説明

水中移動型検査装置及び水中検査設備

【課題】 海底構造物等の検査対象物が航走体の質量に基づく力を受けて損傷することを防止できるようにすると共に、検査対象物の検査を含む各種作業の質の向上を図ること。
【解決手段】 航走しながら海底パイプライン(検査対象物)13を検査することができる水中移動型検査装置11であって、潜水して、海底パイプライン13に対して非接触状態で検査対象物を辿りながら航走する航走体14と、この航走体14に設けられている第1可動アーム部16と、この第1可動アーム部16に設けられ、海底パイプライン13を検査するための検査用ツール部17と、航走体14が、海底パイプライン13に対して非接触状態で辿りながら航走するときに、第1可動アーム部16を作動させて、検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して所定の目標位置関係となるように、検査用ツール部17を移動させることができる制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば航走しながら海底パイプラインや海底構造物等の検査対象物の検査を含む各種作業を行うことができる水中移動型検査装置及び水中検査設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水中移動型検査装置の一例として、遠隔操縦海底車両がある(例えば、特許文献1参照。)。この遠隔操縦海底車両は、海底に設置されている管状部材等の海底構造物上を、キャスタを介して走行しながら、この海底構造物を検査したり清掃することができるようにしたものである。オペレータは、遠隔操縦海底車両に設けられているビデオカメラを介して海底構造物を地上から見ながら地上に設けられた制御装置を操作することによって、この遠隔操縦海底車両を作動させることができる。
【0003】
この遠隔操縦海底車両によると、オペレータが地上から当該車両に設けられている多数のスラスタ及びマニピュレータ等を操作することによって、当該車両に対して水中で作業者のような柔軟性のある動きを行わせて海底構造物を検査したり清掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平2−503182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来の遠隔操縦海底車両では、海底に設置されている管状部材等の海底構造物上を、キャスタを介して走行しながら、この海底構造物を検査したり清掃するものであるので、当該車両の質量に基づく力が海底構造物に掛り、この力によるストレスによって海底構造物が損傷する可能性がある。
【0006】
更に、このように、前記従来の遠隔操縦海底車両では、当該車両の質量に基づく力が海底構造物に働くので、当該車両に検査や清掃に必要な装置やマニピュレータ等を積載するのにも、積載質量が増加する点で或る一定の限界があり、このことが、海底構造物の検査や清掃等を含む各種作業の質の向上を図ることに対して障害となっている。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、海底構造物等の検査対象物が航走体の質量に基づく力を受けて損傷することを防止できるようにすると共に、検査対象物の検査を含む各種作業の質の向上を図ることができる水中移動型検査装置及び水中検査設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水中移動型検査装置は、航走しながら海底の検査対象物を検査することができる水中移動型検査装置であって、潜水して、検査対象物に対して非接触状態で検査対象物を辿りながら航走する航走体と、この航走体に設けられている第1可動アーム部と、この第1可動アーム部に設けられ、検査対象物を検査するための検査用ツール部と、前記航走体が、検査対象物に対して非接触状態で辿りながら航走するときに、前記第1可動アームを作動させて、前記検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標位置関係となるように、前記検査用ツール部を移動させることができる制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る水中移動型検査装置によると、航走体は、潜水して検査対象物に対して非接触状態で当該検査対象物を辿りながら航走することができ、このときに、この航走体に第1可動アームを介して設けられている検査用ツール部を、航走体に追従させることができる。そして、航走体が、検査対象物に対して非接触状態で辿りながら航走するときに、制御部が第1可動アームを作動させて、検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標位置関係となるように、検査用ツール部を移動させることができる。これによって、検査用ツール部を使用して検査対象物の目標検査範囲を精度よく検査することができる。
【0010】
この発明に係る水中移動型検査装置において、前記航走体は、当該航走体と検査対象物との位置関係及び検査対象物の形状を含む検査対象物情報を得るための検査対象物検出部を備え、前記制御部は、前記航走体が自律航走によって、検査対象物に対して非接触状態で検査対象物を辿りながら進むように、前記検査対象物情報に基づいて前記航走体を制御するものとするとよい。
【0011】
このようにすると、制御部は、航走体が自律航走によって、検査対象物に対して非接触状態で検査対象物を辿りながら進むように、前記検査対象物情報に基づいて航走体を制御することができる。この検査対象物情報は、例えば走行体とパイプラインとの位置関係及びパイプラインの形状を含む検査対象物情報である。そして、航走体が、自律航走によって、検査対象物を辿りながら進むことができるようにすると、この水中移動型検査装置を洋上から支援船によって遠隔操作する必要がなく、自動的に検査対象物を検査することができる。これによって、検査対象物を検査するための手間、人件費、及び支援船の費用の削減を図ることができる。
