説明

水栓のバルブ

【課題】閉弁後において主弁を一定の力で閉弁状態に維持して良好な止水状態を維持し得るとともに、閉弁後において主弁に過剰な操作の力が加わるのを防止することのできる水栓のバルブを提供する。
【解決手段】主弁20と、ハンドル側の回転部材28と、回転部材28の回転により軸方向にねじ送りで進退移動して主弁20を移動させる進退部材42とを有する水栓のバルブにおいて、進退部材42と主弁20との間に緩衝ばね56を撓ませることによって主弁20の閉弁後における進退部材42の更なる前進移動を吸収する緩衝ばね機構54を設けるとともに、進退部材42の回止め機構48を、係合爪64,66とガイド溝68,70とを有し、主弁20の閉弁後に進退部材42が一定ストローク分前進移動した後に回止め作用を解除し、進退部材42を回転部材28と一体に空回転させるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は水栓のバルブに関し、詳しくは主弁の閉弁後における操作を軽くすることのできる水栓のバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水栓のバルブとして(イ)弁ケースの内部に設けられ、第1主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる第1主弁と、(ロ)ハンドル側の回転部材と、(ハ)回転部材とねじ結合されるとともに、弁ケースに対して回止め機構により回止めされ、回転部材の回転により軸方向にねじ送りで進退移動せしめられて第1主弁を開閉方向に移動させる進退部材とを有し、第1主弁の弁開度に応じて弁ケースに設けられた第1流入口からの弁ケース内部への水の流入量を制御する形式のバルブが公知である。
【0003】
このバルブにおいて、第1主弁が第1主弁座に当接して閉弁し、移動停止した後において、ハンドルからの操作力がそのまま第1主弁に加えられると、第1主弁が第1主弁座に過剰に強く押し付けられて第1主弁,第1主弁座が損傷してしまう恐れがある。
【0004】
一方でこの形式のバルブにあっては、第1主弁が第1主弁座に当接して閉弁した後においても、一定の力で第1主弁を第1主弁座に押し付けておくことが、止水状態を良好に維持する上で必要である。
【0005】
そこでハンドルからの過剰な操作の力を吸収し、また一方で第1主弁を第1主弁座に対して閉弁後も一定の力で押圧状態に保ち、止水状態を良好に維持するために、上記の進退部材と第1主弁との間に緩衝ばね機構を介在させ、通常時は進退部材の進退移動をその緩衝ばね機構を介して第1主弁に伝えて第1主弁を開閉方向に移動させ、以て弁開度を変化させるとともに、第1主弁が第1主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、緩衝ばねを撓ませることで第1主弁の閉弁後における進退部材の更なる前進移動を吸収するようになしておくことが考えられる。
【0006】
図26はその具体例を示している。
この例は自動温度調節機能付きの湯水混合のバルブの例で、図中300は弁ケース、302,304はそれぞれ第1流入口としての水(冷水)流入口,第2流入口としての湯(熱水)流入口で、306,308はそれぞれ弁ケース300内部に設けられた第1主弁としての水側主弁,第2主弁としての湯側主弁、307,309は水側主弁306,湯側主弁308に各対応した第1主弁座としての水側主弁座,第2主弁座としての湯側主弁座である。
水側主弁306は水側主弁座307に当接して閉弁し、また湯側主弁308は湯側主弁座309に当接して閉弁する。
【0007】
310はハンドルに連結され、ハンドルと一体回転する回転部材で、312はこの回転部材310にねじ結合され、且つ弁ケース300に対し回止め機構314にて回止めされた進退部材である。
【0008】
進退部材312は、回転部材310の回転によりねじ送りで軸方向即ち図26中左右方向に進退移動し、上記水側主弁306,湯側主弁308を有する主弁体316を軸方向に移動させて水側主弁306,湯側主弁308をそれぞれ開閉方向に移動させる。
ここで回止め機構314は、進退部材312から径方向外方に突出した係合爪318と、弁ケース300に設けられ、係合爪318を軸方向に移動可能且つ回転方向に移動不能に係入させるガイド溝320とを有している。
【0009】
322は進退部材312と主弁体316、詳しくは温調軸324との間に介在し、進退部材312の進退移動を温調軸324を介し主弁体316に伝達する緩衝ばね機構で、326はその主要素をなす緩衝ばねである。
尚、328は形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばね、330はバイアスばねである。
【0010】
この湯水混合バルブにおいては、ハンドルにて回転部材310を回転させると、進退部材312がねじ送りで図中左右方向に進退移動する。
そして進退部材312が図中右向きに前進移動すると、緩衝ばね機構322を介して主弁体316が図中右向きに移動し、水側主弁306が閉方向に、湯側主弁308が開方向に移動する。
【0011】
水側主弁306が水側主弁座307に当接して閉弁し、移動停止した後においては、緩衝ばね機構322の緩衝ばね326が撓むことで弾性力を水側主弁306に作用させ、水側主弁306をその弾性力で閉弁状態に維持するとともに、進退部材312の図中右方向の更なる前進移動を吸収する。そしてこれにより水側主弁306が水側主弁座307に過剰な操作の力で強く強制的に押し付けられるのを防止する。
【0012】
一方ハンドルにより回転部材310を逆回転させると、進退部材312が図中左方向に後退移動し、主弁体316が図中左方向に移動して水側主弁306が開弁方向に、また湯側主弁308が閉弁方向に移動する。
【0013】
湯側主弁308が湯側主弁座309に当接して閉弁し、移動停止した後においては、緩衝ばね機構322の緩衝ばね326が撓むことで弾性力を湯側主弁308に作用させ、湯側主弁308をその弾性力で閉弁状態に維持するとともに、進退部材312の更なる後退移動を吸収する。そしてこれにより湯側主弁308が湯側主弁座309に過剰な操作の力によって強く押し付けられるのを防止する。
【0014】
しかしながらこのような緩衝ばね機構322を設けた場合、かかる緩衝ばね機構322は通常時、即ち温調動作時には進退部材312の進退移動を緩衝ばね326を撓ませることなくそのまま主弁体316に伝達し、水側主弁306,湯側主弁308が閉弁した後において、そこで初めて緩衝ばね326を弾性変形させる(撓ませる)必要があることから、必然的に緩衝ばね326としてばね力の強いものを用いる必要があり、更に水側主弁306,湯側主弁308が閉弁した後においては進退部材312の前進移動,後退移動に伴って緩衝ばね326の撓みが大きくなって行く(潰されて行く)ことから、その際にハンドルの操作荷重が必要以上に大きなものとなり、操作が必要以上に重くなってしまう問題が生ずる。
【0015】
また緩衝ばね326が大きく撓んだ状態の下では、進退部材312から回転部材310に対し大きな反力が作用しており、その反力に基づいて、一旦回転操作したハンドルが回転部材310と進退部材312とのねじ結合に基づいて逆向きに自転して元に戻ろうとしてしまう現象を生じる。
特に湯水混合バルブの場合、ねじ部のねじのリード角が大きくとってあるため、そうした現象が起り易い。
使用者の意思に拘らずハンドルが勝手に回転してしまうことは、水栓の動作に対する信頼性を損なう原因となり、好ましくない。
【0016】
そこでこれを防止するためには、ハンドルの自転防止用に回転時の摺動抵抗を高めるためのOリングを付加する等、回転抵抗を高めるための機構を付加することが必要となり、この場合にはハンドル操作によって主弁体316を開閉方向に移動させる際、更に水側主弁306,湯側主弁308の閉弁後における操作荷重が更に高まってしまうといった問題を惹起する。
【0017】
尚、下記特許文献1には主弁が主弁座に当接して閉弁し、移動停止した後において、ハンドルからの過剰な操作力が主弁に加えられるのを防止するようになした単水栓のバルブが開示されているが、このものは本発明とは解決手段の異なった別異のものである。
【0018】
また下記特許文献2には、形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねと、バイアスばねとを有する水栓の湯水混合バルブが開示されているが、このものは本発明の特徴的な構成を備えておらず、本発明とは別異のものである。
【0019】
【特許文献1】特開2006−258272号公報
【特許文献2】特開2000−2360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景とし、閉弁後において主弁を一定の力で閉弁状態に維持して良好な止水状態を維持し得るとともに、閉弁後において主弁に過剰な操作の力が加わるのを防止することのできる水栓のバルブを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1のものは、(イ)弁ケースの内部に設けられ、第1主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる第1主弁と、(ロ)ハンドル側の回転部材と、(ハ)該回転部材とねじ結合されるとともに、前記弁ケースに対して回止め機構により回止めされ、該回転部材の回転により軸方向にねじ送りで進退移動せしめられて前記第1主弁を開閉方向に移動させる進退部材と、を有し、該第1主弁の弁開度に応じて前記弁ケースに設けられた第1流入口からの該弁ケース内部への水の流入量を制御する水栓のバルブであって、前記進退部材と前記第1主弁との間に介在し、該進退部材の進退移動を前記第1主弁に伝えて該第1主弁を開閉方向に移動させ、弁開度を変化させるとともに、該第1主弁が前記第1主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、緩衝ばねを撓ませることによって前記第1主弁の閉弁後における前記進退部材の更なる前進移動を吸収する緩衝ばね機構を設けるとともに、前記回止め機構を、(a)前記進退部材の側と前記弁ケースの側との一方に径方向に突出状態に設けられた係合爪と、(b)他方に設けられ、該係合爪を軸方向に移動可能且つ回転方向に移動不能に係入させるガイド溝とを含んで構成し、且つ該回止め機構は、前記第1主弁の閉弁後に前記進退部材が第一設定ストローク分前進移動した後に、前記係合爪が前記ガイド溝から外れて回止め作用を解除し、前記進退部材を前記回転部材の回転と一体に、該回転部材の前記第1主弁を閉弁させる方向の正方向に空回転させ、また該正方向の空回転と同じだけ逆方向に空回転した後に、再び前記係合爪を前記ガイド溝に係入させて回止め作用を回復するものとなしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、(イ)弁ケースの内部に設けられ、温調軸の進退移動により、第1主弁座としての水側主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる第1主弁としての水側主弁、及び第2主弁座としての湯側主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる第2主弁としての湯側主弁と、(ロ)ハンドル側の回転部材と、(ハ)該回転部材とねじ結合されるとともに、前記弁ケースに対して回止め機構により回止めされ、該回転部材の回転により軸方向にねじ送りで進退移動せしめられる進退部材と、を有し、該