水晶振動子および水晶振動子の製造方法
【課題】不要な振動モードの励起を防ぐ水晶振動子を提供することを課題とする。
【解決手段】平板状に形成された平面視略長方形の水晶片と、前記水晶片の上面および下面の中央部に配置された導電性材料からなる駆動電極と、前記水晶片の上面および下面に設けられ、前期駆動電極に電気的に接続された実装電極と、前記駆動電極と前記水晶片の長手方向外周部との間に対向配置されるとともに、エッチングに対して安定な面で形成された断面略V字状の凹部と、を備えたことを特徴とする水晶振動子とする。
【解決手段】平板状に形成された平面視略長方形の水晶片と、前記水晶片の上面および下面の中央部に配置された導電性材料からなる駆動電極と、前記水晶片の上面および下面に設けられ、前期駆動電極に電気的に接続された実装電極と、前記駆動電極と前記水晶片の長手方向外周部との間に対向配置されるとともに、エッチングに対して安定な面で形成された断面略V字状の凹部と、を備えたことを特徴とする水晶振動子とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子および水晶振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル機器のクロックパルス発生や無線機器などにおいては、周波数の温度依存性が小さい水晶振動子が利用されている。
【0003】
水晶振動子の設計に当たって重要となるのが、所望の振動モード以外の不要な振動モードの抑制である。例えば、ATカット水晶振動子は、水晶片上に形成された駆動電極に、水晶片の固有振動と略一致する周波数を持つ交流電気信号を入力し、共振現象を発生させている。ここで、駆動電極に入力された交流電気信号による振動エネルギーは、駆動電極が形成された領域から水晶片の外周部に向かって漏れ出し、水晶片の輪郭振動などの種々の不要な振動モードを励起する。そこで、通常は水晶片の輪郭をバレル研磨して面取りするベベル加工を行うことで、輪郭振動を抑制している。
【0004】
しかしながら、ベベル加工を行うと水晶片の外形寸法にばらつきが生じ、良好な振動特性の水晶振動子を得ることが難しいという問題があった。また、ベベル加工のためのバレル研磨は、水晶振動子を小型化すると、研磨速度が小さくなり、適切な面取り形状を得るための加工時間が長くなったり、面取り形状にばらつきが生じたりするなどの問題を生じる。
【0005】
そこで、これらの問題を解決するために種々の方法が提案されている。例えば特許文献1によれば、水晶振動子の駆動電極から漏れ出した振動エネルギーが輪郭に伝播するのを防ぐ構造を持った水晶振動子が提供されている。
【0006】
このように構成された水晶振動子について、図13および図14を参照して説明する。図13は水晶振動子101の平面図を、図14は図13中AA線における水晶振動子101の断面のうち一部を拡大した図を示している。
【0007】
水晶振動子101は、平面視略長方形の水晶片102と、水晶片102の上面および下面に互いに対向するように設けられた駆動電極103と、駆動電極103に電気的に接続された実装電極104と、水晶片102の短辺と駆動電極103の間に配置され、水晶片102の表面を所定の深さだけ掘り下げて形成された略V字状の断面を持つ凹部105とを備えている。
【0008】
これにより、水晶振動子101は、駆動電極103に入力された交流電気信号による振動エネルギーが水晶片102の短辺の方向に漏れ出しても、凹部105によって振動エネルギーの伝播を遮断する。そのため、振動エネルギーが水晶片102の短辺まで到達せず、不要な振動モードの励起を防ぐことができる。
【0009】
また、水晶振動子101は、水晶平板(図示しない)の上面および下面に凹部105を形成したのち、多数の水晶片102に分割し、これらの水晶片102に駆動電極103および実装電極104を形成して製造される。
【0010】
その際、凹部105は、水晶平板の表面の所定の位置をフッ酸やフッ化アンモニウム水溶液などを用いて除去して形成する。水晶はその結晶面によってエッチング速度に違いがあり、エッチングが進行するにつれ、凹部105の側壁にはエッチング速度の遅い面が現れる。この遅い面同士が出会うと、そこでエッチングが停止し、図14に示すように凹部105の断面は略V字状となる。凹部105の側壁と水晶平板の表面とがなす角は常に略一定なので、凹部105の開口部の幅を適切に設定すると、凹部105を所定の深さにすることができる。
【0011】
このようにして水晶平板上に凹部105を形成したのち、ワイヤーソーなどを用いて水晶平板を切断し、多数の水晶片102に分割する。その後、これらの水晶片102の上面および下面に駆動電極103および実装電極104を形成すると、水晶振動子101を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−46366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の水晶振動子101は、凹部105が水晶片102の短辺と駆動電極103との間にのみ設けられているため、駆動電極103から漏れ出した振動エネルギーの水晶片102の長辺方向への漏れ出しを防ぐことはできない。そのため、漏れ出した振動エネルギーが水晶片102の長辺に到達して不要な振動モードを励起するという問題があった。
【0014】
また、上述の水晶振動子101の製造方法は、水晶片102の分割と凹部105の形成を別の工程で行う必要がある。そのため、水晶片102に対して凹部105の位置を精度よく配置することが難しく、水晶振動子101の振動特性が劣化するという問題があった。また、工数が増加し、コスト増大につながるという問題があった。
【0015】
本発明の目的は上記のような事情に考慮してなされたもので、不要な振動モードの励起を防ぐ水晶振動子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0017】
本発明の水晶振動子は、平板状に形成された平面視略長方形の水晶片と、前記水晶片の上面および下面の中央部に配置された導電性材料からなる駆動電極と、前記水晶片の上面および下面に設けられ、前期駆動電極に電気的に接続された実装電極と、前記駆動電極と前記水晶片の長手方向外周部との間に対向配置されるとともに、エッチングに対して安定な面で形成された断面略V字状の凹部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の水晶振動子は、前記凹部が前記水晶片の上面および下面に配置されることを特徴とする。
【0019】
本発明にかかる水晶振動子は、駆動電極を所定の間隔をあけて挟むように凹部が配置されているので、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの伝播を凹部によって抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の水晶振動子は、凹部は前記水晶片の長手方向と略平行に配置され、凹部は水晶片の外周部と駆動電極との間に配置されたことを特徴とする。
【0021】
本発明にかかる水晶振動子は、水晶片の外周部と駆動電極との間に、水晶片の長手方向と略平行に凹部が配置されているため、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの水晶片の長手の輪郭への伝播を凹部によって抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0022】
さらに、本発明の水晶振動子は、凹部は水晶片の短手方向と略平行にも配置され、凹部は前記水晶片の外周部と前記駆動電極との間に配置されたことを特徴とする。
【0023】
本発明にかかる水晶振動子は、水晶片の外周部と駆動電極との間に、水晶片の長手方向および短手方向と略平行に凹部が配置されているため、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの水晶片の輪郭への伝播を凹部によって抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の水晶振動子は、凹部は駆動電極と水晶片の外周部の間に複数配置され、複数の凹部は互いに平行に配置されたことを特徴とする。
【0025】
本発明にかかる水晶振動子は、水晶片の外周部と駆動電極の間に複数の凹部が配置されているため、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの水晶片の輪郭への伝播を複数の凹部によって順次抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0026】
また、本発明の水晶振動子は、複数の凹部は駆動電極に近いほど浅く、水晶片の外周部に近いほど深くなるように形成されたことを特徴とする。
【0027】
本発明にかかる水晶振動子は、複数の凹部が駆動電極の近いほど浅く、水晶片の外周部に近いほど深くなるように形成されているので、駆動電極から漏れ出し、凹部によって伝播を妨げられた振動エネルギーが凹部によって反射され、再び駆動電極が形成された領域に戻って不要な振動モードを励起するのをさらに抑制することができる。