【0012】
この発明に係る水中移動型検査装置において、前記航走体に設けられ、前記検査用ツール部と検査対象物との位置関係及び検査対象物の形状を含む検査対象物情報を得るための検査対象物検出部と、前記検査用ツール部に設けられている第2可動アーム部と、この第2可動アーム部に設けられ、検査対象物を目視検査するための撮像用カメラとを備え、前記制御部は、前記撮像用カメラが検査対象物に対して所定の目標位置関係となるように、前記検査対象物情報に基づいて前記第2可動アームを制御するものとするとよい。
【0013】
このようにすると、航走体が検査対象物に対して非接触状態で検査対象物を辿りながら航走するときに、制御部は、検査対象物検出部によって得られた検査対象物情報に基づいて、第2可動アームを作動させて、撮像用カメラが検査対象物に対して所定の目標位置関係となるように、撮像用カメラを移動させることができる。これによって、撮像用カメラは、検査対象物の所定の目標範囲の外観を精度よく撮像することができ、作業者は、この撮像データを確認することによって、海底パイプラインを精度よく目視検査することができる。
【0014】
この発明に係る水中移動型検査装置において、前記検査用ツール部は、防食検査器及び肉厚検査器のうち少なくとも1つを有するものとするとよい。
【0015】
このようにすると、水中移動型検査装置が潜水して検査対象物に対して非接触状態で当該検査対象物を辿りながら航走するときに、防食検査器を使用して検査対象物に対する防食処置の例えば劣化の程度を検査することができる。また、肉厚検査器を使用して検査対象物の肉厚を検査することができ、これによって、検査対象物の腐食の程度や損傷の有無を検査することができる。
【0016】
この発明に係る水中移動型検査装置において、前記防食検査器は、防食電位計測器を有し、前記防食電位計測器は、前記検査用ツール部に設けられた電位測定用プローブと、前記航走体に設けられている電極用ウィンチから繰り出される線状体に結合されているリモート電極とを有するものとするとよい。
【0017】
この防食検査器としての防食電位計測器を使用するときは、まず、航走体に設けられている電極用ウィンチから線状体を所定の長さだけ繰り出して、この線状体に結合されているリモート電極を、検査用ツール部に設けられた電位測定用プローブから引き離す。次に、検査対象物に近付けて設けられている電位測定用プローブと、リモート電極との間の電位差を測定する。この測定して得られた電位差に基づいて、検査対象物の防食の程度(腐食の程度)を検査することができる。そして、この防食電位計測器に使用されるリモート電極が結合する線状体を、繰り出したり巻き取るための電極用ウィンチは、航走体に設けられ、この航走体は、検査対象物に対して非接触状態で航走することができるので、電極用ウィンチを含む航走体の質量に基づく力によって検査対象物が損傷することを防止できる。
【0018】
この発明に係る水中移動型検査装置において、前記第1可動アーム部は、平行リンク機構を有すものとするとよい。
【0019】
このようにすると、制御部が第1可動アームを作動させて、検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標位置関係となるように、検査用ツール部を移動させるために必要とされる第1可動アームの関節数を低減することができ、小型軽量の第1可動アームを提供することができる。そして、第1可動アームの制御を簡単に行うことができる。
【0020】
この発明に係る水中移動型検査装置において、前記検査用ツール部には、検査対象物上を走行できるようにするための走行部が設けられ、前記制御部は、前記検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標押圧力で圧接するように、前記第1可動アーム部に対してフォースフィードバック制御して作動させるものとするとよい。
【0021】
このようにすると、検査用ツール部は、航走体の航走に追従しながら検査対象物上を走行することができる。そして、検査用ツール部が検査対象物上を走行することによって、この検査対象物は、検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標位置関係となるようにするための案内の補助をすることができる。また、制御部は、前記検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標押圧力で圧接するように、第1可動アーム部に対してフォースフィードバック制御して作動させることができるようになっているので、検査用ツール部の重量及び検査用ツール部に働く慣性力が発生しても、検査対象物に掛る力が略目標押圧力となるようにすることができる。その結果、検査対象物が航走体の重量や慣性力を受けることによって損傷することを防止することができる。
【0022】
この発明に係る水中移動型検査装置において、前記走行部は、車輪とするとよい。
【0023】
このように、走行部として車輪を使用することによって、検査用ツール部自体が検査対象物に接触することを防止でき、この接触による検査用ツール部の損傷を防止できる。
【0024】
本発明に係る水中検査設備は、本発明に係る水中移動型検査装置と、海底に配置されるドッキングステーションとを備え、前記水中移動型検査装置は、海底に配置された前記ドッキングステーションに対するドッキング及び離脱が可能であり、前記水中移動型検査装置が前記ドッキングステーションにドッキングした状態で、前記水中移動型検査装置に設けられた第1コネクタが、前記ドッキングステーションに設けられた第2コネクタに接続して、前記水中移動型検査装置のバッテリーの充電、取得した検査データの送信、又は検査実行命令の受信を行うことを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る水中検査設備によると、水中移動型検査装置が検査対象物の検査を終えた後で、海底に配置されたドッキングステーションにドッキングして、この水中移動型検査装置に設けられた第1コネクタが、ドッキングステーションに設けられた第2コネクタに接続すると、この水中移動型検査装置のバッテリーの充電、取得した検査データの送信、又は検査実行命令の受信を行うことができる。
