説明

水栓用発電機

【課題】本発明の態様は、動翼に回転力を与えない無駄な流れを抑制し、発電効率を向上させた水栓用発電機を提供する。
【解決手段】給水流路に対して略平行な回転中心を有し、前記回転中心のまわりに回転可能に前記給水流路に設けられ、複数の動翼羽根部を有する動翼と、前記動翼に対して間隙を隔てて前記動翼の上流側に設けられ、前記動翼に旋回流を与える複数の静翼羽根部を有する静翼と、前記動翼と一体に回転可能なマグネットと、前記マグネットの回転により起電力を生じるコイルと、を備え、前記動翼羽根部は、前記静翼羽根部よりも径外方向に突出しており、前記静翼の最外周端より径方向外側に位置する部分において、前記静翼で発生させた旋回流を受けること、を特徴とする水栓用発電機が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般に、水栓用発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蛇口の下に手を差し出すことによって、これをセンサが感知し、蛇口から水を自動的に吐水する自動水栓装置が知られている。また、そのような自動水栓装置の流路に小型発電機を配設し、この発電機で得られた電力を蓄電しておき、上述のセンサ等の回路の電力を補う装置も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特表平6−505542号公報)には、水が流通する流路に、羽根部を有する軸流式の水車を設けた発電装置が開示されている。この発電装置においては、水車の上流側に羽根部に当てる水流の流速を高めるための噴流口が設けられている。また、この噴流口を流れた水が羽根部に当たるように、噴流口が設けられた位置よりも径方向外側に羽根部の外周面が設けられるようになっている。また、水車の羽根部の外周側には、マグネットが固定されている。また、このマグネットの径方向外側にはマグネットの回転により起電力を発生するコイルが設けられている。
【0004】
また、特許文献2(特開2004−336982号公報)に開示がされているように、水車の上流側に羽根部に当てる水流の流速を高めるとともに、その水流が水車の軸方向に対して旋回するようにするための噴流口を設ける技術が提案されている。この発電装置においては、水車の羽根部の外周側に円筒状のマグネットが固定され、このマグネットの下流側にマグネットの回転により起電力を発生するコイルが設けられている。そして、噴流口を流れた旋回流は、水車の羽根部とマグネット内周面との間の空間を流れて、水車に回転力を与えるようになっている。
【特許文献1】特表平6−505542号公報
【特許文献2】特開2004−336982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1(特表平6−505542号公報)に開示がされた技術では、噴流口を流れることで流速が高められた水流が軸方向に平行に流れるものであるため、水力エネルギーから回転エネルギーへの変換効率が悪く、発電効率の向上に課題を有していた。
特許文献2(特開2004−336982号公報)に開示がされた技術では、軸方向に対して旋回する流れを羽根部に当てるようにしている。そのため、特許文献1(特表平6−505542号公報)に開示がされた技術に比べて、水力エネルギーから回転エネルギーへの変換効率を高めることができる。
【0006】
しかしながら、この発電装置においては、噴流口の出口幅と、水車への流入口幅とがほぼ等しくされている。そのため、遠心方向(径方向外側)への速度成分を多く持った旋回流が水車に流入する際に、マグネット内周面に衝突することによって圧力損失が増大するおそれがある。また、マグネットの外周側を流れる水流の割合が多くなり水車を流れる流量が低減するおそれがある。その結果、水力エネルギーから回転エネルギーへの変換効率や、発電効率のさらなる向上に改善の余地を残していた。
本発明の態様は、動翼に回転力を与えない無駄な流れを抑制し、発電効率を向上させた水栓用発電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、給水流路に対して略平行な回転中心を有し、前記回転中心のまわりに回転可能に前記給水流路に設けられ、複数の動翼羽根部を有する動翼と、前記動翼に対して間隙を隔てて前記動翼の上流側に設けられ、前記動翼に旋回流を与える複数の静翼羽根部を有する静翼と、前記動翼と一体に回転可能なマグネットと、前記マグネットの回転により起電力を生じるコイルと、を備え、前記動翼羽根部は、前記静翼羽根部よりも径外方向に突出しており、前記静翼の最外周端より径方向外側に位置する部分において、前記静翼で発生させた旋回流を受けること、を特徴とする水栓用発電機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、動翼に回転力を与えない無駄な流れを抑制し、発電効率を向上させた水栓用発電機が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の発明の実施形態は、給水流路に対して略平行な回転中心を有し、前記回転中心のまわりに回転可能に前記給水流路に設けられ、複数の動翼羽根部を有する動翼と、前記動翼に対して間隙を隔てて前記動翼の上流側に設けられ、前記動翼に旋回流を与える複数の静翼羽根部を有する静翼と、前記動翼と一体に回転可能なマグネットと、前記マグネットの回転により起電力を生じるコイルと、を備え、前記動翼羽根部は、前記静翼羽根部よりも径外方向に突出しており、前記静翼の最外周端より径方向外側に位置する部分において、前記静翼で発生させた旋回流を受けること、を特徴とする水栓用発電機である。
