向上させることができる。
【0033】
本発明の他の態様は、重り体、たとえばステンレススチールのような鋼といった金属を含む方法である。その結果、チャンバ310内の重り体の耐久性を向上させることができ、結果として、メンテナンス作業を簡略化し軽減することができる。
【0034】
本発明の他の態様は、たとえば貨物船100といった水上乗り物のロータリシステム120、130、140における振動を軽減する装置であって、回転部材300、302〜306の回転軸340上に支点を有し、周方向平衡化領域320を有し、ある量のチキソトロピック平衡化物質330が部分的に充填されたチャンバ310〜312を有する回転部材300、302〜306を特徴とする装置である。
【0035】
本発明の他の態様は、ロータリシステム120、130、140自体の振動を軽減する、たとえば貨物船100といった水上乗り物のロータリシステム120、130、140であって、回転部材300、302〜306の回転軸340上に支点を有し、周方向平衡化領域320を有し、ある量のチキソトロピック平衡化物質330が部分的に充填されたチャンバ310〜312を有する回転部材300、302〜306を特徴とするロータリシステムである。
【0036】
本明細書の巻末に、本発明とみなされるものを特定的に指摘し明確に請求する特許請求の範囲が記載されているが、添付の各図面に示されている本発明の特定の各実施形態を参照することによって本発明について詳しく説明し、本発明の各実施形態を得る方法を例示する。これらの図面が本発明の代表的な実施形態のみを示しており、縮尺通りに描かれているわけではなく、したがって、本発明の範囲を制限するものとみなすべきではないとの理解を得たうえで、添付の各図面を使用することによって各実施形態についてさらに具体的にかつ詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用することのできる、水上乗り物、たとえば貨物船のような商業船などの船舶の概略図である。
【図2】本発明の実施形態による、軸、たとえばプロペラシャフトなどの駆動軸内のチャンバの断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態による、軸、たとえばプロペラシャフトなどの軸内のチャンバの断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態による、軸、たとえばプロペラシャフトなどの軸内のチャンバの断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態による、軸、たとえばプロペラシャフトなどの駆動軸内の複数のチャンバの断面図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態に関する、初期時点での円筒形チャンバの断面図である。
【図7】チキソトロピック平衡化物質をチャンバの周方向平衡化領域に沿って分散させる時点での円筒形チャンバの断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態による回転部材内のチャンバの断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態による回転部材内のチャンバの断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態による他の回転部材内のチャンバの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
各実施形態についての以下の詳細な説明では、各実施形態の一部を形成し、一例として本発明を実施できる特定の各実施形態を示す添付の図面を参照する。図面において、いくつかの図にわたって、同じ符号は実質的に同様の構成部材を表している。各実施形態は、当業者が本発明を実施できるように本発明の各態様について十分詳しく説明するものである。他の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲から逸脱せずにそれらの実施形態に構造上の変更または論理的もしくは電気的な変更を施すかあるいはそれらの実施形態を組み合わせてもよい。さらに、本発明の様々な実施形態は、互いに異なるものであるが、必ずしも互いに排他的なものではないことを理解されたい。たとえば、ある実施形態に記載された特定の特徴、構造、または特性を他の実施形態に含めてもよい。また、本発明の各実施形態を様々な技術を使用して実施してよいことを理解されたい。また、「例示的な」という語句は、一例を意味するに過ぎず、最良または最適なものを意味するわけではない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈すべきではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と、このような特許請求の範囲の対象となる均等物の全範囲によってのみ定義される。
