説明

水中油型の皮膚化粧料の製造方法

【課題】べたつき感を与えず、良好なしっとり感を与え、かつ、濡れた肌に塗布しやすい水中油型の皮膚化粧料の製造方法を提供する。
【解決手段】(A)成分:水溶性高分子化合物と(B)成分:多価アルコールの混合物とを混合して混合物を得る混合工程と、(D)成分:水膨潤性粘土鉱物と(E)成分:水の一部とを混合して分散液を得る分散工程と、前記混合物と、前記分散液と、前記(E)成分の残部とを混合して膨潤液を得る膨潤工程と、(C)成分:下記(c1)成分及び(c2)成分を含有する油性成分を前記膨潤液に分散する乳化工程とを有し、前記混合工程では、前記(A)成分と前記(B)成分とを(A)成分/(B)成分=0.1〜0.2(質量比)で混合する。
(c1)成分:フィトステアリン酸エステル
(c2)成分:25℃でペースト状の非極性油

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型の皮膚化粧料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔、手、足、胴等の肌の保湿や肌荒れ防止を目的とした種々の皮膚化粧料が用いられている。皮膚化粧料としては、日常的、あるいは入浴後、タオルで水滴が拭き取られた(タオルドライ)乾いた肌に塗布するものや、入浴後、濡れた肌に塗布するもの(濡れ肌用)が知られている。
濡れ肌用の皮膚化粧料としては、タオルドライしない肌に塗布し、すすぎ流すものが一般的である。このような濡れ肌用の皮膚化粧料は、肌に塗布した後、すすぎ流されるため、皮膚への残存率が低いものであった。皮膚への残存率を高めるために、粘度を高めたりすると、皮膚に塗布しにくいと共に、べたつき感が生じるという問題があった。
【0003】
こうした問題に対し、例えば、液状の油と、ペースト状の非極性油と、ペースト状の極性油と、水溶性高分子化合物とを含有するボディリンス組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明によれば、すすぎ流した後に、べたつき感がなく、しっとり感、すべすべ感、ツヤ感を肌に与えることができる。
また、例えば、ペースト状油と極性油とグリセリンと水溶性高分子化合物とを含有する水中油型ボディ化粧料が提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2の発明によれば、濡れた肌への伸びが良好であると共に、塗布後にすすぎ流すことなく、タオルドライするだけでしっとり感、うるおい感、すべすべ感等の保湿効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−256179号公報
【特許文献2】特開2009−40724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の濡れ肌用の皮膚化粧料は、肌への延びは良好なものの、垂れやすくて塗布しにくいという問題があり、この問題を解消するために単に増粘させるとべたつき感を生じるという問題があった。加えて、皮膚化粧料には、しっとり感やすべすべ感等の保湿効果のさらなる向上が求められていた。
そこで、良好なしっとり感を与え、かつ、濡れた肌に塗布しやすい水中油型の皮膚化粧料の製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、皮膚化粧料を濡れた肌に塗布した際の垂れを抑制するには、増粘成分である水溶性高分子化合物を適切な膨潤状態にすることが重要であるとの知見を得た。
ところが、水溶性高分子化合物を油脂等の他の成分と共に水中に分散して乳化しようとすると、添加した水溶性高分子化合物の内、先に膨潤した水溶性高分子化合物が切断されたりして、所望の粘度にするために多量の水溶性高分子化合物が必要となる。
これらの知見に基づき、水溶性高分子化合物と多価アルコールとを特定の比率で混合した混合物を用いることで、しっとり感が向上することを見出し、本発明に至った。
【0007】
即ち、本発明の水中油型の皮膚化粧料の製造方法は、(A)成分:水溶性高分子化合物と、(B)成分:多価アルコールの混合物と、(C)成分:下記(c1)成分及び(c2)成分を含有する油性成分と、(D)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(E)成分:水とを含有する水中油型の皮膚化粧料の製造方法であって、前記(A)成分と、前記(B)成分とを混合して混合物を得る混合工程と、前記(D)成分と、前記(E)成分の一部とを混合して分散液を得る分散工程と、前記混合物と、前記分散液と、前記(E)成分の残部とを混合して膨潤液を得る膨潤工程と、前記(C)成分を前記膨潤液に分散する乳化工程とを有し、前記混合工程では、前記(A)成分と前記(B)成分とを(A)成分/(B)成分=0.1〜0.2(質量比)で混合することを特徴とする。
(c1)成分:フィトステアリン酸エステル
(c2)成分:25℃でペースト状の非極性油
前記(C)成分は、さらに下記(c3)成分を含有することが好ましい。
(c3)成分:(c1)成分を除く、25℃で液状の油
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、良好なしっとり感を与え、かつ、濡れた肌に塗布しやすい水中油型の皮膚化粧料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の皮膚化粧料の製造方法に用いるバッチ式混合装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の皮膚化粧料の製造方法に用いる連続式混合装置の一例を示す模式図である。
【図3】吐出流量の測定に用いる測定装置の模式図である。
【図4】吐出流量の測定に用いる測定装置の模式図である。
【図5】実施例に用いた混合装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(皮膚化粧料)
本発明の水中油型の皮膚化粧料(以下、単に皮膚化粧料ということがある)は、(A)成分:水溶性高分子化合物と、(B)成分:多価アルコールの混合物と、(C)成分:特定の油性成分と、(D)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(E)成分:水とを含有するものである。
本発明の皮膚化粧料は、入浴後等のボディケア、手洗い後のハンドケア、洗顔後のフェイスケア、足浴後のフットケア、あるいは洗濯、炊事等の家事後のハンドケアに用いられ、水滴が除去された肌、あるいは濡れた肌に塗布されるものである。
【0011】
本発明の皮膚化粧料の粘度は、用途に応じて決定でき、例えば、濡れた肌に塗布するものであれば、1000〜4000mPa・sが好ましく、2000〜3000mPa・sがより好ましい。1000mPa・s未満であると、濡れた肌に塗布した際に垂れやすくなり、4000mPa・s超であると、べたつき感を与えるおそれがある。なお、皮膚化粧料の粘度は、株式会社東京計器製のBL型回転式粘度計を用い、以下に示す測定条件で測定できる。
ローター:No.3、回転数:12rpm、測定サンプル温度:25℃、測定時間:60秒後の粘度
【0012】
<(A)成分:水溶性高分子化合物>
本発明の(A)成分は、水溶性高分子化合物である。「水溶性」とは、水に対する溶解度(20℃)が0.1g/水100g以上のものをいう。また「高分子」とは、重量平均分子量が1000以上のものをいう。
(A)成分の重量平均分子量は、GPC−MALLS(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー−多角度光散乱検出器)を用い、0.5mol/Lの過塩素酸ナトリウム溶液を移動相とし、以下の方法で測定した値である。(A)成分の純分濃度が約1000質量ppmとなるように移動相で希釈した試料溶液について、TSK−GELαカラム(東ソー株式会社製)を用い、633nmの波長を多角度散乱検出器により測定する。標準品として、分子量既知のポリエチレングリコールを用いる。
【0013】