【0010】
この水栓用発電機によれば、静翼羽根部の外径(外周端)より外側で、静翼で発生させた旋回流を直接受けることができるので、発電効率を向上させることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0011】
第2の発明の実施形態は、前記静翼羽根部の外周端は、前記動翼羽根部の内周端より径方向外側に設けられていること、を特徴とする水栓用発電機である。
この水栓用発電機によれば、旋回流を、動翼羽根部で効率的に受けることができるので、発電効率を向上させることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0012】
第3の発明の実施形態は、前記静翼羽根部の内周端は、前記動翼羽根部の内周端より径方向外側に設けられていること、を特徴とする水栓用発電機である。
この水栓用発電機によれば、旋回流を、動翼羽根部で効率的に受けることができるので、発電効率を向上させることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0013】
第4の発明の実施形態は、前記動翼羽根部を介さずに前記動翼羽根部よりも径方向外側を迂回するバイパス流路と前記動翼羽根部を介した動翼流路との合流部に設けられ、前記動翼流路の最外周端よりも前記中心軸に向けた径方向内側に突出して前記動翼流路に対向する突出部と、を備えたことを特徴とする水栓用発電機である。
この水栓用発電機によれば、バイパス流路を流れる動翼に回転力を与えない無駄な流れを抑制することができる。そのため、発電効率を向上させることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0014】
第5の発明の実施形態は、水栓装置と、前記水栓装置の上流側に設けられた止水栓との間を接続する給水流路に設けられ、前記給水流路の開閉動作以外に使用する電力を供給可能とすること、を特徴とする水栓用発電機である。
この水栓用発電機によれば、水栓装置周辺に設けられる電気機器の省エネルギー化を図ることができる。
【0015】
第6の発明の実施形態は、前記水栓金具内に設けられ、前記給水流路の開閉動作に使用する電力を供給すること、を特徴とする水栓用発電機である。
この水栓用発電機によれば、水栓装置の省エネルギー化を図ることができる。
【0016】
第7の発明の実施形態は、前記マグネットは、前記動翼流路を囲むように前記動翼羽根部に固定された筒状を呈し、前記コイルは、前記マグネットの上流側端面及び下流側端面の少なくともいずれかに対向して配置されたこと、を特徴とする水栓用発電機である。
この水栓用発電機によれば、省スペース化を図ることができる。
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面中、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0018】
図2は、本発明の実施形態に係る発電機付自動水栓装置(以下、単に自動水栓装置とも称する)の取付例を表す模式図である。
図3は、同自動水栓装置の内部構成を表す模式図である。
【0019】
本実施形態に係る自動水栓装置3は、例えば洗面台2などに取り付けられる。自動水栓装置3は、配管4を介して、水道水等の流入口5に接続されている。自動水栓装置3は、円筒状の本体3aと、この本体3aの径方向外側に延出して本体3aの上部に設けられた吐水部3bとを有する。本体3aと吐水部3bは水栓金具を構成する。吐水部3bの先端には、吐水口6が形成され、さらにこの吐水口6の近傍にセンサ7が内蔵されている。
【0020】
自動水栓装置3の内部には、流入口5から流入し配管4を流れてきた給水を、吐水口6へと導く給水流路10が形成されている。自動水栓装置3の本体3aの内部には、その給水流路10を開閉する電磁弁8が内蔵され、さらに電磁弁8の下流側には、吐水量を一定に制限する定流量弁55が内蔵されている。また、水道元圧が使用圧よりも高すぎる場合に減圧するための減圧弁または調圧弁(図示省略)が、電磁弁8より上流側に内蔵されている。なお、定流量弁55、減圧弁、調圧弁は、必要に応じて適宜設けられる。
【0021】
定流量弁55より下流の吐水部3bの内部には、水栓用発電機11が内蔵されている。本体3aの内部には、水栓用発電機11で発電された電力を充電しておく充電器56、センサ7の駆動と電磁弁8の開閉を制御する制御部57が設けられている。水栓用発電機11は、電磁弁8及び定流量弁55よりも下流側に配設されているため、水道元圧(一次圧)が、水栓用発電機11に直接作用しない。したがって、水栓用発電機11は、それほど高い耐圧性を要求されず、信頼性やコストの点で有利である。
【0022】
次に、水栓用発電機11の具体例について説明する。
【0023】
[第1の具体例]
図1は、本発明の第1の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
図4は、同水栓用発電機における静翼14、動翼15、軸受17の斜視図である。
図5は、同水栓用発電機におけるマグネットM1とヨーク極歯33c、34aとの配置関係を表す模式斜視図である。
【0024】
本具体例に係る水栓用発電機は、主として、筒体13、静翼14、動翼15、マグネットM1、コイル9を備え、これらは、図3に表されるケース12の中に収容されている。
【0025】
筒体13は、小径部13aと大径部13bとからなる段付き形状を呈している。また、その内部が給水流路に連通した状態で、図2、3に図示される吐水部3bに内蔵されている。そして、筒体13の中心軸方向は、流水方向に対してほぼ平行になるよう設置される。筒体13は、小径部13aを上流側に、大径部13bを下流側に向けて配置される。
