説明

水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、抗酸化剤としての高ポリフェノール植物抽出物の使用

【課題】皮膚の細胞に有害に作用し、その老化に関与する酸化プロセスと、皮膚の潤いの程度との間には関連性が存在することから、皮膚の表面層、表皮及び角質層の潤いを良好に維持することによって、内在性抗酸化分子の又は抗酸化作用などを示す化粧剤の有効性を実質的に改善して、皮膚の老化の一因となる酸化プロセスの減少に役立つことができる化粧用活性剤の提供、並びに該活性剤を含有する水分補給及び抗酸化作用のある美容ケアを改善することができる化粧用組成物の提供。
【解決手段】少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、高ポリフェノール植物抽出物を含む化粧用活性剤、及び該活性剤を含む化粧用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、多量のポリフェノールを含む、特にフラボノイド、イソフラボノイド又はアントシアニンが豊富な植物抽出物の、化粧用組成物中の化粧用活性剤としての使用に関する。本発明はまた、この化粧用活性剤の組合せを含む化粧用アンチエイジング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ストレスは、動植物界に共通の一般的な現象であり、酸化ストレスによる影響は、あらゆる生物にとって有害となりうる。
【0003】
酸化ストレスは、人において皮膚を老化させる役割を果たすものであり、細胞レベルでのその有害な作用に基づき、それらを予防すること又はそれらを制限することを目的とした多くの研究課題を生じさせている。
【0004】
酸化ストレスの原因である活性酸素種(ROS)は、細胞代謝中だけでなく、UV照射などの物理的因子、又は過酸化水素などの化学的因子への曝露後に形成される分子である。
【0005】
皮膚の水分の恒常性、即ち皮膚の潤いを一定のレベルで維持する能力が、酸化プロセスを細胞レベルで調整することによって老化に影響を及ぼすということを示す証拠は、今まで提示されていない。
【0006】
水分の恒常性の崩壊は、皮膚の老化における非常に初期の事象であるということが知られている。一般に、体が初期の段階で多量の水分を喪失することは、John Libbey Eurotextによって出版されたM.J.Arnaudの「Hydration throughout life」という表題の著作物で発表された、「Age−related change in body water and hydration in old age」、1998年、117〜125頁という表題の論文で、M.Wisser及びD.Gallagherによって示されている。
【0007】
皮膚細胞でのアクアポリン−3(AQP3)の発現が年齢とともに減少することも知られており、水流を制御するタンパク質系が加齢中に影響を受けることを示唆している(Dumasら、J.Drugs Dermatol.、2007年、6巻、20〜24頁、及びDumasら、Int.J.Cosmet.Sci.、2005年、27巻、47〜50頁)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.J.Arnaud,「Hydration throughout life」,1998年、117〜125頁
【非特許文献2】Dumasら、J.Drugs Dermatol.、2007年、6巻、20〜24頁
【非特許文献3】Dumasら、Int.J.Cosmet.Sci.、2005年、27巻、47〜50頁
【発明の概要】
【0009】
発明の目的
【0010】
本発明は、皮膚の細胞に有害に作用し、その老化に関与する酸化プロセスと、皮膚の潤いの程度との間には関連性が存在し、そのため、皮膚に存在する細胞水及び水和分子をてことして使用することによって抗酸化剤の有効性を増加させることが可能ではないかという、発明者らによって提示された仮説に基づく。
【0011】
即ち、皮膚の表面層、表皮及び角質層の潤いを良好に維持することによって、内在性抗酸化分子の又は抗酸化作用などを示す化粧剤の有効性を実質的に改善して、皮膚の老化の一因となる酸化プロセスの減少に役立つことが可能になろう。
【0012】
したがって、本発明は、これらの原理の適用によってなされている。
【0013】