【0028】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、水晶平板の上面および下面に備えられた環状の開口部である水晶片分離開口部と、水晶片分離開口部の内周内部に配置された開口部である凹部形成開口部とを有する保護膜を形成する保護膜形成工程と、水晶平板をフッ酸またはフッ化アンモニウムの少なくとも一方を含む水溶液に浸漬して、水晶平板の開口部から露出した領域を除去して水晶片および凹部を形成する水晶片および凹部形成工程と、凹部に対して水晶片の上面および下面の中央部に導電性薄膜からなる駆動電極を形成する電極形成工程と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
本発明にかかる水晶振動子の製造方法は、保護膜形成工程において水晶片分離開口部と凹部形成開口部とを備えた保護膜を形成する。また、水晶片および凹部形成工程において凹部の側壁にはエッチング速度の遅い面が現れ、これらの面同士が出会うとエッチングが停止して所定の深さの凹部を得ることができるため、同一の工程で水晶片および凹部を形成することができる。そのため、水晶片に対して凹部の位置を精度よく配置し、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの伝播を凹部によって効率よく抑制することができる。
【0030】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、保護膜形成工程は水晶片分離開口部と凹部形成開口部とを同時に一括して形成することを特徴とする水晶振動子の製造方法である。
【0031】
本発明にかかる水晶振動子の製造方法は、水晶片分離開口部と凹部形成開口部とを同時に一括して形成するので、別工程で形成する場合と比べて水晶片に対して凹部の位置を精度よく配置することができ、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの伝播を凹部によって効率よく抑制することができる。
【0032】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、保護膜形成工程は、水晶片の長手方向と略平行に配置された第一の開口部と、水晶片の短手方向と略平行に配置された第二の開口部とを備えた保護膜を形成することを特徴とする。
【0033】
本発明にかかる水晶振動子の製造方法は、水晶片の外周部と駆動電極との間に、水晶片の長手方向と略平行に第一の凹部が配置され、水晶片の短手方向と略平行に第二の凹部が配置されているため、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの水晶片の輪郭への伝播を凹部によって抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0034】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、水晶片および凹部形成工程において略V字状の断面を有する凹部を形成することを特徴とする。
【0035】
本発明にかかる水晶振動子の製造方法は、水晶片および凹部形成工程においてエッチング速度の遅い面が第一の凹部および第二の凹部の側壁として現れ、側壁同士が出会うとエッチングが停止するので、第一の凹部および第二の凹部の開口幅を適切に設定すれば所望の深さの第一の凹部および第二の凹部を同一の工程で形成することができる。
【0036】
また、本発明の水晶振動子は、水晶片と凹部とが平行な側壁を形成することを特徴とする。
【0037】
本発明にかかる水晶振動子は、水晶片および凹部を同一の工程でおこなうことができる。さらに、水晶片分離開口部と凹部形成開口部を略平行に配置しているため、水晶片と凹部の側壁を平行に形成することができる。これにより、精度のよい水晶振動子を得られ、さらに製造工程の効率化が図れる。
【発明の効果】
【0038】
本発明にかかる水晶振動子および水晶振動子の製造方法は、不要な振動モードの励起を防ぎ、良好な振動特性を持つ水晶振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第一実施形態の水晶振動子1を示す平面図である。
【図2】図1に示す第一実施形態の水晶振動子1のAA線における断面図である。
【図3】図1に示す第一実施形態の水晶振動子1のBB線における断面図である。
【図4】図2に示す第一実施形態の水晶振動子1の第一の凹部5を拡大した断面図である。
【図5】図3に示す第一実施形態の水晶振動子1の第二の凹部6を拡大した断面図である。
【図6】図1に示す第一実施形態の水晶振動子1の製造方法を示す断面図であって、図1のAA線における断面図である。
【図7】図1に示す第一実施形態の水晶振動子の製造方法を示す断面図であって、図1のBB線における断面図である。
【図8】図1に示す第一実施形態の水晶振動子1の製造方法を示す断面図であって、図1のAA線における断面図である。
【図9】第二実施形態の水晶振動子1を示す平面図である。
【図10】図8に示す第二実施形態の水晶振動子1のAA線における断面図である。
【図11】図8に示す第二実施形態の水晶振動子1のBB線における断面図である。
【図12】図9に示す第二実施形態の水晶振動子1の第一の凹部5を拡大した断面図である。
【図13】図10に示す第二実施形態の水晶振動子1の第二の凹部6を拡大した断面図である。
【図14】従来の水晶振動子101を示す平面図である。
【図15】図13に示す従来の水晶振動子101のAA線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる第1実施形態を、図1から図5を参照して説明する。図1は、第1実施形態にかかる水晶振動子1を示す平面図であり、図2は図1のAA線における断面図、図3は図1のBB線における断面図を示している。また、図4は図2の第一の開口部5を拡大した断面図、図5は図3の第二の開口部5を拡大した断面図を示している。
【0041】
水晶振動子1は、平板形状に形成された平面視略長方形の形状を持つ水晶片2と、水晶片2の上面および下面に設けられ、水晶片2を挟んで対向するように設けられた導電性材料からなる駆動電極3と、駆動電極に接続された導電性材料からなる実装電極4と、水晶片2の上面および下面にエッチングに対して安定な面が形成されるまで掘り下げて設けられるとともに、駆動電極3を挟んで水晶片2の長手方向に沿って対向配置された第一の凹部5と、水晶片2の上面および下面にエッチングに対して安定な面が形成されるまで掘り下げて設けられるとともに、駆動電極3を挟んで水晶片2の短手方向に沿って対向配置され、第一の凹部5と接続された第二の凹部6とを備えている。
【0042】
第一の凹部5は、図4に示すように、水晶片2の上面または下面に対して特定の角θ1をなす第一の側壁7および特定の角θ2をなす第二の側壁8とから形成されている。また、第二の凹部6は、水晶片2の上面または下面に対して特定の角θ3をなす第三の側壁9および特定の角θ4をなす第四の側壁10とから形成されている。ここで、第一の凹部5の開口幅をw1、第一の凹部5の深さをd1、第二の凹部6の開口幅をw2、第二の凹部6の深さをd2とすると、これらの間には次のような関係が成立する。凹部の深さと開口幅との関係式を数1に示す。
【0043】
【数1】
【0044】
そのため、第一の凹部5の開口幅w1および第二の凹部6の開口幅w2を適切に設定すると、第一の凹部5および第二の凹部6をそれぞれ所定の深さd1およびd2となるように形成することができる。
【0045】
水晶片2がATカット水晶からなる場合、上記特定の角度は、角θ1が85度から95度の間の角度となり、角θ2が50度から60度の間の角度となる。また、角θ3が10度から30度の間の角度となり、角θ4が10度から30度の間の角度となる。
【0046】
このように構成された水晶振動子1において、実装電極4に交流電気信号を印加すると駆動電極3に挟まれた水晶片2が振動する。水晶片2の共振周波数と実装電極4に印加された交流電気信号の周波数とが一致すると共振現象を生じ、駆動電極3の間のインピーダンスが低くなる。このようにして、水晶振動子1を振動子デバイスとして利用することができる。
【0047】
このとき、水晶片2を振動させるエネルギーは、水晶片の上面および下面の駆動電極3に挟まれた領域から水晶片2の外周部に向かって漏れ出す。しかし、駆動電極3が第一の凹部5および第二の凹部6に挟まれているため、振動エネルギーは第一の凹部5および第二の凹部6を越えて水晶片2の外周部へ漏れ出すことなく、上面および下面の凹部に挟まれた領域に閉じ込められる。上面および下面の凹部並びに上面および下面の駆動電極3によって挟まれた領域に閉じ込められる。このようにして実現されたエネルギー閉じ込め現象によって、水晶片2を効率的に振動させることができ、精度のよい水晶振動子を得ることができる。
【0048】
次に、このように構成された水晶振動子1の製造方法について、図6および図7を参照しながら説明する。
【0049】
図6は図1のAA線における断面図を示し、図7は図1のBB線における断面図を示している。また、水晶振動子1は個々に製造することもできるが、本実施例においては水晶平板11に一括して複数の水晶振動子を形成する方法について説明する。
【0050】
まず、保護膜形成工程を行う。図6(a)および図7(a)にその工程を示す。水晶平板11の上面および下面に、水晶片分離開口部13と、第一の開口部14および第二の開口部15とからなる凹部形成開口部と、を備えた保護膜12を形成する。