【0026】
筒体13の内部には、上流側から順に、静翼14、動翼15、軸受17が設けられている。静翼14は小径部13aの内部に設けられ、動翼15及び軸受17は大径部13bの内部に設けられている。
【0027】
静翼14は、円柱体の一方の端面(上流側に位置する面)に、円錐体を一体に設けた形状を呈する。静翼14の周面には、径方向外側に突出した複数の突起状の静翼羽根部18が設けられている。図4に表すように、静翼羽根部18は、静翼14の軸中心に対して右方向にねじれつつ、上流側から下流側に向けて傾斜している。静翼14は、筒体13に対して固定されている。
【0028】
静翼14に対して間隙(例えば0.55mm)を隔てて、静翼14の下流側には動翼15が設けられている。動翼15は、円柱状を呈し、その周面には径方向外側に突出した複数の突起状の動翼羽根部19が設けられている。また、動翼流路72の入口幅bは、静翼流路71の出口幅aより大きくされている。
また、動翼羽根部19は、静翼羽根部18よりも径外方向に突出しており、静翼14の最外周端より径方向外側に位置する部分において、静翼14で発生させた旋回流を受けるようになっている。静翼14の最外周端より径外方向に位置し、静翼14で発生させた旋回流を受ける動翼羽根部の径外方向部分を旋回流捕捉部19bと称することにする。なお、旋回流捕捉部19bは動翼羽根部19と一体に設けられる。図4に表すように、一体に設けられた動翼羽根部19と旋回流捕捉部19bは、静翼羽根部18とは逆に、軸中心に対して左方向にねじれつつ、上流側から下流側に向けて傾斜している。なお、旋回流捕捉部19bについての詳細は後述する。
【0029】
動翼15は、給水流路に対してほぼ平行に設けられた中心軸24を介して、軸受17に支持されている。動翼15は、中心軸24のまわりに回転可能となっている。軸受17は、動翼15に対して間隙を隔てて、動翼15の下流側に設けられている。
【0030】
筒体大径部13bの下流端の開口は、Oリング52を介して、封止部材51によって水が漏れないように塞がれている。封止部材51の内部には段付きの孔が形成されている。また、段付きの孔の段部51aは環状に形成されている。そして、この段部51aには軸受17が設けられている。
【0031】
軸受17は、封止部材51内部の段部51aに設けられるリング部材21と、このリング部材21の中心に設けられる軸支持部22とを有する。そして、これらが、放射状に設けられた連結部材23(図4)によって結合されている。連結部材23間は、閉塞せず貫通しているため、筒体13内部の給水の流れを妨げることはない。
【0032】
軸受17の軸支持部22には、動翼15の軸中心に固定された中心軸24が回転可能に設けられている。中心軸24の先端部は、動翼15から突出して静翼14に嵌め込まれている。中心軸24の先端部と静翼14とは、互いに固定されていない。そのため、筒体13に対して固定された静翼14に対して中心軸24は回転可能になっている。あるいは、中心軸24の両端部をそれぞれ軸支持部22と静翼14に固定し、その中心軸24に対して回転可能に動翼15を嵌め込む構成としてもよい。
【0033】
中心軸24と静翼14の周面との間の径方向寸法と、中心軸24と動翼15の周面との間の径方向寸法とはほぼ等しくなっている。そのため、静翼14の周面と動翼15の周面とは軸方向に見てほぼ同一線上にある。
【0034】
静翼羽根部18の径方向外側への突出寸法は、上流側から下流側にかけてほぼ同じとなっている。同様に、一体に設けられた動翼羽根部19と旋回流捕捉部19bの径方向外側への突出寸法は、上流側から下流側にかけてほぼ同じとなっている。前述したように、一体に設けられた動翼羽根部19と旋回流捕捉部19bの方が静翼羽根部18よりも突出寸法が大きい。そして、旋回流捕捉部19bの分だけ静翼羽根部18よりも径方向外側に突出している。静翼羽根部18の外周端18aは、動翼羽根部19の内周端19aよりも径方向外側に突出している。
【0035】
周方向に見て隣り合う静翼羽根部18間の空間は、静翼流路71として機能する。周方向に見て隣り合う動翼羽根部19・旋回流捕捉部19b間の空間は、動翼流路72として機能する。静翼流路71の出口は、間隙(例えば0.55mm)を隔てて、動翼流路72の入口に対向している。動翼流路72の入口幅bは、静翼流路71の出口幅aより大きい。
【0036】
筒体13の大径部13bの内部には、動翼流路72を囲むように旋回流捕捉部19bに固定された筒状のマグネットM1が収容されている。図4において2点鎖線で表されるマグネットM1の内周面は、旋回流捕捉部19bの外周端に固定されている。
【0037】
小径部13aの外側には、マグネットM1の上流側端面に対向させてコイル9が配置されている。なお、コイル9は、マグネットM1の下流側端面に対向させて配置してもよく、あるいは、マグネットM1の上流側及び下流側の両端面にそれぞれ対向させて1対のコイル9を配置してもよい。
【0038】
コイル9は、図5に表される円筒状のヨーク31と、このヨーク31の内部に配置されるコイル配線部(図示省略)とを有する。ヨーク31は、共に磁性体からなる3つのヨーク32、33、34を組み合わせてなる。
【0039】
ヨーク33は、内部に収容したコイル配線部の周面部に対向する外周面部33bと、マグネットM1に対向する複数の極歯33aと、を有する。複数の極歯33aは、外周面部33bに一体に設けられている。また、極歯33aは、外周面部33bから径方向内側に向けて突出するようにして設けられている。また、極歯33aは、周方向に沿って等間隔で設けられている。