したがって、本発明の主な目的は、皮膚の潤いを維持又は強化することが可能な化粧用活性剤と組み合わせることによって、皮膚レベルで化粧用抗酸化剤の有効性を改善する手段を提供することである。
【0014】
本発明の別の主な目的は、水分補給作用と著しく増加した抗酸化作用とを組み合わせる化粧用活性剤の組合せを提供することにある、技術的な問題を解決することである。
【0015】
本発明のさらなる主な目的は、このような組合せを含めた新規な化粧用組成物、具体的には化粧用アンチエイジング組成物を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる主な目的は、工業的及び美容規模で使用することができる簡易で安価な方法で、この技術的な問題の解決法を見出すことである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の説明
【0018】
第1の態様によれば、本発明は、化粧用組成物において少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、高ポリフェノール植物抽出物の、本発明による化粧用活性剤としての使用、及びこのような化粧用活性剤に関する。
【0019】
本発明の特に好ましい実施によれば、本発明による植物抽出物は、フラボノイド、イソフラボノイド又はアントシアニンが特に豊富であり、このことが本発明の植物抽出物に強力な抗酸化特性をもたらす。
【0020】
植物抽出物の調製に使用される植物材料は、ポリフェノールが豊富な、特にフラボノイド、イソフラボノイド又はアントシアニンが豊富な、1種又は複数の植物部位を含む。
【0021】
本発明による抽出物の調製に使用される植物材料は、具体的にはポリフェノールが豊富な果実、花若しくは花弁などの花の一部、又は植物の葉でもよい。
【0022】
第2の態様によれば、本発明は、少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせたバラ抽出物の使用、及びこのような組合せを含む化粧剤に関する。
【0023】
本発明の意味の範囲内で、及び本文書の本文において、「バラ」という用語は木バラの花、並びに、ひいては、その植物全体自体、及びその様々な部分の両方、特に花及び葉を示す。
【0024】
特定の代替形態によれば、バラ抽出物は、多量のアントシアニンを自然に示すバラから又はバラの部位から得られる。好ましいバラは、種名メイデベンネ(Meidebenne)で知られるバラである。このバラの花は、非常に暗い赤色をしている。この花は、非常に多量のアントシアニンを示す。
【0025】
このメイデベンネ種は、Meilland International S.A.によって得られ、特にCommunity Plant Variety Right No.7901によって保護されている、交配したバラの種である。
【0026】
木バラの場合、ポリフェノール、具体的にはアントシアニン、特にシアニジン及びペラルゴニジンが豊富なのは、葉、特に花である。
【0027】
したがって、本発明によるバラ抽出物の調製のための植物材料は、満開の若しくは蕾の花全体、又は花弁などの花の一部から、或いは任意選択で葉から、有利に得られる。
【0028】
特に好ましい代替形態によれば、バラ抽出物は、メイデベンネ種のバラの花から得られる。
【0029】
植物材料は、新鮮な状態で使用することができ、又は当業者に知られている技術によって抽出段階より前に乾燥又は脱水しておくこともできる。
【0030】
植物材料は、抽出段階前に粉砕することもできる。
【0031】
本発明による植物抽出物は、当業者に知られている様々な抽出法、具体的には、その抗酸化特性が知られている、植物組織中に存在するポリフェノール、具体的にはフラボノイド、イソフラボノイド又はアントシアニンを抽出できる方法によって調製することができる。
【0032】
したがって、第1の代替形態によれば、植物抽出物は、選択された植物材料を、極性溶媒又は極性溶媒の混合物と接触させて調製することができる。
【0033】
抽出段階に使用することができる極性溶媒として、水;C−Cアルコール、例えばエタノール;好ましくはグリセロール、ブチレングリコール及びプロピレングリコールから選択されるC−Cグリコール;並びにこれらの混合物から選択される溶媒又は溶媒の混合物が、有利に選択される。
【0034】
本発明の好ましい実施によれば、水、水/グリセロール混合物、又は水/アルコール混合物、例えば水の及びエタノールの混合物、好ましくは50%v/vを超える水を含む、特に最大90%v/vの水を含む混合物が、抽出用に使用される。
