説明

水晶発振器

【課題】回路構成を簡易にして、起動特性及びデューティー比を良好に維持した水晶発振器を提供する。
【解決手段】発振段におけるCMOSからなる発振インバータ1の出力に同じくCMOSからなる伝達インバータ2を接続した水晶発振器において、伝達インバータ2には、発振インバータ1の起動時よりも伝達インバータ2が遅れて起動する、スイッチング素子5とスイッチング素子の導通を発振インバータの起動時よりも遅らせるタイマー回路6とからなるスイッチングタイマー回路4が設けられる。このような構成であれば、発振段の起動直後(電源投入直後)、伝達インバータが起動しないので、発振段の発振成長の初期過程にある微少振幅信号は、伝達インバータの次段回路に送出されない。したがって、発振インバータでの水晶発振は後段回路の影響を受けることなく安定して増加することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCMOSからなるインバータ型の水晶発振器を技術分野とし、特に起動特性及びデューティー比を良好にした水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
CMOSからなるインバータ型の水晶発振器は消費電力等に優れることから、各種の電子機器に周波数や時間の基準源として内蔵される。通常では、いずれもCMOSからなる発振用増幅器としての発振インバータに伝達用増幅器としての伝達インバータを接続し、さらに後段を接続して水晶発振器を構成する。一般にこれらのCMOSインバータの反転電位は等しく設定してある。
【0003】
このようなものでは、発振初期における微小振幅の発振出力は、伝達インバータにて反転され、この出力により後段回路が動作状態になり、後段回路の動作にて生じるノイズにより微小振幅発振動作が不安定なものとなっていた。このため、発振初期の発振安定化を図る試みが成されており、このようなものには、特許文献1(特開平4−273602号公報)に開示されるようなものがある。
【0004】
第9図(a)は一従来例を説明する水晶発振器の回路図で、水晶発振器は発振段における発振インバータ1に緩衝インバータ2を接続してなる。発振段は水晶振動子3の両端に、一端をアース接地とした分割コンデンサC1、C2を接続して共振回路を形成する。そして、水晶振動子3の両端(水晶振動子3と分割コンデンサの接続点)に、発振インバータ1が接続する。発振インバータ1の入出力端には帰還抵抗Rfが接続する。ここで、第9図(ab)に示すように、発振インバータ1の反転電位を2.5Vとし、伝達インバータ2の反転電位は2.0Vとしてある。
【0005】
つまり、伝達CMOSインバータ2の反転電位を発振インバータ1の反転電位からずらして、発振が開始され、発振インバータ1の発振出力の振幅は次第に増加するが、伝達インバータ2の反転電位を越えるまで(第10図のP領域)、伝達インバータ2の出力は一定なレベルに保持される。このため、発振初期の微小振幅発振出力は後段回路に出力されず、発振インバータ1の発振は後段回路の影響を受けることなく安定して増加することができる。
【特許文献1】特開平4−273602号公報
【特許文献2】特開平7−193428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(従来技術の問題点)
しかしながら、いずれもCMOSとする発振インバータ1の反転電位と伝達インバータ2のそれとを異なったものとすると、定常発振時の出力のデューティーを1/2に設定することができない。このことから、特許文献2では、発振インバータ1と伝達インバータ2は、本来の反転電圧であるVdd/2に設定する。そして、図示しない発振検出回路及びバイアス変更回路を発振段(発振インバータ1)に設ける。
【0007】
このようなものでは、先ず、発振の初期状態では、発振検出回路の信号によってバイアス変更回路を動作させて発振インバータの入出力バイアスを反転電圧(Vdd/2)から低下させる。したがって、伝達インバータ2にはLレベルが入力されて出力をHレベルとし、微少振幅信号を出力しない。これにより、特許文献1と同様に、発振初期状態での次段回路の影響を排除する。
