説明

水処理方法および水処理装置

【課題】懸濁物質の分離性能を向上できる水処理方法および水処理装置を提供する。
【解決手段】この水処理装置は、混合部としての原水槽1と、マイクロナノバブル発生槽3と、加圧浮上槽9と、処理水槽18とを備える。被処理水としての排水は、原水槽1に導入されて、マイクロナノバブル発生槽3で作製されたマイクロナノバブル含有水と混合された後、原水槽ポンプ2によって被処理水として加圧浮上槽9の下部混合部10に導入される。下部混合部10には配管L1からのマイクロナノバブル含有被処理水と配管L2からの微細気泡を含有する被処理水とが導入されて混合される。よって、加圧浮上槽9の下部混合部10からはマイクロナノバブルと微細気泡の両方が混合されて発生し、被処理水中の殆ど全ての懸濁物質を浮上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水処理方法および水処理装置に関する。例えば、この発明は、微細気泡を利用する加圧浮上装置とマイクロナノバブルとを組み合わせて利用することにより、被処理水中の懸濁物質の除去をより完全にできる水処理方法および水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理装置としては、処理水中の懸濁物質を加圧水に含まれている微細な気泡で包み、懸濁物質を浮上,分離させて、懸濁物質を処理水から分離させる加圧浮上装置を備えるものがある。
【0003】
ところで、加圧浮上装置による懸濁物質の分離性能の性能向上が求められている。
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【特許文献3】特開2004−321959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、この発明の課題は、懸濁物質の分離性能を向上できる水処理方法および水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、この発明の水処理方法は、マイクロナノバブル含有水と被処理水とを混合して透明度が15cm以下のマイクロナノバブル含有水を作製し、
上記混合によりマイクロナノバブルを含有した被処理水を加圧浮上装置に導入して水処理し、
上記水処理をした処理水を利用して、上記マイクロナノバブル含有水を作製することを特徴としている。
【0006】
この発明の水処理方法によれば、加圧浮上装置にマイクロナノバブルを含有した被処理水を導入する。これにより、このマイクロナノバブルを被処理水中の超微細懸濁物質に付着させ、このマイクロナノバブルが付着した超微細懸濁物質を、加圧浮上装置自体で発生させる微細気泡で浮上させる。よって、従来の加圧浮上装置では除去できなかった被処理水中の超微細懸濁物質を浮上させて被処理水から分離できる。なお、マイクロナノバブルは、加圧浮上装置自体で発生させる微細気泡に比べて、小さい事と共に懸濁物質への付着力が大きい。
【0007】
すなわち、加圧浮上装置自体も微細気泡を発生して懸濁物質に付着させて、懸濁物質を浮上させるが、マイクロナノバブルはこの微細気泡よりもさらに細かいバブルである。よって、加圧浮上装置自体で発生している微細気泡よりもさらに細かくて付着力の強いマイクロナノバブルがより細かい懸濁物質に多数付着し、その結果、より細かい懸濁物質を液面まで浮上させることができ、被処理水を微細気泡と超微細気泡(マイクロナノバブル)との両方でもって、懸濁物質の分離性能を格段に向上できる。
【0008】
ここで、3種類のバブルについて説明する。マイクロバブルとは、その発生時において、10〜数10μmの気泡径を有する気泡であり、このマイクロバブルは、発生後に収縮運動により『マイクロナノバブル』に変化する。このマイクロナノバブルとは、10μmから数百nm前後の直径を有する超微細気泡である。また、ナノバブルとは、数百nm以下の直径を有する超微細気泡である。
【0009】
また、この発明の水処理方法は、上記水処理をした処理水を利用して、上記マイクロナノバブル含有水を作製する。
【0010】
この発明の水処理方法によれば、懸濁物質を除去した処理水をマイクロナノバブル含有水の作製に使用しているので、マイクロナノバブル発生機の閉塞等のトラブルが皆無となる。すなわち、マイクロナノバブル含有水を作製するのに使用するマイクロナノバブル発生機のマイクロナノバブル出口は構造的に小口径であるので、水中にごみなどの浮遊物質が存在すると閉塞することがある。
【0011】
また、処理水が循環処理されることとなり、加圧浮上装置による複数回の懸濁物質分離処理がなされるので、より確実に懸濁物質を被処理水から除去できる。