【0035】
本発明の別の代替形態によれば、抽出は、亜臨界状態で極性溶媒を使用する方法に従って実行することもでき、前記溶媒は有利には亜臨界状態の水である。
【0036】
さらに別の代替形態によれば、抽出は、当業者によく知られている方法による凍結抽出でもよい。
【0037】
抽出は、例えば、無極性溶媒又は亜臨界若しくは超臨界状態のCOを使用して、抽出物を部分的に若しくは完全に脱色又は精製することを目的とした、抽出物の処理からなる追加の段階を任意選択で含むことができる。
【0038】
相当量の有機溶媒を失った濃縮水溶液、又は乾燥残渣が得られるまで、抽出溶媒を部分的又は完全に除去する段階で、抽出を補足することができる。
【0039】
別法として、抽出段階からの生成物は、本発明による化粧用組成物中の活性剤として使用するために、凍結乾燥又は噴霧することにより、化粧用組成物中その状態で使用できる粉末形態で得るか、溶媒若しくは溶媒混合物中に再分散させることができる。
【0040】
この化粧用組成物は、所望の抗酸化作用を得るために、有効量の上述の植物抽出物を含む。
【0041】
本発明者らが実施した試験は、化粧用組成物中の植物抽出物と、皮膚への水分補給作用又は保湿作用を示す少なくとも1種の化粧用活性剤とを組み合わせることによって、本発明による植物抽出物の抗酸化特性を改善することができることを示した。
【0042】
水分補給剤又は保湿剤は、ポリオール;水に対する親和性が高いNMF(天然保湿因子)の構成分子;オスモライト;アクアポリンの生合成の活性化剤;ヒアルロン酸、特に高分子量若しくは低分子量のヒアルロン酸、又はヒアルロン酸、プロテオグリカン及びCD44ヒアルロン酸受容体の生合成の活性化剤;脂質の生合成の活性化剤;ケラチノサイトの分化の活性化剤;密着結合の形成の活性化剤;デスモソーム及びコルネオデスモソームの形成の活性化剤;プロフィラグリン及び/若しくはフィラグリンの形成、並びに/又はNMFを生成させるための、これらのタンパク質の自然分解の活性化剤;或いは角質細胞の角質外被の形成の活性化剤でもよい。
【0043】
代替実施形態によれば、ポリオールは、単独で又は混合物として、グリセロール及びポリエチレングリコールから有利に選択される。
【0044】
別の代替実施形態によれば、単独で又は混合物として、NMFの構成分子は、フィラグリンの構成アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素、糖、例えばグルコース、フルクトース及びラクトース、並びに微量元素からなる群から有利に選択される。
【0045】
さらに別の代替実施形態によれば、オスモライトは、単独で又は混合物として、ベタイン、タウリン、オルニチン、リシン、イノシトール、トレハロース、エクトイン及びヒドロキシエクトイン、若しくはこれらを含有する抽出物、又は皮膚細胞中のこれらの輸送体を活性化することができる抽出物から、有利に選択される。
【0046】
さらに別の代替実施形態によれば、アクアポリンの生合成の活性化剤は、アクアポリン−3(AQP−3)の活性化剤、特にアジュガツルケスタニカ(Ajuga turkestanica)抽出物、単独の又はツボクサ(Centella asiatica)から抽出されるヘテロシドと組み合わせた、アクアポリン−9(AQP−9)の活性化剤、特にウスベニアオイ(Malva sylvestris)抽出物、又は単独で若しくは混合物としての、ケラチノサイト、メラニン細胞、線維芽細胞及び脂肪細胞の別種アクアポリンの活性化剤から、有利に選択される。
【0047】
さらに別の代替実施形態によれば、ヒアルロン酸及びプロテオグリカンの生合成の活性化剤は、有利にはD−キシロースである。
【0048】
本発明のさらに別の代替実施形態によれば、CD44ヒアルロン酸受容体の生合成の活性化剤は、単独で又は混合物として、カルシウム塩、好ましくはグルコン酸カルシウムから有利に選択される。
【0049】
さらに別の代替実施形態によれば、脂質の生合成の活性化剤は、単独で又は混合物として、ヘチマ(Luffa cylindrica)若しくはヒマワリの種の抽出物、又は皮膚保護剤の水密性を改善できるケラチノサイトの層状体の成熟及び排出を刺激する作用剤から有利に選択される。
【0050】
さらに別の代替実施形態によれば、ケラチノサイトの分化の活性化剤は、単独で又は混合物として、エクジステロイド、具体的にはβ−エクジソン、又はグルコン酸カルシウムなどのカルシウム誘導体、若しくはピロリドンカルボン酸、或いはカルシウム塩から有利に選択される。
