説明

水中清掃ロボット

【課題】イガイ等の着生生物の清掃作業に際し、清掃作業の高効率化を図ると共に、長距離清掃にも適合させる。
【解決手段】水路の壁面に着生している着生生物を掻き取る掻取り装置3と、該掻取り装置3によって掻き取られた着生生物を吸引する吸引口4と、前記壁面に接しながら移動する移動手段8を備えた水中清掃ロボットである。前記吸引口4に連通している破砕装置格納16内に吸引口4から吸引された着生生物を破砕する破砕装置7を設け、かつ、該破砕装置7によって破砕された着生生物の破片を前記水路内に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所、或いは原子力発電所における取水路や放水路などの水路の壁面に着生しているムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物を除去するための水中清掃ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電所、或いは原子力発電所において、冷却用の取水を停止することなく、水中清掃ロボットを用いて取水路などの壁面に着生しているムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物を除去することが提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照。)。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されている水中清掃ロボットは、体内に回収かごを備えるので、この回収かごが回収した着生生物によって一杯になると、回収した着生生物を陸上に廃棄する必要があるために、一旦、陸上に戻り、陸上で回収かごから回収した着生生物を取り出した後、再度、清掃作業地点に戻って着生生物を除去する清掃作業を繰り返し行っているので、清掃作業時間が回収かごの容量で規定されてしまい、設計時点で想定したよりも着生生物の回収量が多い場合には、回収した着生生物を回収かごから取り出す着生生物排出作業や、水中清掃ロボットの往復走行などの時間が想定よりも増大し、作業時間に占める清掃時間の割合が減少するという問題があった。
【0004】
また、特許文献2に記載されている水中清掃ロボットは、清掃ロボットにバキュームホースを接続し、陸上に設置したバキュームポンプによって回収した着生生物を陸上に回収するようにしているが、バキュームポンプの能力などの制約があり、長距離を移動する清掃には適さないという問題があった。
【特許文献1】特開平10−7085号公報
【特許文献2】実開平7−25981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、着生生物の清掃作業に際して、清掃作業の高効率化を図ると共に、長距離の清掃にも適合する水中清掃ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の発明に係る水中清掃ロボットは、水路の壁面に着生している着生生物を掻き取る掻取り装置と、該掻取り装置によって掻き取られた着生生物を吸引する吸引口と、前記壁面に接しながら移動する移動手段を備えた水中清掃ロボットにおいて、前記吸引口に連通している破砕装置格納部内に吸引口から吸引された着生生物を破砕する破砕装置を設け、かつ、該破砕装置によって破砕された着生生物の破片を前記水路内に排出することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の水中清掃ロボットにおいて、前記破砕装置を、前段に位置する圧壊用回転ドラムと、該圧壊用回転ドラムの後段に位置する剪断用回転ドラムにより構成することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の水中清掃ロボットにおいて、前記圧壊用回転ドラムの回転ドラム間の間隔Lを、前記剪断用回転ドラムの周囲に設けた剪断刃の高さHの2倍〜4倍とすることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の水中清掃ロボットにおいて、前記破砕装置格納部の後部壁に無数の孔を設け、かつ、この孔に内接する内接円の直径を5mm〜15mmの範囲とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記の如く、請求項1に記載の発明に係る水中清掃ロボットは、水路の壁面に着生している着生生物を掻き取る掻取り装置と、該掻取り装置によって掻き取られた着生生物を吸引する吸引口と、前記壁面に接しながら移動する移動手段を備えた水中清掃ロボットにおいて、前記吸引口に連通している破砕装置格納部内に吸引口から吸引された着生生物を破砕する破砕装置を設け、かつ、該破砕装置によって破砕された着生生物の破片を前記水路内に排出するので、水路の壁面に着生しているムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物の除去作業に際して、水路内の清掃作業現場と、回収した着生生物を廃棄する陸上との間を、従来のように、頻繁に往復する必要が無くなった。
【0011】
