説明

水中カットペレット搬送方法及び装置

【課題】本発明は、冷却水脱水後の水分が付着したままのペレットをペレットサイロに送ることにより、脱水乾燥等の設備を簡略化することを目的とする。
【解決手段】本発明による水中カットペレット搬送方法及び装置は、水中カット装置(3)で造粒されたペレットを冷却水脱水装置(10)で脱水した後に、水分が付着したままのペレットを空送ブロワー(17)と輸送ホッパ(16)及び空送パイプ(19)を介して前記空送パイプ(19)に接続されたペレットサイロ(15)に供給する方法と装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中カットペレット搬送方法及び装置に関し、特に、冷却水脱水後の残留水分が付着したままのペレットをペレットサイロに送ることにより、脱水乾燥等の設備を簡略化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成装置により生産された合成樹脂原料は、通常、原料の揮発成分除去、品質改善あるいは均質化等を目的として、回転駆動される一対のスクリュを内挿したシリンダを主要構成部とする大容量のスクリュ式混練押出機により溶融混練されている。この溶融混練された合成樹脂原料は、その後の原材料としての取扱いを容易にするために、ペレットに造粒されている。すなわち、シリンダの先端に造粒ダイスが設けられたスクリュ式混練押出機及び造粒ダイスを介して連結された水中造粒装置において、スクリュ式混練押出機内の高温溶融状態の合成樹脂原料が、造粒ダイスのダイス孔から水中造粒装置の搬送を兼ねた冷却水中へ紐(ストランド)状に押出され、直ちに冷却固化され、造粒ダイスの表面に沿って摺動回転するカッター刃により短く切断され造粒されて、ペレットが生産される。造粒直後のペレットは高温であり、冷却水により冷却されながら搬送され、脱水乾燥され、製品品質確保のための選別が行われ、その後、空気管中を搬送されてペレット貯蔵サイロに貯蔵されている。
【0003】
例えば、図2に示されるように、特許文献1の構成において、合成樹脂原料は、スクリュ式混練押出機1、造粒ダイス2、水中カット装置3によりペレットとして生産され、この水中カット装置3には、冷却水タンク4からの冷却水が冷却水循環ポンプ5及び冷却水循環パイプ6を介して前記水中カット装置3へ水中カット用の冷却水が供給されるように構成されている。
【0004】
前記水中カット装置3からの配管7には前記冷却水タンク4への分岐管8のための分岐部9が設けられ、この分岐部9は冷却水脱水装置10へ接続されている。
前記冷却水脱水装置10で脱水されたペレットは、脱水乾燥装置11を経て大小粒の粒度選別を行う選別機12に送られる。
【0005】
前記選別機12に送られたペレットは、ホッパー16に入れられて空送ブロワー17で管路19を経てペレットサイロ15に貯蔵される。
【0006】
また、特許文献1の図1に示されるように前述の図2の構成を改良されたものがある。すなわち、図示していないが、合成樹脂原料を造粒し、ペレットサイロに貯蔵する大容量の設備を建設するための建設費を低減し、また、設備の騒音環境を改善することを目的とするものである。そのために、冷却水脱水装置、乾燥装置及び選別機の機器をペレット貯蔵サイロの上部に位置するように、配置して構成されている。その結果、ペレットを選別機からペレット貯蔵サイロへ重力による自然落下により搬送することが可能になり、空気搬送装置を不要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−95015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の水中造粒用ペレット冷却水装置は以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、近年、合成樹脂原料を溶融混練し水中造粒してペレットに製品化する設備は、処理量の大容量化に伴い、設備を構成する各機器が大容量化して大型化している。その結果、機器の大型化(例えば、配管だけでも300m〜500m)に伴って、構成機器の設置場所の確保が困難になってきている。
