説明

水性インク組成物、インクジェット記録用水性インク組成物およびインクジェット記録方法

【課題】作業環境を改善し、且つ低出力の放射線の照射でも高感度で硬化し、貯蔵安定性が高く、且つ、インクジェット記録用として用いた場合においても、吐出時にノズル詰まりを起こさない放射線硬化型の水性インク組成物を提供し、さらに該水性インク組成物を用いたときに高画質の画像を形成することができるインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、(A)下記一般式(i)で示される化合物、(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物、(C)重合開始剤、および(D)水、を含有する水性インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型インクジェット記録用として好適に用いられる水性インク組成物、インクジェット記録方法に関するものである。詳しくは、吐出信頼性に優れ、放射線の照射に対して、高感度で硬化する放射線硬化型水性インク組成物、インクジェット記録用放射線硬化型水性インク組成物、およびインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像データ信号に基づき、紙などの被記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式などがある。電子写真方式は、感光体ドラム上に帯電及び露光により静電潜像を形成するプロセスを必要とし、システムが複雑となり、結果的に製造コストが高価になるなどの問題がある。また熱転写方式は、装置は安価であるが、インクリボンを用いるため、ランニングコストが高く、かつ廃材が出るなどの問題がある。
一方、インクジェット方式は、安価な装置で、且つ必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安いという利点を有し、さらに、騒音が少なく、画像記録方式として優れている。
【0003】
紫外線などの活性放射線の照射により硬化可能なインク組成物(放射線硬化型インク組成物)、例えば、インクジェット記録用インク組成物としては、高感度で硬化し、高画質の画像を形成しうるものが求められている。
高感度化を達成することによって、活性放射線の照射により高い硬化性が付与されるため、消費電力の低減や活性放射線発生器への負荷軽減による高寿命化などの他、充分な硬化が達成されることにより、未硬化の低分子物質の揮発、形成された画像強度の低下などを低減することができるなど、種々の利点をも有した画像記録方法が得られる。
【0004】
なかでも放射線硬化型水性インクは、画像の印刷、被記録媒体に印刷適性を付与するための前処理、印刷された画像の保護・装飾の後処理などに好適に使用でき、また、水を主成分とすることから安全性に優れ、低粘度化によって高密度インクジェット記録への適用が可能になるなど、多くの優れた特徴、可能性を有する技術である。
【0005】
放射線硬化型水性インクの基本構成材料は、水、重合性物質、放射線によってラジカルなどを発生して重合を開始させる重合開始剤、色材(顔料あるいは染料)である。このうち重合性物質や重合開始剤は、エマルジョン状態にして調製される場合と、適当な置換基により水溶性を付与されて溶液状態として存在する場合がある。重合性物質および重合開始剤が水溶性である例としては、例えば特許文献1が挙げられ、光照射により強度、柔軟性、密着性などに優れた膜が得られるインクジェット記録用インク組成物が記載されている。
【0006】
紫外線光による硬化型インクジェット記録用インク組成物に含有される光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ミヒラーケトン、アントラキノン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン等が一般的に用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これらの光重合開始剤を用いた場合、活性放射線硬化型インク組成物の感度が低いために、画像形成における像露光に長時間を要した。このため細密な画像を形成したい場合には、操作にわずかな振動があると良好な画質の画像が再現されず、さらに露光工程でのエネルギー照射量を増大しなければならないために、それに伴う多大な発熱の放射を考慮する必要があった。
【0007】
また、インクジェット記録方式に用いられるインク組成物としては、保存により物性の変化あるいは沈澱物等を生じないこと(溶液安定性)、ノズルの目詰まりを生じないこと(吐出安定性)等の諸特性が必要である。
【0008】
放射線硬化型の重合性組成物において、放射線に対する感度を高める方法として、種々の重合開始系を使用することが開示されている(非特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。また特許文献1では放射線硬化型水性インク組成物に適用可能な水溶性のアシルホスフィンオキシド類、チオキサントン類などを含む開始剤が用いられている。しかし、走査露光に十分な感度、保存安定性、および吐出安定性を満たした開始剤をインクジェット記録用水性インク組成物において採用した例はない。
【0009】
このため、低出力の放射線に対しても高感度で硬化し、高画質の画像を形成することができ、且つ、保存安定性、吐出安定性が良好な、放射線硬化型インクジェット記録用として好適に用いることができる水性インク組成物が切望されている。
【特許文献1】特開2005−307199号公報
【特許文献2】米国特許第4134813号明細書
【特許文献3】特開平1−253731号公報
【特許文献4】特開平6−308727号公報
【非特許文献1】ブルース M.モンロー(Bruce M.Monroe)ら著,ケミカル レビュー(Chemical Reviews),第93巻,(1993年),p.435−448.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、低出力の放射線の照射でも高感度で硬化し、貯蔵安定性が高く、且つ、インクジェット記録用として用いた場合においても、吐出時にノズル詰まりを起こさない放射線硬化型の水性インク組成物を提供し、さらに該水性インク組成物を用いたときに高画質の画像を形成することができるインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(i)で示される化合物(以下、特定増感色素と称することがある。)が高い増感効果を示し、開始系に使用することによって水性インク組成物は、高感度かつ良好な保存安定性、吐出安定性を有していることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の課題は、下記の手段により達成されるものである。
【0012】
<1> 少なくとも、(A)下記一般式(i)で示される増感色素、(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物、(C)重合開始剤、および(D)水、を含有する水性インク組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
前記式(i)において、Xは、O、S、又は、NRを表す。nは、0または1の整数を表す。Rは水素原子、アルキル基、およびアシル基を表す。
、R、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、または一価の置換基を表す。R、R、R、及びRは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。RまたはRと、RまたはRとは、互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0015】
<2> 前記一般式(i)で示される化合物におけるR、R、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つが、カルボキシル基(その塩を含む)を有する置換基である<1>に記載の水性インク組成物。
<3> 前記(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物が、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、ポリ(アルキレンオキシ)基を有し、且つエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群から選ばれた1種以上である<1>または<2>の水性インク組成物。
【0016】
<4> (C)重合開始剤が、水溶性である重合開始剤である<1>から<3>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<5> (C)重合開始剤が、α−アミノケトン類、及びアシルフォスフィンオキシド類からなる群より選択される1種以上である<1>から<4>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
【0017】
<6> さらに、(E)着色剤 を含有する<1>から<5>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<7> インクジェット記録用である<1>から<6>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
【0018】
<8> (a)被記録媒体上に、<1>から<7>のいずれか1項に記載の水性インク組成物を吐出する工程、
及び(b)吐出された水性インク組成物に活性放射線を照射して、水性インク組成物を硬化する工程、
を含むインクジェット記録方法。
【0019】
本発明の一般式(i)で示される化合物の作用は明確ではないが、α−アミノケトン類やアシルフォスフィンオキシド類などの重合開始剤に対する増感色素として作用するものと推測している。すなわち一般式(i)で表される化合物は、三重項励起エネルギーが高く、α−アミノケトン類やアシルフォスフィンオキシド類等の重合開始剤に対して、効率良く三重項エネルギー移動を起こすため、高感度で硬化しうるものと考えられる。また、このような機構で増感する増感色素として一般的に使用されるチオキサントン系化合物よりも結晶性が低く析出しにくいため、水性インク組成物の溶液としての安定性に優れ、且つ、これを含有する水性インク組成物をインクジェット記録用として用いた場合、優れた吐出安定性が得られるものと考えられる。
このように、本発明の水性インク組成物は、高感度化と、保存安定性、吐出安定性を並立しうるものと考えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低出力の放射線の照射でも高感度で硬化し、貯蔵安定性が高く、且つ、インクジェット記録用として用いた場合においても、吐出時にノズル詰まりを起こさない放射線硬化型の水性インク組成物を提供でき、さらに該水性インク組成物を用いたときに高画質の画像を形成することができるインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、前記した目的に鑑み、少なくとも、(A)特定増感色素、(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物、(C)重合開始剤、および(D)水、を含有する水性インク組成物により高感度化と、溶液安定性、吐出安定性を並立する優れた水性インク組成物が得られることを見出し本発明に至った。
【0022】
以下に、本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物の主たる応用例であるインクジェット記録方式による印刷の作用・効果について説明する。
本発明に使用可能な放射線としては紫外線・電子線等が挙げられるが、以降、特に好適な紫外線を使用する紫外線硬化型の水性インク組成物を代表例に挙げて説明を進める場合がある。しかしこれは、放射線が紫外線に限定されることを意味するものではない。
【0023】
本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物は、とりわけ普通紙のような、インク吸収性はあるが、色材の色彩の向上や耐擦過性の向上が難しいとされる被記録媒体に対して、それを改善させる顕著な効果を発揮する。更に、本発明にかかる放射線硬化型の硬化型水性インク組成物は、非吸収性の被記録媒体に対する水性インク組成物による印刷をも可能とする。
【0024】
本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物をインクジェット記録方式に用いるためには、その粘度が適正な範囲にあることは勿論であるが、表面張力も、特に普通紙上で高品位、高濃度の画像が形成できるよう、硬化と浸透のバランスの観点において最適化されることがより好ましい。また吐出安定性も重要であり、その観点では重合性化合物や、重合開始剤などとしては、水性媒体に対する溶解性が良く、且つ、系中に析出しにくい化合物を用いることが好ましい。
【0025】
次に、上記した優れた作用・効果を有する、本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物の各構成材料と、この放射線硬化型の水性インク組成物を使用するインクジェット記録方法について具体的に説明する。
【0026】
本発明の水性インク組成物について説明する。
<(A)一般式(i)で示される化合物>
本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物は、少なくとも、(A)下記一般式(i)で示される増感色素、(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物、(C)重合開始剤、(D)水、を含有する。
【0027】
【化2】

