説明

水晶振動子

【課題】 水晶片がカバー用ガラス基板に接触するのを防ぎ、不良の発生を抑えることができると共に、水晶振動子全体の強度を保持することができる水晶振動子を提供する。
【解決手段】 水晶片13を搭載したベース用ガラス基板12の上部に、キャビティ18を有するカバー用ガラス基板11を被せて水晶片13を封止した水晶振動子であって、カバー用ガラス基板11のキャビティ18の少なくとも四隅に、キャビティ18よりも深さが深く、面積がキャビティ18の開口面積の1/9より小さい窪み17を設けた水晶振動子としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子に係り、特に水晶片がカバー用ガラス基板に接触するのを防ぎ、不良の発生を抑えることができる水晶振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明:図10]
従来、キャビティ構造を有する2枚以上の基板でパッケージを形成し、内部に水晶片を格納して導電性接着剤で固定し、更に基板同士を気密に接合して水晶片を封入した水晶振動子がある。
【0003】
従来の水晶振動子の構成について図10を用いて説明する。図10は、従来の水晶振動子の構成を示す断面説明図である。
図10に示すように、従来の水晶振動子は、主として、ベース用ガラス基板12と、カバー用ガラス基板11′と、水晶片13とから構成されている。
ベース用ガラス基板12の表裏(上面及び下面)には、外部と電気的に接続する外部接続端子15が形成され、水晶片13が導電性接着剤14によってベース用ガラス基板12の上面に設けられた外部接続端子15に固定されている。
【0004】
カバー用ガラス基板11′は、下面に凹部(キャビティ)を備えた基板であり、当該凹部空間内に水晶片13が収容され、低融点ガラス16によってベース用ガラス基板12と接着されて、内部空間を密封している。
【0005】
上記構成の従来の水晶振動子において、カバー用ガラス基板11′のキャビティを形成する際にウェットエッチングを用いた場合、キャビティの側壁を垂直に形成することは困難であり、テーパー状のエッチング形状となる。
【0006】
また、従来の水晶振動子では、水晶片13を導電性接着剤14の上に搭載する際、又は導電性接着剤14を硬化させる際に水晶片13が回転したり、傾きが変わってしまってそのまま固着されてしまう場合がある。
そのため、回転したり傾いた水晶片13の角部がキャビティの側壁に接触し易く、キャビティの開口寸法を大きくしなければならなかった。
【0007】
具体的には、水晶片13をキャビティ側壁と接触させないために、水晶片13の回転を考慮したクリアランスcと、テーパー形状によるキャビティの減少幅αを考慮しなければならない。
特に、キャビティのコーナー部のエッチング形状が丸みを帯びるため、キャビティの減少幅αは、コーナー部で大きくなってしまう。
【0008】
つまり、従来の水晶振動子では、パッケージ全体の大きさを変えずに、減少幅αを考慮して十分な大きさのキャビティを形成しようとすると、ベース用ガラス基板12とカバー用ガラス基板11′とを接着するためのシールパス幅が狭くなり、接着面積が減少して破損し易くなる。
また、パッケージ及びキャビティの大きさを変えずに接触を防ごうとすると、水晶片13の大きさを小さくしなければならず、微細加工が困難で不良発生の要因となっていた。
更に、水晶片13の大きさ及びシールパス幅を変えないようにすると、水晶振動子全体の大きさが大きくなってしまい小型化の妨げになってしまう。
【0009】
[関連技術]
尚、水晶振動子等のパッケージに関する技術としては、特開2000−040707号公報「半導体装置」(ソニー株式会社、特許文献1)、特開2000−013171号公報「水晶振動子」(日本電波工業株式会社、特許文献2)、特開2010−081415号公報「圧電デバイスおよびその製造方法」(シチズンファインテックミヨタ株式会社、特許文献3)がある。
【0010】
特許文献1には、半導体チップを格納するパッケージに、少なくとも半導体チップの四隅を、パッケージに非接触とするための凹部を形成したことが記載されている。
また、特許文献2には、水晶振動子のパッケージにおいて、導電性接着剤の塗布位置周辺のキャビティの角部に、切欠部を設けることが記載されている。