【0012】
また、一実施形態の水処理装置は、透明度が15cm以下のマイクロナノバブル含有水と被処理水とを混合する混合部と、
上記混合部から上記マイクロナノバブルを含有した被処理水が導入される加圧浮上装置とを備え、
上記混合部は被処理水が導入される原水槽であり、
上記加圧浮上装置は加圧浮上槽を有し、
マイクロナノバブル発生機を有すると共に上記マイクロナノバブル含有水を作製するマイクロナノバブル発生槽と、
上記加圧浮上槽から処理水が導入される処理水槽とを備え、
上記処理水槽から上記マイクロナノバブル発生槽に処理水を導入すると共に上記マイクロナノバブル発生槽から上記原水槽にマイクロナノバブル含有水を導入する。
【0013】
この実施形態の水処理装置によれば、加圧浮上装置にマイクロナノバブルを含有した被処理水を導入する。これにより、このマイクロナノバブルを被処理水中の超微細懸濁物質に付着させ、このマイクロナノバブルが付着した超微細懸濁物質を、加圧浮上装置自体で発生させる微細気泡で浮上させる。よって、従来の加圧浮上装置では除去できなかった被処理水中の超微細懸濁物質を浮上させて被処理水から分離できる。
【0014】
また、この実施形態の水処理装置によれば、マイクロナノバブル発生槽においてマイクロナノバブル発生機が発生するマイクロナノバブルを利用している。ここで、このマイクロナノバブル発生槽では、加圧浮上槽からの処理水を使用してマイクロナノバブル含有水を作製しているので、マイクロナノバブル発生機が閉塞する等のトラブルは皆無になる。すなわち、マイクロナノバブル発生機のマイクロナノバブル出口は構造的に小口径であるので、処理水中にごみなどの浮遊物質が存在すると閉塞することがある。
【0015】
また、一実施形態の水処理装置は、上記マイクロナノバブル発生槽にマイクロナノバブル発生助剤を添加する発生助剤添加部を備える。
【0016】
この実施形態の水処理装置によれば、マイクロナノバブル発生槽にマイクロナノバブル発生助剤を添加するので、マイクロナノバブルの発生効率を向上できる。
【0017】
また、上記実施形態の水処理装置は、上記マイクロナノバブル発生助剤は、界面活性剤を含有している液体である。
【0018】
この実施形態の水処理装置によれば、マイクロナノバブルの発生効率を向上できる。なお、分解性の良い界面活性剤を選定すれば、界面活性剤に起因する環境上の問題が発生することを回避できる。
【0019】
また、一実施形態の水処理装置は、上記処理水槽からの処理水が導入される精密ろ過膜装置を備える。
【0020】
この実施形態の水処理装置によれば、処理水槽からの懸濁物質が分離された処理水を精密ろ過装置に導入して、精密ろ過することで、より水質の良い処理水を確保できる。よって、処理後の処理水の利用用途を広げることができる。
【0021】
また、一実施形態の水処理装置は、上記処理水槽からの処理水が導入される精密ろ過膜装置と、上記精密ろ過膜装置からの処理水が導入される逆浸透膜装置とを備える。
【0022】
この実施形態の水処理装置によれば、精密ろ過膜装置と逆浸透膜装置によって、さらに、水質の良い処理水を確保できる。よって、処理後の処理水の利用用途を広げることができる。
【0023】
また、一実施形態の水処理装置は、上記マイクロナノバブル発生機が水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機である。
【0024】
この実施形態の水処理装置によれば、水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機は、水中ポンプと同様、構造が簡単で、かつ、設置も容易に設置でき、メンテナンスも容易である。
【0025】
また、一実施形態の水処理装置は、上記混合部からマイクロナノバブルを含有した被処理水が導入される生物処理装置を備え、上記生物処理装置で生物処理されたマイクロナノバブル含有被処理水を上記加圧浮上装置に導入する。
【0026】
この実施形態の水処理装置によれば、生物処理装置による生物処理での微生物の活性をマイクロナノバブルで高めることができる。よって、生物処理装置から加圧浮上装置に導入するマイクロナノバブル含有被処理水の水質を向上できる。その結果、加圧浮上装置から得られる処理水の水質を向上できる。また、生物処理水に残存する微量のマイクロナノバブルが、加圧浮上装置での微細気泡と合流して、加圧浮上における懸濁物質の除去に相乗効果を発揮する。
【0027】
また、一実施形態の水処理装置は、マイクロナノバブルを含有する被処理水が導入される生物処理装置を備え、上記生物処理装置で生物処理されたマイクロナノバブル含有被処理水を被処理水として上記混合部に導入する。
