説明

水処理方法及び水処理装置

【課題】使用する活性炭量が少なく、発生汚泥量を抑制してCOD成分を含む原水を処理することが可能な水処理方法を提供する。
【解決手段】COD成分を含有する原水に対して第1のフェントン処理を行う第1フェントン処理工程と、第1のフェントン処理を行った第1フェントン処理水に対して生物処理を行う生物処理工程と、生物処理を行った生物処理水に対して、さらに第2のフェントン処理を行う第2フェントン処理工程と、を含み、処理水のCOD濃度を20mg/L以下にする水処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、COD成分を含む原水を酸化分解処理する水処理方法及び水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
COD成分を含む難生物分解性高濃度COD含有排水の処理方法としては、多くの場合、廃液として濃縮等の操作を経て産業廃棄物として処分されている。その場合、処理コストが高いことが欠点として挙げられる。
【0003】
一方、排水としての処理方法は、オゾン酸化やフェントン処理等を組み合わせることで排水中のCOD成分を易生物分解化させ、それを生物処理する方法が提案されている。ここで、フェントン処理とは、過酸化水素(H22)、Fe2+を酸性条件下で反応させて発生するヒドロキシラジカルにより、有機物を酸化分解する方法である。
【0004】
近年、このように排水として処理する場合は、COD総量規制により、高濃度COD成分を含む原水に対してでも最終処理水中のCOD濃度を10〜20mg/L以下とするニーズが増大している。
【0005】
【特許文献1】特許3139337号公報
【特許文献2】特公平4−080758号公報
【特許文献3】特開昭59−000375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来のフェントン処理−生物処理の方法では、最終処理水中のCOD濃度を10〜20mg/L以下とすることは難しい。すなわち従来の技術における生物処理においては、理想的に処理できても、流入する原水のCOD濃度に対して約10%程度のCOD成分が処理水に残存することが経験的に知られており、例えばCOD濃度1000mg/L以上の原水をフェントン処理により易生物分解化させてCOD成分を50〜95%程度処理した後に生物処理をした場合、通常は50mg/L〜300mg/L程度のCOD成分が残存してしまうため、最終処理水中のCOD濃度を10〜20mg/L以下とするためには、得られた処理水をさらに活性炭塔による吸着などで処理しなくてはならず、使用する活性炭量が増加し、処理コストが膨大となる欠点がある。
【0007】
本発明は、使用する活性炭量が少なく、発生汚泥量を抑制してCOD成分を含む原水を処理することが可能な水処理方法及び水処理装置である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、COD成分を含有する原水に対して第1のフェントン処理を行う第1フェントン処理工程と、前記第1のフェントン処理を行った第1フェントン処理水に対して生物処理を行う生物処理工程と、前記生物処理を行った生物処理水に対して、さらに第2のフェントン処理を行う第2フェントン処理工程と、を含み、処理水のCOD濃度を20mg/L以下にする水処理方法である。
【0009】
また、前記水処理方法において、前記原水のCOD濃度が1000mg/L以上6000mg/L以下であるときに本発明がより好適に適用でき効果が高い。
【0010】
また、前記水処理方法の少なくとも前記第1フェントン処理工程において、活性炭を添加して処理を行うことが好ましい。
【0011】
また、前記水処理方法の前記第2フェントン処理工程において、活性炭を添加して処理を行い、発生した汚泥を前記第1フェントン処理工程に返送することが好ましい。
【0012】
また、前記水処理方法において、前記生物処理が、浮遊式生物処理または固定床式生物処理であることが好ましい。
【0013】
また、前記水処理方法の前記第1のフェントン処理において、バッチ処理を行うことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、COD成分を含有する原水に対して第1のフェントン処理を行うための第1フェントン処理手段と、前記第1のフェントン処理を行った第1フェントン処理水に対して生物処理を行うための生物処理手段と、前記生物処理を行った生物処理水に対して、さらに第2のフェントン処理を行うための第2フェントン処理手段と、を備える水処理装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、COD成分を含有する原水に対して、フェントン処理を行った後に生物処理を行い、その後さらにフェントン処理を行うことにより、それらの処理の後段で使用する活性炭量が少なく、発生汚泥量を抑制してCOD成分を含む原水を処理することが可能な水処理方法及び水処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0017】