【0028】
前記式(i)において、XはO、S、又は、NRを表す。nは0,1の整数表す。Rは水素原子、アルキル基、およびアシル基を表す。
、R、R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、または一価の置換基を表す。R、R、R、及び、Rは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。RまたはRと、RまたはRは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0029】
本発明では(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物を用いて、これに重合開始剤、および特定増感色素を加えて、水性のインク組成物を調製する。このとき、重合開始剤及び特定重合開始剤はともに水溶性のものを用いて水性インク組成物とすることが好ましい。親水性基を有しない水不溶性の特定増感色素や水不溶性の重合開始剤を用いる場合には、界面活性剤などを用いて乳化する、顔料とともに分散させるなどの方法によって本発明の水性インク組成物を調製することができる。
【0030】
上記した界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0031】
また、本発明においては、高分子界面活性剤も用いることができ、以下の水溶性樹脂が、吐出安定性の観点から好ましい高分子界面活性剤として挙げられる。水溶性樹脂として好ましく用いられるのは、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
【0032】
(A)一般式(i)で表される化合物について説明する。本化合物は、α−アミノケトン類及びアシルフォスフィンオキシド類などの重合開始剤に対する増感色素として作用するものと推測している。一般に、増感色素は、特定の放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、重合開始剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用を生じ、これにより重合開始剤の化学変化、即ち、分解、ラジカル、酸或いは塩基等の活性種の生成を促進させ、ここで発生した活性種が後述する(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物を重合させ、硬化反応を生起、促進させるものと考えられる。
【0033】
増感色素は、インク組成物に使用される重合開始剤に開始種を発生させる活性放射線の波長に応じた化合物を使用すればよいが、一般的なインク組成物の硬化反応に使用されることを考慮すれば、好ましい増感色素の例としては、350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。本発明の水性インク組成物は、以下の化合物類に属する1種以上の特定増感色素を含有することを要する。
【0034】
一般式(i)で表される化合物は、水溶性であることが好ましい。溶解性としては蒸留水に対して室温において、0.5wt%以上溶解することが好ましく、1wt%以上溶解することがより好ましく。3wt%以上溶解することがとくに好ましい。
【0035】
、R、R、R、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、または一価の置換基を表すが、該化合物を水溶性にするためにR、R、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは親水性基であることが好ましい。親水性基としては具体的にはカルボキシル基(COH)、その塩(対塩は限定されない。ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩などが好ましい。)、スルホ基(SOH)、その塩、水酸基、アミノ基、(ポリ)エチレンオキシ基、(ポリ)プロピレンオキシ基などが挙げられ、カルボキシル基(COH)またはその塩がより好ましい。
親水性基は、分子内に1以上導入することで水溶性を付与することによって水溶性とすることができる。また、一般式(i)中のR、Rの位置に親水性基を導入することが、合成の容易性、コストの観点から好ましい。
【0036】
その他、R、R、R、R、R、R、R、及びRが1価の置換基を表す場合の、1価の置換基としては、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、スルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、カルボキシル基又はスルホ基などが挙げられ、なかでも、好ましくは、アルキル基、ハロゲン原子である。
【0037】
なお、一般式(i)におけるR、R、R、R、R、R、R、及びRが1価の置換基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数1〜4個のものがより好ましい。
同様に、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基のような炭素数1〜4個のものが好ましく挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0038】
、R、R、及びRは、それぞれ隣接する2つが互いに連結、例えば、縮合、して環を形成していてもよい。
これらが環を形成する場合の環構造としては、5〜6員環の脂肪族環、芳香族環などが挙げられ、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。さらにこれらの環構造は、前記一般式(i)において、R乃至Rが1価の置換基を表す場合に例示した置換基をさらに有していてもよい。形成された環構造が複素環である場合のヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。
【0039】
n=1の場合、RまたはRと、RまたはRとは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。脂肪族環の環員数は、3〜6員環が好ましく、さらに好ましくは5員環、もしくは6員環が好ましい。
【0040】
より好適に用いることのできる増感色素としては、下記一般式(iA)で示される増感色素が挙げられる。
【0041】
【化3】