【0028】
この実施形態の水処理装置によれば、生物処理装置による生物処理における微生物の活性をマイクロナノバブルで高めることができるので、生物処理後の処理水の水質を向上できる。その結果、生物処理されたマイクロナノバブル含有被処理水が導入される加圧浮上装置から得られる処理水の水質も向上できる。また、この実施形態では、被処理水としての生物処理後のマイクロナノバブル含有被処理水に、マイクロナノバブル含有水によるマイクロナノバブルをさらに追加して含有させる。よって、被処理水中のマイクロナノバブルが、加圧浮上装置自体による微細気泡と合流して、加圧浮上における懸濁物質の除去に相乗効果を発揮する。
【0029】
また、一実施形態の水処理装置は、上記マイクロナノバブル含有水を作製する第1のマイクロナノバブル発生槽と、
被処理水と上記第1のマイクロナノバブル発生槽からのマイクロナノバブル含有水とが導入される第1の原水槽と、
上記第1の原水槽からマイクロナノバブルを含有した被処理水が導入される生物処理装置と、
マイクロナノバブル含有水を作製する第2のマイクロナノバブル発生槽と、
上記第2のマイクロナノバブル発生槽からのマイクロナノバブル含有水と上記生物処理装置からの生物処理されたマイクロナノバブル含有被処理水とが導入される第2の原水槽とを備え、
上記第1の原水槽と第2の原水槽が上記混合部を構成し、
上記第2の原水槽から上記加圧浮上装置に上記マイクロナノバブル含有被処理水を導入する。
【0030】
この実施形態の水処理装置によれば、第1および第2のマイクロナノバブル発生槽によって、マイクロナノバブルを2段で発生させる水処理装置を構築できる。すなわち、この実施形態によれば、第1マイクロナノバブル発生槽で作製するマイクロナノバブル含有水によって、生物処理装置における微生物の活性を高めて、生物処理後の被処理水の水質を向上させる。さらに、この生物処理装置による生物処理後の被処理水に、第2のマイクロナノバブル発生槽で作製したマイクロナノバブル含有水を追加で含有させる。これにより、加圧浮上装置でのサイズの異なる微細気泡とマイクロナノバブルとが合流して、加圧浮上における懸濁物質の除去に相乗効果を発揮する。
【0031】
また、一実施形態の水処理装置は、上記加圧浮上装置からの被処理水が導入される精密ろ過装置と、上記精密ろ過装置からの被処理水が導入される逆浸透膜装置とを備える。
【0032】
この実施形態の水処理装置によれば、加圧浮上装置からの懸濁物質の高度除去処理がなされた被処理水を、さらに、精密ろ過装置と逆浸透膜装置とによって、ろ過処理することで、格段に水質の良い水を確保でき、利用先の用途の広い水が得られる。
【0033】
また、一実施形態の水処理装置は、上記原水槽に凝集剤を添加する。
【0034】
この実施形態の水処理装置によれば、原水槽に凝集剤を添加するので、原水である被処理水の成分が、凝集剤により凝集してフロックを形成する。そして、各種大きさの異なるフロックがマイクロナノバブルと加圧浮上装置からの微細空気とによって、フロックに付着して浮上して分離され、処理水質が向上する。
【発明の効果】
【0035】
この発明の水処理方法によれば、加圧浮上装置にマイクロナノバブルを含有した被処理水を導入する。これにより、このマイクロナノバブルを被処理水中の超微細懸濁物質に付着させ、このマイクロナノバブルが付着した超微細懸濁物質を、加圧浮上装置自体で発生させる微細空気で浮上させる。よって、従来の加圧浮上装置では除去できなかった被処理水中の超微細懸濁物質を浮上させて被処理水から分離できる。すなわち、この発明によれば、微細気泡と超微細気泡(マイクロナノバブル)との両方でもって、被処理水の懸濁物質の分離性能を格段に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0037】
(第1の実施の形態)
図1に、この発明の水処理装置の第1実施形態を模式的に示す。図1において、符号1は、原水槽であり、処理するべき被処理水としての流入水が導入される。
【0038】
この第1実施形態は、混合部としての原水槽1と、マイクロナノバブル発生槽3と、加圧浮上槽9と、処理水槽18とから、大略構成されている。
【0039】
この第1実施形態の水処理装置での被処理水としては、具体的にはあらゆる産業の懸濁物質を含有する排水、工業用水、上水などが適合できる。図1において、符号2は原水槽ポンプである。マイクロナノバブル発生槽3で作製されたマイクロナノバブル含有水は、混合部としての原水槽1に導入されて、被処理水の一例としての工場からの排水と混合された後、原水槽ポンプ2によって、被処理水として、加圧浮上槽9の下部混合部10に導入される。この加圧浮上槽9の下部混合部10に導入される被処理水は、例えば、透明度が15cm以下のマイクロナノバブル含有水である。