【0051】
保護膜の材料は、例えばフォトレジストや金、モリブデンなどフッ酸に対する耐食性を備えたものを用いる。
【0052】
水晶片分離開口部13によって囲まれた保護膜12は水晶片2と略一致する平面視形状を備える。また、第一の開口部14は第一の凹部5と略一致する平面視形状を備え、第二の開口部15は第二の凹部6と略一致する平面視形状を備えている。
【0053】
保護膜12の詳細な形成工程の一例を以下に記す。
【0054】
保護膜12が金やモリブデンなどの薄膜からなる場合、水晶平板11の表面に保護膜12の材料となる金やモリブデンなどからなる薄膜をスパッタリングや蒸着などにより成膜する。金などは水晶表面に対する密着力が弱く剥離しやすいので、水晶平板11の表面にあらかじめクロムなどの密着性を向上する薄膜を成膜したのち、保護膜12の材料となる薄膜を成膜してもよい。
【0055】
次に、成膜した薄膜の上にフォトレジスト(図示しない)からなるエッチングマスクを成膜する。このエッチングマスクの所定の部分をリソグラフィ技術を用いて除去し、除去により露出した保護膜12の材料となる薄膜の部分を所定のエッチャントを用いてエッチングし、所定の形状の保護膜12を得る。保護膜12が金からなる場合には、エッチャントとして、例えばヨウ素ヨウ化カリウム水溶液や王水などを選択することができる。
【0056】
なお、保護膜はフォトレジストのみ、金またはモリブデンのみで形成することも可能である。保護膜を、例えば金またはモリブデンのみで形成する場合は、シャドーマスクを用いてスパッタリング法などの成膜を行って、任意の領域に薄膜を成膜する方法を利用できる。
【0057】
また、より高精度なパターニングが必要な場合は、フォトリソグラフィの代わりにステンシルマスクなどのEPL(Electron projection lithography)マスクを用いた電子ビーム露光も利用できる。
【0058】
次に、水晶片および凹部形成工程を行う。図6(b)および図7(b)にその工程を示す。保護膜12を形成した水晶平板11を、フッ酸やフッ化アンモニウムなどを含む水溶液に浸漬すると、水晶片分離開口部13、第一の開口部14ならびに第二の開口部15の底部に露出した水晶平板11がエッチングされる。
【0059】
エッチングの過程において、第一の開口部14においては第一の凹部5が、第二の開口部15においては第二の凹部6が形成される。前述したように、第一の凹部5は水晶平板11の上面および下面に対して特定の角をなす第一の側壁7と第二の側壁8とから形成され、第二の凹部6は水晶平板11の上面および下面に対して特定の角をなす第三の側壁9と第四の側壁10とから形成される。
【0060】
第一の側壁7、第二の側壁8、第三の側壁9および第四の側壁10が水晶片2の上面または下面と特定の角をなして形成される理由を以下に説明する。
【0061】
水晶はフッ酸やフッ化アンモニウムを含む水溶液によってエッチングされるが、そのエッチング速度は結晶面ごとに異なる。特に、安定な面においては、ほとんどエッチングが進行しない。ATカット水晶は、第一の側壁7から第4の側壁10はフッ酸やフッ化アンモニウムを含む水溶液に対して安定な面であるため、前述したような水晶片2の上面または下面と特定の角をなして形成されながらエッチングが進行する。そして、第一の側壁7と第二の側壁8、第三の側壁9と第四の側壁10が互いに出会うと、エッチングに対して安定な面のみが露出されるため、これ以上はエッチングが停止し、図4および図5に示すような断面を持つ第一の凹部5および第二の凹部6が形成される。前述したように、第一の開口部14および第二の開口部15の幅を適切に設定すると、第一の凹部5および第二の凹部6が所定の深さに達したところでエッチングを停止させることができる。
【0062】
その後、エッチングを継続して行うと、図6(c)および図7(c)に示すように、水晶平板11の水晶片分離開口部13から露出した領域は完全に除去され、水晶片2が形成される。水晶片2の側壁は前述したような結晶面のエッチング速度の違いを反映した形状となる。例えば図6(c)においては第二の側壁8と平行な面が水晶片2の側壁として現れ、図7(c)においては第三の側壁9および第四の側壁10と平行な面が水晶片2の側壁を形成する。なお、本実施例で示した水晶片2の側壁の形状は一例に過ぎない。例えば、図1のAA線における断面において、水晶平板11の両面に図8に示すように保護膜12を配置すると、水晶片2の側壁は第一の側壁7と平行な面から形成される。図1のBB線における断面についても同様に、保護膜12の配置を変更することにより、水晶片2の側壁について第三の側壁9と第四の側壁10のいずれか一方の側壁と平行になるように形成することができる。
【0063】
次に、保護膜除去工程を行う。図6(d)および図7(d)に示すように、保護膜12を除去する。保護膜12がフォトレジストからなる場合には例えば有機溶剤や硝酸、硫酸などの酸性水溶液などを用いることができる。保護膜12が金からなる場合には例えばヨウ素ヨウ化カリウム水溶液や王水などを選択することができる。
【0064】
次に、電極形成工程を行う。図6(e)および図7(e)にその工程を示す。水晶片2の上面および下面に、所定の形状の導電性薄膜を成膜し、駆動電極3および実装電極4を形成する。
【0065】
駆動電極3および実装電極4を形成する方法としては、例えば水晶片2の全面に導電性薄膜を成膜したのち、リソグラフィおよびエッチングを用いて所定の形状を得る方法が利用できる。また、リソグラフィであらかじめ駆動電極3および実装電極4を形成する領域以外を保護する保護膜(図示しない)を形成したのちに導電性薄膜を成膜し、保護膜を除去して所定の形状を得る方法も利用できる。また、所定の形状のシャドーマスクを通して導電性薄膜を成膜し、所定の形状を得る方法なども選択することができる。
【0066】
駆動電極3および実装電極4を形成する導電性薄膜は、さまざまな材料を選択することができるが、例えば金を選択すると、大気中の酸素などと反応しにくいため、得られる水晶振動子1の振動特性を安定したものにすることができる。また、金は他の材料に比べて密度が大きいため、水晶振動子1に対しては錘となってその共振周波数を低下させる。したがって、駆動電極3および実装電極4を形成したのちに、イオンビームやレーザーなどの照射によって駆動電極3を所定の量だけ蒸発させ、水晶振動子1の周波数調整を行うことができる。
【0067】
なお、保護膜形成工程において、保護膜を金で形成した場合、保護膜を除去せず、そのまま駆動電極3および実装電極4として利用することができる。その際、駆動電極3および実装電極4の部分以外の保護膜を除去することが望ましい。
【0068】
また、水晶平板から多数の水晶片を形成する場合、保護膜形成工程において、隣接する水晶片をつなぐように水晶片分離開口部の一部を保護膜で覆ってもよい。これにより、多数の水晶片は水晶平板に保持される。そして、水晶平板上で駆動電極および実装電極を一括して形成し、その後、水晶片を一括して分離することができる。以上により、各工程を一括して精度よく行うことができ、製造工程の簡略化が図れる。
【0069】
以上に説明したように、本実施例に従えば、平板形状に形成された水晶片2と、水晶片2の上面および下面に設けられ、水晶片2を挟んで対向するように設けられた導電性材料からなる駆動電極3と、駆動電極に接続された導電性材料からなる実装電極4と、水晶片2の上面および下面に所定の深さだけ掘り込んで設けられ、駆動電極3を挟んで水晶片2の長手方向に沿って配置された第一の凹部5と、水晶片2の上面および下面に所定の深さだけ掘り込んで設けられ、駆動電極3を挟んで水晶片2の短手方向に沿って配置され、第一の凹部5と接続された第二の凹部6とを備えた水晶振動子1を得ることができる。
【0070】
このように構成された水晶振動子1においては、駆動電極3は第一の凹部5および第二の凹部6とに挟まれているため、駆動電極3に入力された振動エネルギーは第一の凹部5および第二の凹部6を越えて水晶片2の外周部へ漏れ出すことなく、駆動電極3に挟まれた領域の周辺に閉じ込められる。このようにして実現されたエネルギー閉じ込め現象によって、水晶片2を効率的に振動させることができ、精度のよい水晶振動子を得ることができる。
【0071】
また、本実施例の製造方法に従えば、第一の凹部5および第二の凹部6はその開口幅を適切に設定することによって、所定の深さでエッチングが停止するため、水晶片2を形成する工程と同一の工程で第一の凹部5および第二の凹部6を形成することができる。そのため、工数を削減することができるとともに、水晶片2の形状と第一の凹部5および第二の凹部6とを同一のフォトマスク上に配置して形成することができるので、水晶片2に対して第一の凹部5および第二の凹部6を位置精度よく配置することができ、理想的にエネルギー閉じ込め現象を実現できる。その結果、効率のよい水晶振動子を得ることができる。
【0072】
なお、本実施例では駆動電極3を取り囲むように第一の凹部5および第二の凹部6を設けた例を説明したが、例えば第一の凹部5のみ、または第二の凹部6のみを備えた水晶振動子としてもよい。この場合、本実施例と比較してややエネルギー閉じ込め現象の効率は劣るが、第一の凹部5および第二の凹部6を設けない場合と比較すると効率よく駆動電極3によって挟まれた領域にエネルギーを閉じ込めることができる。さらに、水晶振動子の小型化を図ることができる。
