説明

水性吸入用医薬組成物

【課題】ポリペプチド又はタンパク質を含む水性吸入医薬組成物の提供。
【解決手段】(1)治療有効量のポリペプチド又はタンパク質(例えばインスリン等)、(2)水性媒体及び(3)L−α−リゾホスファチジルコリン(LPTC)及びこれらの誘導体(例えばラウロイル置換体、パルミチル置換体等)、並びに水性界面活性剤(例えばトゥイーン20,トゥイーン80等)からなる群から選択される吸収促進剤を含む水性吸入医薬組成物。
【効果】ポリペプチド及びタンパク質の生体利用性を向上させ、肺における毒性の誘起を回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド又はタンパク質を含む水性吸入用医薬組成物に関する。
本発明の組成物はポリペプチド及びタンパク質の生体利用性を改善し、肺における毒性を低下させることができる。
【背景技術】
【0002】
大部分の経口投与のポリペプチド及びタンパク質(インシュリン等)薬剤は、そこに含有されるポリペプチド及びタンパク質が胃で容易に分解されて、及び/又は、それらの大きな分子の大きさ及びそれらの親水性のために腸管粘膜細胞に浸透することができず、十分に吸収することができないことが分かっている。たとえポリペプチド及びタンパク質が吸収されることができるとしても、それらは、肝臓での初回通過効果をほとんど回避することができない。従って、全てのポリペプチド及びタンパク質薬剤の生体利用性は、良好な治療効果を達成するには低すぎる(<2%)(A. E. Pontiroliら, Clin. Pharmacokinet., 17(5): 299-307 1989)。上記を考慮して、ポリペプチド及びタンパク質薬剤は、一般に、注射により投与される。しかし、この投与方法は、長期の治療を必要とする患者に、彼らの順応性にひどく影響を及ぼすこととなる、多くの苦痛を与える。このようにして、非経口投与方法、例えば、鼻、頬、肛門、目、及び肺からの投与、が発展してきた。
【0003】
肺粘液は良好な吸収及び浸透性を与える、大きな表面積を有するので、ポリペプチド及びタンパク質薬剤は、肺粘液を通して急速に吸収されうる。この方法は、肝臓の初回通過効果と同様に、胃及び腸におけるポリペプチド及びタンパク質薬剤の破壊又は代謝を回避することができるだけでなく、薬剤の生体利用性を増加させて、患者の利便性と順応性を向上させることができる(Z. Shaoら, Pharm. Research, Vo. 11, No. 2, p. 243-250, 1994)。更に、上記薬剤は、注射により発生する副作用を低下させるべく、主要な対象器管に直接入ることができる。従って、肺送達は、ポリペプチド及びタンパク質薬剤のために最も高いポテンシャルを有する。
【非特許文献1】A. E. Pontiroliら, Clin. Pharmacokinet., 17(5): 299-307 1989
【非特許文献2】Z. Shaoら, Pharm. Research, Vo. 11, No. 2, p. 243-250, 1994
【非特許文献3】Pattonら、Clin. Pharmacokinet, 2004: 43(12) 781-801
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしなから、Pattonら(Clin. Pharmacokinet, 2004: 43(12) 781-801)が記述する通り、肺吸収された物質中の吸収促進剤は薬剤の吸収を改善することができるが、肺において毒性を引き起こす場合がある。例えば、吸収促進剤は肺の好酸球の増加を促進し、結果としてアレルギー性反応を引き起こす場合があり、又は、好中球の増加を引き起し、肺における急性炎症を誘起する場合がある。さらには、吸収促進剤は、血液中に、乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の生産、及び/又は、タンパク質の浸入を増加させ、肺組織及び細胞において中毒反応又は障害を引き起こす場合がある。
【0005】
本発明は、ポリペプチド又はタンパク質の水性吸入用医薬組成物であって、向上した生体利用性、及び、低下した肺毒性を有するものを提供する。
【0006】
本発明の1つの目的は、肺におけるポリペプチド又はタンパク質の吸収を増加させることができる水性吸入医薬組成物を提供することである。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、糖尿病を治療するための水性吸入用医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の水性吸入医薬組成物は、
(i)治療的有効量のポリペプチド又はタンパク質;
(ii)水性媒体;及び
(iii)L-α-リゾホスファチジルコリン(LPTC)及びこれらの誘導体、並びに水性界面活性剤からなる群から選択される吸収促進剤を含む。
【0009】
ここに使用される用語「吸入医薬組成物」は、口又は鼻を通して吸入されることができ、そして、そこに含有される有効成分は、肺を介して吸収される医薬組成物を表す。
【0010】
ここに使用される用語「治療的有効量」は、障害を軽減又は排除するための前述の治療が必要な個人における、このような障害に対する有利な効果を引き起こし得る有効成分の提示された量を表す。上記障害が糖尿病であるとき、上記用語は、血液中のグルコース濃度を効果的に低下させることができる量を表す。
【0011】
