説明

水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シート及びその製造方法

【課題】転写塗工法であっても基材密着性が高く、再剥離性、曲面貼付性が良好な水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シート及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和単量体を含む不飽和単量体混合物をレドックス系重合開始剤の存在下に乳化重合して得られるアクリル系エマルション(A)と架橋剤(B)とを含み、剥離シート上に塗布、乾燥し、基材と貼り合わせた直後の乾燥皮膜における溶剤可溶分の重量平均分子量が15万以上であり、該乾燥皮膜におけるゲル分率(i)が0%以上60%未満であり、40℃7日間のエージングした後の乾燥皮膜におけるゲル分率(ii)が50%以上99%未満であり、ゲル分率(i)とゲル分率(ii)の差が20%以上である水分散型アクリル系粘着剤組成物、該組成物を基材上に設けてなる粘着シート及びこれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シート及びこれらの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、転写塗工法であっても、難接着性基材の一つである合成樹脂等のフィルムに適用することも可能であり、粘着力、曲面貼付性に優れ、浮き剥がれすることなく長期間被着体へ貼りつけることが可能であり、かつ貼付から長期間経過後に剥離しても被着体に糊残りを引き起こすことなく、容易に剥離することが可能な再剥離性に優れる水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シート及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題などの観点から、従来使用していた溶剤型粘着剤を無溶剤型粘着剤へ置換していく取り組みが盛んに行われており、環境対応型いわゆるエコ製品の開発が強く望まれている。
中でも、水を分散媒として用いるエマルション型粘着剤は、安全性も高く、コスト面でのメリットも出しやすいことなどから、多くの検討が行われている。このようなエマルション型粘着剤には、重合安定性や塗工適性を得るために、乳化剤や濡れ剤等の低分子量の非粘着性添加物を多く配合する必要がある。これらの低分子量成分が乾燥後も粘着剤中に残留し、基材や被着体との界面に移行してしまうことなどから、エマルション型粘着剤は溶剤型粘着剤に比べ、被着体ばかりでなく、基材に対する接着性も得られにくい。また、これらの添加物は耐水性や造膜性等に悪影響を及ぼし、粘着剤の凝集力を低下させてしまうことがある。このため、エマルション型粘着剤からなる粘着シートを設計する際には、高度かつ綿密なバランス取りが要求される。
また、エマルション型粘着剤は、被着体に対する再剥離性が劣化しやすいため、特に曲面被着体への再剥離性用途には適用困難であった。
【0003】
このようなエマルション型粘着剤については下記のような先行技術が開示されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
特許文献1には、固形分中の溶剤不溶分が20重量%以下の水分散型アクリル系粘着剤を基材上に塗布して粘着剤層を形成し、水蒸発工程終了時における粘着剤層中の溶剤不溶分が20重量%以下となるように水蒸発を行い、その後該粘着剤層を架橋させることにより得られる水分散型アクリル系粘着剤により粘着剤層が形成された水分散型粘着シートが提案されている。
特許文献2には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a1)、カルボキシル基含有不飽和単量体(a2)を含む単量体混合物を、アニオン型反応性乳化剤の存在下に、乳化重合させて得られる、ゲル分率が70重量%未満のエマルジョン[A]と、架橋剤[B]とを含有してなる再剥離型水性粘着剤組成物が提案されている。
特許文献3には、粘着剤層の引張試験における初期弾性率、最大強度、破断伸びが特定の範囲にあり、かつ粘着剤層のゲル分率が90%以上である再剥離用水分散型アクリル系粘着シートが提案されている。
特許文献4には、(a)粘着剤層の動的粘弾性スペクトルにおける120℃での損失正接、(b)被着体の平滑面に対する初期接着力をFaとし、被着体の凹凸面に対する初期接着力をFbとしたときの、FaとFbの関係式(Fb/Fa)、及び(c)Faの値が特定の範囲にある再剥離用粘着シートが記載され、このとき、粘着剤層のゲル分率は45〜80重量%が好ましいことが記載されている。
しかしながら、紙基材や難接着性基材の一つである合成樹脂等の各種基材へのアンカー効果、粘着性、曲面貼付性、再剥離性のバランスに優れるものは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−119611号公報
【特許文献2】特開2006−45410号公報
【特許文献3】特開2006−169496号公報
【特許文献4】特開2006−265537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下でなされたものであり、基材や被着体への接着性と凝集力のバランスに優れ、各種基材へのアンカー効果に優れ、さらに粘着力、曲面貼付性に優れ、かつ転写塗工法により製造された粘着シートを貼付から長期間経過後に、被着体に糊残りを引き起こすことなく容易に剥離することが可能な再剥離性に優れる水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シート、及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、酸化剤と還元剤によるレドックス反応を利用し、特定の重合条件下でラジカル乳化重合した水分散型アクリル系重合体に、架橋剤を必須成分として含有した水分散型アクリル系粘着剤組成物であり、該粘着剤組成物の架橋反応前後におけるゲル分率および乾燥直後の皮膜の溶剤可溶分の重量平均分子量を特定の範囲とした水分散型アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材シート上に有する粘着シートにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(6)を提供するものである。
(1)(a1)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.5質量%、(a2)カルボキシル基含有不飽和単量体0.5〜10質量%を含む不飽和単量体混合物を、過硫酸塩及び/又は過酸化物系重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤からなる重合開始剤の存在下で乳化重合して得られるアクリル系エマルション(A)と架橋剤(B)とを含む水分散型アクリル系粘着剤組成物であって、該水分散型アクリル系粘着剤組成物を、剥離シート上に塗布、乾燥し、基材を貼り合わせた直後の乾燥皮膜における溶剤可溶分の重量平均分子量が15万以上であり、該乾燥皮膜におけるゲル分率(i)が0%以上60%未満であり、40℃7日間のエージングした後の乾燥皮膜におけるゲル分率(ii)が50%以上99%未満であり、ゲル分率(i)とゲル分率(ii)の差が20%以上であることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(2)(a2)成分のカルボキシル基含有不飽和単量体がアクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種である、上記(1)の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(3)架橋剤(B)がエポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種であって、該架橋剤の架橋性官能基が(a2)成分のカルボキシル基1当量に対して0.01〜5当量となるように含む上記(1)または(2)の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
(4)アクリル系エマルション(A)と架橋剤(B)とを含む上記(1)〜(3)のいずれかの水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造する方法であって、(a1)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.5質量%、(a2)カルボキシル基含有不飽和単量体0.5〜10質量%を含む不飽和単量体混合物を、過硫酸塩及び/又は過酸化物系重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤からなる重合開始剤存在下に、反応温度が40〜100℃に制御された反応場で乳化重合してアクリル系エマルション(A)を得ることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかの水分散型アクリル系粘着剤組成物を基材上に設けてなる粘着シート。
(6)上記(1)〜(3)のいずれかの水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート上に塗布、乾燥した後に基材と貼り合わせる転写塗工法により得る粘着シートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、転写塗工法であっても、合成樹脂フィルムのような難接着性基材に対してもアンカー効果が得られ、かつ粘着性、曲面貼付性に優れ、貼付から長期間経過後も被着体に糊残りを引き起こすことなく、容易に剥離することが可能な再剥離性に優れる水分散型アクリル系粘着剤組成物、粘着シート、及びこれらの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、アクリル系エマルション(A)を含有する。