【0039】
各図面を参照する。各実施形態の構造を示すために、本明細書に含まれる各図面は、本発明の品目を概略的に表している。したがって、実際に製造された構造は異なるもののように見えるが、それにもかかわらず各実施形態の必須の構造を組み込んでいる。さらに、各図面は、各実施形態を理解するのに必要な構造のみを示している。各図面の明確さを維持するために当技術分野で公知の追加的な構造は含まれていない。図を簡略化し理解を容易にするために、図示されている各特徴および/または各部材が互いに対して特定の寸法を有するように示されており、かつ実際の寸法が図示の寸法とは実質的に異なってもよいことも理解されたい。
【0040】
以下の説明および特許請求の範囲では、「含む」、「有する」、「備える」といった語句、またはそれらの他の態様が使用されることがある。このような語句が、「有する」という語句と同様に包括的なものであることを理解されたい。
【0041】
以下の説明および特許請求の範囲では、「結合される」および「連結される」という語句と「伝達可能に結合される」のような派生表現が使用されることがある。これらの語句が互いに同義語として使用されているわけではないことを理解されたい。正確に言えば、特定の実施形態では、「連結される」は、2つまたは3つ以上の部材が互いに直接物理的または電気的に接触することを示すのに使用することができる。しかし、「結合される」は、2つまたは3つ以上の部材が、互いに直接接触するわけではないが、それにもかかわらず互いに協働または相互作用することを意味することもできる。
【0042】
以下の説明および特許請求の範囲では、「上部」、「下部」、「第1」、「第2」などの語句は、説明のためにのみ使用されることがあり、限定的なものとみなすべきではない。本明細書で説明する装置または物品の各実施形態は、いくつかの位置および向きで製造するか、使用するか、あるいは出荷することができる。
【0043】
水上乗り物には、船艇、たとえばボートおよび船舶が含まれる。一般に、ボートは、最大総登録トン数(GRT)または帆を含む最大3本のマストを有する船艇であり、船舶は、500GRTを超えるか、あるいは帆を含む4本以上のマストを有する船艇である。船艇には、艦艇、たとえば戦艦および潜水艦、ならびに民生船、たとえばコンテナ船およびタンカーのような貨物船ならびにクルーズ船のような客船などの商船、漁船、ならびに砕氷船と、私有船が含まれる。客船は、乗客を輸送する大形の商船である。貨物船は、商品または資材を輸送する大形の商船である。水上乗り物は、エンジンシステムもしくはモータシステムなどの機械的推進システムまたは動力伝達システムを有してよい。
【0044】
図1は、本発明を適用することのできる、水上乗り物、たとえば貨物船100のような商船などの船舶の概略図である。貨物船100は、船体110と、エンジンまたはモータ120と、動力伝達系または動力装置130と、プロペラ140と、操舵装置160と、船橋170とを有している。貨物船100は、船首部と、船体中央部と、船尾部とを有している。貨物船100は、シール150、たとえばスタッフィングボックスをさらに有してよい。
【0045】
エンジンまたはモータ120は、船体110内に位置している。詳しく言えば、エンジン120は、図1に示されているように、貨物船100の船尾部に配置されてよい。エンジン120は、貨物船100を推進する回転力などの動力または回転エネルギーなどのエネルギーを発生させ、燃焼機関、たとえば、(低速)2行程クロスヘッドディーゼル機関のような、クロスヘッド構成、トランク構成、もしくは対向ピストン構成の2行程ディーゼル機関もしくは4行程ディーゼル機関などのディーゼル機関、またはガソリン機関、またはタービン、たとえばガスタービンもしくは蒸気タービン、またはステムエンジン、または電気推進エンジン、あるいはそれらの組み合わせ、たとえばディーゼル電気機関などのハイブリッドエンジンであってよい。したがって、エンジン120は、木材、化石燃料、たとえば石炭、石油、重質燃料油などの燃料油、または液化天然ガス(LNG)などのガス、核燃料、太陽エネルギーまたは貯蔵電気エネルギーなどの電気エネルギーを消費してよい。したがって、図1に示されている貨物船100は単一のエンジン120を有している。あるいは、水上乗り物は、複数のエンジン、たとえば2つ、3つ、4つ、または5つ以上のエンジンを有してもよい。また、各エンジンはそれぞれの異なる種類であってよい。たとえば、水上乗り物は、高速化または排出ガスの影響を受けやすい環境または港湾での排出ガスの低減のためにガスタービンを有し、巡航速度化および費用有効化のためにディーゼルエンジンを有してよい。
【0046】