従って、水路の壁面に着生しているムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物の除去作業に専念することができるので、水路の壁面を効率的に、かつ、速やかに清掃することができるようになった。また、水中清掃ロボットから水路内に排出された細かな着生生物の破片は、水路内の水流によって流され、火力発電所や原子力発電所における冷却器などを経由して外海に流出するので、水路内に堆積する虞れが無い。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記破砕装置を、前段に位置する圧壊用回転ドラムと、該圧壊用回転ドラムの後段に位置する剪断用回転ドラムにより構成するので、掻取り装置によって掻き取られたムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物の固まりを前段の圧壊用回転ドラムによってバラバラにばらしつつ、大型の個体については、後段の剪断用回転ドラムによって粉砕可能な大きさ(例えば、15mm以下)に破砕することができ、その上、前段の圧壊用回転ドラムによってバラバラにばらされた着生生物や、所望の大きさ(例えば、15mm以下)に粉砕された着生生物の破片を後段の剪断用回転ドラムによって微細な大きさ(例えば、3mm〜5mm程度)に速やかに、かつ、効率的に破砕することができるようになった。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記圧壊用回転ドラムの回転ドラム間の間隔Lを、前記剪断用回転ドラムの周囲に設けた剪断刃の高さHの2倍〜4倍とするので、掻取り装置によって掻き取られたムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物の固まりを前記圧壊用回転ドラムによってバラバラにばらしつつ、大型の個体については、後段の剪断用回転ドラムによって粉砕可能な大きさ(例えば、15mm以下)に破砕することが可能になった。
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記破砕装置格納部の後部壁に無数の孔を設け、かつ、この孔に内接する内接円の直径を5mm〜15mmの範囲とするので、この孔径よりも大きな破砕片がロボット本体の外方に排出されることが無くなる。このため、火力発電所や原子力発電所における冷却器などが目詰まりするような事態を未然に回避することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1に示すように、水中清掃ロボット1は、ロボット本体2、掻取り装置3、吸引口4、排出路5、吸引ポンプ6、破砕装置7、移動車輪8、垂直スラスタ9、横スラスタ10、水平スラスタ11などを備え、その浮力は、海水中で浮力と重量とが釣り合う所謂中性浮力となっている。また、この水中清掃ロボット1は、船首部に接続した中性浮力式テザーケーブル12を介して電力の受給や制御信号の送受信などを行うようになっている。
【0016】
上記水中清掃ロボット1は、清掃時に、上記垂直スラスタ9を駆動して移動車輪8を水路の壁面に押しつけるようになっている。また、水中清掃ロボット1の横移動には、水路の壁面に接している移動車輪8と横スラスタ10を併用するが、単独でも横移動可能である。また、前後方向の移動には、ウインチによるテザーケーブル12の巻き取り及び繰り出し、水路の壁面に接している移動車輪8および水平スラスタ10を併用するが、単独でも前後方向の移動が可能である。
【0017】
ロボット本体2は、その底部側に掻取り装置3を設けている。この掻取り装置3は、2台の懸架式電動回転カッター13,13により構成されている。この懸架式電動回転カッター13は、通常、実線の位置に待機又は後退しているが、清掃作業時には、二点鎖線の位置に前進又は進出し、放射状に設けた複数のカッター刃14によって取水路や放水路などの水路の壁面100に着性しているムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物(図示せず)を掻き取るようになっている。2台の懸架式電動回転カッター13,13は、図2に示すように、横方向に隣接して設けられている。また、この2台の懸架式電動回転カッター13,13は、中空状の掻取り装置格納部15内に格納されている。
【0018】
図2に示すように、ロボット本体2は、その底部に吸引口4を備えている。この吸引口4は、横方向に隣接している2台の懸架式電動回転カッター13,13を囲んで設けられ、上述した掻取り装置格納部15と連通するようになっている。この掻取り装置格納部15の後方には、当該掻取り装置格納部15と連通する中空状の破砕装置格納部16を設けている。
【0019】
この破砕装置格納部16は、その中に吸引口4から吸引した着生生物を破砕する破砕装置7を設けている。この破砕装置7は、前段に位置する圧壊装置20と、この圧壊装置20の後段に位置する剪断装置30により構成されている。
【0020】
圧壊装置20は、図3(a)に示すように、外周面が平滑な一組の円筒ドラム21,21によって構成されている。その際、隣接する二つの円筒ドラム21,21の間の隙間間隔Lは、後述する剪断用回転ドラム31の周囲に設けた剪断刃32の高さH(図6(a)参照。)の2倍〜4倍に設定され、掻取り装置3によって掻き取られたムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物の固まりをバラバラにばらしつつ、大型の着生生物については、後段に位置する剪断用回転ドラム31によって粉砕可能な大きさ(例えば、15mm以下)に破砕するようになっている。
【0021】
ここで、隣接する二つの円筒ドラム21,21の間の隙間間隔Lが、剪断用回転ドラム31の周囲に設けた剪断刃32の高さHの2倍未満の場合には、圧壊力が大になるために大馬力のギヤモータが必要になり、これとは反対に、隣接する二つの円筒ドラム21,21の間の隙間間隔Lが、剪断用回転ドラム31の周囲に設けた剪断刃32の高さHの4倍を超える場合には、ムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物の固まりをバラバラにばらすことが難しくなる。
【0022】
この圧壊装置20は、一方の円筒ドラム21の上端に駆動歯車22を備えると共に、他方の円筒ドラム21の上端に前記駆動歯車22と噛合する従動歯車23を備え、ギヤモータ24の作動によって一方の円筒ドラム21が反時計方向に回転し、他方の円筒ドラム21が時計方向に回転するようになっている(図3(b)参照。)。
【0023】