【0042】
前記式(iA)において、XはO又はSを表す。nは0又は1を表す。R1A、R2A、R3A、R4A、R5A、R6A、R7A、及びR8Aはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基(その塩を含む)又はスルホ基(その塩を含む)を表し、少なくとも1つがカルボキシル基(その塩を含む)又はスルホ基(その塩を含む)であることが好ましい。R1A、R2A、R3A、及びR4Aは、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。R5AまたはR6Aと、R7AまたはR8Aとは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0043】
さらに好適に用いることのできる増感色素としては、下記一般式(iB)で示される増感色素が挙げられる。
【0044】
【化4】

【0045】
前記式(iB)において、XはO又はSを表す。R1B、R2B、R3B、R4B、R5B、R6B、R7B、及びR8Bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基(その塩を含む)、カルボキシル基(その塩を含む)又はスルホ基を表し、少なくとも1つがカルボキシル基(またはその塩)又はスルホ基(またはその塩)であることが好ましく、少なくとも1つがカルボキシル基(またはその塩)であることがより好ましい。また、R1B、R2B、R3B、及びR4Bは、それぞれ隣接する2つが互いに連結(縮合)して環を形成していてもよい。R5BまたはR6Bと、R7BまたはR8Bとは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0046】
さらに好適に用いることのできる増感色素としては、下記一般式(iC)で示される増感色素が挙げられる。
【0047】
【化5】

【0048】
前記式(iC)において、R1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C、及びR8Cはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシル基、カルボキシル基(またはその塩)又はスルホ基(またはその塩)を表し、少なくとも1つがカルボキシル基(またはその塩)又はスルホ基(またはその塩)であることが好ましく、少なくとも1つがカルボキシル基(またはその塩)であることがより好ましい。
【0049】
1C、R2C、R3C、及びR4Cは、それぞれ隣接する2つが互いに縮合して5〜6員環の脂肪族環、芳香族環を形成していてもよく、これらの環は、炭素原子以外の元素を含む複素環であってもよく、また、形成された環同士がさらに組み合わさって2核環、例えば、縮合環を形成していてもよい。さらにこれらの環構造は、前記一般式(i)において、R、R、R、R、R、R、R、及びRが1価の置換基を表す場合に例示した各置換基をさらに有していてもよい。環構造が複素環の場合、ヘテロ原子の例としては、N、O、及びSを挙げることができる。R5CまたはR6Cと、R7CまたはR8Cとは互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【0050】
またR1C、R2C、R3C、R4C、R5C、R6C、R7C、及びR8Cの少なくとも一つはハロゲン原子であることが好ましい。好ましい置換位置としてはR1C、R2C、R3C、R4Cがあげられ、R2Cが最も好ましい。好ましいハロゲン原子の数としては好ましくは一つ、または二つ、さらに好ましくは一つである。
【0051】
2Cは水素以外の置換基であることが好ましく、中でもアルキル基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、が好ましく、特にアルキル基、ハロゲン原子が好ましく、光源とのマッチングがよく高感度である。
【0052】
7C及びR8Cのいずれかは水素以外の置換基であるほうが好ましく、両方とも水素以外の置換基であることがさらに好ましい。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基があげられ、中でもアルキル基、アルコキシカルボニル基が好ましく、アルキル基が最も好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0053】
アルキル基としては、炭素数1〜10個のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基のような炭素数が1〜4個のものがより好ましい。
【0054】
アシルオキシ基としては炭素数2〜10個の脂肪族アシルオキシ基が好ましく、炭素数が2〜5個の脂肪族アシルオキシ基がより好ましい。
アルコキシカルボニル基としては炭素数2〜10個の脂肪族アルコキシカルボニル基が好ましく、炭素数が2〜5個のアルコキシカルボニル基がより好ましい。
【0055】
本発明に好適に用いることのできる、特定増感色素の具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−28)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
なお、本発明に係る特定増感色素は、例えば、特開平2−255677号公報、特開2004−189695号公報特開2004−189695公報、「Tetrahedron」第49巻,p939(1993年)、「Journal of Organic Chemistry」 p893(1945年)、及び、「Journal of Organic Chemistry」 p4939(1965年)などに記載の公知の方法によって合成することができる。
【0061】
本発明の水性インク組成物における特定増感色素の含有量は、水性インク組成物に対して固形分で、0.05〜30質量%程度が好ましく、0.1〜20質量%であることがさらに好ましく、0.2〜10質量%であることがより好ましい。
なお、この特定増感色素は、可視光領域における吸収が殆どないため、効果を発現しうる量を添加しても水性インク組成物の色相に影響を与える懸念がないという利点をも有するものである。
含有量について、後述する重合開始剤との関連において述べれば、重合開始剤:特定増感色素は、質量比で200:1〜1:200、好ましくは、50:1〜1:50、より好ましくは、20:1〜1:5の量で含まれることが好適である。
【0062】
<その他の増感色素>
本発明においては、前記した特定増感色素に加え、公知の増感色素を本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。溶解性としては蒸留水に対して室温において、0.5wt%以上溶解するものが好ましく、1wt%以上溶解するものがより好ましく。3wt%以上溶解するものが特に好ましい。その他の増感色素は、特定増感色素に対して、特定増感色素:他の増感色素の質量比で1:5〜100:1、好ましくは、1:1〜100:1、より好ましくは、2:1〜100:1の量で添加することが可能である。
【0063】
併用しうる公知の増感色素の例としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、特にまたイソプロピルチオキサントン、アントラキノン及び3−アシルクマリン誘導体、ターフェニル、スチリルケトン及び3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ショウノウキノン、エオシン、ローダミン及びエリスロシンなどが挙げられる。
【0064】
併用可能な増感色素のさらなる例は、下記のとおりである。
(1)チオキサントン類
チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジ−エチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、n−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシミド、n−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド;
【0065】
(2)ベンゾフェノン類
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチルベンゼンメタンアミニウムクロリド;
【0066】
(3)3−アシルクマリン類
3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(プロポキシ)クマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3’−カルボニルビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3’−カルボニルビス(7−メトキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン;
【0067】
(4)3−(アロイルメチレン)チアゾリン類
3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレンベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン;
【0068】
(5)アントラセン類
9,10−ジメトキシ−アントラセン、9,10−ジエトキシ−アントラセン、9,10−ジメトキシ−2−エチル−アントラセン、
【0069】
(6)他のカルボニル化合物
アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、9,10−ナフトラキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、キサントン、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、α−(パラ−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、例えば、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン又は3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド。
【0070】
<(C)重合開始剤>
本発明の水性インク組成物は、(C)重合開始剤を含有する。
本発明においては、特定増感色素との組み合わせにおいて良好な重合開始能を有するものであればとくに限定されない。重合開始剤は水溶性であることが好ましい。水溶性の程度としては、25℃において蒸留水に0.5wt%以上溶解することが好ましく、1%以上溶解することが好ましく、3wt%以上溶解することが特に好ましい。
また、α−アミノケトン類及びアシルフォスフィンオキシド類からなる群より選択される重合開始剤を用いることが好ましい。
【0071】
α−アミノケトン系化合物としては、以下の一般式(1)で表される構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0072】
【化10】