【0008】
次に、発振段の安定状態では、発振検出回路の信号によってバイアス変更回路は発振インバータ1の入出力バイアスを反転電圧(Vdd/2)に戻す。したがって、発振が定常状態(安定状態)でのデューティー比を基本的に1/2として、しかも、初期状態では次段回路の影響を遮断することから起動特性を良好にする。
【0009】
しかし、特許文献2の発明では、発振検出回路やバイアス変更回路を要して回路構成が複雑になる問題があった。また、発振の初期状態(微少振幅信号状態)では、発振インバータ1のバイアスを反転電位以下にずらした為、発振インバータ1の実効相互コンダクタンスが著しく減少され、発振インバータ1による負性抵抗が犠牲になる問題もあった。
【0010】
(発明の目的)
本発明は回路構成を簡易にして、起動特性及びデューティー比を良好に維持した水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、CMOSからなる発振インバータと前記発振インバータに並列に接続された水晶振動子とを有する発振回路と、前記発振インバータの出力にCMOSからなる伝達インバータを接続した水晶発振器において、前記伝達インバータには、前記発振インバータの起動よりも前記伝達インバータが遅れて起動するスイッチングタイマー回路が設けられ、前記スイッチングタイマー回路はスイッチング素子と前記スイッチング素子の導通を前記発振インバータの起動よりも遅らせるタイマー回路とからなる構成とする。
【発明の効果】
【0012】
このような構成であれば、発振段の起動直後(電源投入直後)、伝達インバータが起動しないので、発振段の発振成長の初期過程にある微少振幅信号は、伝達インバータの次段回路に送出されない。したがって、発振インバータでの水晶発振は後段回路の影響を受けることなく安定して増加することができる。発振が成長した後は伝達インバータが通常動作開始され、伝達インバータと発振インバータとの反転電圧とバイアスを電源電圧Vddの半値(Vdd/2)に設定できるので、デューティー比を良好に維持する。
【0013】
(実施態様項)
本発明の請求項2では、請求項1において、前記スイッチングタイマー回路は前記伝達インバータと電源との間、前記伝達インバータとアースとの間、又は前記伝達インバータと前記電源及び前記アースとの間のいずれにも設けられた構成とする。これにより、スイッチングタイマー回路によって、発振の初期段階のみ、伝達インバータと電源、伝達インバータとアース、又は伝達インバータと電源及びアースとの間が遮断されるので、伝達インバータは発振インバータの起動よりも遅れて起動する。
【0014】
同請求項3では、請求項1、及び2において、前記タイマー回路は少なくともスイッチング電圧発生回路を有し、前記スイッチング電圧発生回路は電源投入から、時間関数としての出力電圧特性を発生するとともに、前記電圧特性中には前記スイッチング素子を非導通から導通とする反転電圧を含む。これにより、電源投入直後の発振初期段階ではスイッチング素子を非導通としてそれ以降を導通とすることができる。
【0015】
同請求項4では、請求項3において、前記スイッチング電圧発生回路は少なくともコンデンサと抵抗とを有する電圧印加型とする。これにより、コンデンサの充放電によって電源投入から時間関数の出力電圧特性を得る。
【0016】
同請求項5では、請求項3において、前記スイッチング電圧発生回路は少なくともコンデンサと定電流源とを含む電流印加型とする。これにより、コンデンサの充放電によって電源投入から時間関数の出力電圧特性を得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
第1図は本発明の第1実施形態を説明する概念的な図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0018】
水晶発振器は、前述したように、水晶振動子3と分割コンデンサC1、C2からなる共振回路に接続した発振用増幅器としてCMOSからな発振インバータ1を、伝達用増幅器として同様のCMOSからなる伝達インバータ2を適用してなる。発振インバータ1と伝達インバータ2の反転電圧は電源電圧Vddの本来のVdd/2とする。