ここに使用される用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、少なくとも10の天然又は非天然のアミノ酸残基、好ましくは、20から60の天然又は非天然のアミノ酸残基を有するポリペプチド又はタンパク質を表す。本発明のために適切なポリペプチド及びタンパク質は以下を含むが、これらに限定されない:パラトルモン、パラトルモンアンタゴニスト、カルシトニン、バソプレシン、レニン、プロラクチン、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、コルチコトロピン、コルチコトロピン-放出因子、卵胞刺激ホルモン、黄体ホルモン、胎盤性性腺刺激ホルモン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、インターフェロン、組織プラスミノーゲン活性化因子、γ-グロブリン、第VII因子、第VIII因子、成長ホルモン-放出ホルモン、黄体ホルモン-放出ホルモン、成長ホルモン放出-抑制因子、コレシストキニン、インシュリン、及び、それらの類似体、ここでは、インシュリンが好ましい。
【0012】
ここに使用される用語「インシュリン」は、天然、又は、組み換え型の哺乳類のインシュリン(例えば、ウシ、ブタ、又はヒトインシュリン)を表す。ヒトインシュリンは20のアミノ酸を有するA鎖と20のアミノ酸を有するB鎖を含むタンパク質が、3つのジスルフィド結合によって架橋されているものである。
【0013】
ここに使用される用語「類似体」は、そのポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列における1以上のアミノ酸が、変性されている(例えば、欠失し、及び/又は、置換される)もの、及び/又は、1以上のアミノ酸が、ポリペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列に挿入されているものを表す。しかし、変性、及び/又は、挿入はポリペプチド又はタンパク質の活性に実質的に影響を及ぼさない。
【0014】
ここに使用される用語「水性媒体」は、上記有効成分を溶解することができる、水を含有した媒体を表す。水性媒体は、有効成分の治療効果に実質的に影響を及ぼさず、そして、治療される被検体に望まれていない副作用を引き起こすことはないであろう。本発明のために適切な水性媒体は、以下を含むが、これらに限定されない:塩化ナトリウム溶液、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、及びポリオール、ここでは、塩化ナトリウム溶液が好ましい。
【0015】
本発明の組成物は、更に1以上の緩衝剤を含んでもよい。上記緩衝剤は、組成物のpHを所望の範囲に、効果的に維持することができる、あらゆる、従来からある化合物であってよい。本発明のための適切な緩衝剤は、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、トロメタミン、アルギニン、及びヒスチジンを含むが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の組成物は、更に1以上のpH調整剤を含んでもよい。本発明のための適切なpH調整剤は、塩酸、水酸化ナトリウム、乳酸、酒石酸、コハク酸、及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の組成物のpH値は、上記有効成分の物理化学的特性に依存して、約2.0から約9.0に調整されてもよい。好ましいpH値は、約7.0から約8.0である。
【0018】
ここに使用される用語「吸収促進剤」は、肺を介する有効成分の吸収を向上させることができる化合物を表す。上記吸収促進剤は、上記水性媒体と適合性があり、治療される被検体に望まれていない副作用をもたらさないであろう。
【0019】
本発明によると、吸収促進剤は、L-α-リゾホスファチジルコリン(LPTC)、及びその誘導体、並びに水溶性界面活性剤からなる群から選択される。
【0020】
ここに使用される用語「L-α-リゾホスファチジルコリン(LPTC)誘導体」は、6から20の炭素原子を有するアルキルカルボニル基により置換されたLPTC、例えば、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミチル又はステアロイル基により置換されたLPTCを表す。
【0021】
ここに使用される用語「水溶性界面活性剤」は、あらゆる従来からあるアニオン性、カチオン性、両性、及び非イオン性界面活性剤、例えば、トゥイーン-シリーズ界面活性剤を表し、ここでは、トゥイーン-20及びトゥイーン-80がより好ましく、そして、トゥイーン-80が最も好ましい。
【0022】
本発明の組成物によって提供される浸透圧は、好ましくは約270から約330mOsm/kgである。
【0023】
本発明の組成物におけるポリペプチド又はタンパク質の量は、約0.05から約20.0mg/ml、好ましくは約1.0から約15.0mg/ml、より好ましくは約1.0から約5.0mg/ml.である。
【0024】
本発明の組成物における吸収促進剤の量は、約0.001から約10mg/ml、好ましくは約0.01から約5mg/ml、より好ましくは約0.1から約5.0mg/mlである。
【0025】
本発明の組成物は、液体ネブライザー等の、様々な、従来からある吸入装置により投与することができる。上記吸入装置は、空気動力学的粒径(MMAD)が約1から約10μm未満、又はMMADが約1から約5μm未満、好ましくは約1から約3μm未満のサイズを有している粒子等の、小さな粒子を送達することが可能でなければならない。本発明を実施するために適切な吸入装置は、以下の市販の吸入装置を含むが、これらに限定されない:
