説明

水晶発振器の製造方法

【課題】文字記号の配列方向を確実にする水晶発振器の製造方法を提供する。
【解決手段】文字記号が表面に印字されて先端に突起を有する金属カバー4を回路基板3の溝5に嵌合して被せてなる水晶発振器の製造方法において、前記回路基板の溝5及び前記金属カバー4の突起6は短辺では中央部として長辺では一端部とするとともに、前記文字記号の配列方向の基点を前記長辺方向の一端部側として前記金属カバー4に印字して前記配列方向を一定方向にする工程後に、前記金属カバー4の各突起を前記回路基板3の溝5に嵌合する工程とした製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水晶発振器の製造方法を技術分野とし、特に水晶振動子及び回路素子が搭載される回路基板に対する金属カバーの嵌合を容易にした製造方法に関する。なお、下線は原出願に対する補正箇所である。
【0002】
(発明の背景)水晶発振器は周波数及び時間の基準源として、各種の電子機器に内される。このようなものの一つに、例えばPLL用とした電圧制御発振器があり、通常ではディスクリート部品で構成される。
【0003】
(従来技術の一例)第2図は一従来例を説明する水晶発振器の組立分解図である。
水晶発振器は、電圧制御発振器を構成する水晶振動子1及び電圧可変容量素子等の回路素子2を回路基板3に搭載し、金属カバー4を被せてなる。回路基板3はガラスエポキシ材からなり、長辺及び短辺を有する矩形状とする。そして、各長辺及び短辺の中央側面にスルーホール加工による溝5を有する。溝5は平面視コ字状とする。そして、例えば4角部には図示しない回路パターンに接続したスルーホールを有し、底面の実装端子と接続する。
【0004】
金属カバー4は凹状とし、回路基板3の各長短辺の溝5に対応した開口先端に突起6を有する。突起6には外側から内側に向かう膨出部を有する。このようなものでは、金属カバー4の開口端を回路基板3の外周上に載せて、長短辺の各溝5に突起6を嵌合し固定する。そして、半田付けして金属カバー4を回路基板3に接合する。
【0005】
これらの場合、通常では、予め、発振周波数や製造元等の文字記号が印字された金属カバー4を回路基板3に接合する。あるいは、金属カバー4を回路基板3に接合した後、文字記号を金属カバー4に印字する。そして、ユーザーは、文字記号の配列方向にしたがって、水晶発振器をセット基板に搭載する。
【特許文献1】特開2000−165177
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(従来技術の問題点)しかしながら、上記構成の水晶発振器では、いずれも各長短辺の中央に溝5を有して、長短辺を2等分する中心線に対して対称形状とする。したがって、例えば文字記号が印字された金属カバー4を回路基板3に接合する際、文字記号の配列方向が誤って逆になる問題があった。
【0007】
この場合、文字記号の配列方向が左から右方向(文字が読める方向)の正常なときは、例えば第3図の透視図に示したように、回路基板3の裏面に設けられた各端子7は、時計回りに電源端子7A、出力端子7B、アース端子7C、その他の端子7Dの順となる。しかし、第4図(a)に示したように、文字記号の配列方向が逆になって接合されたときは、各端子7は文字記号の配列方向から見るとアース端子7C、その他の端子7D、電源端子7A、出力端子7Bの順になる「同図(b)」。
【0008】
一方、第5図に示したように、水晶発振器の搭載されるセット基板8には、水晶発振器の各端子7に対応して回路端子9が形成される。すなわち、水晶発振器の文字記号が正常に印字された場合の各端子7(ABCD)に対応して、回路端子9(ABCD)は時計回りに電源端子9A、出力端子9B、アース端子9C、その他の端子9Dの順に形成される。
【0009】
したがって、金属カバー4に文字記号の配列方向が誤って逆向きに接合された場合、ユーザーは文字記号の配列方向にセット基板8に搭載するので、水晶発振器の端子とセット基板の回路端子は一致しなくなる。このことから、セット基板7に水晶発振器を搭載しても正常に動作せず、異常事態を引き起こす。
【0010】
なお、回路基板3に金属カバー4を接合して水晶発振器の組立後、金属カバー4に文字記号を印字する場合でも、同様に配列方向が逆になることがある。この場合でも、前述と同様に、セット基板に搭載する際、水晶発振器の端子とセット基板の回路端子とが一致せず、異常事態を引き起こす。
【0011】
(発明の目的)本発明は文字記号の配列方向を確実にする回路基板及び金属カバーからなる水晶発振器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、回路素子を搭載して外底面の4角部に実装端子を有する矩形状の回路基板に文字記号が表面に印字された金属カバーを被せてなり、前記回路基板は各長辺及び各短辺の側面に平面視コ字状の4個の溝を有し、前記金属カバーは前記4個の溝に対応する開口先端に突起を有し、前記突起には外側から内側に向かう膨出部を有して、前記溝と前記突起とを嵌合とする水晶発振器の製造方法において、前記各短辺に設けられた前記回路基板の溝及び前記金属カバーの突起は幅方向の中央部として前記幅方向を二等分する中心線に対して対称とし、前記各長辺に設けられた前記回路基板の溝及び前記金属カバーの突起は長辺方向の一端部側に設けられて長さ方向を二等分する中心線に対して非対称とするとともに、前記文字記号の配列方向の基点を前記長辺方向の一端部側として前記金属カバーに印字して前記配列方向を一定方向にする工程後に、前記金属カバーの各突起を前記回路基板の溝に嵌合する工程とした製造方法とする。