本発明に用いるアクリル系エマルション(A)は、(a1)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.5質量%、(a2)カルボキシル基含有不飽和単量体0.5〜10質量%を含む不飽和単量体混合物をレドックス系重合開始剤の存在下に乳化重合して得られる。
【0010】
まず、アクリル系エマルション(A)中の成分(a1)について説明する。
本発明に用いる成分(a1)は、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。
成分(a1)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸イソウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル等が挙げられる。
中でも、性能のバランスという観点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルがより好ましい。
上記成分(a1)は単独でも、2種類以上混合して用いても良い。
【0011】
アクリル系エマルション(A)中のアクリル系共重合体における成分(a1)由来の構成単位の含有量は、モノマー構成単位中50〜99.5質量%であり、70〜99.0質量%であることが好ましく、80〜98.0質量%であることがより好ましい。
成分(a1)を50質量%以上含むことで、充分な粘着力、タックが得られ、99.5質量%以下含むことで、成分(a2)や必要に応じてその他の不飽和単量体を含有させて、充分な凝集力を得ることができる。
【0012】
次に、アクリル系エマルション(A)中の成分(a2)について説明する。
成分(a2)は、カルボキシル基含有不飽和単量体であり、カルボキシル基が架橋剤(B)との架橋化基点として作用する。
成分(a2)としては、後述する架橋剤(B)との反応において架橋化基点として作用する反応性官能基であるカルボキシル基を含有する不飽和単量体であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
これらの中で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
上記成分(a2)は単独でも、2種類以上混合して用いても良い。
【0013】
アクリル系エマルション(A)中のアクリル系共重合体における成分(a2)に由来する構成単位の含有量は、モノマー構成単位中0.5〜10質量%であり、0.8〜8質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
成分(a2)を0.5〜10質量%含むことで、重合安定性、分散安定性、機械安定性といった水分散塗工液状態での安定性と、後述する粘着シートにおける粘着剤組成物の乾燥皮膜の物性を両立させることが出来る。0.5質量%以上であると塗工液状態での安定性や乾燥皮膜の凝集力が向上し、10質量%以下であると乾燥皮膜の耐水性、被着体への良好なアンカー効果が得られる。成分(a2)の含有量を上記の範囲とすることにより、成分(B)である架橋剤との反応により形成される架橋化基点の量が適切に保たれ、ゲル分率を適切な範囲に調整することができる。
【0014】
アクリル系エマルション(A)において、成分(a1)及び成分(a2)以外の単量体成分として、その他の不飽和単量体(a3)を必要に応じて使用することができる。
成分(a3)としては、例えばγ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性不飽和単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の水酸基含有不飽和単量体、アクリル酸アセトアセトキシメチル、メタクリル酸アセトアセトキシメチル等のアセトアセトキシ基含有不飽和単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有不飽和単量体、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有不飽和単量体、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有不飽和単量体、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、シクロヘキシルマレイミド等の窒素含有不飽和単量体、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、クロロプレン等のハロゲン化オレフィン類、スチレン、tert−ブチルスチレン等のスチレン類、(メタ)アクリロニトリル、クロロアクリロニトリル等のニトリル類不飽和単量体、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有不飽和単量体、メチロールアクリルアミド、ブトキシN−メチロールアクリルアミド等のメチロール基含有不飽和単量体、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有不飽和単量体およびこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩等)、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のリン酸基を有するモノマーおよびこれらの塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩等)などが挙げられる。
【0015】
アクリル系エマルション(A)中のアクリル系共重合体における成分(a3)に由来する構成単位の含有量は、モノマー構成単位中0〜45.5質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることがさらに好ましい。
これらの不飽和単量体(a3)によって組成を適宜調整し、アクリル系エマルション(A)中のアクリル系共重合体のガラス転移点(Tg)が−80℃〜−20℃となるようにするのが好ましく、−75〜−25℃がさらに好ましく、−70〜−30℃がさらに好ましい。
【0016】
次に、アクリル系エマルション(A)の製造方法について説明する。
アクリル系エマルション(A)は乳化剤を用いて前記成分(a1)、成分(a2)および必要に応じて使用されるその他の不飽和単量体(a3)を含む不飽和単量体混合物を乳化重合させることにより得られる。
乳化剤としては、例えばビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基を有するアニオン型、ノニオン型の反応性乳化剤、または非反応性乳化剤が使用される。
【0017】
アニオン型反応性乳化剤としては、「アデカリアソープSE−10N」、「アデカリアソープSE−20N」、「アデカリアソープSE−1025A」、「アデカリアソープPP−70」、「アデカリアソープPP−710」、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」、「アデカリアソープSR−1025」〔以上、株式会社ADEKA製〕、「エレミノールJS−2」、「エレミノールRS−30」〔以上、三洋化成工業株式会社製〕、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」〔以上、花王株式会社製〕、「アクアロンBC−05」、「アクアロンBC−10」、「アクアロンBC−20」、「アクアロンHS−05」、「アクアロンHS−10」、「アクアロンHS−20」、「ニューフロンティアS−510」、「ニューフロンティアA−229E」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」〔以上、第一工業製薬株式会社製〕、「フォスフィノ−ルTX」〔東邦化学工業株式会社製〕、「アントックスMS−60」、「アントックスSAD」、「アントックスMS−2N」〔日本乳化剤株式会社製〕等の市販品が挙げられるが、反応性を有していれば良く、特にこれらに限定されない。
【0018】
ノニオン型反応性乳化剤としては、「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープNE−40」、「アデカリアソープER−10」、「アデカリアソープER−20」、「アデカリアソープER−30」、「アデカリアソープER−40」〔以上、株式会社ADEKA製〕、「ラテムルPD−420」、「ラテムルPD−430」、「ラテムルPD−450」〔以上、花王株式会社製〕「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、「アクアロンRN−50」〔以上、第一工業製薬株式会社製〕、「アントックスLMA−10」〔日本乳化剤株式会社製〕等の市販品が挙げられるが、反応性を有していれば良く、特にこれらに限定されない。
【0019】
乳化重合安定性、エマルションの機械安定性を考慮し、非反応性乳化剤を使用しても良く、前述の反応性乳化剤と併用して使用しても良い。このような非反応性乳化剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用されている公知の乳化剤が用いられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムなどのアニオン型乳化剤およびこれらアニオン型乳化剤のアンモニウム塩、カリウム塩、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン酸エステル、グリセリン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン型乳化剤等が挙げられる。
【0020】