進退部材の進退移動により緩衝ばね機構を介して前記温調軸を進退移動させ、該温調軸の前進により前記水側主弁を閉方向、前記湯側主弁を開方向に、該温調軸の後退移動により前記水側主弁を開方向、前記湯側主弁を閉方向にそれぞれ移動させ、前記弁ケースに設けられた第1流入口としての冷水流入口、第2流入口としての熱水流入口からの該弁ケース内部への冷水,熱水の流入量を制御する水栓の湯水混合のバルブであって、前記回止め機構は、(a)前記進退部材の側と前記弁ケースの側との一方に径方向に突出状態に設けられた係合爪と、(b)他方に設けられ、該係合爪を軸方向に移動可能且つ回転方向に移動不能に係合させるガイド溝とを含んで構成し、前記緩衝ばね機構は、前記水側主弁が前記水側主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、緩衝ばねを撓ませることによって該水側主弁の閉弁後における前記進退部材の更なる前進移動を吸収し、また前記湯側主弁が前記湯側主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、前記緩衝ばねを撓ませることによって該湯側主弁の閉弁後における前記進退部材の更なる後退移動を吸収するものとなしてあり、更に前記回止め機構は、前記水側主弁の閉弁後に前記進退部材が第1設定ストローク分前進移動した後に、前記係合爪が前記ガイド溝から外れて回止め作用を解除し、該進退部材を前記回転部材の回転と一体に、該回転部材の前記水側主弁を閉弁させる方向の正方向に空回転させ、また該正方向の空回転と同じだけ逆方向に空回転した後に、再び前記係合爪を前記ガイド溝に係入させて回止め作用を回復するものとなしてあるか、又は/及び前記湯側主弁の閉弁後に前記進退部材が第2設定ストローク分後退移動した後に、前記係合爪が前記ガイド溝から外れて回止め作用を解除し、該進退部材を前記回転部材の回転と一体に、該回転部材の前記湯側主弁を閉弁させる方向の逆方向に空回転させ、また該逆方向の空回転と同じだけ正方向に空回転した後に、再び前記係合爪を前記ガイド溝に係入させて回止め作用を回復するものとなしてあることを特徴とする。
【0023】
請求項3のものは、請求項2において、前記湯水混合のバルブが自動温度調節機能付のものであって、混合水温度に感応して軸方向に伸縮し、混合水が設定温度よりも高くなったときに前記水側主弁を開き、前記湯側主弁を閉じる方向にそれら水側主弁及び湯側主弁を移動させる感温体と、該水側主弁及び湯側主弁に対し該感温体による移動方向と逆方向の付勢力を作用させるばねと、を有していることを特徴とする。
【0024】
請求項4のものは、請求項3において、前記感温体が形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねであることを特徴とする。
【0025】
請求項5のものは、請求項4において、前記水側主弁及び湯側主弁を有する主弁体が前記温調軸と別体に構成されていて、該主弁体が該温調軸に対して相対移動可能に該温調軸にて保持されているとともに、該温調軸には更に、前記主弁体に対して軸方向の互いに逆の側に、前記感温ばねと前記バイアスばねとが該主弁体に対して軸方向の逆向きに付勢力を及ぼす状態に組み付け保持されており、それら感温ばね及びバイアスばねが前記主弁体とともに、前記温調軸の移動につれて全体の長さを一定に保持しつつともに移動可能な弁ユニットを成していることを特徴とする。
【0026】
請求項6のものは、請求項1において、前記バルブが、前記第1主弁の背後に形成され、内部の圧力を該第1主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、前記第1流入口からの1次側の水を該背圧室内に導いて圧力上昇させる導入小孔と、該背圧室の水を前記第1主弁の下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜孔としてのパイロット孔と、該第1主弁に形成されたパイロット弁座に向けて進退移動し、該パイロット孔の開度を制御して前記第1主弁を同方向に追従して進退移動させるパイロット弁と、を有するパイロット式のバルブであって、該パイロット弁の前記パイロット弁座への当接により前記第1主弁を閉弁させるようになしてあり、且つ前記進退部材が該パイロット弁を移動させ、該パイロット弁を介して前記第1主弁を開閉方向に移動させるものとなしてあることを特徴とする。
【0027】
請求項7のものは、請求項2,3の何れかにおいて、前記湯水混合のバルブが、パイロット弁を有し、該パイロット弁の進退移動により、前記水側主弁又は/及び湯側主弁に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室の圧力を増減させ、該水側主弁又は/及び湯側主弁を開閉方向に移動させるとともに、該水側主弁の閉弁時に該湯側主弁を同期して全開させ、また該湯側主弁の閉弁時に該水側主弁を同期して全開させるパイロット式のバルブとなしてあり、且つ該パイロット弁が前記温調軸に保持させてあって、前記進退部材が該温調軸を進退移動させるものとなしてあることを特徴とする。
【0028】
請求項8のものは、請求項7において、前記パイロット弁が前記温調軸と別体に構成されていて、該パイロット弁が該温調軸に対して相対移動可能に該温調軸にて保持されているとともに、前記湯水混合のバルブが自動温度調節機能付きのものとなしてあって、該温調軸には更に、前記パイロット弁に対して軸方向の互いに逆の側に、前記感温体としての形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねと、前記バイアスばねとが該パイロット弁に対して軸方向の逆向きに付勢力を及ぼす状態に組み付け保持されており、それら感温ばね及びバイアスばねが前記パイロット弁とともに、前記温調軸の移動につれて全体の長さを一定に保持しつつともに移動可能なパイロット弁ユニットを成していることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0029】
以上のように本発明は、ハンドル側の回転部材の回転によりねじ送りで軸方向に進退移動する進退部材と第1主弁との間に介在する状態に緩衝ばね機構を設け、進退部材の進退移動を緩衝ばね機構を介し第1主弁に伝えてこれを開閉方向に移動させ、弁開度を変化させるとともに、第1主弁が第1主弁座に当接して閉弁し、移動停止した後においては緩衝ばねを撓ませることで、第1主弁の閉弁後における進退部材の更なる進退移動を吸収するようになすとともに、進退部材を回止めする回止め機構を、進退部材の側と弁ケース側との一方に径方向に突出状態に設けられた係合爪と、他方に設けられ、係合爪を軸方向に移動可能且つ回転方向に移動不能に係入させるガイド溝とを含んで構成し、且つその回止め機構を、第1主弁の閉弁後に進退部材が第一設定ストローク分前進移動した後に、係合爪がガイド溝から外れて回止め作用を解除し、進退部材を回転部材の回転と一体に、回転部材の第1主弁を閉弁させる方向の正方向に空回転させ、また正方向の空回転と同じだけ逆方向に空回転した後に、再び係合爪をガイド溝に係入させて回止め作用を回復するようになしたものである。
【0030】
本発明によれば、第1主弁が第1主弁座に当接して閉弁した後においても、緩衝ばね機構における緩衝ばねのばね力で第1主弁を第1主弁座に押圧状態に保持し、止水状態を良好に維持することができる。
【0031】
また第1主弁が第1主弁座に当接して閉弁し、移動停止した後においては、緩衝ばねを撓ませることで第1主弁の閉弁後における進退部材の更なる前進移動を吸収でき、過剰な操作力によって第1主弁が第1主弁座に強制的に強く押し付けられるのを防止し得て、第1主弁や第1主弁座或いは操作力の伝達機構が損傷してしまうのを良好に防止することができる。
【0032】
但し第1主弁の閉弁後において、ハンドルに加えられた操作力が緩衝ばねの撓みだけで吸収されてしまうと、必要以上に操作荷重が増大し、水栓の使い勝手が悪化してしまう。
またハンドルを強く回し過ぎたとき、ハンドルから手を離すとそのハンドルが、詳しくは回転部材が進退部材とのねじ結合に基づいて緩衝ばねの大きな反力により戻り側に回転(自転)してしまう現象を生ずる。
【0033】
しかるに本発明では進退部材の回止めをなす回止め機構が、第1主弁の閉弁後に進退部材が第一設定ストローク分前進移動すると、そこで回止め作用を解除し、進退部材を回転部材とともに一体に空回転(正方向に)させ、進退部材の更なる前進を停止させるため、緩衝ばねがそれ以上に過剰に撓んでしまうことはなく、従って緩衝ばねの必要以上の大きな撓みによって、即ちその反力によって回転部材及びハンドルが戻り側に自分自身で回転してしまうのを良好に防止することができる。
【0034】
またハンドルを過剰に操作した後において、ハンドルが緩衝ばねの大きな撓みによる反力で元に戻ろうとするのを防止するために、Oリングの付加などハンドルの回転抵抗を高めるための別途の機構を設けなくても良く、従ってその回転抵抗を高めるための機構が、通常の操作に際して或いは主弁の閉弁後における操作に際して操作荷重を一層大きくしてしまう問題も併せて解決することができる。
【0035】
尚、進退部材を上記正方向に空回転させた後、これと同じだけ逆方向に回転部材とともに空回転させると、そこで再び回止め機構の係合爪がガイド溝に係入して回止め作用を回復するため、その後において回転部材を逆方向に回転させることで、進退部材を回止め機構による回止め作用の下で支障なく後退移動させ、閉弁状態の第1主弁を開弁動作させることができる。
【0036】
本発明は、単水栓のバルブに適用できることはもとより、湯水混合のバルブ、詳しくは温調軸と、第1主弁としての水側主弁及び対応する第1主弁座としての水側主弁座と、第2主弁としての湯側主弁及び対応する第2主弁座としての湯側主弁座と、第1流入口としての冷水流入口及び第2流入口としての熱水流入口とを有する湯水混合のバルブにも適用することができる(請求項2)。
【0037】
この場合、進退部材の進退移動により緩衝ばね機構を介して温調軸を進退移動させ、温調軸の前進により水側主弁を開方向に、温調軸の後退移動により湯側主弁を閉方向にそれぞれ移動させるようになしておくことができる。
【0038】
また緩衝ばね機構は、水側主弁が水側主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、緩衝ばねを撓ませることによって水側主弁の閉弁後における進退部材の更なる前進移動を吸収し、また湯側主弁が湯側主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、緩衝ばねを撓ませることによって進退部材の更なる後退移動を吸収するものとなしておくことができる。
更に上記の回止め機構は、水側主弁の閉弁後に進退部材が第1設定ストローク分前進移動した後に、係合爪がガイド溝から外れて回止め作用を解除し、進退部材を回転部材の回転と一体に、回転部材の水側主弁を閉弁させる方向の正方向に空回転させ、また正方向の空回転と同じだけ逆方向に空回転した後に、再び係合爪をガイド溝に係入させて回止め作用を回復するものとなしておくか、又は/及び湯側主弁の閉弁後に進退部材が第二設定ストローク分後退移動した後に、係合爪がガイド溝から外れて回止め作用を解除し、進退部材を回転部材の回転と一体に、回転部材の湯側主弁を閉弁させる方向の逆方向に空回転させ、また逆方向の空回転と同じだけ正方向に空回転した後に、再び係合爪をガイド溝に係入させて回止め作用を回復するものとなしておくことができる。
【0039】