また、特許文献3には、圧電部品のパッケージにおいて、パッケージの内側面の一部に凹部を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−040707号公報
【特許文献2】特開2000−013171号公報
【特許文献3】特開2010−081415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の水晶振動子では、水晶片を搭載する際の回転や傾きの変化により、水晶片とカバー用ガラス基板のキャビティ側面とが接触し、不良が発生して歩留まりが低下してしまうという問題点があった。
【0013】
尚、特許文献1〜3は、水晶振動子において、水晶片の上部を覆うカバー用ガラス基板のキャビティ部の四隅に、キャビティよりも深さが深い窪みを設けたものではない。
【0014】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、水晶片の搭載時に回転や傾きのずれが発生しても水晶片とカバー用ガラス基板のキャビティ側面との接触を防いで歩留まりを向上させることができる水晶振動子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶片が搭載されたベース用基板と、水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、ベース用基板とカバー用基板とが接合され、キャビティ内に水晶片が封止された水晶振動子であって、カバー用基板において、キャビティの少なくとも四隅に、キャビティよりも深く形成された窪みを備えたことを特徴としている。
【0016】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶片の一方の短辺が固定されたベース用基板と、水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、ベース用基板とカバー用基板とが接合され、キャビティ内に水晶片が封止された片持ちタイプの水晶振動子であって、カバー用基板において、水晶片の固定されていない短辺の少なくとも両端に対応する位置に、キャビティよりも深く形成された窪みを備えたことを特徴としている。
【0017】
また、上記従来例の問題点を解決するための本発明は、2本の腕部を有する音叉型の水晶片が搭載されたベース用基板と、水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、ベース用基板とカバー用基板とが接合され、キャビティ内に水晶片が封止された水晶振動子であって、カバー用基板において、音叉型の水晶片の2本の腕部の先端に対応する位置に、キャビティよりも深く形成された窪みを備えたことを特徴としている。
【0018】
また、本発明は、上記水晶振動子において、窪みの面積をキャビティの開口面積の1/9より小さくしたことを特徴としている。
【0019】
また、本発明は、上記水晶振動子において、窪みが、キャビティの開口部の縁から外側にはみ出して形成されていることを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、上記水晶振動子において、窪みが、キャビティの開口部の内側に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水晶片が搭載されたベース用基板と、水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、ベース用基板とカバー用基板とが接合され、キャビティ内に水晶片が封止された水晶振動子であって、カバー用基板において、キャビティの少なくとも四隅に、キャビティよりも深く形成された窪みを備えた水晶振動子としているので、水晶片をベース用基板に固定する際に回転や傾きのずれによって所定の位置から若干ずれて固定された場合でも、水晶片がカバー用基板の凹部内壁に接触するのを防ぎ、不良の発生を防いで歩留まりを向上させることができる効果がある。
【0022】