【0026】
つまり、水中移動型検査装置は、取得した検査データをドッキングステーション側に送信することができ、作業者は、この送信された検査データに基づいて、検査対象物の検査結果を認識することができる。そして、水中移動型検査装置は、受信した検査実行命令に基づいて、次の検査対象物の検査を行うことができる。また、水中移動型検査装置は、そのバッテリーが充電されると、海底で潜水したまま継続して次の検査対象物の検査を行うことができ、検査に要する時間と手間の軽減を図ることができる。
【0027】
この発明に係る水中検査設備において、水中移動型検査装置を備え、前記水中移動型検査装置は、前記撮像用カメラが検査対象物を撮像して得られる撮像データを、当該水中移動型検査装置に設けられている記録装置に保存することができ、前記水中移動型検査装置が前記ドッキングステーションにドッキングした状態で、前記撮像データを送信するものとするとよい。
【0028】
このようにすると、水中移動型検査装置が検査対象物の検査をするときに、撮像用カメラが検査対象物を撮像して撮像データをこの水中移動型検査装置に設けられている記録装置に保存することができる。そして、水中移動型検査装置がドッキングステーションにドッキングした状態で、この記録装置に保存されている撮像データを例えば洋上に送信することができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明に係る水中移動型検査装置及び水中検査設備によると、航走体は、潜水して検査対象物に対して非接触状態で当該検査対象物を辿りながら航走することができる構成としたので、航走体の質量に基づく力が検査対象物に掛ることを防止することができ、その結果、検査対象物が航走体の質量に基づく力を受けて損傷することを防止することができる。これによって、高速航走して高速で検査作業を行うことが可能である。
【0030】
そして、航走体に対して、検査に必要な質量の大きい機械器具や装置を積載しても、航走体の質量に基づく力が検査対象物に掛からないので、従来よりも多くの当該機械器具等を航走体に積載することができる。これによって、検査対象物に対する検査や清掃等を含む各種作業の質の向上を図ることができる。
【0031】
そして、航走体が、検査対象物を辿りながら航走するときに、制御部が第1可動アームを作動させて、検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標位置関係となるように、検査用ツール部を移動させる構成としたので、検査用ツール部によって検査対象物の所定の目標範囲を精度よく検査することができる。よって、検査対象物の検査を含む各種作業の質の向上を図ることができる水中移動型検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の一実施形態に係る水中移動型検査装置を示す拡大側面図である。
【図2】図1に示す水中移動型検査装置によって海底の検査対象物を検査する状態を示す側面図である。
【図3】図1に示す水中移動型検査装置によって海底の検査対象物を検査しているときの、航走体及び検査用ツール部の移動経路を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、側面図である。
【図4】この発明の一実施形態に係る水中検査設備であり、水中移動型検査装置がドッキングステーションにドッキングした状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る水中移動型検査装置及び水中検査設備の一実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。この水中移動型検査装置11は、図1に示すように、例えば航走しながら海底パイプラインや海底構造物等の検査対象物13の検査を含む各種作業を行うことができるものである。そして、水中移動型検査装置11は、海底構造物等の検査対象物13が航走体14の質量に基づく力を受けて損傷することを防止できるようにすると共に、検査対象物13の検査を含む各種作業の質の向上を図ることができるようにしたものである。以下、海底パイプラインを検査対象物13として説明する。
【0034】
そして、この水中検査設備12は、図4に示すように、水中移動型検査装置11と、海底に配置されるドッキングステーション15とを備え、ドッキングステーション15にドッキングした状態で、水中移動型検査装置11のバッテリーの充電、取得した検査データの送信、及び検査実行命令の受信を行うことができるようにしたものである。
【0035】
水中移動型検査装置11は、図1に示すように、航走体14、第1可動アーム部16、及び検査用ツール部17を備えている。
【0036】
図1に示す航走体14は、例えば平板状に形成された自律型無人潜水機であり、所定のプログラムに従って、自動的に潜水して、海底パイプライン13に対して非接触状態でこの海底パイプライン13を辿りながら航走することができるようになっている。航走体14は、主推進用のスラスタ18、及び姿勢制御や軌道の微修正等に使用されるスラスタ18を備えている。
【0037】
そして、航走体14には、当該航走体14及び検査用ツール部17と、海底パイプライン13との位置関係や、海底パイプライン13の形状を含む検査対象物情報を得るための第1及び第2検出部19、20が搭載されている。
【0038】
