説明

水加熱ヒータ及び水加熱ヒータを用いた電気温水器

【課題】 ニッケルめっきを使用することなく耐蝕性に優れた水加熱ヒータ及びその製造方法を得ること、またこの水加熱ヒータを用いた電気温水器を得ること。
【解決手段】 水加熱ヒータ1は、絶縁粉末3を介して発熱線2を埋没した銅合金4よりなる金属パイプと、この金属パイプの外表面に錫めっきを施し、この錫めっきにその融点を超えない範囲で熱処理を行って形成した錫及び銅の合金層5を備えている。
また、電気温水器は、湯を貯える貯湯タンク11と、この貯湯タンク11の内部に貯留された水を加熱する上記の水加熱ヒータ1と、この水加熱ヒータ1のヒータフランジ6に設けられ水加熱ヒータ1の空焼きを防止するための温度過昇防止器7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水加熱用ヒータ及びこの水加熱ヒータを用いた電気温水器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の銅合金製の水加熱ヒータの発熱部表面は、防食のためにニッケルめっきを施こしてあり、さらにニッケルめっきの上に錫めっきを施こしていた。ニッケルめっきのみでは、アルカリ性の水質には耐蝕性があるが、酸性の水質では耐蝕性が得られず、ニッケルめっきの上にさらに錫めっきを施すことで酸性の水質でも耐蝕性が得られる。
【0003】
なお、水のない状態で通電され、水加熱ヒータの表面温度が高温になったときでも、銅合金と錫との間にニッケルめっきが存在しているため、性能の劣化を防止することができる。ニッケルめっきがない場合は、高温により銅合金と錫が合金化され、融点が低下してヒータが変形することがあり、そのためにニッケルめっきを必ず行なう必要があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実開平5−55492号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境問題等により、重金属の使用量を削減する傾向にあり、重金属を使用するニッケルめっきを使用しない防食処理が必要となってきた。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、ニッケルめっきを用いることなく耐蝕性に優れた水加熱ヒータ及びその製造方法を得ること、並びにこの水加熱ヒータを使用することにより空焼きされても性能劣化が生じることのない電気温水器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水加熱ヒータは、絶縁粉末を介して発熱線を埋没した銅合金よりなる金属パイプと、この金属パイプの外表面に錫めっきを施し、この錫めっきにその融点を超えない範囲で熱処理を行って形成した錫及び銅の合金層とからなるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る水加熱ヒータは、ニッケルを使用することなく、錫めっきに熱処理を行なって錫と銅の安定した合金層を形成したもので、錫めっきだけを設けた場合よりも耐蝕性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る水加熱ヒータの要部の縦断面図である。図1において、水加熱ヒータ1は、発熱線2の周囲を絶縁粉末3で覆い、絶縁粉末3の周囲を銅合金4よりなる金属パイプで覆い、さらにその外表面に銅錫合金層5を設けたものである。この銅錫合金層5は、銅合金4よりなる金属パイプの外表面に錫めっきを施し、錫の融点を超えない温度で熱処理して形成したものである。
【0010】
上記のように構成した水加熱ヒータ1の製造方法を説明する。発熱線2の周囲を絶縁粉末3で覆って発熱線2を絶縁粉末3内に埋設し、これらを金属パイプ製の銅合金4によって被う。この銅合金4の外表面に錫めっきを、1μm以上、望ましくは10μm程度施こし、その後、錫の融点である231.9℃を越えない温度で、望ましくは221.9℃から226.9℃の間の温度で加熱処理し、前記温度にて10秒以上、望ましくは10分程度放置し、その後、大気中において自然冷却を行なう。
【0011】
このように水加熱ヒータ1は、錫めっきに熱処理を行なって銅と錫との安定した銅錫合金層5を形成するもので、ニッケルを使用する必要もなく、また錫めっきのみからなる水加熱ヒータ1よりも耐蝕性に優れ、安定している。
【0012】
実施の形態2.