【0040】
マイクロナノバブル発生槽3にはマイクロナノバブル発生機4が設置され、循環ポンプ7でもってマイクロナノバブル発生機4へ必要量の循環水が供給される。また、必要な空気は、空気吸い込み管6とバルブ5により、調整されて、マイクロナノバブル発生機4に供給され、マイクロナノバブル発生機4によって、最適なマイクロナノバブルが発生する。
【0041】
そして、マイクロナノバブル発生機4からマイクロナノバブルが発生することによって、マイクロナノバブル発生槽3内で水流8が発生し、この水流8がマイクロナノバブル発生槽3内を撹拌している。一方、このマイクロナノバブル発生槽3へは、処理水槽18から処理水槽返送ポンプ19によって返送される処理水が供給されている。このマイクロナノバブル発生槽3では、例えば、透明度が15cm以下のマイクロナノバブル含有水が作製される。
【0042】
そして、原水槽ポンプ2は、マイクロナノバブルを含有した被処理水を原水槽1から配管L1を経由して加圧浮上槽9の下部混合部10に導入する。一方、加圧浮上槽9内の被処理水が加圧浮上槽9の外部に設置してある加圧タンクポンプ15でもって加圧タンク16に送出されると共にこの加圧タンク16にはコンプレッサー17で空気が加圧されて送出される。この加圧された空気が下部混合部10に放出されると微細気泡が発生する。
【0043】
これにより、上記下部混合部10には、配管L1からのマイクロナノバブル含有被処理水と配管L2からの微細気泡を含有する被処理水とが導入されて混合される。よって、この加圧浮上槽9の下部混合部10からはマイクロナノバブルと微細気泡の両方が混合されて発生し、被処理水中の殆ど全ての懸濁物質を浮上させることができる。
【0044】
すなわち、この実施形態によれば、加圧浮上槽9自身で微細気泡を発生して懸濁物質に付着させて、懸濁物質を浮上させるが、マイクロナノバブルはこの微細気泡よりもさらに細かいバブルである。よって、加圧浮上槽9自身で発生させる微細気泡よりもさらに細かくて付着力の強いマイクロナノバブルがより細かい懸濁物質に多数付着すると共に、このマイクロナノバブルが付着した懸濁物質に上記微細気泡が付着することで懸濁物質の浮上力がさらに増加する。特に、マイクロナノバブルが付着した超微細な懸濁物質に微細気泡が付着することで、従来は浮上させることが困難であった超微細な懸濁物質を分離可能となる。
【0045】
その結果、従来よりも細かい懸濁物質を浮上させることができ、被処理水を微細気泡と超微細気泡(マイクロナノバブル)との両方でもって、懸濁物質の分離性能を格段に向上できる。
【0046】
この加圧浮上槽9において、水面に浮上した懸濁物質は、かき寄せ機13で回転される掻き寄せ板12によって、かき寄せられて、浮上汚泥抜き出し部11から排出される。この掻き寄せ板12の材質としては、例えば、鋼板製、プラスチック製、または木製を採用できる。
【0047】
次に、加圧浮上槽9の上部の処理水は処理水部14に移動して、この処理水部14から処理水槽18に流入される。そして、この処理水槽1を出た処理水は、懸濁物質が確実に分離された利用範囲の広い処理水となる。
【0048】
また、この処理水槽1内の処理水は処理水槽ポンプ19によって配管L3からマイクロナノバブル発生槽3に返送される。よって、このマイクロナノバブル発生槽3では、加圧浮上槽9からの処理水を使用してマイクロナノバブル含有水を作製しているので、マイクロナノバブル発生機4が閉塞する等のトラブルは皆無になる。
【0049】
なお、マイクロナノバブル発生機7は市販されているものを採用できるがメーカーを限定するものではなく、具体的一例としては、株式会社 ナノプラネット研究所と株式会社オーラテックのものを採用した。他の商品としては、一例として、西華産業株式会社のマイクロバブル水製造装置や資源開発株式会社のマイクロバブル水製造装置があるが、目的に従って選定すれば良い。
【0050】
また、ここで、3種類のバブルについて説明する。マイクロバブルとは、その発生時において、10〜数10μmの気泡径を有する気泡であり、このマイクロバブルは、発生後に収縮運動により『マイクロナノバブル』に変化する。このマイクロナノバブルとは、10μmから数百nm前後の直径を有する超微細気泡である。また、ナノバブルとは、数百nm以下の直径を有する超微細気泡である。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、図2に、この発明の水処理装置の第2実施形態を示す。この第2実施形態は、図1の第1実施形態における処理水槽18に精密ろ過膜装置移送ポンプ20を設置した点と、処理水槽18の後段に精密ろ過膜装置21を設置した点とが、前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第2実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0052】