また、特許文献1に示される水中造粒用ペレット冷却水装置については、設備の立地条件により、この様な機器の配置ができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による水中カットペレット搬送方法及び装置は、水中カット装置で造粒されたペレットを冷却水脱水装置で脱水した後に、水分が付着したままのペレットを空送ブロワーと輸送ホッパ及び空送パイプを介して、前記空送パイプに接続されたペレットサイロに供給する方法であり、また、本発明による水中カットペレット搬送装置は、水中カット装置で造粒されたペレットを冷却水脱水装置で脱水した後に、水分が付着したままのペレットを空送ブロワーと輸送ホッパ及び空送パイプを経て、前記空送パイプに接続されたペレットサイロに供給する構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による水中カットペレット搬送方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、冷却水脱水装置において脱水されたペレットには潜熱が残留しており、この残留潜熱により空気搬送用の空送パイプ内を搬送中にペレットを乾燥できる。従って、従来用いていたような乾燥工程を設ける必要はなく、乾燥装置が不要になる。すなわち、水中造粒用ペレット冷却水装置の構成機器を大幅に削減することができ、従って、省スペース化により、構成機器の設置場所の確保及び機器配置の課題を大幅に改善することができる。更に、ペレットの大小の選別工程を省略できるため、装置全体の省スペース化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による水中カットペレット搬送方法及び装置を示す概略構成図である。
【図2】従来の水中カットペレット搬送方法及び装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、水中造粒して冷却脱水後のペレットを残留水分が付着したままでペレットサイロに送ることにより、脱水乾燥等の設備を簡略化するようにした水中カットペレット搬送方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明による水中カットペレット搬送方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。なお、従来例と同一あるいは同等のものについては同一符号を用いて説明する。
【0014】
図1において、合成樹脂原料は、スクリュ式混練押出機1、造粒ダイス2、水中カット装置3によりペレットとして生産され、配管7を経てペレットサイロ15に貯蔵される。
【0015】
前記スクリュ式混練押出機1のシリンダ1Aの先端に設けられた水中カット装置3には、冷却水タンク4からの冷却水が冷却水循環ポンプ5及び冷却水循環パイプ6を介して供給されている。
前記水中カット装置3に接続された配管7の途中には、分岐部9を介して冷却水の一部が配管8を介して冷却水タンク4に戻されると共に、冷却水と共に配管7を介して搬送されるペレットは、冷却水脱水装置10で脱水され、ペレットのみが輸送ホッパ16を経て空送ブロワー17によって空気が送られる空送パイプ19からペレットサイロ15に送られて貯蔵される。
【0016】
前述の場合、ペレットサイロ15に送られるペレットには、十分に脱水が行われていないため、残留水分が付着した状態のペレットが送り込まれるが、冷却水脱水装置10におけるペレットの温度は、約60℃〜70℃を維持しているため、その後の空送パイプ19内での風力及び暖気等により自然乾燥されつつ前記ペレットサイロ15に貯蔵される。
【0017】
次に、本発明による水中カットペレット搬送方法の具体的な実施工程について述べる。
この水中カット装置に適用される樹脂は、主としてPE,PPが挙げられる。まず、本発明との比較を行うために、図2を基に、従来装置におけるこれらのPE,PPのペレットの場合を例に挙げて説明すると、約220℃〜230℃で押し出された樹脂は、約60℃で水中カット装置3に流入している冷却水中でカッティングされてペレット化される。次に、冷却水脱水装置10まで冷却水により搬送・冷却され、冷却脱水装置10の入口付近では、ペレット温度は約90℃までに冷却される。
さらにペレットは、冷却水脱水装置10により冷却水が分離され、脱水乾燥装置11へと移送されるが、この脱水乾燥装置11の入口付近でのペレット温度は約70〜60℃であり、その後選別機12、ペレットサイロ15へと移送される。
従って、ペレット温度は、脱水乾燥装置11の入口付近でも約70〜60℃を維持していることが明らかである。
本発明はこのペレット温度を有効利用するものであり、この温度の状態で直ちにペレットを下流のペレットサイロ15へ直接空気輸送するものである。
【0018】
すなわち、冷却水脱水装置10により冷却水と分離されたペレットは、その表面にある程度の残留水分(500ppm程度)が付着しているが、そのペレット温度は約70〜60℃を維持していることから、直ちに下流のペレットサイロ等への次工程へ空気輸送することで、その風力、ペレット自体の白熱、また空気輸送配管である空送パイプ19の暖められた雰囲気内でその付着水分は自然乾燥することになる。
尚、空気輸送時に、ペレット同士及びペレットと配管が衝突することになり、その衝突によりペレット温度、また配管温度の低下がある程度防止できる要因もある。
【0019】