【0073】
前記一般式(1)中、Arは、−SR13あるいは−N(R7E)(R8E)で置換されているフェニル基であり、ここで、R13は水素原子または、アルキル基を表す。
1DとR2Dはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基である。R1DとR2Dは互いに結合して炭素数2〜9のアルキレン基を構成してもよい。R3DとR4Dはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基、又は、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。ここで、R3DとR4Dとは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に、−O−あるいは−N(R12)−を含むものであってもよく、ここでR12は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
7EとR8Eは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ置換された炭素数2〜4のアルキル基、又は、炭素数3〜5のアルケニル基を表す。ここで、R7EとR8Eとは互いに結合して炭素数3〜7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に、−O−あるいは−N(R12)−を含むものであってもよい。ここで、R12は前記したものと同義である。
【0074】
前記α−アミノケトン類に包含される化合物の例としては、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。また、チバガイギー社製のイルガキュアシリーズ、例えばイルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379等の如き市販品としても入手可能であり、これらもα−アミノケトン類に包含される化合物であり、本発明に好適に使用しうる。
【0075】
アシルフォスフィンオキシド類に包含される化合物としては、下記一般式(2)又は、一般式(3)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0076】
【化11】

【0077】
前記一般式(2)中、R5D及びR6Dは、それぞれ独立に脂肪族基、芳香族基、脂肪族オキシ基、芳香族オキシ基、複素環基を表し、R7Dは、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表す。
【0078】
前記R5D、R6D、又はR7Dで表される脂肪族基は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基が好ましく、アルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
【0079】
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。また、前記アルキル基は、置換基を有するアルキル基、無置換のアルキル基のいずれであってもよい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0080】
前記置換アルキル基の置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、
【0081】
炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。その際、塩を形成するカチオンとしては、後述のM+等が挙げられる。
【0082】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、該アルケニル基は、置換基を有する置換アルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよく、置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルケニル基の場合と同様である。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0083】
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、該アルキニル基は、置換基を有する置換アルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよく、置換アルキニル基のアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアルキニル基の場合と同様である。置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0084】
前記アラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアラルキル基が挙げられ、該アラルキル基の炭素原子数としては、7〜35が好ましく、7〜25がより好ましい。また、該アラルキル基は、置換基を有する置換アラルキル基、無置換のアラルキル基のいずれであってもよく、置換アラルキル基のアラルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲はアラルキル基の場合と同様である。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0085】
前記R5D、R6D、又はR7Dで表される芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0086】
前記R5D、又はR6Dで表される脂肪族オキシ基としては、炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、オクチルオキシ基、フェノキシエトキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0087】
前記R5D、又はR6Dで表される芳香族オキシ基としては、炭素数6〜30のアリールオキシ基が好ましく、例えば、フェノキシ基、メチルフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、オクチルオキシフェニルオキシ基等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0088】
前記R5D、R6D、又はR7Dで表される複素環基としては、N、O又はS原子を含む複素環基が好ましく、例えば、ピリジル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピロリル基等が挙げられる。
【0089】
【化12】

【0090】
前記一般式(3)中のR8D、及びR10Dは、それぞれ独立にアルキル基、アリール基、複素環基を表し、R9Dは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環基を表す。前記R8D、R9D、又はR10Dで表される、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、前記一般式(2)における場合と同様の置換基が挙げられる。
【0091】
前記一般式(3)におけるアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基及びアリールオキシ基としては、前記一般式(2)における場合と同義である。
【0092】
なお、前記例示化合物中、例えば、[2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド]は、Darocur TPO(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)の商品名で入手可能であり、[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド]は、Irgacure 819(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製)の商品名で入手可能である。
【0093】
本発明の水性インク組成物における重合開始剤の含有量は、固形分換算で、0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.2〜20質量%の範囲であることがより好ましい。
【0094】
また本発明の水性インク組成物としては、水溶性のアシルフォスフィンオキシド類を用いることが、より好ましい。25℃において蒸留水に0.5wt%以上溶解することが好ましく、1%以上溶解することが好ましく、3wt%以上溶解することが特に好ましい。そのような水溶性アシルフォスフィンオキシド類としては、例えば特開2005−307199号公報に記載の化合物(例えば例示化合物5、6、7)が挙げられる。
【0095】
水溶性のアシルフォスフィンオキシド類の好ましい具体例を以下に挙げるが、これらに限定される物ではない。
【0096】
【化13】

