説明

水性樹脂組成物、水性樹脂組成物の製造方法および金属塗料

【課題】塗布膜の外観が良好で且つ不飽和重合性モノマー重合体との配合安定性に優れた水性樹脂組成物、その製造方法および金属塗料を提供することを課題とする。
を提供することを課題としている。
【解決手段】水性樹脂組成物および金属塗料については、不飽和重合性モノマー重合体(A)が、カチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)で乳化されていることを特徴とし、製造方法については、不飽和重合性モノマー(a)とカチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)とを含有する溶液を水に分散する工程と、前記カチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)を水及び/又はポリアミンで鎖伸長することによりカチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)を乳化する工程と、前記不飽和重合性モノマー(a)を重合して不飽和重合性モノマー重合体(A)を生成する工程とを含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性樹脂組成物およびその製造方法、さらに水性樹脂組成物を含有する金属塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水性樹脂組成物の中でも、カチオン性基を含有するポリウレタン樹脂水性分散体は、従来から建築内装、皮革、金属、木材などの水性被覆組成物として広く使用されている(特許文献1)。
かかるカチオン性基含有ポリウレタン樹脂水性分散体は、一般的に、黄変が起こりやすく外観に影響があった。特に塗装後に高温条件下におくとにごりや黄変が目立つため、塗布後に高温乾燥ができず、塗膜形成時間を短縮することが困難である。
【0003】
また、耐候性や強靭性が要求される用途においては、カチオン性基含有ポリウレタン樹脂水性分散体と不飽和重合性モノマー重合体水性分散体を混合して使用する場合があるが、混合時の配合安定性が悪いためにゲル化や沈降が起こりやすく、界面活性剤などの乳化剤を添加する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2005/092998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の問題点に鑑み、本発明は、塗布膜の外観が良好で且つ不飽和重合性モノマー重合体との配合安定性に優れた水性樹脂組成物、その製造方法および金属塗料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
不飽和重合性モノマー重合体(A)が、カチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)で乳化されていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の水性樹脂組成物は、不飽和重合性モノマー(a)とカチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)とを含有する溶液を水に分散し、水及び/又はポリアミンで前記カチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)を鎖伸長してカチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)を乳化し、該乳化と同時に、または乳化後に、前記不飽和重合性モノマー(a)を重合して前記不飽和重合性モノマー重合体(A)とすることにより得られることが好ましい。
【0008】
本発明の水性樹脂組成物の製造方法は、 不飽和重合性モノマー(a)とカチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)とを含有する溶液を水に分散する工程と、
前記カチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)を水及び/又はポリアミンで鎖伸長することによりカチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)を乳化する工程と、前記不飽和重合性モノマー(a)を重合して不飽和重合性モノマー重合体(A)を生成する工程とを含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の金属塗料としては、前記の水性樹脂組成物を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性樹脂組成物は、不飽和重合性モノマー重合体(A)が、カチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)で乳化されているため、塗布後の皮膜に黄変や濁りが生じにくい。
また、不飽和重合性モノマー重合体との相溶性にすぐれているため、不飽和重合性モノマー重合体水性分散体と混合する場合に、乳化剤や分散剤を用いることなく、安定して分散させることができる。
尚、本発明の水性樹脂組成物は、前記のように塗布後の皮膜に黄変や濁りが生じにくいことから、特に、金属表面処理剤などの金属塗料として用いることに適している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、不飽和重合性モノマー重合体(A)が、カチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)で乳化されている水性樹脂組成物に関するものである。
【0012】
<不飽和重合性モノマー重合体(A)>
本発明の不飽和重合性モノマー重合体(A)は不飽和重合性モノマー(a)から構成される。
本発明の不飽和重合性モノマー重合体(A)を構成する不飽和重合性モノマー(a)としては、カルボン酸基含有不飽和重合性モノマー、カルボン酸基含有不飽和重合性モノマーのアルキルエステル、ビニル化合物などが挙げられる。
【0013】
カルボン酸基含有不飽和重合性モノマーとしては、メタクリル酸を含む(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0014】
カルボン酸基含有不飽和重合性モノマーのアルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ビシクロ[3,3,1]ノニル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メトキシエチレングリコール(メタ) アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ) アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシエチレングリコール(メタ) アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ) アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ) アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ) アクリレート、エトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシプロピレングリコール(メタ) アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ) アクリレートなどのモノ(メタ)アクリル酸エステル、エチレングリコールジ(メタ) アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ) アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、などのジ(メタ)アクリレート化合物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート化合物、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート化合物、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのヘキサ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられる。
【0015】
カルボン酸基含有不飽和重合性モノマーのビニル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0016】
尚、各不飽和重合性モノマー(a)は、単独または2種以上を併用して用いることができる。
【0017】