(A)成分としては、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(褐藻エキス)等の植物系高分子化合物、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子化合物、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子化合物、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子化合物、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレン、グリコールエステル等のアルギン酸系高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等のビニル系高分子化合物、ポリオキシエチレン系高分子化合物、ポリオキエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子化合物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子化合物、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。中でも、皮膚化粧料の肌への伸びがよく、かつ肌へのなじみが良好なことから、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0014】
(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは10000以上である。重量平均分子量が10000以上であると、しっとり感が長続きするためである。また、(A)成分の重量平均分子量の上限値は、特に限定されないが、例えば10000000とされる。10000000超であると、膨潤時にダマが生成しやすく、膨潤後は剪断により切れやすくなるためである。
【0015】
皮膚化粧料中の(A)成分の含有量は、皮膚化粧料の用途等を勘案して決定でき、例えば、0.1〜1質量%が好ましく、0.1〜0.7質量%がより好ましい。0.1質量%未満であると、皮膚化粧料の肌へのなじみが低下して、十分なしっとり感を得られないおそれがあり、1質量%超であると、皮膚化粧料を肌へ伸ばしにくくなると共に、べたつき感を与えるおそれがある。
【0016】
<(B)成分:多価アルコール>
本発明の(B)成分は、分子内に水酸基を2個以上有する水溶性の多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン等のポリグリセリン、グルコース、マルトース、マルチトース、ショ糖、フラクトース、キシリトール、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトール、エリスリトール、澱粉分解糖還元アルコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0017】
皮膚化粧料中の(B)成分の含有量は、用途や(A)成分の含有量等を勘案して決定でき、例えば、5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。5質量%未満であると、十分なしっとり感を得られないおそれがあると共に、皮膚化粧料が垂れやすい傾向にある。30質量%超であると、他の成分、特に(C)成分の含有量が低減し、十分なしっとり感を得られないおそれがある。
【0018】
<(C)成分:特定の油性成分>
(C)成分は、下記(c1)成分及び(c2)成分を含有する油性成分である。(C)成分は、(c1)成分、(c2)成分及び(c3)成分とからなるものが好ましい。さらに(c1)〜(c3)成分を併用することで、肌への伸びと、しっとり感とを相乗的に向上できる。
【0019】
皮膚化粧料中の(C)成分の含有量は、13〜40質量%が好ましく、保湿効果とべたつき感の低減の点から17〜30質量%がより好ましく、17〜25質量%がさらに好ましい。
【0020】
≪(c1)成分:フィトステアリン酸エステル≫
本発明の(c1)成分は、フィトステロールと下記一般式(1)で表される炭素数8〜22の一価脂肪酸とのエステルであり、フィトステアリン酸エステル(フィトステロール脂肪酸エステル)である。
【0021】
RCOOH ・・・(1)
(式中、Rは炭素数7〜21の一価炭化水素である。)
【0022】
(c1)成分を用いることにより、濡れた肌に塗布しやすく、肌なじみが良好でしっとり感が高く、かつ、べたつきがない皮膚化粧料を得ることができる。
(c1)成分のフィトステロールと一価脂肪酸とは、それぞれ1種でも2種以上でもよく、これらの組み合わせによりフィトステロール脂肪酸エステルが構成される。
【0023】
(c1)成分のフィトステロール部は、前記式(1)中のRが炭素数7〜21であり、好ましくは、8〜18である。
(c1)成分のフィトステロール部は、植物油脂から得られるステロール化合物であり、例えば、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、ブラシカステロール等が挙げられ、植物ステロールと総称されている。フィトステロールは1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いてもよく、混合物を用いてもよい。中でも、(c1)成分中、β−シトステロール由来の(c1)成分25〜75質量%、スチグマステロール由来の(c1)成分2〜45質量%、カンペステロール由来の(c1)成分12〜45質量%であることが、しっとり感の点で好ましい。
【0024】
このような(c1)成分としては、2−エチルヘキサン酸フィトステリル、パルミチン酸フィトステリル、パルミトオレイン酸フィトステリル、オレイン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、リノール酸オレイン酸フィトステリル、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、オクチルデカン酸ジヒドロ酸フィトステリル等が挙げられる。中でも、オレイン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリル等が好ましい。フィトステロール脂肪酸エステルとしては市販品を用いることができ、例えば、フィトステリルイソステアレート(タマ生化学株式会社製)等を用いることができる。
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
(c1)成分は、皮膚上に抱水したベールを形成し、しっとり感を発現させる点から、抱水率100%以上のものが好ましく、200%以上のものがより好ましい。具体的な抱水率は、イソステアリン酸フィトステリル(抱水率270%)、マカダミアナッツ脂肪酸フィトステリル(抱水率300%)である。なお、本発明における抱水率は、下記試験方法で得られる値である。
【0026】
[抱水率試験方法]
50℃に加熱した試料10gをビーカーに秤り取り、デスパミキサーにて3000rpmで攪拌しながら、50℃の水を徐々に、水が試料から排液されるまで添加する。このとき、水が試料から排液する直前の水の添加量(水が排液されない最大量)を試料質量(10g)で除し、100倍して抱水力(%)とする(下記(2)式)。この抱水力が、100%以上であると自重と等量以上の質量の水を抱水することができる。
【0027】
抱水力(%)=(水の添加量(g))/(試料質量(g))×100 ・・・(2)
【0028】
皮膚化粧料中の(c1)成分の含有量は、後述する(c2)成分、(c3)成分の含有量等を勘案して決定でき、例えば、1〜10質量%が好ましく、2〜6質量%がより好ましい。1質量%以上であれば、しっとり感をより向上でき、10質量%以下であれば、べたつき感の低減、肌なじみ、塗布時の伸びがより向上する。
【0029】
≪(c2)成分:25℃でペースト状の非極性油≫
(c2)成分は、25℃でペースト状である炭化水素等の非極性油である。(c2)成分を含有することで、べたつき感が低減される。ここで、ペースト状とは、稠度100〜220のものをいう。中でも、(c2)成分としては、稠度130〜220のものが好ましく、190〜210のものがより好ましい。稠度130以上のものを用いることにより、肌なじみのよさをより向上でき、稠度220以下のものを用いることにより、べたつき感をより低減できる。「稠度」は、JIS K2235「石油ワックス」に準拠して測定し、試料を82℃に加熱溶融して、恒温水浴中で25℃に保った後、この試料中に質量の合計が150gとなる円錐を垂直に5秒浸入させたときの円錐の浸入した深さを0.1mm単位まで測定し、これを10倍した数値である。皮膚化粧料は、(c2)成分が25℃で液状であると、べたつき感を低減できず、25℃で固体であると、肌なじみ、肌への伸びが悪くなる。
【0030】