例示化合物1−1
【0097】
【化14】

例示化合物1−2
【0098】
【化15】

例示化合物1−3
【0099】
〔他の重合開始剤〕
本発明の水性インク組成物は、重合開始剤として、上記したアシルフォスフィンオキシド類が重合開始剤として好ましいが、本発明の効果を損なわない限り、他の重合開始剤を用いてもよい。またアシルフォスフィンオキシド類との併用も可能である。この場合水溶性の重合開始剤を用いることが好ましい。水溶性は25℃において蒸留水に0.5wt%以上溶解することが好ましく、1%以上溶解することが好ましく、3wt%以上溶解することが特に好ましい。
【0100】
他の公知の重合開始剤としては、例えば、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、例えば、α−ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトン類又は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパノン、ジアルコキシアセトフェノン類、α−ヒドロキシ−又は4−アロイル−1,3−ジオキソラン類、ベンゾインアルキルエーテル類、及びベンジルケタール類、例えば、ベンジルジメチルケタール、グリオキサル酸フェニル及びその誘導体、二量体グリオキサル酸フェニル、ペルエステル類、例えば、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ペルエステル類(例えば、EP 1126,541に記載されるような)、ハロメチルトリアジン類、例えば、2−〔2−(4−メトキシ−フェニル)−ビニル〕−4,6−ビス−トリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−(4−メトキシ−フェニル)−4,6−ビス−トリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4,6−ビス−トリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−メチル−4,6−ビス−トリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共同開始剤系、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾールと組合せたオルト−クロロヘキサフェニル−ビスイミダゾール;フェロセニウム化合物又はチタノセン類(titanocenes)、例えば、ジシクロペンタジエニル−ビス(2,6−ジフルオロ−3−ピロロ−フェニル)チタン;例えば、GB 2,339,571に記載されるようなO−アシルオキシムエステル化合物との混合物を使用することもできる。共同開始剤として、ホウ酸化合物を使用することもできる。
【0101】
本発明の水性インク組成物における(C)重合開始剤の含有量は、(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜35質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部、さらに好ましくは0.5〜30質量部の範囲で含有されるのが適当である。なお、ここで重合開始剤の含有量とは、重合開始剤の総含有量を意味する。
【0102】
<(B)エチレン性不飽和二重結合を有する水溶性の重合性化合物>
本発明のインク組成物は、(B)エチレン性不飽和二重結合を有する水溶性の重合性化合物(以下、特定重合性化合物と称することがある)を含有する。特定重合性化合物は、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する水溶性の化合物であれば、どのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。特定重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。好ましくは2種以上併用して用いることが、反応性、物性などの性能を制御する上で好ましい。
【0103】
本発明で用いられる特定重合性化合物は、室温において蒸留水に少なくとも2wt%以上溶解するものであるが、15wt%以上溶解することが好ましく、任意の割合で水と均一に混合するものがとくに好ましい。
【0104】
特定重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらのエステル類、およびそれらの塩、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン、ビニルエーテル、アリルエーテル等が挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステル、塩が好ましい。
【0105】
本発明で用いられる特定重合性化合物は水溶性を付与するために、ポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖、あるいはイオン性基(例えばカルボキシル基、スルホ基など)を有することが好ましい。ポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖、を有する場合はエチレンオキシ、プロピレンオキシのユニットの数は1〜10の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5の範囲である。鎖が長いと、水溶性は得られるものの、硬化した時の皮膜の硬度や被記録媒体に対する密着性等が不足する。
【0106】
感度、滲み、記録媒体との密着性をより改善するためには、ラジカル重合性化合物として、モノアクリレートと、分子量400以上、好ましくは500以上の多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーを併用することが好ましい。特に、PETフィルムやPPフィルムといった柔軟な被記録媒体への記録に使用するインク組成物においては、上記化合物群の中から選ばれるモノアクリレートと、多官能アクリレートモノマー又は多官能アクリレートオリゴマーとの併用は、膜に可撓性を持たせて密着性を高めつつ、膜強度を高められるため好ましい。
さらに、単官能、二官能、三官能以上の多官能モノマーの少なくとも3種の重合性化合物を併用する態様が、安全性を維持しつつ、更に、感度、滲み、被記録媒体との密着性をより改善することができるという観点から好ましい。
【0107】
特定重合性化合物の特に好ましい具体例としては、例えば、以下に示す構造の化合物が挙げられるが、本発明で使用する特定重合性化合物はこれらに限定されるものではない。
【0108】
【化16】

