説明

水処理システム

【課題】スラリー液や自然水界、廃水の液体等、清水以外の液体でも、システム全体で効率よく気液を混合し、槽および対象水域の溶存酸素濃度を高めることを可能とした水処理システムを提供する。
【解決手段】水処理システムS1は、槽内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプ8の吸込側8A前段で、エジェクタ装置7を介して液体中に気体を混入させ、その気液をミキサ装置9で撹拌した後、気液混合装置10Aへ送り、気液混合装置10Cは、流体導入管25の先端部が、流体導入口28として、密閉容器24の内底面に近接して開口するように設けることで、流体導入口を介して密閉容器内に導入された気液が、密閉容器の内面に沿って左右へ扇状に薄層拡散し、密閉容器内に高速渦流を形成し、この高速渦流によって効率よく気液が混合され、液体中の溶存酸素濃度が高められるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体と液体を混合し、槽内の溶存酸素濃度を高める水処理システムに関し、特に、スラリー液や自然水界、廃水の液体等、清水以外の液体でも、システム全体で効率よく気液を混合し、槽内の溶存酸素濃度を高めることができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の水処理システムとしては、例えば、渦流ポンプ内に気体と液体を吸引して気液を混合する方式が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、この方式によると、回転する羽根車とこれを収容する容器との隙間を極力狭めて気液中の気体を破断し撹拌するため、少なくとも羽根車とその回転支持機構が必要となり、機器構成が複雑であり、また、羽根車を回転させるための動力も必要である。さらに、この方式では、上記のような極狭い隙間に液中の混在物が挟まれ、羽根車がロックし回転できなくなったり、混在物による羽根車やその回転支持機構の磨耗等が生じたりするため、気液混合の処理対象となる液体は主に混在物の無い清水に限られ、スラリー液や自然水界、廃水等の液体を処理する水処理システムとして採用することはできない。
【0003】
また、特許文献1では、この種の水処理システムとして、渦流ポンプの吸込み側に気体を直接送り込む方式を開示している。しかしながら、その渦流ポンプに代えて、例えば現在最も一般的に多く使用されている非容積式タイプの遠心ポンプ(渦巻ポンプ)を用いると、遠心ポンプ内に多量の気体が吸込まれることによる遠心ポンプ特有の問題、すなわちポンプの空転や吐出量の減少等が生じる。このため、システム全体としての気液の混合効率を低下させるといった問題が生じる。
【0004】
特許文献3には、この種の水処理システムとして、長楕円球体状の器体(21)の周囲壁に気液導入孔(22a)を形成し、気液導入孔(22a)から器体(21)内に向けて混気水を導入することにより、器体(21)内で混気水を旋回させて気液を混合する方式が記載されている(同文献3の段落0017参照)。しかしながら、この方式によると、器体(21)内に導入された混気水の乱流渦の形成は本発明のような薄層拡散による高速流の形成とは異なる。
【0005】
その他、この種の水処理システムとしては、圧力流体を小孔から開放し急激に減圧して噴射する方式、ノズルから壁に向って圧力流体を噴射し壁に衝突させる方式、対向するノズルから流体を噴射して流体どうしを対向衝突させる方式も知られている。しかし、これらの方式でスラリー液や自然水界、廃水等の液体を処理すると、その液中の混在物が小孔やノズルに詰まってしまうため、この方式もまた処理できる液体は主に清水に限られ、スラリー液や自然水界、廃水等の液体を処理する水処理システムとして採用することはできない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−161278号公報
【0007】
【特許文献2】特開2002−273183号公報
【0008】
【特許文献3】特開2003−102324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、主にスラリー液や自然水界(陸水、海水、汽水)、人工水界(ダム等の貯水池、水産動物の飼育・養殖水域、風呂等)、家庭雑排水、工場廃水の液体等、清水以外の液体でも、システム全体で効率よく気液を混合し、槽および対象水域の溶存酸素濃度を高めることを可能とした水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の本発明に係る水処理システムは、槽内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプと、上記ポンプの吸込み側前段で上記液体中に気体を混入するエジェクタ装置と、上記ポンプから吐出された気液を撹拌するミキサ装置と、上記槽内に配置されるとともに、上記ミキサ装置で撹拌された気液を渦流により混合し減圧して前記槽内へ吐出する気液混合装置とを備えた水処理システムであって、上記気液混合装置は、円筒形の密閉容器と、上記密閉容器内に気液を導入する流体導入管と、上記密閉容器内から気液を吐出させる流体吐出口とを具備し、上記流体導入管は、上記密閉容器の内外周壁を貫通して該密閉容器内に入り込み、この入り込んだ流体導入管の先端部が、流体導入口として、上記密閉容器の内底面に近接して開口するように設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
上記第1の本発明に係る水処理システムでは、ポンプ、ミキサ装置、気液混合装置の3段で気液の加圧、撹拌、混合がなされる。また、この水処理システムで採用した上記気液混合装置は、流体導入口を介して密閉容器内に導入された気液が、密閉容器の内面に沿って左右へ扇状に薄層拡散し、密閉容器内に高速渦流を形成し、この高速渦流によって効率よく気液を混合する。
【0012】
上記第1の本発明に係る水処理システムにおいて、上記流体吐出口は、その中央に設けた吸込孔と、この吸込孔の周囲に設けた複数の噴出孔とを有するノズル構造からなるものとしてよい。
【0013】
上記ノズル構造によると、中央の吸込孔を通じて密閉容器内から外部に延びる気体柱を伴った引き込み渦が形成され、この気体柱を通じて密閉容器外の気体が密閉容器内へ入り易くなり、その結果、周囲の噴出孔から密閉容器内の気液が排出し易くなり、気液の排出効率が向上する。また、吸込孔と噴出孔とを介して行われる気液の吐出と吸込みの動作により、それらの孔の近くにおいて複雑な乱流が生じ、このような乱流によって気液の混合がより一層促進され、液中の溶存酸素量を増加させることができるという作用効果も得られる。
【0014】
上記ノズル構造において、吸込孔と噴出孔の口径は比較的大きく、それらの孔に液中の混在物が詰まることはない。但し、自然水界、廃水等の液中に存在する水以外の混在物のうち、落ち葉やその他の廃水に混入した大きな異物の類は少なくとも本気液混合装置への導入前に市販の金網などで除去しておくことが望ましい。市販の金網などを通過する砂粒は例えば長径5mm以下程度のものであれば容易に吸込孔や噴出孔を通過でき、比較的大口径の吸込孔と噴出孔を用いて前述のように効率的に気液の排出が行われるようにするとよい。
【0015】
上記ノズル構造において、中央の吸込孔の口径は、その周囲に開けた噴出孔の口径より大きく設けるとよい。このように構成すれば、噴出孔から排出された気液の一部を吸込孔が吸い込む際に、噴出孔から排出された混在物を吸い込んだとしても、吸込孔の目詰まりは生じない。
【0016】
また、上記ノズル構造を採用した構成においては、更に、上記流体吐出口の流体吐出側に吐出筒が取り付けられる構成を採用してもよい。
【0017】