【0051】
さらに別の代替の実施形態では、密着結合の形成の活性化剤は、単独で又は混合物として、ジャノヒゲ(Ophiopogon japonicus)抽出物、又は低分子量のヒアルロン酸画分から有利に選択される。
【0052】
別の代替実施形態によれば、デスモソーム及びコルネオデスモソームの形成の活性化剤は、有利にはストエカスラベンダー(Lavandula stoechas)抽出物である。
【0053】
別の代替実施形態によれば、フィラグリン及びプロフィラグリンの生合成の活性化剤は、単独で又は混合物として、バンバラマメ(Voandzeia subterranea)抽出物から、又はアッケシソウ(Salicornia herbacea)抽出物、フィラグリンの分解によりNMFの形成を促進するマトリプターゼの活性化剤とそれら自体を任意選択で有利に組み合わせて、有利に選択される。
【0054】
別の代替実施形態によれば、角質細胞の角質外被形成の活性化剤は、有利にはβ−エクジソンである。
【0055】
最後の特定の代替実施形態によれば、皮膚及びその細胞に水分補給する様々な方法を有利に組み合わせて、水分補給作用を維持又は強化することができる。
【0056】
さらなる態様によれば、本発明はまた、上で定義した又は以下の全体にわたる説明から得られるような、高ポリフェノール植物抽出物及び少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤の組合せを本発明による化粧用活性剤として含む化粧用組成物を対象とし、より具体的には、皮膚の老化の兆候、特に酸化ストレス及びROSの作用から生じる皮膚の老化の兆候を軽減する又は遅らせることを企図する化粧用アンチエイジング組成物を対象とする。
【0057】
一実施形態によれば、この化粧用組成物の植物抽出物は高アントシアニンバラ抽出物である。
【0058】
特定の実施形態によれば、この化粧用組成物の植物抽出物の濃度は、乾燥抽出物の重量で0.0001%〜1%の間、好ましくは乾燥抽出物の重量で0.001%〜0.1%である。
【0059】
別の特定の実施形態によれば、この化粧用組成物の水分補給剤又は保湿剤は、化粧用組成物の重量で0.001%〜10%の間、さらに良好には重量で0.1%〜10%の間の濃度で存在する。
【0060】
上で定義した組合せに加えて、化粧用組成物は、色素、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー添加剤、香料、電解質、pH調製剤、抗酸化剤、保存料及びそれらの混合物から選択できる少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む。
【0061】
化粧用組成物は、スキンケア製品又はメーキャップ製品でもよく、例えば、セラム、ローション、乳液の形態、若しくはヒドロゲル、具体的にはマスクの形態でも提供することができ、又は、例えばリップスティック、グロス用のスティック、若しくはパッチの形態で提供することができる。
【0062】
さらなる態様によれば、本発明は、具体的には抗酸化作用を発揮することによって、皮膚の潤いの状態を維持する若しくは強化するために、及び/又は皮膚の老化の兆候の出現を予防する若しくは遅らせるために、或いは老化の作用を減速させるために、上述の又は以下で説明する有効量の化粧用組成物の局所的な適用を含む、体の気になる領域に対する美容ケア法も対象とする。
【0063】
本発明の特に好ましい代替形態によれば、この美容ケア法では、一般にアンチエイジング作用と称される、皮膚の老化の兆候の出現を予防する若しくは遅らせる、又はその作用を減速させることを企図する、具体的には皮膚を引き締める及び/又は皺を和らげること若しくは皺の再吸収を促進することを企図する美容ケアか、或いは酸化をもたらす可能性のある様々なストレスから皮膚を保護することを企図するケアが、実行される。
【0064】
当業者には、第1の態様に関する本発明の全ての実施形態又は代替の実施形態は、本発明のさらなる態様にも適用されることが明らかである。代替の実施形態は組み合わせることができる。
【0065】
当業者はまた、このように明示した本発明が、工業及び美容規模で使用することができる、満足のいく、信頼性のある、安価な方法で、「発明の目的」項で提示した技術的な問題を解決することができることを理解している。
【0066】