これら乳化剤の使用量は不飽和単量体混合物100質量部に対して0.5〜10.0質量部が好ましく、0.8〜8.0質量部がより好ましく、1.0〜6.0質量部がさらに好ましい。乳化剤の前記使用量を0.5質量部以上とすることにより、乳化重合安定性、得られるエマルションの保存安定性、機械安定性が確保でき、10.0質量部以下とすることにより、親水性が高くなり過ぎることによる耐水性の低下、粘着剤の凝集力低下、被着体汚染を防止することができる。
【0021】
アクリル系エマルション(A)の重合条件としては、通常の乳化重合で適用される条件をそのまま適用することができる。一般的には、反応器内を不活性ガスで置換した後、加熱還流下撹拌しながら昇温開始後1〜8時間程度重合を行う。
【0022】
本発明において、レドックス系重合開始剤からなる重合開始剤をアクリル系エマルション(A)の乳化重合に使用する。ラジカル重合に使用される通常の重合開始剤、具体的には、過硫酸塩及び/又は過酸化物系開始剤を酸化剤として、これに還元性を示す還元剤を共存させるレドックス系重合開始剤を用いる。
レドックス系重合開始剤では、重合開始剤の熱分解反応に加え、酸化還元反応によってもラジカルを発生させることができる。従って、還元剤を共存させない場合に比べて開始剤の使用量を低減することもできるため、コスト的に有利であり、水溶性の開始剤を用いる場合は耐水性も向上させることができる。
レドックス系重合では重合開始ラジカルの生成速度が速くなることから、過剰な高分子量化を抑制することができる。過剰な高分子量化を抑制することで、よりフレキシブルな分子となり、基材に対するアンカー効果が高い粘着剤が得られる。ここで、アンカー効果とは、粘着剤が被着体の表面にある凹凸や空隙に浸入した後に硬化し、釘又はくさびのような働きをすることを言い、投錨効果やファスナー効果とも言う。さらに、酸化還元反応によって低温でも容易にラジカルを発生させることができるため、一般的な乳化重合よりも重合温度を低くすることも可能となり、生成ポリマーの過剰なグラフト化や副反応も抑制することができる。
これらのことから、本発明においてレドックス系重合開始剤を用いることによって、粘着剤がフレキシブルで、流動性が高く、基材への濡れ性、密着性が良好であり、転写塗工法であっても基材と剥がれにくい再剥離型粘着剤が得られる。
【0023】
レドックス系開始剤の酸化剤としては、水系酸化性物質および非水系酸化性物質が挙げられる。
水系酸化性物質としては、例えば、過酸化水素などの過酸化物、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、tert‐ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイドの他、例えば、コハク酸パーオキサイド、2,2’−アゾビス〔2−N−ベンジルアミジノ〕プロパン塩酸塩などの水溶性有機パーオキサイドが挙げられる。
【0024】
非水系酸化性物質としては、例えば、イソブチリルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、ジ−t‐ブチルパーオキサイド、tert−ブチル−α−クミルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tertブチルパーオキシベンゾエートなどのアルキルパーエステル、ビス−(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネートなどが挙げられる。
【0025】
レドックス系開始剤の還元剤としては、水系還元性物質および非水系還元性物質が挙げられる。
水系還元性物質としては、例えば、鉄(II)塩(塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)など)、銅(I)塩(塩化銅(I)など)、クロム(III)塩(塩化クロム(III)など)などの還元性金属塩、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、ロンガリットなどの還元性硫黄化合物、メタノール、エタノールなどの炭素数1〜6の低級アルコール、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1〜6の低級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの(ポリ)アルキルアミンの他、アスコルビン酸、エリソルビン酸、酒石酸、クエン酸などの水溶性有機酸及びその塩、グルコースなどの糖類等が挙げられる。
非水系還元性物質としては例えば、トリエチルアルミニウム、トリエチル亜鉛などの有機金属化合物などが挙げられる。
【0026】
これら酸化剤および還元剤は、それぞれ1種ずつの組合せでもよく、いずれか一方または両方が2種以上の組合せでもよい。好ましくは、水系酸化性物質および水系還元性物質の組合せが挙げられる。より具体的には、ハイドロパーオキサイドとアスコルビン酸またはその塩との組合せ、ハイドロパーオキサイドと塩化鉄(II)、ハイドロパーオキサイドと過酸化水素とアスコルビン酸またはその塩との組合せ、ハイドロパーオキサイドとアスコルビン酸またはその塩と塩化鉄(II)との組合せ、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化水素と塩化鉄(II)との組合せなどが挙げられる。
【0027】
レドックス系重合開始剤の使用量は適宜選択されるが、不飽和単量体混合物100質量部に対して、0.02〜1.0質量部であることが好ましく、0.08〜0.8質量部であることがより好ましく、0.1〜0.5質量部であることがさらに好ましい。0.02質量部以上であると、重合開始剤としての実質的な効果が得られ、1.0質量部以下であると、生成ポリマーの分子量が適度に向上し、粘着剤組成物の粘着性を向上させることができる。
また、レドックス系開始剤における、酸化剤と還元剤との配合割合は、酸化剤1質量部に対して、還元剤が0.01〜100質量部であることが好ましく、0.02〜50質量部であることがより好ましく、0.1〜10質量部であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明において、アクリル系エマルション(A)の乳化重合の反応温度は、40〜100℃に制御することが好ましく、50〜90℃がより好ましく、特に60〜80℃がさらに好ましい。ここで述べる反応温度とはフラスコ内の反応温度のことである。この温度領域に反応温度を制御することによって、生成ポリマーの過剰な高分子量化、グラフト化や副反応を抑制することができ、よりフレキシブルで基材への十分なアンカー効果を有する粘着剤組成物および再剥離型粘着シートが得られる。
【0029】
これら乳化重合に際し、重合度を調整し、基材へのアンカー効果を高めるため、あるいは粘着剤としての柔軟性を高めるために連鎖移動剤を使用することができる。
このような連鎖移動剤として、例えば、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、ドデシルメルカプタン、メルカプトコハク酸、メルカプトプロピオン酸n−ブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル等のチオール基含有化合物、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水酸基含有化合物、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、ターピノーレン等のテルペン系化合物等が挙げられる。連鎖移動剤は、単独でも2種以上を使用してもよい。
連鎖移動剤の使用量は、不飽和単量体混合物の合計100質量部に対して、0〜3質量部であることが好ましい。これら連鎖移動剤は、適宜、単独または併用して用いられる。
【0030】
さらに、これら乳化重合に際し、pH調整を行うため必要に応じてpH緩衝剤を併用してもよい。pH緩衝剤としては、pH緩衝作用を有するものであれば特に制限されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等が挙げられる。pH緩衝剤の配合量は特に限定はされず、重合前、もしくは重合中に添加することが出来る。
【0031】
アクリル系エマルション(A)中の粒子の平均粒子径は、50〜1000nm程度、好ましくは80〜800nm、さらに好ましくは100〜500nmである。平均粒子径が上記範囲内であると乳化重合安定性、得られるエマルションの保存安定性、機械安定性、さらには乾燥後の粘着剤組成物の皮膜の物性バランス、すなわち基材に対するアンカー効果、耐水性、凝集力、透明性、機械的強度のバランスに優れた粘着剤が得られる。
平均粒子径が50nm以上であると、安定なエマルション粒子が得られ、乳化剤の使用量が多くなるのを防止することができる。平均粒子径が1000nm以下であると、基材に対する密着性や得られる粘着剤層の透明性、耐水性が確保される。
エマルション粒子の平均粒子径は重合時に添加する乳化剤の種類、濃度や添加タイミング等でコントロールすることができる。ここで、エマルション粒子の平均粒子径とは、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により測定して得られる体積基準のメジアン径の数値に基づくものである。
【0032】
水分散型アクリル系粘着剤組成物の各種物性を調整するために配合する架橋剤(B)は、前記アクリル系エマルション(A)中の共重合体における架橋化基点により架橋するものであれば特に限定されないが、基材に対する密着性や粘着力、凝集力、水への分散性、反応性、ポットライフ、入手し易さに優れる観点から、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、アルコキシシラン系化合物およびアミン系化合物、金属キレート系化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。中でも、エポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物、ヒドラジド系化合物、イソシアネート系化合物が好ましく、特にエポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物が好ましい。