従来、難生物分解性高濃度COD含有原水をフェントン処理した後に生物処理を行った場合に残留するCOD成分は、「前段のフェントン処理でも分解できなかった難分解性COD成分」と考えられてきた。そのため、フェントン処理した後に生物処理を行った原水中のCODをさらに低減させる場合はフェントン処理では不適と考えられていた。さらにフェントン処理は産業廃棄が必要となる汚泥の生成が比較的多いために、フェントン処理を一つの処理システムの中で個別に二回行うことは敬遠されてきた。従って前述した通り、最終処理水に対して活性炭塔による吸着処理が主に提案されてきたが、COD50〜300mg/L程度の原水を20mg/L以下に処理するためには活性炭の交換頻度が高く、処理コストが膨大となっていた。
【0018】
発明者は鋭意検討の結果、難生物分解性高濃度COD含有原水をフェントン処理した後に生物処理を行った場合に残留するCOD成分が、生物処理により性状が変化することにより、さらにフェントン処理により分解可能であることを見出し、生物処理の後に再度フェントン処理を行うことで、最終処理水中のCODを20mg/L以下にできることを明らかとした。
【0019】
また、このときの汚泥の発生量に関しては、一見するとフェントン処理を二度適用することでかなりの量が増大すると思われるが、フェントン処理で発生する汚泥量は主に処理対象COD濃度に比例するので、フェントン処理−生物処理を経た後段での比較的低濃度のCOD成分に対するフェントン処理において発生する汚泥量は、前段でのフェントン処理での高濃度のCOD成分に対して発生する汚泥量と比較すると十数%程度に過ぎず、従来のフェントン処理−生物処理システムと大差ないことがわかり、本発明に至った。
【0020】
本実施形態に係る水処理装置の一例の概略を図1に示し、その構成について説明する。水処理装置1は、第1フェントン処理手段である第1フェントン処理装置10と、生物処理手段である生物処理装置12と、第2フェントン処理手段である第2フェントン処理装置14と、を備える。
【0021】
水処理装置1において、まずCOD成分を含有する原水に対して第1のフェントン処理が行われる(第1フェントン処理工程)。次に第1のフェントン処理が行われた第1フェントン処理水に対して生物処理が行われる(生物処理工程)。そして、生物処理が行われた生物処理水に対して、さらに第2のフェントン処理が行われる(第2フェントン処理工程)。これにより、最終処理水のCOD濃度を20mg/L以下にすることができる。
【0022】
また、図2に示すように活性炭処理手段である活性炭処理装置16を第2フェントン処理装置14の後段に備えて、最終処理水に対して安全を考慮して活性炭処理が行われてもよい。活性炭処理手段としては活性炭塔等が挙げられる。当然ながら、活性炭の交換頻度は、従来のフェントン処理−生物処理−活性炭処理の方法と比較して格段に小さい。
【0023】
以下、各装置及び各工程について説明する。図3に第1フェントン処理装置10及び第2フェントン処理装置14の一例の概略構成図を示す。なお、第1フェントン処理装置10及び第2フェントン処理装置14の構成はこれに限られず、また同じ構成であっても異なる構成であってもよい。第1フェントン処理装置10及び第2フェントン処理装置14は、反応槽18(第2フェントン処理装置14においては反応槽28)と、中和槽20(同中和槽30)と、還元槽22(同還元槽32)と、凝集槽24(同凝集槽34)と、固液分離手段である沈殿槽26(同沈殿槽36)とを備える。第1フェントン処理装置10及び第2フェントン処理装置14において、反応槽18(28)の出口と中和槽20(30)の入口、中和槽20(30)の出口と還元槽22(32)の入口、還元槽22(32)の出口と凝集槽24(34)の入口、凝集槽24(34)の出口と沈殿槽26(36)の入口がそれぞれ配管等により接続されている。
【0024】