また、本発明によれば、水晶片の一方の短辺が固定されたベース用基板と、水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、ベース用基板とカバー用基板とが接合され、キャビティ内に水晶片が封止された片持ちタイプの水晶振動子であって、カバー用基板において、水晶片の固定されていない短辺の少なくとも両端に対応する位置に、キャビティよりも深く形成された窪みを備えた水晶振動子としているので、水晶片の一方の短辺をベース用基板に固定する際に回転や傾きのずれによって所定の位置から若干ずれて固定された場合でも、水晶片がカバー用基板の凹部内壁に接触するのを防ぎ、不良の発生を防いで歩留まりを向上させることができ、また、窪みの数及び面積を抑えて、カバー用基板の厚さが薄くなる部分を極力少なくして、片持ちタイプの水晶振動子の強度を確保することができる効果がある。
【0023】
また、本発明によれば、2本の腕部を有する音叉型の水晶片が搭載されたベース用基板と、水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、ベース用基板とカバー用基板とが接合され、キャビティ内に水晶片が封止された水晶振動子であって、カバー用基板において、音叉型の水晶片の2本の腕部の先端に対応する位置に、キャビティよりも深く形成された窪みを備えた水晶振動子としているので、音叉型の水晶片をベース用基板に固定する際に回転や傾きのずれによって所定の位置から若干ずれて固定された場合でも、水晶片がカバー用基板の凹部内壁に接触するのを防ぎ、不良の発生を防いで歩留まりを向上させることができ、また、窪みの数及び面積を抑えて、カバー用基板の厚さが薄くなる部分を極力少なくして、音叉型水晶振動子の強度を確保することができる効果がある。
【0024】
また、本発明によれば、窪みの面積をキャビティの開口面積の1/9より小さくした上記水晶振動子としているので、カバー用基板の厚さが薄くなる窪みの上部の面積を制限して、カバー用基板の厚さを確保し、水晶振動子全体の強度を保持することができる効果がある。
【0025】
また、本発明によれば、窪みが、キャビティの開口部の縁から外側にはみ出して形成されているガラス基板及び水晶振動子全体の大きさを大きくすることなく、不良の発生を防ぎ、歩留まりを向上させることができる効果がある。
【0026】
また、本発明によれば、窪みが、キャビティの開口部の内側に形成されている上記水晶振動子としているので、カバー用基板とベース用基板との接着面積を十分広く確保することができ、水晶振動子全体の強度を保持することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係る水晶振動子の構成説明図であり、(a)は、水晶振動子全体の断面説明図、(b)は、カバー用ガラス基板の平面図である。
【図2】本水晶振動子における窪み17の配置例を示す説明図である。
【図3】窪みの形状及び配置例を示す説明図である。
【図4】(a)(b)は、窪みの別の形状を示す説明図である。
【図5】片持ちタイプの水晶振動子に適用可能なカバー用ガラス基板11の説明図である。
【図6】カバー用ガラス基板が製造されるガラスウエハの例を示す説明図であり、(a)は下面、(b)は上面を示す。
【図7】ベース用ガラス基板が製造されるガラスウエハの例を示す説明図であり、(a)は下面、(b)は上面を示す。
【図8】片持ちタイプのベース用ガラス基板の上面を示す説明図である。
【図9】音叉型水晶振動子に適用した場合の例を示す説明図であり、(a)は音叉型水晶振動子の概略形状説明図であり、(b)は音叉型水晶振動子に適用されるカバー用ガラス基板の説明図である。
【図10】従来の水晶振動子の構成を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る水晶振動子は、水晶片を搭載したベース用ガラス基板の上部に、キャビティを有するカバー用ガラス基板を被せて密閉した構成であり、カバー用ガラス基板のキャビティの四隅に、キャビティよりも深さが深く、面積がキャビティの開口面積の1/9より小さい窪みを設けたものであり、水晶片の角部とカバー用ガラス基板の凹部内壁との間の空間を広くして、水晶片が回転したり傾きが変わっても、水晶片がカバー用ガラス基板の凹部側面に接触するのを防ぎ、不良の発生を抑え歩留まりを向上させることができると共に、カバー用ガラス基板が薄くなる部分の面積を抑えて、水晶振動子の強度を保持することができるものである。
【0029】
[実施の形態に係る水晶振動子の構成:図1]
