説明

水分散液

【課題】殺菌・静菌能を有する難水溶性活性成分をナノサイズの微粒子に含ませてO/W型に分散させ、しかも、殺菌・静菌能を発現させると共に、保存安定性をも維持させる。
【解決手段】水分散液は、殺菌・静菌能を有する難水溶性活性作用物質(A)及び親油性マトリクス(B)を含む平均粒子径が200nm以下の液体又は固体の粒子が水に分散したものである。難水溶性活性作用物質(A)の含有量が液全体質量の0.01〜20質量%であると共に、親油性マトリクス(B)の含有量が液全体質量の0.2〜20質量%であり、且つ難水溶性活性作用物質(A)の含有質量が親油性マトリクス(B)の含有質量の0.05倍以上である。水分散液は、粒子の含有質量の0.001〜0.2倍のアニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散液及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌・静菌能を有する難水溶性活性成分は水に溶け難いことから、これを液状のトイレタリー商品に配合する場合、エタノールなどの溶媒に予め溶解させたものを配合する、或いは、多量の界面活性剤を用いて水に可溶化して安定化したものを配合する、といったことが行われる。
【0003】
しかしながら、難水溶性活性成分を溶媒に予め溶解させた場合、肌に触れたときに刺激を伴うという欠点がある。また、難水溶性活性成分を多量の界面活性剤を用いて水に可溶化した場合、多量の界面活性剤によって水に可溶化された難水溶性活性成分がミセルから放出されず、その殺菌・静菌能を発揮できないという欠点がある。
【0004】
これに対し、難水溶性活性成分を微粒子に含有させてO/W型に分散させた場合、殺菌・静菌能の増強及び持続といった効果を発現することができる。
【0005】
しかしながら、難水溶性活性成分を微粒子に含有させてO/W型に分散させた場合、その表面積の著しい増加に伴って凝集や合一が進行しやすくなり、粒子のナノサイズの維持が困難であり、また、難水溶性活性成分の晶癖により水相中に難水溶性活性成分の結晶が析出するといった水分散液の保存安定性の面での課題がある。
【0006】
以上のような事情から、難水溶性活性成分を微粒子に含めてO/W型に分散させ、殺菌・静菌能の発現や水分散液の保存安定性の維持を目的とした検討がなされている。例えば、(イ)抗菌性のアミチアマイシン類の注射用乳化物(特許文献1)、(ロ)イミダゾールを含有するO/W型脂肪乳剤(特許文献2)、及び(ハ)生物活性剤の粒子及びその製造法(特許文献3)においては、リン脂質やベタインを用いることで難水溶性活性成分を分散する方法が開示されている。(ニ)陽イオン性表面安定化剤を有する生体付着性ナノ粒子組成物(特許文献4)等が知られている。
【特許文献1】特開平9−124503号公報
【特許文献2】特開昭63−48214号公報
【特許文献3】特開2007−23051号公報
【特許文献4】特表2003−511406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、殺菌・静菌能を有する難水溶性活性成分をナノサイズの微粒子に含めてO/W型に分散させ、しかも、その保存安定性を維持させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水分散液は、殺菌・静菌能を有する難水溶性活性作用物質(A)及び親油性マトリクス(B)を含む平均粒子径が200nm以下の液体又は固体の粒子が水に分散した水分散液であって、
上記難水溶性活性作用物質(A)の含有量が液全体質量の0.01〜20質量%であると共に、親油性マトリクス(B)の含有量が液全体質量の0.2〜20質量%であり、且つ該難水溶性活性作用物質(A)の含有質量が該親油性マトリクス(B)の含有質量の0.05倍以上であり、
上記粒子の含有質量の0.001〜0.2倍のアニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)を含む。
【0009】
本発明の水分散液の製造方法は、
殺菌・静菌能を有する難水溶性活性作用物質(A)及び親油性マトリクス(B)を液体状態で混合して第1液を調製する工程1と、
アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)及び水を混合して第2液を調製する工程2と、
上記工程1及び2で調製した第1及び第2液を混合及び攪拌して平均粒子径が200nm以下の液体又は固体の粒子が水に分散したO/W型の水分散液を調製する工程3と、
を備え、
上記第1液において、上記難水溶性活性作用物質(A)の含有量を上記水分散液の液全体質量の0.01〜20質量%とすると共に、上記親油性マトリクス(B)の含有量を液全体質量の0.2〜20質量%とし、且つ該難水溶性活性作用物質(A)の含有質量を該親油性マトリクス(B)の含有質量の0.05倍以上とし、
上記第2液において、上記アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)の含有量を上記第1液の質量の0.001〜0.2倍とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)を少量含有していることにより、殺菌・静菌能を有する難水溶性活性成分(A)をナノサイズの微粒子に含めてO/W型に分散させ、しかも、水分散液の保存安定性を維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(水分散液)
本実施形態に係る水分散液は、殺菌・静菌能を有する難水溶性活性作用物質(A)及び親油性マトリクス(B)を含む平均粒子径が200nm以下の液体又は固体の粒子が水に分散したものである。そして、難水溶性活性作用物質(A)の含有量が液全体質量の0.01〜20質量%であると共に、親油性マトリクス(B)の含有量が液全体質量の0.2〜20質量%であり、且つ難水溶性活性作用物質(A)の含有質量が親油性マトリクス(B)の含有質量の0.05倍以上であり、また、粒子の含有質量の0.001〜0.2倍のアニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)を含む。
【0013】
この水分散液では、アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)を少量含有していることにより、殺菌・静菌能を有する難水溶性活性成分(A)をナノサイズの微粒子に含めてO/W型に分散させ、しかも、水分散液の保存安定性を維持させることができる。
【0014】
この水分散液は、液体又は固体の粒子が水に分散したものである。
【0015】
粒子は、液体又は固体であるが、液体と固体とが混在したものであってもよい。
【0016】