第1検出部19は、マルチビームソーナであり、図1に示すように、航走体14の前側下部に設けられ、主に中距離前方の検査対象物情報を収集するためのものである。この中距離前方の検査対象物情報とは、海底パイプライン13及びその周辺の中距離の状況、例えば中距離前方の海底パイプライン13の曲がり具合やパイプライン上の異物の有無に関する情報である。
【0039】
第2検出部20は、形状把握用レーザであり、図1に示すように、航走体14の前側下面と後側下面の2箇所に、互いに間隔を隔てて設けられている。この2つの形状把握用レーザは、互いの相対位置の差に基づいて、主に近距離前方の検査対象物情報を収集するためのものである。この近距離前方の検査対象物情報とは、海底パイプライン13及びその周辺の近距離の状況、例えば近距離前方の海底パイプライン13の曲がり具合やパイプライン上の異物の有無に関する検査対象物情報を収集するためのものである。
【0040】
第1可動アーム部16は、図1に示すように、多関節ロボットアームであり、基端部が航走体14の後部に連結し、先端部に検査用ツール部17が取り付けられている。この第1可動アーム部16は、第1〜第3関節21、22、23を備えている。この第1関節21は、航走体14の後部に設けられ、第1関節21と第2関節22との間に第1平行リンク機構24が設けられている。そして、第2関節22と第3関節23との間に第2平行リンク機構25が設けられ、第3関節23に検査用ツール部17が設けられている。
【0041】
第1関節21は、第1フレーム26を備えている。この第1フレーム26は、鉛直軸29を介して回動自在に航走体14の後部に設けられている支持突起30と連結している。この第1フレーム26(第1可動アーム部16)は、第1駆動部(図示せず)によって鉛直軸29を中心として回動駆動される。
【0042】
第1平行リンク機構24は、2本の平行リンク24a、24aを備えている。これら2本の平行リンク24a、24aの一方の各端部は、水平軸31、31を介して回動自在に第1フレーム26と連結し、他方の各端部は、水平軸32、32を介して回動自在に第2フレーム27と連結している。この第1平行リンク機構24は、第2駆動部(図示せず)によって水平軸31、31を中心として回動駆動される。
【0043】
第2平行リンク機構25は、2本の平行リンク25a、25aを備えている。これら2本の平行リンク25a、25aの一方の各端部は、水平軸33、33を介して回動自在に第2フレーム27と連結し、他方の各端部は、水平軸34、34を介して回動自在に第3フレーム28と連結している。この第2平行リンク機構25は、第3駆動部(図示せず)によって水平軸33、33を中心として回動駆動される。
【0044】
また、検査用ツール部17は、第4駆動部(図示せず)によって、鉛直軸52を中心として第3フレーム28に対して回転駆動される。
【0045】
検査用ツール部17は、第3フレーム28に設けられている。
【0046】
検査用ツール部17は、図1に示すように、箱状に形成されており、この内部に後述する各種検査機器の制御装置が収容されている。そして、この検査用ツール部17の左右の各側面には、一対の第2可動アーム部35、35が設けられている。この一対の第2可動アーム部35、35のそれぞれの先端部には、第1及び第2撮像用カメラ(例えばテレビカメラ)36、36が設けられている。
【0047】
この第1及び第2撮像用カメラ36、36は、海底パイプライン13の左右の各側面を撮像することができ、作業者は、その撮像された映像を見て、パイプラインの左右の各側面を目視検査できるようになっている。
【0048】
また、図1に示すように、検査用ツール部17の前面には、ブラケット38を介して第3撮像用カメラ37が設けられている。この第3撮像用カメラ37は、海底パイプライン13の上面を撮像することができ、作業者は、その撮像された映像を見て、パイプラインの上面を目視検査できるようになっている。
【0049】
更に、検査用ツール部17は、図1に示すように、防食検査器39及び肉厚検査器(図示せず)を備えている。
【0050】
この防食検査器39は、海底パイプライン13の全長に亘って防食処置(例えば防食塗装)の劣化の程度を検査するためのものであり、電位測定用プローブ39aとリモート電極39bとを有している。電位測定用プローブ39aは、ブラケット38を介して検査用ツール部17に設けられ、その先端部がパイプライン13の上面に近づけて配置されている。リモート電極39bは、航走体14に設けられている電極用ウィンチ40から繰り出される線状体41の先端部に結合されている。
【0051】
図1は、防食検査器39が使用されていない状態を示し、電極用ウィンチ40が線状体41を巻き取っており、リモート電極39bが航走体14の垂直尾翼42に固定されている。図2は、防食検査器39が使用されている状態を示し、電極用ウィンチ40が線状体41を繰り出しており、リモート電極39bが航走体14の垂直尾翼42から所定の距離だけ引き離された位置に配置されている。
【0052】
肉厚検査器は、従来公知のものであり、例えば超音波を用いて海底パイプライン13の全長に亘って肉厚を検査することができるものであり、これによって、海底パイプライン13の腐食の程度や損傷の有無を検査することができる。
【0053】
また、図1に示すように、検査用ツール部17には、海底パイプライン13上を接触して走行できるようにするための走行部43が設けられている。この走行部43は、例えば車輪等の転がり部である。ただし、走行部43は、車輪等の転がり部以外にも、例えば滑り部を設けた構成とし、検査用ツール部17が海底パイプライン13上を滑りながら移動するようにしてもよい。
【0054】
次に、航走体14に設けられている制御部(図示せず)について説明する。この制御部は、航走体14が自律航走によって、海底パイプライン13に対して非接触状態でこの海底パイプライン13を辿りながら進むように、検査対象物情報に基づいて航走体14を制御するものである。
【0055】