図2に示すように、この第2実施形態では、処理水槽18内の処理水を精密ろ過膜装置移送ポンプ20で、精密ろ過膜装置21に移送して精密ろ過処理している。したがって、処理水槽18内の処理水中に僅かに残存している懸濁物質や浮遊物質などを除去でき、水質がより向上し、得られる処理水の利用の用途が広がる。すなわち、精密ろ過膜装置21から得られる水は、各種利用水となる。
【0053】
また、この第2実施形態の処理水槽18からの処理水を精密ろ過膜装置21に移送することによって、マイクロナノバブルシステムが存在しない従来の加圧浮上装置からの処理水を精密ろ過膜装置に導入する場合と比べて、精密ろ過膜装置21での詰まりを減少させることができる。よって、膜の交換頻度を低減できる。
【0054】
(第3の実施の形態)
次に、図3に、この発明の水処理装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、図1の第1実施形態における処理水槽18に精密ろ過膜装置移送ポンプ20を設置した点と、処理水槽18の後段に精密ろ過膜装置21、精密ろ過膜装置ピット22、精密ろ過膜装置ピットポンプ23、逆浸透膜装置24を設置した点が前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第3実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0055】
この第3実施形態では、処理水槽18内の処理水を精密ろ過膜装置移送ポンプ20で、精密ろ過膜装置21に移送してろ過処理して精密ろ過膜装置ピット22に導入している。さらに、この精密ろ過膜装置ピット22から精密ろ過膜装置ピットポンプ23で処理水を逆浸透膜装置24に移送してさらにろ過処理している。
【0056】
したがって、この第3実施形態によれば、処理水槽18から得られる処理水を、さらに、精密ろ過膜装置21、続いて逆浸透膜装置24で処理しているので、処理水中に僅かに残存している懸濁物質、浮遊物質、および溶解しているイオンなどを除去でき、得られる処理水の水質を向上でき、水の利用用途が広がる。
【0057】
また、この第3実施形態では、加圧浮上槽9から得られる処理水を精密ろ過膜装置21および逆浸透膜装置24に移送しているので、マイクロナノバブルシステムが存在していない従来の加圧浮上装置から得られる処理水を精密ろ過膜装置や逆浸透膜装置に導入する場合に比べて、精密ろ過膜装置21や逆浸透膜装置24の詰まりを減少させることができる。よって、膜の交換頻度を低減できる。
【0058】
(第4の実施の形態)
次に、図4に、この発明の水処理装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態は、図1の第1実施形態のマイクロナノバブル発生槽3にマイクロナノバブル発生助剤を添加するためのマイクロナノバブル発生助剤タンク25および発生助剤ポンプ26を備えている点が前述の第1実施形態と異なる。よって、この第4実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0059】
この第4実施形態では、マイクロナノバブル発生助剤タンク25から発生助剤ポンプ26でもって、マイクロナノバブル発生助剤をマイクロナノバブル発生槽3に添加することができる。したがって、マイクロナノバブル発生槽3において、マイクロナノバブルを最適な条件で発生させることが可能となり、結果的には、この第4実施形態における加圧浮上槽9での懸濁物質の分離性能を向上でき、加圧浮上槽9から得られる処理水の水質を向上できる。
【0060】
(第5の実施の形態)
次に、図5に、この発明の水処理装置の第5実施形態を示す。この第5実施形態は、図1の第1実施形態におけるマイクロナノバブル発生槽3におけるマイクロナノバブル発生機4を水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機27に置き換えた点が、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第5実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0061】