(第二実施形態)
次に、本発明にかかる第二の実施形態を、図9から図13を参照して説明する。第2実施形態においては、第1実施形態と同一箇所については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図9は第二実施形態にかかる水晶振動子1を示す平面図であり、図10は図9中AA線における断面図を、図11は図9中BB線における断面図を示している。また、図12は図10中の第一の開口部5の部分を拡大した断面図を、図13は図11中の第二の開口部6の部分を拡大した断面図を示している。
【0074】
本実施形態にかかる水晶振動子1は、図9に示すように、水晶片2の上面および下面に複数の第一の凹部5と複数の第二の凹部6とが設けられている。第一の凹部5および第二の凹部6は水晶片2の外周部と駆動電極3の間に複数設けられている。本実施例は第一の凹部5および第二の凹部6がそれぞれ三本ずつ設けられている。ただし、各凹部は三本に限定されるものではなく、少なくとも二本以上設けられていればよい。
【0075】
図12および図13に示すように、第一の凹部5および第二の凹部6は駆動電極3に近いほど浅く、水晶片2の外周部に近づくにつれて深くなるように配置されている。
【0076】
このように構成された水晶振動子1において、駆動電極3に入力された振動エネルギーは水晶片2の外周部に向かって漏れ出す。しかし、駆動電極3は第一の凹部5および第二の凹部6に挟まれているため、振動エネルギーは第一の凹部5および第二の凹部6を越えて水晶片2の外周部へ漏れ出すことなく、駆動電極3に挟まれた領域の周辺に閉じ込められる。このようにして実現されたエネルギー閉じ込め現象によって、水晶片2を効率的に振動させることができ、精度のよい水晶振動子を得ることができる。また、複数設けられた第一の凹部5および第二の凹部6によって順次振動エネルギーが遮断されるため、第一の凹部5および第二の凹部6が一本ずつの場合に比べて、より効率的にエネルギー閉じ込めを図ることができる。さらに、複数設けられた第一の凹部5および第二の凹部6は、駆動電極3に近いほうから水晶片2の外周部に向かうにつれて順次深くなるように設けられている。そのため、第一の凹部5および第二の凹部6によって漏れ出しを妨げられた振動エネルギーが反射して再度水晶片2の駆動電極3によって挟まれた領域に戻り、不要な振動モードを励起することを防ぐことができる。
【0077】
また、図12および図13に示すように、複数設けられた第一の凹部5および第二の凹部6は、駆動電極3に近いほうから水晶片2の外周部に向かうにつれて順次開口幅が広くなるように形成されている。第一の凹部5のうち駆動電極3に近いほうから順に開口幅をw1、w2、w3、深さをd1、d2、d3とする。また、第二の凹部6のうち駆動電極3に近いほうから順に開口幅をw4、w5、w6、深さをd4、d5、d6とする。第一の凹部は第一実施形態で説明したように、フッ酸やフッ化アンモニウムを含む水溶液を用いて水晶片2の表面を除去して形成するため、結晶面のエッチング速度の違いにより、第一の凹部5の側壁はエッチング速度の遅い面が現れ、側壁と水晶片2の上面のなす角θ2は全て略等しくなる。第二の凹部6についても同様に、エッチング速度の遅い面が側壁として現れ、側壁と水晶片2の上面のなす角θ3およびθ4はそれぞれ略等しくなる。
【0078】
第一の凹部5および第二の凹部6を形成する際、エッチング速度の遅い側壁同士が出会うとそこでエッチングが停止するため、開口幅と深さの間には次のような関係があり、適切に第一の凹部5および第二の凹部6の開口幅を設定すれば、所定の深さでエッチングを停止させることができる。それぞれの凹部の開口幅と深さとの関係式を数2に示す。
【0079】
【数2】
【0080】
本実施形態では、w1≦w2≦w3としているため、d1≦d2≦d3の深さの凹部を形成することができる。同様に、w4≦w5≦w6としているため、d4≦d5≦d6の深さの凹部を形成することができる。
【0081】
このように構成された水晶振動子1においては、第一の凹部5および第二の凹部6は、その開口幅を適切に設定することによって、所定の深さでエッチングが停止するため、水晶片2を形成する工程と同一の工程で深さの異なる複数の第一の凹部5および第二の凹部6を形成することができる。そのため、工数を削減することができるとともに、水晶片2の形状と第一の凹部5および第二の凹部6とを同一のフォトマスク上に配置して形成することができるので、水晶片2に対して第一の凹部5および第二の凹部6を位置精度よく配置することができる。その結果、理想的にエネルギー閉じ込め現象を実現できるため、効率のよい水晶振動子を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 水晶振動子
2 水晶片
3 駆動電極
4 実装電極
5 第一の凹部
6 第二の凹部
11 水晶平板
12 保護膜
13 水晶片分離開口部
14 第一の開口部
15 第二の開口部
101 従来の水晶振動子
102 水晶片
103 駆動電極
104 実装電極
105 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子および水晶振動子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル機器のクロックパルス発生や無線機器などにおいては、周波数の温度依存性が小さい水晶振動子が利用されている。
【0003】
水晶振動子の設計に当たって重要となるのが、所望の振動モード以外の不要な振動モードの抑制である。例えば、ATカット水晶振動子は、水晶片上に形成された駆動電極に、水晶片の固有振動と略一致する周波数を持つ交流電気信号を入力し、共振現象を発生させている。ここで、駆動電極に入力された交流電気信号による振動エネルギーは、駆動電極が形成された領域から水晶片の外周部に向かって漏れ出し、水晶片の輪郭振動などの種々の不要な振動モードを励起する。そこで、通常は水晶片の輪郭をバレル研磨して面取りするベベル加工を行うことで、輪郭振動を抑制している。
【0004】
しかしながら、ベベル加工を行うと水晶片の外形寸法にばらつきが生じ、良好な振動特性の水晶振動子を得ることが難しいという問題があった。また、ベベル加工のためのバレル研磨は、水晶振動子を小型化すると、研磨速度が小さくなり、適切な面取り形状を得るための加工時間が長くなったり、面取り形状にばらつきが生じたりするなどの問題を生じる。
【0005】
そこで、これらの問題を解決するために種々の方法が提案されている。例えば特許文献1によれば、水晶振動子の駆動電極から漏れ出した振動エネルギーが輪郭に伝播するのを防ぐ構造を持った水晶振動子が提供されている。
【0006】
このように構成された水晶振動子について、図13および図14を参照して説明する。図13は水晶振動子101の平面図を、図14は図13中AA線における水晶振動子101の断面のうち一部を拡大した図を示している。
【0007】
水晶振動子101は、平面視略長方形の水晶片102と、水晶片102の上面および下面に互いに対向するように設けられた駆動電極103と、駆動電極103に電気的に接続された実装電極104と、水晶片102の短辺と駆動電極103の間に配置され、水晶片102の表面を所定の深さだけ掘り下げて形成された略V字状の断面を持つ凹部105とを備えている。
【0008】
これにより、水晶振動子101は、駆動電極103に入力された交流電気信号による振動エネルギーが水晶片102の短辺の方向に漏れ出しても、凹部105によって振動エネルギーの伝播を遮断する。そのため、振動エネルギーが水晶片102の短辺まで到達せず、不要な振動モードの励起を防ぐことができる。
【0009】
また、水晶振動子101は、水晶平板(図示しない)の上面および下面に凹部105を形成したのち、多数の水晶片102に分割し、これらの水晶片102に駆動電極103および実装電極104を形成して製造される。
【0010】
その際、凹部105は、水晶平板の表面の所定の位置をフッ酸やフッ化アンモニウム水溶液などを用いて除去して形成する。水晶はその結晶面によってエッチング速度に違いがあり、エッチングが進行するにつれ、凹部105の側壁にはエッチング速度の遅い面が現れる。この遅い面同士が出会うと、そこでエッチングが停止し、図14に示すように凹部105の断面は略V字状となる。凹部105の側壁と水晶平板の表面とがなす角は常に略一定なので、凹部105の開口部の幅を適切に設定すると、凹部105を所定の深さにすることができる。
【0011】
このようにして水晶平板上に凹部105を形成したのち、ワイヤーソーなどを用いて水晶平板を切断し、多数の水晶片102に分割する。その後、これらの水晶片102の上面および下面に駆動電極103および実装電極104を形成すると、水晶振動子101を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−46366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述の水晶振動子101は、凹部105が水晶片102の短辺と駆動電極103との間にのみ設けられているため、駆動電極103から漏れ出した振動エネルギーの水晶片102の長辺方向への漏れ出しを防ぐことはできない。そのため、漏れ出した振動エネルギーが水晶片102の長辺に到達して不要な振動モードを励起するという問題があった。