(c2)成分は、皮膚化粧料の経時安定性と、肌への伸びの良さの点から、融点30〜60℃のものが好ましく、40〜60℃のものがより好ましく、45〜60℃のものがさらに好ましい。融点が40℃以上のものを用いることで、保管中の分離が防止され経時安定性が高まると共に、べたつき感を低減でき、融点が60℃以下のものを用いることで、肌なじみをより向上できる。なお、本発明の「融点」は、第15改定日本薬局処方 一般試験法、融点測定法第3法により測定して得られる値である。
【0031】
(c2)成分としては、例えば、パラフィン、ワセリン(精製度の低い黄色ワセリン、脱色・精製した白色ワセリンを含む)等が挙げられる。これらの中でも、塗布時の伸びのよさ、べたつき感を低減できる点でワセリンが好ましく、皮膚化粧料の重要な品質であるにおいのよさ、皮膚刺激性のなさの点で、白色ワセリンがより好ましい。(c2)成分としては市販品を用いることができ、例えば、白色ワセリンとしては、サンホワイトP−200(日興リカ株式会社製)、サンホワイトS−200(日興リカ株式会社製)、ペレンスノー(ペレンコ社製)等が挙げられる。
【0032】
また、(c2)成分は、25℃でペースト状であれば、数種類の炭化水素の混合物でもよく、例えば、液状である流動パラフィンとワセリンを混合して25℃でペースト状としてもよい。
例えば、稠度156のワセリン90質量部と流動パラフィン10質量部とを混合し、稠度176の(c2)成分として用いることができる。ただし、べたつき感の低減と経時安定性の点から、ワセリンを単体で用いることが好ましい。
(c2)成分は、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0033】
皮膚化粧料中の(c2)成分の含有量は、1〜10質量%が好ましく、2〜6質量%がより好ましい。1質量%以上であれば、べたつき感をより低減でき、10質量%以下であれば、肌なじみ、塗布時の伸びがより向上する。
【0034】
≪(c3)成分:(c1)成分を除く、25℃で液状の油≫
本発明の(c3)成分は、(c1)成分を除く、25℃で液状の油である。(c3)成分は、(c1)成分及び(c2)成分の溶剤として機能するものであり、皮膚化粧料を肌に塗布した際の伸びの良さを向上できる。
「液状の油」とは、25℃における粘度が200mPa・s以下のものをいう。なお、本発明における液状油の粘度は、株式会社東京計器製のBL型回転式粘度計を用い、以下に示す測定条件で測定できる。
ローター:No.2(粘度500mPa・s未満)
回転数:60rpm、測定温度:25℃((c3)成分の温度)、測定時間:20秒後
【0035】
(c3)成分は、(c1)成分、(c2)成分の種類に応じて決定でき、例えば、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油、オリーブ油、アボカド油、サフラワー油、サンフラワー油、ホホバ油、ミンク油等の油脂類、酢酸ラノリン等のラノリン類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、ペンタエリトリット脂肪酸エステル、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステル類、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリカプリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、パーフルオロデカン等のフッ素系油等が挙げられる。これらの中でも、肌にツヤ感やなじみやすさを付与する点から、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、2−エチルヘキサン酸セチル、ジカプリン酸プロピレングリコール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルが好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、2−エチルヘキサン酸セチルがより好ましい。
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0036】
(c3)成分としては、50℃において(c1)成分及び(c2)成分を溶解できるものが好ましい。50℃付近に転相温度をもつ乳化物は、保存期間中に分離し難い等、安定性が良好である。このような乳化物を調製するには、油性成分である(c1)成分及び(c2)成分が50℃で(c3)成分に溶解する必要があるためである。
【0037】
皮膚化粧料中の(c3)成分の含有量は、(c1)成分及び(c2)成分の含有量等を勘案して決定でき、例えば、5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。5質量%以上であれば、肌なじみ、塗布時の伸びがより向上し、30質量%以下であれば、べたつき感をより低減できる。
【0038】
皮膚化粧料に(C)成分として(c3)成分を配合する場合、皮膚化粧料中の(c1)成分と(c3)成分との質量比(c1/c3)は、0.09〜0.9が好ましく、0.2〜0.5がより好ましい。0.09以上であれば肌へのなじみが向上し、0.9以下であればべたつき感をより低減できる。
皮膚化粧料中の(c2)成分と(c3)成分との質量比(c2/c3)は、0.09〜0.9が好ましく、0.2〜0.5がより好ましい。0.09以上であれば肌へのなじみが向上し、0.9以下であればべたつき感をより低減できる。
皮膚化粧料中の(c3)成分に対する(c1)成分と(c2)成分との合計量の質量比((c1+c2)/c3)は、0.3〜1.2が好ましく、0.4〜0.7がより好ましい。0.3以上であれば肌へのなじみが向上し、1.2以下であればべたつき感をより低減できる。
【0039】
<(D)成分:水膨潤性粘土鉱物>
本発明の(D)成分は、水膨潤性粘土鉱物である。皮膚化粧料は、(D)成分を含有することで、べたつき感を低減すると共に、肌へのなじみ、しっとり感を向上できる。
(D)成分による上記効果付与のメカニズムは不明であるが、(D)成分は、抱水性が良好であり、かつ延展性に富むので、濡れた肌の上で、(c1)成分と共に抱水ベールを形成し、皮膚からの水分の蒸散を抑制すると共に、皮膚へ水を補給する働きをし、保湿効果を向上させると推定される。また、べたつき感を低減し、肌なじみのよさと伸びもよく、使用感を向上させる。さらに、(D)成分は、自身の肌付着性が高いだけでなく、油性成分等の保湿に有効な成分の肌への付着性が高めるので、タオルドライで拭き取った後の、(C)成分等の有効成分の肌残存率が向上し、保湿効果を向上させると推定される。
【0040】
「水膨潤性」とは、第15改定 日本薬局方に定められたベントナイトの試験方法を準用し、粘土鉱物2gの膨潤体積(cm)で表される膨潤力が、20cm/g以上であるものをいう。膨潤力20cm/g未満の粘土鉱物は、皮膚化粧料中での分散性が悪く、皮膚への塗布時にざらついたり、伸びが悪くなり、しっとり感を低下させるおそれがある。その理由は定かでないが、膨潤力20cm/2g未満の粘土鉱物は、保湿効果に寄与する抱水性が低いことに加え、肌への付着性が低いため、(D)成分が形成する抱水ベールの肌への付着性も低くなり、タオルドライで拭き取った後の抱水ベールの肌残存率が低いものと推察される。
【0041】
また、(D)成分は、カチオン化されていないものが好ましい。カチオン化されていない(D)成分は、水に対して膨潤しやすいためである。
【0042】
このような(D)成分としては、例えば、天然物、天然物の精製品、天然の膨潤性を改質したもの又は合成されたもの等が挙げられる。具体的には、上記膨潤力を有する天然又は合成されたモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライト、スチブンサイト等のスメクタイト族の粘土鉱物や、バーミキュライト、膨潤性合成フッ素雲母(Na型、Li型合成マイカ)等を用いることができる。また、上記粘土鉱物をイオン交換して膨潤力を向上させた高金属イオン置換粘土鉱物等を用いることができる。本発明に用いる上記膨潤力を有する(D)成分は、層間に水分子を水和して取り込む交換性のイオンを含有しており、膨潤性、吸着性、結合性、懸濁性、増粘性等の性質を有し、他の粘土鉱物とは異なった性質を示すものである。(D)成分としては、スメクタイト族、スメクタイト族のモンモリロナイトを主成分とするベントナイト等が好ましい。
(D)成分としては、ポーラゲル(アメリカンコロイド社製)、ラポナイト(日本シリカ工業株式会社製)、ベンゲル(豊順鉱業社製)、ルーセンタイト(コープケミカル株式会社製)、クニピア(クニミネ工業株式会社製)、ベンクレイ(水澤化学工業株式会社製)、ビーガム(バンダービルト社製)等の商品名で市販されているものを使用することができる。
これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0043】
(D)成分の平均粒径は、1〜5000nmが好ましく、1〜1000nmがより好ましく、1〜700nmがさらに好ましい。平均粒径が5000nm超であると、(D)成分の単位質量当たりの表面積が小さくなり、肌への接触面積が小さくなり付着性が低下するおそれがある。このため、しっとり感、べたつき低減効果をより発揮するためには、5000nm以下のものを用いることが好ましい。なお、(D)成分の平均粒径は、動的光散乱法により測定されるメディアン径(積算粒子量が50体積%になる粒子径)であり、測定機器:島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200で測定した値である。
【0044】
皮膚化粧料中の(D)成分の含有量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。0.01質量%以上であれば、しっとり感、肌なじみをより向上できると共に、べたつき感をより低減できる。5質量%以下であれば、肌の上での被膜感が少なくなり、しっとり感、塗布時の伸びがより向上する。
【0045】
皮膚化粧料中の各成分の質量比は、皮膚化粧料に求める性状等を勘案して決定でき、例えば、(A)成分と(D)成分との質量比(A/D)は、0.5〜2が好ましい。上記範囲内であれば、塗布時に垂れにくく、かつべたつきをより抑えられる。
皮膚化粧料中の(B)成分と(C)成分との質量比(B/C)は、0.1〜2が好ましい。上記範囲内であれば、ヌルヌルするのとべたつきとを抑えることができる。
皮膚化粧料中の(D)成分と(C)成分との質量比(D/C)は、0.01〜0.04が好ましい。上記範囲内であれば、さっぱり感としっとり感とを両立できる。
皮膚化粧料中の(B)成分と(E)成分との質量比(B/E)は、0.1〜0.5が好ましい。上記範囲内であれば、しっとり感を付与でき、かつ皮膚化粧料の粘度をさらに適度なものにできる。
【0046】
<(E)成分:水>
本発明の(E)成分は、水である。(E)成分は、特に限定されず、水道水、井水や、蒸留、イオン交換、ろ過又はこれらを組み合わせて処理した精製水等が挙げられる。
皮膚化粧料中の(E)成分の配合量は、(A)〜(D)成分の配合量や、用途等を勘案して決定できる。
【0047】
<任意成分>
皮膚化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分を1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせ、含有させることができる。任意成分としては、(C)成分以外の油性成分、乳化剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤、無機粉体、有機粉体等の水不溶性粉体、ビタミン類、アミノ酸類、抗炎症剤、紫外線吸収剤、冷感付与剤、酸化防止剤、着色剤、香料、制汗剤、殺菌剤、消臭剤、防腐剤、包接化合物香料、色素等が挙げられる。
【0048】
任意成分の内、(C)成分以外の油性成分(任意油性成分)は、例えば、(c2)成分及び(c3)成分の性質を有しない油脂類、ロウ類、炭化水素類、シリコーン油類、エステル類、高級脂肪酸類、高級アルコール、環状アルコール等が挙げられる。任意油性成分を用いる場合、皮膚化粧料中の任意油性成分の含有量は、(C)成分の含有量を勘案して決定でき、例えば、任意油性成分の含有量と(C)成分の含有量との合計が、好ましくは15〜45質量%、しっとり感の向上とべたつき感の低減の点から、より好ましくは20〜35質量%とされる。
【0049】
乳化剤としては、主に非イオン性界面活性剤が用いられる。非イオン性界面活性剤としては、HLB10〜16のものが好適に用いられ、肌なじみがよく、乾燥後のすべすべ感が高い点から、HLB11〜13のものがより好ましい。非イオン性界面活性剤のHLBが10未満又は16超であると、安定な乳化物を得ることができず、伸びや肌なじみが悪くなったり、すべすべ感が低下することがある。
【0050】
非イオン性界面活性剤は、目的に応じて選択することができ、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0051】
非イオン性界面活性剤としては、トリイソステアリン酸PEG−30グリセリル(HLB10)、トリイソステアリン酸PEG−40グリセリル(HLB11)、ステアリン酸ポリグリセリン−6(HLB12)、イソステアリン酸PEG−20グリセリル(HLB13)、PEG−50水添ヒマシ油(HLB13)、イソステアリン酸PEG−20ソルビタン(HLB15)、ステアリン酸PEG−30グリセリル(HLB15)、ステアリン酸PEG−40(HLB16)等が挙げられる。これらの中でも、肌なじみがよく、乾燥後のすべすべ感が高い点から、トリイソステアリン酸PEG−40グリセリル(HLB11)、イソステアリン酸PEG−20グリセリル(HLB13)が特に好ましい。
【0052】
このような非イオン性界面活性剤の市販品としては、例えば、イソステアリン酸PEG−20グリセリル(HLB13:EMALEXGWIS120EX、日本エマルジョン株式会社製)、トリイソステアリン酸PEG−40グリセリル(HLB11:EMALEXGWIS340EX、日本エマルジョン株式会社製)、トリイソステアリン酸PEG−30グリセリル(HLB10:EMALEXGWIS330EX、日本エマルジョン株式会社製)、ステアリン酸PEG−40(HLB16:EMALEX840、日本エマルジョン株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
なお、非イオン性界面活性剤のHLBは、有機概念図におけるIOB×10で示されるものである。
前記有機概念図におけるIOBとは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、即ち、「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。
前記有機概念図とは、藤田穆により提案されたものであり、その詳細は、「Pharmaceutical Bulletin」,1954,vol.2,2,p.163−173、「化学の領域」,1957,vol.11,10,p.719−725、「フレグランスジャーナル」,1981,vol.50,p.79−82等で説明されている。即ち、全ての有機化合物の根源をメタン(CH)とし、他の化合物は全てメタンの誘導体とみなして、その炭素数、置換基、変態部、環等にそれぞれ一定の数値を設定し、そのスコアを加算して有機性値、無機性値を求め、この値を有機性値をX軸、無機性値をY軸にとった図上にプロットしていくものである。この有機概念図は、「有機概念図−基礎と応用−」(甲田善生著、三共出版、1984)等にも示されている。
【0054】
皮膚化粧料中の非イオン性界面活性剤の含有量は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1質量%〜10質量%が好ましく、1.5質量%〜5質量%がより好ましい。非イオン性界面活性剤の含有量が、1質量%未満であると、伸びや肌なじみが悪くなったり、乾燥後のすべすべ感が低下することがあり、10質量%超であると、タオルドライ後のしっとり感や乾燥後のすべすべ感が低下することがある。
【0055】
皮膚化粧料中、(C)成分と、非イオン性界面活性剤を除く任意油性成分との合計量αと、非イオン性界面活性剤との質量βとの質量比は、安定な乳化物を得る観点から、α/β=1〜20が好ましく、3〜10がより好ましい。
【0056】
(製造方法)
本発明の皮膚化粧料の製造方法は、(A)成分と(B)成分とを混合して混合物を得る混合工程と、(D)成分と(E)成分の一部とを混合して分散液を得る分散工程と、混合物と分散液と(E)成分の残部とを混合して膨潤液を得る膨潤工程と、(C)成分を膨潤液に分散する乳化工程とを有するものである。
【0057】
<混合工程>
混合工程は、(A)成分と(B)成分の一部又は全部とを混合して混合物を得る工程である。本工程においては、(A)成分が(B)成分で膨潤される程度に均一に、(A)成分を(B)成分中に分散する。(A)成分と(B)成分とを予め混合することで、(A)成分を(B)成分で分散又は微膨潤させ、後述する乳化工程のような高い剪断力を受ける時間を短くして、(A)成分の粘度低下を防止できる。このため、過剰の(A)成分を用いることなく、皮膚化粧料の粘度を適切なものにできる。