このようにしておくことで、水側主弁及び湯側主弁を緩衝ばねの弾性力により閉弁後においても良好に止水状態に保持することができるとともに、水側主弁又は/及び湯側主弁の閉弁後においてハンドルの操作荷重が必要以上に大きくなるのを防止でき、更にハンドルが自転して元に戻ろうとするのを防止することができる。
【0040】
本発明は自動温度調節機能付きの湯水混合のバルブに対しても好適に適用可能である。
詳しくは、混合水温度に感応して軸方向に伸縮し、混合水が設定温度よりも高くなったときに水側主弁を開き、湯側主弁を閉じる方向にそれらを移動(微動)させる感温体と、その逆方向の付勢力を作用させるばねとを有し、それら感温体とばねとによって水側主弁,湯側主弁をそれぞれ設定した弁開度に自動的に調整する機能を有するものに適用することができる(請求項3)。
【0041】
この場合において、その感温体として形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねを好適に用いることができる(請求項4)。
【0042】
更にこの場合において水側主弁,湯側主弁,感温体としての感温ばね,バイアスばねを温調軸に保持させて弁ユニットと成し、それらを温調軸とともにその軸方向に移動させるようになすことができる。
詳しくは、水側主弁及び湯側主弁を有する主弁体を温調軸と別体に構成して、これを温調軸にて相対移動可能に保持するとともに、その温調軸には更に、主弁体に対して軸方向の互いに逆の側に感温ばねとバイアスばねとを、主弁体に対し逆向きに付勢力を及ぼす状態に組み付け保持しておき、感温ばね及びバイアスばねを合計の長さを一定に保持させるようにして主弁体とともに温調軸と一体に軸方向に移動させるようになすことができる(請求項5)。
【0043】
このようにしておけば、温調動作に際して回転部材の回転により進退部材を進退移動させる際、バイアスばねのばね力が抵抗力として作用しないため、緩衝ばねのばね力をバイアスばねのばね力に打ち勝つような大きなばね力を有するものとなしておかなくても良く、即ち緩衝ばねのばね力を必要最小限の小さなばね力に設定することができ、従って水側主弁,湯側主弁の閉弁後におけるハンドルの操作荷重を可及的に小さくすることができ、軽操作を実現できる。
更に緩衝ばねのばね力を小さくできることから、これをコイルばねにて構成する場合においてその径を小さくでき、進退部材を空回転させる際の摺動抵抗も小さくすることができる。
【0044】
本発明では、請求項1におけるバルブをパイロット式のバルブとして構成しておくことができ、このようになした場合、第1主弁を閉弁させ止水する際に必要な力の一部を水圧が担うため、緩衝ばねのばね力をより小さく設定することができ、従って第1主弁の閉弁後における操作荷重を小さくすることができる(請求項6)。
【0045】
本発明はまた、請求項7に従って湯水混合バルブをパイロット式のバルブとして構成しておくことができる。
詳しくは湯水混合バルブをパイロット弁を有するものとなし、そしてパイロット弁の進退移動により、水側主弁又は/及び湯側主弁に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室の圧力を増減させ、以て水側主弁又は/及び湯側主弁を開閉方向に移動させるとともに、水側主弁の閉弁時に湯側主弁を同期して全開させ、また湯側主弁の閉弁時に水側主弁を同期して全開させるパイロット式のバルブとなし、そしてそのパイロット弁を温調軸に保持させて、進退部材により温調軸を進退移動させるものとなしておくことができる。
ここで湯水混合バルブをパイロット式のバルブとして構成するに際し、これを様々な形態のパイロット式バルブとなすことができる。
【0046】
例えば湯水混合バルブを以下の(A),(B),(C)の構成を有するパイロット式バルブとして構成することができる。
(A)(イ)水側主弁の背後に形成され、内部の圧力を水側主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室としての水側背圧室と、(ロ)水流入口からの1次側の水を水側背圧室の内部に導入して圧力上昇させる水側導入小孔と、(ハ)水側背圧室内の水を水側主弁の下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜孔としての水側パイロット孔と、(ニ)水側主弁に形成された水側パイロット弁座に向けて進退移動して水側パイロット孔の開度を制御し、水側主弁を同方向に追従して進退移動させる水側パイロット弁とを有するものとなすとともに、湯側主弁を水側主弁と一体に構成して、水側主弁を駆動弁として湯側主弁を一体に移動させるようになしたパイロット式の湯水混合バルブ。
【0047】
(B)(イ)湯側主弁の背後に形成され、内部の圧力を湯側主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室としての湯側背圧室と、(ロ)湯流入口からの1次側の湯を湯側背圧室の内部に導入して圧力上昇させる湯側導入小孔と、(ハ)湯側背圧室内の湯を湯側主弁の下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜孔としての湯側パイロット孔と、(ニ)湯側主弁に形成された湯側パイロット弁座に向けて進退移動して湯側パイロット孔の開度を制御し、湯側主弁を同方向に追従して進退移動させる湯側パイロット弁とを有するものとなすとともに、水側主弁を湯側主弁と一体に構成して、湯側主弁を駆動弁として水側主弁を一体に移動させるようになしたパイロット式の湯水混合バルブ。
【0048】
(C)水側主弁と湯側主弁とが互いに別体且つ独立して移動可能とされているとともに(イ)水側主弁,湯側主弁の背後に形成され、内部の圧力を水側主弁,湯側主弁に対して閉弁方向の押圧力としてそれぞれ作用させる背圧室としての水側背圧室,湯側背圧室と、(ロ)水流入口,湯流入口からの1次側の水,湯をそれら背圧室の内部に導入して圧力上昇させる水側導入小孔,湯側導入小孔と、(ハ)水側,湯側の各背圧室内の水,湯を水側主弁,湯側主弁の各下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜孔としての水側パイロット孔,湯側パイロット孔と、(ニ)水側主弁,湯側主弁に形成された水側,湯側の各パイロット弁座に向けて進退移動して各パイロット孔の開度を制御し、水側主弁,湯側主弁をそれぞれ同方向に追従して進退移動させる水側パイロット弁,湯側パイロット弁と、を有するものとなしてあるパイロット式の湯水混合バルブ。
【0049】
次に請求項8は、自動温度調節機能付きの湯水混合のバルブにおいて、パイロット弁を感温体としての感温ばね及びバイアスばねとともに温調軸に組み込み、それらを一体に温調軸の軸方向に移動するパイロット弁ユニットとして構成したもので、この請求項8によれば、温調動作に際して回転部材の回転により進退部材を進退移動させる際、バイアスばねのばね力が抵抗力として作用せず、しかもパイロット弁により背圧室の圧力を制御することで主弁を移動させることができるため、更に主弁を閉弁させるための力の一部を水圧にて担うことができるため、緩衝ばねのばね力をより一層小さくでき、ハンドルの操作荷重を更に効果的に小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明を単水栓のバルブに適用した場合の実施形態を示したもので、図中10は弁ケースである。
弁ケース10には、第1流入口としての水(冷水)流入口12と流出口14、及び水流入口12に続く水流入通路16,流出口14に続く水流出通路18とが設けられている。
【0051】
20は主弁(第1主弁)で、22はこれに対応して円筒部24の図中上端部に構成された主弁座(第1主弁座)である。
主弁20は主弁座22に向けて図中上下方向に移動し、そして図中下向きの移動により、弾性材から成るシール部材(弁シート)26を主弁座22に当接させて閉弁し、また図中上方向の移動により主弁座22から離間し且つその離間量に応じて弁開度を変化させる。
【0052】
28はハンドル側の回転部材で、軸部30と円筒部32とを有しており、その軸部30において弁ケース10の嵌合孔34に回転可能に嵌合されている。
軸部30は、環状シール部材としてのOリング38により嵌合孔34に対し水密にシールされ、また弁ケース10からの突出部分にはハンドル連結部36が設けられており、そのハンドル連結部36において回転操作式のハンドル(図6中のハンドル130)と一体回転状態に連結されるようになっている。
【0053】
40は軸部30に装着された止め輪で、回転部材28は、この止め輪40と円筒部32とによって、弁ケース10に対し軸方向即ち図中上下方向に位置決めされている。
【0054】
42は、回転部材28にねじ結合されて図中上下方向の軸方向に進退移動する進退部材である。
この進退部材42には外周面に雄ねじ44が形成され、この雄ねじ44が、回転部材28における円筒部32の内周面に形成された雌ねじ46に螺合されている。
【0055】
進退部材42は、これら雄ねじ44と雌ねじ46とにより、弁ケース10と進退部材42とにまたがって設けられた回止め機構48による回止め作用の下に、回転部材28の回転により、図中上下方向に移動せしめられる。
この進退部材42は図中下端部に径方向内向きの掛止部50を有し、この掛止部50を、主弁20の被掛止部としてのフランジ部52に掛止させ、主弁20を図中上向きに支持している。
【0056】
54は、この進退部材42と主弁20との間に介在せしめられた緩衝ばね機構で、56はその主要素をなすコイルばねから成る緩衝ばねである。
緩衝ばね56は、図中上端を進退部材42の段付部58に当接させるとともに、下端を主弁20における上記のフランジ部52に当接させ、主弁20を図中下向きに付勢している。
【0057】
主弁20は、この緩衝ばね56による図中下向きの付勢力に基づいて、進退部材42に保持されつつ進退部材42と一体に図中上下方向に移動する。
尚、主弁20は図中上向きに突出した軸部60を有しており、また進退部材42には、この軸部60を上向きに挿入させる凹部62が設けられている。
【0058】
上記回止め機構48は、進退部材42から径方向外方に突出した一対の係合爪64,66と、弁ケース10に設けられ、これら係合爪64,66をそれぞれ図中上下方向(軸方向)に移動可能且つ回転方向に移動不能に係入させる一対のガイド溝68,70を有している。
ここで一対の係合爪64,66及び一対のガイド溝68,70は周方向に180°隔たった2個所に設けられている。
【0059】
この回止め機構48は、通常時には一対の係合爪64,66をガイド溝68に係入させた状態にあって、ハンドルにより回転部材28を回転させたときに進退部材42を回止めし、そのことによって進退部材42をねじ送りで図中上下方向に進退せしめる。
【0060】
但し主弁20が主弁座22に当接し閉弁した時点から、更に進退部材42が緩衝ばね56を撓ませつつ図中下向きに一定ストローク(第一設定ストローク)移動したところで、係合爪64,66がガイド溝68,70から図中下向きに外れるように係合爪64,66とガイド溝68,70との位置関係が定めてある。
【0061】
回止め機構48はまた、一対のガイド溝68,70のそれぞれの図中下端から下向きに突出したストッパ部72を有している。
ここでストッパ部72は、一対のガイド溝68,70に対して、対応する一対の係合爪64,66の回転方向、詳しくは回転部材28の回転方向と逆の側で図中下向きに立ち下がっている。
【0062】