ジェット ネブライザー-Pulmo-Aide(登録商標) 5650D(DEVILBISS(登録商標)社製)、
超音波ネブライザー、モデルNE520(DEVILBISS(登録商標)社製)、
Medisana(登録商標) Ultra-S(MEDISANA(登録商標)社製)、
Ultraventネブライザー(Mallinckrodt社製)、
Acorn II ネブライザー(Marquest Medical Products社製)、及び
メッシュネブライザー(OMRON(登録商標)社製)、
並びに、国際出願98/48873、国際出願99/07340、米国特許出願2002/0124852A1、米国特許出願20030064032A1、及び、米国特許出願2004/0089290に開示されるもの。
【0026】
障害の重症度、組成物の特性、ポリペプチド又はタンパク質の効力、及び投与装置に依存して、本発明の組成物の規定の投与量は、医師によって決定、及び、変更されてもよい。一般に、治療が必要な被検体は、効果的に障害を治療するには、毎日1から約3回、任意にはより多くの投与を受けるものとする。
【0027】
以下の実施態様はさらに本発明を例示することを目的としており、本発明を限定することを目的としない。明細書の教示に基づく、当業者によるあらゆる変更及び応用は、本発明の範囲内にある。
【実施例1】
【0028】
異なるpH値におけるヒトインシュリンの安定性
ヒトインシュリン(シグマ、ロット081K13562)を、それぞれ、pH 3.0、4.5、6.0、7.5、及び9.0の異なる緩衝液に加え、ヒトインシュリン1mg/mlを含有するヒトインシュリン溶液を配合した。フィルタ膜(Supor Acrodisc 13)でろ過した後に、各々の溶液におけるヒトインシュリンの初期濃度を、高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を使用することにより、測定した。それぞれの溶液をバイアルに分け、キャップをし、上記バイアルを、その後、それぞれ、4℃、25℃、及び37℃において保存した。各々のバイアルにおけるヒトインシュリンの残余の量を、1カ月後に測定した。結果を、下記の表1に示した。
【表1】

【0029】
表1の結果によると、ヒトインシュリン溶液は4℃で最も安定していて、25℃では安定度が劣り、37℃で最も不安定であることがわかった。更に、ヒトインシュリンはpH 7.5の溶液において最も安定していて、pH 6.0及びpH 9.0において安定度が劣ることがわかった。
【実施例2】
【0030】
肺吸収促進剤のインビボ生体利用性及び毒性の研究
1. 配合物
配合物A:リン酸塩50mM、塩化ナトリウム100mM、pH 7.5。
配合物B:ヒトインシュリン(5.0IU/ml(0.2mg/ml))、リン酸塩50mM、塩化ナトリウム100mM、pH 7.5;最終的に投与されたヒトインシュリン濃度:2IU/kg(0.08mg/kg)。
配合物C:ヒトインシュリン(10.0IU/ml(0.4mg/ml))、リン酸塩50mM、塩化ナトリウム100mM、pH 7.5;最終的に投与されたヒトインシュリン濃度:4IU/kg(0.16mg/kg)。
配合物D:ヒトインシュリン(10.0IU/ml(0.4mg/ml))、LPTC-ラウロイル(L-LPTC;(1.0 mg/ml)), リン酸塩50mM、塩化ナトリウム100mM、pH 7.5;最終的に投与されたヒトインシュリン濃度:4IU/kg(0.16mg/kg)。
配合物E:ヒトインシュリン(10.0IU/ml(0.4mg/ml))、LPTC-パルミチル(P-LPTC;(0.5 mg/ml)), リン酸塩50mM、塩化ナトリウム100mM、pH 7.5;最終的に投与されたヒトインシュリン濃度:4IU/kg(0.16mg/kg)。
配合物F:ヒトインシュリン(5.0 IU/ml (0.2 mg/ml))、LPTC-ヘキサノイル(C-LPTC;(0.5 mg/ml)), リン酸塩50mM、塩化ナトリウム100mM、pH 7.5;最終的に投与されたヒトインシュリン濃度:2IU/kg(0.08mg/kg)。
配合物G:ヒトインシュリン(5.0IU/ml(0.2mg/ml))、トゥイーン-80(10mg/ml)、リン酸塩50mM、塩化ナトリウム100mM、pH 7.5;最終的に投与されたヒトインシュリン濃度:2IU/kg(0.08mg/kg)。
【0031】
2. 動物モデル
200-250gの重量を有するSD雄ラットを、7つの群にランダムに分けた。Enna、S.T.ら(J. Physiol.、1972、222:409-414)において開示される方法に従って、ラットにペントバルビタールナトリウム(28.6ml/kg)の腹部への注射により麻酔をした後、切除した頸部より、カテーテルを気管及び左側の大腿部の動派にそれぞれ挿入した。
群1は、対照群であり、それぞれのラットに配合物Aのみを投与した。
群2と3のラットには、それぞれ、ヒトインシュリンを含有するが、吸収促進剤を含有しない配合物B及びCを投与した。
群4から7のラットには、それぞれ、ヒトインシュリン及び吸収促進剤を含有する配合物DからGを投与した。
【0032】
0、5、15、30、60、90、120、180、240及び300分に亘り、肺に配合物を投与した後、
血液試料0.25mlを、各々のラットから集めた。5時間に亘る肺投与の後、過剰量のペントバルビタールナトリウム(3ml)を、ラットの大腿部の動派に注射した。5分後に、ラットから採血し、それから、リン酸緩衝液溶液による肺潅流をおこなった。