粒子の平均粒子径は200nm以下であり、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。また、粒子の平均粒子径は10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることがさらに好ましい。この平均粒子径は、動的散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0017】
水分散液中における粒子の含有量は液全体質量の0.3質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましい。また、水分散液中における粒子の含有量は液全体質量の60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
粒子は殺菌・静菌能を有する難水溶性活性作用物質(A)を含む。
【0019】
本出願において「殺菌・静菌能」とは、菌類・細菌類を死滅させる乃至その増殖を阻止あるいは阻害する性能をいう。菌類・細菌類としては、例えば、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ状球菌、白色ブドウ状球菌、枯草菌、セラチア菌などが挙げられる。
【0020】
本出願において「難水溶性」とは、25℃の水への溶解度が1質量%未満であることをいう。
【0021】
難水溶性活性作用物質(A)は、フェノール系物質(A1)とアルコール系物質(A2)とに大別される。
【0022】
フェノール系物質(A1)としては、例えば、トリクロサン、トリクロカルバニリド、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0023】
アルコール系物質(A2)としては、例えば、ドデシルアルコール、デシルアルコール、デカンジオール等が挙げられる。
【0024】
難水溶性活性作用物質(A)は、単一物質で構成されていてもよく、また、複数のフェノール系物質(A1)が混合されて構成されていてもよく、或いは、複数のアルコール系物質(A2)が混合されて構成されていてもよく、さらに、フェノール系物質(A1)とアルコール系物質(A2)とが混合されて構成されていてもよい。
【0025】
水分散液中における難水溶性活性作用物質(A)の含有量は液全体質量の0.01質量%以上であり、0.2質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、水分散液中における難水溶性活性作用物質(A)の含有量は液全体質量の20質量%以下であり、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
粒子は親油性マトリクス(B)を含む。この親油性マトリクス(B)により難水溶性活性作用物質(A)の安定化が図られる。
【0027】
親油性マトリクス(B)としては、例えば、油脂類、ロウ類、エステル類、炭化水素類、親油性ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0028】
油脂類としては、例えば、大豆油、菜種油、ヌカ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ごま油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂など天然油脂;これらの天然油脂に水素添加して得られる硬化油;ミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリドなどの合成トリグリセリド等が挙げられる。
【0029】
ロウ類としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0030】
エステル類としては、例えば、ステアリン酸ステアリル、オクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸イソステアリル等が挙げられる。
【0031】
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンマイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン等が挙げられる。
【0032】
親油性ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等が挙げられる。
【0033】
親油性マトリクス(B)は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種が混合されて構成されていてもよい。
【0034】
親油性マトリクス(B)は、難水溶性活性作用物質(A)との組合せにおいて、難水溶性活性作用物質(A)が粗大結晶が析出し易いフェノール系物質(A1)の場合、保存安定性の観点から、油脂類、ロウ類、エステル類、及び親油性ソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、親油性マトリクス(B)は、難水溶性活性作用物質(A)が粒子の粒径増大を招き易いアルコール系物質(A2)の場合、保存安定性の観点から、ロウ類、油脂類、及び炭化水素類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0035】
水分散液中における親油性マトリクス(B)の含有量は液全体質量の0.2質量%以上であり、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。また、水分散液中における親油性マトリクス(B)の含有量は液全体質量の20質量%以下であり、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
水分散液中における難水溶性活性作用物質(A)の含有質量が親油性マトリクス(B)の含有質量の0.05倍以上であり、0.1倍以上であることがより好ましく、0.2倍以上であることがさらに好ましい。また、水分散液中における難水溶性活性作用物質(A)の含有質量が親油性マトリクス(B)の含有質量の4.0倍以下であることが好ましく、2.0倍以下であることがより好ましく、1.0倍以下であることがさらに好ましい。
【0037】
粒子は、その他に、香料、着色剤、無機微粒子等を含んでいてもよい。
【0038】
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る水分散液は、アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)を含む。このアニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)により、粒子の微細化と共に水分散液の安定化が図られる。
【0040】