【0033】
エポキシ系化合物としては、分子中に2個以上のエポキシ基又はグリシジル基を有するものであればよく、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコール」シリーズ(例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−611」、「デナコールEX−612」、「デナコールEX−614」、「デナコールEX−614B」、「デナコールEX−622」)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−512」、「デナコールEX−521」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−411」)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−421」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−313」、「デナコールEX−314」)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(「デナコールEX−321」)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−201」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−211」)、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−212」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−810」、「デナコールEX−811」)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−850」、「デナコールEX−851」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−821」、「デナコールEX−830」、「デナコールEX−832」、「デナコールEX−841」、「デナコールEX−861」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−911」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(「デナコールEX−941」、「デナコールEX−920」、「デナコールEX−931」)、阪本薬品工業株式会社製のポリエポキシ製品「SR」シリーズ、ジグリシジルアニリン、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N′−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、水性タイプが好適である。
【0034】
カルボジイミド系化合物としては、分子中にカルボジイミド基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば日清紡ケミカル株式会社製の「カルボジライトSV−02」「カルボジライトV−02」、「カルボジライトV−02−L2」、「カルボジライトV−04」、「カルボジライトV−06」、「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトE−04」等が挙げられる。
【0035】
オキサゾリン系化合物としては、分子中にオキサゾリン基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば株式会社日本触媒製の「エポクロスWS−300」「エポクロスWS−500」、「エポクロスWS−700」、「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスK−2030E」等が挙げられる。
【0036】
ヒドラジド系化合物としては、分子中に少なくとも2個以上のヒドラジド基を有するものであればよく、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0037】
イソシアネート系化合物としては、分子中にイソシアネート基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば、トルイレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トルイレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物、「スミジュールN」(住友バイエルウレタン株式会社製)のようなビュレットポリイソシアネート化合物、「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(バイエルA.G.社製)、「コロネートEH」(日本ポリウレタン工業株式会社製)のようなイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物、「スミジュールL」(住友バイエルウレタン株式会社製)、「コロネートHL」(日本ポリウレタン工業株式会社製)、「タケネートWD−725」「タケネートWD−720」「タケネートWD−730」「タケネートWB−700」(以上、三井化学ポリウレタン株式会社製)のようなアダクト型のポリイソシアネート化合物、「アクアネート10 0」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」(日本ポリウレタン工業株式会社製)のような自己乳化型の水分散ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、水性タイプが好適である。又、ブロックイソシアネートを使用しても構わない。
【0038】
アジリジン系化合物としては、分子中にアジリジニル基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば株式会社日本触媒製の「ケミタイトPZ−33」、「ケミタイトDZ−22E」等が挙げられる。
【0039】
アルコキシシラン系化合物としては、分子中にアルコキシシリル基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0040】
アミン系化合物としては、分子中にアミノ基を少なくとも2個以上含有するものであればよく、例えば株式会社日本触媒製の「エポミンSP−003」、「エポミンSP−006」、「エポミンSP−012」、「エポミンSP−018」、「エポミンSP−200」「エポミンP−1000」のようなポリエチレンイミン、「ポリメントSK−1000」「ポリメントNK−100PM」「ポリメントNK−200PM」のようなアミノエチル化アクリルポリマー等が挙げられる。
【0041】
金属キレート系化合物としては、例えば株式会社マツモト交商製の「オルガチックスTC−400」、「オルガチックスTC−300」、「オルガチックスTC−310」、「オルガチックスTC−315」のようなチタンキレート系、「オルガチックスZB−126」のようなジルコニウムアシレート系アルミニウムキレート系、亜鉛キレート系等が挙げられる。
【0042】
架橋剤(B)は、前記アクリル系エマルション(A)中における架橋化基点として作用する(a2)成分のカルボキシル基1当量に対して、該架橋剤の架橋性官能基が0.01〜5当量の範囲となるように配合することが好ましく、0.05〜4当量の範囲がより好ましく、0.1〜3当量の範囲がさらに好ましい。
架橋剤(B)を前記範囲となるように配合することで、塗工液の貯蔵安定性、塗工性等の生産性及び取り扱い性の点から好ましく、基材との接着性、凝集力に優れ、被着体に対する粘着力が高くても被着体汚染性が少ない再剥離性粘着シートが得られる。これら架橋剤は、適宜、単独または併用して用いられる。
【0043】
次に、アクリル系エマルション(A)に架橋剤(B)を配合した水分散型アクリル系粘着剤組成物におけるゲル分率および溶剤可溶分の重量平均分子量について説明する。
ゲル分率とは、水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜におけるテトラヒドロフラン(THF)不溶分の割合である。また、溶剤可溶分の重量平均分子量とは、上記ゲル分率測定時のテトラヒドロフラン(THF)可溶分についてゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって分子量測定した値である。ゲル分率および溶剤可溶分の重量平均分子量は、アクリル系エマルション(A)に架橋剤(B)を配合した水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シートに塗布、乾燥し、更にもう一枚の剥離シートによって粘着剤面を保護した基材レス粘着シートを作成し、この水分散型アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を試験に供した。この基材レス粘着シートにおける粘着剤層は、水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート上に塗布、乾燥し、基材と貼り合わせた直後の乾燥皮膜を表し、該乾燥皮膜と実質的に同じものである。
【0044】
ゲル分率および溶剤可溶分の重量平均分子量測定に供した試料は、以下の条件から採取した。
(i)基材レス粘着シート作成直後。以下、得られた試料を試料(i)とする。
(ii)基材レス粘着シートを作成した後、40℃環境下で7日間エージング後。以下、得られた試料を試料(ii)とする。