例示化合物2−1
【0109】
【化17】

例示化合物2−2
【0110】
【化18】

例示化合物2−3
【0111】
【化19】


例示化合物2−4
【0112】
また例示化合物以外に、メタクリル酸、3-スルホプロピルアクリレートのカリウム塩などのイオン性基を有する化合物も好ましく用いられる。
【0113】
<(D)水>
本発明の水性インク組成物において、主たる溶媒として用いる水は、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。 本発明のインク組成物における水の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
【0114】
<(E)着色剤>
本発明においては、(E)着色剤を添加することで、硬化可能な着色された放射線硬化型の水性インク組成物が得られ、マルチカラーに対応したインクジェット記録方式に適用することで、多彩な画像形成を行うことが出来る。本発明にかかる、放射線硬化型の水性インク組成物に好適に使用することのできる着色剤の基本的な要素としては、水性インク組成物を放射線の照射によって硬化させるために、(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物や、(D)重合開始剤との相溶性が満足されることが好ましい。具体的には、アニオン性の解離基を持つような、水性顔料分散体もしくは水性染料がより好適に用いられる。
【0115】
(アニオン性水性顔料分散体)
ブラック顔料としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒子径が15〜40μm、BET法による比表面積が50〜300m/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2〜9等の特性を有するものが好ましく用いられる。この様な特性を有する市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上三菱化学製)、RAVEN 1255(以上コロンビア製)、REGAL400R、REGAL330R、REGAL 660R、MOGUL L(以上キャボット製)、Color Black FW1、Color Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上デグッサ製)等があり、いずれも好ましく使用することができる。
【0116】
イエロー顔料としては、例えば、ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー2、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー55、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー75、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー98、ピグメントイエロー109、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー114、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155及びピグメントイエロー180等が挙げられる。
【0117】
マゼンタ顔料としては、例えば、ピグメントレッド5、ピグメントレッド7、ピグメントレッド12、ピグメントレッド48(Ca)、ピグメントレッド48(Mn)、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド57(Sr)、ピグメントレッド57:2、ピグメントレッド122、ピグメントレッド123、ピグメントレッド168、ピグメントレッド184、ピグメントレッド202及びピグメントレッド238等が挙げられる。
【0118】
シアン顔料としては、例えば、ピグメントブルー1、ピグメントブルー2、ピグメントブルー3、ピグメントブルー16、ピグメントブルー22、ピグメントブルー60、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、バットブルー4及びバットブルー60等が挙げられる。
【0119】
顔料粒子の平均粒子径は、25nm〜200nm程度の範囲が好適である。この範囲は印刷物の用途にも依存するが、可視光線の波長よりも十分に小さいので、散乱が少なければ十分に透明と言える印刷物が与えられる。
【0120】
(アニオン性水性染料)
着色剤として染料を用いた場合は、上記の顔料を用いた場合とは異なり、放射線照射による退色が全く無い状態で使用することは困難であり、多少は退色を伴う。この理由から、インクの着色剤として染料を適用する場合には、金属イオンで錯体を形成している、いわゆるアゾ含金染料を用いることが、退色が少ないので好ましい。しかし、退色の水準を問題にしなければ、一般の水溶性染料であっても、本発明の水性インク組成物として使用可能である。
【0121】
ブラック染料としては、例えば、Cr、Cu、Mn、Al、Zn、Fe等の多価金属が配位したモノアゾ錯体、ジスアゾ錯体や、非錯体系アゾブラック染料として、ダイレクトブラック17、ダイレクトブラック19、ダイレクトブラック51、ダイレクトブラック154、ダイレクトブラック174、ダイレクトブラック195等を好適に用いることができる。
【0122】
イエロー染料としては、例えば、アシッドイエロー11、アシッドイエロー17、アシッドイエロー23、アシッドイエロー25、アシッドイエロー29、アシッドイエロー42、アシッドイエロー49、アシッドイエロー61、アシッドイエロー71、ダイレクトイエロー12、ダイレクトイエロー24、ダイレクトイエロー26、ダイレクトイエロー44、ダイレクトイエロー86、ダイレクトイエロー87、ダイレクトイエロー98、ダイレクトイエロー100、ダイレクトイエロー130、ダイレクトイエロー132及びダイレクトイエロー142等が挙げられる。
【0123】
マゼンタ染料としては、例えば、アシッドレッド1、アシッドレッド6、アシッドレッド8、アシッドレッド32、アシッドレッド35、アシッドレッド37、アシッドレッド51、アシッドレッド52、アシッドレッド80、アシッドレッド85、アシッドレッド87、アシッドレッド92、アシッドレッド94、アシッドレッド115、アシッドレッド180、アシッドレッド254、アシッドレッド256、アシッドレッド289、アシッドレッド315、アシッドレッド317、ダイレクトレッド1、ダイレクトレッド4、ダイレクトレッド13、ダイレクトレッド17、ダイレクトレッド23、ダイレクトレッド28、ダイレクトレッド31、ダイレクトレッド62、ダイレクトレッド79、ダイレクトレッド81、ダイレクトレッド83、ダイレクトレッド89、ダイレクトレッド227、ダイレクトレッド240、ダイレクトレッド242及びダイレクトレッド243等が挙げられる。
【0124】
シアン染料としては、例えば、アシッドブルー9、アシッドブルー22、アシッドブルー40、アシッドブルー59、アシッドブルー93、アシッドブルー102、アシッドブルー104、アシッドブルー113、アシッドブルー117、アシッドブルー120、アシッドブルー167、アシッドブルー229、アシッドブルー234、アシッドブルー254、ダイレクトブルー6、ダイレクトブルー22、ダイレクトブルー25、ダイレクトブルー71、ダイレクトブルー78、ダイレクトブルー86、ダイレクトブルー90、ダイレクトブルー106及びダイレクトブルー199等が挙げられる。
【0125】
染料の水性インク組成物中の好ましい濃度は、水性インク組成物全量に対して質量基準で0.1〜10%の範囲である。濃度が低い場合には、例えば、いわゆる、濃度変調インクの淡色インクに好適に適用される。
【0126】
以下に、本発明の水性インク組成物に必要に応じて使用することができる成分について述べる。
<溶媒成分>
本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物には、溶媒成分を若干量添加することがより好ましい。溶媒成分を使用することにより、水性インク組成物に不揮発性を与え、粘度を低下させ、且つ、被記録媒体への濡れ性を与えることができる。
【0127】
また、顔料の分散安定性を保つことで水性インク組成物のノズルへの固着を抑制するなどの従来の目的のほかに、本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物のように、反応性が高く、架橋密度が大きくなる特定重合性化合物と、開始効率の高い重合開始剤とを組み合わせて使用する重合速度の速い系において、硬化収縮を緩和することにも効果が見られる。
更に、このような系である程度の重合が進むと、重合性化合物や重合開始剤の拡散が抑制され、最終の硬化率が上がらなくなることがあるが、その対策としても有効である。
【0128】
インクジェット記録方式による印刷物は、不特定多数の人の手に取られて観賞される機会も多く、十分な強度と柔軟性のある硬化皮膜が形成され、被記録媒体からの剥がれが起こらない等の堅牢性を有することは重要である。
【0129】
溶剤種としては、インクジェット記録適性においても高い実績を有するグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコールあるいはこれらの混合物から選択するのが好ましい。通常は水性インク組成物全体に対して、質量基準で0.5〜5%含有させる。
【0130】
<反応性の希釈剤成分>
本発明にかかる、特定重合性化合物、水溶性の重合開始剤を希釈する為の溶媒は、主として水を用いるが、それ以外に水溶性で重合反応性の低粘度モノマーを用いることができる。通常の溶媒でなく、こうした化合物を用いる利点は、これらの化合物は、放射線硬化させた後の固体中に可塑剤として残存することがないので、固体物性への影響が低減されることにある。
【0131】
このような目的で選択される反応性の希釈剤成分としては、例えば、アクリロイルモルホリンや、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルホルムアミド、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、単糖類のモノアクリレート、オリゴエチレンオキシドのモノアクリル酸エステル、及び2塩基酸のモノアクリル酸エステル等の化合物が挙げられる。
【0132】
<添加剤>
本発明において、放射線硬化型の水性インク組成物中に上記の化合物以外に任意の添加剤を含有してもよい。このような添加剤の例として、pH調整剤、レベリング剤、粘度調整剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、防腐剤、防かび剤等が含まれる。使用する場合には通常は水性インク組成物全体に対して、質量基準で0.1〜5%含有させる。
【0133】
<クリアな水性インク組成物とする場合の処方>
本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物は、前記したような着色剤を含有させることなく透明な形態とすることで、画像印刷への適性を被記録媒体に付与するためのアンダーコート、あるいは、通常のインクで形成した画像の表面保護、更には装飾や光沢付与を目的としたオーバーコート等の用途に使用できる。水性クリアインク組成物には、これらの用途に応じて、着色を目的としない無色の顔料や微粒子等を分散して含有させることもできる。これらを添加することによって、アンダーコート、オーバーコートいずれにおいても、印刷物の画質、堅牢性、施工性(ハンドリング性)等の諸特性を向上させることができる。
【0134】
そのようなクリアな水性インク組成物に適用する場合、特定重合性化合物の含有量が水性インク組成物全量に対して質量基準で10〜70%であることが好ましい。また、重合開始剤を、特定重合性化合物100質量部に対して1〜10質量部含有し、同時に、水性インク組成物100部に対して重合開始剤が0.5質量部以上含有されているように調製することが好ましい。
【0135】
<着色剤含有水性インク組成物における材料構成ならびに物性>
本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物に着色剤、例えば、顔料を使用する場合には、水性インク組成物中における純顔料分(表面処理剤や、分散剤を含まない)の濃度は、概ね、水性インク組成物全量に対して質量基準で0.3〜10%の範囲であることが好ましい。顔料の着色力は顔料粒子の分散状態にも依存するが、約0.3〜1%の範囲であると、淡色のインクとして利用される範囲となる。また、それ以上であると、一般のカラー着色用に用いられる濃度を与える。