アニオン界面活性剤(C)としては、例えば、C〜C20のアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、アルキル硫酸アンモニウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、β−ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、特殊芳香族スルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、脂肪酸セッケン、モノアルキルリン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、N−アシルメチルタウリン塩、スルホコハク酸モノエステル塩、アルキルポリオキシエチレン酢酸塩等が挙げられる。
【0041】
カチオン界面活性剤(D)としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンゼトニウム、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0042】
水分散液には、アニオン界面活性剤(C)及びカチオン界面活性剤(D)のいずれか一方のみを含ませてもよく、また、それらを両方含ませてもよい。アニオン界面活性剤(C)及びカチオン界面活性剤(D)のそれぞれは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種が混合されて構成されていてもよい。
【0043】
水分散液中におけるアニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)の含有量は、粒子の含有質量の0.001倍以上であり、0.005倍以上であることがより好ましく、0.01倍以上であることがさらに好ましい。水分散液中におけるアニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)の含有量は、粒子の含有質量の0.2倍以下であり、0.175倍以下であることがより好ましく、0.15倍以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本実施形態に係る水分散液は、等張化剤(E)を含んでいてもよい。等張化剤(E)は、粒子を一層微粒化する乳化助剤として機能する。
【0045】
等張化剤(E)としては、グリセリン、糖アルコール、単糖類、二糖類、アミノ酸等が挙げられる。
【0046】
糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等が挙げられる。
【0047】
単糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖等が挙げられる。
【0048】
二糖類としては、例えば、トレハロース、ショ糖(砂糖)、乳糖、麦芽糖等が挙げられる。
【0049】
等張化剤(E)は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種が混合されて構成されていてもよい。
【0050】
水分散液中における等張化剤(E)の含有量は10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、水分散液中における等張化剤(E)の含有量は70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましい。
【0051】
本実施形態に係る水分散液は、必要に応じ他の物質が含まれていてもよい。かかる物質としては、例えば、香料、増粘剤、防腐剤、着色剤、崩壊防止剤、酸化防止剤等が挙げられる。また、本実施形態に係る水分散液は、抗菌・殺菌能を阻害しない程度にノニオン界面活性剤を含んでいてもよい。
【0052】
以上の本実施形態に係る水分散液は、その原液をそのまま、或いは、希釈したものを菌に作用させることにより殺菌・静菌能を得ることができる。また、この水分散液は非常に安定であるので、製品形態の多様化への対応性が高く、例えば、ハンドソープ、台所用液体洗剤、トイレ用液体洗剤、シャンプー、リンス、衣料用液体洗剤、柔軟剤、消臭スプレー、洗口剤、歯磨き剤等に適用され得る。なお、その際、この水分散液の製品中の含有量については、難水溶性活性作用物質(A)が殺菌・静菌能を発揮する程度に設定すればよい。
【0053】
(水分散液の製造方法)
次に、本実施形態に係る水分散液の製造方法について説明する。
【0054】
まず、工程1では、難水溶性活性作用物質(A)及び親油性マトリクス(B)を液体状態で所定割合で混合して第1液を調製する。
【0055】
このとき、難水溶性活性作用物質(A)の含有量を製造する水分散液の液全体質量の0.01〜20質量%とすると共に、親油性マトリクス(B)の含有量を液全体質量の0.2〜20質量%とし、且つ難水溶性活性作用物質(A)の含有質量を親油性マトリクス(B)の含有質量の0.05倍以上とする。また、難水溶性活性作用物質(A)及び親油性マトリクス(B)のうち少なくとも一方が固体の場合には、両者を加熱して溶融させた状態で混合する。
【0056】
工程2では、アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)及び水を所定割合で混合して第2液を調製する。
【0057】
このとき、アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)の含有量を第1液の質量の0.001〜0.2倍とする。また、必要に応じて等張化剤(E)を混合する。なお、第2液を第1液と同一温度に調温することが好ましい。
【0058】
これらの工程1及び2は、どちらを先に行ってもよく、また、同時進行的に行ってもよい。
【0059】
工程3では、工程1及び2で調製した第1及び第2液を所定割合で混合及び攪拌して液体又は固体の粒子が水に分散したO/W型の水分散液を調製する。
【0060】
このとき、まず、工程1及び2で調製した第1及び第2液の混合液に、静止型乳化・分散機、一般的な攪拌機、ホモミキサー等の攪拌型乳化機を用いて予備乳化処理を施し、その後、ナノマイザー、ホモジナイザー、マイクロフィルダイザー等の高圧乳化装置を用いて高圧乳化処理を施して微粒子化することが好ましい。また、第1及び第2液を同一温度に調温して混合することが好ましい。
【0061】
工程4では、工程3で調製した水分散液を冷却する。
【0062】
このとき、二重管向流式冷却装置等を用いて水分散液を室温まで急冷することが好ましい。また、いわゆる放冷によって冷却してもよい。
【0063】
なお、成分に酸化容易な物質を含む場合には、上記工程1〜4の操作を窒素などの不活性ガスを通気する雰囲気下で実施することが好ましい。
【実施例】
【0064】
