説明

水処理システム及び方法

浄水を生成する方法及び装置に関し、水の特性又は美観を改良できる特性を保持しながら、選択された溶解種を除去することによって水処理を行うもので、約0未満のランゲリア飽和指数(LSI)を有する第2水流を生成するために電気化学装置の減耗区画に第1水流を通すことと、第3水流を生成するために電気化学装置の陰極区画に第2水流を通すこととを含み、第3水流は、第1水流よりも腐食性が低く、かつ約0未満のLSIを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を処理する方法及び装置、より具体的には消費及び使用のための高品質水を提供する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カルシウム及びマグネシウムのような硬度種を含む水は、産業、商業及び家庭用途でのある種の使用に望ましくないことがある。水の硬度分類の典型的な指針は、炭酸カルシウムとして1リットル当たりゼロ〜60ミリグラム(mg/l)が軟らかい、61〜120mg/lが中程度に硬い、121〜180mg/lが硬い、かつ180mg/l超が非常に硬いと分類される。
【0003】
硬水は、軟水化、すなわち硬度イオン種を除去することによって処理できる。かかる種を除去するシステムの例は、イオン交換床を使用するものを含む。かかるシステムにおいて、硬度イオンは、イオン交換樹脂の表面で混合される逆帯電したイオン種にイオン結合されるようになる。イオン交換樹脂は、最終的にイオン結合した硬度イオン種で飽和するようになるため、再生処理を施されなければならない。再生は、通常、結合した硬度種を、塩化ナトリウムのような可溶性が高いイオン種と置換することを伴う。イオン交換樹脂に結合した硬度種は、ナトリウムイオンによって置換され、かつイオン交換樹脂は、再度その後の軟水化ステップに使用できる状態になる。
【0004】
かかるシステムが既に開示されている。例えばDoschは、米国特許第3148687号明細書でイオン交換樹脂を使用する軟水装置を含む洗浄機を教示している。同様に、Gadiniらは、国際特許出願公開第WO00/64325号で、水の硬度を減少させる改良された装置を有する水を使用する家庭用器具を開示している。Gadiniらは、制御システム、外部源からの送水システム、及び電気化学電池による軟化システムを有する家庭用器具を教示している。
【0005】
EDIと略称される電気再生式脱イオン化(以下「電気脱イオン化」という)方式ないし装置は、水を軟水にするために使用できる1つのプロセスである。EDIは、電気活性媒体及びイオン輸送に影響を与えるための電位を使用して液体からイオン性種を除去する工程である。電気活性媒体は、イオン性種を交互に収集し、かつ放出するか、又はイオン若しくは電子置換メカニズムによって連続的にイオンの輸送を容易にするために機能し得る。EDI装置は、永久又は一時的電荷を有する媒体を含むことができ、かつ性能を達成又は強化することを目的とする電気化学反応を引き起こすために操作できる。これらの装置は、半透性イオン交換又は両極性膜のような電気活性膜も含む。
【0006】
連続的電気脱イオン化方式(CEDI)は、一次サイジングパラメータが、媒体を通る輸送であって、媒体のイオン容量ではない工程である。典型的なCEDI装置は、交互配置される電気活性半透性アニオン及びカチオン交換膜を含む。膜間の空間は、入口及び出口を有する液体流れ区画を作るように構成される。横方向直流電界が、膜及び区画の境界で電極を使用して外部電源によって与えられる。多くの場合、電極からの反応生成物が他の流れ区画から分離できるように、電解液区画が提供される。電界を与えると、液体中のイオンは、そのそれぞれの対電極に引き付けられる。陽極に面する電気活性アニオン浸透膜、及び陰極に面する電気活性カチオン膜に接する隣接区画は、通常、イオン減耗(脱イオン化)されるようになり、かつ陽極に面する電気活性カチオン浸透膜、及び陰極に面する電気活性アニオン膜に接する区画は、通常、イオン濃縮されるようになる。イオン減耗区画内、及び実施態様によってはイオン濃縮区画内の空間は、電気活性媒体を同様に含む。CEDI装置において、媒体は、密接に混合したアニオン及びカチオン交換樹脂を含み得る。イオン交換媒体は、通常、区画内のイオンの輸送を強化し、かつ制御された電気化学反応の基質として関与し得る。電気脱イオン化装置は、例えば米国特許第4632745号、第4925541号、及び第5211823号明細書でGiuffridaらによって、米国特許第5259936号及び第5316637号明細書でGanziによって、米国特許第5154809号明細書でOrenらによって、かつ米国特許第5240579号明細書でKedemによって開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その一形態において、約0未満のランゲリア飽和指数(LSI)を有する第2水流を生成するために電気脱イオン化装置の減耗区画に第1水流を通すことと、第3水流を生成するために電気脱イオン化装置の陰極区画に第2水流を通すこととを含み、第3水流は、第1水流よりも腐食性が低く、かつ約0未満のLSIを有することを特徴とする水を提供する方法を提供する。
【0008】
もう1つ形態において、本発明は、第2水流を生成するために電気化学装置の陰極区画に第1水流を通すことと、約0未満のLSIを有する第3水流を生成するために電気化学装置の減耗区画に第2水流を通すこととを含み、第3水流は、第1水流よりも腐食性が低い、飲料水を提供する方法を提供する。
【0009】
もう1つ形態において、本発明は、第1水流から90%を超える活性塩素を除去することと、電気化学装置の減耗区画に水流を通すことと、水流内に溶解した何らかのイオンの一部を除去することと、保存容器を含むループに水流を導入することと、ループ内の有効平均塩素濃度を維持するために適切な速度でループに第2水流中の活性塩素を導入することとを含む、水中の残留塩素レベルを保持する方法を提供する。
【0010】
もう1つ形態において、本発明は、電気化学装置の減耗区画に、一価及び二価イオンを含む給水を通すことと、処理水を生成するために、給水から少なくとも30%の二価カチオンを除去し、かつ少なくとも約80%のシリカ、ホウ素及びフッ化物から選択される種を保持することと、家庭消費用に処理水を供給することとを含む、給水中にイオンを選択的に保持する方法を提供する。
【0011】
もう1つ形態において、本発明は、電気化学装置の減耗区画に水流を通すことと、電気化学装置を通過する電流を制御するために電気化学装置に印加される電圧を、水流中で約25%を超える何らかのカルシウムを除去するためには適切で、しかし水流から約10%を超える何らかのフッ化物又はシリカ種を除去するためには不適切なレベルで、調整することとを含む、浄水を生成する方法を提供する。
【0012】