水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート上に塗布、乾燥し、基材を貼り合わせた直後の乾燥皮膜におけるゲル分率(i)および溶剤可溶分の重量平均分子量は、試料(i)を用いて測定することによって求めることができる。
一方、水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート上に塗布、乾燥し、基材と貼り合せた直後、40℃7日間のエージングした後の乾燥皮膜におけるゲル分率(ii)は、試料(ii)を用いて測定することによって求めることができる。
【0045】
ゲル分率(i)は0%以上60%未満の範囲であり、3%以上55%未満であることが好ましく、5%以上50%未満であることがより好ましい。一方、ゲル分率(ii)は50%以上99%未満の範囲であることが好ましく、55%以上95%未満であることがより好ましく、60%以上90%未満であることがさらに好ましい。
【0046】
ゲル分率(i)が前記範囲にあると、粘着シート製造過程において、水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート上に塗布、乾燥し、基材と貼り合わせる際、粘着剤の架橋度が低く、フレキシブルであるために、転写塗工法であっても、上質紙のような紙基材だけでなく、合成樹脂フィルムのような難接着性の基材に対しても良好なアンカー効果が得られる。さらに、ゲル分率(i)が前記範囲にあると、エマルション粒子が相互拡散によって絡み合い、より溶剤系粘着剤に近い連続皮膜を形成することができ、エージング終了後の粘着剤の凝集力、いわゆる機械的な皮膜強度を向上させることが出来る。一方、ゲル分率(i)が60%以上となると、貼り合わせ工程における粘着剤の架橋度が高すぎるため、基材に対するアンカー効果が十分に得られない。また、エマルション粒子が相互拡散しづらく、連続皮膜が形成されにくい。
【0047】
ゲル分率(ii)が前記範囲にあると、粘着剤が前記アンカー効果によって基材に対して十分に濡れ、拡散した後に架橋反応することで、粘着剤が基材に強固に接着し、被着体に転着しにくい粘着シートが得られる。これによって、粘着シートと被着体の接着力が高い状態であっても、基材と粘着剤の層間破壊が発生することなく再剥離することが可能な粘着シートが得られる。さらに、ゲル分率(ii)が前記範囲にあると、架橋によって粘着剤に実用的な凝集力を付与することができ、被着体から剥離する際、被着体汚染性も低減することができる。さらに、高温環境下、あるいは経時での物性劣化や、裁断ロール端部における粘着剤のはみ出しも少ない加工適正に優れた粘着シートが得られる。一方、ゲル分率(ii)が50%未満となると、架橋反応が十分でないために、基材に対する粘着剤の接着力や粘着剤の凝集力が十分に得られず、粘着シートを再剥離した際に、被着体に粘着剤が転着し、粘着剤が凝集破壊してしまう場合がある。
ゲル分率(ii)は、架橋反応の進行とともにゲル分率(i)より上昇するが、ゲル分率(i)とゲル分率(ii)の差〔ゲル分率(ii)−ゲル分率(i)〕は、20%以上であり、30%以上であることがより好ましい。
【0048】
ゲル分率(i)およびゲル分率(ii)を低くするためには、アクリル系エマルション(A)中の架橋性官能基と架橋剤(B)による架橋点や多官能性の不飽和単量体の配合割合を減少させる、重合温度を低くする、アクリル系エマルション(A)中のカルボキシル基含有不飽和単量体(a2)成分としてメタクリル酸を選択する、連鎖移動剤や重合開始剤の配合量を増量させる、あるいはその種類や添加タイミングを変更する等で調整できる。
一方、ゲル分率(i)およびゲル分率(ii)を高くするためには、アクリル系エマルション(A)中の架橋性官能基と架橋剤(B)による架橋点や多官能性の不飽和単量体の配合割合を増量させる、あるいは重合温度を高くする、アクリル系エマルション(A)中のカルボキシル基含有不飽和単量体(a2)成分としてアクリル酸を選択する、連鎖移動剤や重合開始剤の配合量を減少させる、あるいはその種類や添加タイミングを変更する等で調整できる。
【0049】
アクリル系エマルション(A)に架橋剤(B)を添加した直後の水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜、すなわち、試料(i)における溶剤可溶分の重量平均分子量は15万以上であり、15万〜1000万であることが好ましく、15万〜600万であることがより好ましい。
上記溶剤可溶分の重量平均分子量が15万以上であれば、柔軟で皮膜強度が高い粘着剤が得られ、本発明の粘着剤組成物が、比較的高分子量であっても溶剤に可溶な重合体を有していることを表す。つまり、分子量が高いにもかかわらず溶剤に可溶な柔軟性を有しながらも、高分子量体であるため、皮膜の機械的強度は高いという、相反する性能を両立した重合体が得られる。詳細な理由は定かではないが、上記の事由において本発明の粘着シートは良好な曲面貼付性が得られているものと推察される。また重量平均分子量が高いということはつまり、比較的低分子量の成分が少ないということを意味していることから、粘着剤の凝集力が高く、被着体汚染が少ない粘着シートが得られる。また、上記溶剤可溶分の重量平均分子量を高くするためには、重合温度を低くする、連鎖移動剤や重合開始剤の種類や配合量、添加タイミング等を適宜選択することで調整できる。
一方、上記溶剤可溶分の重量平均分子量が1000万以下であれば、分子量が高くなりすぎず、柔軟性を保ちながら基材に対する十分なアンカー効果が得られる。
このようにゲル分率(i)とゲル分率(ii)の範囲および溶剤可溶分の重量平均分子量を制御することで、基材および被着体に対するアンカー効果に優れた粘着シートが得られ、さらに、粘着力と再剥離性の双方が優れた強粘再剥離性粘着シートが設計することが出来る。
【0050】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物中には、前記アクリル系エマルション(A)および架橋剤(B)以外にも必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、増粘剤、濡れ剤(コハク酸系、アセチレンジオール系、シリコーン系、フッ素系、アクリル系)、消泡剤(鉱物油系、シリコーン系、ポリエーテル系、アクリル系、フッ素系、界面活性剤系、エマルション系)、中和剤、界面活性剤(アニオン系、ノニオン系)、造膜助剤、防腐剤、防錆剤、凍結溶融安定剤、顔料、着色剤、充填剤(亜鉛華、チタン白、炭酸カルシウム、クレー等)、金属粉末、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を適宜添加することができる。上記添加剤は、重合後の水分散型粘着剤組成物に添加されることが多いが、乳化重合前や乳化重合途中で添加することもできる。
【0051】
粘着付与剤としては、ロジン系、テルペン系の天然樹脂系、石油樹脂系等の合成樹脂系が挙げられる。具体的には、市販品としてハリマ化成株式会社製の「ハリエスターSK−508」、「ハリエスターSK−508H」、「ハリエスターSK−532D」、ハリエスターSK−816E」、「ハリエスターSK−822E」、「ハリエスターSK−218NS」「ハリエスターSK−70D」、「ハリエスターSK−501」、「ハリエスターSK−501NS」、「ハリエスターSK−385NS」、「ハリエスターSK−370N」、例えば荒川化学工業株式会社製の「スーパーエステルE−720」、「スーパーエステルE−730−55」、「スーパーエステルE−650」、「スーパーエステルE−865」、「タマノルE−100」、「タマノルE−200」、「エマルジョンAM−1002」、「スーパーエステルNS−100H」、「スーパーエステルNS−125A」、「スーパーエステルNS−100A」、「スーパーエステルNS−120B」、「スーパーエステルE−625−NT」、「スーパーエステルE−865−NT」、「タマノルE−200−NT」、例えばヤスハラケミカル株式会社製の「YSレジンTO125」、「YSレジンTO115」、「YSレジンTO105」、「YSレジンTO85」、「YSレジンTR105」、「YSポリスターU115」、「YSポリスター2130」、「YSポリスター2115」、「YSポリスター2100」、「YSポリスターT145」、「YSポリスターT130」、「YSポリスターT115」、「YSポリスターT100」、「YSポリスターT80」、「YSポリスターT50」、「YSポリスターT30」、「YSポリスターS145」、「YSポリスターTH130」、「マイティーエースG150」、「マイティーエースG125」、「ナノレットR−1050」、「ナノレットG−1250」等が挙げられる。
これらの粘着付与剤は重合時に不飽和単量体混合物中に添加するか、粘着付与剤自体を公知の方法により乳化し、アクリル系エマルション(A)に添加することができる。既に水分散体として市販されているものについては、そのまま水分散型アクリル系粘着剤組成物に添加することができる。
【0052】
粘着付与剤の配合量は、アクリル系エマルション(A)100質量部に対して0〜40質量部を添加することができ、0〜30質量部であることがより好ましく、0〜20質量部であることがさらに好ましい。粘着付与剤を配合すると、タック、粘着力、基材密着性に優れ、凝集力を向上させることが出来る。40質量部以上添加すると、粘着剤の物性バランスが崩れてしまう場合がある。これらの粘着付与剤は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0053】
可塑剤としては、例えば、液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、ワックス、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレート、フタル酸ジオクチル、トリエタノールアミン、アルキルアミン、アミンアルキレンオキサイド付加物、グリセリン、ジグリセリン、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0054】