前記不飽和重合性モノマー(a)を重合する際には、熱重合の他、公知の重合開始剤(c)を添加して重合反応をさせることができる。
重合開始剤(c)としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系開始剤;フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤などが使用できる。
または、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;、
過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどの過酸化物などの過酸化物系開始剤と、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩;硫酸水素ナトリウムなどの亜酸水素塩;硫酸第一銅、硫酸第一鉄などの金属塩;L−アスコルビン酸などの有機還元剤などの還元剤との組み合わせによるレドックス開始剤も利用できる。
また、重合方法としては、乳化重合などの公知の方法が用いられる。
重合温度は、前記重合開始剤の種類によって調整されるが、例えば20℃〜100℃が好ましい。
前記重合開始剤(c)の使用量は、通常、不飽和重合性モノマー(a)100重量部に対して、例えば0.005〜1%が適当である。
【0018】
本発明の水性樹脂組成物中に含まれるカチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)としては下記のものが使用される。
【0019】
<カチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)>
本発明で使用されるカチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)は、従来公知の方法で製造することができ、例えば、ポリオール化合物(b−1)、イソシアネート化合物(b−2)およびカチオン性基含有化合物(b−3)を反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)に含まれるカチオン性基を、酸で中和、または四級化剤で四級化し、水または/およびポリアミンで鎖伸長反応することにより得られる。
【0020】
(ポリオール化合物(b−1))
前記ポリオール化合物としては、分子量400以下の低分子量ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ひまし油系ポリオール、ポリカーボネートポリオール、又は炭化水素系ポリオールなどが挙げられる。
これらのポリオール化合物は、1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて用いられ得る。
【0021】
前記低分子量ポリオールは、分子量400以下のものであり、前記低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、又はトリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0022】
前記ポリエステルポリオールとしては、前記低分子量ポリオールと多価カルボン酸とを反応させてなる水酸基末端エステル化縮合物が挙げられる。
前記多価カルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフラン酸、エンドメチンテトラヒドロフラン酸、又はヘキサヒドロフタル酸などが挙げられる。
【0023】
前記ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノールAなどの前記低分子量ポリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、又はショ糖などにアルキレンオキサイドを付加重合したものが挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。
【0024】
前記ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、ひまし油に水素付加した水添ひまし油、ひまし油脂肪酸又はこれに水素付加した水添ひまし油脂肪酸を用いて製造されたポリオールなどが挙げられる。また、ひまし油と他の天然油脂とのエステル交換物、ひまし油と多価アルコールとの反応物、ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、又はこれらに前記アルキレンオキサイドを付加重合したポリオールなどが挙げられる。
【0025】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、従来公知のものが挙げられ、該ポリカーボネートポリオールは、例えば、前記低分子量ポリオールとジフェニルカーボネートとの反応により、又は、前記低分子量ポリオールとホスゲンとの反応により得られる。
【0026】
前記炭化水素系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、又は水添ポリイソプレンポリオールなどが挙げられる。
【0027】
(イソシアネート化合物(b−2))
前記イソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、および芳香脂肪族ポリイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。
前記イソシアネート化合物は、単独で、又は2種以上を組み合わされて用いることができる。
【0028】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0030】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
また、前記イソシアネート化合物は、前記ポリイソシアネートの2量体もしくは3量体、ビューレット化イソシアネート等の変性体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)などを用いることができる。
【0033】
前記イソシアネート化合物の中でも、水性樹脂組成物の黄変をより抑制できるという点で、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環族ポリイソシアネートが特に好ましい。
【0034】
(カチオン性基含有化合物(b−3))
前記カチオン性基含有化合物としては、例えば、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミン;N−メチルジアミノエチルアミン;N−エチルジアミノアミンなどのアルキルジアミノアルキルアミンなどが挙げられる。
また、これらを酸や四級化剤で四級化したものも使用することができる。
【0035】
尚、本発明でいうカチオン性基としては、例えば、三級アミノ基を酸で中和した、または四級化剤で四級化した四級アンモニウム基が挙げられる。
また、カチオン性基含有化合物(b−3)に関しては、四級アンモニウム基を形成しうる三級アミン基含有化合物であってもよい。
【0036】
前記ポリオール化合物(b−1)、イソシアネート化合物(b−2)およびカチオン性基含有化合物(b−3)を反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)を得るが、反応方法としては公知の方法で行うことができ、例えば、30℃〜130℃で
0.5時間〜10時間程度の反応条件で行うことができる。
【0037】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)に含まれているカチオン性基を中和する酸としては、塩酸および硫酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、マロン酸、アジピン酸などの有機酸が挙げられる。
【0038】
前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)に含まれるカチオン性基を四級化する四級化剤としては、塩化メチルおよび臭化メチルなどのハロゲン化アルキル、ジメチル硫酸およびジエチル硫酸などのジアルキル硫酸が挙げられる。
【0039】
前記のように、カチオン性基を中和または四級化されたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)を水、または水とポリアミンの混合物で鎖伸長してカチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)が形成される。
前記鎖伸長剤として水と混合されるポリアミンは、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタキシレンジアミン、トリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドのようなポリヒドラジド等が使用できる。