【0040】
ヨーク34は、径方向外側に向けて突出し、ヨーク33の極歯33aの間に配置される複数の極歯34aを有する。極歯33a、34aは、内部に収容されたコイル配線部を間に挟んで、ヨーク32に対向している。
マグネットM1の軸方向の端面には、周方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁されている。
【0041】
次に、旋回流捕捉部19bについてさらに説明する。
前述したように、静翼14には軸中心に対して右方向にねじれつつ、上流側から下流側に向けて傾斜する静翼羽根部18が設けられている。そのため、水流が静翼流路71を通過することで旋回流が発生する。そして、この旋回流が動翼流路72に流入することで、動翼15に回転力が与えられる。この旋回流は、水平方向(径方向)に向かう成分を多く有している。そのため、水平方向(径方向)に向かう水流がマグネットM1内周面に当たるなどして、水平方向に向かう成分を有効に利用することができなければ、羽根車効率を向上させることはできない。
【0042】
図6は、旋回流捕捉部を説明するための模式図である。なお、図6(a)は図6(b)の動翼を軸方向上方から見た断面を表し、図6(b)は図6(a)におけるB−B断面斜視図を表している。 図7は、旋回流の成分を説明するための模式図である。
ここで、図6、図7に表すように、旋回流が軸方向となす角度をθ、静翼と動翼との間の軸方向距離をh、軸中心と動翼羽根部の内周との間の水平方向(径方向)距離をr、軸中心と動翼羽根部の外周との間の水平方向(径方向)距離をr、軸中心と静翼羽根部の外周との間の水平方向(径方向)距離をr、旋回流の速度をV、旋回流の速度の水平方向(径方向)成分をVy、旋回流の速度の軸方向成分をVzとする。また、旋回流の水平方向成分が、静翼羽根部の外周を出発してから動翼羽根部の外周部の軸方向投影面に到達するまでの距離をLとする。
【0043】
静翼羽根部18の外周を通過した旋回流を動翼部分で全部受けるためには、旋回流の水平方向(径方向)成分が動翼羽根部19と一体に設けられた旋回流捕捉部19bの外周端の軸方向投影面19cに到達するよりも早く、旋回流の軸方向成分が動翼羽根部19に到達すればよい。
【0044】
すなわち、旋回流の水平方向(径方向)成分が動翼羽根部19と一体に設けられた旋回流捕捉部19bの外周端の軸方向投影面19cに到達するまでの時間より、旋回流の軸方向成分が動翼羽根部19に到達するまでの時間が短くなるような寸法に旋回流捕捉部19bを設ければよい。
そのような旋回流捕捉部19bとするためには、以下の条件を満たすような寸法関係とすればよい。

【数1】


また、上記の数式を変形することで以下の関係式を得ることができる。

【数2】


【数3】


【数4】


ここで、旋回流捕捉部19bの水平方向(径方向)寸法は、r−rである。
【0045】
以上説明したように、本具体例においては、動翼羽根部19の径方向外側に旋回流捕捉部19bを一体に設けている。また、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。そのため、旋回流のうち水平方向(径方向)に向かう水流を旋回流捕捉部19bで受けることができる。その結果、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分をも有効に利用することができるので、羽根車効率を向上させることができる。
【0046】
表1は、旋回流捕捉部19bの効果をシミュレーションにより求めたものである。なお、比較例1は、静翼部分において旋回流を発生させるが旋回流捕捉部を設けていない場合(例えば、特許文献2(特開2004−336982号公報)に開示がされたものの場合)である。また、比較例2は、静翼部分において旋回流を発生させず、動翼外径が静翼外径よりも大きい場合(例えば、特許文献1(特表平6−505542号公報)に開示がされたものの場合)である。また、比較例3は、静翼部分において旋回流を発生させず、動翼外径と静翼外径とが等しい場合である。

【表1】


表1から分かるように、静翼部分において旋回流を発生させるものとすれば、発電効率を向上させることができる。そして、静翼部分において旋回流を発生させるとともに旋回流捕捉部19bを設けるようにすれば、発電効率をさらに向上させることができる。このことは、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができることをも意味する。
【0047】
次に、本具体例に係る水栓用発電機及び自動水栓装置の作用について説明する。
【0048】
使用者が、吐水口6(図3)の下に手をかざすと、これをセンサ7が感知して、制御部57が電磁弁8を開にする。これにより、水栓用発電機11の筒体13の内部に流水が供給され、筒体13の内部を流れた水は吐水口6から吐水される。使用者が、吐水口6の下から手を遠ざけると、電磁弁8が閉となり、自動で水が止まる。
【0049】
筒体13内に流れ込んだ流水は、静翼14の円錐体表面を流れて径方向外側に拡散され、図1及び図4に図示される具体例においては、軸中心に対して右方向に旋回するような旋回流となって、静翼羽根部18間の静翼流路71を流れる。
【0050】
静翼流路71を流れた旋回流は、動翼流路72に流入し、動翼羽根部19・旋回流捕捉部19bの上側の傾斜面に衝突する。本具体例では、動翼流路72に流入する旋回流は、軸中心に対して右方向に旋回した流れなので、動翼羽根部19・旋回流捕捉部19bに対して右方向の力が作用し、動翼15は右回りに回転する。動翼流路72を流れた流水は、軸受17の内側を通過して、筒体13内部を抜け、吐水口6へと至る。