可塑剤の配合量は、アクリル系エマルション(A)100質量部に対して0〜20質量部であることが好ましく、0〜15質量部であることがより好ましく、0〜10質量部であることがさらに好ましい。可塑剤を配合すると、タック、粘着力、基材密着性、皮膜強度の向上等の効果が得られることがある。可塑剤の配合量が20質量部以下であれば、粘着剤の物性バランスが良好である。これらの可塑剤は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0055】
増粘剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系、カゼイン等のたんぱく質系、澱粉、多糖類等の天然物系増粘剤、ポリアクリル酸系、ポリエーテル系、ポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール等の水溶性高分子系増粘剤、アルカリ可溶型またはアルカリ膨潤型エマルション系増粘剤、疎水基変性ポリオキシエチレンウレタンなどの会合性増粘剤等が挙げられる。これらの中でアルカリ可溶型またはアルカリ膨潤型エマルション系増粘剤、疎水基変性ポリオキシエチレンウレタン等の会合性増粘剤等が好ましい。
【0056】
アルカリ可溶型エマルション系増粘剤の市販品としては、例えば、ローム&ハース社製の「プライマルASE−60」、「プライマルASE−75」、「プライマルASE−95」、「プライマルASE−108」、「プライマルRM−5」、例えばサンノプコ株式会社製の「SNシックナーA−850」等が挙げられる。
【0057】
疎水基変性ポリオキシエチレンウレタン系増粘剤の市販品としては、例えば株式会社ADEKA製の「アデカノールUH−140S」、「アデカノールUH−420」、「アデカノールUH−438」、「アデカノールUH−472」、「アデカノールUH−450」、「アデカノールUH−540」、「アデカノールUH−550」、「アデカノールUH−541」、「アデカノールUH−526」、「アデカノールUH−530」、例えばレオックス社製の「RHEOLATE244」、「RHEOLATE255」、「RHEOLATE278」、例えばサンノプコ株式会社製の「SNシックナーA−803」、「SNシックナーA−804」、「SNシックナーA−807」、「SNシックナーA−812」、「SNシックナーA−814」、例えば第一工業製薬株式会社製の「DKシックナーSCT−200」、「DKシックナーSCT−270」等を挙げることができる。
【0058】
増粘剤の配合量は、所望の粘度に応じて適宜調整されるが、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物100質量部に対して0〜10質量部とすることが好ましく、0〜8質量部とすることがより好ましく、0〜5質量部とするのがさらに好ましい。
【0059】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物は、固形分(不揮発分)が、通常30〜70質量%程度、好ましくは35〜65質量%、40〜60質量%である。また、粘度は通常30〜30,000mPa・s程度(BM型粘度計、25℃)、好ましくは50〜25,000mPa・s、さらに好ましくは80〜20,000mPa・sである。
さらに、pHは、必要に応じて中和剤(アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等)を添加し、通常6〜9の範囲に調整する。
固形分、粘度及びpHが上記範囲内であると、コスト、重合安定性、塗工液の貯蔵安定性、乾燥性、塗工性等の生産性、及び取り扱い性の点から好ましい。
【0060】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造方法は、上記成分(a1)、及び成分(a2)を含む不飽和単量体混合物を、過硫酸塩及び/又は過酸化物系重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤からなる重合開始剤存在下に、反応温度を40〜100℃に制御された反応場で乳化重合してアクリル系エマルション(A)を得ることを特徴とする。乳化重合の反応温度を40℃未満とすると、重合開始ラジカルが発生しにくいため、未反応の不飽和単量体が多く残存してしまい、臭気が強く、実用条件での被着体汚染が著しい粘着剤となってしまう。一方、乳化重合の反応温度を100℃より高くすると、グラフト化や副反応が起こりやすく、また発生する重合開始ラジカルが多すぎるため、得られるアクリル系エマルション(A)の重合度、分子量を十分に向上させることができず、実用上求められる凝集力を達成することができない。
【0061】
本発明の粘着シートは、上記の特性を有する本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート上に塗布、乾燥した後に基材と貼り合わせる転写塗工法によって得ることができる。本発明の粘着シートは、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を基材上に設けてなるものであり、基材の少なくとも一方の面に、本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層を有し、該粘着剤層に剥離シートを設けてなるものであるものが好ましい。また剥離シートを用いない場合、一方の表面に剥離処理された基材を使用し、いわゆる一層型の粘着テープの形としたものでも構わない。上記の特性を有する本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物を、基材に塗布、乾燥することにより本発明の粘着シートに加工することができる。
【0062】
基材としては粘着剤層の支持体となるものであれば特に限定されるものではなく、公知の合成樹脂フィルムや上質紙、コート紙及び含浸紙等の紙あるいは内部に空洞を有する合成紙、プライマー、コロナやプラズマ放電処理、あるいは金属蒸着等により表面処理された合成樹脂フィルム、不織布などが使用可能である。中でも、耐水性を期待される用途においては合成樹脂フィルムが好ましい。
合成樹脂フィルムの材料としては、特に限定はされず、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸等の合成樹脂フィルム、これらのフィルムにアルミニウムなどの金属蒸着を施したもの等が挙げられる。
基材として用いられる合成樹脂フィルムは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向又は二軸方向に延伸されていてもよい。
【0063】
基材の厚みは、特に制限はないが、通常10〜200μmの範囲であり、取り扱い易さの面から、好ましくは25〜150μmである。基材は、着色されていてもよいし、無色透明のものでもよい。また、基材の一方の面には、印刷、印字等を施してもよい。従って、基材の印刷、印字等を施すための面には、感熱記録層、熱転写、インクジェット、レーザ印字等が可能な印字受像層、印刷性向上層等の易接着処理層が設けられていてもよい。
また、基材の粘着剤層を形成させるための面には、粘着剤層とのアンカー効果をより向上させる目的で、プライマー処理やコロナ、プラズマ放電処理等の易接着処理層が設けられてもよい。
【0064】
剥離シートとしては、特に限定されるものではなく、剥離シート用基材に剥離剤層が形成されてなるものであることが望ましい。剥離シート用基材としては、例えば、紙、合成紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。
紙としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙のような紙基材、及び上質紙、グラシン紙、コート紙等にセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリル−スチレン樹脂などで目止め処理した紙基材等が挙げられ、合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂からなるフィルム、及びこれらの合成樹脂フィルムに易接着処理層を設けたフィルムなどが挙げられる。
剥離剤層は、公知の剥離剤を用いて形成することが可能であり、剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル含有樹脂、アルキド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂などのゴム系エラストマーから選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。
剥離剤層の厚みは0.01〜2.0μmであるのが好ましく、より好ましくは0.03〜1.8μm、さらに好ましくは0.05〜1.5μmである。剥離シート用の基材の厚みは、特に制限はなく、通常、30〜200μmである。
【0065】
本発明の粘着シートを製造する方法としては、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シートへ塗布し、乾燥して粘着剤層を形成させた直後に、基材と貼り合わせる転写塗工法を採用することができる。あるいは、基材表面に直接粘着剤層を形成する直接塗工法であっても良い。さらに、粘着剤と貼り合わせる前の基材、あるいは貼り合わせた後の基材を加熱する、いわゆる熱ラミネート法によって基材と粘着剤の接着性を高めることもできる。
粘着剤組成物の塗工方法としては特に制限はなく、従来公知の塗布方法が使用可能であり、例えば、コンマコーター、ナイフコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、ディップコーター、グラビアコーター、バリオグラビアコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の塗布装置による方法が挙げられる。
【0066】