前記ポリアミン化合物は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、ポリマー化を大きく阻害しない程度に反応停止剤としてジブチルアミンなどのモノアミンやメチルエチルケトオキシムのような反応停止剤を使用してもよい。
また、前記ポリアミンと水の混合物を鎖伸長剤として使用することもできる。
【0040】
本発明の水性樹脂組成物は下記の方法で製造することができる。
前記ポリオール化合物(b−1)、イソシアネート化合物(b−2)およびカチオン性基含有化合物(b−3)を反応させてイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとし、これを5℃〜45℃に冷却して、酸または四級化剤を添加し、カチオン性基本含有イソシアネート基末ウレタンプレポリマー(b)を製造する。
尚、溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの任意の有機溶媒を使用することができる。
この場合、前記ポリオール化合物(b−1)、イソシアネート化合物(b−2)およびカチオン性基含有化合物(b−3)の混合比率は、前記イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの遊離のイソシアネート基含有量が、カチオン性基本含有イソシアネート基末ウレタンプレポリマー(b)に対して0.1〜10重量%、好ましくは、0.5〜5重量%になるように混合することが好ましい。
また、前記カチオン性基含有化合物(b−3)の混合比率は、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのアミン価が5〜80mgKOH/gとなるようにすることが好ましい。
続いて、カチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンポリマー(b)100重量部に対して不飽和重合性モノマー(a)を1〜900重量部添加し、均一溶液とした後、不飽和重合性モノマー(a)とカチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンポリマー(b)の合計量100重量部に対して水を100〜900重量部を添加することで乳化させ、必要によりポリアミンを添加して鎖伸長反応をすることによりポリウレタン樹脂(B)を得る。
さらに鎖伸長と同時または反応後に、不飽和重合性モノマー(a)を重合して不飽和重合性モノマー重合体(A)を生成し、有機溶媒を減圧留去することにより、本発明の不飽和重合性モノマー重合体(A)がカチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)で乳化されている水性樹脂組成物が製造される。
【0041】
本発明の水性樹脂組成物は、前記不飽和重合性モノマー重合体(A)と前記カチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)成分とが、重量比でA/B=90/10〜1/99であることが好ましく、80/20〜10/90であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、水性樹脂組成物の分散安定性がより向上すると共に、得られる皮膜の黄変をより抑制することができる
【0042】
さらに、本発明の水性樹脂組成物には、必要に応じて一般的に使用される各種添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、例えば、耐候剤、抗菌剤、抗カビ剤、顔料、充填材、防錆剤、顔料、染料、造膜助剤、無機架橋剤、有機架橋剤( 例えばブロックドイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系架橋剤) 、シランカップリング剤、ブロッキング防止剤、粘度調整剤、レベリング剤、消泡剤、分散安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機、有機充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
また、本発明の水性樹脂組成物は、一般の塗料として広く用いることができるが、特に金属表面処理剤などの金属塗料として使用するのに適している。
【実施例】
【0043】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明する。
まず、下記実施例および比較例の各水性樹脂組成物を準備する。
【0044】
(実施例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン33 重量部、b-2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート231重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸34.9重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル260重量部を加えた。続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0045】
(実施例2)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物(ニューポールBPE−40、三洋化成工業株式会社製)75.6重量部、トリメチロールプロパン7.30重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン2 8 . 0 重量部、ポリエチレングリコール(PEG−600S、第一工業製薬株式会社製)を53.2重量部b-2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを190.8重量部およびメチルエチルケトン266重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価37mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.2%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸17.8重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル372.7重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=50/50であった。
【0046】
(実施例3)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業株式会社製)43.6重量部、ビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物(ニューポールBPE−40、三洋化成工業株式会社製)18.7重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノールを1.5重量部、トリメチロールプロパンを5.7重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン23.7重量部、メトキシポリエチレングリコール(M−PEG CP−2500、第一工業製薬株式会社製)1.5重量部、ポリエチレングリコール(PEG−600S、第一工業製薬株式会社製)45重量部、b-2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート190.8重量部およびメチルエチルケトン266重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価34mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.0%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸17.8重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル325重量部を加えた。
続いて、水2000重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=50/50であった。
【0047】
(実施例4)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン33重量部、b-2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート231重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸34.9重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル208重量部およびアクリル酸n−ブチルを52重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0048】