この第5実施形態は、マイクロナノバブル発生槽3に水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機27を設置している。この水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機27は設置が容易で、かつ、メンテナンスが容易であるという利点がある。この水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機27への空気の供給は、小型ブロワー29と空気配管28により実施している。なお、この水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機27は、具体的一例として、野村電子工業株式会社製のものを採用可能である。
【0062】
(第6の実施の形態)
次に、図6に、この発明の水処理装置の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、次の(i)〜(iii)の点が前述の第3実施形態と異なる。
【0063】
(i) 図3の第3実施形態における原水槽1,マイクロナノバブル発生槽3を第2の原水槽1,第2のマイクロナノバブル発生槽3とし、この第2の原水槽1の前段に、第1の原水槽30、第1のマイクロナノバブル発生槽37を設置した点、
(ii) 第1の原水槽30と第2の原水槽1との間に生物処理装置38を設置した点、
(iii) 処理水槽返送ポンプ19からの処理水をバルブ39A,39Bを有する分岐配管L6によって、第1,第2のマイクロナノバブル発生槽37,3に移送している点。
【0064】
よって、この第6実施形態では、前述の第3実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第3実施形態と異なる部分を説明する。
【0065】
この第3実施形態では、原水である被処理水を第1の原水槽30に導入した後、この被処理水に第1のマイクロナノバブル発生槽37で作製したマイクロナノバブル含有水を導入している。
【0066】
そして、第1の原水槽30から生物処理装置38にマイクロナノバブルを含有する被処理水が導入される。よって、生物処理装置38では、被処理水に含有されるマイクロナノバブルによって微生物が活性化されるので、生物処理装置38の性能が向上すると同時に生物処理装置38からの被処理水の水質が向上する。
【0067】
なお、第1のマイクロナノバブル発生槽37には、マイクロナノバブル発生機33が設置され、循環ポンプ36によってマイクロナノバブル発生機33へ必要量の循環水が供給される。また、空気吸い込み管35とバルブ34とにより、必要な空気が調整されてマイクロナノバブル発生機33に供給されて、最適なマイクロナノバブルが発生する。そして、このマイクロナノバブルがマイクロナノバブル発生機33から発生することによって、水流32が発生し、マイクロナノバブル発生槽37内を撹拌している。
【0068】
また、処理水槽18の処理水を、処理水槽返送ポンプ19で分岐配管L6からバルブ39Aを経由してマイクロナノバブル発生槽37へ導入して供給水としている。なお、このマイクロナノバブル発生槽37に供給する上記供給水の水量は、バルブ39Aを調節することで水量を確認しながら調節している。また、分岐配管L6から第2のマイクロナノバブル発生槽3に供給する処理水の水量もバルブ39Bを調節することで水量を確認しながら調節している。
【0069】
この第6実施形態によれば、第1,第2のマイクロナノバブル発生槽37,3によって、マイクロナノバブルを2段で発生させる水処理装置を構築できる。すなわち、この実施形態によれば、第1マイクロナノバブル発生槽37で作製するマイクロナノバブル含有水によって、生物処理装置38における微生物の活性を高めて、生物処理後の被処理水の水質を向上させる。さらに、この生物処理装置38による生物処理後の被処理水に、第2のマイクロナノバブル発生槽3で作製したマイクロナノバブル含有水を追加で含有させる。これにより、加圧浮上槽9でのサイズの異なる微細気泡とマイクロナノバブルとが合流して、加圧浮上における懸濁物質の除去に相乗効果を発揮する。
【0070】
(第7の実施の形態)
次に、図7に、この発明の水処理装置の第7実施形態を示す。この第7実施形態は、図1の第1実施形態における原水槽1に凝集剤を添加している点のみが、前述の第1実施形態と異なっている。よって、この第7実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0071】