動力伝達系130は、エンジン120およびプロペラ140に結合され、エンジン120からの動力またはエネルギーをプロペラ140に伝達する。動力伝達系130は、駆動軸、たとえばプロペラシャフトを有している。プロペラシャフトは、シール150、たとえばスタッフィングボックス内で船体110を通過する。プロペラシャフトは、エンジン120をプロペラ140に結合し、動力をエンジン120からプロペラ140に伝達する。駆動軸、たとえばプロペラシャフトは、中空の軸または管状の軸であってよい。駆動軸、たとえばプロペラシャフトは、関節付軸、たとえばカルダンジョイントを有するカルダン軸であってよい。プロペラ140は、水(不図示)に力をかける。プロペラ140は、ツインプロペラであっても、2重回転プロペラであっても、可変ピッチプロペラであっても、ノズル式プロペラであってもよい。したがって図1に示されている貨物船100は単一のプロペラ140を有している。あるいは、水上乗り物は、複数のプロペラ、たとえば2つ、3つ、4つ、または5つ以上のプロペラを有してもよい。複数のプロペラは、任意に組み合わされた複数のエンジンによって駆動されてよい。
【0047】
エンジン120は、クランク軸などの回転部材、または追加的な部材、たとえば、中空のコンテナであるコンテナもしくは容器を有してよい。
【0048】
動力伝達系130は、回転力を蓄積する、デュアルマスフライホイールなどのはずみ車(不図示)を有してよい。動力伝達系130は、速度および動力のトルクを変換する歯車箱(不図示)をさらに有してよい。低速エンジン、たとえば、最高速度が約毎分80回転(rpm)の2行程クロスヘッドディーゼルエンジンのような、最高速度が約120rpmよりも遅い低速2行程ディーゼルエンジンなどの、最高速度が約300rpmであるエンジンの場合、クランク軸は、プロペラを直接駆動する。中速エンジン、たとえば、最高速度が約毎分500rpmの中速4行程ディーゼルエンジンのような、最高速度が約300rpmから約900rpmの範囲のエンジン、または高速エンジン、たとえば最高速度が約900rpmのエンジンの場合、クランク軸は、歯車箱を介してプロペラを駆動する。
【0049】
動力伝達系130は、複数のエンジンのうちのエンジンを連結したり切り離したりするクラッチをさらに有してもよい。
【0050】
動力伝達系130は、駆動軸、たとえばプロペラシャフト、はずみ車、もしくは歯車などの回転部材、または、追加的な部材、たとえば中空の容器であるコンテナもしくは容器を有してよい。
【0051】
動力伝達系130は、z駆動装置として配置されてよい。あるいは、エンジン120と動力伝達系130が船外機関またはモータを形成してもよい。
【0052】
プロペラ140は、ハブ、ボス、もしくはボスキャップなどの回転部材、または、追加的な部材、たとえば中空のコンテナであるコンテナもしくは容器を有してよい。
【0053】
本発明の各実施形態によれば、エンジン120、動力伝達系130、またはその両方の1つ、2つ、3つ、または4つ以上の回転部材300は、回転軸(340)上に支点を有し、周方向平衡化領域320を有し、ある量のチキソトロピック平衡化物質330が充填された1つ、2つ、3つ、または4つ以上のチャンバ310〜312を有している。1つ、2つ、3つ、または4つ以上のチャンバ310〜312を有する1つ、2つ、3つ、または4つ以上の回転部材300は、金属、たとえば鋼またはアルミニウム、あるいは、複合材料、たとえばガラス繊維補強材料または炭素繊維補強材料、あるいは、合成材料、たとえばプラスチックまたはプレキシグラスを含んでいる。1つ、2つ、3つ、または4つ以上のチャンバ310〜312を有する1つ、2つ、3つ、または4つ以上の回転部材300は、回転システム120、130の複数の本来の回転部材に代わることができる。1つ、2つ、3つ、または4つ以上のチャンバ310〜312を有する1つ、2つ、3つ、または4つ以上の回転部材300は、回転システム120、130を補うことができる。
【0054】
チャンバ310〜312は、回転部材300の中にくり抜かれていてもよい。あるいは、チャンバ310〜312は、中空の軸または管状の軸内に配置され、中空の軸または管状の軸の一部または全体、たとえば実質的に全体にわたって延びてもよい。
【0055】
周方向平衡化領域320は、たとえば、ナノ粒子を含むワニスのような材料によって形成されるか、あるいは、周方向平衡化領域320上にインプリントされた、チキソトロピック平衡化物質330の可動性および流動性を向上させるナノ構造を有してもよい。
【0056】
さらに、本発明は、実生活の貨物船のような実際の水上乗り物と、模型貨物船のような縮小の水上乗り物に適用することができる。
【0057】
図2は、本発明の実施形態による、軸302、たとえばプロペラシャフトなどの駆動軸内のチャンバ310の断面図を示している。チャンバ310は、中空の軸または管状の軸内に位置しており、中空の軸または管状の軸の実質的に全体に沿って延びている。中空の軸または管状の軸の各端部は、ふたによって密封または密閉されてもよい。軸302は回転軸340の周りを回転可能である。チャンバ310は周方向平衡化領域320を有している。軸302は、関節軸、たとえばカルダン軸であってよい。
【0058】