【0051】
動翼15が回転すると、これに固定されたマグネットM1も回転し、このマグネットM1に対向している極歯33a、34a(図5)の極性が変化していく。すなわち、ヨーク33(極歯33a)がN極のときヨーク34(極歯34a)がS極、ヨーク33(極歯33a)がS極のときヨーク34(極歯34a)がN極という状態が繰り返されることで、ヨーク33、34の内部に配置されたコイル配線部に対する鎖交磁束が変化し、そのコイル配線部に起電力が生じ、発電する。発電した電力は、充電器56へと充電された後、例えば、電磁弁8、センサ7、制御部57の駆動に使用される。
【0052】
本具体例においては、静翼羽根部18と筒体13内周面とによって囲まれる空間が静翼流路71として機能し、前述したように流水がその静翼流路71を流れることで旋回流が形成される。この旋回流は、動翼羽根部19・旋回流捕捉部19bとマグネットM1内周面とによって囲まれる空間である動翼流路72に流入し、動翼15に回転力を与える。
【0053】
動翼流路72に流入する流水は旋回流であるため、動翼流路72の径方向外側に設けられたマグネットM1に衝突する成分(水平方向(径方向)成分)を多くもっている。本具体例においては、動翼羽根部19と一体に旋回流捕捉部19bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。この場合、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路71の出口幅aよりも広い動翼流路72の入口幅bを確保することができる。
【0054】
そのため、静翼14を通過した水流が径方向外側に進んでマグネットM1に衝突するまでの距離を長くすることができるので、マグネット衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼14を通過した水流がマグネットM1に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができ、発電効率の向上を図ることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0055】
特に、節水効果をアピールした自動水栓のように発電に用いる水力エネルギーが小さいものでは、わずかな圧力損失であっても低減したいという要求が強い。本具体例はそのようなものに非常に有効である。
なお、静翼流路71の出口幅aに対して、動翼流路72の入口幅bをあまり大きくしすぎると、流路の急拡大による圧力損失が生じる。そのため、この流路の急拡大による圧力損失の影響を抑えつつ、前述した旋回流のマグネットM1への衝突による圧力損失も抑えるために、静翼流路71の出口幅aと動翼流路72の入口幅bとの関係を適切に設定する必要がある。
【0056】
次に、静翼流路出口幅に対する動翼流路入口幅の比率を、1.0、1.5、2.0、2.5と変えた場合における、圧力損失の比(%)、損失流出の比(%)、羽根車効率の比(%)をシミュレーションした結果について、表2、図8〜10を参照して説明する。なお、静翼流路は、その上流側の入口から下流側の出口にかけて径方向の幅は同じとし、同様に、動翼流路は、その上流側の入口から下流側の出口にかけて径方向の幅は同じとした。
【表2】


損失流出とは、静翼流路71を通過した流水のうち、動翼流路72を通過せずに、マグネットM1と、筒体13内壁面との間の隙間を通過してしまう流量を表す。羽根車効率とは、与えた水流のエネルギーのうち回転エネルギーに変換された割合のことをいう。
【0057】
図8において、横軸は、静翼流路出口幅に対する動翼流路入口幅の比率を表し、縦軸は、動翼流路入口幅比率が1.0のときの圧力損失の比を100(%)として、動翼流路入口幅比率が1.5、2.0、2.5のときの圧力損失の比(%)を表している。
図9において、横軸は、静翼流路出口幅に対する動翼流路入口幅の比率を表し、縦軸は、動翼流路入口幅比率が1.0のときの損失流量の比を100(%)として、動翼流路入口幅比率が1.5、2.0、2.5のときの損失流量の比(%)を表している。
図10において、横軸は、静翼流路出口幅に対する動翼流路入口幅の比率を表し、縦軸は、動翼流路入口幅比率が1.0のときの羽根車効率の比を100(%)として、動翼流路入口幅比率が1.5、2.0、2.5のときの羽根車効率の比(%)を表している。
【0058】
図8より分かるように、動翼流路入口幅比率が2.0のとき、最も圧力損失が小さい。また、図9から分かるように、動翼流路入口幅を拡大することで、動翼流路を通らずにマグネットと筒体内壁面との間の隙間を通過していた水量を減少させることができる。そのため、その分、動翼流路を通って動翼の回転に寄与する水量を増やすことができるので、発電効率を向上させることができる。その結果、動翼流路入口幅を広げることにより、前述したマグネットへの衝突による圧力損失低減および動翼に回転力を与えない損失流量の減少という2つの作用により発電効率をさらに向上させることができる。また、少ない流量でもさらに効率よく動翼を回転させることができる。
【0059】
また、図10より、動翼流路入口幅比率が2.0のとき、最も羽根車効率がよいことが分かる。図8、9、10に基づく知見より、動翼流路入口幅としては、静翼流路出口幅の1.5倍以上2.5倍以下が望ましい。具体的な動翼流路の入口幅寸法としては、例えば1.0mmを挙げることができる。
【0060】