(水分散液の調製)
<実施例1>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン(Ciba Specialty Chemicals inc.製、以下同様)25g(液全体質量の2.5質量%)および親油性マトリクス(B)としてのステアリン酸ステアリル(花王(株)製 商品名:エキセパールSS、以下同様)75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを80℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0065】
別の容器にイオン交換水885gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王(株)製 商品名:エマール10PT、以下同様)15gを投入し、それを80℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.15)。
【0066】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサー(プライミクス(株)製 商品名:T.K.ホモミキサー、以下同様)を用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(80℃)。
【0067】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置(吉田機械興業(株)製 商品名:ナノマイザー、以下同様)で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0068】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0069】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は127nmであった。なお、平均粒子径については、得られた水分散液を10倍に希釈したものをサンプルとし、動的散乱式粒度分布測定装置(大塚電子(株)製 商品名:DLS−Z2)を用いて測定した(以下同様)。
【0070】
<比較例1>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)を仕込み、それを80℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した。
【0071】
別の容器にイオン交換水960gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのラウリル硫酸ナトリウム15gを投入し、それを80℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.60)。
【0072】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(80℃)。
【0073】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0074】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0075】
得られた水分散液は直ぐに凝集が始まり不安定であった。
【0076】
<比較例2>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのステアリン酸ステアリル75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを80℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0077】
別の容器にイオン交換水885gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのラウリル硫酸ナトリウム15gを投入し、それを80℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.15)。
【0078】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(80℃)。
【0079】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は2500nm(2.5μm)であった。
【0080】
<比較例3>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのステアリン酸ステアリル75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを80℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0081】
別の容器にイオン交換水850gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのラウリル硫酸ナトリウム50gを投入し、それを80℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.50)。
【0082】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(80℃)。
【0083】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0084】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0085】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は110nmであった。
【0086】
<実施例2>
容器にアルコール系物質(A2)としてのデシルアルコール(花王(株)製 商品名:カルコール1098、以下同様)25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのスクワラン(日光ケミカルズ(株)製、以下同様)25g(液全体質量の2.5質量%)を仕込み、それを30℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(アルコール系物質(A2)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=1.00)。
【0087】
別の容器にイオン交換水949gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのラウリル硫酸ナトリウム1gを投入し、それを30℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.02)。