本発明のその他の目的、特徴及び利点は、以下に単に例示のために示され、本発明の範囲を決して制限すべきでない、いくつかの例示的な実施形態並びにインビトロ及びインビボで実行される試験に関して、以下に示す説明的記述を考慮すれば、よりはっきりと明らかになろう。
【0067】
本明細書を通して、特に実施例において、特に指示がない限りは、割合は重量で示され、温度は周囲温度、即ち22℃プラスマイナス3℃であり、及び圧力は大気圧である。
【実施例】
【0068】
本発明の実施例1−本発明による化粧用組成物
【0069】
凍結濃縮法によって得られるメイデベンネ種のバラの花の抽出物を含む、水中油型乳液を調製する。この乾燥抽出物を、0.5%w/vの前記抽出物を含む水/グリセロール(50/50)溶液で希釈する。
メイデベンネ抽出物の溶液 0.3%
グリセロール 6.0%
水素化ポリイソブテン 7.0%
カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド 3.0%
ペンチレングリコール 3.0%
ステアリン酸グリセリル 2.5%
ステアリン酸PEG−100 2.5%
蜜蝋 1.5%
炭酸ジカプリリル 1.5%
セチルアルコール 1.0%
ステアリルアルコール 1.0%
ジメチコン 1.0%
フェノキシエタノール 0.5%
キサンタンガム 0.2%
アクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー 0.2%
EDTA4ナトリウム 0.1%
水酸化ナトリウム 0.1%未満
水 100%まで適量
【0070】
通常の方法に従って、組成物を調製する。
【0071】
クリームは、以下の実施例2のインビボ試験で使用する。
【0072】
実施例2:局所塗付用スキンケア製品の抗酸化特性の評価
【0073】
実施例1で調製したクリーム(製品A)を、このインビボ試験に使用する。
【0074】
前述の配合からグリセロールを外し、水と置き換えた以外は配合が定性的及び定量的に同じクリーム(製品B)を、対照として使用する。
【0075】
本試験の目的は、局所処置後に、皮膚の表面での活性酸素種(ROS)の減少を評価することによって、組成物のそれぞれによって生じる抗酸化作用を決定することである。
【0076】
1−実験手順
【0077】
1.1−測定の原理
【0078】
角質層の表面層からサンプルを取り出した後、呈色指示薬として、脱アセチル化後にROSの存在下で蛍光を示す化合物DCFになる、化合物DCF(H)−DA(2’,7’−ジクロロフルオレセインジアセテート)を使用して、酸化種を試験する(Girardら、Current Problems in Dermatology、1998年、26巻、99〜107頁参照)。
【0079】
皮膚に抗酸化剤を塗付すると、理論的には、ROSの濃度が低下し、したがって測定される蛍光が減少する。
【0080】
D−スクアム(D−Squame)(登録商標)標準粘着剤を用いて、皮膚のサンプリングを行う。このD−スクアム(登録商標)ディスクをDCFを含む緩衝液中でインキュベートして、蛍光測定法によって蛍光を定量する。
【0081】
1.2−機材及び試薬の説明
【0082】
−蛍光を測定する装置:Fluoroskan Ascent(Labsystems)、λex=485nm及びλem=538nm。
【0083】
−96−ウェルマイクロプレート(Labsystems、Luminostrip)。
【0084】
−水浴(Plexiglas、Bioblockにより供給)。
【0085】
−D−スクアム(登録商標):Squameterを用いて、10秒間、約300gf/cmの圧力で測定を行う場所に貼る、直径22mmの透明な粘着性ディスク(Cuderm Co.)。
【0086】
−Squameter(Giap):この装置は、D−スクアム(登録商標)を透過した赤外光の吸収率(850nm)の関数としてサンプリングした鱗屑の数を示す(Parfums Christian Diorのフランス特許番号FR2710517参照)。
【0087】
−MiniSorpプラスチック管(Polylabo)。
【0088】
−濃度9.44×10−4MのDCF(H)−DA溶液。
96°のエタノール5ml中の2.3mgのDCF(H)−DA(参照番号D−399、Molecular Probes、Interchimにより供給)。
【0089】
−濃度0.01MのNaOH溶液(つまり、Milli−Q水で希釈して100mlとした、濃度0.5NのNaOH溶液2ml)、pH=12(Merck)。
【0090】