第1フェントン処理装置10において、COD成分を含有する原水(被処理水)が反応槽18に送液され、反応槽18において、過酸化水素、少なくとも第一鉄塩を含む分解触媒等が添加され、COD成分が酸化により分解される(分解工程)。このとき、硫酸等の酸により酸性条件に調整される。酸化処理後、反応液は中和槽20に送液され、中和槽20においてアルカリ剤が添加され、pHが6〜10.5に調整される(中和工程)。その後、中和された中和液は還元槽22に送液され、還元剤が添加されて残留過酸化水素が還元され(還元工程)、残留過酸化水素が除去される。残留過酸化水素が除去された還元液は凝集槽24へ送液され、凝集剤が添加されてフロックを成長させ、凝集される(凝集工程)。成長したフロックを含む凝集液は沈殿槽26へ送液され、自然沈降分離により、第二鉄イオン(Fe3+)等を含む汚泥と処理水とに固液分離される(固液分離工程)。汚泥のうち少なくとも一部は図示しない返送手段により反応槽18へ返送され、過酸化水素、分解触媒等と共に再び反応槽18へ添加されてもよい。また、汚泥のうち少なくとも一部は引き抜き汚泥として系外へ排出してもよい。一方、固液分離された第1フェントン処理水は易生物分解化されたCOD成分を含み、次の生物処理装置12へ送液される。
【0025】
生物処理装置12における生物処理は一般的な生物処理が用いられ、浮遊式や担体を添加して効率を高めた流動床式、充填物へ通水する固定床式などが用いられる。その後、再度フェントン処理を行うことで、COD濃度が20mg/L以下の最終処理水が得られる。
【0026】
図4に、生物処理装置12の一般的な概略構成を示す。生物処理装置12は、生物処理槽38と、沈殿槽40とを備える。第1フェントン処理水は、生物処理槽(曝気槽)38に送液される。この生物処理槽38には、返送汚泥が供給されるとともに、ブロア42からの空気により槽内が曝気撹拌され、好気条件下におかれている。そこで、汚泥中の好気性微生物により第1フェントン処理水中の有機物が分解される。生物処理槽38からの生物反応水は、沈殿槽40に流入され、ここで汚泥が沈降分離され、上澄みが生物処理水として次の第2フェントン処理装置14へ送液される。また、沈殿槽40の沈殿汚泥の少なくとも一部は、返送汚泥ポンプ44によって、生物処理槽38に返送汚泥として返送されてもよい。沈殿汚泥の少なくとも一部は余剰汚泥として排出されてもよい。なお、図4の示す構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0027】
次に、図3の第2フェントン処理装置14において、生物処理装置12からの生物処理水が反応槽28に送液され、反応槽28において、過酸化水素、少なくとも第一鉄塩を含む分解触媒等が添加され、残存COD成分が酸化により分解される(分解工程)。このとき、硫酸等の酸により酸性条件に調整される。酸化処理後、反応液は中和槽30に送液され、中和槽30においてアルカリ剤が添加され、pHが6〜10.5に調整される(中和工程)。その後、中和された中和液は還元槽32に送液され、還元剤が添加されて残留過酸化水素が還元され(還元工程)、残留過酸化水素が除去される。残留過酸化水素が除去された還元液は凝集槽34へ送液され、凝集剤が添加されてフロックを成長させ、凝集される(凝集工程)。成長したフロックを含む凝集液は沈殿槽36へ送液され、自然沈降分離により、第二鉄イオン(Fe3+)等を含む汚泥と処理水とに固液分離される(固液分離工程)。汚泥のうち少なくとも一部は図示しない返送手段により反応槽28へ返送され、過酸化水素、分解触媒等と共に再び反応槽28へ添加されてもよい。また、後述するように汚泥のうち少なくとも一部は第1フェントン処理装置10の反応槽18へ返送されてもよい。また、汚泥のうち少なくとも一部は引き抜き汚泥として系外へ排出してもよい。一方、固液分離された第2フェントン処理水は最終処理水として系外へ排出される。
【0028】
本実施形態に係る水処理方法は、有機物、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、フェノール類、有機塩素化合物、環境ホルモン、生物処理水、揚水した汚染地下水、界面活性剤等の難生物分解性有機物の酸化分解、又は易生物分解化等に使用される。原水中のCOD成分の濃度としては、どのような濃度であっても薬剤濃度の最適化等により効果はあるが、CODで1000mg/L以上6000mg/L以下の原水に対して本実施形態に係る水処理装置及び水処理方法を適用することが好ましい。原水のCODが1000mg/L未満の場合、フェントン処理−生物処理後でCOD10〜20mg/L以下が達成される場合が多い。また、原水のCODが6000mg/Lを越える場合は、過酸化水素等の薬剤コストを考慮すると、コスト高になる場合がある。
【0029】