【0058】
本工程において、(A)成分と(B)成分との混合比率は、(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、(A)/(B)比という)が0.1〜0.2であり、好ましくは0.1〜0.15である。0.1未満であると、(B)成分による(A)成分の膨潤が不十分となり、後述する製造方法の乳化工程において、膨潤が不十分な(A)成分の一部が油性成分中に分散されて、皮膚化粧料の粘度が低下すると共に、しっとり感が得られない。0.2超であると、後述する製造方法の乳化工程において、(A)成分が十分に膨潤し、混合装置の剪断力により切断されて低分子化し、皮膚化粧料の粘度が低下すると共に、しっとり感が得られない。
【0059】
混合工程においては、皮膚化粧料に配合する(A)成分の全量を用いることが好ましい。
また、混合工程において(B)成分の一部を用いた場合、(B)成分の残部を後述する膨潤工程又は乳化工程で添加することができる。(B)成分の残部を膨潤工程で添加する場合、予め(E)成分の残部と混合してもよいし、(D)成分、(E)成分と共に混合装置に投入してもよい。また、(B)成分の残部を乳化工程で添加する場合、予め膨潤液と混合してもよいし、(C)成分、膨潤液と共に混合装置に投入してもよい。
【0060】
本工程の混合は、従来公知の混合装置を用いることができ、例えば、プロペラ翼を備えたベッセル等のバッチ式混合装置や、インラインミキサー等の連続式混合装置が挙げられる。
混合温度は、特に限定されず、例えば、5〜70℃とされる。5℃未満であると(B)成分が増粘し分散しにくくなり、70℃超であると(B)成分の粘度が低くなり(A)成分が沈殿しやすくなるためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、(A)成分が(B)成分で十分に膨潤する時間とされる。
【0061】
<分散工程>
分散工程は、(D)成分と(E)成分の一部とを混合し、(D)成分を(E)成分に分散した分散液を調製する工程である。分散工程を設けることで、皮膚化粧料の製造中に(D)成分がダマになるのを防止できる。皮膚化粧料の製造中に、(D)成分のダマが生じると、このダマを分散するために高い剪断力をかけて長時間混合する必要がある。この際、(A)成分が存在していると、膨潤した(A)成分に高い剪断力が加わり、高分子鎖や高分子同士の構造が切断されることで十分に増粘されない場合がある。このため、本工程を設け、事前に(D)成分の分散液を調製することで、(A)成分への負荷をできるだけ低減し、皮膚化粧料の粘度を適切なものにできる。
【0062】
本工程において、(D)成分と(E)成分との混合比率は、(D)成分/(E)成分で表される質量比((D)/(E)比)が好ましくは0.01〜0.05、より好ましくは0.03〜0.04である。0.01未満であると、後述する膨潤工程において、水性成分を溶解する(E)成分が不足するおそれがあり、0.05超であると増粘し(D)成分を十分に分散できないおそれがある。
【0063】
本工程の混合は、混合工程と同様の混合装置を用いることができる。
本工程における混合温度は、特に限定されず、例えば、40〜80℃とされる。40℃未満であると膨潤させる際にまま粉が生成しやすく、80℃超であると溶媒の蒸発により気液界面で被膜を形成しやすいためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、(D)成分が(E)成分中に十分に分散する時間とされる。
【0064】
<膨潤工程>
膨潤工程は、混合工程で得られた混合物と、分散工程で得られた分散液と、(E)成分の残部とを混合し、(D)成分を(E)成分で膨潤する工程である。本工程により(D)成分を(E)成分で十分に膨潤することで、皮膚化粧料を垂れにくいものにでき、かつ塗布直後及びタオルドライ後のしっとり感を向上できる。
【0065】
本工程の混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。
本工程に用いる混合装置の例について、以下に図面を用いて説明する。図1は、混合装置の一例を示すバッチ式混合装置1の模式図である。バッチ式混合装置1は、撹拌槽10と、撹拌槽10の内面12を掻き取る略U字状のスクレーパー翼32に攪拌槽10の中心方向に突出する突出翼32が設けられた壁面掻取翼30と、攪拌槽10の略中心に上下方向に延びる攪拌軸22と、該攪拌軸22から内面12に向かって突設された攪拌翼20とで概略構成されている。
このバッチ式混合装置1においては、攪拌槽10内に混合物と分散液と(E)成分とを供給し、撹拌翼20及び壁面掻取翼30を回転させることで、供給された原料は、内面12と攪拌翼20との間で生じる剪断力を受けながら混合される。
このようなバッチ式混合装置としては、アジホモミキサー(株式会社エヌ・ピー・ラボ製)、ロボミクスホモミキサー(プライミクス株式会社製)、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)等が挙げられる。
【0066】
また、本工程には、図2に示すような連続式混合装置100を用いることができる。連続式混合装置100は、略円筒状のハウジング110と、攪拌翼122を供えるローター120と、ローター120をその回転軸回りに離間して覆うステーター130とで概略構成されている。
この連続式混合装置100においては、ローター120を回転させながら吸入口112からハウジング110内に、混合物と分散液と(E)成分とを混合した流体を供給することで、供給された流体は攪拌翼122とステーター130の内面132との間で生じる剪断力を受けながら混合され、排出口114から装置外へ排出される。
このような連続式混合装置としては、マイルダー(太平洋機工株式会社製)、ラインホモミキサー(プライミクス株式会社製)等が挙げられる。
【0067】
本工程における混合装置の運転条件は、特に限定されず、(D)成分を(E)成分で十分に膨潤できるように剪断速度等を調節する。
本工程における剪断速度は、20000〜40000sec−1が好ましく、25000〜35000sec−1がより好ましい。剪断速度が20000sec−1未満であると、(D)成分を十分に膨潤できないおそれがあり、剪断速度が40000sec−1超であると、(A)成分への負荷が増大し、皮膚化粧料の粘度を適切なものにできないおそれがある。
【0068】
剪断速度とは、混合装置の攪拌翼の先端速度をv(m/s)、該先端と混合装置の内面とのクリアランスをD(m)とした場合にv/D(sec−1)で算出される値である。
例えば、図1に示すバッチ式混合装置1における剪断速度は、攪拌翼20の先端24の先端速度と、先端24と攪拌槽10の内面12とのクリアランス(図1中のD1)とから算出できる。
また、図2に示す連続式混合装置100における剪断速度は、攪拌翼120の先端124の速度と、先端124とステーター130の内面132とのクリアランス(図2中のD2)とから算出できる。
なお、当該剪断速度は、混合装置の攪拌翼の回転速度又は攪拌翼と内面とのクリアランスの調節により調整することができる。
【0069】
また、本工程における循環回数は、5〜20が好ましく、10〜15がより好ましい。循環回数を5未満とすると、(D)成分の膨潤が不十分になるおそれがあり、20超としても(D)成分の膨潤度が飽和し、さらなる品質の向上が図れないためである。
【0070】
循環回数とは、内容物が撹拌羽根により受ける剪断回数を示すものである。循環回数は、バッチ式混合装置を用いる場合、下記(I)で規定されるものである。
【0071】
(I)本工程をバッチ式混合装置で行う場合、下記(i)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d×θ÷V ・・・(i)
(式(i)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、θ:攪拌時間(min)、V:内容液の体積(m))
【0072】
上記(I)において吐出流量係数Nqdは、攪拌翼の形式により定まる定数であり、吐出流量Qdに基づいて、下記(ア)式により算出することができる。
【0073】
Nqd=Qd/NR ・・・(ア)
[式(ア)中、Qd:吐出流量(m/min)、N:攪拌翼の回転数(rpm)、R:攪拌槽の内径(m)]
【0074】