図3は、本発明の他の実施形態による、軸302、たとえばプロペラシャフトなどの駆動軸内のチャンバ310の断面図を示している。チャンバ310は、軸302にくり抜かれ、軸302の一部に沿って軸302の端部内を延びている。チャンバ310は、ふたによって密封または密閉されてもよい。軸302は回転軸340の周りを回転可能である。チャンバ310は、周方向平衡化領域320を有している。
【0059】
チャンバ310の直径は、約0.01mから約1mの間であるか、または約0.02mから約0.5mの間であるか、または約0.05mから約0.2mの間であるか、または約0.1mであってよい。
【0060】
チャンバ310の長さは、約0.01mから約20mの間であるか、または約0.02mから約10mの間であるか、または約0.05mから約5mの間であるか、または約0.1mから約2mの間であるか、または約0.5mであってよい。
【0061】
図4は、本発明の他の実施形態による、軸302、たとえばプロペラシャフトなどの駆動軸内のチャンバの断面図を示している。チャンバ310は、軸302にくり抜かれており、軸302の一部に沿って軸302の中央部内を延びている。チャンバ310は、ふたによって密封または密閉されてもよい。軸302は回転軸340の周りを回転可能である。チャンバ310は周方向平衡化領域320を有している。
【0062】
図5は、本発明の他の実施形態による、軸302、たとえばプロペラシャフトなどの駆動軸内の複数のチャンバ310〜312の断面図を示している。チャンバ310〜312は、軸302にくり抜かれており、軸302の一部に沿って軸302に沿った複数の位置を延びている。
【0063】
チキソトロピック平衡化物質330はチャンバ310〜312内で動作する。振動によって、チキソトロピック平衡化物質330は周方向平衡化領域320に沿って分散し、したがって、重心350が、軸302のような回転部材300の回転軸340の方へ移動し、振動が軽減されるか、あるいは最低限に抑えられるか、あるいはなくなる。
【0064】
図6は、本発明の好ましい実施形態に関して、チキソトロピック平衡化物質330がチャンバ310の一部を占めている初期時点での円筒形チャンバ310の断面図を示している。図6に示されているように、チキソトロピック平衡化物質330は、周方向平衡化領域320に沿って均等に分散されている。垂直方向の回転軸340の場合、チキソトロピック平衡化物質330は回転軸340に垂直な一様なレベルまでチャンバ310を部分的に占めることができる。水平方向の回転軸340の場合、チキソトロピック平衡化物質330は回転軸340に沿った一様なレベルまでチャンバ310を部分的に占めることができる。回転部材300が平衡していないため、CofG350は回転軸340からずれている。
【0065】
図7は、本発明の好ましい実施形態に関して、チキソトロピック平衡化物質330がチャンバ310の周方向平衡化領域320に沿って分散しており、したがって、振動が軽減されている時点での円筒形チャンバ310の断面図を示している。回転部材300が回転軸340周りに回転するにつれて、チキソトロピック平衡化物質330は、回転システム120、130の振動によって液化し、チャンバ310の周方向平衡化領域320に沿って分散し、したがって、回転部材300の不平衡が軽減され、したがって、振動が低減する。CofG350は回転軸340の方へ移動する。振動が低減すると、チキソトロピック平衡化物質330は凝固して周方向平衡化領域320上のその位置および分散を維持することができる。
【0066】
チキソトロピック平衡化物質330の量は、約0.01kgから約1000kgの間であるか、または約0.1kgから約200kgの間であるか、または約0.2kgから約100kgの間であるか、または約0.5kgから約50kgの間であるか、または約1kgから約20kgの間であるか、または約5kgである。チャンバ310に充填できるチキソトロピック平衡化物質330の量は、約1%から約90%の間であるか、または約10%から約80%の間であるか、または約25%から約75%の間であるか、または約50%である。
【0067】
図8は、本発明の他の実施形態による回転部材300、304内のチャンバ310の断面図を示している。チャンバ310は、はずみ車、歯車などの回転部材300、304、または、追加的な部材、たとえばコンテナもしくは容器にくり抜かれている。チャンバ310は環状またはリング状である。チャンバ310は、矩形、方形(不図示)、半円形(不図示)、ベル形(不図示)、円形(不図示)などの断面を有してよい。
【0068】
図9は、本発明の他の実施形態による回転部材300、304内のチャンバの断面図を示している。図8を参照すると分かるように、回転部材300、304は中央穴360を有している。中央穴360は円形、方形(不図示)、六角形(不図示)などであってよい。回転部材300、304の中央穴360は、軸、たとえば駆動軸132、136〜139を受け入れて回転部材300、304を回転システム120、130に結合する。
【0069】