本発明の実施の形態に係る水晶振動子の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る水晶振動子の構成説明図であり、(a)は、水晶振動子全体の断面説明図、(b)は、カバー用ガラス基板の平面図である。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係る水晶振動子(本水晶振動子)は、基本的な構成は図10に示した従来の水晶振動子と同様であり、主として、ベース用ガラス基板12と、カバー用ガラス基板11と、水晶片13とから構成されている。そして、本水晶振動子の特徴として、カバー用ガラス基板11の形状が図1のカバー用ガラス基板11′とは一部異なっている。
【0030】
[本水晶振動子の各部]
水晶片13は、例えばATカット水晶片であり、従来と同様に形成されている。水晶片13の平面外形は矩形である。
また、従来と同様に、ベース用ガラス基板12の表裏には外部接続端子15が設けられ、水晶片13は、導電性接着剤14によって外部接続端子15に固定されている。図1の例では、水晶片13の両方の短辺上において導電性接着剤14で固定される両持ちタイプとしているが、片持ちタイプであってもよい。
そして、水晶片13が搭載されたベース用ガラス基板12上に、低融点ガラス16によってカバー用ガラス基板11が接着されてキャビティ18内の水晶片13を気密に封止している。
【0031】
本水晶振動子の特徴部分であるカバー用ガラス基板11は、下面のキャビティ18の角部に、更に深くえぐった窪み17が形成されている。つまり、本水晶振動子では、カバー用ガラス基板11において水晶片13を格納する空間は、キャビティ18と窪み17とで形成されており、これらを合わせて、「凹部」と称する。
【0032】
窪み17の形状及び配置について図1(b)を用いて説明する。
図1(b)に示すように、本水晶振動子のカバー用ガラス基板11は、従来と同様に形成されたキャビティ18の四隅に窪み17を設けている。
【0033】
窪み17は、キャビティ18の四隅に設けられ、キャビティの開口部の縁から一部外側にはみ出して(オーバーラップして)、低融点ガラス16によって接着される接着面160にかかるように配置されている。
つまり、窪み17は、キャビティ18の形成後に、更にその角部をえぐるように深く形成されたものであり、水晶片13を搭載後にカバー用ガラス基板11を被せた場合に、水晶片13の角部の上部に窪み17が位置するように形成されているものである。
【0034】
これにより、水晶片13が収納される凹部の中でも、回転や傾きの変化により水晶片13とガラス基板との接触が発生しやすい角部のスペースが広くなって、水晶片13を搭載する際の位置合わせや傾きのマージンが大きくなるため、水晶片13が若干回転して搭載されても、水晶片13の角部がカバー用ガラス基板11の凹部側壁に接触するのを防ぐことができるものである。
【0035】
また、窪み17を、キャビティ18内部の底面を更に削って深く形成しているので、水晶片13が所定の傾きより大きい傾きで搭載された場合でも、水晶片13の角部がカバー用ガラス基板11の凹部内壁に接触するのを防ぐことができるものである。
【0036】
更に、本水晶振動子では、窪み17を図1のように四隅に設ける場合、各窪み17の面積を、キャビティ18の開口部の1/9以下となるよう形成している。
これは、窪み17を形成することにより、当該窪み17が形成されている位置のカバー用ガラス基板11のガラス基板の厚さが薄くなるため、窪み17の面積を制限して、水晶振動子全体の強度を保持するためである。
尚、図1の例では窪み17の形状を矩形としているが、水晶片13の角部の上部を覆う形状であればこれに限るものではなく、例えば円形や凹部の中心方向に弧を備えた扇形としてもよい。
【0037】
[窪みの配置例:図2]
次に、本水晶振動子におけるカバー用ガラス基板11の窪み17の配置例について図2を用いて説明する。図2は、本水晶振動子における窪み17の配置例を示す説明図である。
図2(a)に示すように、窪み17をキャビティ18の外側にオーバーラップさせず、キャビティ18の角及び辺に合わせて、窪み17の外枠とキャビティ18の外枠とを一致させるように形成してもよい。
また、図2(b)に示すように、窪み17をキャビティ18の外枠の内部に形成することも可能である。
【0038】
これらの場合には、窪み17の位置が水晶片13の角の上部になるように形成する必要があるため、同一水晶片を格納する場合には、図1(b)に示したカバー用ガラス基板11に比べて図2(a)(b)のカバー用ガラス基板11は少し大きくなる。