上記のような吐出筒を取り付けた構成によると、吸込孔から吸込まれるのは噴出孔から排出された気液で、吐出筒の出口付近は噴出孔から排出された気液で占有されることから、吸込孔の目詰まりが生じなくなるという作用効果が得られる。もし仮に、この吐出筒を排除すると、噴出孔から排出された気液以外の液体も吸込孔が吸い込んでしまうおそれがあり、大型の液中混在物が吸込孔に詰まる可能性があるため、上記のように流体吐出口の流体吐出側には吐出筒を取り付けるのが好ましい。
【0018】
さらに、上記吐出筒を採用した構成においては、更に、上記吐出筒の外側から上記流体吐出口の流体吐出側陰圧部に連通する気体導入管を備える構成を採用してもよい。
【0019】
上記のような気体導入管を備える構成によると、流体吐出口の出入口付近では、吸込孔と噴出孔とを介して行われる気液の吐出と吸込み動作に、さらに気体導入管を介する気体の吸込み動作が加わって、より一層複雑な乱流が発生し、気液の混合が更に促進され、流体中の溶存酸素量の更なる増加を図れる。
【0020】
上記目的を達成するために、第2の本発明に係る水処理システムは、槽内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプと、上記ポンプの吐出側分流部又は吸込み口前段で上記液体中に気体を混入するエジェクタ装置と、上記ポンプから吐出された気液を撹拌するミキサ装置と、上記槽内に配置されるとともに、上記ミキサ装置で撹拌された気液を渦流により混合し減圧して前記槽内へ吐出する気液混合装置とを備えた水処理システムであって、上記気液混合装置は、直列に接続された2段の回転流形成部と、上記前段の回転流形成部へ気液を導入する流体導入路とを備え、上記前段の回転流形成部は、底面に円錐状突起を有する円環状の気液混合室と、上記流体導入路の下流端に一端を開口し、他端を上記円錐状突起の底部周囲に開口した左右のノズル流路とを有し、左右のノズル流路を介して上記円錐状突起の左右両側に気液を噴射することにより、上記円錐状突起を中心として上記気液混合室内で気液を回転させ、その回転流によって気液を混合し、上記後段の回転流形成部は、気液の流れ方向に沿って流路径が徐々に拡がる形状のテーパ流路からなり、上記気液混合室で回転させられた気液を上記テーパ流路へ導くことにより、テーパ流路内で当該気液を更に回転させ、その回転流によって気液を混合することを特徴とする。
【0021】
上記第2の本発明に係る水処理システムでは、ポンプと、2段の回転流形成部を有する気液混合装置との計3段で気液の加圧、混合がなされる。また、この水処理システムで採用した上記気液混合装置は、前段の円環状の気液混合室内で気液が回転し、この回転する気液が更に後段のテーパ流路内で回転し、この2段階の気液の回転による渦流で気液を効率よく混合する。
【0022】
上記第2の本発明に係る水処理システムにおいては、上記テーパ流路の下流端に、気液の流れ方向に沿って流路径が徐々に拡くなる形状の別のテーパ流路が接続される構成や、更にその別のテーパ流路の下流端に、微細気泡を形成するためのオリフィス流路が接続される構成を採用することができる。
【0023】
上記第1及び第2の本発明に係る水処理システムにおいては、上記ポンプの吐出側から吐出された液体を同ポンプの吸込み側へ返送する戻り流路を設けるとともに、この流路の途中に上記エジェクタ装置を組み込んだ構成を採用してよい。
【0024】
上記目的を達成するために、第3の本発明に係る水処理システムは、槽内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプと、上記ポンプの吸込み側前段で上記液体中に気体を混入するエジェクタ装置と、上記ポンプから吐出された気液を撹拌するミキサ装置と、上記槽内に配置されるとともに、上記ミキサ装置で撹拌された気液を渦流により混合し減圧して前記槽内へ吐出する気液混合装置とを備えた水処理システムであって、上記ポンプの吐出側から吐出された液体を同ポンプの吸込み側へ返送する戻り流路を設けるとともに、この流路の途中に上記エジェクタ装置を組み込んだことを特徴とする。
【0025】
以上説明した第1から第3の本発明に係る水処理システムは、曝気槽の上流に設けられる調整槽の液体を処理する調整槽水処理システムとして構成してよい。このように構成すると、調整槽内で溶存酸素量が高められるから、調整槽内で有用微生物の繁殖と育成の促進を図ることができ、調整槽内で微生物の消化活動が開始されるとともに、その溶存酸素濃度の高い液体を調整槽から曝気槽内の低溶存酸素濃度水域へ供給することで、有用微生物に好適な曝気槽内の活性水域を拡大することができ、水処理施設における浄化能力を向上させることができる。
【0026】
つまり、上記のような調整槽水処理システムは、微生物が消化活動を行う曝気槽の前段に設けられている廃水原水流量調整槽のような調整槽に、高濃度の溶存酸素処理を施すことによって、有用微生物がこれから食べようとする栄養物を含んだ調整槽内の水等の液体に、大量の有用微生物が呼吸し消費する酸素を十分に供給するものである。従来の水処理施設における有用微生物による消化活性の場である曝気槽と曝気槽への流量を調整する調整槽とは各々役割が分担されていた。しかし、本発明は従来の調整槽をも曝気槽として同様の働きを与えるものであり、その基本的な技術思想を異にする。
【0027】
第4の本発明に係る水処理システムは、ポンプを介して曝気槽へ汚泥を返送する汚泥返送ルートを有し、この汚泥返送ルートを介して曝気槽へ返送汚泥を吐出する吐出口に、気液混合装置を設けたことを特徴とするものである。
【0028】
以上説明した第1から第4の発明に係る水処理システムでは、ポンプの加圧により流路内で0.3〜1.0MPa程度の加圧を施すため、油分を多く含む廃水や難分解性物質を含有する廃水であっても、それらの物質は加圧・減圧により微粒化し、乳化・分散する。このため、本水処理システムは、調整槽内への高濃度溶存酸素水体の提供のみならず、これに加えて更に、油分や難分解物質などを特異的に分解する微生物群の消化効率を同時に促進させることもできる。
【0029】
また、以上説明した第1から第3の発明に係る水処理システムにおいて、上記槽は曝気槽の上流側に設けられる調整槽であり、上記水処理システムは、上記調整槽に特定微生物を注入するための注入手段を備える構成を採用することができる。
【0030】
上記注入手段としては、特定微生物を培養するための微生物培養槽を備え、この微生物培養槽で培養、増殖した特定微生物を調整槽へ注入するように構成してもよい。また、その微生物培養槽の特定微生物は、定量ポンプなどからなる微生物注入装置によって調整槽へ注入される構成を採用することができる。この場合、注入手段は、上記微生物培養槽と微生物注入装置によって構成されるものとなる。
【0031】
また、上記のような微生物培養槽への特定微生物製剤の投入→微生物培養槽での特定微生物の培養→微生物注入装置による調整槽への特定微生物の注入という一連の工程は、自動化システムとすることもできる。
【0032】
さらに、上記注入手段としては、上述のように微生物培養槽を使用する方式の他、そのような微生物培養槽を用いない方式として、例えば、定期的に作業者が直接特定微生物製剤、すなわち発芽していない特定微生物を調整槽へ投入する方式(第1の方式)や、既に発芽・培養した特定微生物を定量ポンプなどからなる微生物注入装置によって調整槽へ定量滴下させる方式(第2の方式)も含まれるものとする。
【0033】
ところで、調整槽の滞留時間は調整槽の容積などによって異なる。特に、上記第1の方式は、調整槽内で特定微生物を発芽・培養させるものであるから、特定微生物の発芽までの時間(大凡一日以上)に比べて、調整槽の滞留時間が十分長い場合に採用することが望ましい。この一方、上記第2の方式は、既に発芽・培養済みの特定微生物を調整槽に投入するものであるから、特定微生物の発芽までの時間に比べて、調整槽の滞留時間が十分長い場合のみならず、短い場合でも採用することができる。
【0034】
上記「特定微生物」は、難分解性物質を特異的に消化処理する能力を持った微生物を意味するものであり、例えば、ノボザイムズバイオロジカルズジャパン株式会社の製品名BI−CHEM DC1002CG、DC1003FG、DC1004TX、DC1005PP、DC1006KT、DC1008CB、DC1738CW、BI−CHEM等が挙げられる。