もう1つ形態において、本発明は、軟水を生成するための給水から30%を超える何らかの硬度イオンを除去するために、イオン交換物質の床を介して給水を軟水にすることと、軟水を家庭消費用に供給することと、カルシウムを含む濃縮溶液を放出することとを含み、軟水のイオン含量及び濃縮溶液のイオン含量の和が、給水によって供給された全イオン含量以下である方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい、しかし必ずしもこれに限定されない実施態様は、例として、かつ添付図面を参照して以下に記述される。
【0014】
本発明は、種々のタイプの水源から浄水又は処理水を提供する方法及び装置を提供する。可能な水源は、井戸水、地表水、都市用水及び雨水を含む。処理生成物は、一般的使用、又は人間消費、又はその他の家庭使用、例えば水浴、洗濯及び皿洗い用であり得る。
【0015】
しばしば、上質飲料水は、高度に浄化された水と関連する。しかしながら、水に微生物汚染がない限り、最良の飲料水は、必ずしも最も化学的に純粋でないことがある。例えば約1メガオームを超える高い抵抗率に浄化された水は、例えば、イオン含量に欠けているので、「空腹」になり、かつ送水管系で使用されることがある銅のような物質に対して腐食性を持つ。味覚も、例えば重炭酸種の除去によって影響を及ぼされることがある。更に、水に添加されていた有益な、又は望ましい化学物質、例えばフッ化物及び塩素種は、望ましくない種と共に除去されることがあり、これらを水に再添加する必要が生じ得る結果となる。
【0016】
硬水、すなわち約60ppmを超える炭酸カルシウムを含む水を家庭に供給する場合には、硬水はしばしば軟水器を通過させることによって使用前に処理される。通常、軟水器は、再装入可能なイオン交換タイプであり、かつナトリウム形式のカチオン樹脂及び塩化物形式のアニオン樹脂を装入される。水が樹脂床を通過すると、カルシウム及びマグネシウム種のような硬度への主要な寄与物は、ナトリウムと交換される。このようにして、二価カチオン及び、特にカルシウム及びマグネシウムイオンの濃度が減少すると、水は、軟水化できる。しかしながら、除去される全ての等量のカルシウムに対して、等量のナトリウムが処理水に添加される。それ故に、水は軟化されるが、硬度種は、消費者によっては望ましくないと考えられるナトリウムイオンと置き換えられる。更に、これらのイオン交換床が、塩化ナトリウム溶液ですすぐことによって再装入される時、結果として生じるブラインは、別途処理されねばならず、かつしばしば、ブラインが地下水に再度入るために利用できるようになる汚水処理システムに放出される。管轄区域によっては、ブラインを家庭用汚水処理システムに放出することは、規制又は禁止されている。
【0017】
その他の軟水化方法には、高純度の水を供給できるものの、一般的に速度が遅く、かつ高圧ポンプの使用を必要とする、逆浸透装置の使用があるが、多くの逆浸透膜は井戸水中にしばしば見られるシリカのような溶解種の存在によって汚染されることがある。
【0018】
ここで記載された例は、電気脱イオン化装置を使用するが、容量脱イオン化のような他の水処理技術も応用可能である。
【0019】
連続電気脱イオン化装置も、給水から硬度成分を除去するために使用できる。しかしながら、大部分のCEDIシステムは、電力的、空間的及び供給上の要件を有し、それにより家庭用途には非実用的になっている。その上、塩素は、イオン交換樹脂の存在下で望ましくないことがあるので、塩素化給水を軟水にする場合、しばしば塩素は、最初に水から除去されねばならない。このことは、このように処理されたいかなる水も、塩素化給水の残留殺菌性の恩恵を受けないことを意味している。
【0020】
高い頻度で、CEDIシステムは、できるだけ多くのイオンを除去するように設計され、かつカルシウム及びナトリウムのような容易にイオン化可能な種は、給水中に存在する1%未満のカチオンが処理水中に残るように効率良く除去される。多くの産業及び商業用途に、この高度に浄化された水は、有益であり得るが、しかしながら、このレベルの純度は、あるレベルのカチオン含量が有益であり得る家庭用給水には、望ましくないことがある。更に、この高度に浄化された水は、腐食性なことがあり、かつ家庭用配水システム内にしばしば存在する銅管を侵蝕する傾向があり得る。家庭用配水システムによっては、鉛はんだ継ぎ手を含むことがあり、かつ鉛のような重金属は、管を通過する水に浸出することもある。
【0021】
管轄区域によっては、健康安全規制に従うために、最低レベルのカルシウムが必要なことがある。それ故に、例えば給水から90又は99%を超えるカルシウムを除去する高純度システムは、これらの場所で不適切であり得る。
【0022】
1つ以上の実施態様による本発明は、家庭で消費するためには理想的な水であり得る特性を有する浄水又は処理水を生成するために、CEDI技術を利用できる。例えば、装置は、硬い又は非常に硬い給水を軟水にできるが、それにも拘わらず約60ppm未満の炭酸カルシウムのレベルで、あるレベルのカルシウムを保持できる。その上、塩素は、水中で保持される場合、その殺菌性が少なくともいくらかでも保存されるので、水は、処理後に相当な期間にわたって保存することができる。重炭酸種も、より良い味覚の水を提供するレベルで保持できる。フッ化物も、追加フッ化物の補充が不要であり得るように保持できる。その上、シリカ、ホウ素のような混合物、及び他のイオン化されにくい種も、他のCEDI方法よりも高い所望のレベルで保持できる。ホウ素及びシリカのようなこれらの微量物質を保持することにより、処理水の特性は、より多量のこれらの物質を除去させた水よりも改良できることがある。本発明の実施態様によっては、少なくとも80又は90%のこれらの化合物が保持でき、他方で25%、30%又は50%を超える、カルシウムのような硬度寄与化合物が除去される。
【0023】
その上、本発明は、水への水素(H2)の添加を行うが、このことは、処理水の腐食性を減少させることに寄与し得る。水への水素の添加は、検出可能な溶解水素の増加、又は結果として生じた酸化性種の濃度の減少によって現れ得る。このことは、所望の抗酸化性を同様に提供できることを示す。pHは、仮に完全に変更されるならば、一般的に供給水のそれに近くにでき、それ故におおよそ中性pHで非軟化水道水を使用するために設計された装置又はシステムに悪影響を有さない。
【0024】
本発明の装置は、比較的小さな設置面積を有し、かつ多くのCEDI又はその他の処理システムよりも少ないエネルギーを使用するだけで、ピーク家庭需要状況を満たす多量の処理水又は軟水を供給できる。再装入サイクルが必要でなく、かつ処理水の貯蔵が形成され得るので、軟水を連続的に供給できる。
【0025】