この検査対象物情報は、前述したように、第1及び第2検出部19、20によって得られた情報であり、航走体14と、海底パイプライン13との位置関係及びパイプラインの形状を含むものである。
【0056】
また、制御部は、航走体14が、前述したように検査対象物情報に基づいて海底パイプライン13に対して非接触状態で辿りながら航走するときに、更にこの検査対象物情報に基づいて第1可動アーム部16を作動させて、検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して所定の目標位置関係となるように、検査用ツール部17を移動させることができるようになっている。
【0057】
また、制御部は、第1及び第2検出部19、20によって得られた検査対象物情報に基づいて、図1に示す一対の第2可動アーム部35、35を作動させることによって、第1及び第2撮像用カメラ36、36の位置を目標位置に移動させることができるようになっている。具体的には、制御部は、第2可動アーム部35、35を作動させることによって、海底パイプライン13の例えば直径に応じて第1及び第2撮像用カメラ36、36の位置を、目標位置に近づけるように自動修正することができる。
【0058】
更に、制御部は、図1に示す海底パイプライン13上を接触して走行する検査用ツール部17が、海底パイプライン13に対して所定の力で圧接するように、第1可動アーム部16に対してフォースフィードバック制御して作動させるようにもなっている。そして、このフォースフィードバック制御を実現するために、走行部43(車輪)に対して荷重検出器(図示せず)が設けられている。
【0059】
この荷重検出器は、検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して圧接する力を検出することができ、制御部は、この検出される力が予め設定された目標押圧力となるように、第1可動アーム部16の動きを制御するようになっている。
【0060】
次に、上記のように構成された水中移動型検査装置11の作用を説明する。図1に示す水中移動型検査装置11によると、航走体14は、予め設定されたプログラムに従って、潜水して海底パイプライン13に対して非接触状態で当該海底パイプライン13を辿りながら自律航走することができ、このときに、この航走体14に第1可動アーム部16を介して設けられている検査用ツール部17を、航走体14に追従させることができる。図3(a)、(b)の破線44は、航走体14の航走経路である。
【0061】
つまり、航走体14が、海底パイプライン13に対して非接触状態で当該海底パイプライン13を辿りながら自律航走することができるのは、例えば海底パイプライン13の設置位置を示す地図が制御部の記憶装置に記憶されており、この地図に示されているパイプラインの設置位置情報と、検査対象物情報とに基づいて航走体14が航走するように制御されているからである。
【0062】
そして、航走体14が、海底パイプライン13に対して非接触状態で辿りながら航走するときに、制御部が第1可動アーム部16を作動させて、検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して予め設定された目標位置関係となるように、検査用ツール部17を移動させることができる。
【0063】
ここで、検査用ツール部17の海底パイプライン13に対する目標位置関係とは、図3(a)、(b)の破線45に示すように、検査用ツール部17が、海底パイプライン13の中心軸線の略真上であって、海底パイプライン13の上面と接触した状態で走行する位置関係を言う。
【0064】
そして、上記のように、航走体14は、潜水して海底パイプライン13に対して非接触状態で当該海底パイプライン13を辿りながら航走することができる構成としたので、航走体14の重量や慣性力が海底パイプライン13に掛ることを防止することができ、その結果、海底パイプライン13が航走体14の重量や慣性力を受けて損傷することを防止することができる。これによって、高速航走して高速で検査作業を行うことが可能である。
【0065】
また、航走体14に対して、検査に必要な重量の大きい機械器具や装置を積載しても、航走体14の質量に基づく力が海底パイプライン13に掛からないので、従来よりも多くの当該機械器具等を航走体14に積載することができる。これによって、海底パイプライン13に対する検査や清掃等を含む各種作業の質の向上を図ることができる。
【0066】
更に、航走体14が、海底パイプライン13を辿りながら航走するときに、制御部が第1可動アーム部16を作動させて、検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して所定の目標位置関係となるように、検査用ツール部17を移動させる構成としたので、検査用ツール部17によって海底パイプライン13の所定の目標範囲(この実施形態では、海底パイプライン13の左右の各側面及び上面)を精度よく検査することができる。よって、海底パイプライン13の検査や清掃を含む各種作業の質の向上を図ることができる水中移動型検査装置11を提供することができる。
【0067】
そして、この実施形態では、海底パイプライン13の左右の各側面及び上面を検査するようにしたが、これ以外の例えば下面も含めて検査するようにしてもよい。
【0068】
また、航走体14には、前述した制御部が設けられており、この制御部は、航走体14が自律航走によって、例えば図3に示すような湾曲した海底パイプライン13に対して非接触状態でこの海底パイプライン13を辿りながら進むように、第1及び第2検出部19、20によって得られた検査対象物情報に基づいて航走体14を制御することができる。
【0069】
この検査対象物情報は、例えば航走体14と海底パイプライン13との位置関係及びパイプライン13の形状等を含む情報であり、例えばパイプライン13の曲がり具合の情報やパイプライン13上の異物の有無の情報である。