従ってガイド溝68,70から図中下向きに外れた一対の係合爪64,66は、回転部材28の回転方向(主弁20を閉弁させる方向である正方向)には回転可能であるが、逆方向に対してはこのストッパ部72にて回転阻止される。
【0063】
次にこの実施形態の作用を以下に説明する。
この実施形態においては、ハンドルと一体回転状態に連結された回転部材28を、ハンドルに加えた操作力により図2中矢印方向に回転させると、図3(I)に示すように回止め機構48の回止め作用により進退部材42がねじ送りで図中下向きに前進移動させられる。
このとき、進退部材42に保持された主弁20もまた一体に図中下向きに、即ち閉弁方向に移動させられる。
そしてある位置で主弁20が主弁座22に当接し、図2(I)に示すように主弁20が閉弁する。
【0064】
主弁20は、主弁座22への当接による閉弁によって移動停止されるが、主弁20を保持した進退部材42と主弁20との間には緩衝ばね56が介在させてあって、緩衝ばね56が主弁20を下向きに付勢しているため、図2(II)に示しているように進退部材42は、主弁20が閉弁した時点からも更に引き続いて図中下向きに前進する。
【0065】
即ち進退部材42は、主弁20が閉弁した後においては緩衝ばね56を撓ませつつ、回転部材28の回転により更に引き続いてねじ送りで図中下向きに前進移動する。
このときの緩衝ばね56の撓みによる弾性力によって、主弁20は主弁座22に対し図中下向きに押圧され、その押圧力に基づいて主弁20が良好にシール状態に保持される。即ち止水状態に保持される。
【0066】
一方、図2(II)に示すように進退部材42が一定ストローク(第一設定ストローク)だけ図中下向きに前進移動すると、その時点で回止め機構48における一対の係合爪64,66が、対応するガイド溝68,70の下端から外れ(図3(II)参照)、ここにおいて進退部材42が回転部材28とともに図2中矢印方向(正方向)に一体に空回転し、そしてその空回転に基づいて、回転部材28の回転にも拘らず進退部材42はそれ以後図中下向きの移動が停止される。
【0067】
尚、上記係合爪64,66は図3中上端に丸み付けした小突起74を有しており、この小突起74を、ガイド溝68,70の下端から周方向に連続して形成した摺動面76に沿って摺動させる。
従って摺動面76に沿って係合爪64,66が摺動する際の摺動抵抗は小さい。
尚図3(III)において、ストッパ部72の左側の摺動面76は、係合爪64又は66とは180°異なった周方向位置の係合爪66又は64の摺動用のものである。
【0068】
一方閉弁状態にある主弁20を開弁させるべく回転部材28をハンドルとともに上記とは逆方向、即ち図2中矢印とは反対方向に回転させると、これとともに進退部材42が先の矢印方向の空回転と同じだけ逆方向に空回転したところで、一対の係合爪64,66がストッパ部72に当接するに到り、ここにおいて更なる逆方向の空回転が阻止される。そして一対の係合爪64,66が対応するガイド溝68,70に再び係入するに到り、回止め機構48が回止め作用を回復する。
【0069】
従ってこの状態で回転部材28を更に引き続いて矢印と逆方向に回転させると、進退部材42がねじ送りで図中上向きに後退移動し、そしてある位置で進退部材42の掛止部50が、主弁20のフランジ部52に掛止するに到って、進退部材42の後退移動とともに主弁20が図中上向きに持ち上げられ、主弁座22から図中上向きに離間させられる。即ち主弁20が開弁させられる。
【0070】
以上のような本実施形態によれば、主弁20が主弁座22に当接して閉弁した後に、緩衝ばね機構54における緩衝ばね56のばね力で主弁20を主弁座22に押圧状態に保持し、止水状態を良好に維持することができる。
【0071】
また主弁20が主弁座22に当接して閉弁し移動停止した後においては、緩衝ばね56を撓ませることで主弁20の閉弁後における進退部材42の更なる前進移動を吸収でき、過剰な操作力によって主弁20が主弁座22に強制的に強く押し付けられるのを防止し得て、主弁20や主弁座22或いは操作力の伝達機構が損傷してしまうのを良好に防止することができる。
【0072】
但し主弁20の閉弁後においてハンドルに加えられた操作力が緩衝ばね56の撓みだけで吸収されてしまうと、必要以上に操作荷重が増大し、水栓の使い勝手が悪化してしまう。
またハンドルを強く回し過ぎたとき、ハンドルから手を離すとそのハンドルが、詳しくは回転部材28が、進退部材42とのねじ結合に基づいて緩衝ばね56の大きな反力により戻り側に回転(自転)してしまう現象を生ずる。
【0073】
しかるに本実施形態では、進退部材42の回止めをなす回止め機構48が、主弁20の閉弁後に進退部材42が一定ストローク分前進移動すると、そこで回止め作用を解除し、進退部材42を回転部材28とともに一体に空回転(正方向に)させ、進退部材42の更なる前進を停止させるため、緩衝ばね56がそれ以上に過剰に撓んでしまうことはなく、従って緩衝ばね56の必要以上の大きな撓みによって即ちその反力によって、回転部材28及びハンドルが戻り側に自分自身で回転してしまうのを良好に防止することができる。
【0074】
またハンドル130を過剰に操作した後において、ハンドル130が緩衝ばね56の大きな撓みによる反力で元に戻ろうとするのを防止するために、Oリングの付加などハンドルの回転抵抗を高めるための別途の機構を設けなくても良く、従ってその回転抵抗を高めるための機構が、通常の操作に際して或いは主弁20の閉弁後における操作に際して操作荷重を一層大きくしてしまう問題も併せて解決することができる。
【0075】
この実施形態では、進退部材42を正方向に空回転させた後、これと同じだけ逆方向に回転部材28とともに空回転させると、そこで再び回止め機構48が回止め作用を回復するため、その後において回転部材28を逆方向に回転させることで、進退部材42を支障なく図中上方に後退移動させ得、閉弁状態の主弁20を開弁動作させることができる。
【0076】
図4及び図5は、上記実施形態のバルブをパイロット式のバルブとして構成した例である。
図において78はパイロット弁で、この例では上記主弁20に代えてパイロット弁78が上記と同様の構造で進退部材42にて保持され、また同じく進退部材42が上記と同様の構造にて回転部材28にねじ結合され、また回止め機構48にて回止めされている。
更に上記と同様の緩衝ばね機構54にてパイロット弁78が図中下向きに付勢されている。
従ってここでは対応する部分に符号のみを示して、それらについての更に詳しい説明は省略する。
【0077】
80はダイヤフラム弁から成る主弁で、硬質の主弁本体82と、これに保持されたゴム製のダイヤフラム膜84とを有しており、そのダイヤフラム膜84の外周部において弁ケース10に固定され、外周部の内側の中央部分が図中上下方向に変位可能とされている。
【0078】
81は、この主弁80の図中上側の背後に形成された背圧室で、この背圧室81は、内部の圧力を主弁80に対し図中下向きの閉弁方向の押圧力として作用させる。
84は、主弁80を貫通して設けられた導入小孔で、この導入小孔83は、水流入口12側の1次側の水を背圧室81に導いて背圧室81の圧力を増大させる。
【0079】
86は、主弁80を中心部において貫通する状態に設けられた圧抜孔としてのパイロット孔で、このパイロット孔86は、背圧室81内の水を水流出口14側の2次側に抜いて背圧室81の圧力を減少させる。
主弁80には、背圧室81側においてパイロット孔86周りにパイロット弁座88が形成され、このパイロット弁座88に向けてパイロット弁78が図中上下方向に進退移動せしめられる。
【0080】
而してパイロット弁78がパイロット弁座88に当接することでパイロット弁78が閉弁状態となり、また一方パイロット弁78がパイロット弁座88から図中上向きに離間することによって、パイロット弁78が開弁状態となる。
【0081】
94は、このパイロット弁78の軸部で、上記進退部材42に設けられた凹部62は、このパイロット弁78の軸部94を図中上向きに挿入させるものとなしてある。
尚、90はパイロット弁78に設けられた弾性材から成るシール部(弁シート)で、92はパイロット弁78の軸部94と、弁ケース10における軸部94の嵌合孔とを水密にシールする環状シール部材としてのOリングである。
【0082】
この実施形態のパイロット式のバルブにおいては、図4に示す状態、即ちパイロット弁78がパイロット弁座88から図中上向きに離間し、パイロット弁78が開弁した状態の下で、パイロット弁78を図中下向きに即ち閉弁方向に移動させると、パイロット弁78とパイロット弁座88との間の隙間が一時的に小さくなって、パイロット孔86の開度(背圧室81に対する開度)が一時的に小さくなる。
【0083】
するとパイロット孔86を通じて2次側に流出する背圧室81内の水の流量が少なくなって背圧室81の圧力が増大し、その増大した圧力によって、主弁80に対する図中下向きの押圧力が高まる。
その結果、主弁80が図中下向きに即ち閉弁方向に微小移動する。
【0084】
するとパイロット孔86の開度が大きくなって、背圧室81からパイロット孔86を通じて流出する水の流量が大となり、その結果背圧室81の圧力が減少する。
そして背圧室81の圧力と水流入口12側の1次側の圧力がバランスしたところで、主弁80の下向きの移動が停止する。
このとき、パイロット弁78とパイロット弁座88との間の隙間は当初と同じ大きさの隙間となる。即ちパイロット孔86の開度が当初と同じ状態となる。
【0085】
以後主弁80は、パイロット弁78とパイロット弁座88との間に一定の微小な追従間隙を維持しつつ、パイロット弁78の図中下向きの移動と同じ方向に且つパイロット弁78に追従して移動し、そして最終的に主弁80が主弁座22に当接し閉弁するに到る。またこのときパイロット弁78もパイロット弁座88に当接して閉弁状態となる。
【0086】
逆にパイロット弁78が図中上向きに、即ち開弁方向に移動すると、主弁80がパイロット弁78との間に一定の微小な追従間隙を維持しつつ、パイロット弁78に追従して上向きに移動し、開弁動作する。
その際の主弁80の開弁量は、パイロット弁78の後退移動量によって規定される。
【0087】
本実施形態では、回転部材28をハンドルとともに図5中矢印方向に回転させると、これにより進退部材42が図中下向きに前進移動し、開弁状態にあるパイロット弁78を図中下向きに前進移動させる。そしてこれにより主弁80がパイロット弁78に追従して下向きに移動し、弁開度を減少させる。
そして最終的にパイロット弁78がパイロット弁座88に当接して閉弁し、また主弁80が主弁座22に当接して閉弁するに到る(図5(I))。
【0088】
このようにしてパイロット弁78及び主弁80を閉弁させた状態の下で、回転部材28を更に図5中矢印方向に引き続き回転させると、主弁80及びパイロット弁78の図中下向きの移動が停止されているため、ここにおいて緩衝ばね56が上下方向に撓み、引き続く進退部材42の下向きの前進を許容する。
そしてその緩衝ばね56の弾性変形により、パイロット弁78及び主弁80が閉弁方向に押圧され且つその押圧状態に保持される。
【0089】
一方進退部材42は、パイロット弁78及び主弁80の閉弁後おいて一定ストローク下向きに移動すると、ここにおいて上記と同様にして回止め機構48による回止め作用が解除され、進退部材42の更なる下向きの移動が停止される(図5(II))。
【0090】
また上記と同様にしてパイロット弁78,主弁80を開弁させるべく図5の矢印と逆方向に回転部材28を回転させると、あるところで回止め機構48による回止め作用が回復し、その後においては進退部材42が、回転部材28の図5中矢印と逆方向の回転に伴ってねじ送りで図中上向きに引き上げられ、またこれにより緩衝ばね56が再び伸びた状態となって、進退部材42の上向きの移動により、パイロット弁78が上向きに引き上げられる。即ち開弁方向に引き上げられる。またこれとともに主弁80がパイロット弁78に追従して上向きに移動し、開弁動作する。