更に、本発明の方法及び装置は、処理システムから放出されるイオン負荷を増加させずに処理水を提供できる。従来の化学処理システムは、例えば、塩化ナトリウムの再装入を必要とすることがあり、この塩化ナトリウムは水から除去された硬度種に置き換えられる。このことは、硬度種及び置換される種の両方が、軟水又は放出するブライン中のいずれかに存在することを意味する。これにより、家庭から放出される廃水のイオン負荷が増え、かつ地下水に害をもたらし得る。しかしながら、本発明の実施態様によっては、給水を経由して家庭に入るイオン種のみを放出できる。更に、軟水工程の結果として放出される廃水の総量は、従来の軟水によるものより著しく少なく、例えば処理される水の量の10%又は5%未満であり得る。
【0026】
本発明のシステムの1つの実施態様を、図3に概略的に示す。図3は、家庭内のような種々の設備内で使用できる軟水システム10を示す。給水は、例えば井戸水又は都市用給水であっても良い入口点14で供給される。
【0027】
T字管24で、水は、導管26及び28の一方又は両方に入ることができる。導管26を通過する水は、通常、T字管22で導管94に導かれ、かつ圧力指示器20a及び通過入口62を通った後で保存容器12に注ぎ込む。水の需要が保存装置の下流に存在する時は、水は、通過出口64から出て、圧力センサ20bを通り、かつ需要源に応じて、導管96か導管98、又は両方に入る。導管98は、圧力センサ20d、並びに弁32a及び32bを過ぎて、供給点18に通じる。供給点18は、配管システムに流動的に接続されるか、又は電気器具又は浴場のような特定の使用地点に選択的に結合され得る。
【0028】
導管96を通過する水は、導管52又は導管54、又は両方に入ることができる。1つの構成において、導管52に入る水は、弁32cによって導管70及びポンプ30aに導かれる。導管72、及び例えば炭素フィルタ、粒子フィルタ、又は曝気装置であっても良い任意の前処理装置28aを通過した後、水は導管60に導かれ、その地点で電気脱イオン化モジュール100に入る。導管60を経由して入る水は、1つ以上のイオン減耗区画(以下単に減耗区画)を通過することによって浄化され、かつ電極区画、例えば陰極区画も通過できる。
【0029】
陰極区画(ここで処理された生成水が生成される)の上流又は下流で減耗区画に配管を設けることにより、システムは、陰極を経由して接地できる。このことが、消費者にとって安全上の問題を減少させ得るので、家庭用の設置では特に有利であり得る。更に、陰極で形成され得る水素ガスは、通過する生成水中に溶解させることができ、水に陰極区画をバイパスさせるよりも、腐食性が低くなり得る生成水をもたらす。生成水は、陰極、陽極又は両方に注ぎ込む(即ち陰極、陽極又は両方から水を受ける)ことがある。生成水が、両方の電極と連通するならば、システムは、減耗区画が、電極区画と直列又は並列であるように配管を設けることができる。導管63を経由して電気脱イオン化モジュール100から出た後、浄水は、弁32eによって導管92及び圧力読み取り装置20cに導かれ得る。次に水は、T字管22に進み、かつ保存容器12に入る前に導管94に導かれる。それ故に、保存容器12は、導管92からの浄水、並びに入口点14から提供された未処理、又は最小限処理された水を含むことができる。保存容器12は、これら2つの水源が混合されるように、あるいは2つの水源が分離され、例えば水源の一方が、保存容器12の底部に入り、かつプラグフロー(押出し流れ)方式で出口64に上向きに進むように構成できる。電気脱イオン化モジュール100の性能は、塩素の除去を含む前処理によって改良でき、自治体によって処理された給水は、電気脱イオン化モジュール100へ入る前に炭素フィルタ28aのような塩素低減フィルタ、又はその他の前処理装置を通過しても良い。
【0030】
前処理装置は、ループ内の他の場所にも置かれ得る。電気脱イオン化モジュール100内で処理された後に保存容器12に入る水は、僅かな塩素(若しくは代替消毒剤)を含むか、又は含まなくても良く、かつ保存タンク12内の残留塩素レベルを保持するために、水は、入口点14からの未処理水と混合できる。好ましくは、塩素化水は、細菌学的活性を阻害するのに十分な塩素を含む混合水をもたらすために、適切な率で添加される。活性塩素とは、抗菌活性を示す種を含む塩素を指す。有効塩素濃度は、保存容器12内で大腸菌のような細菌の増殖を阻害する活性塩素化合物、例えば次亜塩素酸ナトリウムの濃度として、ここでは定義される。従って、給水及び処理水が保存容器12内で混合される比率は、電気脱イオン化装置100の効率、所望の有効塩素濃度、保存容器12内に含まれる水が減耗される速度、保存容器12の温度、及び給水源及び品質を含む多数の要因によって決まり得る。当然に、井戸水又は未処理水のもう1つの水源が使用されるならば、有効消毒剤レベルの維持は、無視できる。
【0031】
水が浄化ループを通って再循環される間、付加的な水が導管54を経由して弁32dに供給され、そこで、電気脱イオン化モジュール100に入る前に、導管88、ポンプ30b、導管90、前処理ユニット28b及び導管80に導かれ得る。導管80から、水は、同様に陽極区画と直列に配管を設けられる1つ以上のイオン濃縮区画(以下単に濃縮区画)に注ぎ込むことができる。陽極区画は、濃縮区画の上流又は下流に位置できる。陽極区画を通過することによって、水のpHは、下げられ、かつ低いLSIを有する水をもたらし得る。0(スケール形成なし)未満に減少することがある低いLSIは、水のスケール形成可能性を減少させ、かつそれ故に、より低い保守、より高い水の回収、増加した態様寿命及びより信頼性の高いシステムを提供する。電気脱イオン化モジュール100から出る濃縮物は、通常、導管82に入り、かつ弁32fによって導管84及び67に導かれ、そこで、濃縮物の一部が、弁32g及びドレン26を経由して、絶えず又は断続的に廃棄物で放出され得る。水の追加部分は、導管66に入ることができ、かつ電気脱イオン化モジュール100に導管86及び弁32dを経由して再循環できる。このように、濃縮溶液は、ループ中で非スケール形成環境を維持しながら最小量の水を放出できるように、特定のレベル、例えば予め選択されたLSIに到達するまで、イオンを受け入れることができる。水保全は、軟水を必要としない、灌漑のような用途に濃縮物を使用することによって更に改良できる。
【0032】
極性反転システム又は技術が使用されるならば、先に記載したループは、浄化ループが濃縮ループとして稼働し、かつ濃縮ループが浄化ループとして稼働するように、切り替えられる。本発明の1つ以上の実施態様によれば、陽極及び陰極の極性が切り替えられる時、濃縮及び減耗区画の機能も切り替えられ、かつポンプ30a、前処理装置28a、導管60及び導管63、並びに弁32eは、各々が濃縮ループの構成要素になる。同様に、ポンプ30b、前処理装置28b、導管80及び導管82、並びに弁32fは、保存容器12に水を供給する浄化ループの構成要素になる。それ故に、電気脱イオン化モジュール区画が切り替えられるだけでなく、場合により弁32gを除く、前処理装置、ポンプ、弁、ゲージ及びT字管のような関連する構成要素全部が、浄水及び濃縮水を運搬する間に変更され、結果として、長期のスケール形成の機会が減少し、かつ形成され得た何らかのスケールが溶解する機会が増加する。このことは、弁、オリフィス、フィルタ又はT字管のような構成要素内で、スケール形成を減少させることにおいて、特に有利であることが証明された。逆極性サイクルは、時間、水源の水質、温度、浄水の水質、所望の水質及び水使用速度を含む多数の要因に基づくことができる。