この第7実施形態では、原水槽1に被処理水の凝集剤を添加すると共にマイクロナノバブル含有水を導入するので、上記凝集剤によって被処理水の成分が凝集されてフロックを形成し、そのフロックにマイクロナノバブルが付着した状態で、加圧浮上槽9に移送される。つまり、この第7実施形態は、原水槽1において、被処理水の成分が凝集剤により凝集してフロックを形成し、その後、加圧浮上槽9の下部混合部10において、被処理水に含有されるマイクロナノバブルと加圧浮上槽9からの微細空気とでもって、被処理水中の懸濁物質が浮上処理されるシステムである。
【0072】
(第8の実施の形態)
次に、図8に、この発明の水処理装置である第8実施形態を示す。この第8実施形態は、図5に示す第5実施形態における原水槽1に凝集剤を添加する点が前述の第5実施形態と異なっている。よって、この第8実施形態では、前述の第5実施形態と同じ部分については同じ符号を付けて詳細説明を省略して前述の第5実施形態と異なる部分を説明する。
【0073】
この第8実施形態では、原水槽1に被処理水の凝集剤が添加されると共にマイクロナノバブル含有水も導入される。よって、原水槽1において、被処理水の成分が凝集剤により凝集してフロックを形成し、そのフロックにマイクロナノバブルが付着した状態で、加圧浮上槽9の下部混合部10に移送される。すなわち、この第8実施形態は、被処理水の成分が凝集剤によって凝集してフロックを形成し、その後、被処理水中のマイクロナノバブルと加圧浮上槽9からの微細空気とでもって、上記フロックが浮上処理されるシステムである。
【0074】
(実験例)
図1の第1実施形態の水処理装置に対応する実験装置を製作した。この実験装置では、原水槽1の容量を約1mとし、マイクロナノバブル発生槽3の容量を2mとし、加圧浮上槽9の容量を3mとし、処理水槽18の容量を1mとした。この実験装置に、被処理水として排水を導入して、約3ケ月間の試運転を行った。そして、この試運転の後、原水槽1の入口での被処理水の浮遊物質濃度と処理水槽18の出口での処理水の浮遊物質の濃度を測定して、浮遊物質の除去率を測定したところ、95%であった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の水処理装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
【図2】この発明の水処理装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
【図3】この発明の水処理装置の第3実施形態を模式的に示す図である。
【図4】この発明の水処理装置の第4実施形態を模式的に示す図である。
【図5】この発明の水処理装置の第5実施形態を模式的に示す図である。
【図6】この発明の水処理装置の第6実施形態を模式的に示す図である。
【図7】この発明の水処理装置の第7実施形態を模式的に示す図である。
【図8】この発明の水処理装置の第8実施形態を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1 原水槽
2 原水槽ポンプ
3 マイクロナノバブル発生槽
4 マイクロナノバブル発生機
5 バルブ
6 空気吸い込み管
7 循環ポンプ
8 水流
9 加圧浮上槽
10 下部混合部
11 浮上汚泥抜き出し部
12 掻き寄せ板
13 掻き寄せ機
14 処理水部
15 加圧タンクポンプ
16 加圧タンク
17 コンプレッサー
18 処理水槽
19 処理水槽返送ポンプ
20 精密ろ過膜装置移送ポンプ
21 精密ろ過膜装置
22 精密ろ過膜装置ピット
23 精密ろ過膜装置ピットポンプ
24 逆浸透膜装置
25 マイクロナノバブル発生助剤タンク
26 発生助剤ポンプ
27 水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機
28 空気配管
29 小型ブロワー
30 原水槽
31 原水槽ポンプ
32 水流
33 マイクロナノバブル発生機
34 バルブ
35 空気吸い込み管
36 循環ポンプ
37 マイクロナノバブル発生槽
38 生物処理装置
39A、39B バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロナノバブル含有水と被処理水とを混合して透明度が15cm以下のマイクロナノバブル含有水を作製し、
上記混合によりマイクロナノバブルを含有した被処理水を加圧浮上装置に導入して水処理し、
上記水処理をした処理水を利用して、上記マイクロナノバブル含有水を作製することを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