【0091】
この実施形態では、主弁80を閉弁させ止水する際に必要な力の一部を水圧が担うため、緩衝ばね56のばね力をより小さく設定することができ、従って主弁80の閉弁後における操作荷重を小さくすることができる。
尚、この実施形態では、Oリング92にて水密にシールしているので、Oリング38は省略しても良い。
【0092】
図6〜図10は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、本発明を湯水混合弁(非パイロット式の湯水混合弁)に適用した場合の例で、この湯水混合弁は、上記実施形態と同様に弁ケース10を有し、その弁ケース10に、第1流入口としての水流入口12と、第2流入口としての湯(熱水)流入口100とが設けられている。またこれら水流入口12,湯流入口100に続いて水流入通路16,湯流入通路102が設けられている。
これら水流入口12と湯流入口100とから流入した水と湯とは、混合室104で混合された上、流出口106から図中右向きに流出する。
【0093】
弁ケース10の内部には、円筒形状をなす主弁体108が図中左右方向に摺動可能に設けられている。
主弁体108には、第1主弁としての水側主弁110と、第2主弁としての湯側主弁112とが一体に構成されており、主弁体108の図中左右方向の移動によって、水側主弁110と湯側主弁112とが、互いに逆の関係で弁開度を大小変化させるようになっている。
そしてこれら水側主弁110,湯側主弁112の弁開度の変化により、水流入口12,湯流入口100から流入する水と湯との比率が変化し、混合水温度が調整される。
【0094】
弁ケース10には、水側主弁110及び湯側主弁112にそれぞれ対応して、第1主弁座としての水側主弁座114及び第2主弁座としての湯側主弁座116が設けられており、上記水側主弁110は、この水側主弁座114に対し軸方向に当接して閉弁する。
また湯側主弁112が湯側主弁座116に当接して閉弁する。
【0095】
この実施形態では、水側主弁110が水側主弁座114に当接して閉弁したとき湯側主弁112が全開状態となり、また逆に湯側主弁112が湯側主弁座116に当接し閉弁したときに水側主弁110が全開となる。
【0096】
主弁体108は、後述の温調軸118に対しアーム120にて連結され、それらが一体に構成されている。
ここで周方向におけるアーム120と120との間には軸方向の通路122が形成されており、湯流入口100から流入した湯が、この通路122を通じて混合室104へと流れ、そこで水流入口12から流入した水と混合されて混合水となり、流出口106から図中右向きに流出する。
尚、水流入口12と湯流入口100とは、主弁体108の外周面に保持された環状シール部材としてのOリング124にて連通遮断されている。
【0097】
上記混合室104の内部には、形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばね126が配設されている。
この感温ばね126は、図中左端を温調軸118に当接させ、かかる温調軸118を介して主弁体108を図中左向きに付勢している。
この感温ばね126は、混合室104内部の混合水温度に感応して伸縮し、主弁体108に対する図中左向きの付勢力を増減変化させる。
【0098】
即ちこの感温ばね126は、混合室104内部の混合水の温度が設定温度よりも高くなったとき、軸方向に伸張して主弁体108に対する図中左向きの付勢力を増大し、主弁体108を図中左向きに微動させる。即ち水側主弁110が開き、また湯側主弁112が閉じる方向に主弁体108を図中左向きに微動させる。
【0099】
128は、主弁体108に対し感温ばね126とは軸方向の逆向きに付勢力を作用させる、金属コイルばねから成るバイアスばねで、図中右端を温調軸118に当接させている。
上記主弁体108は、このバイアスばね128と感温ばね126との互いに逆向きの付勢力とが釣り合う位置に位置制御され、温調(温度調節)動作を行う。
【0100】
この例においても、上記実施形態と同様にハンドル130と一体に回転するハンドル130側の回転部材28が備えられている。
ここで回転部材28は上記と同様の構成を有するもので、軸部30と円筒部32とを有し、その軸部30において弁ケース10の嵌合孔34に回転可能に嵌合され、そして軸部30に装着されたOリング38により嵌合孔34に対し水密にシールされている。
更に弁ケース10からの突出部分に設けられたハンドル連結部36にハンドル130に一体回転状態に連結されている。
【0101】
この回転部材28には、上記と同様に進退部材42が雄ねじ44と雌ねじ46とでねじ結合されており、回転部材28の回転に基づいて進退部材42が図中左右方向に進退移動させられるようになっている。
【0102】
この実施形態においても、進退部材42と弁ケース10との間に回止め機構48が設けられており、進退部材42は、この回止め機構48の回止め作用により回転部材28の回転にて進退移動せしめられる。
【0103】
上記のように、主弁体108は温調軸118に一体に構成されており、温調軸118と一体に図中左右方向に移動せしめられる。
温調軸118は、図中左側に小径部132を有しており、その小径部132に対して、円筒形状をなす第2の進退部材134が軸方向に相対移動可能に嵌合されている。
そしてこの進退部材134に対し、上記のバイアスばね128の図中左端が当接させられている。
【0104】
ハンドル130から加えられた操作力は、進退部材42及びこの第2の進退部材134の図中左右方向の進退移動により、このバイアスばね128を介して主弁体108に伝えられる。
尚この円筒形状をなす進退部材134の軸方向の両端にはスリップワッシャ135が設けられており、バイアスばね128は、このスリップワッシャ135を介して進退部材134に当接させられている。
【0105】
第1の進退部材42と第2の進退部材134との間には、緩衝ばね56を主要素として有する緩衝ばね機構54が介在させられている。
この実施形態において、緩衝ばね機構54は図中左右一対のスリップワッシャ140,142を有しており、これらスリップワッシャ140,142を介して、緩衝ばね56のばね力を進退部材134に及ぼすようになっている。
【0106】
詳しくは、進退部材42の内周側と進退部材134の外周側とには、径方向に対応する位置に凹部136と138とが設けられおり、そしてスリップワッシャ140,142は、内周側の部分を進退部材134の凹部138内に挿入させ、また外周側の部分を進退部材42の凹部136に挿入させる状態に、それら凹部136,138にまたがって設けられている。
上記緩衝ばね56は、左右方向両端をこれらスリップワッシャ140,142に当接させ、そのばね力をこれらスリップワッシャ140,142を介して進退部材134に作用させる。
【0107】
一方上記回止め機構48は、図9にも示しているように周方向に180°隔たった位置において進退部材42から径方向外方に突出した一対の係合爪64,66と、弁ケース10に設けられた対応する一対のガイド溝68,70とを有しており、そのガイド溝68,70に、対応する一対の係合爪64,66が軸方向に移動可能且つ回転方向に移動不能に係入させられている。
【0108】
この実施形態において、回止め機構48は、図7(I)に示しているように進退部材42が図中右方向に前進し(このとき一対の係合爪64,66は図9に示しているようにガイド溝68,70内を軸方向に移動する)、そして水側主弁110が水側主弁座114に当接し閉弁した後において、更に進退部材42が第一設定ストローク分前進移動したところで、図7(II)及び図10(A)に示しているように、係合爪64,66が係合溝68,70から外れて回止め作用を解除し、進退部材42を回転部材28の図7中矢印方向(正方向)の回転と一体に空回転させるようになしてある。その構造及び作用については図1〜図3に示す実施形態と同様である。
【0109】
この実施形態では更に、回止め機構48は、図8(I)に示しているように回転部材28の図8中矢印方向(逆方向)の回転により、進退部材42が図中左方向に後退移動し、そして湯側主弁112が湯側主弁座116に当接し閉弁した後において、進退部材42が更に第二設定ストローク分後退移動したところで、図8(II)及び図10(B)に示しているように、一対の係合爪64,66が係合溝68,70から外れ、回止め作用を解除するものとなしてある。
【0110】
この回止め機構48による回止め作用の解除によって、進退部材42は回転部材28とともに図8中矢印方向に空回転し、回転部材28の逆回転にも拘らず、進退部材42は後退移動を停止する。
即ち進退部材42が図8中左方向に後退移動し、これに伴って係合爪64,66がガイド溝68,70内を図9中左方向に移動すると、図10(B)に示しているようにあるところで係合爪64,66がガイド溝68,70から外れて、摺動面146に沿って回転部材28の逆方向回転と一体に回転し、このことによって進退部材42に対する逆方向の回止め作用を解除して、進退部材42を回転部材28と一体に図8中矢印方向に空回転させる。
【0111】
またその逆方向回転の際の空回転と同じだけ正方向、つまり図7中矢印方向に回転したとき、ストッパ部144のストッパ作用により一対の係合爪64,68が、再びガイド溝68,70に係入するに到り、ここにおいて回止め機構48が再び回止め作用を回復して、回転部材28の図7中矢印方向の回転に基づいて、進退部材42を図6中右方向に前進移動せしめる。
【0112】
図6に示しているように、この実施形態では温調軸118における小径部132の両端に一対の当接部148,150が設けられ、第2の進退部材134がこれら当接部148,150に当接することによって、バイアスばね128を介さずに進退部材42の進退移動を、緩衝ばね機構54を介して第2の進退部材134から温調軸118へと伝達し、これを移動させる。
【0113】
次に本実施形態の作用を以下に説明する。
この実施形態では、図6に示しているように水側主弁110,湯側主弁112の開弁状態の下で、回転部材28を図7中矢印方向(正方向)に回転させると、進退部材42がねじ送りで図中右方向に前進移動する。
その前進移動は緩衝ばね機構54を介して第2の進退部材134に伝えられ、バイアスばね128を撓ませながら進退部材134が図中右向きに前進移動させられる。
この結果温調軸118が図中右向きに移動し、混合水の設定温度が高温側に設定変更される。
【0114】
また逆に回転部材28を図7の矢印方向と逆方向(図8中矢印方向)に回転させると、同様にして第2の進退部材134が図中左向きに後退移動して、バイアスばね128の付勢力を弱くする。
ここにおいて主弁体108が図中左向きに移動し、混合水の設定温度が低音側に設定変更される。
【0115】
この状態で混合室104内の混合水温度が設定温度よりも高いと、感温ばね126が付勢力を増大して主弁体108を図中左向きに微動させ、水側主弁110の弁開度を大、湯側主弁112の弁開度を小として混合水温度を低下せしめる。
また混合室104内の混合水の温度が設定温度よりも低いときには、感温ばね126の付勢力が減少し、そのことによって主弁体108が図中右向きに移動して水側主弁110の弁開度を小、湯側主弁112の弁開度を大とし、混合水温度を上昇せしめる。