【0033】
有効レベルの塩素を保存タンク12内に提供することに加え、システムは、重炭酸、フッ化物、シリカ及びホウ素のような他の成分のレベルを維持するために操作できる。電気脱イオン化モジュール100は、イオン交換物質を含むことができ、かつこれらの種の幾つか又は全部の除去を最小限に抑えることを目的とする電流及び流量で、操作できる。その上、水中に存在するカルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン又は他の硬度成分は、例えば約200、300、400又は500ppmの硬度を含む浄水を提供するために、保持され得る。このことは、腐食性が低く、かつ低いレベルの硬度に還元された水が示すよりも「美的な」品質を示す水をもたらし得る。電気脱イオン化装置の1回の通過において、例えば約20、30、40、50又は60%の二価カチオンを除去することによって、装置は、1回の通過において水から二価カチオンをより完全に除去することを目的とする装置よりも、低い電力及び小さい設置面積を必要とし得る。
【0034】
更なる実施態様によれば、本発明のシステム及び技術は、使用地点に送り出され得るいかなる細菌も死滅させるか、不活性にすることが可能なサブシステムの後処理システムを含むことができる。例えば、後処理システムは、化学線で処理水又は浄水を照射するか、又はオゾンで暴露するか、又は限外濾過及び/又は精密濾過によっていかなる細菌も除去することができる装置を含むことができる。
【0035】
LSIは、ランゲリア飽和指数を指す。LSIは、どれ程スケール形成が起きるかを示さないこともあるが、水が、スケールを堆積させるか(LSI>0)、カルシウム堆積物を溶解するか(LSI<0)、又はカルシウム堆積物に関して平衡であるか(LSI=0)の情報を提供できる。通常、LSIは、水を平衡状態に至らせるために必要とされるpH変化に等しい。例えば、約1.0のLSIを示す水は、1.0pH単位だけ水のpHを減少させることによって、平衡状態に至らせることができる。LSIの算出は、ASTM D−3739に従って実行できる。
【0036】
本発明の1つ以上の実施態様によれば、水の使用も減少させながら、いかなるpHの増加も減少させる方法が提供される。水は、陰極区画、並びに1つ以上のイオン減耗区画を通過させることができ、かつ本来は陰極区画のみに割り当てられるであろう水は、生成水及び陰極区画の電解液の両方の役目を果たすことができる。水は、生成水として使用する前に、最初に1つ以上、又は全部のイオン減耗区画に、そしてそれから陰極区画に供給できる。あるいは、給水は、最初に陰極区画を通り、次に1つ以上のイオン減耗区画を通り、次に使用地点に移動する。このようにして、陰極区画を通過する水の全部又は一部は、生成水として使用でき、水節約がもたらされる。陰極区画が、1つ以上のイオン減耗区画に流動的に接続され得るかかる配列は、同様に陰極を介した水システムの有効な接地を与えることができ、それ故に、例えば家庭用水システムのような特殊な設置に好まれ得る、より高いレベルの安全及び供給能力をもたらす。
【0037】
水は、陰極区画への流入時間から流出時間まで約2未満のpH単位のpHの増加をもたらす速度で、陰極区画に供給され得る。他の実施態様において、pH増加は、約1、0.5、0.2、0.1又はそれ未満のpH単位に限定され得る。pH増加を減少させるいかなる技術も用いることができる。陰極液中でpH増加を制御する1つの方法は、陰極区画を通る流体の流れを増加させることによる。陰極区画を通る水の流れを、モジュール内の減耗区画の1つを通る流れと比較すると、約1:2、1:5、1:10、1:50又はそれを超える流れ比率が、好ましいLSIを示す水を提供できる。例えば、1つのイオン減耗区画を通る流れが、1時間当たり約40リットルならば、陰極区画を通る流れは、1時間当たり約400リットルで、イオン減耗区画を通る流れ及び陰極区画を通る流れの間で約1:10の比率を提供できる。モジュール内の全部のイオン減耗区画を通過する水が、同様に陰極区画を通って導かれるならば、(各区画を通る流れが等しいと仮定して)陰極区画及び個別のイオン減耗区画の間の流れの比率は、モジュール内のイオン減耗区画の数と等しい。例えば、25のイオン減耗区画を含むモジュールにおいて、イオン減耗区画を通過する全ての水が、陰極区画も通過するならば、イオン減耗区画のいずれかを通過する水の流れの、陰極区画に対する比率は、各イオン減耗区画を通過する流れが同じであれば、約1:25になる。
【0038】
生成水を陰極液として使用することは、幾つかの理由で、例えば、通常低い抵抗率の水でもって良好に振舞う陰極区画内の生成水が高い抵抗率を持つなどの理由で、直感に反するように見えることがある。しかしながら生成水は、モジュールの性能が著しく低下するに至るまで陰極区画を通る水の導電率が変更されないように、十分に低い抵抗率、例えば約1メガオーム未満であっても良い。更に、生成水が陰極区画を通過する際に、生成水へ溶解水素ガスを添加することにより、LSIの同時増加なしに、低い腐食性の水を提供することができる。この水は、例えば抗酸化活性の結果、健康上の利点も提供できる。これを使用して生成された水は、未加工の水道水又は従来の手段によって軟化された水よりも、銅又は銅含有部品への腐食性が低い。
【0039】
陰極区画を通る流量は、スケール形成を最小限に抑えるために適切であるように設定又は調整できる。好ましくは、陰極区画を通る流量は、モジュールを通過する電流1アンペア当たり、毎分約5リットルを超える水である。より好ましくは、陰極区画を通る流量は、モジュールを通って印加される1アンペア当たり、毎分約12リットル以上の水である。通常、陰極区画内で起きるpH上昇は、要因の中でもとりわけ、区画を通過する電流との相関関係にあるので、pH増加は、電流増加に対応して、区画を通る流量を増加することによっても緩和できる。
【0040】
従来のCEDIモジュールは、しばしばイオン濃縮区画内のスケール形成に遭遇する。このことは、その中の水のカルシウム濃度増加の結果であり得る、LSI増加に起因することもある。
【0041】