【0019】
そして、第1実施形態では、伝達インバータ2と電源Vddとの間にスイッチングタイマー回路4を設けてなる。スイッチングタイマー回路4は伝達インバータ2と電源Vddとの間に設けられたスイッチング素子5と、スイッチング素子5に動作信号を供給するタイマー回路6とからなる。
【0020】
タイマー回路6は、先ず、電源投入からTmsecまでは、スイッチング素子5を非導通とする信号を印加し、伝達インバータ2への電源供給を停止する。これにより、伝達インバータ2の出力はLレベル(アース電位)に保持され、これ以降の次段回路には電源投入直後の発振段での微少振幅信号は供給されない。したがって、次段回路動作による雑音を発生しないので、発振段では微少振幅信号から安定振幅信号に順調に移行する。したがって、発振段での起動特性を良好にする。
【0021】
次に、電源投入からTmsec以降では、スイッチング素子5を導通とする動作信号を印加し、伝達インバータ2へ電源を供給する。これにより、伝達インバータ2は通常通りに動作し、発振段からの安定振幅信号を次段回路に供給する。この場合、伝達インバータ2は反転電圧をVdd/2に設定されているので、デューティー比を基本的に1/2として良好に維持する。
【0022】
(第1実施形態の具体例)
第2図(abc)は本発明における第1実施形態の具体例を説明する図で、同図(a)は水晶発振器特にスイッチングタイマー回路の図、同図(b)は電圧時定数回路の出力特性で、同図(c)はタイマー回路の出力特性である。
【0023】
第1実施形態の具体例では、スイッチングタイマー回路4は、スイッチング素子5をスイッチングPMOSとし、タイマー回路6は、スイッチング電圧発生回路として、電圧印加型とした時定数回路とCMOSとしたインバータ7(以下、反転インバータとする)からなる。時定数回路は第1抵抗R1とコンデンサCとの並列回路をアース側として、第2抵抗R2を電源側とする。
【0024】
このようなものでは、時定数回路における直列接続点での分圧電圧Vxは、下式(1)になる。但し、eは自然対数の底、tは時間、τは時定数であり、τ={R1*R2/(R1+R2)}・Cである。
Vx={R1/(R1+R2)}・Vdd・(1−e−t/τ) ・・(1)
【0025】
これにより、分圧電圧Vxは電源投入後、時定数τに基づき、0V電圧から指数関数的に上昇する。そして電源投入からTmsec(1msec)後に、Vxは反転インバータ7の反転電圧(Vxo)を通過し、次第に第1抵抗R1と第2抵抗R2との分圧比による最小電圧Vmax「={R1/(R1+R2)}・Vdd」へ収束する。なお、第1抵抗R1を無限大即ちコンデンサCのみとした場合は最大電圧がVddになるが、この場合でも適用できる。
【0026】
ここでは、電源投入からTmsec(1msec)までの増加する分圧電圧Vxは、これが入力される反転インバータ7の反転電圧(Vxo)以下とする。そして、電源投入からTmsec以降ではVxは反転インバータ7の反転電圧(Vxo)以上となる。これにより、反転インバータ7の出力は、図2(c)に示すように、入力電圧Vxが反転電圧以下ではHレベルとなり、反転電圧以上ではLレベルとなる。
【0027】
したがって、反転インバータ7の出力がゲートに入力されるスイッチングPMOSのソース・ドレイン間は、反転インバータ7の出力がHレベルのときは非導通となり、伝達インバータ2には電源Vddは供給されない。したがって、電源投入直後のTmsecまでは、発振段の微少振幅信号は伝達インバータ2の次段回路には送出されない。これにより、次段回路による雑音を抑止し、発振段での起動特性を良好にする。
【0028】
反転インバータ7の出力がLレベルのときは、スイッチングPMOS5Aは導通となり、伝達インバータ2に電源Vddが供給される。したがって、電源投入直後のTmsec以降では、伝達インバータ2は反転電圧をVdd/2として通常通りに反転動作し、発振段の安定振幅信号を次段回路に送出する。したがって、デューティー比を1/2として良好に維持する。