そしてそのような主弁体108の自動的な位置移動によって、混合水温度を設定温度に自動的に調整する。
【0116】
この実施形態では、水側主弁110を強制閉弁させ、また湯側主弁112を強制全開する際には、ハンドル130にて回転部材28を図7中矢印方向(正方向)に大きく回転させる。
このとき、進退部材42の図中右向きの前進移動は上記と同様に緩衝ばね機構54を介して第2の進退部材134に伝えられ、進退部材134がバイアスばね128を撓ませながら図中右向きに大きく前進移動する。
そしてその動きを温調軸118に伝えて、水側主弁110を水側主弁座114に当接させ閉弁させる。また併せて湯側主弁112を全開させる。
【0117】
進退部材42はその後も引き続いて図中右向きに前進移動し、またこれに伴って第2の進退部材134が図中右向きに前進移動する。
その過程で進退部材134が温調軸118の当接部148に当接して(図7(I)参照)、以後バイアスばね128を介さずに前進移動の力を温調軸118に、即ち主弁110に及ぼす。
【0118】
而してこの状態の下で進退部材42が更に図中右向きに前進移動すると、水側主弁110即ち主弁体118及び温調軸118が移動停止した状態にあるため、図7(II)に示しているように以後は緩衝ばね機構54の緩衝ばね56が撓んで進退部材42の更なる右向きの前進移動を吸収する。
その結果緩衝ばね56のばね力が、水側主弁座114に対する水側主弁110の弾性的な押圧力として作用し、それにより水側主弁110が一定の弾性力の下で閉弁状態に押圧保持される。
【0119】
この状態から進退部材42が更に図中右向きに前進移動すると、第一設定ストローク分だけ進退部材42が前進移動したところで、一対の係合爪64,66が対応するガイド溝68,70から外れ(図10(A)参照)、ここにおいて回止め機構48の回止め作用が解除して、この後は進退部材42が回転部材28と一体に正方向(図7中矢印方向)に空回転する。図7(II)はこのときの状態を示している。
ここにおいて進退部材42の図中右向きの前進移動が停止する。従って進退部材42の図中右向きの前進移動による、水側主弁110への押圧力の増加も停止する。
【0120】
他方、回転部材28を図8中矢印方向(図7の矢印とは逆方向)に回転させると、進退部材42が先の正方向に空回転した分だけ逆方向に回転部材28と一体に空回転したところで、回止め機構48による回止め作用が回復し、以後回転部材28の逆方向回転に伴って進退部材42が図6中左方向に後退移動する。
そしてあるところで緩衝ばね56が当初の状態に戻って、進退部材42の図中左方向の後退移動を第2の進退部材134に伝え、これを後退移動させる。
【0121】
そしてその後、進退部材134が温調軸118の当接部150に当接するに到り、以後進退部材134の後退移動とともに、温調軸118が図中左方向に引張られて、主弁体108が図中左方向に移動する。
これにより水側主弁110が開弁方向に、また湯側主弁112が閉弁方向に移動し、最終的に湯側主弁112が湯側主弁座116に当接し閉弁するに到る(図8(I))。
【0122】
この状態で更に進退部材42が図8中左方向に後退移動すると、ここで再び緩衝ばね56が撓んで、その弾性力を湯側主弁112の閉弁保持の押圧力として作用させる。
そして更に進退部材42が図8中左方向に後退移動すると、図8(II)及び図10(B)に示しているように、進退部材42が湯側主弁112の閉弁後において第二設定ストローク分移動したところで、回止め機構48における一対の係合爪64,66が、対応するガイド溝68,70から外れ、回止め機構48による進退部材42に対する回止め作用が解除される。
従ってその後は回転部材28の回転とともに、進退部材42が図10(B)に示しているように一対の係合爪64,66を摺動面146に沿って摺動させながら、回転部材28とともに一体に逆方向に空回転する。
【0123】
そして次にハンドル130によって回転部材28を正方向に回転させると、これとともに進退部材42が一体に正方向に空回転し、そして先に逆方向に空回転した分だけ正方向に空回転したところで、再び一対の係合爪64,66がストッパ部144のストッパ作用により再び対応するガイド溝68,70に係入するに到り、ここにおいて回止め機構48の回止め作用が回復して、回転部材28の更なる正方向の回転により、進退部材42が図8中右向きに前進移動して、緩衝ばね機構54における一対のスリップワッシャ140,142を介して進退部材134に自身の前進移動を伝達する状態に到り、ここにおいて進退部材42の更なる図中右向きの前進移動が温調軸118に伝えられて、主弁体108が右向きに移動し、湯側主弁112を開弁状態とする。
【0124】
尚図11中のHは、上記の操作において水側主弁110が閉弁した後、進退部材42即ちハンドル130が空回転するに到るまでのハンドル130の回転ストロークを表し、またCは、湯側主弁112が閉弁した後、進退部材42即ちハンドル130が空回転するに到るまでのハンドル130の回転ストロークをそれぞれ表している。
【0125】
この実施形態によれば、自動温度調節機能付きの湯水混合バルブにおいて水側主弁110,湯側主弁112がそれぞれ閉弁した後に、ハンドル130の操作荷重が必要以上に大きくなり、操作が重くなるといった問題を解消し得て、ハンドル130を軽く操作することが可能となる。
しかもそのようにしても水側主弁110,湯側主弁112を緩衝ばね56の撓みによる弾性力によって所定の押圧力で閉弁状態に保持することができ、止水性を良好となすことができる。
また緩衝ばね56が不必要に大きく撓んでしまうことによって、その反力によりハンドル130が進退部材42と回転部材48との間のねじ部によるねじ送りで、勝手に戻り側に回転してしまうといった問題も解消することができる。
【0126】
図12〜図14は、本発明の更に他の実施形態を示している。
この例もまた、本発明を湯水混合バルブ(非パイロット式の湯水混合バルブ)に適用した場合の例である。
図12に示しているように、この例では緩衝ばね機構54における緩衝ばね56が、図6におけるバイアスばね128を兼ねて構成してある。
そのためこの実施形態では、図6に示す第2の進退部材134が省略されており、緩衝ばね機構54が、進退部材42と温調軸118との間に直接介在せしめられている。
【0127】
詳しくは、進退部材134における上記の凹部138が、温調軸118における小径部132と軸方向両端の当接部148,150との間に形成され、そしてこの凹部138と進退部材42の凹部136との間にまたがって緩衝ばね機構54が介設されている。
尚、他の点については基本的に図6〜図10に示す実施形態と同様であり、対応する部分に対応する符号のみを示して更なる詳しい説明は省略する。
【0128】
図13は、この実施形態において水側主弁110を強制閉弁させる際の動作を表したものであり、その際の緩衝ばね機構54,回止め機構48の作用は基本的に図7に示したものと同様である。
また図14は湯側主弁112を強制閉弁させる際の動作を表したもので、緩衝ばね機構54,回止め機構48の作用は基本的に図8に示したものと同様である。
【0129】
図15〜図17は、本発明の他の実施形態を示している。
この例は、図6に示す湯水混合バルブにおいて、図15に示しているように主弁体108,感温ばね126,バイアスばね128を温調軸118に組み付け、それらをともに図中左右方向の軸方向に移動する弁ユニット154として構成した例である。
【0130】
詳しくは、この例では主弁体108が温調軸118と別体に構成されていて、かかる主弁体108が温調軸118の細径部156に軸方向に相対移動可能に嵌合保持されている。
温調軸118には、左右一対のフランジ形状のばね受部158,160が設けられており、右側のばね受部158と主弁体108との間に感温ばね126が介装され、また左側のばね受部160と主弁体108との間にバイアスばね128が介装されている。
そしてそれら感温ばね126の付勢力と、バイアスばね128との付勢力とが、主弁体108に対し軸方向の互いに逆向きに及ぼされている。
【0131】
温調軸118には、主弁体108の図中右側と左側とに当接部148,150が設けられ、その当接部150を主弁体108に当接させることによって、温調軸118の図中右向きの前進移動により主弁体108を同じ右方向に移動させ、水側主弁110を強制閉弁させる(図16(I))。
また当接部148を主弁体108に当接させ、温調軸118の図中左向きの後退移動により主弁体108を同じ左方向に移動させ、湯側主弁112を強制閉弁させる(図17(I))。
尚、当接部148,150と主弁体108との間には、主弁体108が自動温調動作する際に必要なクリアランスが確保してある。
【0132】
温調軸118は、図中右端部が弁ケース10の嵌合孔162に軸方向に移動可能に挿入されており、また左端部が止め輪164にて第2の進退部材134に固定され、進退部材134の図中左右方向の進退移動と一体に温調軸118が左右方向に移動するようになしてある。
尚、他の構成については図6〜図10に示した実施形態と同様であり、対応する部分に対応する符号のみを示して更なる詳しい説明は省略する。
【0133】
この実施形態では、混合水温度の設定温度を変更すべく温調軸を図中左右方向、例えば右方向に移動させると、感温ばね126及びバイアスばね128が全体として一定の長さを保持しつつ主弁体108,感温ばね126及びバイアスばね128が温調軸118と一体に右方向に移動する。また温調軸118を図中左方向に移動させると、同じくそれらが一体に図中左方向に移動する。
【0134】
そしてその状態で混合水温度が上昇すると、感温ばね126による付勢力の増大に基づいて主弁体108を図中左方向に微動(シフト)させる。即ち主弁体108の位置を、水側主弁110が開き、湯側主弁112が閉じる方向に微動(シフト)させ、混合水温度を低くして混合水温度を設定温度に自動的に調節する。
また逆に混合水温度が設定温度よりも低くなると、感温ばね126の付勢力の低下に基づいて、主弁体108を図中右方向に微動させ、主弁体108の位置を高温側にシフトさせて、混合水温度を設定温度に自動的に調節する。
【0135】
図16は、水側主弁110を強制閉弁させる際の動作を表したもので、その作用は基本的に図7に示したのと同様である。
また図17は、湯側主弁112を強制閉弁させる際の動作を示したもので、その作用は図8に示したものと基本的に同様である。
【0136】
この実施形態によれば、ハンドル130の回転によって温調軸118を進退移動させる際に、バイアスばね128を撓ませながらその付勢力に抗して温調軸118を移動させる必要がなく、従って緩衝ばね機構54における緩衝ばね56のばね力を可及的に小さくすることができる。
これにより水側主弁110,湯側主弁112の閉弁後におけるハンドル130の操作荷重を更に小さくすることができ、より一層の軽操作を実現することができる。
また緩衝ばね56としてばね力の小さなものを用いることができるため、進退部材42を回転部材28とともに空回転させる際の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0137】
図18〜図20は、図12〜図14に示す実施形態と同様に緩衝ばね56を、バイアスばねを兼ねて構成するとともに、図15〜図17に示すのと同様に、温調軸118にこれとは別体をなす主弁体108,感温ばね126,バイアスばねを兼ねた緩衝ばね128を保持させて、それらを弁ユニット154として構成した例である。
【0138】