【0088】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(30℃)。
【0089】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0090】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0091】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は120nmであった。
【0092】
<比較例4>
容器にアルコール系物質(A2)としてのデシルアルコール50g(液全体質量の5.0質量%)を仕込み、それを30℃まで加熱して油相の第1液を調製した。
【0093】
別の容器にイオン交換水949gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのラウリル硫酸ナトリウム1gを投入し、それを30℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.02)。
【0094】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(30℃)。
【0095】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0096】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0097】
得られた水分散液は直ぐに凝集が始まり不安定であった。
【0098】
<比較例5>
容器にアルコール系物質(A2)としてのデシルアルコール25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのスクワラン25g(液全体質量の2.5質量%)を仕込み、それを30℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(アルコール系物質(A2)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=1.00)。
【0099】
別の容器にイオン交換水949gを入れ、それにノニオン界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王(株)製 商品名:エマルゲン120)1gを投入し、それを30℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(ノニオン界面活性剤の含有質量/第1液の質量=0.02)。
【0100】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(30℃)。
【0101】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0102】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0103】
得られた水分散液は直ぐに凝集が始まり不安定であった。
【0104】
<実施例3>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのソルビタントリステアレート(花王(株)製 商品名:レオドールSP−S30V、以下同様)75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを70℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0105】
別の容器にイオン交換水897gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのN−ラウロイルメチルタウリンナトリウム(日光ケミカルズ(株)製 商品名:NIKKOL LMT、以下同様)3gを投入し、それを70℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.03)。
【0106】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(70℃)。
【0107】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0108】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0109】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は145nmであった。
【0110】
<実施例4>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのソルビタントリステアレート75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを70℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0111】
別の容器にイオン交換水889.3gを入れ、それにカチオン界面活性剤(D)としてのステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを主成分として28質量%含有する花王(株)製のコータミン86Wを10.7g投入し、それを70℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(カチオン界面活性剤(D)の含有質量/第1液の質量=0.03)。
【0112】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(70℃)。
【0113】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0114】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0115】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は146nmであった。
【0116】
<実施例5>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのソルビタントリオレエート(花王(株)製 商品名:レオドールSP−O30V、以下同様)75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを60℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0117】