【0070】
このように、航走体14が、自律航走によって、海底パイプライン13を辿りながら進むことができるようにすると、この水中移動型検査装置11を洋上から支援船によって遠隔操作する必要がなく、自動的に海底パイプライン13を検査することができる。これによって、海底パイプライン13を検査するための手間、人件費、及び支援船の費用の削減を図ることができる。
【0071】
更に、航走体14が海底パイプライン13に対して非接触状態でこの海底パイプライン13を辿りながら自律航走するときに、制御部は、前記検査対象物情報に基づいて、図1に示す第2可動アーム部35、35を作動させて、第1及び第2撮像用カメラ36、36が海底パイプライン13に対して所定の目標位置関係となるように、第1及び第2撮像用カメラ36、36を移動させることができる。
【0072】
このようにして、第1〜第3撮像用カメラ36、36、37は、海底パイプライン13の所定の目標範囲の外観を精度よく撮像することができ、作業者は、この撮像データを確認することによって、海底パイプライン13を精度よく目視検査することができる。
【0073】
ここで、第1及び第2撮像用カメラ36、36の海底パイプライン13に対する目標位置関係とは、図1に示すように、第1及び第2撮像用カメラ36、36が海底パイプライン13の左右の各側面を撮像することができる位置にある関係を言う。
【0074】
そして、第3撮像用カメラ37の海底パイプライン13に対する目標位置関係とは、図1に示すように、第3撮像用カメラ37が海底パイプライン13の上面を撮像することができる位置にある関係を言う。
【0075】
そして、図1に示すように、検査用ツール部17は、防食検査器39及び肉厚検査器(図示せず)を備えているので、水中移動型検査装置11が潜水して海底パイプライン13に対して非接触状態で当該海底パイプライン13を辿りながら航走するときに、防食検査器39を使用して海底パイプライン13に対する防食処置(例えば防食塗装)の例えば劣化の程度を自動的に検査することができる。また、肉厚検査器を使用して海底パイプライン13の肉厚を自動的に検査することができ、これによって、海底パイプライン13の腐食の程度や損傷の有無を検査することができる。
【0076】
また、図2に示す防食検査器39としての防食電位計測器を使用するときは、まず、航走体14に設けられている電極用ウィンチ40から線状体41を所定の長さだけ繰り出して、この線状体41に結合されているリモート電極39bを、検査用ツール部17に設けられた電位測定用プローブ39aから所定の距離だけ引き離す。次に、海底パイプライン13に近付けて設けられている電位測定用プローブ39aと、リモート電極39bとの間の電位差を測定する。この測定して得られた電位差に基づいて、海底パイプライン13の防食の程度(腐食の程度)を検査することができる。
【0077】
そして、この防食検査器39に使用されるリモート電極39bが結合する線状体41を、繰り出したり巻き取るための電極用ウィンチ40は、航走体14に設けられ、この航走体14は、海底パイプライン13に対して非接触状態で航走することができるので、電極用ウィンチ40を含む航走体14の質量に基づく力によって海底パイプライン13が損傷することを防止できる。
【0078】
更に、図1に示すように、第1可動アーム部16は、第1及び第2平行リンク機構24、25を有する構成としたので、制御部が第1可動アーム部16を作動させて、検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して所定の目標位置関係となるように、検査用ツール部17を移動させるために必要とされる第1可動アーム部16の関節数を低減することができ、小型軽量の第1可動アーム部16を提供することができる。そして、第1可動アーム部16の制御を簡単に行うことができる。
【0079】
そして、図1に示すように、検査用ツール部17には、海底パイプライン13上を走行できるようにするための走行部43(車輪)が設けられ、検査用ツール部17は、航走体14の航走に追従しながら海底パイプライン13上を走行することができる。そして、検査用ツール部17が海底パイプライン13上を走行することによって、この海底パイプライン13は、検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して所定の目標位置関係となるようにするための案内の補助をすることができる。
【0080】
また、制御部は、前記検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して所定の力で圧接するように、第1可動アーム部16に対してフォースフィードバック制御して作動させることができるようになっているので、検査用ツール部17の重量及び検査用ツール部17に働く慣性力が発生しても、海底パイプライン13に掛る力が所定の目標押圧力となるようにすることができる。その結果、海底パイプライン13が航走体14の質量に基づく力を受けることによって損傷することを防止することができる。
【0081】
更に、検査用ツール部17に設けた走行部43として車輪を使用することによって、検査用ツール部17自体が海底パイプライン13に接触することを確実に防止でき、この接触による検査用ツール部17の損傷を防止できる。
【0082】
次に、図4を参照して、水中検査設備12を説明する。この図4に示す水中検査設備12は、水中移動型検査装置11と、海底に配置されるドッキングステーション15とを備えている。
【0083】
ドッキングステーション15は、略直方体の籠状部46を備えており、この籠状部46内に水中移動型検査装置11が進入してドッキングできるようになっている。この籠状部46の床部46aには、第2コネクタ48が設けられている。
【0084】