また、原水のBOD/CODの値が好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.1以下である難生物分解性高濃度COD含有原水に対して、本実施形態に係る水処理装置及び水処理方法を適用することが好ましい。原水のBOD/CODの値が0.4を超えると、生物処理−活性炭処理により分解処理を行う方が効率がよい場合がある。原水のBOD/CODの値が0.4以下で、かつ原水のCODが1000mg/L未満の場合、フェントン処理−生物処理後でCOD10〜20mg/L以下が達成される場合が多い。したがって、本実施形態に係る水処理方法は原水のBOD/CODの値が0.4以下で、かつ原水のCODが1000mg/L以上の場合に特に好適に適用することができる。このような難生物分解性高濃度COD含有原水に対して、フェントン処理を行った後に生物処理を行い、さらにその生物処理水に対してフェントン処理を行うことにより、CODとして20mg/L以下の処理水質を得ることができる。このような難生物分解性高濃度COD含有原水としては、電子産業における基板の洗浄排水、塗料や染色排水などが挙げられる。
【0030】
ここで、COD値はJIS−K0102(1998)−17に従って、BOD値はJIS−K0102(1998)−21に従って分析することができる。
【0031】
第1フェントン処理工程及び第2フェントン処理工程において、反応槽18(28)では少なくとも第一鉄塩を含む分解触媒から発生する第一鉄イオン及び過酸化水素が同時に存在すればよい。ここで、少なくとも第1フェントン処理工程において、反応槽18に活性炭を添加して処理を行うことが好ましい。活性炭を添加するとフェントン反応自体の効率が向上し、さらにはヒドロキシラジカルで分解しにくい疎水性の難生物分解性物質を吸着により除去することもできるので、難生物分解性高濃度COD含有原水に適用する場合は特に二重の望ましい効果をもたらす。もちろん第2フェントン処理工程においても活性炭を添加して処理を行ってもよい。
【0032】
本実施形態で用いられる活性炭は、特に限定されるものではないが、比表面積を確保するために粉炭であることが好ましい。活性炭は、分解工程において発生する第二鉄イオン(Fe3+)の触媒活性を上昇させ、分解反応を促進する役割を主に行う。活性炭の反応促進効果は、活性炭の原料によってある程度は左右されるが著しい差はなく、コスト及び汎用性を考慮すると石炭系又は木質系の活性炭が好適に使用される。活性炭によるフェントン法の促進効果は、反応系中に存在するFe3+を活性化させる作用によるものなので、添加する鉄塩は、第一鉄塩の他に、通常のフェントン法では使用に適さない第二鉄塩も使用することができる。第一鉄塩及び第二鉄塩としては、それらの硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩などが使用できるが、硫酸鉄や塩化鉄が特に好適に使用される。
【0033】
フェントン処理におけるその他の処理条件については、第1フェントン処理工程及び第2フェントン処理工程においてほとんど同じでかまわない。
【0034】
反応槽18(28)におけるpHは酸性条件であれば良いが、系内の溶存鉄濃度を保つことを考慮すると、pH2〜3の範囲、特にpH2.4〜2.6の範囲(2.5付近)が反応に好適である。pHの調整には硫酸、塩酸、酢酸、リン酸、硝酸等の酸が用いられるが、硫酸を使用することが好ましい。硝酸は高価であり且つ後段の窒素負荷上昇につながり、塩酸は塩化物イオンによる反応がラジカルスカベンジャーとして作用するため好ましくない。
【0035】
反応槽18(28)における薬剤の添加濃度は、処理対象となる原水のCOD濃度によって異なるが、概ねFe2+の添加量は原水のCOD濃度に対して化学当量比で0.05〜0.25倍(すなわち、Fe2+/COD(化学当量比)=0.05〜0.25)であることが好ましい。Fe2+の添加量が原水のCOD濃度に対して0.25倍を超える範囲では、多くの汚泥が発生してしまう場合がある。また、Fe2+の添加量が原水のCOD濃度に対して0.05倍未満であると良好なCOD分解率が得られない場合がある。Fe2+/COD(化学当量比)=0.05〜0.15の範囲であることがより好ましい。また、Fe2+の添加量は、概ね過酸化水素の添加量に対して化学当量比で0.05〜1倍であることが好ましい。
【0036】
過酸化水素の添加量は概ね原水のCODに対して化学当量比で0.8〜3倍(すなわち、過酸化水素/COD(化学当量比)=0.8〜3)であることが好ましい。過酸化水素の添加量が原水のCODに対して3倍を超えると、残留過酸化水素濃度が高くなり過酸化水素の還元処理のコストが増大してしまう場合がある。過酸化水素の添加量が原水のCODに対して0.8倍未満であると、良好なCOD分解率が得られない場合がある。また、過酸化水素/COD(化学当量比)=1〜2の範囲であることがより好ましい。
【0037】