なお、動翼羽根部19と一体に旋回流捕捉部19bを設けるためには、設置箇所における径方向寸法に余裕が必要である。本具体例においては、コイル9を、マグネットM1の軸方向に対向配置させた構造のため、コイル9をマグネットM1の径方向外側に対向配置させた場合に比べて、径方向寸法を小さくすることができる。例えば図2に表される円筒状の吐水部3bの中に内蔵させても吐水部3bの細くスッキリとしたデザイン性を損ねない。
【0061】
[第2の具体例]
図11は、第2の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
図12は、同水栓用発電機におけるコイル16を表す模式斜視図である。
図13は、図12に表されるコイル16の分解斜視図である。
図14は、同水栓用発電機におけるマグネットM2とヨーク極歯25c、26bとの配置関係を表す模式平面図である。
【0062】
本具体例では、マグネットM2とコイル16との配置関係が第1の具体例と異なる。
【0063】
筒体13の大径部13bの内部に、動翼流路72を囲むように旋回流捕捉部19bに固定された筒状のマグネットM2が収容されている。大径部13bの径方向外側には、マグネットM2の外周面に対向させてコイル16が配置されている。
【0064】
コイル16は、図12、13に表される1対のヨーク25、26と、これらヨーク25、26が組み合わされて形成される環状の空間内に配設されたコイル配線部16aとを有する。
【0065】
ヨーク25、26は、共に磁性体からなる。ヨーク25は、コイル配線部16aの一方の端面部に対向される環状部25aと、コイル配線部16aの周面部に対向される周面部25bとを有している。また、さらに環状部25aの内周縁部には、軸方向に突出した複数の極歯25cが設けられている。ヨーク26は、コイル配線部16aの他方の端面部に対向される環状部26aと、この環状部26aの内周縁部に、軸方向に突出して設けられた複数の極歯26bとを有する。ヨーク25の極歯25cは、周方向に沿って等間隔で設けられ、ヨーク26の極歯26bも周方向に沿って等間隔で設けられている。また、図12に表されるように、一方のヨークの極歯の間に、他方のヨークの極歯を位置させて、両ヨーク25、26の極歯25c、26bは、コイル配線部16aの内周面に対向している。
【0066】
マグネットM2は、図14に表されるように、周方向にN極とS極とが交互に着磁されている。また、それぞれのヨーク25、26の極歯25c、26bは、筒体13の管壁を間に挟んで、マグネットM2のN極またはS極に対向している。コイル配線部16aは、極歯25c、26bおよび筒体13の管壁を間に挟んで、マグネットM2に対向している。
【0067】
第1の具体例と同様、静翼14によって形成された旋回流の水力を受けて動翼15が回転すると、これに固定されたマグネットM2も回転する。マグネットM2は、図14に表されるように、周方向に沿ってN極とS極が交互に並んで着磁されているため、マグネットM2に対向しているヨーク25、26の極歯25c、26bの極性が変化していく。すなわち、ヨーク25がN極のときヨーク26がS極、ヨーク25がS極のときヨーク26がN極という状態が繰り返されることで、コイル配線部16aに対する鎖交磁束が変化し、コイル配線部16aに起電力が生じ、発電する。
【0068】
本具体例においても、動翼羽根部19と一体に旋回流捕捉部19bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。この場合、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路71の出口幅aよりも広い動翼流路72の入口幅bを確保することができる。
【0069】
そのため、静翼14を通過した水流が径方向外側に進んでマグネットM2に衝突するまでの距離を長くすることができるので、マグネット衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼14を通過した水流がマグネットM2に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができ、発電効率の向上を図ることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0070】
[第3の具体例]
図15は、第3の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
本具体例では、筒体13の内部に、給水が流れる方向の上流側から順に、静翼14、動翼15、マグネットM3、および軸受17が、互いの軸中心を一致させて設けられている。マグネットM3は、円筒状を呈し、動翼15の下流側に動翼15に対して離間して設けられている。
【0071】
動翼15の軸中心に固定され、軸受17上に回転可能に支持された中心軸24は、マグネットM3の中空部を貫通しており、その中心軸24には、放射状に延びる複数本の連結部材35を介して、マグネット装着部材36が固定されている。マグネット装着部材36は、リング状のプレート部37と、このプレート部37の中央孔の縁部に一体に設けられ上流側に向けて延在する筒部38とを有する。
【0072】
マグネットM3は、その中空部を、マグネット装着部材36の筒部38の外周面に嵌合させてプレート部37上に固定されている。したがって、マグネットM3は、マグネット装着部材36および中心軸24を介して、動翼15に対して固定されており、動翼15が回転すると、マグネットM3は動翼15と一体となって回転する。
【0073】