別の容器にイオン交換水897gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのN−ラウロイルメチルタウリンナトリウム3gを投入し、それを60℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.03)。
【0118】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(60℃)。
【0119】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0120】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0121】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は140nmであった。
【0122】
<実施例6>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのソルビタントリオレエート75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを60℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0123】
別の容器にイオン交換水448.5gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのN−ラウロイルメチルタウリンナトリウム3g及び等張化剤(E)としてのD−ソルビトール(東和化成工業(株)製 商品名:ソルビットD−パウダー、以下同様)448.5gを投入し、それを60℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.03)。
【0124】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(60℃)。
【0125】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0126】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0127】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は105nmであった。
【0128】
<実施例7>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのソルビタントリオレエート75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを60℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0129】
別の容器にイオン交換水448.5gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのN−ラウロイルメチルタウリンナトリウム3g及び等張化剤(E)としてのD−ソルビトール448.5gを投入し、それを60℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.03)。
【0130】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(60℃)。
【0131】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理した後、さらに卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で100MPaにて4回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0132】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0133】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は85nmであった。
【0134】
<実施例8>
容器にフェノール系物質(A1)としてのトリクロサン25g(液全体質量の2.5質量%)及び親油性マトリクス(B)としてのソルビタントリオレエート75g(液全体質量の7.5質量%)を仕込み、それを60℃まで加熱して溶融させると共に混合して油相の第1液を調製した(フェノール系物質(A1)の含有質量/親油性マトリクス(B)の含有質量=0.33)。
【0135】
別の容器にイオン交換水442.5gを入れ、それにアニオン界面活性剤(C)としてのN−ラウロイルメチルタウリンナトリウム15g及び等張化剤(E)としてのD−ソルビトール442.5gを投入し、それを60℃まで加熱すると共に分散/溶解させて水相の第2液を調製した(アニオン界面活性剤(C)の含有質量/第1液の質量=0.15)。
【0136】
第1液を第2液に添加した後、ホモミキサーを用いて、7500r/minの回転数で3分間の攪拌操作により予備乳化処理を施してO/W型の水分散液を得た(60℃)。
【0137】
得られた水分散液を卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理した後、さらに卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で100MPaにて4回高圧乳化処理して微粒化したO/W型の水分散液を得た。
【0138】
得られた水分散液を2重管向流式冷却装置を用いて冷却水にて室温まで急冷却した。
【0139】
水分散液に含まれる粒子の平均粒子径は53nmであった。
【0140】
(試験評価及び結果)
実施例1〜8及び比較例1〜5で得られた水分散液のそれぞれについて、水分散液をガラス瓶に入れたものを3本準備し、5℃、室温、及び50℃のそれぞれの温度雰囲気下で30日間静置保存した後、各温度雰囲気下で静置保存した水分散液の平均粒子径を測定した。また、光学顕微鏡(2000倍)を用いて目視観察も行った。そして、以下の基準で評価を行った。
○:粒子の分散状態が極めて良好で平均粒子径変化も殆どなく、顕微鏡による目視観察でも凝集物や粗大結晶が見られない。
×:平均粒子径変化が著しく、顕微鏡による目視観察で100μmサイズの粗大結晶が見られる。
【0141】
試験評価結果を表1に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
表1によれば、親油性マトリクス(B)を含む実施例1とそれを含まない比較例1とを比較すると、水分散液の安定化のためには、親油性マトリクス(B)が必要であることが分かる。
【0144】
微粒化処理を施した実施例1とそれを施さなかった比較例2とを比較すると、水分散液の安定化のためには、水分散液をナノサイズに微粒化する必要があることが分かる。