【発明の効果】
【0035】
第1から第3の本発明に係る水処理システムにあっては、いずれも、槽内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプと、ポンプの吸込み側前段で液体中に気体を混入するエジェクタ装置と、ポンプから吐出された気液を撹拌するミキサ装置と、ミキサ装置で撹拌された気液を渦流により混合する気液混合装置とを具備し、ポンプの吸込み側前段でエジェクタ装置を介して液体中に気体を混入させ、その気液をポンプで加圧しミキサ装置を介して気液混合装置へ供給する構成を採用したものである。このため、ポンプ、ミキサ装置、気液混合装置の3段で気液の加圧、撹拌、混合がなされることから、システム全体で効率よく気液を混合することができ、槽内の溶存酸素濃度を高める。
【0036】
特に、第1の本発明に係る水処理システムによると、そのシステムを構成する気液混合装置の具体的な構成として、羽根車やノズル、小孔を利用せず、密閉容器内での気液の薄層拡散による高速渦流を利用して気液を効率よく混合する方式の気液混合装置を採用したため、スラリー液や自然水界、廃水の液体等、清水以外の液体も処理対象とした水処理システムを提供しうる。また、そのような気液混合装置での効率のよい気液の混合により、システム全体としての気液の混合効率が高まり、槽内の溶存酸素濃度をより一層高めることができる。更に、この気液混合装置は導入された気液によって形成される高速渦流で気液を混合するものであり、気体導入に関し、コンプレッサ等の強制給気は必要とせず、動力を要しないから、システム全体としての省エネルギー化も図れる等の作用効果を奏する。
【0037】
また、第2の本発明に係る水処理システムによると、そのシステムを構成する気液混合装置の具体的な構成として、羽根車やノズル、小孔を利用せず、2段階の気液の回転による渦流で気液を効率よく混合する構成を採用したため、スラリー液や自然水界、廃水の液体等、清水以外の液体も処理対象とした水処理システムを提供しうる。また、そのような気液混合装置での効率のよい気液の混合により、システム全体としての気液の混合効率が高まり、槽内の溶存酸素濃度をより一層高めることができる。更に、この気液混合装置は導入された気液の2段階の回転で気液を混合するものであり、気液を圧送する以外の動力を要しないから、システム全体としての省エネルギー化も図れる等の作用効果を奏する。
【0038】
さらに、第3の本発明に係る水処理システムによると、ポンプの吐出側から吐出された液体を同ポンプの吸込み側へ返送する戻り流路を設けるとともに、この流路の途中にエジェクタ装置を組み込む構成を採用した。このため、ポンプの吸込み側に気体を直接送り込む従来の方式と異なり、気体と液体の混合体をポンプの吸込み側へ送り込むから、例えば前記ポンプの具体例として、現在最も一般的に多く使用されている非容積式タイプの遠心ポンプ(渦巻ポンプ)を採用しても、ポンプの空転や、ポンプから気液混合装置への気液の供給不足による気液混合の効率低下を効果的に防止することができる。
【0039】
第4の本発明に係る水処理システムによると、ポンプを介して曝気槽へ汚泥を返送する汚泥返送ルートを有し、この汚泥返送ルートを介して曝気槽へ返送汚泥を吐出する吐出口に、気液混合装置を設けたため、気液混合装置から曝気槽へ溶存酸素濃度を高めて活性化した返送汚泥が吐出供給されるから、低溶存酸素濃度の返送汚泥が曝気槽に返送されることによる低溶存酸素濃度水域の発生を効果的に防止することができ、曝気槽全体が均一で高濃度の溶存酸素水域となり、水処理施設における浄化能力の向上を図れるという作用効果が得られる。
【0040】
第1から第3の本発明に係る水処理システムによると、そのシステムを構成する気液混合装置における効率のよい気液の混合およびシステム全体としての気液の混合効率が高まり、槽内の溶存酸素濃度をより一層高めることができる。これによって、槽液中の溶存酸素濃度に余裕を与えることから、廃水原水に含まれる油分などの標準活性汚泥処理法では不得意とする難分解性物質の混入および混入量の程度により、これらを特異的に分解する微生物製剤の投入による新たな微生物の繁殖・活性化の向上効果で、さらに増加する酸素要求にも十分な酸素供給が可能となる。したがって、既存の水処理施設へ本システムと合わせて微生物製剤の投入を同時に導入することによって、廃水中の難分解性物質が通常よりも多量に混入した場合などに生じる不具合、すなわち、廃水処理施設の浄化処理能力を超えた高負荷流入によって、しばしば生じていた施設処理放流水に対する排水基準の超過などの事態が発生してしまう頻度を低下させる、あるいは防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
尚、本明細書では、工場から廃水し、廃水処理設備で浄化処理された水をその設備近傍の河川又は下水道へ排水するという観点から、以下の実験の説明を除き、廃水処理設備の上流側が「廃水」、同設備の下流側が「排水」というように用語を使い分けた。
【0043】
図1は、本発明の水処理システムを適用した廃水処理設備の概略構成図であり、廃水処理設備Sは上流に調整槽1、その下流に曝気槽2、更にその下流に沈殿槽3を備える構成になっている。
【0044】
調整槽1は、その下流に位置する曝気槽2の水位を調整するための水位調整手段として機能するだけでなく、後述する気液混合装置10Aを含む調整槽1の水処理システムS1又はS2(図2、図7参照)若しくは気液混合装置10Bを含む調整槽1の水処理システムS3(図9参照)によって調整槽1内に微細気泡を生成し、調整槽1内の溶存酸素量を増加させる機能も有する。
【0045】
曝気槽2は、調整槽1内で溶存酸素量を高めた気液がポンプ4を介して供給されるとともに、後述する気液混合装置10Cを含む水処理システムS4又はS5(図10、図12参照)のいずれか一方又は双方を介して沈殿槽3から活性汚泥(酸素の存在下で微生物を含んだ泥)が供給され、有用微生物による汚れ物質の消化活動が行われる。
【0046】
沈殿槽3は、曝気槽2から供給された汚泥混合液を活性汚泥と上澄み液に分離し、分離された活性汚泥は、上記水処理システムS4又はS5のいずれか一方又は双方を介して曝気槽2へ返送され、あるいは余剰汚泥として抜き取られる。上澄み液は、処理流体として自然水界、下水道等へ放流される、あるいは中水として再利用される。
【0047】
図2は、調整槽1の水処理システム(以下「調整槽水処理システムS1」という)のシステム構成図である。この調整槽水処理システムS1は、調整槽1内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプとして、第1と第2のポンプ6、8を備えるとともに、エジェクタ装置7、ミキサ装置9、気液混合装置10Aを備えて構成される。
【0048】
第1のポンプ6は、図示しない駆動モータにより駆動され、調整槽1内の液体を吸い込み、取水管路11を介してエジェクタ装置7へ圧送する。
【0049】
エジェクタ装置7は第2のポンプ8の吸込側8A前段で自然吸気によって酸素を含む空気等の気体(本実施形態では空気)を液体に混入させる手段である。この種のエジェクタ装置7の構成例として、本水処理システムS1においては図3に示す構造のエジェクタ装置7を採用した。吸気機能を満たせば本エジェクタ装置7に限らない。
【0050】
同図のエジェクタ装置7は、管継ぎ手12A、12Bを介して取水管路11の途中(本実施形態では第2のポンプ8の吸込側8Aの直前)に組み込まれる管体13と、管体13の内部に設けた絞り部14と、管体13の外周面から上記絞り部14の下流に一端を開口し、かつ他端を大気側に開口した気体導入管15とを備えて構成される。尚、気体導入管15の他端を高濃度酸素の供給源に接続することで、このエジェクタ装置7を介して液体に高濃度酸素を混入させるように構成してもよい。
【0051】