前述の従来例を用いた説明により、表面に水分が付着した状態のペレットが70℃〜60℃の温度を有しているために、脱水を完全にしなくてもペレットをペレットサイロ15に送り込むことができることが明確になったため、次に、図1の本発明の構成について実際に空送処理する場合を説明する。
【0020】
まず、スクリュ式押出機1で溶融混練された樹脂原料はダイス2によりストランド状に押出され、水中カットナイフ3aにより、ペレット化される。同時に水中カット装置3に循環している冷却水により冷却固化され、冷却水と共に冷却水循環パイプである配管7内を冷却水脱水装置10まで搬送される。
この冷却水装置10内でペレットと冷却水は、冷却水脱水装置10に内設されている図示しないスクリーンにより分離され、ペレットは直ちに輸送ホッパ16へと導かれる。この分離された冷却水は、冷却水タンク4へ還流し再び循環水となる。前記輸送ホッパ16へと導かれたペレットは、空送ブロワー17により貯蔵用ペレットサイロ15へと空気輸送され、その後に、このペレットサイロ15から取出されて図示しないペレット梱包システムにより最終的に袋詰めされる。
【0021】
従来、一般に使用されていた通常の設備においては、前記輸送ホッパ16からペレットサイロ15までは、約200〜300mの空気輸送配管が配置されており、長いものでは約500mもの配管が配置されている。
このため、この輸送ホッパ16から供給されたペレットの表面には水分が付着しているものの、温度が約60〜70℃で輸送ホッパ16に投入されたペレットは、上記の長い空気輸送用配管を搬送される間に、空送ブロワー17による風力、ペレット自体の白熱、また前記空送パイプ19内の暖められた雰囲気によってペレットサイロ15に到着時には、その付着水分が自然乾燥されることになる。
一方、近年のスクリュ式押出機1ではその信頼性が向上し、定常運転時においては規格外サイズのペレットの発生が非常に少なくなっており、多少の規格外サイズのペレットが製品に混入しても無視できるレベルとなっている。そのため、規格外のサイズのペレットが大量に発生する状況は特に立上げ時の非定常時であり、この状態では従来技術と同様に冷却水切換三方弁からなる分岐部9などによって流路を切り換え、ペレットが冷却水脱水装置10まで搬送されないようにする。
【0022】
従って、定常運転時には基本的に規格サイズのペレットのみとなり、敢えて従来使用していた選別機は不要となる。尚、本発明でもペレットの空気輸送時において、ペレットが配管内壁でこすられて樹脂屑が発生するが、これは従来技術でも通常に発生していることであり、従来技術では予め選別機で樹脂屑も排除はしているが、結果的には樹脂屑自体は避けることはできないことになる。
すなわち、従来装置で用いていた乾燥装置、選別機が当たり前に必要とされていたが、本発明の装置によれば乾燥装置、選別機及びそれらの関係機器を不要とすることができ、省スペース、設備のコストダウン等が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明による水中カットペレット搬送方法及び装置は、樹脂ペレットの乾燥だけではなく、食品及び機械部品等への適用も可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 スクリュ式混練押出機
1A シリンダ
2 ダイス
3 水中カット装置
4 冷却水タンク
5 冷却水循環ポンプ
6 冷却水循環パイプ
7 配管
8 配管
9 分岐部
10 冷却水脱水装置
15 ペレットサイロ
16 輸送ホッパ
17 空送ブロワー
19 空送パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中カット装置(3)で造粒されたペレットを冷却水脱水装置(10)で脱水した後に、水分が付着したままのペレットを空送ブロワー(17)と輸送ホッパ(16)及び空送パイプ(19)を介して、前記空送パイプ(19)に接続されたペレットサイロ(15)に供給することを特徴とする水中カットペレット搬送方法。
【請求項2】
水中カット装置(3)で造粒されたペレットを冷却水脱水装置(10)で脱水した後に、水分が付着したままのペレットを空送ブロワー(17)と輸送ホッパ(16)及び空送パイプ(19)を介して、前記空送パイプ(19)に接続されたペレットサイロ(15)に供給することを特徴とする水中カットへレット搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−260707(P2010−260707A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114771(P2009−114771)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】