【0039】
[窪みの形状及び配置例:図3]
次に、本水晶振動子のカバー用ガラス基板11の窪み17の形状及び配置例について図3を用いて説明する。図3は、窪みの形状及び配置例を示す説明図である。
図3(a)に示す例では、窪み17の形状をキャビティの開口部の長辺に沿った長方形とし、キャビティ18の両長辺及びその両端の角部を含み、キャビティ18の外側にオーバーラップするよう、2つの窪み17を平行に配置して形成している。
【0040】
図3(b)では、キャビティ18の長手方向に沿った長方形の窪み17を、キャビティ18の外枠に合わせて、オーバーラップさせずに形成している。
また、図3(c)では、(a)及び(b)と同一形状の窪み17を、キャビティ18の外枠内部に形成している。
(a)のように、窪み17をキャビティ18の外側にオーバーラップさせると小型化を図ることができ、(c)のように、窪み17をキャビティ18の内側に形成すると、接着面160の面積を広く確保でき、強度を保持できるものである。
【0041】
[窪みの別の形状:図4]
次に、窪み17の別の形状について図4を用いて説明する。図4(a)(b)は、窪みの別の形状を示す説明図である。
図4(a)では、窪み17をキャビティ18の短辺に沿った2つの長方形とし、キャビティ18の両短辺及びその両端の角部を含み、キャビティ18の外側にオーバーラップして形成している。
また、図4(b)では、窪み17をキャビティ18の四辺に沿って窓枠状に一体に形成している。
図4(a)(b)のいずれに対しても、窪み17を、キャビティ18の開口部の外側にオーバーラップした配置、キャビティ18の外枠に一致させた配置、キャビティ18の内部に設けた配置、の3通りの配置が可能である。
【0042】
尚、窪み17の形状を図3(a)〜(c)、図4(a)(b)の形状とした場合、それぞれの窪み17の面積を、必ずしもキャビティ18の開口部の面積の1/9以下に形成しなくてもよいが、水晶振動子の強度があまり問題にならない用途に適用することが望ましい。
【0043】
[片持ちタイプの例:図5]
次に、片持ちタイプの水晶振動子に適用可能なカバー用ガラス基板11について図5を用いて説明する。図5は、片持ちタイプの水晶振動子に適用可能なカバー用ガラス基板11の説明図である。
片持ちタイプでは、水晶片の一つの短辺のみを導電性接着剤16で外部電極15に接着固定するものであり、他方の短辺は固定されない。そのため、実運用の際に、固定されている短辺側に比べて固定されていない短辺側において、搭載時の回転や傾斜のずれが影響しやすい。
【0044】
そこで、図5に示すように、片持ちタイプの水晶振動子用のカバー用ガラス基板11では、キャビティ18の一方の短辺の両端となる角部に、窪み17を設けるようにしている。図5の例では、窪み17を、キャビティ18の外側にオーバーラップして形成した例を示しているが、窪み17の外枠をキャビティ18の開口部の外枠に一致させてもよいし、キャビティ18の内側に形成してもよい。
また、キャビティ18の一方の短辺上に、図4(a)のような短辺に沿った単一の窪みを設けてもよい。
【0045】
そして、水晶片をベース用ガラス基板12に搭載した後、水晶片13の固定されていない短編側の上部に窪み17が配置される向きに、カバー用ガラス基板11を載せる。これにより、水晶片の一方の短辺をベース用ガラス基板12の外部電極に固定する際に、回転したり傾斜角度が大きくなったりしても、固定されていない短辺側でカバー用ガラス基板11の凹部側壁や凹部底面(天井)に接触するのを防ぐことができるものである。
また、片持ちタイプのカバー用ガラス基板では、図1〜図4に示したカバー用ガラス基板に比べて窪み17の数を少なくすることにより、ベース用ガラス基板12とカバー用ガラス基板11とを接着する接着面160の面積を広く確保することができ、強度を保持することができるものである。
【0046】
尚、図1〜図4に示したカバー用ガラス基板11を片持ちタイプに適用することも可能であり、両持ちタイプに適用した場合とと同様に、水晶片13の角部がカバー用ガラス基板11の凹部内壁に接触するのを防ぐことができ、更に、製造時にカバーの向きを考慮せずに搭載することができるものである。
【0047】
[本水晶振動子の製造方法]