−濃度66mMのリン酸緩衝液、pH=7.4。
【0091】
PBS一袋(参照番号P−3813、Sigmaにより供給)を、152mlのMill:−Q水で希釈した。
【0092】
1.3−試験の説明
【0093】
−段階A:脱アセチル化
【0094】
濃度0.01M(pH=12)のNaOH溶液3mlを、上述のDCF(H)−DA溶液20μlに加える。100秒間撹拌しながら反応を起こし、こうしてDCF(H)(2’,7’−ジクロロフルオレセイン)の溶液を得る。
【0095】
−段階B:反応
【0096】
D−スクアム(登録商標)を皮膚に貼り、10秒間、300gf/cmの圧力で、Squameterを使用する。
【0097】
続いて、D−スクアム(登録商標)を、プラスチック管中の濃度66mM(pH=7.4)のリン酸緩衝液1.5mlに浸漬する。D−スクアム(登録商標)ディスクを入れていない管を、対照として使用する。
【0098】
段階Aで調製された、DCF(H)溶液50μlを加える。
【0099】
この管を撹拌して、2時間、温度37℃の水浴中に入れる。
【0100】
移しかえた溶液250μlを、マイクロプレートのウェル中に入れる。
【0101】
次いで、37℃、λex=485nm及びλem=538nmでFluoroskanを使用して蛍光を読み取る。
【0102】
1.4−方法の説明
【0103】
連続6時間にわたって4回(即ち2時間ごとに1回)、前腕の前面に組成物を塗付する。
【0104】
指サックを使用して、2μl/cmの組成物を塗付する。
【0105】
肘及び手首の間の前腕それぞれで、皮膚の3つの領域を試験する。
【0106】
−領域ごとに繰り返した測定数:DCF(H)との反応後に得られる同じ溶液を、2つの異なるウェルに入れる。
【0107】
各領域上のD−スクアム(登録商標)ディスクでt=24時間に剥がして、各前腕の角質層細胞を収集する。D−スクアム(登録商標)上で、活性酸素種の蛍光による分析を実行する。
【0108】
2−統計
【0109】
主な評価基準は、蛍光の測定である。
【0110】
未処置の対照と比較すると、蛍光の有意な減少は、ROS量の減少を示す。したがって、これは、試験した組成物が抗酸化作用を示すことを意味する。
【0111】
検定の有意水準a=5%で、ウィンドウズNT(Windows NT)(登録商標)提供のアプリケーションStatgraphics Plusを採用した、ANOVA検定法を用いて分散分析を実行する。
【0112】
一方では実施例1の組成物(製品A)を用い、他方ではグリセロール無しの実施例1の組成物(製品B)を用いて処理した領域について得られた蛍光値の間で、統計比較を実行する。
【0113】
3−結果
【0114】
信頼区間が95.0%の最小二乗平均の以下の表に、得られた結果を詳細に示す。
【表1】

【0115】
リスクが5%の統計分析は、測定された2つの平均値の間の有意差を示す。
【0116】
保湿剤としてのグリセロール6%と組み合わせたバラ抽出物を含む組成物に対応する製品Aで処理した試料に対する蛍光は、保湿剤を含まない組成物と比較すると、平均して低い。
【0117】
バラ抽出物と水分補給剤とを組み合わせた組成物は、活性酸素種に関しては、この組合せを含まない組成物よりも有意に高い抗酸化能を有する。
【0118】
このことにより、本発明の組成物が、提起されている技術的な問題を実際に解決することを示すこと、特に非常に有効な抗酸化活性を示す組成物を提供することが可能になる。
【0119】
本発明による化粧用組成物の実施例3
【0120】
水分補給又は保湿作用及び抗酸化作用を有し、アンチエイジング作用をもたらす本発明による化粧用組成物を、以下の方法で調製した。
【0121】
以下の活性成分を含むローションを、水溶液の形態で調製する。
【0122】
以下の活性剤を、重量パーセントで混合した。
メイデベンネ抽出物の溶液 0.2%
グリセロール 3.0%
アジュガツルケスタニカ抽出物 0.02%
ウスベニアオイ抽出物 0.2%
ツボクサヘテロシド 0.02%
ベタイン 1.0%
グリセロール 3.0%
高分子量及び低分子量ヒアルロン酸 0.05%
賦形剤 100%まで適量
【0123】
このローションを、毎日顔に塗布する。
【0124】
さらに、以下の活性成分を含む目元用のクリームを、水中油乳液の形態で調製する。
【0125】
以下の化粧用活性剤を、重量パーセントで混合した。
メイデベンネ抽出物の溶液 1.0%
アジュガツルケスタニカ抽出物 0.1%
ウスベニアオイ抽出物 0.5%