【0033】
3.血奬中のインシュリン濃度の決定
集めた血液試料を、15分間4℃において3000rpmで遠心分離した。血漿の上層を集めた。血漿の上層サンプルにおけるグルコース濃度を、血糖アナライザー(YSI 2300 STAT PLUS、SMARTEC SCIENTIFIC CORP.社製)を利用して決定した。
結果を図1に示した。血漿の上層サンプルにおけるインシュリンの濃度を、ラットインシュリンエリッサキット(Rat Insulin ELISA Kit)(Mercodia社製)を利用して決定し、そして、吸収促進剤の薬物動態学的パラメーターをさらに分析した。結果を表2に示した。
【0034】
4. 血液中の総蛋白及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の分析
集めた第1の肺潅流サンプル5mlを、10分間、4℃において350×gで遠心分離した。
上澄みを集め、さらに30分間4℃において14300×gで遠心分離した。上澄みを、総蛋白及びLDH分析のために集めた。
【0035】
ビウレット反応(イギリス薬局方、p. A23(1998))の染色原理に基づき、総蛋白の量を、日立7150自動分析器により、OD546の値を測定することにより決定した;
その後、値をタンパク質の濃度に変換した(結果は、表3に示す)。
【0036】
GSCC(ドイツ臨床化学協会; ドイツ臨床化学協会推奨規格:Z. Klin. Chem. Klin. Biochem.、10、287-288、1972)の標準作業手順書に基づき、LDHの活性を、日立7150自動分析器により、OD340の変化を測定することにより決定した;その後、その変化をLDHの活性に変換した(結果は、表3に示す)。
【0037】
5.細胞数の総数及び細胞分化の分析
集めた第2、第3、及び第4の肺潅流サンプルを、10分間、4℃において、350×gで遠心分離した。沈殿物を集め、そして、遠心分離した第1の肺潅流サンプルから集めた沈殿物と混合した。それぞれの沈殿物を、リン酸緩衝液溶液(1ml)中で再懸濁した。各々のサンプルにおける細胞数の合計及び細胞分化を、ADVIA120測定器により自動的に計算し、分析した(結果は、表3に示す)。
【0038】
6.結果と考察
インシュリン投与量と血清における血糖濃度の減少の関係が、図1及び表2の結果より分かる。インシュリンの投与量が2IU/kg(0.08mg/kg)及び4IU/kgであるとき(0.16mg/kg)、
作用線下面積(AUEC)の平均は、それぞれ5207mg/dl×min及び8281mg/dl×minであることが分かった。一方、表2の結果より、インシュリンの生体利用性が配合物への吸収促進剤の添加によって非常に増加しうることが分かる。とりわけ、トゥイーン-80の添加は84.6%の最大増加を示す。
【0039】
表3の結果は、LDHを除いて、配合物から得られる細胞の総数、マクロファージのパーセンテージ、好中球のパーセンテージ、好酸球のパーセンテージ、及び総蛋白の量を含む全てのパラメーター数が、統計学的に実質的に異ならないことを示す。インシュリン配合物(吸収促進剤の有無にかかわらず)はインシュリンのない対照群と比較してLDH活性を増加させるかもしれないが、吸収促進剤を有する配合物と吸収促進剤のない配合物の間のLDHの活性の差は、統計学的に有意でない。この結果は、トゥイーン-80とL-LPTCが肺における有毒な副作用を誘起しないだろうということを証明する。
【表2】

【表3】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】配合物BからGの投与後の、ラットの血漿中の、減少したグルコース濃度を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺におけるポリペプチド又はタンパク質の吸収を増加させるための水性吸入医薬組成物であって、
(i)治療的有効量のポリペプチド又はタンパク質;
(ii)水性媒体;及び
(iii)L-α-リゾホスファチジルコリン(LPTC)及びこれらの誘導体、並びに水性界面活性剤からなる群から選択される吸収促進剤
を含む水性吸入医薬組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチド又はタンパク質は、少なくとも10のアミノ酸残基を有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチド又はタンパク質は、20から60のアミノ酸残基を有する請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチド又はタンパク質は、パラトルモン、パラトルモンアンタゴニスト、カルシトニン、バソプレシン、レニン、プロラクチン、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、コルチコトロピン、コルチコトロピン-放出因子、卵胞刺激ホルモン、黄体ホルモン、胎盤性性腺刺激ホルモン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、インターフェロン、組織プラスミノーゲン活性化因子、γ-グロブリン、第VII因子、第VIII因子、成長ホルモン-放出ホルモン、黄体ホルモン-放出ホルモン、成長ホルモン放出-抑制因子、コレシストキニン、インシュリン、等である請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチド又はタンパク質はインシュリンである請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記水性媒体は塩化ナトリウム溶液である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