上記構造のエジェクタ装置7は、取水管路11から管体13内に液体を導き絞り部14で絞ることにより、絞り部14下流に高速の流れを形成し、この高速流によって気体導入管15から空気を自然吸気し液体中に混入させる(自然吸気式)。従って、コンプレッサ等を用いた強制給気方式のような動力系は不要である。
【0052】
第2のポンプ8は、第1のポンプ6とは別のモータ16により駆動され、エジェクタ装置7から供給される気液を吸い込み、給水管路17を介してミキサ装置9へ当該気液を圧送する。
【0053】
ミキサ装置9は第2のポンプ8から供給された気液を攪拌する。このミキサ装置9の構成例として、本水処理システムS1では図4に示す構造のミキサ装置9を採用した。ミキサ装置9は本構造のものでなくともよい。
【0054】
同図のミキサ装置9は、給水管路17の下流端に管継ぎ手18Aを介して連結された管体19と、管体19の内側に設けた攪拌手段20とから構成されており、攪拌手段20は、図4(c)〜(g)のように液体を通過させる貫通孔21の開いた攪拌板22と、環状のスペーサ23とを、気液の流れ方向に沿って交互に複数設置し、その固定された複数の攪拌板22で気液を撹拌させることにより、管体19内に乱流を生じさせて、気液を混合する。
【0055】
気液混合装置10Aは、図2のように調整槽1内部に設置されるとともに、図5(a)(b)(c)に示したように(1)円筒形の密閉容器24と、(2)ミキサ装置9の下流端(具体的には管体19の下流端)に管継ぎ手18Bを介して連結され、ミキサ装置9で攪拌された気液を密閉容器24内に導入する流体導入管25と、(3)密閉容器24内から気液を吐出させる流体吐出口26と、(4)流体吐出口26に取り付けた吐出筒27とを備えて構成され、ミキサ装置9で撹拌された気液を混合する。
【0056】
流体導入管25は、図5(c)のように密閉容器24の内外周壁を貫通して該密閉容器24内に入り込み、この入り込んだ流体導入管25の先端部が、流体導入口28として密閉容器24の内底面に近接して開口するように構成した。このため、流体導入口28から密閉容器24内へ導入された気液は、密閉容器24の内側円弧面に沿って左右方向(密閉容器24の左右内端面方向)へ扇状に薄層拡散し、密閉容器24内で高速の渦流を形成する。また、その高速渦流は密閉容器24の内端面方向(図5(a)参照)へ向かうので、上記流体吐出口26は密閉容器24の端面に開口した。
【0057】
上記流体吐出口26には図6(a)(b)に示すノズル構造30が採用されている。このノズル構造30は、流体吐出口26の中心部に、オリフィスからなる吸込み用の孔(以下「吸込孔31」という)を1つ設けるとともに、この吸込孔31の周囲に、微細気泡を形成するための少なくとも2以上の噴出し用の孔(以下「噴出孔32」という)を設けたものである。このような孔構成からなるノズル構造30によると、中央の吸込孔31を通じて密閉容器24内から外部に延びる気体柱を伴った引き込み渦が作られ、この気体柱を通じて密閉容器24外の気体が密閉容器24内へ入り易くなり、その結果、噴出孔32から効率よく密閉容器24内の気液を排出させることが可能となる。
【0058】
上記吐出筒27は、その一端が流体吐出口26の流体吐出側陰圧部に開口し、他端が調整槽1内に開口している。このような吐出筒27が流体吐出口26に設けられていない場合は、噴出孔32から排出された気液以外の液体も吸込孔31が吸い込んでしまい、大型の液中混在物が吸込孔31に詰まる可能性がある。一方、吐出筒27を流体吐出口26に設けた場合は、吸込孔31から吸込まれるのは噴出孔32から排出された流体中の気体のみとなり、吐出筒27内は噴出孔32から排出された気液で占有されるから、大型の液中混在物の吸込みによる吸込孔31の目詰まりは生じない。
【0059】
以上の構成からなる調整槽水処理システムS1において、第2のポンプ8は、システム起動時から停止時までの全範囲で継続的に使用されるが、第1のポンプ6は、システム起動時等のように取水管路11内が空であって第2のポンプ8だけで調整槽1内の液体を吸い上げることが困難な時にのみ使用される。このような第1および第2のポンプ6、8の動作制御は、調整槽水処理システムS1の起動や停止等の動作を統括的に制御する制御盤100(図2参照)により行われる。
【0060】
また、本実施形態では、図2のように気体導入管15の途中にセンサ付き流量計101を組み込み、流量計101のセンサ(図示省略)で気体導入管15による気体の吸込み量を検出して制御盤100へ送出することにより、液体中に混入させる空気量を制御盤100や流量計101で監視できるようにしている。
【0061】
上記の如く構成された調整槽水処理システムS1全体の処理動作、作用について図2と図5を基に説明する。
【0062】
本調整槽水処理システムS1によると、調整槽1内の液体は、エジェクタ装置7を通過して第2のポンプ8の吸込側8Aに吸い込まれる。吸い込まれる液体中にはエジェクタ装置7を通過するときに自然吸気によって取り込まれた空気が含まれており、この空気を含んだ液体(気液)が、第2のポンプ8内で加圧され、同ポンプ8の吐出側8Bからミキサ装置9へ圧送され、更に同ミキサ装置9内で撹拌された後、気液混合装置10Aへ供給される。
【0063】
以上のようにミキサ装置9から気液混合装置10Aへ供給される気液は、図5のように流体導入管25を介して密閉容器24内に導入され、密閉容器24の内側円弧面に沿って左右方向へ扇状に薄層拡散し、高速の渦流となって流体吐出口26の噴出孔32から吐出筒27を介して調整槽1内へ吐出する。この際、その高速の渦流によって密閉容器24内で気液が効率よく混合される。また、流体吐出口26付近では、吸込孔31と噴出孔32とを介する気液の吐出と吸込みの動作により、複雑な乱流が生じ、この乱流によって気液の混合がより一層促進される。このように効率よく十分に混合された気液が噴出孔32から高速流となって吐出されることにより多量の微細気泡を形成する。このため、調整槽1内の溶存酸素量が増大し、有用微生物の繁殖、育成などに好適な環境が調整槽1内に作られる。
【0064】
以上説明したように、本調整槽水処理システムS1は、調整槽1内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプ8と、ポンプ8の吸込み側前段で液体中に気体を混入するエジェクタ装置7と、ポンプ8から吐出された気液を撹拌するミキサ装置9と、ミキサ装置9で撹拌された気液を渦流により混合する気液混合装置10Aとを具備し、ポンプ8の吸込み側前段でエジェクタ装置7を介して液体中に気体を混入させ、その気液をポンプ8で加圧しミキサ装置9を介して気液混合装置10Aへ供給する構成を採用したものである。このためポンプ8、ミキサ装置9、気液混合装置10Aの3段で気液の加圧、撹拌、混合がなされることから、システム全体で効率よく気液を混合することができ、調整槽1内の溶存酸素濃度を高める。
【0065】
図7は、別の調整槽水処理システムS2のシステム構成図である。同図の調整槽水処理システムS2は、給水管路17から取水管路11に戻る戻り管路33を設けることで、ポンプ8の吐出側8Bに分流部を形成し、第2のポンプ8の吐出側8Bから吐出した気液の一部を同ポンプ8の吸込側8Aへ返送する戻り流路を形成するとともに、更に、その分流部、具体的には戻り管路33の途中に前述した自然吸気方式のエジェクタ装置7を組み込むことにより、エジェクタ装置7での自然吸気により空気を混入させた液体(気液)が第2のポンプ8内に吸い込まれ同ポンプ8内で加圧された後、ミキサ装置9を介して気液混合装置10A側へ供給されるように構成したものである。これ以外の構成については図2の調整槽水処理システムS1と同様であるため、同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。なお、エジェクタ装置7による気体供給量の上限は、ポンプの空運転等の支障が生じない量とする。
【0066】