ツボクサヘテロシド 0.1%
ベタイン 1.0%
グリセロール 5.0%
高分子量及び低分子量ヒアルロン酸 0.001%未満
賦形剤及び水 100%まで適量
【0126】
これらの活性成分を、化粧用組成物を製造するための従来の方法で混合し、この場合は水中油乳液の形態とする。
【0127】
目の周り、より具体的には、皺又は小皺、例えば目尻の皺が現れる恐れのある領域に、この化粧用組成物を毎日塗付すると、皮膚の酸化の悪影響が軽減され、皮膚の質に著しい改善をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤と組み合わせた、高ポリフェノール植物抽出物を含む化粧剤。
【請求項2】
前記植物抽出物は、フラボノイド、イソフラボノイド、アントシアニン、及びそれらの混合物から選択されるポリフェノールが豊富である、請求項1に記載の化粧剤。
【請求項3】
前記植物抽出物の調製に使用される植物材料は、ポリフェノールが豊富な1種又は複数の植物部位を含む、請求項1に記載の化粧剤。
【請求項4】
前記植物部位は、果実、花、花の一部、花弁及び葉から選択される、請求項3に記載の化粧剤。
【請求項5】
前記植物抽出物は、多量のアントシアニンを示すバラ抽出物である、請求項1に記載の化粧剤。
【請求項6】
前記バラ抽出物は、メイデベンネとして知られる種のバラから得られる、請求項5に記載の化粧剤。
【請求項7】
前記バラ抽出物は、満開の若しくは蕾の花全体、花の一部、花弁及び葉から選択される植物部位から得られる、請求項5に記載の化粧剤。
【請求項8】
前記バラ抽出物は、メイデベンネ種のバラの花から得られる、請求項7に記載の化粧剤。
【請求項9】
前記抽出物は、選択された植物材料を、極性溶媒又は極性溶媒の混合物と接触させて調製される、請求項1に記載の化粧剤。
【請求項10】
前記極性溶媒又は前記極性溶媒の混合物は、水、C―Cアルコール、C−Cグリコールから選択される、請求項9に記載の化粧剤。
【請求項11】
前記グリコールは、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物から選択される、請求項10に記載の化粧剤。
【請求項12】
前記植物抽出物は凍結濃縮によって得られる、請求項1に記載の化粧剤。
【請求項13】
水分補給剤又は保湿剤は、ポリオール;水に対する親和性が高いNMF(天然保湿因子)の構成分子;オスモライト;アクアポリンの生合成の活性化剤;ヒアルロン酸、ヒアルロン酸及びプロテオグリカンの生合成の活性化剤、CD44ヒアルロン酸受容体の生合成の活性化剤;脂質の生合成の活性化剤;ケラチノサイトの分化の活性化剤;密着結合の形成の活性化剤;デスモソーム及びコルネオデスモソームの形成の活性化剤;プロフィラグリン又はフィラグリンの形成の活性化剤;NMFを生成させるための、プロフィラグリン又はフィラグリンの自然分解の活性化剤;角質細胞の角質外被の形成の活性化剤;及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化粧剤。
【請求項14】
ポリオールは、グリセロール、又はポリエチレングリコール、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項15】
NMFの構成分子は、フィラグリンの構成アミノ酸、ピロリドンカルボン酸、乳酸、尿素、糖、グルコース、フルクトース、ラクトース、微量元素、及びそれらの任意混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項16】
水分補給剤又は保湿剤は、ベタイン、タウリン、オルニチン、リシン、イノシトール、トレハロース、エクトイン及びヒドロキシエクトインからなる群から選択されるオスモライト、前記オスモライトを含む抽出物、皮膚細胞中のオスモライト輸送体を活性化することができる抽出物、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項13に記載の化粧用組成物。
【請求項17】
アクアポリンの生合成の前記活性化剤は、アクアポリン−3(AQP−3)の活性化剤、アジュガツルケスタニカ抽出物、アクアポリン−9(AQP−9)の活性化剤、ツボクサから抽出されるヘテロシドと組み合わせたウスベニアオイ抽出物、ケラチノサイト、メラニン細胞、線維芽細胞並びに脂肪細胞の別種アクアポリンの活性化剤、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項18】