この例では、温調軸118が進退部材42と一体に構成されており、そして温調軸118の細径部156に、主弁体108の中心側に設けられた円筒部166が遊嵌状態で図中左右方向に相対移動可能に組み付けられ保持されている。
円筒部166は図中左方向に延在しており、そしてこの円筒部166の外周側に形成された凹部138と、進退部材42の大径の円筒部168の凹部136とにまたがって、緩衝ばね機構54が設けられている。
【0139】
この実施形態では、感温ばね126の図中右端を温調軸118側で受け、感温ばね126の付勢力を主弁体108に対し図中左向きに作用させている。
またバイアスばねを兼ねた緩衝ばね128の図中左端を、進退部材42の円筒部168、即ちこれと一体の温調軸118側で受け、バイアスばね128の付勢力を円筒部166を介して主弁体108に対し図中右向きに作用させている。
【0140】
この実施形態においても、進退部材42を図中右向きに進退移動させると、これと一体に温調軸118が図中右向きに進退移動する。
このとき、温調軸118に組み付けられた主弁体108,感温ばね126及びバイアスばねを兼ねた緩衝ばね128が、温調軸118と一体に左右方向に移動する。またこのとき感温ばね126,緩衝ばね128は、それらの合計の長さを一定に維持しつつ、温調軸118とともに移動する。
尚、この実施形態において他の構成については図6〜図10に示した実施形態と基本的に同様であり、対応する部分に対応する符号のみを示して詳しい説明は省略する。
【0141】
図19は、この実施形態において水側主弁12を強制閉弁する際の動作を表したもので、その作用は図7に示したのと基本的に同様である。
図20は、湯側主弁112を強制閉弁させる際の動作を表したもので、その作用は基本的に図8に示したのと同様である。
【0142】
図21〜図25は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例は、自動温度調節機能付きの湯水混合バルブをパイロット式バルブとして構成した例である。
この例では、弁ケース10における小径の円筒部10Aと、円筒形状の操作側ケース174との間に、回転部材28における円筒部32が配置され、更にその内側に円筒形状をなす第1の進退部材42が、更にその内側に有底の円筒形状をなす第2の進退部材134がそれぞれ配置されている。
【0143】
ここで回転部材28は、軸部30が操作部側ケース174の嵌合孔34に回転可能に嵌合され、止め輪40と円筒部とによって操作部側ケース174に対し軸方向に位置規定されている。
また第2の進退部材134は、弁ケース10における円筒部10Aに対し軸方向に相対移動可能に嵌合されている。
【0144】
この実施形態において、回転部材28と進退部材42とが雄ねじ44と雌ねじ46とでねじ結合されている点で、また進退部材42と134との間に緩衝ばね機構54が介在させてある点で、更に進退部材42と弁ケース10(詳しくはその円筒部10A)との間に回止め機構48が設けられている点で図6〜図10に示す実施形態と同様である。
また緩衝ばね機構54の構成、回止め機構48の構成も上記実施形態と基本的に同様の構造をなしている。
【0145】
この実施形態において、弁ケース10には水流入口12と湯流入口100とが設けられているが、その位置関係は図6に示すものとは左右逆の位置関係となっている。
この実施形態ではまた、水側主弁110がダイヤフラム弁として構成してある。
この水側主弁110は、図23に詳しく示しているように硬質の主弁本体82と、ゴム製のダイヤフラム膜84とから成っており、そのダイヤフラム膜84が外周部において弁ケース10に固定されている。
【0146】
水側主弁110の図中左側には背圧室(水側背圧室)81が形成されており、この背圧室81が、内部の圧力を水側主弁110に対し図中右方向の閉弁方向の押圧力として作用させている。
この水側主弁110は、弁ケース10に設けられた水側主弁座114に当接することで閉弁し、またこれから図中左方向に離間することで開弁する。
【0147】
この実施形態では、水側主弁110に対し湯側主弁112が一体に構成されている(厳密に言えば湯側主弁112が主弁体108の円筒部に対しねじ結合にて連結されている)。
詳しくは、水側主弁110の主弁本体82に湯側主弁112が一体に(一体移動する状態に)構成され、かかる湯側主弁112が、図中左側に位置する湯側主弁座116に当接して閉弁するようになっている。
【0148】
水側主弁110には、これを貫通して導入小孔(水側導入小孔)83が設けられており、水流入口12からの1次側の水が、この導入小孔83を通じて背圧室81に導入され、これにより背圧室81が圧力上昇させられる。
また水側主弁110には、図23に示すようにその中心部に、背圧室81と水側主弁110よりも下流側の2次側とを連通させるパイロット孔(水側パイロット孔)96が、水側主弁110を貫通して設けられており、背圧室81内の水が、このパイロット孔96を通じて下流側へと抜き出され、そのことによって背圧室81が圧力減少する。
【0149】
78は、このパイロット孔96の開度を制御するパイロット弁(水側パイロット弁)で、水側主弁110は、パイロット弁78の図中左右方向の移動により、これに追従して図中左右方向に移動せしめられる。
ここでパイロット弁78は、水側主弁110に形成されたパイロット弁座(水側パイロット弁座)88に当接して閉弁する。
またこれから図中左方向に離間することによって開弁し、パイロット孔96を開放する。
尚このパイロット弁78には環状溝が設けられていて、そこにシールリング176が保持され、このシールリング176によって、パイロット弁78と弁ケース10との間が水密にシールされている。
【0150】
この実施形態では、パイロット弁78が図中左右方向に移動すると、水側主弁110がこれに追従して同方向に移動し、また併せて湯側主弁112が同方向に一体に移動する。そしてそのことによって水側主弁110,湯側主弁112がそれぞれの弁開度を互いに逆の関係で大小変化させる。
尚、図23において178はパイロット孔96の一部を成す透孔で、背圧室81からの水は、この透孔178を含むパイロット孔96を通じて下流側へと流出する。
【0151】
図22にも示しているように、水側主弁110及び湯側主弁112は温調軸118に対し別体に構成されている。
この温調軸118には、スリーブ180-1,180-2,180-3,180-4が外嵌状態に嵌合されている。
そして図中真中のスリーブ180-1に、上記のパイロット弁78が径方向外方に突出する形態で一体に構成されている。
そして更にこのスリーブ180-1に対して、上記水側主弁110及び湯側主弁112を一体に有する主弁体108が、左右方向且つ軸方向に相対移動可能に外嵌されている。
【0152】
ここでスリーブ180-3は、温調軸118に対し止め輪にて図中右端が規定され、またスリーブ180-4は、同じく止め輪にて温調軸118に対し図中左端が規定されている。
そしてスリーブ180-2と180-3の各フランジ部182の間に上記の感温ばね126が介装され、その付勢力をスリーブ180-1に対して、即ちパイロット弁78に対して図中左向きに及ぼしている。
またスリーブ180-4のフランジ部182とパイロット弁78との間にバイアスばね128が介装され、その付勢力をスリーブ180-1に対して、即ちパイロット弁78に対して図中右向きに及ぼしている。
【0153】
以上の説明から明らかなように、この実施形態ではパイロット弁78が温調軸118に対して図中左右方向の軸方向に相対移動可能な状態で温調軸118により保持されており、そしてこのパイロット弁78に対し、図中右側と左側とに配置された感温ばね126とバイアスばね128とが、その付勢力を逆向きに及ぼしており、且つ感温ばね126とバイアスばね128とが合計の長さを一定に保持しつつパイロット弁78とともに、温調軸118と一緒に移動するように、それらが温調軸118に組み付けられ、全体としてパイロット弁ユニット184を構成している。
【0154】
図21に示しているように、温調軸118は図中左端部が上記の第2の進退部材134の底部に止め輪にて固定され、温調軸118が進退部材134と一体に図中左右方向に移動するようになっている。
尚温調軸118の図中右端部は、弁ケース10の嵌合孔162に軸方向に移動可能に挿入され保持されている。
【0155】
この実施形態の場合、パイロット弁78がスリーブ180-1と一体に図中左右方向に移動すると背圧室81の圧力が増減変化し、これに基づいて主弁体108が、パイロット弁78と同方向に追従して移動する。
即ち、パイロット弁78が図中右向きに移動すると、水側主弁110が閉弁方向に、また湯側主弁112が開弁方向に追従して移動し、またパイロット弁78が図中左方向に移動すると、水側主弁110がこれに追従して開弁方向に移動し、また湯側主弁112が閉弁方向に移動する。
【0156】
この実施形態ではまた、第2の進退部材134が図中右方向に一杯まで押し込まれることで、パイロット弁78が水側主弁110に形成されたパイロット弁座88に当接して閉弁し、水側主弁110を水側主弁座114に押し付けてこれを閉弁させる。
【0157】
また進退部材134が図中左方向に引張られることで、温調軸118が図中左向きに移動し、その際に温調軸118に嵌装された図中右端のスリーブ180-3が、隣接するスリーブ180-2に当接し、更に続いて主弁体108に当接することで、主弁体108を図中左方向に移動させ、湯側主弁112を湯側主弁座116に当接させて、これを強制閉弁させる。
【0158】
この実施形態の場合、水側主弁110を閉弁させ止水する際に必要な力の一部を背圧室81の圧力が担うため、更に湯側主弁112を強制閉弁させ止水するのに必要な力を、水側主弁110の1次側の給水圧力が担うため、緩衝ばね機構54における緩衝ばね56のばね力を小さく設定することができる。
【0159】
尚、この実施形態では水側主弁110と湯側主弁112とを一体移動する状態に構成し、そして水側主弁110を駆動弁としてこれをパイロット弁78の移動に追従して移動させるようになしているが、水側主弁及び湯側主弁を一体移動する状態に設けるとともに、湯側主弁の背後に湯側背圧室を形成し、そして湯流入口からの1次側の湯(熱水)を湯側背圧室に導入する導入小孔,湯側背圧室の湯を2次側に抜く湯側パイロット孔を設け、そして水側パイロット弁を設けるのに代えて湯側パイロット弁を設け、湯側パイロット弁の移動により湯側主弁をこれに追従して移動させ、そして湯側主弁を駆動弁として水側主弁を一体に移動させるようになすことも可能である。
【0160】
或いは水側主弁,湯側主弁をそれぞれ別体且つ独立して移動するように設けた上で、水側主弁の背後に水側背圧室を、湯側主弁の背後に湯側背圧室を、更にそれら水側背圧室,湯側背圧室の圧力を増減させる水側導入小孔,湯側導入小孔,水側パイロット孔,湯側パイロット孔をそれぞれ設け、水側パイロット弁と湯側パイロット弁とを同期して軸方向に移動させることで、水側主弁と湯側主弁とを互いに逆の関係で弁開度を大小変化させるように構成するといったことも可能である。
【0161】
図24は、この実施形態において水側主弁を強制閉弁させる際の動作を表したものであり、また図25は湯側主弁を強制閉弁させる際の動作を表している。
この実施形態では、進退部材42及び温調軸118における図中左方向の移動が前進移動であり、また右方向の移動が後退移動となる。
【0162】
以上本発明の実施形態を詳述したが、本発明はワックスを内部に封入し、混合水温度の変化によるワックスの膨張収縮により軸方向に伸縮する感温体を備え、その感温体の伸縮に基づいて混合水温度を自動調節する形式の湯水混合バルブ、或いはそのような感温体やバイアスばねを備えていない所謂ミキシングタイプの湯水混合バルブに適用することも可能である。