【0136】
その他の配合量としては、水の量を、質量基準で、水性インク組成物全量に対して40〜90%の範囲とすることが好ましく、特には60〜75%の範囲とすることが好ましい。更に、水性インク組成物中における特定重合性化合物の含有量は、水性インク組成物全量に対して、質量基準で1%〜30%の範囲であることが好ましく、特には5〜20%の範囲であることが好ましい。重合開始剤は、特定重合性化合物の含有量にも依存するが、概ね、水性インク組成物全量に対して、質量基準で0.1〜7%であることが好ましく、特には0.3〜5%の範囲であることが好ましい。
【0137】
本発明の放射線硬化型の水性インク組成物をインクジェット記録方式に適用する場合、粘度としては、5mPa・s以上15mPa・s以下の範囲であることが好ましい。微細な高密度高駆動周波数ノズルを備えるインクジェット記録方式の場合には、その上限は、10mPa・sとなることが好ましい。
【0138】
また、表面張力については、普通紙に印字することも鑑みて、35mN/m(dyne/cm)以上50mN/m以下の範囲であることが好ましい。通常の水性インクジェットインクでは、表面張力を30mN/m程度の低い値に調整し、短時間の内に浸透させることによってブリード現象を抑制するが、この場合画像濃度の低下を伴う。これに対し、本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物では、硬化により水性インク組成物の流動を抑制可能なため、表面張力を高くしてインク滴をできるだけ被記録媒体表層に滞留させれば、ブリード、画像濃度ともに満足することが出来る。
【0139】
画像濃度を確保するためには更に、放射線照射時に、被記録媒体に対してインク滴がある程度濡れている必要があるため、表面張力の上限は50mN/m程度であることがより好ましい。
【0140】
<インクジェット記録方法>
次に、前記したような放射線硬化型の水性インク組成物をインクジェット方式により被記録媒体上に付与し、放射線を照射して硬化するためのインクジェット記録方法について説明する。
【0141】
[プリンタシステム]
本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物は、インクジェット吐出方式のヘッドに好適に用いられ、また、その水性インク組成物が収納されているインク収納容器としても、あるいは、その充填用のインクとしても有効である。特に、本発明は、インクジェット記録方式の中でもバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッド、記録装置に於いて、優れた効果をもたらすものである。
【0142】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、インクが保持されているシートや液路に対応して配置された電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させて、結果的にこの駆動信号に一対一対応し、インク内の気泡を形成出来るので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介してインクを吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4,463,359号明細書、同第4,345,262号明細書に記載されているようなものが適している。尚、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4,313,124号明細書に記載されている条件を採用すると、更に優れた記録を行うことができる。
【0143】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4,558,333号明細書、米国特許第4,459,600号明細書を用いた構成或いは、特許登録第2962880号、特許登録第3246949号、更には特開平11−188870号公報に記載されている大気連通方式の吐出方式にも本発明は有効である。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通すると吐出孔を電気熱変換体の吐出部とする構成(特開昭59−123670号公報等)に対しても、本発明は有効である。更に、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによって、その長さを満たす構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての構成のいずれでも良いが、本発明は、上述した効果を一層有効に発揮することができる。
【0144】
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。又、本発明は、適用される記録装置の構成として設けられる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助手段等を付加することは本発明の効果を一層安定できるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャピング手段、クリーニング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或はこれらの組み合わせによる予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードである。
【0145】
本発明の記録方法を実施するための記録装置は、図1のプリンタ正面の概略図に示したように、本発明の放射線硬化型の水性インク組成物を収容するインクタンク部1、記録を実際に行うヘッド部2(ここではヘッドを多数並べたマルチヘッドを用いている)、硬化のための紫外線照射を行うランプ部3、ヘッド部及びランプ部を駆動させる駆動部4、記録される被記録媒体を搬送する排紙部5が備わっている記録装置である。尚、これら以外に図1には示していないが、ワイピング部、キャッピング部、給紙部、駆動モーター部などを備えている。
【0146】
図1において、ヘッド部2は放射線硬化型の水性インク組成物の吐出のためのノズル部が各色につき左右対称に配置されており、ヘッド部2とランプ部3は一体となって左右に走査され、放射線硬化型の水性インク組成物を被記録媒体に付与後、即座に紫外線照射が為される(ランプの詳細については後述する)。そのため、この記録装置を用いると、普通紙記録におけるインク滴の滲みやカラー間のブリード等が効果的に抑制され、また、堅牢性にも優れる画像の形成を実現するインクジェット記録方法が得られる。
【0147】
また、インクタンク部1はここではブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色が配置されているが、より高精細な画像を記録するためにライトシアン(LC)やライトマゼンタ(LM)の6色を配置してもよい。また、ブラックの反応性が他の色に比べて劣るのでシアン、マゼンタ、イエローを組み合わせたプロセスブラックを形成する3色の配置でもよい。本発明においてタンクは光を遮光できるものを用いる。
【0148】
なお、本発明においては、上記した記録システムの他にもランプが排紙部前面に配されたものや、給紙・排紙が回転ドラムに巻きつけられて行われるもの、乾燥部を別途設けたものなど適宜選ぶことができる。
【0149】
<紫外線照射ランプ>
以下、本発明にかかる放射線硬化型の水性インク組成物の硬化において、特に好適に使用される、紫外線照射ランプについて説明する。紫外線照射ランプは、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、蛍光体が塗布された水銀灯等が好ましい。これらの水銀ランプの紫外線領域の発光スペクトルは、450nm以下、特には184nm〜450nmの範囲であり、黒色或いは、着色された水性インク組成物中の重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。また、電源をプリンタに搭載する上でも、小型の電源を使用できるので、適している。水銀ランプには、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、UVレーザー等が実用されており、発光波長領域としては上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状等が許されれば、基本的には適用可能である。光源は、用いる重合開始剤の感度にも合わせて選択する。
【0150】
必要な紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において500〜5000mW/cmであることが好ましい。積算強度が弱いと高い品位、堅牢性を有する画像の形成が達成されない。また、照射強度が強すぎると、被記録媒体がダメージを受けたり、色材の退色を生じたりすることがある。
【実施例】
【0151】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例における形態に限定されるものではない。なお、以下の実施例は各色のUVインクジェット記録用の水性インク組成物に係るものである。また、以下の説明においては、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0152】
〔実施例1〕
以下の成分を高速水冷式撹拌機により撹拌し、UVインクジェット記録用の水性インク組成物を得た。
(水性インク組成物)
・Pigment Blue 15:3 顔料分散体(顔料10%) 40.0部
・重合性化合物:例示化合物2−3 15.0部
・重合開始剤:例示化合物1−1 1.5部
・増感色素:例示化合物I−1 0.5部
・反応性希釈剤:アクリロイルモルホリン 5.0部
・水素供与剤:トリエタノールアミン 0.5部
・イオン交換水 37.5部
・2N 水酸化ナトリウム水溶液 pH 8.5に調整される量
【0153】
<水性インク組成物の評価>
得られた水性インク組成物をポリ塩化ビニル製のシート上に印刷し、そして鉄ドープ処理した紫外線ランプ(パワー120W/cm)の光線下で、所望の積算露光量(表2に記載)になるように搬送速度を変更して通過させることにより照射を行って硬化させ、印刷物を得た。水性インク組成物および印刷物の評価結果を表2に示す。
【0154】
−感度−
硬化における露光エネルギーを光量積算計(EIT社製UV PowerMAP)により測定した。その結果、シート上での紫外線の積算露光量は約330mJ/cmであり、高感度で硬化していることが確認された。なお、硬化性は印刷物の表面べとつきの有無で判断し、印刷直後に普通紙(富士ゼロックス社製コピー用紙C2)を押し付け、着色液の移りが起きる場合は硬化性不良、移りが起きない場合は良好とした。
【0155】
−吐出安定性−
得られた水性インク組成物を室温で4週間保存後、ピエゾ型インクジェットノズルを有するインクジェット記録装置を用いて被記録媒体への記録を行い、常温で48時間連続印字したときの、ドット抜けおよびインクの飛び散りの有無を目視にて観察し、下記基準により評価した。結果を表2に示す。
○:ドット抜けまたはインクの飛び散りが発生しないか、発生が3回以下。
△:ドット抜けまたはインクの飛び散りが4〜10回発生。
×:ドット抜けまたはインクの飛び散りが11回以上発生。
【0156】
評価に使用したインクジェット記録装置のインク供給系は、元タンク、供給配管、インクジェットヘッド直前のインク供給タンク、フィルター、ピエゾ型のインクジェットヘッドから成り、インク供給タンクからインクジェットヘッド部分までを断熱および加温を行った。温度センサーは、インク供給タンクおよびインクジェットヘッドのノズル付近にそれぞれ設け、ノズル部分が常に40℃±2℃となるよう、温度制御を行った。ピエゾ型のインクジェットヘッドは、8〜30plのマルチサイズドットを720×720dpiの解像度で射出できるよう駆動した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。
【0157】
〔実施例2〜7、比較例1〜6〕
下記表1および表2の組成の混合物を高速水冷式撹拌機により撹拌し、UVインクジェット用インク組成物を得た。pHは、2N水酸化ナトリウム水溶液にて8.5に調整した。実施例1と同様に行った水性インク組成物および印刷物の評価結果を表3に示す。表1、および表2で用いた比較化合物3−1は下記の〔化20〕である。
【0158】
【化20】