特に、上記のような構成からなる図7の調整槽水処理システムS2によると、第2のポンプ8の吸込側8Aへ気体を直接送り込むのではなく、気体と液体の混合体を第2のポンプ8の吸込側8Aへ送り込むから、第2のポンプ8の具体例として、例えば現在最も一般的に多く使用されている非容積式タイプの遠心ポンプ(渦巻ポンプ)を採用した場合でも、遠心ポンプの空転や、遠心ポンプから気液混合装置10Aへの気液の供給不足による気液混合の効率低下を効果的に防止することができ、気液混合装置10Aで効率よく気液の混合を行える。更に、第2のポンプ8内でも気液の撹拌が行われることから、より一層気液の混合度合いが増す等の利点がある。
【0067】
図8は、別の気液混合装置10Bの断面図であり、図9は図8の気液混合装置10Bを含む調整槽水処理システムS3のシステム構成図である。尚、図9の調整槽水処理システムS3において、気液混合装置10B以外の他のシステム構成要素については図7のものと同様であるため、同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略し、構成の異なる図8の気液混合装置10Bについて詳細に説明する。
【0068】
この図8の気液混合装置10Bは、直列に接続された2段の回転流形成部41A、41Bと、2段の回転流形成部41A、41Bのうち前段の回転流形成部41Aへ気液を導入するための流体導入路42とを有し、上記2段の回転流形成部41A、41Bで連続的に気液を回転させ、このような2段階の気液の回転による渦流で気液を混合する。
【0069】
流体導入路42は、その上端が管継ぎ手43Aを介して給水管路17に連結される。
【0070】
前段の回転流形成部41Aは、底面中央部に円錐状突起44を有する円環状の気液混合室45と、流体導入路42の下流端に一端を開口し、他端を上記円錐状突起44の底部周囲に開口した左右のノズル流路46とを有し、左右のノズル流路46を介して上記円錐状突起44の左右両側に気液を噴射することにより、円錐状突起44を中心として気液混合室45内で気液を回転させ混合する。
【0071】
上記のように気液混合室45内で回転する気液は、円錐状突起44の先端部とこれと同様に傾斜したテーパ孔47とで形成される円環状の隙間傾斜流路48、並びに、その隙間傾斜流路48に連通する回転流通過流路49を通じて、更に後段の回転流形成部41Bへ供給される。
【0072】
後段の回転流形成部41Bは、気液の流れ方向に沿って流路径が徐々に拡がる形状の第1のテーパ流路50からなり、上記円環状の隙間傾斜流路48と回転流通過流路49を介して供給された気液、すなわち気液混合室45で回転し混合した気液を回転流通過流路49で更に回転混合させ、第1のテーパ流路50へ導入する。
【0073】
上記第1のテーパ流路50の下流端には第2のテーパ流路51が接続されており、更に第2のテーパ流路51の下流端には微細気泡を形成するためのオリフィス流路52が接続されている。第2のテーパ流路51は気液の流れ方向に沿って流路径が徐々に狭くなる形状になっているため、第2のテーパ流路51を通過する気液は、加速し高速の渦流となってオリフィス流路52に導入され、オリフィス流路52から吐出することにより、多量の微細気泡を形成する。
【0074】
上記気液混合装置10Bはその流体通路の形状と構成に特徴がある。その具体的な部品構成は一つの実施例であり各種考えられる。本実施形態では、その部品構成として、気液混合装置10Bを複数のパーツ部品に分けて組み立てる方式を採用した。この方式は、具体的には、図8のように、連結筒53で直列に連結された上段、中段および下段ブロック54、55、56と、オリフィス板57と、下段ブロック56に装着されるキャップ58とを用意し、上記流体導入路42と上記左右のノズル流路46については上段ブロック54に形成した。
【0075】
また、上記円環状の気液混合室45については、中段ブロック55が接合される上段ブロック54の接合面に凹部59を形成するとともに、この凹部59の底面中央部に上記円錐状突起44を形成することで、上段ブロック54と中段ブロック55との接合部に上記円環状の気液混合室45が形成される構成を採用した。
【0076】
さらに、上記回転流通過流路49と第1のテーパ流路50については中段ブロック55に形成し、第2のテーパ流路51は下段ブロック56に形成した。また、上記オリフィス流路52については、下段ブロック56とキャップ58との間に上記オリフィス板57を配置し、オリフィス板57に形成されているオリフィス流路52の上流端が上記第2のテーパ流路51の下流端に連通するように構成した。また、オリフィス流路52の下流端から本装置10B外部へ気液と微細気泡を吐出させるため、キャップ58にはオリフィス流路52の下流端と外部とに連通する吐出孔60を形成した。本流通路構造が構成できれば、上記部品構成でなくても構わない。
【0077】
以上説明した図8の気液混合装置10Bによると、前段の気液混合室45内で気液を回転させ、これを更に後段の第1のテーパ流路50内で回転させることにより、連続する2段の回転による渦流で気液を混合するため、効率よく気液を混合、溶解、更に微細気泡を発生することができ、液体中の溶存酸素濃度を高めることができる。
【0078】
図10は、沈殿槽3から曝気槽2へ返送する汚泥を活性化させる水処理システム(以下「返送汚泥活性化水処理システム」という)のシステム構成図であり、本返送汚泥活性化水処理システムS4は第1のポンプ6、第2のポンプ8、気液混合装置10Cを備えて構成される。
【0079】
本返送汚泥活性化水処理システムS4において、第1のポンプ6と第2のポンプ8は別々のモータ16で駆動され、取水管路11を介して沈殿槽3内の汚泥を吸い込み、気液混合装置10Cへ圧送する。なお、ポンプ6のモータはポンプに内蔵されているため図示は省略されている。
【0080】
本返送汚泥活性化水処理システムS4においても、第2のポンプ8は、システム起動時から停止時までの全範囲で継続的に使用されるが、第1のポンプ6は、システム起動時などのように取水管路11内が空であって第2のポンプ8だけでは沈殿槽3内の気液を吸い上げることが困難な時にのみ使用される。
【0081】
気液混合装置10Cは、図10のように曝気槽2の水面の上部に設置されるとともに、図11に示したように、(1)円筒形の密閉容器24と、(2)第2のポンプ8の吐出側8Bに管継ぎ手18Bを介して連結され、第2のポンプ8の吐出側8Bから吐出した液体を密閉容器24内に導入する流体導入管25と、(3)密閉容器24内から外部へ気液を吐出させる流体吐出口26と、(4)流体吐出口26に取り付けられた吐出筒27と、(5)吐出筒27に取り付けられた気体導入管15とを備えて構成される。
【0082】
本気液混合装置10Cにおいても、流体導入管25は、密閉容器24の内外周壁を貫通して該密閉容器24内に入り込み、この入り込んだ流体導入管25の先端部が、流体導入口28として密閉容器24の内底面に近接して開口するように構成した。このため、流体導入口28から密閉容器24内へ導入された液体は、密閉容器24の内側円弧面に沿って左右方向(密閉容器24の左右内端面方向)へ扇状に薄層拡散し、密閉容器24内で高速の渦流を形成する。また、その高速渦流は密閉容器24の内端面方向へ向うため、上記流体吐出口26は密閉容器24の端面に開口した。
【0083】
また、本気液混合装置10Cにおいても、気液の排出効率を高めることと、気液の混合程度をより一層向上させる観点より、上記流体吐出口26には前述した図6に示すノズル構造30を採用した。ノズル構造30の具体的な構成は前述の通り、その詳細説明は省略する。
【0084】
以上の構成からなる気液混合装置10Cでは、ノズル構造30の噴出孔32から気液が噴出し、流体吐出口26の下流、具体的には噴出孔32の流体吐出側付近が陰圧となる。この陰圧を利用して気体導入管15から自然に空気を吸い込ませるようにするため、気体導入管15の一端は流体吐出口26の流体吐出側陰圧部に開口し、同気体導入管15の他端は大気側に開口した。本気液混合装置10Cも自然吸気式であるから、コンプレッサ等を用いた強制給気式のような動力系は不要である。
【0085】