図2は本発明の実施の形態2に係る電気温水器の構成図、図3は図2の水加熱ヒータの斜視図である。図2において、電気温水器本体10内には湯を貯える貯湯タンク11が設けられ、その底部には給水管12が接続され、上部には給湯管13が接続されている。貯湯タンク11内の下部近傍には、貯湯タンク11に貯えられた水を加熱するための水加熱ヒータ1が設けられ、ヒータフランジ6によって貯湯タンク11に取り付けられている。ヒータフランジ6には、水加熱ヒータ1の空焼きを防止するための温度過昇防止器7が取り付けられ、ヒータフランジ6の上方にはサーモスタット12が取り付けられている。
【0013】
なお、水加熱ヒータ1は、ほぼU字状に折り曲げたヒータをさらに折り曲げて形成したもので、端部に位置するU字部1aと、U字部1aの平面とほぼ直角に折り曲げられた第1の折り曲げ部1bと、第1の折り曲げ部1bをU字部1aと逆側にほぼ直角に折り曲げられた第2の折り曲げ部11cによって形成されている。そして、第2の折り曲げ部11cの端部近傍には、その直線部にほぼ直交してヒータフランジ6が取り付けられている。
【0014】
上記のように構成した電気温水器の作用を説明する。電気温水器本体10の貯湯タンク11に給水管12より注水して、貯湯タンク11を水で満たし、水加熱ヒータ1に通電して貯湯タンク11内の水を加熱し、湯を沸かす。貯湯タンク11に取り付けたサーモスタット12によって湯温の上昇を検知し、設定湯温に達したら、水加熱ヒータ1への通電を停止する。設定湯温に達した湯は、給湯管13より給湯される。
【0015】
貯湯タンク11内に水がない状態で水加熱ヒータ1に通電して空焼きすると、水加熱ヒータ1が通常の湯を沸かす温度より高くなるので、水を加熱する場合の温度との違いを、ヒータフランジ6に取付けた温度過昇防止器7が検知すると、水加熱ヒータ1への通電を停止する。
【0016】
このように、水加熱ヒータ1に水のない状態で通電しても、ヒータフランジ6に取り付けた空焼き防止用の温度過昇防止器7によって、融点が低い銅錫合金を設けた水加熱ヒータ1の発熱部の温度が高温にならないようにしてあるので、水加熱ヒータ1が空焼きされ、変形、断線などの性能劣化が生じるのを防止し、電気温水器本体10の発煙、発火を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態1に係る水加熱ヒータの要部の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る電気温水器の構成図である。
【図3】図2の水加熱ヒータの斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 水加熱ヒータ、2 発熱線、3 絶縁粉末、4 銅合金、5 銅錫合金層、6 ヒータフランジ、7 温度過昇防止器、10 電気温水器本体、11 貯湯タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁粉末を介して発熱線を埋没した銅合金よりなる金属パイプと、該金属パイプの外表面に錫めっきを施し、該錫めっきにその融点を超えない範囲で熱処理を行って形成した前記錫及び銅の合金層とからなることを特徴とする水加熱ヒータ。
【請求項2】
金属パイプの外表面に1μm以上の錫めっきを施し、該錫めっきに、231.9℃を超えない温度範囲で10秒以上熱処理を行なうことを特徴とする請求項1記載の水加熱ヒータ。
【請求項3】
前記錫めっきに、221.9℃から226.9℃の温度範囲で熱処理を行なうことを特徴とする請求項2記載の水加熱ヒータ。
【請求項4】
湯を貯える貯湯タンクと、該貯湯タンクの内部に貯留された水を加熱する水加熱ヒータと、該水加熱ヒータのヒータフランジに設けられ該水加熱ヒータの空焼きを防止するための温度過昇防止器とを備え、前記水加熱ヒータに請求項1記載の水加熱ヒータを用いたことを特徴とする電気温水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−12522(P2006−12522A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186069(P2004−186069)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(501315762)株式会社サカエ (18)
【Fターム(参考)】