Qdは、「粒子が翼端から吐出され、翼からの吐出流の流れに運ばれて再び翼端に吸い込まれる」あるいは「翼からの吐出流から、翼からの吐出流によって誘起される流れに移り、翼に戻らずに循環を繰り返した後、翼からの吐出流の流れに戻り翼に吸い込まれる流れ」であると定義できる。
ここで、Qdは、攪拌翼の剪断速度に応じ、公知の方法により測定できる(参考文献1:佐藤忠正,谷山巌,「攪拌槽における吐出循環流量」,社団法人化学工学会,化学工学,第29巻,第3号,1965年、参考文献2:創業70周年記念事業特別委員会編,「乳化・分散の理論と実際」,特殊機化工業株式会社,1997年4月17日)。
例えば、プロペラ翼、パドル翼、タービン翼、ディスプロ翼、ディスパー翼等、剪断速度5500sec−1未満の攪拌翼のQdは、図3に示す測定装置200を用いて測定することができる。
図3に示すように測定装置200は、攪拌槽202と、攪拌槽202内に設けられた攪拌翼230と、鏡240とを備えるものである。鏡240は、攪拌槽202の下方に、攪拌槽202の底面214に対し角度αの傾斜で設けられたものである。攪拌槽202は、略円筒形の水槽210と、水槽210の内周面に、開口部212から底面214に掛けて等間隔で設けられた2枚の邪魔板220とを備え、水槽210は、ガラス又は透明樹脂等、少なくとも水槽210内部を鏡240で視認できる材質のものである。攪拌翼230は、攪拌軸232と接続され、攪拌軸232は、図示されない動力と接続されている。
【0075】
測定装置200は、各構成部材が下記の条件を満たすものである。
d/R=0.25〜0.5、C/R=0.1〜0.8、W/R=0.1、α=45°
(dは攪拌翼の直径(m)、Cは攪拌翼の取付高さ(m)、Wは邪魔板の幅(m)、Rは攪拌槽の内径(m)、αは攪拌槽の底面に対するミラーの角度(°)である。)
【0076】
次に剪断速度が5500sec−1未満の攪拌翼のQdの測定方法について説明する。撹拌槽202内に粒子262を分散した内容液260を投入し、内容液260を攪拌翼230で攪拌した際、粒子262が測定時間Tの間に攪拌翼230を通過する回数mqを、矢印F方向で鏡240を介して目視でカウントする。そして、カウントした回数mqから、下記(イ)式により求めることができる(参考文献1のp.153〜158参照)。測定に用いられる粒子262は、球形型のポリプロピレン製粒子(球形3mm、比重1.1g/cm)であり、10個とする。内容液体は25℃、測定時間Tは10〜15分である。
【0077】
Qd=mqV/T ・・・(イ)
(式(イ)中、mqは通過回数、Vは内容液260の体積(m)、Tは測定時間(min)を表す。)
【0078】
また、例えば、T.K.ホモミクサーMARK II型(プライミクス株式会社製)、ウルトラタラックス(IKA社製)、シャーフロー、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)、PVT−1−20型(みずほ工業製)等、剪断速度5500sec−1以上の攪拌翼のQdは、図4に示す測定装置300を用いて測定することができる。
図4に示すように測定装置300は、攪拌槽301と、攪拌槽301内に設けられた攪拌部304とを備えるものであり、攪拌部304は、タービン翼である攪拌翼302と、邪魔板の役目をするステーター303とで構成されている。攪拌翼302は、攪拌軸307と接続され、攪拌軸307は、図示されない動力と接続されている。攪拌槽301は、水槽305と、攪拌部304の上方に設けられた転流板306とで構成され、水槽305は、ガラス又は透明樹脂等、少なくとも水槽305内部を視認できる材質とされている。
測定装置300は、各構成部材が下記の条件を満たすものである。
d/R=0.2〜0.3、z/Z=0.5〜0.7、l/L=0.5〜0.7
(dは攪拌翼の直径(m)、Rは攪拌槽の内径(m)、z/Zは攪拌翼の取付位置(m/m)、l/Lは転流板の取付位置(m/m)である。)
【0079】
次に剪断速度が5500sec−1以上の攪拌翼のQdの測定方法について説明する。撹拌槽301内に、粒子262を分散した内容液260を投入し、内容液260を攪拌翼302で攪拌する。この際、内容液260は、水面が転流板306の上方となるようにする。攪拌した際、粒子262がステーター303内に入ってから一循環して、再度、ステーター303内に戻るまでを循環1回とする。この循環1回の時間を1000回測定し、1000回分の測定値により循環時間分布を作成する。分布は、横軸を時間t[sec]とし、縦軸をg(t)=[ある時間帯の回数/全回数]とし、プロットして作成する。この循環時間分布を基に、下記(ウ)式により、Qdを求めることができる(参考文献2のp.13〜15参照)。
【0080】
Qd=V/T ・・・(ウ)
式(ウ)中、Vは内容液260の体積(m)、Tは混合時間(min)を表す。
なお、Tは、下記(エ)式により、求めることができる。
【0081】
=T+T ・・・(エ)
式(エ)中、Tは、g(t)分布のトップピークにあたるt軸をtとしたとき、t=0〜tまでの混合時間の平均を表す。Tは、g(t)分布トップピークにあたるt軸をtとしたとき、t=t〜∞までの時間の平均を表す。t=0〜t区間におけるg(t)、t=t〜∞におけるg(t)は、g(t)軸のプロットを基に、近似式として求めることができる。
【0082】
剪断速度が5500sec−1未満である攪拌翼、剪断速度が5500sec−1以上である攪拌翼共に、そのNqdは、回転数、つまり攪拌レイノルズ数により異なる。Nqdに対する攪拌レイノルズ数の関係は、攪拌レイノルズ数が大きくなると、Nqdも大きな値をとる。攪拌レイノルズ数が大きい乱流領域では、Nqdが一定値となるので、攪拌レイノルズ数を大きくしたときのNqdの値が10%以内であるときを確認し、その値を攪拌翼のNqdとして用いる。
【0083】
例えば、バッチ式混合装置1において、攪拌翼20の直径dは、攪拌翼20の先端24が描く円形の直径(図1中のd1)である。
【0084】
また、循環回数は、本工程をT.K.パイプラインホモミクサーM型(プライミクス株式会社製)等の連続式混合装置で行う場合、下記(II)で規定されるものである。
【0085】
(II)下記(ii)式により求められる値。
循環回数=Nqd×r×d÷F ・・・(ii)
[式(ii)中、Nqd:吐出流量係数、r:攪拌翼の回転数(rpm)、d:攪拌翼の直径(m)、F:混合装置へ供給される流体の流量(m/min)]
上記(II)において、Nqdは、(I)の場合と同様である。
【0086】
例えば、連続式混合装置100において、攪拌翼122の直径dは、攪拌翼122の先端124が描く円の直径(図2中のd2)である。
【0087】
本工程における混合温度は、特に限定されず、例えば、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。40℃未満であると(A)成分の分子鎖が剪断により切断され減粘しやすく、80℃超であると(E)成分の蒸発量が増大したり、この後の冷却時間が長くなりすぎるためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、(E)成分で(D)成分を十分に膨潤できる時間とされる。
【0088】
加えて、皮膚化粧料に水溶性の任意成分(例えば、水溶性の色素、香料、界面活性剤等)を配合する場合、予め(E)成分の残部に水溶性の任意成分を溶解する(溶解操作)ことが好ましい。
溶解操作に用いる混合装置は、従来公知の混合装置を用いることができ、例えば、プロペラ翼を備えたベッセル、ニーダー等のバッチ式混合装置や、インラインミキサー等の連続式混合装置が挙げられる。また、上述した膨潤工程で用いる混合装置と同様のものを用いてもよい。
【0089】
本操作における混合温度は、水溶性の任意成分の種類等に応じて決定でき、例えば、10〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。10℃未満であると水溶性の任意成分が十分に溶解しないおそれがあり、40℃超であると水溶性の任意成分が変性するおそれがあるためである。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、水溶性の任意成分が(E)成分中に十分に溶解する時間とされる。
【0090】
<乳化工程>
乳化工程は、膨潤操作で得られた膨潤液に(C)成分を分散し、水中油型の乳化物を得る工程である。本工程では、混合装置内に膨潤液と(C)成分とを投入し、次いで、これらを攪拌混合する。
本工程に用いる混合装置は、膨潤工程で用いる混合装置と同じである。このような高い剪断力を与える混合装置を用いることで、乳化状態の安定した乳化物を得ることができる。