【0014】
また、上述の水晶振動子101の製造方法は、水晶片102の分割と凹部105の形成を別の工程で行う必要がある。そのため、水晶片102に対して凹部105の位置を精度よく配置することが難しく、水晶振動子101の振動特性が劣化するという問題があった。また、工数が増加し、コスト増大につながるという問題があった。
【0015】
本発明の目的は上記のような事情に考慮してなされたもので、不要な振動モードの励起を防ぐ水晶振動子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0017】
本発明の水晶振動子は、平板状に形成された平面視略長方形の水晶片と、前記水晶片の上面および下面の中央部に配置された導電性材料からなる駆動電極と、前記水晶片の上面および下面に設けられ、前期駆動電極に電気的に接続された実装電極と、前記駆動電極と前記水晶片の長手方向外周部との間に対向配置されるとともに、エッチングに対して安定な面で形成された断面略V字状の凹部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の水晶振動子は、前記凹部が前記水晶片の上面および下面に配置されることを特徴とする。
【0019】
本発明にかかる水晶振動子は、駆動電極を所定の間隔をあけて挟むように凹部が配置されているので、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの伝播を凹部によって抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の水晶振動子は、凹部は前記水晶片の長手方向と略平行に配置され、凹部は水晶片の外周部と駆動電極との間に配置されたことを特徴とする。
【0021】
本発明にかかる水晶振動子は、水晶片の外周部と駆動電極との間に、水晶片の長手方向と略平行に凹部が配置されているため、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの水晶片の長手の輪郭への伝播を凹部によって抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0022】
さらに、本発明の水晶振動子は、凹部は水晶片の短手方向と略平行にも配置され、凹部は前記水晶片の外周部と前記駆動電極との間に配置されたことを特徴とする。
【0023】
本発明にかかる水晶振動子は、水晶片の外周部と駆動電極との間に、水晶片の長手方向および短手方向と略平行に凹部が配置されているため、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの水晶片の輪郭への伝播を凹部によって抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の水晶振動子は、凹部は駆動電極と水晶片の外周部の間に複数配置され、複数の凹部は互いに平行に配置されたことを特徴とする。
【0025】
本発明にかかる水晶振動子は、水晶片の外周部と駆動電極の間に複数の凹部が配置されているため、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの水晶片の輪郭への伝播を複数の凹部によって順次抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0026】
また、本発明の水晶振動子は、複数の凹部は駆動電極に近いほど浅く、水晶片の外周部に近いほど深くなるように形成されたことを特徴とする。
【0027】
本発明にかかる水晶振動子は、複数の凹部が駆動電極の近いほど浅く、水晶片の外周部に近いほど深くなるように形成されているので、駆動電極から漏れ出し、凹部によって伝播を妨げられた振動エネルギーが凹部によって反射され、再び駆動電極が形成された領域に戻って不要な振動モードを励起するのをさらに抑制することができる。
【0028】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、水晶平板の上面および下面に備えられた環状の開口部である水晶片分離開口部と、水晶片分離開口部の内周内部に配置された開口部である凹部形成開口部とを有する保護膜を形成する保護膜形成工程と、水晶平板をフッ酸またはフッ化アンモニウムの少なくとも一方を含む水溶液に浸漬して、水晶平板の開口部から露出した領域を除去して水晶片および凹部を形成する水晶片および凹部形成工程と、凹部に対して水晶片の上面および下面の中央部に導電性薄膜からなる駆動電極を形成する電極形成工程と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
本発明にかかる水晶振動子の製造方法は、保護膜形成工程において水晶片分離開口部と凹部形成開口部とを備えた保護膜を形成する。また、水晶片および凹部形成工程において凹部の側壁にはエッチング速度の遅い面が現れ、これらの面同士が出会うとエッチングが停止して所定の深さの凹部を得ることができるため、同一の工程で水晶片および凹部を形成することができる。そのため、水晶片に対して凹部の位置を精度よく配置し、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの伝播を凹部によって効率よく抑制することができる。
【0030】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、保護膜形成工程は水晶片分離開口部と凹部形成開口部とを同時に一括して形成することを特徴とする水晶振動子の製造方法である。
【0031】
本発明にかかる水晶振動子の製造方法は、水晶片分離開口部と凹部形成開口部とを同時に一括して形成するので、別工程で形成する場合と比べて水晶片に対して凹部の位置を精度よく配置することができ、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの伝播を凹部によって効率よく抑制することができる。
【0032】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、保護膜形成工程は、水晶片の長手方向と略平行に配置された第一の開口部と、水晶片の短手方向と略平行に配置された第二の開口部とを備えた保護膜を形成することを特徴とする。
【0033】
本発明にかかる水晶振動子の製造方法は、水晶片の外周部と駆動電極との間に、水晶片の長手方向と略平行に第一の凹部が配置され、水晶片の短手方向と略平行に第二の凹部が配置されているため、駆動電極から漏れ出した振動エネルギーの水晶片の輪郭への伝播を凹部によって抑制することができ、不要な振動モードの励起を抑制することができる。
【0034】
また、本発明の水晶振動子の製造方法は、水晶片および凹部形成工程において略V字状の断面を有する凹部を形成することを特徴とする。
【0035】
本発明にかかる水晶振動子の製造方法は、水晶片および凹部形成工程においてエッチング速度の遅い面が第一の凹部および第二の凹部の側壁として現れ、側壁同士が出会うとエッチングが停止するので、第一の凹部および第二の凹部の開口幅を適切に設定すれば所望の深さの第一の凹部および第二の凹部を同一の工程で形成することができる。
【0036】
また、本発明の水晶振動子は、水晶片と凹部とが平行な側壁を形成することを特徴とする。
【0037】
本発明にかかる水晶振動子は、水晶片および凹部を同一の工程でおこなうことができる。さらに、水晶片分離開口部と凹部形成開口部を略平行に配置しているため、水晶片と凹部の側壁を平行に形成することができる。これにより、精度のよい水晶振動子を得られ、さらに製造工程の効率化が図れる。
【発明の効果】
【0038】
本発明にかかる水晶振動子および水晶振動子の製造方法は、不要な振動モードの励起を防ぎ、良好な振動特性を持つ水晶振動子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第一実施形態の水晶振動子1を示す平面図である。
【図2】図1に示す第一実施形態の水晶振動子1のAA線における断面図である。
【図3】図1に示す第一実施形態の水晶振動子1のBB線における断面図である。
【図4】図2に示す第一実施形態の水晶振動子1の第一の凹部5を拡大した断面図である。
【図5】図3に示す第一実施形態の水晶振動子1の第二の凹部6を拡大した断面図である。
【図6】図1に示す第一実施形態の水晶振動子1の製造方法を示す断面図であって、図1のAA線における断面図である。
【図7】図1に示す第一実施形態の水晶振動子の製造方法を示す断面図であって、図1のBB線における断面図である。
【図8】図1に示す第一実施形態の水晶振動子1の製造方法を示す断面図であって、図1のAA線における断面図である。
【図9】第二実施形態の水晶振動子1を示す平面図である。
【図10】図8に示す第二実施形態の水晶振動子1のAA線における断面図である。
【図11】図8に示す第二実施形態の水晶振動子1のBB線における断面図である。
【図12】図9に示す第二実施形態の水晶振動子1の第一の凹部5を拡大した断面図である。
【図13】図10に示す第二実施形態の水晶振動子1の第二の凹部6を拡大した断面図である。
【図14】従来の水晶振動子101を示す平面図である。