【0029】
(第2実施形態)
第3図は本発明の第2実施形態を説明する概念的な図である。第2実施形態では、前記第1実施形態での伝達インバータ2の電源側に設けたスイッチングタイマー回路4を、伝達インバータ2のアース側に設けた例である。
【0030】
水晶発振器は、前述したように、水晶振動子3と分割コンデンサC1、C2からなる共振回路に接続した発振用増幅器を発振インバータ1とし、伝達用増幅器を伝達インバータ2とする。発振インバータ1と伝達インバータ2との反転電圧は電源電圧Vddの本来のVdd/2とする。
【0031】
そして、第2実施形態では、伝達インバータ2とアースとの間に設けられたスイッチングタイマー回路4は、第1実施形態と同様に、スイッチング素子5と、スイッチング素子5に動作信号を供給するタイマー回路6とからなる。但し、スイッチング素子5は発振インバータ2とアースとの間に設けられる。
【0032】
この場合でも、タイマー回路6は、先ず、電源投入からTmsecまでは、スイッチング素子5を非導通とする信号を印加し、伝達インバータ2への電源供給を停止する。これにより、伝達インバータ2の次段回路へは微少振幅信号は送出せず、雑音の発生を抑止して発振段での起動特性を良好にする。
【0033】
次に、電源投入からTmsec以降では、スイッチング素子5を導通とする信号を印加し、伝達インバータ2へ電源を供給する。これにより、伝達インバータ2は通常通りに動作し、反転電圧をVdd/2とするので、デューティー比を基本的に1/2として良好に維持する。
【0034】
(第2実施形態の具体例)
第4図(abc)は本発明における第2実施形態の具体例を説明する図で、同図(a)は水晶発振器特にスイッチングタイマー回路の図、同図(b)は電圧時定数回路の出力特性で、同図(c)はタイマー回路の出力特性である。
【0035】
第2実施形態の具体例では、スイッチング素子5をスイッチングNMOS5Bとし、タイマー回路6はスイッチング電圧発生回路として、時定数回路6Bに反転インバータ7を付加してなる。時定数回路6Bは、第1抵抗R1とコンデンサC1の並列回路を電源側とし、第2抵抗R2をアース側とする。
【0036】
この場合では、時定数回路における直列接続点での分圧電圧Vxは、下式(2)になる。但し、eは自然対数の底、tは時間、τは時定数であり、τ={R1*R2/(R1+R2)}・Cである。
Vx={R2/(R1+R2)}・Vdd・(e−t/τ) ・・(2)
【0037】
これにより、第4図(b)に示したように、分圧電圧Vxは電源投入後、時定数τに基づき、電源電圧Vddから指数関数的に減少する。そして、電源投入からTmsec(1msec)後に、Vxは反転インバータ7の反転電圧(Vxo)を通過し、次第に第1抵抗R1と第2抵抗R2との分圧比による最小電圧Vmini「={R2/(R1+R2)}・Vdd」へ収束する。
【0038】
これにより、電源投入からTmsec(1msec)間は反転インバータ7の出力をLレベルとし、スイッチングNMOS5Bのドレイン・ソース間を非導通とする。したがって、前述同様に、電源投入直後(Tmsec)までは、伝達インバータ2とアース間が遮断されて、伝達インバータ2の出力はHレベルに維持される。したがって、次段回路には微少振幅信号は送出されず、発振段の起動特性を良好にする。
【0039】
そして電源投入からTmsec以降では、時定数回路6Bの分圧電圧Vxは反転インバータ7の反転電圧(Vxo)以下になる。これにより、反転インバータ7の出力がHレベルになって、スイッチングNMOS5Bを導通する。したがって、伝達インバータ2とアース間が導通して、伝達インバータ2が通常通りに動作し、安定振幅信号を次段回路に送出する。
【0040】
(第3実施形態)
第5図は本発明の第3実施形態を説明する概念的な図である。第3実施形態では、伝達インバータ2の電源側及びアース側のいずれにもスイッチングタイマー回路4を設けた例である。
【0041】
すなわち、第3実施形態では、伝達インバータ2と電源Vdd及びアースとの間のいずれにもスイッチング素子5を設ける。そして、スイッチング素子5には共通としたタイマー回路6を接続して、スイッチング素子5を導通及び非導通とする。