あるいは、中心軸24の両端部をそれぞれ軸支持部22と静翼14に固定させ、その中心軸24に対して回転可能に動翼15をはめ込む構成としてもよい。この場合、マグネット装着部材36の連結部材35は、中心軸24のまわりを回転可能となるように設けられている。また、筒部38の上端が動翼15に固定されている。そのため、動翼15が回転すると、マグネットM3はマグネット装着部材36と共に中心軸24のまわりを回転する。
【0074】
筒体13の外周面における、マグネットM3に対向する部分には、マグネットM3の軸方向長さに合わせて、例えば、2つのコイル16が設けられている。コイル16は、前述した第2の具体例と同じ構成を有している。また、マグネットM3は、第2の具体例のマグネットM2と同様、周方向に沿ってN極とS極が交互に並んで着磁されている。また、マグネットM3が回転することによる発電の原理も第2の具体例と同じである。
【0075】
本具体例においては、静翼羽根部18と筒体13内周面とによって囲まれる空間が静翼流路71として機能し、動翼羽根部19・旋回流捕捉部19bと筒体13内周面とによって囲まれる空間が動翼流路72として機能する。前述したように流水が静翼流路71を流れることで旋回流が形成され、この旋回流は、動翼流路72に流入し、動翼15に回転力を与える。動翼流路72を流れた流水は、マグネットM3の中空部、軸受17の内側を通過して、筒体13内部を抜け、吐水口6へと至る。
【0076】
動翼流路72に流入する流水は旋回流であるため、動翼流路72に流入する流水は、動翼流路72の径方向外側に位置する筒体13内周面に衝突する成分を多く有している。本具体例においても、動翼羽根部19と一体に旋回流捕捉部19bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。この場合、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路71の出口幅aよりも広い動翼流路72の入口幅bを確保することができる。
【0077】
そのため、静翼14を通過した水流が径方向外側に進んで筒体13内周面に衝突するまでの距離を長くすることができるので、筒体13内周面衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼14を通過した水流が筒体13内周面に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができ、発電効率の向上を図ることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0078】
なお、本具体例において、動翼15の周面を囲むように旋回流捕捉部19bの外周面に図示しない動翼リングを設けてもよい。このような構成にすれば、動翼リングの外周面と筒体13の内周面との間の隙間が狭められて、動翼流路72よりも径方向外側の流路抵抗をさらに大きくすることができる。そのため、動翼流路72を流れる流量を多くすることができ、水力エネルギーから回転エネルギーへの変換効率を高めることができる。
[第4の具体例]
図16は、第4の具体例に係る水栓用発電機の模式断面図である。
筒体115は、大径部116と小径部118とを有する段付き形状を呈し、その内部が給水流路に連通した状態で、図2、3に示される吐水部3b内に配設される。筒体115は、その中心軸方向が、吐水部3b内の給水流路10を流水が流れる方向に対してほぼ平行となるように配設される。筒体115は、大径部116を上流側に、小径部118を下流側に向けて配設される。筒体115の内部における主流路には、上流側から順に、静翼121と動翼125が設けられている。
【0079】
大径部116の上流端の開口は、Oリング133を介して、封止部材132により水が漏れないように塞がれている。封止部材132の内周面に静翼121が設けられている。
【0080】
静翼121は、円柱体の一方の軸方向端面(上流側に位置する面)に、円錐体を一体的に設けた形状をしている。静翼121の周面には、径方向外側に突出した複数の突起状の静翼羽根部122が設けられている。静翼羽根部122は、例えば、静翼121の軸中心に対して右方向にねじれつつ、上流側から下流側に向けて傾斜している。静翼121は、封止部材132の内周面に対して固定され、回転はしない。
【0081】
静翼121の下流側には、静翼121に対してわずかの隙間をあけて動翼125が設けられている。動翼125の上流側部分は円柱状に形成され、その周面には、動翼125の軸中心(軸部材135)に対して径方向外側に突出した複数の動翼羽根部126が設けられている。また、動翼羽根部126の径方向外側には、旋回流捕捉部126bが動翼羽根部126と一体に設けられている。一体に設けられた動翼羽根部126と旋回流捕捉部126bは、静翼羽根部122とは逆に、軸中心に対して左方向にねじれつつ、上流側から下流側に向けて傾斜している。なお、動翼羽根部126、旋回流捕捉部126bは、それぞれ動翼羽根部19、旋回流捕捉部19bと同様であるため詳細な説明は省略する。
【0082】
動翼125の外周側には、動翼羽根部126の周囲を囲むように動翼リング128が設けられている。動翼リング128の外周面にマグネットMが固定されて設けられている。動翼125、動翼リング128およびマグネットMは一体となって回転する。
マグネットMは、筒状を呈し、その軸方向の端面には周方向に沿って交互にN極とS極とが着磁されている。
【0083】
動翼125の下流側には、中心軸135を流路中に支持するための支持部材134が設けられている。中心軸135は、支持部材134の中心から上流側に向けて伸びている。支持部材134は、筒体115の中心軸に対してほぼ平行、すなわち主流路に対してほぼ平行に設けられている。支持部材134は、筒体115の小径部118の内周面に対して固定されたスリーブ144と、軸中心からスリーブ144の内周面に向けて放射状に設けられた複数の連結部材143とを有し、連結部材143の中心に中心軸135が支持されている。複数の連結部材143は周方向に互いに離間して設けられ、連結部材143同士の間は閉塞されておらず、流水が流れる隙間が形成されている。