図10は、本発明の他の実施形態による回転部材300、306内のチャンバ310の断面図を示している。チャンバ310は、はずみ車、歯車などの回転部材300、306、または追加的な部材、たとえばコンテナもしくは容器にくり抜かれている。チャンバ310は円筒形である。チャンバ310は、矩形、方形(不図示)、半円形(不図示)、ベル形(不図示)、円形(不図示)などの断面を有してよい。
【0070】
チキソトロピック平衡化物質330は、ヨーロッパ特許出願第0281252号および対応する米国特許第4867792号で開示され、降伏応力値が1Paから260Paの間であり、タイヤのヘビースポット点が路面に当たったときに誘発される振動の影響で流動することができることによってタイヤを平衡化することができるチキソトロピックタイヤ平衡化組成であってよい。あるいは、チキソトロピック平衡化物質の降伏応力値は2Paよりも大きくてよい。しかし、特に回転部材が垂直位置にない場合、降伏応力値が小さくなるため、回転加速度を低下させることが必要になる可能性がある。
【0071】
平衡化物質の流動学的特性は、どちらも線形粘弾性領域で測定される平衡化物質の臨界降伏応力(CYS)および弾性(貯蔵)係数(G’)と、応力成長測定で求められる平衡化物質の降伏応力と、周波数掃引によって測定される平衡化物質の貯蔵弾性率(G’)と損失弾性率(G”)との関係である。
【0072】
貯蔵弾性率(G’)は、物質の強度であり、すなわちゲル形成剤の分子同士の間の結合の強度および数である。
【0073】
損失弾性率(G”)は、物質の、エネルギーを熱の形で放散させる能力の程度である。
【0074】
周波数掃引において測定されるG’とG”の関係は、物質の構造の特徴を示す関係である。クロスオーバ周波数は、G”がG’よりも大きくなる周波数である。
【0075】
粘弾性と同様に、使用中の平衡化物質の長期安定性、物質の様々な温度での性能、および物質の化学的不活性も重要である。
【0076】
平衡化物質は、平衡化システムの寿命中、様々な条件の下で、特に温度が約−50℃または−30℃から+90℃までの範囲内で作用し続けるべきである。
【0077】
また、平衡化物質は、平衡化システムおよび環境に悪影響を及ぼしてはならず、使い捨てまたは再生可能であるべきである。
【0078】
詳しく説明すると、チキソトロピック平衡化物質は、2つの成分、すなわちベース液体とゲル形成剤を含み、流動学的特性に関しては、貯蔵弾性率(G’)が約100Paから約5000Paの間であり、クロスオーバ周波数(G”>G’)が約1Hzから約40Hzの間であり、臨界降伏応力が約1Paよりも高く、揮発性に関しては、蒸発損失が99℃で10時間経過後に約6重量%未満になり、Standard Test Method for Pour Point of Petroleum Products(石油製品の流動点の標準試験方法)、ASTM D97によるベース液体の流動点が約−15℃よりも低く、分離安定性に関しては、ベース液体の分離度が300000xgおよび25°で12時間経過後に約20重量%よりも低くなり、化学的反応性に関しては、金属に対する非腐食性およびゴムなどの重合体に対して作用しないことのような実質的な不活性を含む最低基準を満たすことが好ましい平衡化ゲルであってよい。平衡化ゲルの重量比は通常、ベース液体の約75重量%から約99重量%の間であり、たとえば約85重量%から約97重量%の間であり、たとえば約95%であり、それに応じてゲル形成剤の約1重量%から約25重量%の間であり、たとえば約3重量%から約15重量%の間であり、たとえば約5重量%である。平衡化ゲルは、好ましくは少量の腐食抑制剤、抗酸化剤、染料、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0079】
ベース液体は、たとえばポリプロピレングリコール(PPG)またはポリエチレングリコール(PEG)のようなポリアルキレングリコール(PAG)、PPGとPEGの組み合わせのような複数のPAGの組み合わせすなわち混合物、酸化エチレンと酸化プロピレンの共重合体、あるいはそれらの組み合わせを含んでよい。
【0080】
ベース液体は、以下の一般式を有し、
RO−[CH(CH)CH2−O−]H (1)
上式で、Rが、水素または1つのヒドロキシル末端基を有しかつ水溶性であるアルキル基である、オキシプロピレン基のアルコール−(ROH−)開始重合体、たとえば、UCON LB Fluidsの商標でDOW Chemical Company(www.dow.com)から市販されている様々な分子量および粘度を有する生成物のような重合体を含んでよい。
【0081】
ベース液体は、上記の代わりにあるいは上記に加えて、以下の一般式を有し、
RO−[CH(CH)CH−O−][CH−CH−O−]H (2)
上式で、Rは水素またはアルキル基である、酸化エチレンと酸化プロピレンのアルコール−(ROH−)開始線形ランダム共重合体を含む。
【0082】