もう1つの実施態様において、イオン濃縮区画内のスケール形成は、濃縮区画を通過する水のLSIを下げることによって減少できる。この減少を達成する1つの方法は、陽極液として水流濃縮物の少なくとも一部を使用することによる。このようにして、カルシウム及び他の溶解イオン成分の高い濃度の結果生じるLSI増加は、LSIのpH成分を下げることによって対抗できる。このことは、陽極区画に濃縮物を通すことによって行うことができる。例えば水は、最初にCEDIモジュール内の濃縮区画の1つ以上を通過でき、かつ次に陽極液として陽極区画を通り導かれ得る。次に水は、廃棄物として放出できるか、又は高濃度の溶解種を作るため、かつそれ故に放出せねばならない水量を減少させるか、又は節約するために、システムを通してリサイクルされる。それ故に、少なくとも1つの濃縮区画及び少なくとも1つの陽極区画を含む「ループ」を、用いることができる。水の一部は、スケール形成をもたらし得るレベルへのカルシウム又は他のイオン成分の蓄積を妨げるために、かかる濃縮区画/陽極区画ループから絶えず又は断続的に抜き取るか、又は放出できる。あるいは、廃棄物になる代わりに、このイオン強化水は、処理水を必要としない用途、例えば灌漑、及び他の従来の家庭雑排水使用で使用できる。
【0042】
水は、最初に陽極区画、又は最初に1つ以上のイオン濃縮区画を通過できる。例えば、最小pH水を所望するのであれば、陽極区画内の流体滞留時間は、例えば数個又は唯一のイオン濃縮区画と流動的に連通させることによって増加できる。あるいは、全てのイオン濃縮区画が、陽極区画と連通しているのであれば、これらの流体の水流の各々は、流体に寄与すべきであり、かつ陽極区画を通る流れは、大きくなり、小さいpH減少をもたらす。
【0043】
水は、最初に陽極区画、かつ次に1つ以上のイオン濃縮区画を通過できるか、あるいは水は、最初に1つ以上のイオン濃縮区画、かつ次に陽極区画を通過できる。イオン濃縮区画内でのスケール形成を妨げるために、最初に流体の水流を陽極区画に、かつ次にイオン濃縮区画に供給することが好まれ得る。このようにして、供給のpHが、イオン濃縮区画に導入される前に(LSIのように)下げられる。水が陽極区画を通過し、かつイオン濃縮区画が、再循環ループの一部である時、再循環ループ内の(通常、一部が陽極区画をすでに通過した)流体は、新鮮な供給を2つの区画に導入する順序に拘わらず、1つ又は全部のイオン濃縮区画に減少したpHを有する水を一貫して提供できるので、水を最初に陽極区画に通すことは、重要でないことがある。
【0044】
本発明のもう1つの実施態様において、モジュールの少なくとも1つのイオン減耗区画は、陰極区画と連通し、かつモジュールの少なくとも1つのイオン濃縮区画は、陽極区画と流動連通する。本発明の更にもう1つの実施態様において、モジュールの印加電気極性が切り替えられた時、極性反転が完成した直後に2つの流体の水流が対応して同様に機能を交換できるように、陽極/濃縮区画の構成は、陰極/減耗区画の構成と類似又は同一であって良い。このことは、多くのCEDI極性反転システムと比較して、要求される弁の数を減少させる極性反転システムを提供できる。それ故に、極性反転の必要性は、他の設計変更に起因するLSI減少のために縮小し得るが、極性反転を望むならば、ループの機能は、極性変更に適応させるために切り替えることができる。
【0045】
2つのループの各々を、二者択一的に濃縮/陽極ループ及び減耗/陰極ループの役目を果たすように構築することによって、ループ全体及びその関連する構成要素は、高いLSI流体に連続的に曝される必要がない。すなわち、各ループは、各ループが交互に濃縮及び減耗の役割を果たすことを可能にするようにある程度の機能対称性を提供するよう構成されるか、あるいはそのような構成要素を有する。
【0046】
本発明のもう1つの実施態様によれば、水処理システム、好ましくは図3に示されたもののようなCEDIに基づくシステムは、処理水が再生なしに連続的に家庭消費用に生成できるように、使用地点に提供される。処理水の供給は、再装入可能な軟水装置のような従来の水処理装置が再生を必要とする時には中断できる。しかしながら、本発明は、軟水の中断なしの供給を可能にできる。その上、システムは、伝統的な水処理システムの設置及び保守の訓練を受けた技術者によって設置され、かつサービスの提供を受けることができる。
【0047】
図1は、本発明の1つの実施態様を示す。モジュール100は、平行かつ交互のイオン減耗及びイオン濃縮区画の群、並びにモジュールの反対端の関連する陰極及び陽極区画を示す断面図で示す。粒子及び/又は炭素フィルタを通過することによって処理されても、又は処理されなくても良い家庭用水源、例えば井戸水又は都市用水からの水は、導管116のような1つ以上の導管によってシステムに供給される。導管116から、水は、イオン減耗区画140a、140b及び140cを通って供給される。水は、導管118からイオン濃縮区画130a、130b及び130cへ供給される。減耗及び濃縮区画の両方は、通常、電気活性種又は(結合、又は非結合であっても良い)イオン交換樹脂若しくは繊維のようなイオン交換材料によって満たされ、かつ各区画は、アニオン浸透膜及びカチオン浸透膜によって結合される。但し、他の実施態様において、区画は、2つの類似タイプの膜によって結合できる。イオン減耗区画140a、140b及び140cを通過した後、水中のTDS(総溶解固形分)の一部、例えば30%、及び特にカルシウム及びマグネシウムのような硬度イオンの一部は、通常イオン減耗区画から隣接するイオン浸透膜を通り、隣接するイオン濃縮区画に移る。次に水は、各イオン減耗区画の底部を通り、導管160に移り、それは次に陰極122を含む陰極区画120に注ぎ込む。陰極区画120は、イオン交換物質を含んでも含まなくても良く、かつ電流がモジュールを通過する間に、水が区画を通ると、水のpHは、通常、増加し、かつ水素ガスが、通常、100万分の1の量で水中に溶解する。導管180を経由して陰極区画から出た後、水は、保存タンクと連通した再循環ループに合流できるか、又は使用地点に直接注ぎ込むことができる。
【0048】
導管118を経由してモジュールに入る水は、アニオン浸透膜又はカチオン浸透膜のようなイオン半透膜によって結合される濃縮区画130a、130b及び130cを通過する。イオン濃縮区画は、電気活性媒体又はイオン交換樹脂若しくは繊維のようなイオン交換物質によって満たされ得る。イオン濃縮区画を通過した後、水は、隣接するイオン減耗区画から受けたイオン性種によって強化される。この区画に入った時よりも高いレベルのTDSを今や含むこの水は、導管150を経由して区画から出て、陽極112を含みかつイオン交換物質で満たされていても、満たされていなくても良い陽極区画110に入る。水が陽極区画110を通過する時、水のpHは、下げられることがあり、それ故に濃縮流体のLSIを減少させる。次に水は、水の全部又は一部が廃棄物で抜き取られるか、又は断続的に廃棄物で放出され得る導管170を経由して出る。水は、再循環され、連続的に濃縮区画130a、130b及び130cに注ぎ込むループにも入ることができる。このようにして、水は、カルシウム、マグネシウム及びその他のイオン種が、モジュール又は配管、フィルタ及び弁などの関連部品の区間でスケールを形成したり又は目詰まりを起こすような効率を減少させるほどのレベルまで蓄積されないように、十分に高い濃縮物を抜き取りながら、一定量に保たれる。このようにして、システムから除去されねばならない濃縮物の総計を最小限に抑えながら、カルシウム及びその他の硬度寄与種は、水から除去できる。例えば、約15、10又は更に5%未満の処理される水の量が、廃棄物で放出できる。更に、システムから除去される濃縮物は、灌漑又は硬度レベルによって悪影響を受けないことがあるその他の使用のような非軟水用途で有用であり得る。pHを上昇又は緩和するための高レベルのカルシウムの添加は、芝生保守のような、pHに敏感な幾つかの用途に利益になり得る。