【図15】図13に示す従来の水晶振動子101のAA線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1実施形態)
以下、本発明にかかる第1実施形態を、図1から図5を参照して説明する。図1は、第1実施形態にかかる水晶振動子1を示す平面図であり、図2は図1のAA線における断面図、図3は図1のBB線における断面図を示している。また、図4は図2の第一の開口部5を拡大した断面図、図5は図3の第二の開口部5を拡大した断面図を示している。
【0041】
水晶振動子1は、平板形状に形成された平面視略長方形の形状を持つ水晶片2と、水晶片2の上面および下面に設けられ、水晶片2を挟んで対向するように設けられた導電性材料からなる駆動電極3と、駆動電極に接続された導電性材料からなる実装電極4と、水晶片2の上面および下面にエッチングに対して安定な面が形成されるまで掘り下げて設けられるとともに、駆動電極3を挟んで水晶片2の長手方向に沿って対向配置された第一の凹部5と、水晶片2の上面および下面にエッチングに対して安定な面が形成されるまで掘り下げて設けられるとともに、駆動電極3を挟んで水晶片2の短手方向に沿って対向配置され、第一の凹部5と接続された第二の凹部6とを備えている。
【0042】
第一の凹部5は、図4に示すように、水晶片2の上面または下面に対して特定の角θ1をなす第一の側壁7および特定の角θ2をなす第二の側壁8とから形成されている。また、第二の凹部6は、水晶片2の上面または下面に対して特定の角θ3をなす第三の側壁9および特定の角θ4をなす第四の側壁10とから形成されている。ここで、第一の凹部5の開口幅をw1、第一の凹部5の深さをd1、第二の凹部6の開口幅をw2、第二の凹部6の深さをd2とすると、これらの間には次のような関係が成立する。凹部の深さと開口幅との関係式を数1に示す。
【0043】
【数1】
【0044】
そのため、第一の凹部5の開口幅w1および第二の凹部6の開口幅w2を適切に設定すると、第一の凹部5および第二の凹部6をそれぞれ所定の深さd1およびd2となるように形成することができる。
【0045】
水晶片2がATカット水晶からなる場合、上記特定の角度は、角θ1が85度から95度の間の角度となり、角θ2が50度から60度の間の角度となる。また、角θ3が10度から30度の間の角度となり、角θ4が10度から30度の間の角度となる。
【0046】
このように構成された水晶振動子1において、実装電極4に交流電気信号を印加すると駆動電極3に挟まれた水晶片2が振動する。水晶片2の共振周波数と実装電極4に印加された交流電気信号の周波数とが一致すると共振現象を生じ、駆動電極3の間のインピーダンスが低くなる。このようにして、水晶振動子1を振動子デバイスとして利用することができる。
【0047】
このとき、水晶片2を振動させるエネルギーは、水晶片の上面および下面の駆動電極3に挟まれた領域から水晶片2の外周部に向かって漏れ出す。しかし、駆動電極3が第一の凹部5および第二の凹部6に挟まれているため、振動エネルギーは第一の凹部5および第二の凹部6を越えて水晶片2の外周部へ漏れ出すことなく、上面および下面の凹部に挟まれた領域に閉じ込められる。上面および下面の凹部並びに上面および下面の駆動電極3によって挟まれた領域に閉じ込められる。このようにして実現されたエネルギー閉じ込め現象によって、水晶片2を効率的に振動させることができ、精度のよい水晶振動子を得ることができる。
【0048】
次に、このように構成された水晶振動子1の製造方法について、図6および図7を参照しながら説明する。
【0049】
図6は図1のAA線における断面図を示し、図7は図1のBB線における断面図を示している。また、水晶振動子1は個々に製造することもできるが、本実施例においては水晶平板11に一括して複数の水晶振動子を形成する方法について説明する。
【0050】
まず、保護膜形成工程を行う。図6(a)および図7(a)にその工程を示す。水晶平板11の上面および下面に、水晶片分離開口部13と、第一の開口部14および第二の開口部15とからなる凹部形成開口部と、を備えた保護膜12を形成する。
【0051】
保護膜の材料は、例えばフォトレジストや金、モリブデンなどフッ酸に対する耐食性を備えたものを用いる。
【0052】
水晶片分離開口部13によって囲まれた保護膜12は水晶片2と略一致する平面視形状を備える。また、第一の開口部14は第一の凹部5と略一致する平面視形状を備え、第二の開口部15は第二の凹部6と略一致する平面視形状を備えている。
【0053】
保護膜12の詳細な形成工程の一例を以下に記す。
【0054】
保護膜12が金やモリブデンなどの薄膜からなる場合、水晶平板11の表面に保護膜12の材料となる金やモリブデンなどからなる薄膜をスパッタリングや蒸着などにより成膜する。金などは水晶表面に対する密着力が弱く剥離しやすいので、水晶平板11の表面にあらかじめクロムなどの密着性を向上する薄膜を成膜したのち、保護膜12の材料となる薄膜を成膜してもよい。
【0055】
次に、成膜した薄膜の上にフォトレジスト(図示しない)からなるエッチングマスクを成膜する。このエッチングマスクの所定の部分をリソグラフィ技術を用いて除去し、除去により露出した保護膜12の材料となる薄膜の部分を所定のエッチャントを用いてエッチングし、所定の形状の保護膜12を得る。保護膜12が金からなる場合には、エッチャントとして、例えばヨウ素ヨウ化カリウム水溶液や王水などを選択することができる。
【0056】
なお、保護膜はフォトレジストのみ、金またはモリブデンのみで形成することも可能である。保護膜を、例えば金またはモリブデンのみで形成する場合は、シャドーマスクを用いてスパッタリング法などの成膜を行って、任意の領域に薄膜を成膜する方法を利用できる。
【0057】
また、より高精度なパターニングが必要な場合は、フォトリソグラフィの代わりにステンシルマスクなどのEPL(Electron projection lithography)マスクを用いた電子ビーム露光も利用できる。
【0058】
次に、水晶片および凹部形成工程を行う。図6(b)および図7(b)にその工程を示す。保護膜12を形成した水晶平板11を、フッ酸やフッ化アンモニウムなどを含む水溶液に浸漬すると、水晶片分離開口部13、第一の開口部14ならびに第二の開口部15の底部に露出した水晶平板11がエッチングされる。
【0059】
エッチングの過程において、第一の開口部14においては第一の凹部5が、第二の開口部15においては第二の凹部6が形成される。前述したように、第一の凹部5は水晶平板11の上面および下面に対して特定の角をなす第一の側壁7と第二の側壁8とから形成され、第二の凹部6は水晶平板11の上面および下面に対して特定の角をなす第三の側壁9と第四の側壁10とから形成される。
【0060】
第一の側壁7、第二の側壁8、第三の側壁9および第四の側壁10が水晶片2の上面または下面と特定の角をなして形成される理由を以下に説明する。
【0061】
水晶はフッ酸やフッ化アンモニウムを含む水溶液によってエッチングされるが、そのエッチング速度は結晶面ごとに異なる。特に、安定な面においては、ほとんどエッチングが進行しない。ATカット水晶は、第一の側壁7から第4の側壁10はフッ酸やフッ化アンモニウムを含む水溶液に対して安定な面であるため、前述したような水晶片2の上面または下面と特定の角をなして形成されながらエッチングが進行する。そして、第一の側壁7と第二の側壁8、第三の側壁9と第四の側壁10が互いに出会うと、エッチングに対して安定な面のみが露出されるため、これ以上はエッチングが停止し、図4および図5に示すような断面を持つ第一の凹部5および第二の凹部6が形成される。前述したように、第一の開口部14および第二の開口部15の幅を適切に設定すると、第一の凹部5および第二の凹部6が所定の深さに達したところでエッチングを停止させることができる。
【0062】
その後、エッチングを継続して行うと、図6(c)および図7(c)に示すように、水晶平板11の水晶片分離開口部13から露出した領域は完全に除去され、水晶片2が形成される。水晶片2の側壁は前述したような結晶面のエッチング速度の違いを反映した形状となる。例えば図6(c)においては第二の側壁8と平行な面が水晶片2の側壁として現れ、図7(c)においては第三の側壁9および第四の側壁10と平行な面が水晶片2の側壁を形成する。なお、本実施例で示した水晶片2の側壁の形状は一例に過ぎない。例えば、図1のAA線における断面において、水晶平板11の両面に図8に示すように保護膜12を配置すると、水晶片2の側壁は第一の側壁7と平行な面から形成される。図1のBB線における断面についても同様に、保護膜12の配置を変更することにより、水晶片2の側壁について第三の側壁9と第四の側壁10のいずれか一方の側壁と平行になるように形成することができる。
【0063】
次に、保護膜除去工程を行う。図6(d)および図7(d)に示すように、保護膜12を除去する。保護膜12がフォトレジストからなる場合には例えば有機溶剤や硝酸、硫酸などの酸性水溶液などを用いることができる。保護膜12が金からなる場合には例えばヨウ素ヨウ化カリウム水溶液や王水などを選択することができる。
【0064】
次に、電極形成工程を行う。図6(e)および図7(e)にその工程を示す。水晶片2の上面および下面に、所定の形状の導電性薄膜を成膜し、駆動電極3および実装電極4を形成する。