前記水中移動型検査装置11は、図4に示すように、海底に配置されたドッキングステーション15に対するドッキング及び離脱が可能である。そして、水中移動型検査装置11がドッキングステーション15にドッキングした状態で、水中移動型検査装置11に設けられた第1コネクタ47が、ドッキングステーション15に設けられた第2コネクタ48に接続して、水中移動型検査装置11の航走体14に設けられたバッテリーの充電、取得した検査データの送信、及び検査実行命令の受信を行うことができるようになっている。
【0085】
また、ドッキングステーション15は、例えば洋上生産基地からロープ49によって吊り下げられ、このロープ49は、巻き上げ機(図示せず)によって巻き上げられたり、巻き下げられたりされるようになっている。よって、ドッキングステーション15は、巻き上げ機によって昇降移動され、洋上生産基地に引き上げるとこができるし、海底50に設置することができる。
【0086】
また、洋上生産基地とドッキングステーション15とは、ケーブル51で接続されており、このケーブル51を介して、洋上生産基地からドッキングステーション15へ充電用電力を供給したり、検査実行命令を送信することができるようになっている。更に、この水中移動型検査装置11が取得した検査データを、ドッキングステーション15から洋上生産基地へ送信できるようになっている。そして、ドッキングステーション15に設けられた第2コネクタ48は、ケーブル51と接続している。この洋上生産基地は、例えば石油ガス生産リグや浮遊式原油生産貯蔵荷役設備である。
【0087】
図4に示す水中検査設備12によると、水中移動型検査装置11が海底パイプライン13の検査を終えた後で、海底50に配置されたドッキングステーション15にドッキングして、この水中移動型検査装置11に設けられた第1コネクタ47が、ドッキングステーション15に設けられた第2コネクタ48に接続すると、この水中移動型検査装置11のバッテリーの充電、取得した検査データの送信、及び検査実行命令の受信を行うことができる。
【0088】
つまり、水中移動型検査装置11は、取得した検査データをドッキングステーション15を介して洋上生産基地に送信することができ、作業者は、この送信された検査データに基づいて、海底パイプライン13の検査結果を認識することができる。そして、水中移動型検査装置11は、受信した検査実行命令に基づいて、例えば次の海底パイプライン13の検査を行うことができる。また、水中移動型検査装置11は、そのバッテリーが充電されると、海底で潜水したまま継続して次の海底パイプライン13等の検査を行うことができ、検査に要する時間と手間の軽減を図ることができる。
【0089】
また、この図4に示す水中検査設備12が備えている水中移動型検査装置11は、第1〜第3撮像用カメラ36、36、37が海底パイプライン13を撮像して得られる撮像データを含む検査データを、当該水中移動型検査装置11の航走体14に設けられている記録装置(図示せず)に保存することができ、この水中移動型検査装置11がドッキングステーション15にドッキングした状態で、又は、ドッキングステーションにドッキングした後で、当該撮像データを含む検査データを、ドッキングステーション15のケーブル51を介して洋上生産基地へ送信できるようになっている。
【0090】
この水中検査設備12によると、水中移動型検査装置11が海底パイプライン13の検査をするときに、第1〜第3撮像用カメラ36、36、37が海底パイプライン13を撮像してその撮像データを含む検査データをこの水中移動型検査装置11に設けられている記録装置に保存することができる。そして、水中移動型検査装置11がドッキングステーションにドッキングした状態で、又は、ドッキングステーションにドッキングした後で、この記録装置に保存されている撮像データを含む検査データを例えばケーブル51を介して洋上に送信することができる。
【0091】
ただし、上記実施形態では、検査対象物13として、海底パイプラインを例に挙げて説明したが、これ以外にも、例えば海底に設けられている海底電気ケーブルやジャケット等の海底構造物であってもよい。
【0092】
そして、上記実施形態では、水中移動型検査装置11は、海底パイプライン13に対して辿りながら航走して、その際に、検査用ツール部17によって海底パイプライン13を検査するようにしたが、これに代えて、海底に設置された設備や建物を検査するものとしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、図1に示すように、検査用ツール部17に車輪43を設け、検査用ツール部17が、海底パイプライン13上を、車輪43を介して接触した状態で走行しながら海底パイプライン13の検査をするようにしたが、これに代えて、検査用ツール部17に車輪43を設けずに、検査用ツール部17が、海底パイプライン13に対して非接触の状態で辿りながら海底パイプライン13の検査をするようにしてもよい。
【0094】
この場合も、検査用ツール部17が海底パイプライン13に対して所定の目標位置関係となるように、制御部が第1可動アーム部16を制御するように設定されている。
【0095】
このように、検査用ツール部17が海底パイプライン13を非接触の状態で検査をするようにすると、海底パイプライン13が検査用ツール部17の重量や慣性力を受けることによって損傷することを防止することができる。これによって、更に高速航走して高速で検査作業を行うことが可能である。
【0096】
更に、上記実施形態では、航走体14が遠隔操縦されず、自律航走するようにしたが、これに代えて、航走体にケーブルを接続して、作業者が、このケーブルを介して航走体を洋上又は地上から遠隔操縦して、海底パイプライン13の検査を行わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上のように、本発明に係る水中移動型検査装置及び水中検査設備は、海底構造物等の検査対象物が航走体の質量に基づく力を受けて損傷することを防止できるようにすると共に、検査対象物の検査を含む各種作業の質の向上を図ることができる優れた効果を有し、このような水中移動型検査装置及び水中検査設備に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0098】