ベース液体は、上記の代わりにあるいは上記に加えて、商標UCON 50−HB FluidsでDOW Chemical Companyから市販されている、等重量比のオキシエチレン基とオキシプロピレン基を含み、様々な分子量および粘度を有する生成物のような、好ましくは、概ね等量、すなわち約50重量%のオキシエチレン基およびオキシプロピレン基を含み、1つのヒドロキシル末端基を有し、周囲温度、すなわち約40℃よりも低い温度で水溶性を示す、酸化エチレンと酸化プロピレンのアルコール−(ROH−)開始ランダム共重合体を含んでよい。たとえば、ベース液体は、上記の代わりにあるいは上記に加えて、商標UCON 50−HB−5100でDOW Chemical Companyから市販されている生成物のような、等重量比のオキシエチレン基とオキシプロピレン基を含み、数平均分子量が3930であり、粘度が40℃で約1020cSTであり、ISO3448による粘度等級が約1000である、酸化エチレンと酸化プロピレンのブタノール開始ランダム共重合体を含んでよい。
【0083】
ベース液体は、上記の代わりにあるいは上記に加えて、商標UCON 75−H FluidsでDOW Chemical Companyから市販されている、様々な分子量および粘度を有する生成物のような、好ましくは、約75重量%のオキシエチレン基とそれに応じて約25重量%のオキシプロピレン基とを含み、2つのヒドロキシル末端基(R=H)を有し、約75℃よりも低い温度で水溶性を示す、酸化エチレンと酸化プロピレンのジオール開始ランダム共重合体を含んでよい。たとえば、ベース液体は、上記の代わりにあるいは上記に加えて、商標UCON 75−H−9500でDOW Chemical Companyから市販されている生成物のような、75重量%のオキシエチレン基と25重量%のオキシプロピレン基とを含み、数平均分子量が6950であり、粘度が40℃で約1800cSTである、酸化エチレンと酸化プロピレンのジオール開始ランダム共重合体を含んでよい。
【0084】
ベース液体は、上記の代わりにあるいは上記に加えて、商標SYNALOX 40でDOW Chemical Companyから市販されている、様々な分子量および粘度を有する生成物のような、好ましくは、約40重量%のオキシエチレン基とそれに応じて約60重量%のオキシプロピレン基とを含み、水溶性である、酸化エチレンと酸化プロピレンのアルコール−(ROH−)開始ランダム共重合体を含んでよい。たとえば、ベース液体は、上記の代わりにあるいは上記に加えて、商標SYNALOX 40−D700でDOW Chemical Companyから市販されている生成物のような、共重合体40重量%のオキシエチレン基と60重量%のオキシプロピレン基とを含み、数平均分子量が5300であり、粘度が40℃で1050cSTであり、ISO 3448による粘度等級が約1000である、酸化エチレンと酸化プロピレンのアルコール開始ランダム共重合体を含んでよい。
【0085】
ベース液体は、上記の代わりにあるいは上記に加えて、商標SYNALOX 50−D700でDOW Chemical Companyから市販されている生成物のような、共重合体好ましくは、約50重量%のオキシエチレン基とそれに応じて約50重量%のオキシプロピレン基とを含み、ASTM D445による動粘度が40℃で960〜1160cSt(またはmm/s)である、酸化エチレンと酸化プロピレンのジオール開始ランダム共重合体を含んでよい。
【0086】
ゲル形成剤は、商標Aerosil A300でEvonik Industries(www.evonik.com)から市販されている生成物のような、ヒュームドシリカ、たとえば、BET(Brunauer、Emmett、Teller)表面積が約50m/gから約400m/gの間である疎水性シリカまたは親水性シリカ、たとえば、BET表面積が300m/gである親水性ヒュームドシリカを含んでよい。
【0087】
油に対するゲル形成剤のゲル化作用は、ヒドロキシ基を介すかあるいはゲル形成剤のセグメント分子同士の間のファンデルワールス引力を介した水素結合によってゲル形成剤の複数の分子のネットワークを形成することによって実現される。これらの結合の数および強度は、ゲル強度、およびゲルが荷重を支える能力(臨界降伏応力)を決定する。
【0088】
チキソトロピック平衡化物質は、
1)以下の一般式(I)または一般式(II)による1つまたは2つ以上のエチレン/プロピレングリコール共重合体エーテルあるいはその混合物を含み、
R−O{[CH(CH3)CH2−O−]m[CH2−CH2−O−]n}H (I)
R1−(O−{[CH(CH3)CH2−O−]m[CH2−CH2−O−]n}H)2 (II)
上式で、Rが、水素または2個〜8個の炭素原子のアルキル基であり、R1が、同じ炭素原子上に2つの置換基が担持されることのない2個〜8個の炭素原子のアルキレン部分であり、mが、1つまたは2つ以上のエチレン/プロピレングリコール共重合体部分におけるプロピレングリコールのモル百分率であり、nが、1つまたは2つ以上のエチレン/プロピレングリコール共重合体部分中のエチレングリコールのモル百分率であり、比n:mが35:65から80:20の範囲であり、各グリコール共重合体化合物の数平均分子量が2000〜10000の範囲である、85〜97重量%のグリコールエーテル成分と、