【0091】
本工程における混合装置の運転条件は、特に限定されないが、例えば、水中油型の乳化物中の油相の粒子の平均粒径が、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは250nm以下となるように剪断速度等を調節する。なお、平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、株式会社堀場製作所製)を用い、25℃、相対屈折率1.08にて、体積基準のメディアン径(d50)により測定される値である。
【0092】
本工程における剪断速度は、20000〜40000sec−1であり、好ましくは25000〜35000sec−1である。剪断速度が20000sec−1未満であると、乳化が不十分になるおそれがあり、剪断速度が40000sec−1超であると、(C)成分の分散性向上の効果が飽和すると共に、(A)成分への負荷が増大し、皮膚化粧料の粘度を適切なものにできないおそれがある。
【0093】
本工程における循環回数は、4〜16が好ましく、6〜10がより好ましい。循環回数を4未満とすると、乳化が不十分になるおそれがあり、16超としても(D)成分の膨潤度が飽和し、さらなる品質の向上が図れないためである。
【0094】
本工程における混合温度は、(C)成分の種類等を勘案して決定でき、例えば、40〜80℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。40℃未満であると(A)成分が切断されて減粘しやすく、皮膚化粧料を任意の粘度に調節しにくくなり、80℃超であると、乳化粒子径が粗大化し経時での分散安定性が低下する。
また、混合時間は、混合装置の能力や容積等を勘案し、十分に乳化できる時間とされる。
【0095】
なお、皮膚化粧料に任意油性成分を配合する場合には、予め(C)成分と混合して油性成分混合物とし、この油性成分混合物を混合装置内に投入するのが好ましい。
【0096】
<冷却工程>
本発明の粘土鉱物分散液の製造方法には、乳化工程の後段に冷却工程を設けることが好ましい。この冷却工程は、乳化工程で得られた乳化物を任意の温度まで冷却するものである。
冷却方法は、特に限定されず、例えば、攪拌しながら冷却する方法や、室温で静置する方法や、熱交換器に通流させる方法が挙げられ、中でも、攪拌しながら冷却する方法(攪拌冷却法)が好ましい。攪拌冷却法を用いることで、皮膚化粧料を保管した際、乳化が壊れて分離することを防止できる。加えて、乳化状態を安定できるため、べたつき感を防止し、しっとり感を向上できる。
攪拌冷却法における攪拌方法は、特に限定されないが、例えば、乳化工程で用いた混合装置を用い、好ましくは剪断速度20000〜40000sec−1、より好ましくは25000〜35000sec−1で攪拌する。循環回数は、4〜16が好ましく、6〜10がより好ましい。
このように、剪断力を与えながら冷却することで、乳化粒子の合一を抑制し、経時の分散安定性を高めることができる。
また、冷却速度は、0.1〜3℃/分とすることが好ましい。この範囲内であれば、水中油型の乳化状態が破壊されることなく、効率的に冷却できる。
【0097】
こうして得られた乳化物は、そのままで、あるいは香料、色素等の任意成分が混合され、皮膚化粧料とされる。
【0098】
上述の通り、(A)成分と(B)成分とを特定の比率で混合する混合工程を設けることで、良好なしっとり感を与え、かつ、濡れた肌に塗布した際に垂れにくく、塗布しやすい皮膚化粧料が得られる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
(使用原料)
<(A)成分>
・キサンタンガム:エコーガムT(商品名)、大日本住友製薬株式会社製
・カルボキシメチルセルロースナトリウム:サンローズ F10LC(商品名)、日本製紙ケミカル株式会社製
・カルボキシビニルポリマー:カーボポール940(商品名)、BFグットリッチ社製
【0100】
<(B)成分>
・1,3−ブチレングリコール:ダイセル化学工業株式会社製
・グリセリン:濃グリセリン、阪本薬品工業株式会社製
・ソルビトール:ソルビット、東和化成工業株式会社製
【0101】
<(C)成分>
≪(c1)成分≫
・フィトステリルイソステアレート:タマ生化学株式会社製
≪(c2)成分≫
・ワセリン:サンホワイトP−200(商品名)、日興リカ株式会社製
≪(c3)成分≫
・流動パラフィン:流動パラフィン350−S(商品名)、三光化学工業株式会社製
【0102】
<(D)成分>
・ベントナイト:クニピアF(商品名)、クニミネ工業株式会社製
【0103】
<任意成分>
・イソステアリン酸:イソステアリン酸EX(商品名)、高級アルコール工業株式会社製
・モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.):MYS−40V(商品名)、日光サーファクタント工業株式会社製
・トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(40E.O.):GWIS−340EX(商品名)、日本エマルジョン株式会社製
・セトステアリルアルコール:コノール30CK(商品名)、新日本理化株式会社製
・クエン酸:クエン酸結晶L(商品名)、扶桑化学工業株式会社製
・95%エタノール:純度95質量%、日本アルコール産業株式会社製
・セチルアルコール:カルコール6098(商品名)、花王株式会社製
・ジペンタエリトリット長鎖脂肪酸エステル:ユニスターH676(商品名)、日油株式会社製
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(30E.O.):エマレックスHC−30(商品名)、日本エマルジョン株式会社製
・トリエタノールアミン:トリエタノールアミンCare(商品名)、BASFジャパン株式会社製
【0104】
<共通成分>
表1に示す組成の共通成分を用いた。表1中の共通成分の総量(27.015質量%)は、皮膚化粧料中の含有量である。なお、表2〜3中の共通成分の含有量は、混合工程で用いた(B)成分を除いた量を示す。
【0105】
【表1】

【0106】
(評価方法)
<垂れにくさの評価>
被験者男女20名が、石鹸で洗浄した前腕を40℃の湯に5分間浸漬した後に、濡れた状態の前腕内側部全体に各例の皮膚化粧料0.4gを手で塗り伸ばした。塗り伸ばした時の垂れにくさについて、下記評価基準に基づき官能評価を行い、被験者男女20名の評価点の平均点を算出した。
【0107】
≪評価基準≫
5点:非常に垂れにくい
4点:垂れにくい
3点:やや垂れにくい
2点:垂れやすい
1点:非常に垂れやすい
【0108】
<伸びやすさの評価>
被験者男女20名が、石鹸で洗浄した前腕を40℃の湯に5分間浸漬した後に、濡れた状態の前腕内側部全体に各例の皮膚化粧料0.4gを手で塗り伸ばした。塗り伸ばした時の伸びのよさについて、下記評価基準に基づき官能評価を行い、被験者男女20名の評価点の平均点を算出した。
【0109】
≪評価基準≫
5点:非常によく伸びる
4点:よく伸びる
3点:やや伸びる
2点:伸びにくい
1点:非常に伸びやすい
【0110】
<しっとり感の評価>
被験者男女20名が、石鹸で洗浄した前腕を40℃の湯に5分間浸漬した後に、濡れた状態の前腕内側部全体に各例の皮膚化粧料0.4gを手で塗り伸ばし、タオルで拭いた。タオルで拭いた直後の前腕内側部のしっとり感、及びタオルドライした乾燥後1時間後の肌のしっとり感について、下記評価基準に基づき官能評価を行い、被験者男女20名の評価点の平均点を算出した。
【0111】
≪しっとり感≫
5点:非常にしっとりする
4点:しっとりする
3点:ややしっとりする
2点:あまりしっとりしない
1点:しっとりしない
【0112】
(実施例1〜12、比較例4〜5)
表2〜3の組成に従い、以下の手順で各例の皮膚化粧料を製造した。(A)成分及び(B)成分を25℃に加温しつつ、ビーカー中でプロペラ翼により、全体が流動する程度の攪拌回転数で混合し、混合物を得た(混合工程)。(D)成分0.5質量%相当量及び(E)成分13.5質量%相当量をビーカーに投入し、60℃に加温しつつプロペラ翼で30分間攪拌して分散液を得た(分散工程)。
図5に示す混合装置400と同様の混合装置(PVT−1−20型、みずほ工業製)に、共通成分中の水性成分と(B)成分の残部と(E)成分の残部とを投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌し、60℃に加温した。次いで、混合物と分散液とを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌して、膨潤液とした(膨潤工程)。