【0049】
他の実施態様が、モジュール200を断面図で表す図2に示される。水は、陰極区画に供給する導管218、又は陽極区画210に供給する導管216を通って、保存タンクを含む保存ループの一部であり得る原水、処理水又は濾過された給水からモジュールに入る。陰極区画220は、陰極板222を含み、他方で陽極区画210は、陽極板212を含む。システム内のエンドブロック214及び224を通過するスペーサ及び電極は、コネクタによって一緒に保持できる。陽極区画210を通過する水は、この区画に入った時よりも低いpHで、導管260を経由して区画から出る。この水のpHは、この区画を通る水の流量を含む幾つもの要因によって、並びにモジュールを通過する電流の規模によって制御できる。例えば、電流が大きく、かつ流量が低いほど、pH減少は、大きくなり得る。導管260から、水は、濃縮区画230a、230b及び230cを通過する。これらの区画は、イオン交換樹脂又は繊維のようなイオン交換物質を含むことができ、かつアニオン、カチオン又は両方の浸透性であっても良い半透膜290によって結合できる。水が区画230a、230b及び230cを通過する時、通常、隣接イオン減耗区画240a、240b及び240cからのイオン種の移行によってイオン濃度を増加させる。イオン濃縮区画から出た後、水は、導管270に導かれ、かつ水の一部又は全部は、絶えず又は断続的に廃棄される。導管270は、水が、廃棄物として放出される前に、更に濃縮できるように、導管216及び陽極区画210に水を戻す、再循環ループの一部であっても良い。廃棄物として失われたいかなる水の量も、入口216からの給水の添加によって補給できる。
【0050】
導管218を通って入る水は、陰極222を含む陰極区画220に導くことができる。水は、陰極区画の頂部から陰極区画の底部に移動し、かつ入った時より高いpHで区画から出る。水は、陰極区画に入った時よりも高い溶解水素濃度で出ることもできる。陰極区画から出て、かつ導管250に入った後、水は、イオン減耗区画240a、240b及び240cに導くことができる。これらの区画は、イオン交換材料、例えばイオン交換樹脂又は繊維を含むことができる。減耗区画に含まれるイオン交換材料は、アニオン交換材料、カチオン交換材料、混合イオン交換材料、又はアニオン交換材料、カチオン交換及び/若しくは混合イオン交換材料が交互に重なった層であっても良い。好ましくは、イオン減耗区画は、隣接濃縮区画のように、混合イオン交換樹脂を含み、区画が極性反転後に機能を変更することを可能にする。イオン減耗区画通過後、水は、入った時よりも浄化された状態で、例えば、元のイオン濃度(及び特に硬度イオン濃度)の約20、40、60又は80%未満を含んで出る。次に水は、水を使用地点又はループに送ることができる導管280、及び水を追加の源水と混合でき、かつ1回以上、モジュールを通って再循環できる保存システムに導くことができる。このようにして、水中に含まれる比較的低い率、例えば約10、20又は40%のイオン種を除去することにより、水は、同じ除去効率で、数回のシステム通過後に著しく更に浄化できる。例えば、(使用比率によって決まる)処理水が、源水によって希釈される比率に応じて、各通過で、約40%、水中の硬度イオン種の濃度を減少させるモジュールは、源水自体の硬度の20%しか含まない浄水をもたらし得る。このようにして、処理水は、低い流れかつ低い電流条件で稼働する、比較的小さいモジュールによって提供できる。例えば、濃度ベースで、約1800ppmまでの硬度濃度を有する給水は、再循環ループシステムを実施することによって約600ppm以下に減少できる。
【0051】
モジュールは、逆極性モードでも稼働できる。2つの電極の極性が反転された直後、陽極及び濃縮区画を含むループは、陰極及び希釈区画を含むループと機能を切り替えることができる。このようにして、区画220は、陽極区画になり、かつ区画210は、陰極区画になる。同様に、区画240a、240b及び240cは、イオン濃縮区画になることができ、かつ230a、230b及び230cは、イオン減耗希釈区画になることができる。電極区画を一連のイオン交換区画に結合させることによって、極性反転で駆動されるために必要な弁の数は、減少できる。例えば、図2に例として示したモジュールにおいて、導管270及び導管280の機能は、2つの弁を単に切り替えることによって、変更できる。このことは、多数の独立弁付き部品を含み得るシステムと対照的である。例えば、陽極区画、陰極区画、イオン減耗区画及びイオン濃縮区画が、別個に配管を設けられたならば、電極の極性を反転した後、これらの各区画の機能を対応して変えるためには、追加の弁が必要とされ得る。この追加の弁を付けることは、コスト及び保守要件の増加につながり得る。
【0052】
なおも更なる実施態様によれば、本発明のシステム及び技術は、例えば湿った構成要素の少なくとも一部を、ハロゲン、ハロゲン供与体、及び/又は過酸素(peroxygen)化合物のような酸化化合物のような消毒剤に送り出す又は暴露することによって、処理システムのいずれかの湿った構成要素を消毒するシステム及び方法を提供することを含むことができる。
【実施例】
【0053】
CEDIシステムによって処理された水は、未処理水と比較した時、減少したレベルのTDS、pH及びLSIを含み得るので、CEDI処理水は、生成水がどれ程腐食性であり得るか判定するためにテストされた。これらの結果は、CEDI処理水が、多くの住宅用水システムのような、銅配管を含むシステム内で使用すべき時、特に重要であり得る。特に、本発明の1つの実施態様によって処理された水は、未処理水、CEDI処理水、及び従来の軟水システムによって処理された水と並んで銅腐食性に関してテストされた。腐食、又は浸出テストが、試験片として直径1インチ×長さ2インチの銅管に対して実行された。試料としては、比較対象水としてのCEDI処理水(2構成)と、未処理水及び軟水が選ばれた。
【0054】
未処理水(HARD)は、約490ppmのTDSレベル、約18gpgの硬度及び約7.8のpHを有するイリノイ州ノースブルックからの井戸水であった。未処理水のLSIは、0.8〜1.0の範囲であった。従来の軟水(SOFT)は、Culligan Corporation、イリノイ州ノースブルックから入手可能な、1立方フィート(cu.ft.)の標準CULLEX(登録商標)樹脂を含む、9インチの軟水装置で井戸水を処理することによって得られた。CEDI水は、直列貯蔵器を含まないシステムによって実験1で生成された。実験2で、CEDI処理水(PRODUCT)は、図3に示されたCEDIシステムの直列貯蔵器のタンク出口で得られた。それ故に、実験2は、CEDI生成水をCEDIモジュールの減耗区画に通し、かつ次に陰極区画に通すことを含んだ。