透明度が15cm以下のマイクロナノバブル含有水と被処理水とを混合する混合部と、
上記混合部から上記マイクロナノバブルを含有した被処理水が導入される加圧浮上装置とを備え、
上記混合部は被処理水が導入される原水槽であり、
上記加圧浮上装置は加圧浮上槽を有し、
マイクロナノバブル発生機を有すると共に上記マイクロナノバブル含有水を作製するマイクロナノバブル発生槽と、
上記加圧浮上槽から処理水が導入される処理水槽とを備え、
上記処理水槽から上記マイクロナノバブル発生槽に処理水を導入すると共に上記マイクロナノバブル発生槽から上記原水槽にマイクロナノバブル含有水を導入することを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記マイクロナノバブル発生槽にマイクロナノバブル発生助剤を添加する発生助剤添加部を備え、
上記マイクロナノバブル発生助剤は、界面活性剤を含有している液体であることを特徴とする水処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記処理水槽からの処理水が導入される精密ろ過膜装置を備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記処理水槽からの処理水が導入される精密ろ過膜装置と、
上記精密ろ過膜装置からの処理水が導入される逆浸透膜装置とを備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項6】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記マイクロナノバブル発生機が水中ポンプ型マイクロナノバブル発生機であることを特徴とする水処理装置。
【請求項7】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記混合部からマイクロナノバブルを含有した被処理水が導入される生物処理装置を備え、
上記生物処理装置で生物処理されたマイクロナノバブル含有被処理水を上記加圧浮上装置に導入することを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
請求項2に記載の水処理装置において、
マイクロナノバブルを含有する被処理水が導入される生物処理装置を備え、
上記生物処理装置で生物処理されたマイクロナノバブル含有被処理水を被処理水として上記混合部に導入することを特徴とする水処理装置。
【請求項9】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記マイクロナノバブル含有水を作製する第1のマイクロナノバブル発生槽と、
被処理水と上記第1のマイクロナノバブル発生槽からのマイクロナノバブル含有水とが導入される第1の原水槽と、
上記第1の原水槽からマイクロナノバブルを含有した被処理水が導入される生物処理装置と、
マイクロナノバブル含有水を作製する第2のマイクロナノバブル発生槽と、
上記第2のマイクロナノバブル発生槽からのマイクロナノバブル含有水と上記生物処理装置からの生物処理されたマイクロナノバブル含有被処理水とが導入される第2の原水槽とを備え、
上記第1の原水槽と第2の原水槽が上記混合部を構成し、
上記第2の原水槽から上記加圧浮上装置に上記マイクロナノバブル含有被処理水を導入することを特徴とする水処理装置。
【請求項10】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記加圧浮上装置からの被処理水が導入される精密ろ過装置と、
上記精密ろ過装置からの被処理水が導入される逆浸透膜装置とを備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項11】
請求項2に記載の水処理装置において、
上記原水槽に凝集剤を添加することを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−34683(P2009−34683A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293480(P2008−293480)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【分割の表示】特願2006−213320(P2006−213320)の分割
【原出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】