11 水中移動型検査装置
12 水中検査設備
13 検査対象物(海底パイプライン)
14 航走体
15 ドッキングステーション
16 第1可動アーム部
17 検査用ツール部
18 スラスタ
19 第1検出部
20 第2検出部
21 第1関節
22 第2関節
23 第3関節
24 第1平行リンク機構
24a 平行リンク
25 第2平行リンク機構
25a 平行リンク
26 第1フレーム
27 第2フレーム
28 第3フレーム
29 鉛直軸
30 支持突起
31、32、33、34 水平軸
35 第2可動アーム部
36 第1及び第2撮像用カメラ
37 第3撮像用カメラ
38 ブラケット
39 防食検査器
39a 電位測定用プローブ
39b リモート電極
40 電極用ウィンチ
41 線状体
42 垂直尾翼
43 走行部(車輪)
44 航走経路を示す破線
45 走行経路を示す破線
46 籠状部
46a 床部
47 第1コネクタ
48 第2コネクタ
49 ロープ
50 海底
51 ケーブル
52 鉛直軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航走しながら海底の検査対象物を検査することができる水中移動型検査装置であって、
潜水して、検査対象物に対して非接触状態で検査対象物を辿りながら航走する航走体と、
この航走体に設けられている第1可動アーム部と、
この第1可動アーム部に設けられ、検査対象物を検査するための検査用ツール部と、
前記航走体が、検査対象物に対して非接触状態で辿りながら航走するときに、前記第1可動アームを作動させて、前記検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標位置関係となるように、前記検査用ツール部を移動させることができる制御部とを備えることを特徴とする水中移動型検査装置。
【請求項2】
前記航走体は、当該航走体と検査対象物との位置関係及び検査対象物の形状を含む検査対象物情報を得るための検査対象物検出部を備え、
前記制御部は、前記航走体が自律航走によって、検査対象物に対して非接触状態で検査対象物を辿りながら進むように、前記検査対象物情報に基づいて前記航走体を制御することを特徴とする請求項1記載の水中移動型検査装置。
【請求項3】
前記航走体に設けられ、前記検査用ツール部と検査対象物との位置関係及び検査対象物の形状を含む検査対象物情報を得るための検査対象物検出部と、
前記検査用ツール部に設けられている第2可動アーム部と、
この第2可動アーム部に設けられ、検査対象物を目視検査するための撮像用カメラとを備え、
前記制御部は、前記撮像用カメラが検査対象物に対して所定の目標位置関係となるように、前記検査対象物情報に基づいて前記第2可動アームを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の水中移動型検査装置。
【請求項4】
前記検査用ツール部は、防食検査器及び肉厚検査器のうち少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水中移動型検査装置。
【請求項5】
前記防食検査器は、防食電位計測器を有し、
前記防食電位計測器は、前記検査用ツール部に設けられた電位測定用プローブと、前記航走体に設けられている電極用ウィンチから繰り出される線状体に結合されているリモート電極とを有していることを特徴とする請求項4記載の水中移動型検査装置。
【請求項6】
前記第1可動アーム部は、平行リンク機構を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水中移動型検査装置。
【請求項7】
前記検査用ツール部には、検査対象物上を走行できるようにするための走行部が設けられ、
前記制御部は、前記検査用ツール部が検査対象物に対して所定の目標押圧力で圧接するように、前記第1可動アーム部に対してフォースフィードバック制御して作動させることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水中移動型検査装置。
【請求項8】
前記走行部は、車輪であることを特徴とする請求項7に記載の水中移動型検査装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の水中移動型検査装置と、
海底に配置されるドッキングステーションとを備え、
前記水中移動型検査装置は、海底に配置された前記ドッキングステーションに対するドッキング及び離脱が可能であり、前記水中移動型検査装置が前記ドッキングステーションにドッキングした状態で、前記水中移動型検査装置に設けられた第1コネクタが、前記ドッキングステーションに設けられた第2コネクタに接続して、前記水中移動型検査装置のバッテリーの充電、取得した検査データの送信、又は検査実行命令の受信を行うことを特徴とする水中検査設備。
【請求項10】
請求項3記載の水中移動型検査装置を備え、
前記水中移動型検査装置は、前記撮像用カメラが検査対象物を撮像して得られる撮像データを、当該水中移動型検査装置に設けられている記録装置に保存することができ、前記水中移動型検査装置が前記ドッキングステーションにドッキングした状態で、前記撮像データを送信することを特徴とする請求項9記載の水中検査設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−67358(P2013−67358A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209325(P2011−209325)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】