【0065】
駆動電極3および実装電極4を形成する方法としては、例えば水晶片2の全面に導電性薄膜を成膜したのち、リソグラフィおよびエッチングを用いて所定の形状を得る方法が利用できる。また、リソグラフィであらかじめ駆動電極3および実装電極4を形成する領域以外を保護する保護膜(図示しない)を形成したのちに導電性薄膜を成膜し、保護膜を除去して所定の形状を得る方法も利用できる。また、所定の形状のシャドーマスクを通して導電性薄膜を成膜し、所定の形状を得る方法なども選択することができる。
【0066】
駆動電極3および実装電極4を形成する導電性薄膜は、さまざまな材料を選択することができるが、例えば金を選択すると、大気中の酸素などと反応しにくいため、得られる水晶振動子1の振動特性を安定したものにすることができる。また、金は他の材料に比べて密度が大きいため、水晶振動子1に対しては錘となってその共振周波数を低下させる。したがって、駆動電極3および実装電極4を形成したのちに、イオンビームやレーザーなどの照射によって駆動電極3を所定の量だけ蒸発させ、水晶振動子1の周波数調整を行うことができる。
【0067】
なお、保護膜形成工程において、保護膜を金で形成した場合、保護膜を除去せず、そのまま駆動電極3および実装電極4として利用することができる。その際、駆動電極3および実装電極4の部分以外の保護膜を除去することが望ましい。
【0068】
また、水晶平板から多数の水晶片を形成する場合、保護膜形成工程において、隣接する水晶片をつなぐように水晶片分離開口部の一部を保護膜で覆ってもよい。これにより、多数の水晶片は水晶平板に保持される。そして、水晶平板上で駆動電極および実装電極を一括して形成し、その後、水晶片を一括して分離することができる。以上により、各工程を一括して精度よく行うことができ、製造工程の簡略化が図れる。
【0069】
以上に説明したように、本実施例に従えば、平板形状に形成された水晶片2と、水晶片2の上面および下面に設けられ、水晶片2を挟んで対向するように設けられた導電性材料からなる駆動電極3と、駆動電極に接続された導電性材料からなる実装電極4と、水晶片2の上面および下面に所定の深さだけ掘り込んで設けられ、駆動電極3を挟んで水晶片2の長手方向に沿って配置された第一の凹部5と、水晶片2の上面および下面に所定の深さだけ掘り込んで設けられ、駆動電極3を挟んで水晶片2の短手方向に沿って配置され、第一の凹部5と接続された第二の凹部6とを備えた水晶振動子1を得ることができる。
【0070】
このように構成された水晶振動子1においては、駆動電極3は第一の凹部5および第二の凹部6とに挟まれているため、駆動電極3に入力された振動エネルギーは第一の凹部5および第二の凹部6を越えて水晶片2の外周部へ漏れ出すことなく、駆動電極3に挟まれた領域の周辺に閉じ込められる。このようにして実現されたエネルギー閉じ込め現象によって、水晶片2を効率的に振動させることができ、精度のよい水晶振動子を得ることができる。
【0071】
また、本実施例の製造方法に従えば、第一の凹部5および第二の凹部6はその開口幅を適切に設定することによって、所定の深さでエッチングが停止するため、水晶片2を形成する工程と同一の工程で第一の凹部5および第二の凹部6を形成することができる。そのため、工数を削減することができるとともに、水晶片2の形状と第一の凹部5および第二の凹部6とを同一のフォトマスク上に配置して形成することができるので、水晶片2に対して第一の凹部5および第二の凹部6を位置精度よく配置することができ、理想的にエネルギー閉じ込め現象を実現できる。その結果、効率のよい水晶振動子を得ることができる。
【0072】
なお、本実施例では駆動電極3を取り囲むように第一の凹部5および第二の凹部6を設けた例を説明したが、例えば第一の凹部5のみ、または第二の凹部6のみを備えた水晶振動子としてもよい。この場合、本実施例と比較してややエネルギー閉じ込め現象の効率は劣るが、第一の凹部5および第二の凹部6を設けない場合と比較すると効率よく駆動電極3によって挟まれた領域にエネルギーを閉じ込めることができる。さらに、水晶振動子の小型化を図ることができる。
(第二実施形態)
次に、本発明にかかる第二の実施形態を、図9から図13を参照して説明する。第2実施形態においては、第1実施形態と同一箇所については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
図9は第二実施形態にかかる水晶振動子1を示す平面図であり、図10は図9中AA線における断面図を、図11は図9中BB線における断面図を示している。また、図12は図10中の第一の開口部5の部分を拡大した断面図を、図13は図11中の第二の開口部6の部分を拡大した断面図を示している。
【0074】
本実施形態にかかる水晶振動子1は、図9に示すように、水晶片2の上面および下面に複数の第一の凹部5と複数の第二の凹部6とが設けられている。第一の凹部5および第二の凹部6は水晶片2の外周部と駆動電極3の間に複数設けられている。本実施例は第一の凹部5および第二の凹部6がそれぞれ三本ずつ設けられている。ただし、各凹部は三本に限定されるものではなく、少なくとも二本以上設けられていればよい。
【0075】
図12および図13に示すように、第一の凹部5および第二の凹部6は駆動電極3に近いほど浅く、水晶片2の外周部に近づくにつれて深くなるように配置されている。
【0076】
このように構成された水晶振動子1において、駆動電極3に入力された振動エネルギーは水晶片2の外周部に向かって漏れ出す。しかし、駆動電極3は第一の凹部5および第二の凹部6に挟まれているため、振動エネルギーは第一の凹部5および第二の凹部6を越えて水晶片2の外周部へ漏れ出すことなく、駆動電極3に挟まれた領域の周辺に閉じ込められる。このようにして実現されたエネルギー閉じ込め現象によって、水晶片2を効率的に振動させることができ、精度のよい水晶振動子を得ることができる。また、複数設けられた第一の凹部5および第二の凹部6によって順次振動エネルギーが遮断されるため、第一の凹部5および第二の凹部6が一本ずつの場合に比べて、より効率的にエネルギー閉じ込めを図ることができる。さらに、複数設けられた第一の凹部5および第二の凹部6は、駆動電極3に近いほうから水晶片2の外周部に向かうにつれて順次深くなるように設けられている。そのため、第一の凹部5および第二の凹部6によって漏れ出しを妨げられた振動エネルギーが反射して再度水晶片2の駆動電極3によって挟まれた領域に戻り、不要な振動モードを励起することを防ぐことができる。
【0077】
また、図12および図13に示すように、複数設けられた第一の凹部5および第二の凹部6は、駆動電極3に近いほうから水晶片2の外周部に向かうにつれて順次開口幅が広くなるように形成されている。第一の凹部5のうち駆動電極3に近いほうから順に開口幅をw1、w2、w3、深さをd1、d2、d3とする。また、第二の凹部6のうち駆動電極3に近いほうから順に開口幅をw4、w5、w6、深さをd4、d5、d6とする。第一の凹部は第一実施形態で説明したように、フッ酸やフッ化アンモニウムを含む水溶液を用いて水晶片2の表面を除去して形成するため、結晶面のエッチング速度の違いにより、第一の凹部5の側壁はエッチング速度の遅い面が現れ、側壁と水晶片2の上面のなす角θ2は全て略等しくなる。第二の凹部6についても同様に、エッチング速度の遅い面が側壁として現れ、側壁と水晶片2の上面のなす角θ3およびθ4はそれぞれ略等しくなる。
【0078】
第一の凹部5および第二の凹部6を形成する際、エッチング速度の遅い側壁同士が出会うとそこでエッチングが停止するため、開口幅と深さの間には次のような関係があり、適切に第一の凹部5および第二の凹部6の開口幅を設定すれば、所定の深さでエッチングを停止させることができる。それぞれの凹部の開口幅と深さとの関係式を数2に示す。
【0079】
【数2】
【0080】
本実施形態では、w1≦w2≦w3としているため、d1≦d2≦d3の深さの凹部を形成することができる。同様に、w4≦w5≦w6としているため、d4≦d5≦d6の深さの凹部を形成することができる。
【0081】
このように構成された水晶振動子1においては、第一の凹部5および第二の凹部6は、その開口幅を適切に設定することによって、所定の深さでエッチングが停止するため、水晶片2を形成する工程と同一の工程で深さの異なる複数の第一の凹部5および第二の凹部6を形成することができる。そのため、工数を削減することができるとともに、水晶片2の形状と第一の凹部5および第二の凹部6とを同一のフォトマスク上に配置して形成することができるので、水晶片2に対して第一の凹部5および第二の凹部6を位置精度よく配置することができる。その結果、理想的にエネルギー閉じ込め現象を実現できるため、効率のよい水晶振動子を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 水晶振動子
2 水晶片
3 駆動電極
4 実装電極
5 第一の凹部
6 第二の凹部
11 水晶平板
12 保護膜
13 水晶片分離開口部
14 第一の開口部
15 第二の開口部
101 従来の水晶振動子
102 水晶片
103 駆動電極
104 実装電極
105 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状に形成された平面視略長方形の水晶片と、