ヒアルロン酸及びプロテオグリカンの生合成の活性化剤はD−キシロースである、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項19】
CD44ヒアルロン酸受容体の生合成の活性化剤は、カルシウム塩、グルコン酸カルシウム、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項20】
脂質の生合成の活性化剤は、ヘチマ抽出物、ヒマワリの種の抽出物、皮膚保護剤の水密性を改善するケラチノサイトの成熟及びケラチノサイトの層状体の排出を刺激する作用剤、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項21】
ケラチノサイトの分化の活性化剤は、β−エクジステロイド、β−エクジソン、カルシウム誘導体、グルコン酸カルシウム、ピロリドンカルボン酸、カルシウム塩、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項22】
密着結合の形成の活性化剤は、ジャノヒゲ抽出物、低分子量のヒアルロン酸画分、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項13に記載の化粧用組成物。
【請求項23】
デスモソーム及びコルネオデスモソームの形成の活性化剤はストエカスラベンダー抽出物である、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項24】
フィラグリン及びプロフィラグリンの生合成の活性化剤は、バンバラマメ抽出物又はアッケシソウ抽出物、マトリプターゼの活性化剤、フィラグリンの分解によってNMFの形成を促進する作用剤、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項13に記載の化粧剤。
【請求項25】
角質細胞の角質外被の形成の活性化剤はβ−エクジソンである、請求項13に記載の化粧用組成物。
【請求項26】
高ポリフェノール植物抽出物と少なくとも1種の水分補給剤又は保湿剤との組合せ、及び少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤を含む請求項1〜25のいずれか一項に記載の化粧剤を、化粧用活性剤として含む、化粧用組成物。
【請求項27】
植物抽出物は、高アントシアニンバラ抽出物である、請求項26に記載の化粧用組成物。
【請求項28】
植物抽出物の濃度は、乾燥抽出物の重量で0.0001%〜1%の間である、請求項26に記載の化粧用組成物。
【請求項29】
植物抽出物の濃度は、乾燥抽出物の重量で0.001%〜0.1%の間の範囲である、請求項26に記載の化粧用組成物。
【請求項30】
水分補給剤又は保湿剤が、化粧用組成物の重量で0.001%〜10%の間の濃度で存在する、請求項26に記載の化粧用組成物。
【請求項31】
水分補給剤又は保湿剤は、化粧用組成物の重量で0.01%〜10%の間の範囲の濃度で存在する、請求項26に記載の化粧用組成物。
【請求項32】
前記少なくとも1種の化粧品として許容される賦形剤は、色素、染料、ポリマー、界面活性剤、レオロジー添加剤、香料、電解質、pH調製剤、抗酸化剤、保存料、及びそれらの任意の混合物から選択される、請求項26に記載の化粧用組成物。
【請求項33】
セラム、ローション、乳液、ヒドロゲル、マスク、スティック、リップスティック、グロス又はパッチから選択される形態で提供されるスキンケア製品及びメーキャップ製品から選択される、請求項26に記載の化粧用組成物。
【請求項34】
前記組成物は、抗酸化作用を発揮することによって、皮膚の潤いの状態を維持若しくは強化するため、皮膚の老化の兆候の出現を遅らせるため、又は老化の作用を減速させるためのものである、請求項26に記載の化粧用組成物。
【請求項35】
皮膚を引き締める、皺を和らげる若しくは皺の再吸収を促進する、又は酸化をもたらす様々なストレスから皮膚を保護するための、請求項26に記載の化粧用組成物。

【公開番号】特開2011−21001(P2011−21001A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−116513(P2010−116513)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(502189579)エルブイエムエイチ レシェルシェ (68)
【Fターム(参考)】