次に、本実施の形態に係る水晶振動子チップの製造方法について説明する。
本水晶振動子に搭載される水晶片13は、例えばATカット水晶片であり、公知の方法で製造される。
【0048】
[カバー用ガラス基板の製造方法:図6]
まず、カバー用ガラス基板1の製造方法について図6を用いて説明する。図6は、カバー用ガラス基板が製造されるガラスウエハの例を示す説明図であり、(a)は下面、(b)は上面を示す。
図6では、カバー用ガラス基板11が製造されるガラスウエハ1を示しており、カバー用ガラス基板11が2行2列に配置されている。
まず、ガラスウエハ1の両面にCr(クロム)/Au(金)膜を成膜した後、(a)に示すように、下面の当該膜上に、フォトリソグラフィによりキャビティ18と窪み17を含む凹部の領域が開口したレジストパタンを形成し、当該レジストパタンをマスクとしてCr/Au膜をエッチングする。
【0049】
そして、Cr/Au膜パタンをマスクとして、ガラス基板を所望の深さまでウェットエッチングして、キャビティ18を形成する。この時点では、窪み17の領域もキャビティ18と同じ深さまでエッチングされているが、まだ十分な深さではない。
【0050】
そこで、ウエハ上のレジストパタンとCr/Au膜パタンを除去後、再びCr/Au膜をガラスウエハ1の両面に成膜し、窪み17の領域が開口したレジストパタンを形成し、当該レジストパタンをマスクとしてCr/Au膜をエッチング後、当該Cr/Au膜パタンをマスクとしてキャビティ側壁のテーパー形状による減少幅αを確保できる深さまでガラス基板をウェットエッチングして、窪み17を形成する。
【0051】
そして、ガラスウエハ1上のレジストパタンとCr/Au膜を除去後、公知のスクリーン印刷技術を用いて、ダイシングライン5を含むシールパス部に低融点ガラス4を塗布して、所定の温度で焼成する。
これにより、図6(a)(b)に示すように、ガラスウエハ1上に2行2列に配列されたカバー用ガラス基板11が完成する。
【0052】
[ベース用ガラス基板の製造方法:図7]
次に、ベース用ガラス基板12の製造方法について図7を用いて説明する。図7は、ベース用ガラス基板が製造されるガラスウエハの例を示す説明図であり、(a)は下面、(b)は上面を示す。
図7では、ベース用ガラス基板12が製造されるガラスウエハ6を示しており、ベース用ガラス基板12が2行2列に配置されている部分を示している。
【0053】
図7(a)に示すように、ガラスウエハ6の下面には、金属膜を形成後、フォトリソエッチングにより外部と電気的に接続する外部接続端子7を形成する。
同様に、図7(b)に示すように、ガラスウエハ6の上面には、金属膜形成後、フォトリソエッチングにより、内部配線9を形成する。
そして、各ベース用ガラス基板12の側面に形成されたキャスタレーション8を介して、外部接続端子7と内部配線9とを接続する。
尚、図1に示した外部端子15は、図7に示した下面の外部接続端子7と上面の内部配線9と、キャスタレーション8とを含むものである。
【0054】
金属配線及び端子部分の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、ガラスウエハ6の両面にCr/Au膜を成膜した後、キャスタレーション8の領域が開口したレジストパタンを形成し、当該レジストパタンをマスクとしてCr/Au膜をエッチングし、その後、当該Cr/Au膜をマスクとしてウエハの両面からガラス基板をエッチングして貫通させ、キャスタレーション8を開孔する。
【0055】
そして、ガラスウエハ6上のレジストパタンとCr/Au膜を除去後、再びCr/Au膜をガラスウエハ6の両面に形成する。
これにより、キャスタレーションの内壁にもCr/Au膜が形成される。
【0056】
そして、上面に内部配線9のレジストパタンを形成し、下面に外部接続端子7のレジストパタンを形成して、当該レジストパタンをマスクとしてCr/Au膜をエッチングする。
レジストパタンを除去して、内部配線9と外部接続端子7とを形成する。
これにより、図7(a)(b)に示すように、ガラスウエハ6上に2行2列に配列されたベース用ガラス基板12が完成する。
【0057】
[水晶片の搭載:図7、図1]
次に、ベース用ガラス基板12に水晶片13を搭載する。
ガラスウエハ6上のベース用ガラス基板12の上面に形成された内部配線9の上に、図1に示したように導電性接着剤14を塗布し、水晶片13を接着する。