2)3〜15重量%のヒュームドシリカゲル形成剤とを含み、粘弾性であり、貯蔵弾性率(G’)が22℃で1500Paから5000Paの間であり、クロスオーバ周波数が10〜40Hzまでのときに損失弾性率(G”)が貯蔵弾性率よりも低く、臨界降伏応力が2Paよりも高い平衡化ゲル組成を含む平衡化ゲルであってよい。
【0089】
1つまたは2つ以上のグリコールエーテル成分の数平均分子量は3000〜10000の範囲であってよい。比n:mは、35:65から80:20の範囲であり、好ましくは40:60から75:22の範囲であり、特に40:60から60:40の範囲であり、たとえば50:50であってよい。ヒュームドシリカゲル形成剤は、BET表面積が90〜400m/gであり、好ましくは200〜300m/gである親水性ヒュームドシリカであるか、あるいはヒュームドシリカゲル形成剤は、BET表面積が50〜300m/gであり、好ましくは250〜350m/gである疎水化ヒュームドシリカであるか、あるいはそのような親水性ヒュームドシリカゲル形成剤と疎水化ヒュームドシリカゲル形成剤の混合物であってよい。1つまたは2つ以上のグリコールエーテル成分は、ISO3448に従って判定される粘度等級が500よりも高く、好ましくは800〜1200の範囲内である。
【0090】
本発明の組成は通常、必要に応じて約40℃よりも低い温度までわずかに加熱しながら各原料を混合することによって生成される。
【0091】
上述のようなベース液体およびゲル形成剤を使用して一連の例示的な平衡化物質を生成した。各組成を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
チャンバ310は、チキソトロピック平衡化物質330に接触し、ロータリシステム120、130を平衡化する重り体(不図示)をさらに含んでよい。この重り体は、チキソトロピック平衡化物質330が振動および撹拌状態の変化を受けたときに重り体表面とチキソトロピック平衡化物質330との付着を妨げるような、重り体の重り体サイズによって定められる重り体表面積および重り体重量を有する。この重り体サイズでは、重り体が、チキソトロピック平衡化物質330を含むチャンバ310内で移動することができる。重り体はボールであってよい。重り体サイズはボールの直径に相当する。この直径は、rがボールの半径である次式によって表され、
A=4πr (3)
表面構造、すなわち粗度および付着に関与する重り体表面積と、
rがボールの半径である次式によって表され、
V=4/3・πr (4)
重り体密度および重り体重量に関与する重り体体積との比によって決定されてよい。半径rを大きくする場合、重り体体積、したがって、重り体重量は重り体表面積よりも速く増大し、チャンバ310内の重り体の可動性が向上する。重り体は、金属、たとえば、ステンレススチールなどの鋼を含んでよい。
【0094】
本発明の各実施形態は、上記の方法を実施することのできる対応する装置を含む。
【0095】
本発明の各実施形態は、場合によってはいくつかの装置を介して上記の方法を実施することのできる対応するシステムを含む。
【0096】
本明細書では、複数の特定の実施形態について図示し説明したが、当業者には、同じ目的を実現するように計算された任意の構成によって、示された特定の実施形態を置き換えてもよいことが理解されよう。上記の説明が例示的なものであり、制限的なものではないことを理解されたい。本出願は、本発明のあらゆる応用実施形態または変形実施形態を対象とするものである。当業者には、上記の説明を読んで理解したときに上記の複数の実施形態の組み合わせおよび他の多数の実施形態が明らかになろう。本発明の範囲には、上記の構造および方法を使用することのできる他のあらゆる実施形態および用途が含まれる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲と、そのような特許請求の範囲の対象となる均等物の全範囲を参照することによって決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物船(100)といった水上乗り物のロータリシステム(120、130、140)における振動を軽減する方法であって、前記ロータリシステム(120、130、140)を平衡化することを含む方法において、