また、本気液混合装置10Cの流体吐出口26付近では、吸込孔31と噴出孔32とを介して行われる流体の吐出と吸込み動作に、気体導入管15を介する気体の吸込み動作が加わり、吐出筒27内で複雑な乱流が発生し、気液の混合が促進され、流体中の溶存酸素量の増加を図れる。
【0086】
図10の本返送汚泥活性化水処理システムS4は、ポンプ8、6、取水管路11および給水管路17により、沈殿槽3から曝気槽2へ汚泥を返送するルート(汚泥返送ルート70)を形成するとともに、その曝気槽2への返送汚泥の吐出口17Aに気液混合装置10Cを接続し、この気液混合装置10Cから曝気槽2へ溶存酸素濃度を高めて活性化した返送汚泥が吐出供給されるように構成したものである。
【0087】
上記のような構成の本返送汚泥活性化水処理システムS4によると、気液混合装置10Cから曝気槽2へ溶存酸素濃度を高めて活性化した返送汚泥が吐出供給されるので、低溶存酸素濃度の返送汚泥が曝気槽2に返送されることによる低溶存酸素濃度水域の発生を効果的に防止することができ、曝気槽2全体が微生物活性の高い高濃度の溶存酸素水域となり、水処理施設における浄化能力の向上を図れる。
【0088】
図12は、別の返送汚泥活性化水処理システムS5のシステム構成図である。本返送汚泥活性化水処理システムS5は、既設の返送汚泥・返送用のポンプ71により沈殿槽3から汚泥返送管路72を通じて曝気槽2へ汚泥を返送するルート(汚泥返送ルート73)を有するとともに、その曝気槽2への返送汚泥の吐出口72Aに前述した図11の気液混合装置10Cを接続したものである。この接続構造は、気液混合装置10Cの流体導入管25が返送汚泥の吐出口72Aに接続されるものとする。
【0089】
以上の構成からなる図12の返送汚泥活性化水処理システムS5もまた、図10のシステムS4と同様に、気液混合装置10Cから曝気槽2へ溶存酸素濃度を高めて活性化した返送汚泥を吐出供給する。この際、返送汚泥の吐出口72Aは図12のように曝気槽2前段の水面上部に設けられるため、その吐出口72Aに接続された図11の気液混合装置10Cは、曝気槽2前段に溶存酸素濃度を高めて活性化した返送汚泥を吐出供給する。従って、図12の本返送汚泥活性化水処理システムS5によると、従来より曝気槽2の処理能力低下の要因となっていた曝気槽2前段の低溶存酸素濃度水域を高溶存酸素濃度水域に改善することができ、曝気槽2全体が微生物活性の高い高濃度の溶存酸素水域となり、水処理施設における浄化能力の向上を図れる。
【0090】
特に、この図12の返送汚泥活性化水処理システムS5は、返送汚泥・返送用のポンプ71が0.2〜0.6MPaの圧力を常時吐出する能力を有する場合には、曝気槽2への返送汚泥の吐出口72Aに図11の気液混合装置10Cを接続するだけで構成することができ、既設の返送汚泥・返送用のポンプ71を制御する制御系以外に、他に特別な制御系を必要とせず、シンプルな機器構成で水処理施設における浄化能力の向上を図れるという利点もある。
【0091】
<実験サンプルの説明>
図13は図6に示す本ノズル構造30の効果実験を行ったときの実験サンプルの説明図であり、(a)は本ノズル構造30、(b)は本ノズル構造30との比較に用いたノズル構造(以下「比較ノズル構造90」という)を示したものである。比較ノズル構造90は本ノズル構造30のような吸込孔31や噴出孔32の区別がなく、そのノズル構造中央部に1つの孔91を設けたものとした。
【0092】
本ノズル構造30および比較ノズル構造90とも、そのノズルの厚さ(それぞれの孔31、32、91の長さ)は3mmとし、これら2種のノズル構造以外は全て同じ装置条件で実験を行った。すなわち、本ノズル構造30を採用した図5の装置10Aについて実験を行うとともに、その装置10Aから本ノズル構造30を取り外して代わりに比較ノズル構造90を取り付けて実験を行った。尚、本ノズル構造30と比較ノズル構造90の各孔31、32、91の面積は以下の通りである。
(i) 本ノズル構造
吸込孔の面積:19.165mm
噴出孔の面積:28.26mm(7.065mm(1孔)×4の合計面積)
(ii) 比較ノズル構造
1つの孔の面積:45.3416mm
【0093】
<実験(1)の条件>
本実験(1)においては、本ノズル構造30と比較ノズル構造90から噴出させる流体については水道水とし、水道水を水槽に溜め、圧力ポンプを介して0.1MPa〜0.6MPaの範囲で0.1MPa刻みで段階的に装置10Aの流体導入管25(図5参照)に水道水を導入した。排水量はポリバケツに排水した水の重量を計量し、比重1.0として容量を算出した。
【0094】
<実験(1)における本ノズル構造の排出状況の観察結果>
0.1MPaの水道水を導入した場合には、4つの噴出孔32全てから水道水が排出されたが、ノズル構造中央の吸込孔31からも僅かに水道水が排出されていることを確認した。導入する水道水の圧力が0.2MPa以上になると、4個の噴出孔32のみから水道水が排出され、吸込孔31からの排水はまったくなかった。この状況は、4個の噴出孔32のうち1つの噴出孔を指で塞ぎ、側面から観察し、吸込孔31からの噴出しの有無を確認するものとした。
【0095】
<実験(1)における排出量の比較>
図14の表1に示したように、各圧力時の排水量の計量は6回繰り返し、平均排水量と標準偏差を算出した。0.1MPa〜0.6MPaまで、各圧力時における本ノズル構造30と比較ノズル構造90の排水量は、比較ノズル構造と比べて本ノズル構造の方が、平均排水量で1.5割から2.5割の増量となった。この差を比較すると、図15の表2から、スチューデントt検定により、各圧力時のすべてにおいて有意な差が認められた(α<0.05;両側検定)。この試験では、前述の如く、本ノズル構造30と比較ノズル構造90とにおける各噴出し用の孔(本ノズル構造30では4つの噴出孔32のみ、比較ノズル構造90では1つの孔91である)の単純な面積の比較では、比較ノズル構造90の方が本ノズル構造30よりも、約1.6倍の面積を有するが、排水量は逆転し、本ノズル構造30の方が排水量が多くなっている。厳密に考えると、本ノズル構造中央の1つの吸込孔31で生じている筈の吸込みと排出の量を計測できればよいが、この計測は不可能である。従って、噴出孔32の面積比から確実に広い面積の孔を有するノズル構造でも単一孔であれば排出の効率が抑制されることが分る。
【0096】
<実験(2)の条件>
本実験(2)では、2t容量の大型水槽を用い、1tの水道水を溜め、圧力ポンプを介して0.3〜0.4MPaの圧力で、本ノズル構造30を採用した装置10A(図5参照)と、比較ノズル構造90を採用した装置10Aから、それぞれ同じ水槽内へ水道水を排出させるものとした。これと同時に100g(乾燥重量)の砂(粒径;0.2〜1.7mm)を圧力ポンプの取水口から1分間吸わせた。時間の経過に伴う溶存酸素濃度の上昇を溶存酸素測定器で計測した。
【0097】
<実験(2)の結果>
本ノズル構造を採用した気液混合装置10A(以下「本装置」という)では、圧力ポンプの取水口から吸わせた砂100g(乾燥重量)のうち、17g(乾燥重量)の砂が排出された。本装置10Aを分解したところ、密閉容器24の内部から28g(乾燥重量)の砂を回収したが、吸込孔31や噴出孔32等に砂の詰まりは生じていなかった。砂は、密閉容器24内で発生する渦による遠心分離が作用し、密閉容器24内に残存していたものと考えられる。残りの55gの砂は、おそらく圧力ポンプと配管内に存在していると推測する。
【0098】
本装置の排水量は約30〜40L/minであったが、1tの水に対して約5分で本装置から排出され、水槽内に微細気泡が充満した。時間の経過に伴う溶存酸素濃度の変化は図16の表3に示した通りである。表3から、本装置によると、水槽内に溜められた水道水の全部を本装置内で処理しないうちに、水槽内の溶存酸素濃度が上昇していることから、本装置からの排水吐出力による水の流動が水槽内で作用し、本装置稼動初期から溶存酸素濃度が上がったものと考えられる。また、本実験時の水温は25.7℃で、このときの溶存酸素飽和量は8.02mg/Lであるから、本装置によると、本装置稼動開始直後から水槽内の溶存酸素が飽和状態となり、最高で約120%の飽和量を示し、十分な気液混合が行われたことが示された。