【0113】
図5の混合装置400は、撹拌槽410と、壁面掻取翼430と、中央翼420と、ホモジナイザーである攪拌部440と、ジャケット部450とで概略構成されている。壁面掻取翼430は、略U字状のアンカー翼431と、アンカー翼431の外側に複数設けられ、攪拌槽410の内面を掻き取る掻取板433と、アンカー翼431から攪拌槽410の中心方向に突出するように設けられた突出翼432とで概略構成され、中央翼420は、攪拌槽410の略中心に上下方向に延びる攪拌軸422から攪拌槽410の内面に向かって突設されたものである。攪拌部440は、攪拌軸422の下端に設けられ、タービン翼である攪拌翼444と、攪拌翼444をその回転軸回りに離間して覆うステーター442とで概略構成されている。ジャケット部450は、攪拌槽410の外面に設けられたものであり、内部に熱媒を通流させて、攪拌槽410内を任意の温度に調節するものである。
この混合装置400は、壁面掻取翼430と、中央翼420との回転により、攪拌槽410内の被混合物を流動させると共に、攪拌部440により被混合物に剪断力を与えるものである。
図中、符号D3は、攪拌翼444の先端とステーター442の内面とのクリアランスを表わし、符合d3は、攪拌翼444の直径を表わす。
なお、本実施例に用いた混合装置(PVT−1−20型、みずほ工業製)は、図5中のD3=0.5mm、d3=48mm、吐出流量係数(Nqd)=0.1のものである。
【0114】
(C)成分及び共通成分中の油性成分を70℃で混合したものを、膨潤液に添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し、各例の皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0115】
(比較例1)
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。
(C)成分を除く各成分を混合装置(PVT−1−20型)に投入し、60℃に加温し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌して水相とした。70℃に加温した(C)成分を、前記の水相に添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0116】
(比較例2)
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。混合装置(PVT−1−20型)に(B)成分及び(E)成分を投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌した後、60℃に加温して水相とした。この水相に、70℃に加温した(C)成分を添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0117】
(比較例3)
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。混合装置(PVT−1−20型)に60℃の(E)成分13.5質量%相当量と、(A)成分と、共通成分中の水性成分とを投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌した後、60℃に加温した。次いで、(B)成分と、(E)成分の残部と、共通成分中の水性成分とを添加して水相とした。この水相に、70℃に加温した(C)成分と共通成分中の油性成分とを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0118】
(比較例6)
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。混合装置(PVT−1−20型)に、(A)成分と、(B)成分と、(E)成分と、共通成分中の水性成分とを投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌した後、60℃に加温して、水相とした。次いで、(C)成分と共通成分中の油性成分とを混合し、60℃に加温して混合油性成分とした。水相に混合油性成分と(D)成分とを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化して16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0119】
(比較例7)
表3の組成に従い、以下の手順で皮膚化粧料を製造した。混合装置(PVT−1−20型)に、(B)成分と(E)成分とを投入し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpmで5分間攪拌した後、75℃に加温した。これに予め75℃にした(C)成分と、トリエタノールアミンを除くその他任意成分とを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、表中の剪断速度及び循環回数で攪拌し、乳化した。さらに(A)成分とトリエタノールアミンとを添加し、壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1、循環回数=20で攪拌し16kgの乳化物を得た(乳化工程)。得られた乳化物を壁面掻取翼=51rpm、中央翼=55rpm、剪断速度=30000sec−1で攪拌しながら、ジャケット部に20〜30℃の水道水を流して30℃まで冷却し皮膚化粧料とした。
得られた皮膚化粧料について、垂れにくさ、伸びやすさ及びしっとり感の評価と粘度の測定を行い、その結果を表中に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
表2〜3に示すように、本発明を適用した実施例1〜12は、垂れにくさの評価が3.1以上、しっとり感の評価が塗布直後で3.9以上、塗布1時間後で3.5以上であった。加えて、実施例1〜12は、伸びやすさの評価が3.1以上で、良好な結果であった。
一方、各成分を一括で混合して水相とし、この水相に(C)成分の添加した比較例1は、垂れにくさの評価が3.2、伸びやすさの評価が4.5であったものの、塗布直後のしっとり感の評価が3.3、塗布1時間後のしっとり感の評価が2.3であった。また、混合工程を設けていない比較例6は、実施例1と組成が同じであるものの、垂れにくさの評価が2.5、しっとり感の評価が塗布直後で3.0、塗布1時間後で2.5であった。また、比較例6は、伸びやすさの評価が2.8であり、伸びにくいものであった。
以上の結果から、混合工程を設けることで、垂れにくく、かつしっとり感の良好な皮膚化粧料を得られることが判った。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:水溶性高分子化合物と、(B)成分:多価アルコールの混合物と、(C)成分:下記(c1)成分及び(c2)成分を含有する油性成分と、(D)成分:水膨潤性粘土鉱物と、(E)成分:水とを含有する水中油型の皮膚化粧料の製造方法であって、
前記(A)成分と、前記(B)成分とを混合して混合物を得る混合工程と、
前記(D)成分と、前記(E)成分の一部とを混合して分散液を得る分散工程と、
前記混合物と、前記分散液と、前記(E)成分の残部とを混合して膨潤液を得る膨潤工程と、
前記(C)成分を前記膨潤液に分散する乳化工程とを有し、
前記混合工程では、前記(A)成分と前記(B)成分とを(A)成分/(B)成分=0.1〜0.2(質量比)で混合することを特徴とする水中油型の皮膚化粧料の製造方法。
(c1)成分:フィトステアリン酸エステル
(c2)成分:25℃でペースト状の非極性油
【請求項2】
前記(C)成分は、さらに下記(c3)成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の水中油型の皮膚化粧料の製造方法。
(c3)成分:(c1)成分を除く、25℃で液状の油

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−62265(P2012−62265A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206680(P2010−206680)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】