また弁ケースの側に係合爪を、進退部材の側にガイド溝を設けて、それらの係合により進退部材の回止めをなすといったことも可能である。その他、湯水混合のバルブにおいて、水側主弁を閉弁させた後にだけ進退部材を空回転させたり、或いは湯側主弁を閉弁させた後にだけ進退部材を空回転させるといったことも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】本発明の一実施形態の単水栓のバルブを示した図である。
【図2】同実施形態の作用説明図である。
【図3】同実施形態の要部の作用説明図である。
【図4】本発明の他の実施形態を示した図である。
【図5】同実施形態の作用説明図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態の湯水混合バルブの図である。
【図7】同実施形態の作用説明図である。
【図8】図7とは異なる作用説明図である。
【図9】同実施形態の要部を示した図である。
【図10】同実施形態の係合爪の動きを説明する図である。
【図11】同実施形態のハンドルを示した図である。
【図12】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図13】同実施形態の作用説明図である。
【図14】図13とは異なる作用説明図である。
【図15】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図16】同実施形態の作用説明図である。
【図17】図16とは異なる作用説明図である。
【図18】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図19】同実施形態の作用説明図である。
【図20】図19とは異なる作用説明図である。
【図21】本発明の更に他の実施形態を示した図である。
【図22】図21におけるパイロット弁ユニットの図である。
【図23】図21の要部を拡大して示した図である。
【図24】同実施形態の作用説明図である。
【図25】図24とは異なる作用説明図である。
【図26】従来の湯水混合バルブの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0164】
10 弁ケース
12 水流入口(第1流入口)
20 主弁(第1主弁)
22 主弁座(第1主弁座)
28 回転部材
42,134 進退部材
48 回止め機構
54 緩衝ばね機構
56 緩衝ばね
64,66 係合爪
68,70 ガイド溝
78 パイロット弁
80 主弁
81 背圧室
83 導入小孔
86 パイロット孔
100 湯流入口
108 主弁体
110 水側主弁
112 湯側主弁
114 水側主弁座
116 湯側主弁座
118 温調軸
126 感温ばね
128 バイアスばね
154 弁ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)弁ケースの内部に設けられ、第1主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる第1主弁と、(ロ)ハンドル側の回転部材と、(ハ)該回転部材とねじ結合されるとともに、前記弁ケースに対して回止め機構により回止めされ、該回転部材の回転により軸方向にねじ送りで進退移動せしめられて前記第1主弁を開閉方向に移動させる進退部材と、を有し、該第1主弁の弁開度に応じて前記弁ケースに設けられた第1流入口からの該弁ケース内部への水の流入量を制御する水栓のバルブであって、
前記進退部材と前記第1主弁との間に介在し、該進退部材の進退移動を前記第1主弁に伝えて該第1主弁を開閉方向に移動させ、弁開度を変化させるとともに、該第1主弁が前記第1主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、緩衝ばねを撓ませることによって前記第1主弁の閉弁後における前記進退部材の更なる前進移動を吸収する緩衝ばね機構を設けるとともに、
前記回止め機構を、(a)前記進退部材の側と前記弁ケースの側との一方に径方向に突出状態に設けられた係合爪と、(b)他方に設けられ、該係合爪を軸方向に移動可能且つ回転方向に移動不能に係入させるガイド溝とを含んで構成し、
且つ該回止め機構は、前記第1主弁の閉弁後に前記進退部材が第一設定ストローク分前進移動した後に、前記係合爪が前記ガイド溝から外れて回止め作用を解除し、前記進退部材を前記回転部材の回転と一体に、該回転部材の前記第1主弁を閉弁させる方向の正方向に空回転させ、また該正方向の空回転と同じだけ逆方向に空回転した後に、再び前記係合爪を前記ガイド溝に係入させて回止め作用を回復するものとなしてあることを特徴とする水栓の湯水混合のバルブ。
【請求項2】
(イ)弁ケースの内部に設けられ、温調軸の進退移動により、第1主弁座としての水側主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる第1主弁としての水側主弁、及び第2主弁座としての湯側主弁座に向けて進退移動して弁開度を変化させる第2主弁としての湯側主弁と、(ロ)ハンドル側の回転部材と、(ハ)該回転部材とねじ結合されるとともに、前記弁ケースに対して回止め機構により回止めされ、該回転部材の回転により軸方向にねじ送りで進退移動せしめられる進退部材と、を有し、該進退部材の進退移動により緩衝ばね機構を介して前記温調軸を進退移動させ、該温調軸の前進により前記水側主弁を閉方向、前記湯側主弁を開方向に、該温調軸の後退移動により前記水側主弁を開方向、前記湯側主弁を閉方向にそれぞれ移動させ、前記弁ケースに設けられた第1流入口としての冷水流入口、第2流入口としての熱水流入口からの該弁ケース内部への冷水,熱水の流入量を制御する水栓の湯水混合のバルブであって、
前記回止め機構は、(a)前記進退部材の側と前記弁ケースの側との一方に径方向に突出状態に設けられた係合爪と、(b)他方に設けられ、該係合爪を軸方向に移動可能且つ回転方向に移動不能に係合させるガイド溝とを含んで構成し、
前記緩衝ばね機構は、前記水側主弁が前記水側主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、緩衝ばねを撓ませることによって該水側主弁の閉弁後における前記進退部材の更なる前進移動を吸収し、また前記湯側主弁が前記湯側主弁座に当接して閉弁し移動停止した後においては、前記緩衝ばねを撓ませることによって該湯側主弁の閉弁後における前記進退部材の更なる後退移動を吸収するものとなしてあり、
更に前記回止め機構は、前記水側主弁の閉弁後に前記進退部材が第1設定ストローク分前進移動した後に、前記係合爪が前記ガイド溝から外れて回止め作用を解除し、該進退部材を前記回転部材の回転と一体に、該回転部材の前記水側主弁を閉弁させる方向の正方向に空回転させ、また該正方向の空回転と同じだけ逆方向に空回転した後に、再び前記係合爪を前記ガイド溝に係入させて回止め作用を回復するものとなしてあるか、
又は/及び前記湯側主弁の閉弁後に前記進退部材が第2設定ストローク分後退移動した後に、前記係合爪が前記ガイド溝から外れて回止め作用を解除し、該進退部材を前記回転部材の回転と一体に、該回転部材の前記湯側主弁を閉弁させる方向の逆方向に空回転させ、また該逆方向の空回転と同じだけ正方向に空回転した後に、再び前記係合爪を前記ガイド溝に係入させて回止め作用を回復するものとなしてあることを特徴とする水栓の湯水混合のバルブ。
【請求項3】
請求項2において、前記湯水混合のバルブが自動温度調節機能付のものであって、混合水温度に感応して軸方向に伸縮し、混合水が設定温度よりも高くなったときに前記水側主弁を開き、前記湯側主弁を閉じる方向にそれら水側主弁及び湯側主弁を移動させる感温体と、該水側主弁及び湯側主弁に対し該感温体による移動方向と逆方向の付勢力を作用させるばねと、を有していることを特徴とする水栓の湯水混合のバルブ。
【請求項4】
請求項3において、前記感温体が形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねであることを特徴とする水栓の湯水混合のバルブ。
【請求項5】
請求項4において、前記水側主弁及び湯側主弁を有する主弁体が前記温調軸と別体に構成されていて、該主弁体が該温調軸に対して相対移動可能に該温調軸にて保持されているとともに、該温調軸には更に、前記主弁体に対して軸方向の互いに逆の側に、前記感温ばねと前記バイアスばねとが該主弁体に対して軸方向の逆向きに付勢力を及ぼす状態に組み付け保持されており、それら感温ばね及びバイアスばねが前記主弁体とともに、前記温調軸の移動につれて全体の長さを一定に保持しつつともに移動可能な弁ユニットを成していることを特徴とする水栓の湯水混合のバルブ。
【請求項6】
請求項1において、前記バルブが、前記第1主弁の背後に形成され、内部の圧力を該第1主弁に対して閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室と、前記第1流入口からの1次側の水を該背圧室内に導いて圧力上昇させる導入小孔と、該背圧室の水を前記第1主弁の下流側の2次側に抜いて圧力低下させる圧抜孔としてのパイロット孔と、該第1主弁に形成されたパイロット弁座に向けて進退移動し、該パイロット孔の開度を制御して前記第1主弁を同方向に追従して進退移動させるパイロット弁と、を有するパイロット式のバルブであって、
該パイロット弁の前記パイロット弁座への当接により前記第1主弁を閉弁させるようになしてあり、且つ前記進退部材が該パイロット弁を移動させ、該パイロット弁を介して前記第1主弁を開閉方向に移動させるものとなしてあることを特徴とする水栓の湯水混合のバルブ。
【請求項7】
請求項2,3の何れかにおいて、前記湯水混合のバルブが、パイロット弁を有し、該パイロット弁の進退移動により、前記水側主弁又は/及び湯側主弁に対して内部の圧力を閉弁方向の押圧力として作用させる背圧室の圧力を増減させ、該水側主弁又は/及び湯側主弁を開閉方向に移動させるとともに、該水側主弁の閉弁時に該湯側主弁を同期して全開させ、また該湯側主弁の閉弁時に該水側主弁を同期して全開させるパイロット式のバルブとなしてあり、
且つ該パイロット弁が前記温調軸に保持させてあって、前記進退部材が該温調軸を進退移動させるものとなしてあることを特徴とする水栓の湯水混合のバルブ。
【請求項8】
請求項7において、前記パイロット弁が前記温調軸と別体に構成されていて、該パイロット弁が該温調軸に対して相対移動可能に該温調軸にて保持されているとともに、前記湯水混合のバルブが自動温度調節機能付きのものとなしてあって、該温調軸には更に、前記パイロット弁に対して軸方向の互いに逆の側に、前記感温体としての形状記憶合金製のコイルばねから成る感温ばねと、前記バイアスばねとが該パイロット弁に対して軸方向の逆向きに付勢力を及ぼす状態に組み付け保持されており、それら感温ばね及びバイアスばねが前記パイロット弁とともに、前記温調軸の移動につれて全体の長さを一定に保持しつつともに移動可能なパイロット弁ユニットを成していることを特徴とする水栓の湯水混合のバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−14128(P2010−14128A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171803(P2008−171803)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】