【0099】
図17〜図22は、図9の調整槽水処理システムと特許文献1の水処理システムとについて、比較実験を行ったときの実験データである。図17〜図22から分るように、図9の調整槽水処理システムの方が、第2のポンプの加圧力(供給圧力)が高まるほど、平均気泡径のピークが最小気泡径の方向へ移行し、より多くの微細気泡が形成されるという結果が得られた。
【0100】
ところで、一般に工場廃水の構成物や流量および濃度は年間を通して一定であることは少ない。工場生産品の種類や量、各品目の需要の消長によって工場廃水の質・量は常に変化している。例えば、生産品の変更によって工場廃水の内容が大幅に変わってしまった場合、図1に示す廃水処理設備Sの曝気槽2内では、浄化処理に働く微生物相の種類・構成も変化せざるをえない。
【0101】
しかしながら、曝気槽2内の微生物相は、廃水の変化に伴い即応して適切な微生物相に入れ替わるのではなく、相応の時間のずれ(タイムラグ)を経た後に入れ替わりが成立するか、もしくは、工場廃水の変化に微生物相の対応が追いつかず曝気槽2の浄化機能が崩壊してしまう場合もあり得る。特に、後者の場合、廃水中に含まれる油分などのように標準活性汚泥処理にとって難分解性物質の増加は、廃水処理設備Sからの処理放流水に直接的な悪化をもたらし、近傍河川などの水質環境に基準値以上の負荷を与える。
【0102】
このような事態を回避するためには、曝気槽2内の微生物相に一定の浄化能力を保持させる蓄えが必要で、曝気槽2内の微生物相にも、常に予想される程度の難分解性物質を特異的に消化処理する能力を持った微生物、すなわち前述の特定微生物を準備しておく必要がある。
【0103】
そこで、図23の廃水処理設備S´では、特定微生物の準備のため、前述した図1の廃水処理設備Sの調整槽水処理システムS1、S2又はS3(図1参照)に特定微生物を注入するための注入手段92を組み込み、注入手段92によっていつでも機動的に調整槽1内へ特定微生物を注入できるように構成した。なお、本廃水処理設備S´の基本的な構成については図1の廃水処理設備Sと同様であるため、同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0104】
要するに、図23の本廃水処理設備S´においては、図1の廃水処理設備Sと同様、調整槽1内での微細気泡の生成によって、その調整槽1内の溶存酸素量(濃度)は高められており、調整槽1は微生物の生育環境を常に余裕のある状態で保持することが可能となっている。このため、本廃水処理設備S´は、上記の如く注入手段92によって特定微生物を含む微生物製剤を調整槽1へ投入できるように構成し、工場廃水の変化に応じて注入手段92を作動させるだけで、難分解性物質等を含む工場廃水のようなイレギュラーな工場廃水の変化にも即応できるようにしたものである。
【0105】
図23に示した注入手段92は、ブロワー92Cによってエアーが供給される微生物培養槽92Aと、定量ポンプ等からなる微生物注入装置92Bとを含んで構成されるとともに、微生物培養槽92Aに特定微生物製剤を投入し、同槽92A内で発芽、培養、増殖した特定微生物が微生物注入装置92によって調整槽1へ注入される。特定微生物の発芽、培養、増殖に必要な酸素はブロワー92Cによって供給される。
【0106】
微生物培養層92Aの容量については、常に少量の活性特定微生物を調整槽1へ注入投与する注入形態(いわゆる免疫保持機能)と、イレギュラーな廃水時のみに特定微生物の注入投与量を増加する注入形態(いわゆる頓服処方)との両方に対応できるよう、大きめに設定しておくことが好ましい。
【0107】
また、休眠処理を施した特定微生物等を固着保持するために用いられている担体が調整槽1へ混入することを回避するために、調整槽1へ特定微生物を含む処理水を供給する微生物培養槽92Aの出口側には目開き1mm〜2mm程度の網をフィルタ(図示省略)として設けることが望ましい。このフィルタは容易に洗浄ができるよう取り外し可能な構造とする。
【0108】
図24は、上記注入手段92を図2の調整槽水処理システムS1に組み込んだ構成例の説明図、図25は、上記注入手段92を図7の調整槽水処理システムS2に組み込んだ構成例の説明図である。これらの組み込み例はいずれも、注入手段92の具体的な構成として、微生物培養槽92Aで特定微生物を発芽、培養し、増殖した特定微生物を調整槽1へ注入する方式を採用したものであるが、その微生物培養槽92Aを使用しない方式を採用することもできる。この種の方式としては、例えば、定期的に作業者が直接特定微生物製剤、すなわち発芽していない特定微生物を調整槽1へ投入する方式(第1の方式)や、既に発芽・培養した特定微生物を微生物注入装置92Bによって調整槽1へ定量滴下させる方式(第2の方式)などが考えられ、いずれの方式を採用してもよい。
【0109】
ところで、上記第1の方式の場合、特定微生物製剤を調整槽1内に投入した直後から特定微生物が直ちに消化活動を開始できればよいが、多くの微生物製剤には休眠処理が施されている。本実施形態で使用する特定微生物製剤も同様である。特定微生物が休眠から目覚める(発芽)まで大凡一日以上要するから、上記第1の方式は、特定微生物の発芽までの時間に比べて、調整槽1の滞留時間が十分長い場合に採用することが望ましい。この一方、上記第2の方式は、既に発芽・培養済みの特定微生物を調整槽1に投入するものであるから、特定微生物の発芽までの時間に比べて、調整槽1の滞留時間が十分長い場合のみならず、短い場合でも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明に係る水処理システムを適用した廃水処理設備の概略構成図。
【図2】調整槽水処理システムのシステム構成図。
【図3】エジェクタ装置の断面図。
【図4】ミキサ装置の断面図。
【図5】図5は本発明に係る水処理システムを構成する気液混合装置の一実施形態の説明図であり、(a)は気液混合装置の断面図、(b)はB矢視図、(c)はc−c線断面図である。
【図6】ノズル構造の説明図であり、(a)はノズル構造の正面図、(b)はノズル構造の断面図である。
【図7】別の調整槽水処理システムのシステム構成図。
【図8】気液混合装置の他の実施形態の断面図である。
【図9】図8の気液混合装置を含む調整槽水処理システムのシステム構成図。
【図10】返送汚泥活性化水処理システムのシステム構成図。
【図11】図10の返送汚泥活性化水処理システムを構成する気液混合装置の説明図。
【図12】別の返送汚泥活性化水処理システムのシステム構成図。
【図13】図13は図6に示す本ノズル構造の効果実験を行ったときの実験サンプルの説明図であり、(a)は本ノズル構造の正面図とその側面図、(b)は比較ノズル構造の正面図とその側面図である。
【図14】本ノズル構造と比較ノズル構造の排出量(実験データ)の比較図。
【図15】スチューデントt検定による本ノズル構造と比較ノズル構造の排出量の比較図。
【図16】本ノズル構造を採用した気液混合装置を使用した場合における、装置稼動開始からの時間経過に伴う溶存酸素濃度の変化を示した実験データの説明図。
【図17】図17は図9の調整槽水処理システムと特許文献1の水処理システムとについて、比較実験を行ったときの実験データであり、気泡の発生分布を示したグラフ図(スライドグラス採取による圧力条件0.3MPa時のもの)である。
【図18】図18は図9の調整槽水処理システムと特許文献1の水処理システムとについて、比較実験を行ったときの実験データであり、気泡の発生分布を示したグラフ図(スライドグラス採取による圧力条件0.35MPa時のもの)である。
【図19】図19は図9の調整槽水処理システムと特許文献1の水処理システムとについて、比較実験を行ったときの実験データであり、気泡の発生分布を示したグラフ図(スライドグラス採取による圧力条件0.4MPa時のもの)である。