前記水晶片の上面および下面の中央部に配置された導電性材料からなる駆動電極と、
前記水晶片の上面および下面に設けられ、前記駆動電極に電気的に接続された実装電極と、
前記駆動電極と前記水晶片の長手方向外周部との間に対向配置されるとともに、エッチングに対して安定な面で形成された断面略V字状の凹部と、
を備えたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
前記凹部は、さらに前記水晶片の前記駆動電極と短手方向外周部との間にも対向配置されることを特徴とした請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記凹部は、さらに環状に配置されることを特徴とする請求項2に記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記凹部は、前記水晶片の外周部と前記駆動電極との間に複数配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水晶振動子。
【請求項5】
複数の前記凹部は、前記駆動電極に近いほど浅く、前記水晶片の外周部に近いほど深くなるように形成されたことを特徴とする請求項4に記載の水晶振動子。
【請求項6】
前記水晶片の側壁が前記凹部の側壁と平行であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の水晶振動子。
【請求項7】
前記凹部は、前記水晶片の上面および下面に配置されることを特徴とする請求項6に記載の水晶振動子。
【請求項8】
前記凹部は、前記水晶片の外周部に対して平行に配置されることを特徴とする請求項7に記載の水晶振動子。
【請求項9】
水晶平板の上面および下面に水晶片分離開口部および凹部形成開口部を備えた保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記開口部に位置する前記水晶平板を除去して水晶片および凹部を形成する工程と、
前記水晶片の上面および下面の中央部に導電性薄膜からなる駆動電極を形成する電極形成工程と、
を備えたことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項10】
前記保護膜形成工程は前記水晶片分離開口部および前記凹部形成開口部を同時に形成することを特徴とする請求項9に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項11】
前記水晶片および前記凹部を形成する工程は、前記水晶平板をフッ酸またはフッ化アンモニウムの少なくとも一方を含む水溶液に浸漬して、前記水晶平板の前記開口部に水晶片及び凹部を形成することを特徴とする請求項10に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項12】
前記凹部形成開口部は、前記水晶片の長手方向と略平行に配置された開口部を備えることを特徴とする請求項11に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項13】
前記凹部形成開口部は、前記水晶片の長手方向と略平行に配置された第一の開口部と、
前記水晶片の短手方向と略平行に配置された第二の開口部とを備えることを特徴とする請求項12に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項14】
前記水晶片および前記凹部を形成する工程は、断面略V字状の前記凹部を形成することを特徴とする請求項13に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項15】
前記保護膜形成工程は、複数の前記凹部形成開口部を備えた保護膜を形成することを特徴とする請求項9から14のいずれか一項に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項16】
前記保護膜形成工程は、水晶片の外周部に近いほど広い幅の前記凹部形成開口部を形成することを特徴とする請求項15に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項17】
前記水晶片および前記凹部を形成する工程は、前記水晶片と前記凹部とが平行な側壁を形成することを特徴とする請求項9から16のいずれか一項に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項1】
平板状に形成された平面視略長方形の水晶片と、
前記水晶片の上面および下面の中央部に配置された導電性材料からなる駆動電極と、
前記水晶片の上面および下面に設けられ、前記駆動電極に電気的に接続された実装電極と、
前記駆動電極と前記水晶片の長手方向外周部との間に対向配置されるとともに、エッチングに対して安定な面で形成された断面略V字状の凹部と、
を備えたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
前記凹部は、さらに前記水晶片の前記駆動電極と短手方向外周部との間にも対向配置されることを特徴とした請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記凹部は、さらに環状に配置されることを特徴とする請求項2に記載の水晶振動子。
【請求項4】
前記凹部は、前記水晶片の外周部と前記駆動電極との間に複数配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水晶振動子。
【請求項5】
複数の前記凹部は、前記駆動電極に近いほど浅く、前記水晶片の外周部に近いほど深くなるように形成されたことを特徴とする請求項4に記載の水晶振動子。
【請求項6】
前記水晶片の側壁が前記凹部の側壁と平行であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の水晶振動子。
【請求項7】
前記凹部は、前記水晶片の上面および下面に配置されることを特徴とする請求項6に記載の水晶振動子。
【請求項8】
前記凹部は、前記水晶片の外周部に対して平行に配置されることを特徴とする請求項7に記載の水晶振動子。
【請求項9】
水晶平板の上面および下面に水晶片分離開口部および凹部形成開口部を備えた保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記開口部に位置する前記水晶平板を除去して水晶片および凹部を形成する工程と、
前記水晶片の上面および下面の中央部に導電性薄膜からなる駆動電極を形成する電極形成工程と、
を備えたことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項10】
前記保護膜形成工程は前記水晶片分離開口部および前記凹部形成開口部を同時に形成することを特徴とする請求項9に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項11】
前記水晶片および前記凹部を形成する工程は、前記水晶平板をフッ酸またはフッ化アンモニウムの少なくとも一方を含む水溶液に浸漬して、前記水晶平板の前記開口部に水晶片及び凹部を形成することを特徴とする請求項10に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項12】
前記凹部形成開口部は、前記水晶片の長手方向と略平行に配置された開口部を備えることを特徴とする請求項11に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項13】
前記凹部形成開口部は、前記水晶片の長手方向と略平行に配置された第一の開口部と、
前記水晶片の短手方向と略平行に配置された第二の開口部とを備えることを特徴とする請求項12に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項14】
前記水晶片および前記凹部を形成する工程は、断面略V字状の前記凹部を形成することを特徴とする請求項13に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項15】
前記保護膜形成工程は、複数の前記凹部形成開口部を備えた保護膜を形成することを特徴とする請求項9から14のいずれか一項に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項16】
前記保護膜形成工程は、水晶片の外周部に近いほど広い幅の前記凹部形成開口部を形成することを特徴とする請求項15に記載の水晶振動子の製造方法。
【請求項17】
前記水晶片および前記凹部を形成する工程は、前記水晶片と前記凹部とが平行な側壁を形成することを特徴とする請求項9から16のいずれか一項に記載の水晶振動子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−41070(P2011−41070A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187477(P2009−187477)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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