活性炭の添加量は、反応槽18(28)において添加する第一鉄塩のFe2+に対して重量比で1〜20倍(すなわち、活性炭/Fe2+(重量比)=1〜20)であることが好ましい。活性炭の添加量がFe2+に対して20倍を超えてもCOD分解率は大きく向上せず、また凝集不良が起きやすくなる。活性炭の添加量がFe2+に対して1倍未満であると良好なCOD分解率が得られない場合がある。また、活性炭/Fe2+(重量比)=1〜10の範囲であることがより好ましい。
【0038】
また、活性炭の添加量は、反応槽18(28)において添加する過酸化水素に対して重量比で0.1〜1倍(すなわち、活性炭/過酸化水素(重量比)=0.1〜1)であることが好ましい。活性炭の添加量が過酸化水素に対して1倍を超えてもCOD分解率は大きく向上せず、0.1倍未満であると良好なCOD分解率が得られない場合がある。また、活性炭/過酸化水素(重量比)=0.1〜0.5の範囲であることがより好ましい。
【0039】
処理対象物質であるCOD成分が活性炭に吸着する物質である場合は、添加する活性炭に吸着する分のCOD値を、初期COD値に加算した濃度について、前記Fe2+/COD(化学当量比)の範囲内を適用すればよい。
【0040】
反応槽18(28)における反応方法としては、バッチ処理、連続処理のどちらでも可能である。バッチ処理の場合、反応槽18(28)系内のpHを酸性にした後、分解触媒、活性炭、返送汚泥等を添加し、過酸化水素を所定の反応時間内で所定の添加量になるまで除々に添加していくことが過酸化水素の自己分解を抑制できる点で好ましい。さらに、過酸化水素について、初期段階でFe2+と当モル量添加し、その後残りの量を所定の反応時間内で除々に添加していくことが過酸化水素の自己分解を抑制できる点で好ましい。また、過酸化水素を添加後、概ね反応時間の10〜20%程度、薬剤を添加せずに撹拌する時間を設けることが過酸化水素を分解させ、処理水中の過酸化水素濃度を低減できる点で好ましい。また、このような撹拌時間を設けることによって、固液分離工程において、残留している過酸化水素の自己分解により発生した酸素が一旦沈降した汚泥を浮上させることを防止することもできる。
【0041】
連続処理の場合、本実施形態における反応槽18(28)は、反応速度論の観点から2つ以上に分割して直列に配置してもよい。反応槽18(28)の数は特に制限はないが、反応速度論の観点から2個〜10個に分割することが好ましく、2個〜4個に分割することがより好ましい。また、反応槽18(28)を分割した場合の各薬剤の添加は、各槽へ分割添加することもできる。このとき、過酸化水素の添加は、反応槽18(28)を分割した場合には各槽へそれぞれ分割して添加すると過酸化水素の自己分解を抑制できるという望ましい効果をもたらす。活性炭及び分解触媒、循環した汚泥の分割した反応槽への添加方法に特に限定はないが、コスト及び装置形状の簡便さの観点から、直列に配置した槽のうち第一の反応槽に添加することが好ましい。また、反応槽18(28)は、2つ以上に分割して並列に配置してもよい。
【0042】
また、過酸化水素を直列に配置した各反応槽へそれぞれ分割して添加し、分割した反応槽1段目に分解触媒、反応槽2段目に活性炭及び返送汚泥を添加するとさらに分解率が向上するという望ましい効果をもたらす。これは、反応槽1段目においてFe2+により分解反応を行い、反応槽2段目において生成したFe3+を活性炭により活性化する方が効率的に分解反応が進行するからである。このように反応槽1段目に分解触媒、反応槽2段目に活性炭及び返送汚泥を添加する場合、2段目以降の容積を1段目の反応槽よりも大きくして、反応液に対するFe3+の存在量を多くしてもよいし、1段目の反応槽の容積を2段目以降よりも大きくして1段目の反応槽におけるFe2+の滞留時間を長くしてもよい。これらにより、さらに分解率を向上することができる。
【0043】
本実施形態において第1フェントン処理工程におけるフェントン処理はバッチ処理にて行われることが好ましい。これにより高濃度の難生物分解性COD成分を効率良く分解することができる。第2フェントン処理工程においては、低濃度であるのでフェントン処理は連続処理にて行うことができる。
【0044】
凝集工程で用いられる凝集剤としては、高分子凝集剤等が用いられる。このときの高分子凝集剤の種類には特に限定はなく、アニオン系、ノニオン系のものが好適に使用される。
【0045】
固液分離工程における固液分離は沈降分離の他に、膜分離、加圧浮上等の分離方法により行われてもよい。
【0046】
本実施形態において、後段の第2フェントン処理工程において活性炭の添加を行った場合は、図5に示すように第2フェントン処理工程において発生した汚泥を前段の第1フェントン処理工程へ返送手段により返送して再利用することで、前段の第1フェントン処理の性能が向上するため好ましい。このときの返送汚泥は、鉄及び活性炭以外の不純物が少ない方が好ましく、そのため、生物処理工程から後段の第2フェントン処理工程へ流入する生物処理水中のSS成分は少ない方が好ましい。このような生物処理水中のSS成分が少ない生物処理の方法としては、沈殿槽を設けた浮遊式、膜分離活性汚泥の処理水、充填物にSSが捕捉される繊維状充填物やプラスチック充填剤を充填した固定床式が挙げられる。沈殿槽を設置しない流動床式は比較的流出SSが高くなる傾向にある。