(実施例5)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b−1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b−3成分としてN−メチルジエタノールアミン33重量部、b−2成分として4,4’−
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート231重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸34.9重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル208重量部およびアクリル酸2−エチルヘキシルを52重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0049】
(実施例6)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン33重量部、b−2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート231重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸34.9重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル247重量部およびトリエチレングリコールジメタクリレート13重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0050】
(実施例7)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてポリエステルポリオール(クラレポリオールP−520、株式会社クラレ製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン33重量部、b−2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート231重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸34.9重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル247重量部およびトリエチレングリコールジメタクリレート13重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0051】
(実施例8)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成品工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン33重量部、b−2成分として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート130重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸34.9重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル260重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0052】
(実施例9)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成品工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン33重量部、b−2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート231重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ギ酸12.8重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル260重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0053】
(実施例10)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成品工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン33重量部、b−2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート231重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸34.9重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル260重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、ジエチレントリアミン10重量部を添加した後、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0054】
(実施例11)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成品工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン33重量部、b−2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート231重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸34.9重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル260重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、過硫酸アンモニウム1重量部を添加し、70℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0055】
(実施例12)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物(ニューポールBPE−40NK、三洋化成品工業株式会社製)75.6重量部、トリメチロールプロパン7.30重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン13.0重量部、b-1成分としてポリエチレングリコール(PEG−600S、第一工業製薬株式会社製)53.2重量部、b−2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート153.0重量部およびメチルエチルケトン266重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価20mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.2%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸13.8重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル303.1重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、
t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=50/50であった。
【0056】
(実施例13)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物(ニューポールBPE−40NK、三洋化成品工業株式会社製)75.6重量部、トリメチロールプロパン7.30重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン44.0重量部、b-1成分としてポリエチレングリコール(PEG−600S、第一工業製薬株式会社製)53.2重量部、b−2成分として4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート233重量部およびメチルエチルケトン266重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価60mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(B)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.2%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸43.4重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル413.1重量部を加えた。