導電性接着剤14を所定の熱処理によって硬化させた後、公知の方法により、水晶片13の周波数調整を行う。
【0058】
[ガラス基板の接合:図6、図7]
周波数調整の後、カバー用ガラス基板11の下面の低融点ガラス4がベース用ガラス基板12のシールパス部10(接着面)と一致するように、カバー用ガラス基板11が形成されたガラスウエハ1と、ベース用ガラス基板126が形成されたガラスウエハ6とを重ね合わせて、加熱及び加圧して、接合する。
そして、接合されたガラスウエハのダイシングライン5上を切断して、図1に示した水晶振動子のチップが完成する。
【0059】
[片持ちタイプのベース用ガラス基板:図8]
次に、片持ちタイプのベース用ガラス基板について図8を用いて説明する。図8は、片持ちタイプのベース用ガラス基板の上面を示す説明図である。
図8に示すように、片持ちタイプの水晶振動子のベース用ガラス基板では、水晶片13が搭載される上面に設けられる内部配線9の形状が、図7(b)に示した両持ちタイプとは異なっており、一方の長辺に沿って長い内部配線9が形成されている。
【0060】
[音叉型水晶振動子に適用した場合:図9]
次に、音叉型水晶振動子に適用した場合について図9を用いて説明する。図9は、音叉型水晶振動子に適用した場合の例を示す説明図であり、(a)は音叉型水晶振動子の概略形状説明図であり、(b)は音叉型水晶振動子に適用されるカバー用ガラス基板の説明図である。
図9(a)に示すように、音叉型水晶振動子は、基部と、基部から伸びる2本の腕部とを備えた音叉型の形状であり、電圧を印加することにより腕部が振動するものである。
そこで、(b)に示すように、音叉型水晶振動子に適用されるカバー用ガラス基板11では、(a)に示した音叉型水晶振動子を収容するキャビティ18を備え、更に、振動部分である腕部の先端に相当する位置に窪み17を形成している。
【0061】
これにより、音叉型水晶振動子をベース用ガラス基板12上に固定して、カバー用ガラス基板11を被せた場合に、音叉型水晶振動子の腕部先端が収容される部分のスペースが広くなり、搭載時に回転や傾きが発生しても、腕部の先端がカバー用ガラス基板の凹部側壁に接触するのを防ぐことができ、歩留まりを向上させることができるものである。
【0062】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る水晶振動子によれば、水晶片13を搭載したベース用ガラス基板12の上部に、キャビティ18を有するカバー用ガラス基板11を被せて密閉した構成であり、カバー用ガラス基板11のキャビティ18の四隅に、キャビティ18よりも深さが深く、面積がキャビティ18の開口面積の1/9より小さい窪み17を設けているので、水晶片13の角部とカバー用ガラス基板11の凹部内壁との間の空間を広くして、水晶片13の搭載時に回転したり傾きが変わった場合でも、水晶片13がカバー用ガラス基板11の凹部内面に接触するのを防ぎ、不良の発生を抑え歩留まりを向上させることができる効果があり、更に、カバー用ガラス基板11の厚さが薄くなる窪み17の面積を抑えて、カバー用ガラス基板11の厚さを確保して水晶振動子全体の強度を保持することができる効果がある。
【0063】
また、本水晶振動子によれば、上記水晶振動子において、各窪み17を、キャビティ18の開口部の縁に重なって四隅にオーバーラップする位置に配置しているので、水晶片13とカバー用ガラス基板11の凹部内面との接触を防ぐと共に、カバー用ガラス基板11及び水晶振動子全体の小型化を図ることができる効果がある。
【0064】
また、本水晶振動子によれば、上記水晶振動子において、各窪み17を、キャビティ18の開口部の内側に設けているので、水晶片13とカバー用ガラス基板11の凹部内面との接触を防ぐと共に、カバー用ガラス基板11とベース用ガラス基板12との接着面160の面積を十分確保でき、水晶振動子全体の強度を保持することができる効果がある。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係る水晶振動子によれば、片持ちタイプの水晶振動子のカバー用ガラス基板11において、水晶片13の固定されていない短辺の両端に相当する位置に、キャビティ18よりも深さが深く、面積がキャビティ18の開口面積の1/9より小さい窪み17を設けているので、窪み17の数及び面積を低減して水晶振動子全体の強度を保持しつつ、片持ちタイプの水晶振動子において水晶片がカバー用ガラス基板11の凹部内面に接触するのを防ぎ、不良の発生を抑え歩留まりを向上させることができる効果がある。