【発明の効果】
【0013】
上記構成によれば、回路基板の溝及び金属カバーの突起は例えば長辺方向の一端部側とし、長辺を2等分する中心線に対して非対称とする。したがって、例えば文字記号が印字された金属カバーを回路基板に被せる際には、金属カバーの突起と回路基板の溝とが一端部側で一致しなければ嵌合しない。これにより、各回路端子が規定通りに配置された回路基板に対して、文字記号の配列方向を常に同一方向にして、セット基板に対する水晶発振器の搭載を正常にできる。
【0014】
また、文字記号の配列方向の基点を長辺方向の一端部側として金属カバーに印字した後に、金属カバーの各突起を回路基板の溝に嵌合する。したがって、例えば金属カバーの印字方向に基づいて予め整列された回路基板に位置決めできるので製造を容易にできる。また、長辺方向の一端部側に突起や溝を設けて非対称とするので、小型化に際しては短辺方向で非対称とするよりも認識しやすく有利である。
【実施例】
【0015】
第1図は本発明の一実施例を説明する水晶発振器の組立分解図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0016】
水晶発振器は、前述したように、水晶振動子1等の回路素子2が搭載された回路基板3に金属カバー4を被せてなる。回路基板3は矩形状とし、短辺の中央部及び長辺の一端部に平面視コ字状とした溝5を有する。金属カバー4は回路基板3の溝5に対応して、短辺の中央部及び長辺の一端部に突起6を有する。要するに、回路基板3の溝5及び金属カバー4の突起6は短辺では中央部として、幅方向を二等分する中心線に対して対称とする。また、溝5及び突起6は長辺では一端部とし、長さ方向を二等分する中心線に対して非対称とする。
【0017】
そして、ここでは、先ず、例えば突起4の設けられた一端部側を文字記号の配列方向の基点として金属カバー3に予め印字する工程とする。次に、金属カバー3の各突起6を回路基板3の溝に嵌合する工程とする。その後、例えば印字方向や長辺の一端部の突起6を基準として、予め整列された回路基板3の溝5に金属カバー4の突起6を嵌合し、半田付けして接合する。
【0018】
このような構成であれば、長辺方向の一端部に設けられた回路基板3の溝5及び金属カバー4の突起6によって、方向性を認識できる。したがって、例えば突起の設けられた一端部側を文字記号の配列方向の基点として金属カバーに予め印字できる。そして、文字記号の印字された金属カバーの一端部の突起を、各回路端子が規定通りに設けられた回路基板3の一端部の溝5に嵌合することによって、金属カバー4を回路基板3に正常に接合できる。これにより、セット基板に対しても水晶発振器を正常に搭載できる。
【0019】
また、文字記号の配列方向の基点を長辺方向の一端部側として金属カバー4に印字した後に、金属カバー4の各突起6を回路基板3の溝5に嵌合する。したがって、例えば金属カバー4の印字方向に基づいて予め整列された回路基板3に位置決めできるので製造を容易にできる。また、長辺方向の一端部側に溝5や突起6を設けて非対称とするので、小型化に際しては短辺方向で非対称とするよりも認識しやすく有利である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例を説明する水晶発振器の組立分解図である。
【図2】従来例を説明する水晶発振器の組立分解図である。
【図3】従来例の問題点を説明する水晶発振器の透視平面図である。
【図4】従来例の問題点を説明する水晶発振器の透視平面図である。
【図5】従来例の問題点を説明するセット基板の平面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 水晶振動子、2 回路素子、3 回路基板、4 金属カバー、5 溝、6 突起、7 端子、8 セット基板、9 回路端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路素子を搭載して外底面の4角部に実装端子を有する矩形状の回路基板に文字記号が表面に印字された金属カバーを被せてなり、前記回路基板は各長辺及び各短辺の側面に平面視コ字状の4個の溝を有し、前記金属カバーは前記4個の溝に対応する開口先端に突起を有し、前記突起には外側から内側に向かう膨出部を有して、前記溝と前記突起とを嵌合とする水晶発振器の製造方法において、
前記各短辺に設けられた前記回路基板の溝及び前記金属カバーの突起は幅方向の中央部として前記幅方向を二等分する中心線に対して対称とし、前記各長辺に設けられた前記回路基板の溝及び前記金属カバーの突起は長辺方向の一端部側に設けられて長さ方向を二等分する中心線に対して非対称とするとともに、
前記文字記号の配列方向の基点を前記長辺方向の一端部側として前記金属カバーに印字して前記配列方向を一定方向にする工程後に、前記金属カバーの各突起を前記回路基板の溝に嵌合する工程としたことを特徴とする水晶発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−136407(P2010−136407A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1464(P2010−1464)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【分割の表示】特願2004−294259(P2004−294259)の分割
【原出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】