粘着剤層の厚みは、特に制限はないが、通常、5〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは15〜50μmである。基材、粘着剤層及び剥離シートを積層した粘着シートの厚みは、プリンター等に導入できる厚さが好ましく、通常、20〜300μm、好ましくは30〜250μmである。
【0067】
なお、本発明の粘着シートは、平面のシート状であってもよいし、ロール状に巻き取ったものであってもよい。本発明の粘着シートが貼付される被着体としては、平板状のものでも、筒状のもの、三次元曲面でもよい。
【実施例】
【0068】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物の乾燥皮膜の物理的または機械的性質の測定と評価は下記のとおりに行なった。
【0069】
(基材レス粘着シートの作製方法)
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにポリジメチルシロキサン系剥離剤を塗布してなる軽剥離フィルムの剥離処理面上に、ロールナイフコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが25μmになるように、実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を塗工し、90℃にて1分間乾燥し、粘着剤組成物の乾燥皮膜を形成させた。次いで、上記軽剥離フィルムと同じポリジメチルシロキサン系剥離剤にシリコーンレジンからなる重剥離添加剤を添加して製造した重剥離フィルムと貼り合わせて剥離力に差をつけてなる基材レス粘着シートを作成した。得られた基材レス粘着シートを以下(i)および(ii)の条件にて採取し、それぞれ試料(i)、試料(ii)とし、ゲル分率および重量平均分子量測定を行った。
(i)基材レス粘着シート作成直後。
(ii)基材レス粘着シートを作成した後、40℃環境下で7日間エージング後。
【0070】
(1)ゲル分率
本発明におけるゲル分率(i)およびゲル分率(ii)は、それぞれ上記のようにして得られた試料(i)および試料(ii)のゲル分率を測定することで得た。
先ず、100mm×100mmにカットした前述の基材レス粘着シート試料(i)、試料(ii)それぞれにおける粘着剤層のみを剥離シートから採取し、予め重量を測定した150mm×150mm、#300メッシュ(SUS420)で包み試験サンプルとした。試験サンプルを23℃、50%RH環境下でTHF100mL中に3日間浸漬した後取り出した。取り出した試験サンプルを110℃で1時間乾燥した後に重量を測定し、浸漬前後の粘着剤の重量比から下記計算式により計算してゲル分率とした。
ゲル分率(%)
=[(浸漬後の残存粘着剤層重量)/(浸漬前の粘着剤層重量)]×100
また、式:ゲル分率(ii)−ゲル分率(i)により、ゲル分率(i)とゲル分率(ii)の差を求めた。
【0071】
(2)溶剤可溶分の重量平均分子量
以下の装置を使用し、上記のようにして得られた試料(i)を用いて、ポリスチレン換算によって算出した。
装置:東ソー株式会社製 HLC−8020、カラム:東ソー株式会社製TSKguardcolumn HXL−H + TSKgel GMHXL×2 + TSKgel G2000HXL、流量:1.0ml/min、注入量:80μl、カラム温度:42℃、溶離液:THF、注入試料濃度:1質量%、検出器:示差屈折(RI)計
【0072】
(粘着シートの作製方法)
実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート〔「SP−8Kアオ、リンテック株式会社製、シリコーン樹脂で剥離処理したグラシン紙〕の剥離処理面上に、ロールナイフコーターを用いて、乾燥後の塗布厚みが25μmになるように塗工し、90℃にて1分間乾燥し、粘着剤組成物の乾燥皮膜を形成させた。次いで、上記にて得られた乾燥皮膜とポリプロピレン系合成紙〔「ユポSGS80」、ユポ・コーポレーション株式会社製〕を貼り合わせて粘着シートを得た。このようにして得られた粘着シートを粘着力、曲面貼付性、再剥離性の評価を行った。
(3)粘着力
粘着シートを作製し、23℃、50%RH環境下にて7日間エージングした後、JIS Z 0237に基づき、23℃、50%RH環境下で、25mm×300mmにカットした粘着シート試験片を被着体(#360耐水研磨紙によって表面を研磨したSUS304)に貼付して試験サンプルとした。貼付24時間後の粘着力を180°引き剥がし法によって引張り速度300mm/分にて測定した。
【0073】
(4)基材密着性
粘着シートを作製し、23℃、50%RH環境下にて7日間エージングした後、剥離シートを剥離した後粘着剤層を指で擦り、粘着剤層が脱落するまでの回数を評価した。
○:5回以上擦っても粘着剤層が脱落しない。
×:5回以内で粘着剤層が脱落する。
【0074】
(5)再剥離性
粘着シートを作製し、23℃、50%RH環境下にて7日間エージングした後、23℃、50%RH環境下で、30mm×50mmにカットした粘着シート試験片を被着体(#600耐水研磨紙によって表面を研磨したSUS304)に貼付した。23℃、50%RH環境下で1日静置後、70℃環境下(条件A)および40℃、80%RH環境下(条件B)で7日間静置したのちに23℃、50%RH環境下へと戻し、1日静置後試験サンプルとした。およそ300mm/分の速度にて手で剥がし、剥離状態を観察した。
○ : 被着体に粘着剤が残らない。
×a: 基材と粘着剤層の界面が破壊される。
×b: 被着体に汚染または曇りがある。
×c: 粘着剤層の凝集破壊がある。
【0075】
(6)曲面貼付性
粘着シートを作製し、23℃、50%RH環境下にて7日間エージングした後、23℃、50%RH環境下で、25mm×25mmにカットした粘着シート試験片を、直径10mmφのポリプロピレン製丸棒被着体に対し、基材流れ(MD:Machine direction)方向が外周上に巻きつくように貼付した。貼付7日後、基材流れ方向の剥がれ具合を測定した。
○:剥がれ長さが5mm未満
×:剥がれ長さが5mm以上
【0076】
実施例1
攪拌機、温度計、及び滴下ロートを備えた容器に、(a1)成分としてアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)93質量部およびメタクリル酸メチル(MMA)5質量部、(a2)成分としてメタクリル酸(MAA)1.0質量部およびアクリル酸(AA)1.0質量部、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン0.1質量部を仕込み、これに乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム〔アニオン型非反応性乳化剤「ラムテルE−118B」、花王株式会社製〕2質量部、アリルアルキルスルホコハク酸ナトリウム〔アニオン型反応性乳化剤「エレミノールJS−2」、三洋化成株式会社製〕3質量部とイオン交換水56質量部を加え、室温下攪拌して不飽和単量体混合物の乳化物を予め調製した。
別途、攪拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管、及び滴下ロートを備えた反応装置にイオン交換水28質量部を仕込み、窒素を封入して反応温度60℃まで昇温し、その温度に保ちながら、レドックス系重合開始剤として5質量%過硫酸カリウム水溶液2質量部と5質量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.8質量部を仕込み、レドックス系重合開始剤溶液とした。
次に、予め調製した前記不飽和単量体の混合物の乳化物を滴下ロートに移し、4時間かけて滴下した。これと併行してレドックス系重合開始剤溶液として5質量%の過硫酸カリウム水溶液2質量部と5質量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液0.8質量部を滴下して反応温度60℃で乳化重合を行なった。
滴下終了後、60℃のままで2時間熟成して乳化重合組成物を得た。その後、室温まで冷却し、25%アンモニア水で中和した後に精製水を加えて固形分50質量%、pHを8.5とした。
さらに、上記乳化重合組成物に対して、増粘剤〔「ASE−60」、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製〕を添加して粘度を10000mPa・s〔BM型粘度計を用いて、#4ローター、12回転/分、25℃の条件で測定〕に調整した。上記乳化重合組成物100質量部に対し、塗工の直前にエポキシ系架橋剤〔「デナコールEX−313」、ナガセケムテックス株式会社製、グリセロールポリグリシジルエーテル〕0.8質量部を添加し、水分散型アクリル系粘着剤組成物を得た。上記のとおり、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、ゲル分率および重量平均分子量の測定、粘着力、曲面貼付性および再剥離性の評価を行った。
【0077】
実施例2
2EHAの使用量を83質量部、ラウリルメルカプタンの使用量を0.15質量部とし、(a1)成分として、アクリル酸メチル(MA)を10質量部追加した以外は実施例1と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0078】
実施例3
不飽和単量体混合物の組成を(a1)成分として、アクリル酸n−ブチル(BA)97.5質量部、(a3)成分としてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(2−HEMA)1.0質量部、MAA1.5質量部とし、エポキシ系架橋剤の使用量を乳化重合組成物100質量部に対して0.6質量部とした以外は実施例1と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0079】
実施例4
乳化重合組成物を得た後に、1M KOH水溶液3.5質量部を添加した以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0080】