【0066】
また、本発明の実施の形態に係る水晶振動子によれば、音叉型水晶振動子のカバー用ガラス基板11において、水晶片の2本の腕部の先端部に相当する位置に、キャビティ18よりも深さが深く、面積がキャビティ18の開口面積の1/9より小さい窪み17を設けているので、窪み17の数及び面積を低減して水晶振動子全体の強度を保持しつつ、音叉型水晶振動子において水晶片がカバー用ガラス基板11の凹部内面に接触するのを防ぎ、不良の発生を抑え歩留まりを向上させることができる効果がある。
【0067】
尚、本実施の形態では、カバー用基板をガラスで形成したものについて説明したが、水晶で形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、水晶片がカバー用ガラス基板に接触するのを防ぎ、不良の発生を抑えることができる水晶振動子に適している。
【符号の説明】
【0069】
1...ガラスウエハ、 4...低融点ガラス、 5...ダイシングライン、 6...ガラスウエハ、 7...外部接続端子、 8...キャスタレーション、 9...内部配線、 11...カバー用ガラス基板、 12...ベース用ガラス基板、 13...水晶片、 14...導電性接着剤、 15...外部接続端子、 16...低融点ガラス、 17...窪み、 18...キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶片が搭載されたベース用基板と、前記水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、前記ベース用基板と前記カバー用基板とが接合され、前記キャビティ内に前記水晶片が封止された水晶振動子であって、
前記カバー用基板において、前記キャビティの少なくとも四隅に、前記キャビティよりも深く形成された窪みを備えたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
水晶片の一方の短辺が固定されたベース用基板と、前記水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、前記ベース用基板と前記カバー用基板とが接合され、前記キャビティ内に前記水晶片が封止された片持ちタイプの水晶振動子であって、
前記カバー用基板において、前記水晶片の固定されていない短辺の少なくとも両端に対応する位置に、前記キャビティよりも深く形成された窪みを備えたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項3】
2本の腕部を有する音叉型の水晶片が搭載されたベース用基板と、前記水晶片を収納する空間であるキャビティを有するカバー用基板とを備え、前記ベース用基板と前記カバー用基板とが接合され、前記キャビティ内に前記水晶片が封止された水晶振動子であって、
前記カバー用基板において、前記音叉型の水晶片の2本の腕部の先端に対応する位置に、前記キャビティよりも深く形成された窪みを備えたことを特徴とする水晶振動子。
【請求項4】
窪みの面積をキャビティの開口面積の1/9より小さくしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の水晶振動子。
【請求項5】
窪みが、キャビティの開口部の縁から外側にはみ出して形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の水晶振動子。
【請求項6】
窪みが、キャビティの開口部の内側に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の水晶振動子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−34148(P2013−34148A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170019(P2011−170019)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】