【0145】
アニオン界面活性剤(C)を粒子の含有質量の0.15倍含む実施例1とそれを0.50倍含む比較例3とを比較すると、界面活性剤が多すぎると保存安定性が著しく低くなることが分かる。
【0146】
親油性マトリクス(B)を含む実施例2とそれを含まない比較例4とを比較すると、水分散液の安定化のためには、親油性マトリクス(B)が必要であることが分かる。
【0147】
アニオン界面活性剤(C)を含む実施例2とその代わりにノニオン界面活性剤を含む比較例5とを比較すると、アニオン界面活性剤(C)では、少量で水分散液の安定化を図ることができるのに対し、ノニオン界面活性剤では、少量で水分散液の安定化を図ることができないことが分かる。
【0148】
アニオン界面活性剤(C)を含む実施例3とその代わりにカチオン界面活性剤(D)を含む実施例4とを比較すると、カチオン界面活性剤(D)でも、アニオン界面活性剤(C)と同様に、少量で水分散液の安定化を図ることができることが分かる。
【0149】
常温で固体の親油性マトリクス(B)を含む実施例3とその代わりに常温で液体の親油性マトリクス(B)を含む実施例5とを比較すると、親油性マトリクス(B)が常温で液状であっても固体であっても、水分散液の安定化を図ることができることが分かる。
【0150】
等張化剤(E)を含まない実施例5とそれを含む実施例6とを比較すると、等張化剤(E)を加えることで平均粒子径が細かくなることが分かる。
【0151】
卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で75MPaにて2回高圧乳化処理しただけの実施例6とそれに加えて卓上型微量処理湿式メディアレス微粒化装置で100MPaにて4回高圧乳化処理した実施例7とを比較すると、微細化処理を繰り返すことによりさらに平均粒子径が細かくなることが分かる。
【0152】
アニオン界面活性剤(C)を粒子の含有質量の0.03倍含む実施例7とそれを0.15倍含む実施例8とを比較すると、界面活性剤の適度な増量によりさらに平均粒子径が細かくなることが分かる。
【0153】
以上の実施例1〜8の結果によれば、少量のアニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)を含有させると共に、ナノサイズまで粒子を微粒化させることにより、保存安定性に優れる水分散液が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、水分散液及びその製造方法について有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌・静菌能を有する難水溶性活性作用物質(A)及び親油性マトリクス(B)を含む平均粒子径が200nm以下の液体又は固体の粒子が水に分散した水分散液であって、
上記難水溶性活性作用物質(A)の含有量が液全体質量の0.01〜20質量%であると共に、上記親油性マトリクス(B)の含有量が液全体質量の0.2〜20質量%であり、且つ該難水溶性活性作用物質(A)の含有質量が該親油性マトリクス(B)の含有質量の0.05倍以上であり、
上記粒子の含有質量の0.001〜0.2倍のアニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)を含む水分散液。
【請求項2】
上記難水溶性活性作用物質(A)がフェノール系物質(A1)又はアルコール系物質(A2)である請求項1に記載された水分散液。
【請求項3】
上記フェノール系物質(A1)が、トリクロサン、トリクロロカルバニリド、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載された水分散液。
【請求項4】
上記アルコール系物質(A2)が、ドデシルアルコール、デシルアルコール、及びデカンジオールから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載された水分散液。
【請求項5】
上記親油性マトリクス(B)が、油脂類、ロウ類、エステル類、炭化水素類、及び親油性ソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれかに記載された水分散液。
【請求項6】
上記難水溶性活性作用物質(A)がフェノール系物質(A1)であり、且つ上記親油性マトリクス(B)が油脂類、ロウ類、エステル類、及び親油性ソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも1種である請求項2又は3に記載された水分散液。
【請求項7】
上記難水溶性活性作用物質(A)がアルコール系物質(A2)であり、且つ上記親油性マトリクス(B)がロウ類、油脂類、及び炭化水素類から選ばれる少なくとも1種である請求項2又は4に記載された水分散液。
【請求項8】
グリセリン、糖アルコール、単糖類、二糖類、及びアミノ酸から選ばれる少なくとも1種の等張化剤(E)をさらに含む請求項1乃至7のいずれかに記載された水分散液。
【請求項9】
殺菌・静菌能を有する難水溶性活性作用物質(A)及び親油性マトリクス(B)を液体状態で混合して第1液を調製する工程1と、
アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)及び水を混合して第2液を調製する工程2と、
上記工程1及び2で調製した第1及び第2液を混合及び攪拌して平均粒子径が200nm以下の液体又は固体の粒子が水に分散したO/W型の水分散液を調製する工程3と、
を備え、
上記第1液において、上記難水溶性活性作用物質(A)の含有量を上記水分散液の液全体質量の0.01〜20質量%とすると共に、上記親油性マトリクス(B)の含有量を液全体質量の0.2〜20質量%とし、且つ該難水溶性活性作用物質(A)の含有質量を該親油性マトリクス(B)の含有質量の0.05倍以上とし、
上記第2液において、上記アニオン界面活性剤(C)又はカチオン界面活性剤(D)の含有量を上記第1液の質量の0.001〜0.2倍とする水分散液の製造方法。
【請求項10】
上記工程2において、さらに等張化剤(E)を混合する請求項9に記載された水分散液の製造方法。
【請求項11】
上記工程3において、上記工程1及び2で調製した第1及び第2液の混合液に予備乳化処理を施した後、さらに高圧乳化処理を施すことにより上記O/W型の水分散液を調製する請求項9又は10に記載された水分散液の製造方法。

【公開番号】特開2009−84158(P2009−84158A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251641(P2007−251641)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】