続いて、水2300重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、
t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=50/50であった。
【0057】
(実施例14)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン30 重量部、b-2成分としてイソホロンジイソシアネート192重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸31.8重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル232重量部を加えた。続いて、水2200重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0058】
(実施例15)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、b-1成分としてビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業株式会社製)120重量部、トリメチロールプロパン6重量部、b-3成分としてN−メチルジエタノールアミン25 重量部、b-2成分としてヘキサメチレンジイソシアネート137重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)のメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸26.5重量部を加えて四級化した後、a成分としてメタクリル酸メチル192重量部を加えた。続いて、水2100重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、t−ブチルヒドロパーオキサイド1重量部及び亜硫酸ナトリウム1重量部を添加し、25℃で3時間反応させて不飽和重合性モノマーを重合させた後、この乳化分散液を50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%の水性樹脂組成物を得た。
得られた水性樹脂組成物中の、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比はA/B=40/60であった。
【0059】
(比較例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(ニューポールBPE−20NK、三洋化成工業株式会社製)100重量部、トリメチロールプロパン5重量部、N−メチルジエタノールアミン27.5重量部、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート192.5重量部およびメチルエチルケトン260重量部を加え、75℃で4時間反応させてアミン価40mgKOH/gのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
この溶液の不揮発分に対する遊離のイソシアネート基含有量は3.6%であった。
次に、この溶液を45℃まで冷却し、ジメチル硫酸29.1重量部を加えて四級化した。 続いて、水1380重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散し、50℃で減圧して脱溶剤を行い、不揮発分25%のカチオン性基含有ポリウレタン樹脂水性分散体を得た。
【0060】
(比較例2)
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、メタクリル酸メチルを250重量部及びノニオン性反応性界面活性剤(アクアロンRN−30、第一工業製薬株式会社製)を加え、水750 重量部を徐々に加えながらホモジナイザーを使用して乳化分散を行った。得られた乳化分散体に過硫酸アンモニウムを添加し、80℃で3時間反応させ、不揮発分25%の不飽和重合性モノマー重合体水性分散体を得た。
【0061】
(比較例3)
比較例1で得られたカチオン性基含有ポリウレタン樹脂水性分散体と、比較例2で得られた不飽和重合性モノマー重合体水性分散体とを、ポリウレタン樹脂(B)と、不飽和重合性モノマー重合体(A)との重量比がA/B=60/40となるように混合し、不飽和重合性モノマー重合体水性分散体を得た。
【0062】
実施例1〜15で得られた水性樹脂組成物および比較例1〜3で得られた水性分散体を用いて、下記の方法で試験片を作成し、外観(濁り、黄変)、物性(引張強度、伸度)、耐食性および不飽和重合性モノマー重合体水性分散体との配合安定性について評価した。
【0063】
(試験片の作成方法)
フッ素樹脂コーティングシャーレに乾燥膜厚200μmとなるように各実施例および比較例の水性樹脂組成物を入れ、80℃で6時間、120℃で1時間加熱後、150℃で30分乾燥することにより試験片を作製した。
【0064】
(外観)
前記各試験片の皮膜の外観を目視により観察し、濁りの有無および黄変の有無を評価した。
【0065】
(皮膜物性)
JIS−K−6301に準じて、引張速度100mm/minで引張強度(N/mm2)および伸度(%)を測定した。
【0066】
(耐食性)
前記実施例1〜15で得られた水性樹脂組成物および比較例1〜3で得られた水性分散体を、あらかじめ表面をイソプロパノールで脱脂した電気亜鉛メッキ鋼板(商品名:ノンクロメート処理 ユニジング、太佑機材株式会社製)に、乾燥膜厚み3μmになるように塗布し、80℃で30秒間焼き付けて耐食性評価用の試験片を作成した。
各試験片に5重量%食塩水を35℃で72時間噴霧し、白錆の発生の有無を目視にて確認した。
【0067】
(配合安定性)
実施例1から15で得られた水性樹脂組成物および比較例1および3で得られた水性樹脂組成物をそれぞれ50重量部と、比較例2で得られた不飽和重合性モノマー重合体水性分散体50重量部を混合した。
混合後1時間経過した時の混合液の状態を目視にて観察して、凝集物の有無を確認した。
【0068】
それぞれの結果を表1に示した。
【0069】
【表1】

【0070】
結果より、各実施例の水性樹脂組成物は、比較例1および3に比べて、濁り、変色もなく、且つ皮膜物性や耐食性にも優れていると同時に、不飽和重合性モノマー重合体水性分散体との混合時における配合安定性も優れていることが明らかである。比較例2については皮膜が形成できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和重合性モノマー重合体(A)が、カチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)で乳化されていることを特徴とする水性樹脂組成物。
【請求項2】
不飽和重合性モノマー(a)とカチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)とを含有する溶液を水に分散し、水及び/又はポリアミンで前記カチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)を鎖伸長してカチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)を乳化し、該乳化と同時に、または乳化後に、前記不飽和重合性モノマー(a)を重合して前記不飽和重合性モノマー重合体(A)とすることにより得られる請求項1に記載の水性樹脂組成物。
【請求項3】
不飽和重合性モノマー(a)とカチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)とを含有する溶液を水に分散する工程と、
前記カチオン性基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(b)を水及び/又はポリアミンで鎖伸長することによりカチオン性基含有ポリウレタン樹脂(B)を乳化する工程と、
前記不飽和重合性モノマー(a)を重合して不飽和重合性モノマー重合体(A)を生成する工程とを含むことを特徴とする水性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の水性樹脂組成物を含有することを特徴とする金属塗料。

【公開番号】特開2012−1584(P2012−1584A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135827(P2010−135827)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】