【図20】図9の調整槽水処理システムと特許文献1の水処理システムとについて、比較実験を行ったときの気泡の発生分布を示したグラフ図(スライドグラス採取による圧力条件0.45MPa時のもの)である。
【図21】図21は、図9の調整槽水処理システムと特許文献1の水処理システムとについて、比較実験を行ったときの実験データであり、ポンプの加圧力(供給圧力)の変化に伴う1ml中における微細気泡の発生量の比較図である。
【図22】図22は、図9の調整槽水処理システムと特許文献1の水処理システムとについて、比較実験を行ったときの実験データであり、ポンプの加圧力(供給圧力)の変化に伴う平均気泡径の比較図である。
【図23】本発明に係る水処理システム(注入手段を含むもの)を適用した他の廃水処理設備の概略構成図。
【図24】図2の調整槽水処理システムに注入手段を組み込んだ構成例の説明図。
【図25】図7の調整槽水処理システムに注入手段を組み込んだ構成例の説明図。
【符号の説明】
【0111】
S 廃水処理設備
S1、S2、S3、S4、S5 水処理システム
1 調整槽
2 曝気槽
3 沈殿槽
4 ポンプ
6 第1のポンプ
6A ポンプ吸込口
6B ポンプ吐出口
7 エジェクタ装置
8 第2のポンプ
8A ポンプ吸込口
8B ポンプ吐出口
9 ミキサ装置
10A、10B、10C 気液混合装置
11 取水管路
12A、12B 継ぎ手
13 管体
14 絞り部
15 気体導入管
16 モータ
17 給水管路
17A 返送汚泥の吐出口
18A 管継ぎ手
18B 管継ぎ手
19 管体
20 攪拌手段
21 貫通孔
22 攪拌板
23 スペーサ
24 密閉容器
25 流体導入管
26 流体吐出口
27 吐出筒
28 流体導入口
30 流体吐出口のノズル構造
31 吸込み用の孔(吸込孔)
32 噴出し用の孔(噴出孔)
33 戻り管路
41A、41B 回転流形成部
42 流体導入路
43A 管継ぎ手
44 円錐状突起
45 気液混合室
46 ノズル流路
47 テーパ孔
48 隙間傾斜流路
49 回転流通過流路
50 第1のテーパ流路
51 第2のテーパ流路
52 オリフィス流路
53 連結筒
54 上段ブロック
55 中段ブロック
56 下段ブロック
57 オリフィス板
58 キャップ
59 凹部
60 吐出孔
70 汚泥返送ルート
71 返送汚泥・返送用のポンプ
72 汚泥返送管路
72A 返送汚泥の吐出口
73 汚泥返送ルート
100 制御盤
101 流量計
90 比較ノズル構造
91 孔
92 注入手段
92A 微生物培養槽
92B 微生物注入装置
92C ブロワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプと、
上記ポンプの吸込み側前段で上記液体中に気体を混入するエジェクタ装置と、
上記ポンプから吐出された気液を撹拌するミキサ装置と、
上記槽内に配置されるとともに、上記ミキサ装置で撹拌された気液を渦流により混合し減圧して前記槽内へ吐出する気液混合装置とを備えた水処理システムであって、
上記気液混合装置は、
円筒形の密閉容器と、
上記密閉容器内に気液を導入する流体導入管と、
上記密閉容器内から気液を吐出させる流体吐出口とを具備し、
上記流体導入管は、上記密閉容器の内外周壁を貫通して該密閉容器内に入り込み、この入り込んだ流体導入管の先端部が、流体導入口として、上記密閉容器の内底面に近接して開口するように設けられていること
を特徴とする水処理システム。
【請求項2】
上記流体吐出口は、その中央に設けた吸込孔と、この吸込孔の周囲に設けた複数の噴出孔とを有するノズル構造からなること
を特徴とする請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
上記吸込孔の口径は上記噴出孔の口径より大きく設けたことを特徴とする請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
上記流体吐出口の流体吐出側に吐出筒が取り付けられていることを特徴とする請求項2又は3のいずれかに記載の気液混合装置。
【請求項5】
槽内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプと、
上記ポンプの吐出側分流部又は吸込み口前段で上記液体中に気体を混入するエジェクタ装置と、
上記ポンプから吐出された気液を撹拌するミキサ装置と、
上記槽内に配置されるとともに、上記ミキサ装置で撹拌された気液を渦流により混合し減圧して前記槽内へ吐出する気液混合装置とを備えた水処理システムであって、
上記気液混合装置は、
直列に接続された2段の回転流形成部と、
上記前段の回転流形成部へ気液を導入する流体導入路とを備え、
上記前段の回転流形成部は、
底面に円錐状突起を有する円環状の気液混合室と、上記流体導入路の下流端に一端を開口し、他端を上記円錐状突起の底部周囲に開口した左右のノズル流路とを有し、左右のノズル流路を介して上記円錐状突起の左右両側に気液を噴射することにより、上記円錐状突起を中心として上記気液混合室内で気液を回転させ、その回転流によって気液を混合し、
上記後段の回転流形成部は、
気液の流れ方向に沿って流路径が徐々に拡がる形状のテーパ流路からなり、上記気液混合室で回転させられた気液を上記テーパ流路へ導くことにより、テーパ流路内で当該気液を更に回転させ、その回転流によって気液を混合すること
を特徴とする水処理システム。
【請求項6】
上記ポンプの吐出側から吐出された液体を同ポンプの吸込み側へ返送する戻り流路を設けるとともに、この流路の途中に上記エジェクタ装置を組み込んだこと
を特徴とする請求項1又は5のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項7】
槽内の液体を吸込み加圧して吐出するポンプと、
上記ポンプの吸込み側前段で上記液体中に気体を混入するエジェクタ装置と、
上記ポンプから吐出された気液を撹拌するミキサ装置と、
上記槽内に配置されるとともに、上記ミキサ装置で撹拌された気液を渦流により混合し減圧して前記槽内へ吐出する気液混合装置とを備えた水処理システムであって、
上記ポンプの吐出側から吐出された液体を同ポンプの吸込み側へ返送する戻り流路を設けるとともに、この流路の途中に上記エジェクタ装置を組み込んだこと
を特徴とする水処理システム。
【請求項8】
上記槽は曝気槽の上流側に設けられる調整槽であり、それぞれの上記水処理システムは調整槽の液体を処理する調整槽水処理システムとして構成されること
を特徴とする請求項1、5又は7のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項9】
上記槽は曝気槽の上流側に設けられる調整槽であり、
上記水処理システムは、上記調整槽に特定微生物を注入するための注入手段を備えること
を特徴とする請求項1、5又は7のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項10】
上記注入手段は、特定微生物を培養するための微生物培養槽を備え、この微生物培養槽で培養、増殖した特定微生物を調整槽へ注入するように構成されること
を特徴とする請求項9に記載の水処理システム。
【請求項11】
ポンプを介して曝気槽へ汚泥を返送する汚泥返送ルートを有し、この汚泥返送ルートを介して曝気槽へ返送汚泥を吐出する吐出口に、気液混合装置を設けたこと
を特徴とする水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−119677(P2008−119677A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−78962(P2007−78962)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【特許番号】特許第4018130号(P4018130)
【特許公報発行日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(390039837)東フロコーポレーション株式会社 (17)
【Fターム(参考)】