【実施例】
【0047】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1〜4)
JIS−K0102(1998)−17に従い分析したCOD値及びJIS−K0102(1998)−21に従い分析したBOD値が、COD 1890mg/L、BOD 2mg/L以下である塗料排水(BOD/COD=約0.001)に対して、第1のフェントン処理−生物処理−第2のフェントン処理を行った。
【0049】
第1のフェントン処理はセミバッチ処理にて行った。処置対象原水8Lに対し、条件(1)としてFeSO4・7H2O 26000mg/L、条件(2)としてFeSO4・7H2O 2200mg/L及び木質系粉末活性炭2200mg/Lをそれぞれ添加し、硫酸によりpH2.5±0.5とした後、撹拌しながらそれぞれにH22を1時間かけて6700mg/Lとなるように連続添加し、その後0.5時間撹拌した。反応終了後、pHを水酸化ナトリウムにて中性(pH6〜8)に調整し、高分子凝集剤(OA−23、オルガノ社製)を10mg/L添加してフロックを形成させて沈降させ、それぞれの上澄みのCOD濃度をJIS−K0102(1998)−17に従い分析したところ、条件(1)は340mg/L、条件(2)は103mg/Lであった。また、SSの発生量は、処理後の懸濁溶液をサンプリングし、JIS−K0102(1998)−14.2に従い測定したところ、それぞれ条件(1)17000mg/L、条件(2)4800mg/Lであった。
【0050】
次に、条件(1)及び(2)の処理後の上澄み(第1フェントン処理水)について、バッチ処理にて生物処理を行った。生物処理としては、肉エキス−ペプトンにより馴養した種汚泥を用い、各条件のフェントン処理水5Lに対して3000mg/Lとなるように添加し、バッチ処理にてDO(溶存酸素)が4mg/Lを保つように24時間曝気処理した。処理中のpHは7.0±0.5を保つように水酸化ナトリウムとpHコントローラを用いて管理した。処理後、処理水を濾紙5Aによりろ過してCOD濃度をJIS−K0102(1998)−17に従い分析したところ、条件(1)は120mg/L、条件(2)は55mg/Lであった。
【0051】
第1のフェントン処理及び生物処理を実施した条件(1)及び条件(2)の濾紙5Aによりろ過した生物処理水を用いて、第2のフェントン処理を行った(実施例1〜4)。フェントン処理はバッチ処理にて行い、硫酸によりpH2.5±0.5として、処理対象水300mLに対し、所定量のFeSO4・7H2O及び木質系粉末活性炭を添加して撹拌した後、過酸化水素を所定量添加し、1時間撹拌した。反応終了後、pHを水酸化ナトリウムにて中性(pH6〜8)に調整し、高分子凝集剤(OA−23、オルガノ社製)を1mg/L添加してフロックを形成させて沈降させ、それぞれの上澄みのCOD濃度をJIS−K0102(1998)−17に従い分析した。また、SSの発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1〜5)
実施例1〜4と同じ条件(2)の濾紙5Aによりろ過した生物処理水を用いて、活性炭による吸着処理との比較試験を行った。活性炭による吸着処理は、処理対象水300mLに対し、木質系粉末活性炭を所定量添加して24時間撹拌した後、0.1μmフィルタでろ過したろ液のCOD濃度をJIS−K0102(1998)−17に従い分析した。活性炭の使用量を60mg/L(比較例1),100mg/L(比較例2),550mg/L(比較例3),1000mg/L(比較例4),2000mg/L(比較例5)として実験を行った。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例6)