実施例5
BAの使用量を98質量部とし、MAA1.5質量部の代わりにAA1.0質量部を使用し、エポキシ系架橋剤の使用量を乳化重合組成物100質量部に対して0.5質量部とした以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0081】
実施例6
重合反応を反応温度80℃で行った以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0082】
実施例7
ラウリルメルカプタンの使用量を0.05質量部とした以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0083】
実施例8
BAの使用量を96質量部とし、メタクリル酸の使用量を3.0質量部とし、エポキシ系架橋剤の使用量を乳化重合組成物100質量部に対して1.2質量部とした以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0084】
実施例9
エポキシ系架橋剤の代わりにオキサゾリン系架橋剤〔「エポクロスWS−700」、株式会社日本触媒製〕を乳化重合組成物100質量部に対して3.8質量部使用した以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0085】
実施例10
エポキシ系架橋剤の代わりにカルボジイミド系架橋剤〔「カルボジライトV−04」、日清紡ケミカル株式会社製〕を乳化重合組成物100質量部に対して3.0質量部使用した以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0086】
実施例11
BA97.5質量部の代わりに2EHA97.5質量部を使用した以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0087】
実施例12
不飽和単量体混合物中に粘着付与樹脂〔「リカタックF105」、株式会社理化ファインテク製〕5質量部を添加し、エポキシ系架橋剤の使用量を乳化重合組成物100質量部に対して1.0質量部とした以外は実施例11と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0088】
実施例13
不飽和単量体混合物中に粘着付与樹脂〔「YSレジンTO125」、ヤスハラケミカル株式会社製〕5質量部を添加し、エポキシ系架橋剤の使用量を乳化重合組成物100質量部に対して1.0質量部とした以外は実施例11と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0089】
実施例14
乳化重合組成物100質量部に対してさらに粘着付与樹脂〔「スーパーエステルE−865NT」、荒川化学株式会社製〕8.0質量部を使用した以外は実施例11と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0090】
実施例15
乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アリルアルキルスルホコハク酸ナトリウムの代わりに、アリルエーテル変性ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム〔アニオン型反応性乳化剤「アクアロンKH−05」、第一工業製薬株式会社製〕0.5質量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル〔ノニオン型非反応性乳化剤「エマルゲン103」、花王株式会社製〕1.0質量部を使用し、レドックス系重合開始剤として過硫酸カリウム水溶液と亜硫酸水素ナトリウム水溶液の代わりに2質量%tert−ブチルハイドロパーオキサイド水溶液15質量部、1質量%L−アスコルビン酸水溶液15質量部を使用し、ラウリルメルカプタンの使用量を0.01質量部とした以外は実施例11と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0091】
比較例1
5質量%亜硫酸水素ナトリウムを使用せず、重合温度を反応温度80℃とした以外は実施例1と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0092】
比較例2
5質量%亜硫酸水素ナトリウムを使用せず、重合温度を反応温度80℃とした以外は実施例3と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0093】
比較例3
エポキシ系架橋剤の使用量を乳化重合組成物100質量部に対して1.0質量部とした以外は比較例2と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0094】
比較例4
ラウリルメルカプタンの使用量を0.3質量部とし、エポキシ系架橋剤の使用量を乳化重合組成物100質量部に対して1.5質量部とした以外は比較例2と同様に行い、基材レス粘着シートと粘着シートを作製し、同様の測定および評価を行った。
【0095】
上記実施例1〜15および比較例1〜4におけるアクリル系エマルション(A)中の単量体組成や架橋剤(B)等の配合組成、得られた結果を表1および表2に示した。
【0096】
【表1】

【0097】
【表2】

【0098】
表1および表2の結果より、以下のことがわかる。
実施例1〜15は、粘着力、曲面貼付性に優れ、また、転写塗工法で得られた粘着シートであるのにもかかわらず再剥離性(基材と粘着剤の接着性、粘着剤の凝集力が高く被着体汚染性が少ない)に優れる粘着剤層が得られていることがわかる。
これに対し、実施例1〜15と比較して、比較例1〜3では再剥離性が不十分で曲面貼付性が悪く、比較例4では曲面貼付性は優れるものの再剥離性が悪いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤組成物及び粘着シートは、基材や被着体への接着性と凝集力のバランスに優れ、上質紙のような紙基材や難接着性基材の一つである合成樹脂等のフィルムへのアンカー効果に優れ、さらに粘着力、曲面貼付性に優れ、浮き剥がれすることなく長期間被着体へ貼りつけることが可能であり、かつ転写塗工法で製造された粘着シートを貼付から長期間経過後に、被着体に糊残りを引き起こすことなく容易に剥離することが可能な再剥離性に優れる。このため、包装・結束用、事務・家庭用、接合用、塗装マスキング用、表面保護用、防食・防水・シーリング用、電気絶縁用、電子機器・光学部品用、建材用、車両用、各種工業用、医療・衛生材用、識別・装飾用等のラベル類、粘着フィルム類、ラミネートフィルム類、テープ類、広告・表示ステッカー類、表面マスキング類、表面保護フィルム類などに有利に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.5質量%、(a2)カルボキシル基含有不飽和単量体0.5〜10質量%を含む不飽和単量体混合物を、過硫酸塩及び/又は過酸化物系重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤からなる重合開始剤の存在下で乳化重合して得られるアクリル系エマルション(A)と架橋剤(B)とを含む水分散型アクリル系粘着剤組成物であって、該水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート上に塗布、乾燥し、基材と貼り合わせた直後の乾燥皮膜における溶剤可溶分の重量平均分子量が15万以上であり、該乾燥皮膜におけるゲル分率(i)が0%以上60%未満であり、40℃7日間のエージングした後の乾燥皮膜におけるゲル分率(ii)が50%以上99%未満であり、ゲル分率(i)とゲル分率(i)の差が20%以上であることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項2】
(a2)成分のカルボキシル基含有不飽和単量体がアクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項3】
架橋剤(B)がエポキシ系化合物、カルボジイミド系化合物、オキサゾリン系化合物から選ばれる少なくとも1種であって、該架橋剤の架橋性官能基が(a2)成分のカルボキシル基1当量に対して0.01〜5当量となるように含む、請求項1または2に記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物。
【請求項4】
アクリル系エマルション(A)と架橋剤(B)とを含む請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物を製造する方法であって、(a1)アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.5質量%、(a2)カルボキシル基含有不飽和単量体0.5〜10質量%を含む不飽和単量体混合物を、過硫酸塩及び/又は過酸化物系重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤からなる重合開始剤の存在下に、反応温度を40〜100℃に制御された反応場で乳化重合してアクリル系エマルション(A)を得ることを特徴とする水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物を基材上に設けてなる粘着シート。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の水分散型アクリル系粘着剤組成物を剥離シート上に塗布、乾燥した後に基材と貼り合わせる転写塗工法により得る粘着シートの製造方法。

【公開番号】特開2011−93956(P2011−93956A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246488(P2009−246488)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】