回転部材(300、302〜306)の回転軸(340)上に支点を有し、周方向平衡化領域(320)を有し、ある量のチキソトロピック平衡化物質(330)が部分的に充填されたチャンバ(310〜312)を有する回転部材(300、302〜306)を設けることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記回転部材(300、302〜306)を前記回転軸(340)周りに回転させ、それによって、前記チキソトロピック平衡化物質(330)を液化させるとともに前記周方向平衡化領域(320)に沿って分散させ、前記回転部材(300、302〜306)の不平衡を軽減することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回転軸(340)が水平方向に向けられるか、あるいは、前記回転軸(340)が垂直方向に向けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記回転部材(300、302〜306)が、前記ロータリシステム(120、130、140)のもともとの部材であるか、前記ロータリシステム(120、130、140)の交換部材であるか、または前記ロータリシステム(120、130、140)の補助部材であるか、
前記回転部材(300、302〜306)が中空の軸または管状の軸であるか、
前記回転部材(300、302〜306)がカルダン軸といった関節軸であるか、あるいは、
それらのことの組み合わせである、請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ロータリシステム(120、130、140)が前記水上乗り物のエンジンシステム(120)であるか、
前記回転部材(300、302〜306)がクランクシャフトであるか、あるいは、
その両方である、請求項1、2、3、または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ロータリシステム(120、130、140)が動力伝達系または動力装置といった前記水上乗り物の動力伝達システム(130)であるか、
前記回転部材(300、302〜306)がプロペラシャフトのような駆動軸といった軸(302)であるか、あるいは、
それらのことの組み合わせである、請求項1、2、3、または4に記載の方法。
【請求項7】
前記チャンバ(310)が環状またはリング状、あるいは円筒形であるか、
前記チャンバ(310)が矩形、方形、半円形、ベル形、または円形の断面を有するか、
前記チャンバ(310)の直径が約0.01mから約1mの間であるか、または約0.02mから約0.5mの間であるか、または約0.05mから約0.2mの間であるか、または約0.1mであるか、
前記チャンバ(310)の長さが約0.01mから約20mの間であるか、または約0.02mから約10mの間であるか、または約0.05mから約5mの間であるか、または約0.1mから約2mの間であるか、または約0.5mであるか、あるいは、
それらのことの組み合わせである、請求項1、2、3、4、5、または6に記載の方法。
【請求項8】
前記チキソトロピック平衡化物質(330)の前記量が約0.01kgから約1000kgの間であるか、または約0.1kgから約200kgの間であるか、または約0.2kgから約100kgの間であるか、または約0.5kgから約50kgの間であるか、または約1kgから約20kgの間であるか、または約5kgであるか、
前記チャンバ(310)に充填するチキソトロピック平衡化物質(330)の量が約1%から約90%の間であるか、または約10%から約80%の間であるか、または約25%から約75%の間であるか、または約50%であるか、あるいは、
それらのことの組み合わせである、請求項1、2、3、4、5、6、または7に記載の方法。
【請求項9】
貨物船(100)といった水上乗り物のロータリシステム(120、130、140)における振動を軽減する装置において、
回転部材(300、302〜306)の回転軸(340)上に支点を有し、周方向平衡化領域(320)を有し、ある量のチキソトロピック平衡化物質(330)が部分的に充填されたチャンバ(310〜312)を有する回転部材(300、302〜306)を特徴とする装置。
【請求項10】
ロータリシステム(120、130)自体の振動を軽減する、貨物船(100)といった水上乗り物のロータリシステム(120、130)において、
回転部材(300、302〜306)の回転軸(340)上に支点を有し、周方向平衡化領域(320)を有し、ある量のチキソトロピック平衡化物質(330)が部分的に充填されたチャンバ(310〜312)を有する回転部材(300、302〜306)を特徴とするロータリシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−511422(P2013−511422A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539320(P2012−539320)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067687
【国際公開番号】WO2011/061228
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(512092209)
【氏名又は名称原語表記】CARNEHAMMAR, LARS BERTIL
【Fターム(参考)】