pH値を維持するための1以上の緩衝剤を更に含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
1以上のpH調整剤を更に含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
約7.0から約8.0のpH値を有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチド又はタンパク質の量は約0.05から約20.0mg/mlである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
約270から約330mOsm/kgの浸透圧を有する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記吸収促進剤は、6から20の炭素原子を有するアルキルカルボニル基により置換されるL-α-リゾホスファチジルコリン誘導体である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記L-α-リゾホスファチジルコリン誘導体は、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミチル又はステアロイル基により置換される請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記吸収促進剤は水溶性界面活性剤である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記水溶性界面活性剤はトゥイーン-20又はトゥイーン-80である請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記水溶性界面活性剤はトゥイーン-80である請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記吸収促進剤の量は、約0.001から約10mg/mlである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
糖尿病を治療するための水性吸入医薬組成物であって、
(i)治療的有効量のインシュリン、又はその類似体;
(ii)水性媒体;及び
(iii)L-α-リゾホスファチジルコリン(LPTC)及びこれらの誘導体、並びに水性界面活性剤からなる群から選択される吸収促進剤
を含む水性吸入医薬組成物。
【請求項19】
前記水性媒体は塩化ナトリウム溶液である請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
pH値を維持するための1以上の緩衝剤を更に含む請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
1以上のpH調整剤を更に含む請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
約7.0から約8.0のpH値を有する請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記インシュリン又はその類似体の量は約0.05から約20.0mg/mlである請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項24】
約270から約330mOsm/kgの浸透圧を有する請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記吸収促進剤は、6から20の炭素原子を有するアルキルカルボニル基により置換されるL-α-リゾホスファチジルコリン誘導体である請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記L-α-リゾホスファチジルコリン誘導体は、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ミリストイル、パルミチル又はステアロイル基により置換される請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記吸収促進剤は水溶性界面活性剤である請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記水溶性界面活性剤はトゥイーン-20又はトゥイーン-80である請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記水溶性界面活性剤はトゥイーン-80である請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記吸収促進剤の含量は、約0.001から約10mg/mlである請求項18に記載の医薬組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−161702(P2007−161702A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−184899(P2006−184899)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(506198263)財團法人生物技術開發中心 (5)
【Fターム(参考)】