実施例1〜4と同じ条件(2)の濾紙5Aによりろ過した生物処理水を用いて、酸性凝集処理との比較試験を行った。凝集処理は、処理対象水300mLに対し、38%FeCl3 700mg/Lを硫酸によりpH4±0.1とした一定の条件下で添加して5分間撹拌した後、水酸化ナトリウムでpH7±0.5に設定し、高分子凝集剤(OA−23、オルガノ社製)を1mg/L添加してフロックを形成させて沈降させ、それぞれの上澄みのCOD濃度をJIS−K0102(1998)−17に従い分析した。また、SSの発生量を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1より、実施例1〜4と比較例1〜5との比較から、最終処理水のCODを10mg/L以下とするためには、活性炭吸着処理では2000mg/L以上もの活性炭の添加が必要であり、消費される活性炭量が非常に多いことが容易に推察され、第2のフェントン処理が有効であることがわかる。また比較例6より、本処理対処水は酸性凝集処理ではほとんどCOD成分を除去できないことがわかる。さらに処理フロー全体におけるフェントン処理由来の発生SS量は、フェントン処理−生物処理が17000mg/Lに対して、実施例1,2に示した本処理方法では約19000mg/L(17000mg/L+1730mg/L,1650mg/L)であり、活性炭を添加したフェントン処理−生物処理が4800mg/Lに対して、実施例3,4に示した本処理方法は約5800mg/L(4800mg/L+880mg/L,840mg/L)であることから、本処理方法にて発生する汚泥量はフェントン処理−生物処理と大差ないことがわかる。さらに、実施例1,2と実施例3,4を比較することで、前段の第1のフェントン処理において活性炭を添加することで、システム全体の発生SS及び処理水COD値が低下することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係る水処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフェントン処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る生物処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の実施形態に係る水処理装置の他の例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1 水処理装置、10 第1フェントン処理装置、12 生物処理装置、14 第2フェントン処理装置、16 活性炭処理装置、18,28 反応槽、20,30 中和槽、22,32 還元槽、24,34 凝集槽、26,36 沈殿槽、38 生物処理槽、40 沈殿槽、42 ブロア、44 返送汚泥ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COD成分を含有する原水に対して第1のフェントン処理を行う第1フェントン処理工程と、
前記第1のフェントン処理を行った第1フェントン処理水に対して生物処理を行う生物処理工程と、
前記生物処理を行った生物処理水に対して、さらに第2のフェントン処理を行う第2フェントン処理工程と、
を含み、
処理水のCOD濃度を20mg/L以下にすることを特徴とする水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理方法であって、
前記原水のCOD濃度が1000mg/L以上6000mg/L以下であることを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水処理方法であって、
少なくとも前記第1フェントン処理工程において、活性炭を添加して処理を行うことを特徴とする水処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理方法であって、
前記第2フェントン処理工程において、活性炭を添加して処理を行い、発生した汚泥を前記第1フェントン処理工程に返送することを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の水処理方法であって、
前記生物処理が、浮遊式生物処理または固定床式生物処理であることを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の水処理方法であって、
前記第1のフェントン処理において、バッチ処理を行うことを特徴とする水処理方法。
【請求項7】
COD成分を含有する原水に対して第1のフェントン処理を行うための第1フェントン処理手段と、
前記第1のフェントン処理を行った第1フェントン処理水に対して生物処理を行うための生物処理手段と、
前記生物処理を行った生物処理水に対して、さらに第2のフェントン処理を行うための第2フェントン処理手段と、
を備えることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−101262(P2009−101262A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273296(P2007−273296)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】