【0042】
この場合でも、タイマー回路6は、先ず、電源投入からTmsecまでは、電源Vdd及びアース側のスイッチング素子5を非導通とする信号を印加する。これにより、伝達インバータ2への電源供給を停止するとともにアース電位との接続も遮断する。したがって、伝達インバータ2の次段回路へは微少振幅信号は送出せず、雑音の発生を抑止して発振段での起動特性を良好にする。
【0043】
次に、電源投入からTmsec以降では、電源Vdd及びアース側でのスイッチング素子5を導通とする信号を印加し、伝達インバータ2へ電源を供給する。これにより、伝達インバータ2は反転電圧をVdd/2として通常通りに動作し、デューティー比を基本的に1/2として良好に維持する。
【0044】
(第3実施形態の具体例)
第6図は第3実施形態の具体例を説明する特にスイッチングタイマー回路の図である。
【0045】
この具体例でのスイッチングタイマー回路4は、緩衝インバータ2の電源側のスイッチング素子5をスイッチングPMOS5Aとして、アース側をスイッチングNMOS5Bとする。タイマー回路6は、電圧印加型とした時定数回路と反転インバータ7a、bからなる。
【0046】
時定数回路は第1実施例と同様、第1抵抗R1とコンデンサCとの並列回路をアース側として、第2抵抗R2を電源側とする。そして、電源側のスイッチングPMOS5Aには第1反転インバータ7aからの出力電圧を印加する。アース側のスイッチングNMOS5Bには第2反転インバータ7bからの出力電圧を印加する。ここでは、第2反転インバータ7bの入力には、前述の第1反転インバータ7aの出力が印加される。
【0047】
このようなものでは、電源投入後、時定数回路出力電圧Vxは時定数τに基づき、0V電圧から指数関数的に上昇する。そして電源投入からTmsec(1msec)時に、Vxは反転インバータ7aの反転電圧(Vxo)を通過し、第1反転インバータ7aの出力をHレベルからLレベルに、第2インバータ7bの出力をLレベルからHレベルに切り替わる。
【0048】
従って、電源投入直後のTmsecまでは、電源側のスイッチングPMOS5Aには、第1反転回路7aからのHレベルが印加され、伝達用インバータ2と電源間を遮断する。一方、アース側のスイッチングNMOS5Bには第2反転インバータ7bからのLレベルが印加され、スイッチングNMOS5Bのソース・ゲート間を非導通として、伝達インバータ2とアース間は電気的に遮断される。
【0049】
そして、電源投入からTmsec後は第1反転インバータ7aからのLレベルによってスイッチングPMOS5aのソース・ドレイン間を導通し、電源Vddと伝達インバータ2とは電気的に接続する。同時に、第2反転インバータ7bからのHレベルによってスイッチングNMOS5bのソース・ドレイン間を導通し、伝達インバータ2とアース間を電気的に接続する。
【0050】
したがって、第3実施形態の具体例Bでも、電源投入直後のTmsecまでは、伝達インバータ2の動作を停止して次段回路の雑音の影響を受けずに、発振段の起動特性を良好にするとともに、Tmsec以降は伝達インバータ2が反転電圧をVdd/2として通常通りに動作するので、デューテー比を良好に維持する。
【0051】
(その他の実施形態)
以上の実施形態では、時定数回路を全て電圧印加型としたが、それを電流印加型としてもよい。第7図及び第8図は定電流印加型時定数回路を説明する図である。
【0052】
第7図(a)は、定電流源IとコンデンサCとを直列接続し、直列接続点から時定数関数電圧Vxを得る。但し、定電流源Iを電源側としてコンデンサCをアース側とする。この場合、直列接続点からの出力電圧Vxは、Vx=I・(t/C)となって、アース電位から電源電圧Vddまで、直線的に増加する特性となる「第7図(b)」。これは、例えば第1実施形態での具体例「第2図(b)」の電圧印加型とする時定数回路6Bに相当する。
【0053】
第8図(a)は、定電流源Iをアース側としてコンデンサCを電源側とする。この場合は、直列接続点での出力電圧Vxは、Vx=Vdd−I・(t/C)となって電源電圧Vddからアース電位まで直線的に減少する特性となる「第8図(b)」。これは、例えば第2実施形態での具体例「第4図(b)」に相当する。