【0159】
【表1】

【0160】
【表2】

【0161】
【表3】

【0162】
表2に示すとおり、本発明の特定増感色素を用いた実施例1〜7は、増感色素を使用していない比較例1、3、および5に比べて、低い露光量でも硬化性が良好であることがわかる。また一般に使用されているチオキサントン化合物(比較化合物3−1)を増感色素として用いた比較例2、4、および6に比べて、吐出安定性が良好であることがわかる。また、実施例1と実施例5の比較により、カルボキシル基を有する増感色素を用いた場合のほうが吐出安定性に優れることがわかる。また実施例1と実施例4の比較より、ハロゲン原子を有する増感色素を用いたほうが硬化性に優れることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、プリンタ正面の概略図である。 1: インクタンク部 2: ヘッド部(ここではマルチヘッドを用いている) 3: 紫外線照射ランプ部 4: 駆動部 5: 排紙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)下記一般式(i)で示される増感色素、(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物、(C)重合開始剤、および(D)水、を含有する水性インク組成物。
【化1】


前記式(i)において、Xは、O、S、又は、NRを表す。nは、0または1の整数を表す。Rは水素原子、アルキル基、およびアシル基を表す。
、R、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子、または一価の置換基を表す。R、R、R、及びRは、それぞれ隣接する2つが互いに連結して環を形成していてもよい。RまたはRと、RまたはRとは、互いに連結して脂肪族環を形成してもよいが、芳香族環を形成することはない。
【請求項2】
前記一般式(i)で示される化合物におけるR、R、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つが、カルボキシル基(その塩を含む)を有する置換基である請求項1に記載の水性インク組成物。
【請求項3】
前記(B)エチレン性不飽和結合を有する水溶性の重合性化合物が、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、ポリ(アルキレンオキシ)基を有し、且つエチレン性不飽和基を有する化合物からなる群から選ばれた1種以上である請求項1または請求項2の水性インク組成物。
【請求項4】
(C)重合開始剤が、水溶性である重合開始剤である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
【請求項5】
(C)重合開始剤が、α−アミノケトン類、及びアシルフォスフィンオキシド類からなる群より選択される1種以上である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
【請求項6】
さらに、(E)着色剤 を含有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
【請求項7】
インクジェット記録用である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
【請求項8】
(a)被記録媒体上に、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の水性インク組成物を吐出する工程、
及び(b)吐出された水性インク組成物に活性放射線を照射して、水性インク組成物を硬化する工程、
を含むインクジェット記録方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−24276(P2010−24276A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184510(P2008−184510)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】