【0055】
試験片は、直径1インチの銅管を長さ2インチの部片に切断し、かつ全てのバリを除去するために、それらをトリミングすることによって調製された。試験片は、いかなるグリース及び切断操作の金属の削り屑も除去するために、アセトン、それに続くRO水中ですすがれた。試験片は、各々150mlの2N HCl溶液中で1分間洗浄され、かつ中和溶液中で隔離された。次にそれらは、再度RO水ですすがれ、かつきれいに拭き取られた後、乾燥器内で一晩保存された。合計12の試験片が、実験2のために調製された。
【0056】
各カテゴリーの水は、5つの500mlのビーカーに取り置かれた。各水試料は、定期的に、かつ類似したパターンで採取された。試料は、次のようにテストされた。
【0057】
実験1−
第1の実験は、実験2よりも少数の試料を含み、かつ腐食分析が、澱んだ条件で実行された。生成水試料は、システムから取られ、かつ1日目、4日目及び12日目に分析された。水は、直列貯蔵器のない低い流れCEDIシステム内で処理された。水は、次の条件で1回(陰極でなく)減耗区画を通過した。
・25セル対−連続使用、単流操作による低流動性小型スタック
・区画寸法:7.5インチ×幅1.2インチ
・樹脂充填:60%IRA−458アニオン樹脂、40%SF−120カチオン樹脂
・濃縮物再循環及び生成物放出流量:〜1l(訳注:1リットル)/min
・廃棄物/排出連続放出流量:〜500ml/min
・電極連続流量:電極当たり〜300ml/min。新鮮な給水が電極区画に送られた
・印加電圧=36V、又は1.45V/セル
・供給導電率=740μS
・生成物は、単流操作から得られた
【0058】
実験1から生じた腐食は、図5及び7において報告される。これらの図は上述のように原水、従来の軟水及びCEDIシステムによって生成された水の比較を提供する。
【0059】
実験2−
A−澱んだ水が、いかなる試験片もなしで対照(control)として使用された。試験片を含まない澱んだ水の試料は、試料C、D及びEのように(下記参照)、1日目、5日目及び12日目に分析された。
B−3つの水(changing)の各々は、別個のビーカー内に置かれ、かつ浸漬した試験片が、新鮮な水と接触することを可能にするために、水は定期的に変えられた。このことは、浸出に対する新鮮な水の効果を観察するために行われた。交換された水は、水が換えられる度に分析された。3つの試料中の水は、1日目、5日目、9日目及び12日目に変えられた。
C−試験片は、正確に1日間、3つの水(澱み水)の各々の中で浸漬された。水は、1日後、分析のために送られた。
D−試験片は、5日間、3つの水(澱み水)の各々の中で浸漬された。水は、5日間の停滞後、分析のために送られた。
E−試験片は、12日間、3つの水(澱み水)の各々の中で浸漬された。水は、12日間の停滞後、分析のために送られた。
【0060】
実験2は、次の条件で、直列貯蔵器及び陰極を通る生成物の技術(product−through−cathode)を使用してCEDIシステムによって実行された。
・25セル対−直列貯蔵器/タンクシステムを有する陰極スタックを通る生成物
・区画寸法:7.5インチ×幅1.2インチ
・樹脂充填:60%IRA−458アニオン樹脂、40%SF−120カチオン樹脂
・濃縮物再循環及び生成物再循環流量:〜1.4 l/min
・廃棄物/排出水洗(定期的に水洗される)流量:〜200ml/min
・陰極を通る生成水、陽極を通る濃縮物再循環流れ
・印加電圧=51V、又は2.04V/セル
・供給導電率=740μS
・生成水の試料は、約220マイクロジーメンスの設定点でタンクから収集された。
【0061】
実験2のデータは、図8で以下に示す。CEDIシステムによって処理された水(PRODUCT)、従来処理された軟水(SOFT)及び未処理水(HARD)の銅濃度、pH、LSI及びアルカリ度の比較は、以下の表1〜4に与えられる。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
図4は、実験2の停滞条件での結果をグラフによって示す。図5は、実験1の停滞条件での結果をグラフによって示す。図4及び5の両方は、CEDI処理水が、給水及び従来の軟水の両方よりも腐食性が低いことを示す。
【0067】
図6は、水試料が断続的に変えられた時の実験2の結果をグラフによって示す。この場合も、本発明のCEDI生成水は、給水及び従来の軟水の両方よりも相変わらず腐食性が低かった。図7は、実験1で使用された電流及び生成された水の導電率を示す。図8は、実験2で使用された電流及び生成された水の導電率を示し、かつ実験1で達成されたもの(図7)を超える改良された水質を示す。
【0068】
結果は、全ての実験で、かつ全ての条件で浸出した銅の濃度が、CEDI処理試料において最低であったことを示す。CEDI水は、従来の軟水及び硬水の両方よりも低いpH値を有した。予期したように、従来の軟水及びCEDI処理水試料中のpH、アルカリ度及びLSI値は、停滞で増加した。未処理硬水のLSI及びアルカリ度値は、停滞で減少した。浸出した銅の濃度は、浸出した銅の濃度が図4に示すように5日後に安定したCEDI処理水試料を除き、澱み水で増加した。
【0069】
それ故に、図3の装置(陰極を通る生成物)を使用して処理された水は、硬い給水又は従来の軟水よりも、低いpH、低い(負の)LSI及び低いアルカリ度を示すにも拘わらず、減少した銅浸出をもたらした。その上、実験2のCEDI水は、実験1のそれよりも著しく導電率が低い(純粋である)が、それにも拘わらず、高い導電率の水と同じほど非腐食性であった。このことは、実験2の方法及び装置が、腐食が懸念され得る銅管又は他の物質を示す給水システムでの使用に特に適し得ることを意味する。ここで定義されたように、水は、1つ以上の上述のテスト工程を受けた時、低い銅濃度を示すならば、腐食性が低いと見なされる。従って本発明の生成水は、給水又は従来の軟水よりも腐食性が低くなり得る。
【0070】