ここで、圧壊装置20としては、既に説明した一組の円筒ドラム21,21のほか、周方向に多数のV溝25を設けた一組の横溝ドラム26(図4(a)参照。)、或いは、外周面に多数の突起27を設けた一組の突起付きドラム28(図5(a)参照。)などを適用することができる。なお、この突起付きドラム28は、突起27をドラム本体28aの周方向に等間隔に設けると共に、ドラム本体29の軸心方向に半ピッチずつピッチをずらして配置している。
【0024】
他方、剪断装置30は、図6(a)に示すように、一組の剪断用回転ドラム31,31から構成されている。その上、ドラム本体33の外周面に多段に設けたフランジ状の剪断刃32どうしが互いに噛み合うようになっている。
【0025】
この剪断装置30は、一方の剪断用回転ドラム31の上端に駆動歯車34を備えると共に、他方の剪断用回転ドラム31の上端に前記駆動歯車34と噛合する従動歯車35を備え、ギヤモータ36の作動によって一方の剪断用回転ドラム31が反時計方向に回転し、他方の剪断用回転ドラム31が時計方向に回転するようになっている(図6(b)参照。)。
【0026】
ここで、剪断装置30としては、図7(a)に示すように、一対の剪断用回転ドラム41,41の間に櫛形状の固定刃44を設けたものも適用することができる。この剪断装置30は、櫛形状の固定刃44に設けた凹形の剪断刃45に対応する凸形の剪断刃42をドラム本体43の外周面に放射状に設けたものである。
【0027】
なお、圧壊装置20における隙間間隔Lと剪断装置30における剪断刃の高さHとの関係は、各実施態様において共用される種類のものである。
【0028】
図1に戻って説明すると、破砕装置格納部16の後方に排出路5を接続すると共に、排出路5の中に吸引ポンプ6を設けている。この破砕装置格納部16は、排出路5が接続している後部壁16aの開口部分に金網や多孔板18を設けて規定外の着生生物や、その破片などが外部に流出しないようになっている。金網や多孔板18の孔の大きさとしては、この孔に内接する内接円の直径が5mm〜15mmの範囲内にあることが望ましい。
【0029】
次に、上記破砕装置7の作動状況について説明する。
掻取り装置3によって掻き取られたムラサキイガイやアカフジツボなどの着生生物の固まりaが、図9に示すように、圧壊装置20に達すると、圧壊装置20を構成している一組の円筒ドラム21,21によってバラバラにばらされる。その際、圧壊装置20を構成している一組の円筒ドラム21,21の隙間間隔Lよりも大きな大型の着生生物(図示せず)についても、圧壊装置20を構成している一組の円筒ドラム21,21によって粉砕され、細かな破片(例えば、15mm以下)となる。
【0030】
上記の如く、圧壊装置20によってバラバラにばらされた小型の着生生物bや着生生物の破片(図示せず)は、剪断装置30を構成している一組の剪断用回転ドラム31,31によって粉砕され、微細な破片(例えば、3mm〜5mm)cとなる。これらの破片cは、破砕装置格納ボックス16の後部壁16aに設けた多孔板18の無数の孔19を通過した後、排出路5に設けた吸引ポンプ6によって水中清掃ロボット1から図示しない水路内に放出される。
【0031】
なお、着生生物やその破片が破砕装置格納部16内に溜まった場合は、剪断用回転ドラム31,31が矢印の方向に回転しているために、破砕装置格納ボックス16の側壁部16bに沿って剪断用回転ドラム31,31の前方に繰り出され、再度、剪断用回転ドラム31,31によって粉砕される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る水中清掃ロボットの縦断面図である。
【図2】本発明に係る水中清掃ロボットの一部断面を含む平面図である。
【図3】(a)圧壊装置の正面図、(b)圧壊装置の底面図である。
【図4】(a)圧壊装置の正面図、(b)圧壊装置の底面図である。
【図5】(a)圧壊装置の正面図、(b)圧壊装置の底面図である。
【図6】(a)剪断装置の正面図、(b)剪断装置の底面図である。
【図7】(a)剪断装置の正面図、(b)剪断装置の底面図である。
【図8】図7の符号Aの部分の拡大図である。
【図9】破砕装置の作用説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 水中清掃ロボット
3 掻取り装置
4 吸引口
7 破砕装置
8 移動手段
16 破砕装置格納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路の壁面に着生している着生生物を掻き取る掻取り装置と、該掻取り装置によって掻き取られた着生生物を吸引する吸引口と、前記壁面に接しながら移動する移動手段を備えた水中清掃ロボットにおいて、前記吸引口に連通している破砕装置格納部内に吸引口から吸引された着生生物を破砕する破砕装置を設け、かつ、該破砕装置によって破砕された着生生物の破片を前記水路内に排出することを特徴とする水中清掃ロボット。
【請求項2】
前記破砕装置を、前段に位置する圧壊用回転ドラムと、該圧壊用回転ドラムの後段に位置する剪断用回転ドラムにより構成することを特徴とする請求項1記載の水中清掃ロボット。
【請求項3】
前記圧壊用回転ドラムの回転ドラム間の間隔Lを、前記剪断用回転ドラムの周囲に設けた剪断刃の高さHの2倍〜4倍とすることを特徴とする請求項2記載の水中清掃ロボット。
【請求項4】
前記破砕装置格納部の後部壁に無数の孔を設け、かつ、この孔に内接する内接円の直径を5mm〜15mmの範囲とすることを特徴とする請求項1記載の水中清掃ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−18745(P2008−18745A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189609(P2006−189609)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】