【0054】
又、上記の実施形態では時定数回路の出力電圧はインバータを経由してスイッチング素子のオン・オフをコントロールとしていましたが、スイッチング素子の導通抵抗の影響が無視できる場合は、時定数回路の出力電圧にて直接スイッチング素子のオン・オフをさせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態を説明する水晶発振器の概念的な図である。
【図2】本発明の第1実施形態の具体例を説明する図で、同図(a)は水晶発振器特にスイッチングタイマー回路の図、同図(b)(c)はスイッチング電圧発生回路(電圧時定数回路)の出力特性である。
【図3】本発明の第2実施形態を説明する水晶発振器の概念的な図である。
【図4】本発明の第2実施形態の具体例を説明する図で、同図(a)は水晶発振器特にスイッチングタイマー回路の図、同図(b)(c)はスイッチング電圧発生回路(電圧時定数回路)の出力特性である。の図である。
【図5】本発明の第3実施形態を説明する水晶発振器の概念的な図である。
【図6】本発明の第3実施形態の具体例を説明する水晶発振器特にスイッチングタイマー回路の図である。
【図7】本発明のその他の実施形態の一例を説明する図で、電流印加型時定数回路を説明する図である。
【図8】本発明のその他の実施形態の他例を説明する図で、電流印加型時定数回路を説明する図である。
【図9】従来例を説明する水晶発振器の回路図で、同図(a)は発振インバータ及び伝達インバータを記号化して示した回路図、同図(b)(c)従来例を説明するCMOSインバータの入出力特性である。
【図10】従来例を説明する水晶発振器の信号伝送特性である。
【符号の説明】
【0056】
1 発振インバータ、2 伝達インバータ、3 水晶振動子、4 スイッチングタイマー回路、5 スイッチング素子、6 タイマー回路、7 反転インバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMOSからなる発振インバータと前記発振インバータに並列に接続された水晶振動子とを有する発振回路と、前記発振インバータの出力にCMOSからなる伝達インバータを接続した水晶発振器において、前記伝達インバータには、前記発振インバータの起動よりも前記伝達インバータが遅れて起動するスイッチングタイマー回路が設けられ、前記スイッチングタイマー回路はスイッチング素子と前記スイッチング素子の導通を前記発振インバータの起動よりも遅らせるタイマー回路とからなることを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記スイッチングタイマー回路は前記伝達インバータと電源との間、前記伝達インバータとアースとの間、又は前記伝達インバータと前記電源及び前記アースとの間のいずれにも設けられた水晶発振器。
【請求項3】
請求項1及び2において、前記タイマー回路は少なくともスイッチング電圧発生回路を有し、前記スイッチング電圧発生回路は電源投入から時間の関数とした出力電圧特性を発生するとともに前記電圧特性中には前記スイッチング素子を非導通から導通とする反転電圧を含む水晶発振器。
【請求項4】
請求項3において、前記スイッチング電圧発生回路は少なくともコンデンサと抵抗とを有する電圧印加型とする。これにより、コンデンサの充放電によって電源投入から時間の関数とした出力電圧特性を得る水晶発振器。
【請求項5】
請求項3において、前記スイッチング電圧発生回路は少なくともコンデンサと定電流源とを含む電流印加型とする水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−167236(P2008−167236A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355481(P2006−355481)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】