当業者は、ここに記載された全てのパラメータ及び構成が、例示的なものであることが意図され、かつ実際のパラメータ及び構成は、本発明のシステム及び方法が使用される具体的な用途によって決まることを容易に認めるであろう。当業者は、定常の実験法の域を出ないものを使用するだけで、ここに記載された本発明の具体的な実施態様の多くの等価物を認識する又は確認できるであろう。例えば、当業者は、本発明によるシステム及びその部品が、システムのネットワークを更に含めること、又は家庭又は住宅用管理システムのようなシステムの部品であり得ることを認識できる。更に、本発明のシステム及び技術は、電気脱イオン化装置に関して記載された。しかしながら、他の電気化学装置又はシステムが、処理する流体中の何らかの望ましくない種の濃度を減少させるか、少なくとも部分的に除去する処理装置として利用できる。他の適切な電気化学装置には、電気透析装置、及び容量脱イオン化装置を含む。従って、前述の実施態様は、専ら例として提示されること、並びに添付の請求項及びその均等範囲内で、本発明が具体的に記載された以外の方法で実施できることが理解されるべきである。本発明は、ここに記載された各個別の特徴、システム、又は方法を対象とする。その上、2つ以上のかかる特徴、システム、又は方法のいかなる組み合わせも、かかる特徴、システム、又は方法が互いに矛盾していないならば、本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の1つ以上の実施態様による、電気化学装置又はモジュールの略図である。
【図2】本発明の1つ以上の実施態様による、もう1つの電気化学モジュールの概略図である。
【図3】本発明の1つ以上の実施態様による、システムの略図である。
【図4】3つの異なる水試料によって銅試験片から抽出された銅を示すグラフである。
【図5】種々の期間での、3つの異なる水への暴露後、銅試験片から抽出された銅を示すグラフである。
【図6】水が種々の間隔で変えられる、3つの異なる水への暴露後、銅試験片から抽出された銅の総計を示すグラフである。
【図7】本発明の1つ以上の実施態様による、生産水の導電率及び印加される電流をグラフによって示す。
【図8】本発明の1つ以上の実施態様による、スタック及びタンクからの水の導電率、並びに操作中印加される電流をグラフによって示す。
【符号の説明】
【0072】
12 保存容器
100 電気脱イオン化装置
110、210 陽極区画
120、220 陰極区画
140a、140b、140c、240a、240b、240c イオン減耗区画

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0未満のランゲリア飽和指数(LSI)を有する第2水流を生成するために電気化学装置の減耗区画に第1水流を通すことと、
第3水流を生成するために電気化学装置の陰極区画に第2水流を通すこととを含み、第3水流は、第1水流よりも腐食性が低く、かつ約0未満のLSIを有する、水を提供する方法。
【請求項2】
第2水流の腐食性は、陰極区画に水を通すことによって減少する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3水流は、水流中の酸化性種濃度を減少させることによって腐食性を低くされる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電気化学装置は、電気脱イオン化装置を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2水流を生成するために電気化学装置の陰極区画に第1水流を通すことと、
約0未満のLSIを有する第3水流を生成するために電気化学装置の減耗区画に第2水流を通すこととを含み、第3水流は、第1水流よりも腐食性が低い、飲料水を提供する方法。
【請求項6】
第1水流の腐食性は、陰極区画に水を通すことによって減少する請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第3水流は、水流中の酸化性種濃度を減少させることによって腐食性を低くされる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電気化学装置は、電気脱イオン化装置を含む請求項5に記載の方法。
【請求項9】
第1水流から90%を超える活性塩素を除去することと、
電気化学装置の減耗区画に水流を通すことと、
水流中に溶解した何らかのイオンの一部を除去することと、
保存容器を含むループに水流を導入することと、
ループ内の有効平均塩素濃度を維持するために適切な速度でループに第2水流中の活性塩素を導入することとを含む水中の残留塩素レベルを保持する方法。
【請求項10】
有効塩素濃度は、第1水流中の25%を超える塩素濃度である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
電気化学装置の減耗区画に、一価及び二価イオンを含む給水を通すことと、
処理水を生成するために、給水から少なくとも30%の二価イオンを除去し、かつ少なくとも約80%のシリカ、ホウ素及びフッ化物から選択される種を保持することと、
家庭消費用に処理水を供給することとを含む給水中のイオンを選択的に保持する方法。
【請求項12】
電気化学装置の減耗区画に水流を通すことと、
電気化学装置を通過する電流を制御するために、水流中で約25%を超える何らかの硬度イオンを除去するのに適し、しかし水流から約10%を超える何らかのフッ化物又はシリカ種を除去するためには不適切なレベルで、電気化学装置に印加される電圧を調整することとを含む浄水を生成する方法。
【請求項13】
10%未満の何らかのフッ化物種が除去される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
10%未満の何らかのシリカ種が除去される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
2度目に減耗区画に浄水を通すことを更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
電気化学装置は、電気脱イオン化装置を含む請求項12に記載の方法。
【請求項17】
電気化学装置は、電気透析装置を含む請求項12に記載の方法。
【請求項18】
軟水を生成するための給水から30%を超える何らかの硬度イオンを除去するために、イオン交換物質の床を介して給水を移すことと、
軟水を家庭消費用に供給することと、
カルシウムを含む濃縮溶液を放出することとを含む方法であって、軟水のイオン含量及び濃縮溶液のイオン含量の和が、給水によって供給された全イオン含量以下である方法。
【請求項19】
軟水は、給水よりも腐食性が低い請求項18に記載の方法。
【請求項20】
イオン交換物質の床を横切って電流を印加することを更に含む請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−511350(P2007−511350A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539940(P2006−539940)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/037940
【国際公開番号】WO2005/049205
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505146180)ユーエスフィルター・コーポレイション (11)
【Fターム(参考)】