【0084】
中心軸135は動翼125の軸中心を貫通しており、動翼125の下流端は支持部材134上に回転(摺動)できるように支持されている。また、動翼125は中心軸135によって径方向の移動を規制されつつ、中心軸135のまわりを回転可能となっている。なお、動翼125と中心軸135とを一体化することもできる。そして、中心軸135の軸方向の両端部をそれぞれ静翼121及び支持部材134に対して回転できるように係合させて、中心軸135と一体に動翼125が回転するようにしてもよい。
【0085】
筒体115の大径部116における下流側の端部は、小径部118の外周面よりも径方向外側に張り出した環状のフランジ状に形成され、そのフランジ部117よりも下流側における小径部118の外側には、マグネットMの下流側の軸方向端面(N極とS極とが着磁された着磁面)に対向させるようにしてステータ150が設けられている。
【0086】
ステータ150は、円筒状に巻回されたコイル136と、コイル136を囲む磁性体からなるヨーク140とを有する。ヨーク140は、周方向に沿って、交互に、且つ互いに離間して並んで設けられた複数の極歯を有している。また、それら極歯は、コイル136の一方の軸方向端面(図16においては上流側端面)に対向している。そのコイル136の一方の軸方向端面は、極歯およびフランジ部117を間に挟んで、マグネットMの下流側端面(着磁面)に対向している。
【0087】
動翼125及びこれに固定されたマグネットMの回転を許容するためには、これらの周囲に設けられた静止体(封止部材132、筒体115)との間に隙間を設ける必要がある。ところが、その隙間は、流水が動翼羽根部126・旋回流捕捉部126b(動翼流路127)を介さないで流れるバイパス流路となってしまう。
【0088】
図17は、比較例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
図17に表す比較例の構造では、封止部材132の下流側端面と、動翼リング128及びマグネットMとの間の隙間、マグネットMの外周面と筒体115の大径部116内周面との間の隙間、マグネットM及び動翼リング128の下流側端面と、筒体115のフランジ部117との間の隙間によってバイパス流路が形成される。
【0089】
静翼121を流れた流水は、動翼羽根部126・旋回流捕捉部126b(動翼流路127)を介さずに動翼羽根部126・旋回流捕捉部126b(動翼流路127)よりも径方向外側を迂回するバイパス流路を流れるバイパス流Fbと、動翼羽根部126・旋回流捕捉部126b(動翼流路127)を流れる主流Faとに分岐する。このうち、主流Faは、前述したように動翼125を回転させつつ動翼流路127を通り、そのまま下流へと流出する。一方、バイパス流Fbは、マグネットMのまわりのバイパス流路を通り、動翼125の回転すなわち発電に寄与することなく、そのまま下流へと流れ、動翼流路127の下流側で主流と合流する。そのため、バイパス流路を流れるバイパス流Fbの量が多くなると、発電に寄与する動翼流路127を流れる主流Faの量がその分少なくなり、発電効率の低下をまねく。
【0090】
図17に示した比較例の構造におけるバイパス流出量と羽根車効率とをシミュレーションにより求めると、バイパス流出量は約61%、羽根車効率は約6%となった。これは、発電機に供給された流水のうち6割以上のものが発電に寄与せず、バイパス流路を経由して流出していることを意味する。尚、このときのシミュレーションの条件は、発電機に供給する流水量を毎分1.8リットル、動翼の回転を2500rpm、必要トルクを0.5mN・m(ミリニュートン・メートル)とした。また、この条件で必要となる水圧は71.6kPa(キロパスカル)となった。
【0091】
ここで、「羽根車効率」は、水力エネルギーを回転エネルギーに変換する際の効率を示すものであり、η=(T・N)/(ΔP・Q)で求めることができる。
ここで、Tは回転トルク、Nは回転数、ΔPは水圧、Qは流量である。そのため、分子のT・Nは回転エネルギー、分母のΔP・Qは水力エネルギーとなる。
【0092】
図18は、第4の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
【0093】
本具体例では、バイパス流路への流水の流入を抑制する手段として、バイパス流路の出口近傍(バイパス流と主流との合流部)に主流Faが衝突する突出部160を設けている。
【0094】
突出部160は、主流Faが流れる動翼流路127の最外周端127aよりも中心軸135に向けた径方向内側に突出して設けられている。また、その上流側の端面部161が動翼流路127に対向している。端面部161は、中心軸135の軸方向に対して略垂直な円環状の平坦面からなり、筒体115のフランジ部117の上流側端面とほぼ同一平面上に設けられている。
【0095】
尚、本具体例では、突出部160は、中心軸135の支持部材134の一構成要素であるスリーブ144に設けられているが、これに限定されるわけではない。例えば、突出部160を独立した部材で構成することもできるし、筒体115のフランジ部117を径方向内側に伸ばして突出部としてもよい。
【0096】
次に、突出部160の作用について説明する。
動翼流路127から流出した主流Faは、突出部160の端面部161に衝突し、径方向内側に向けてほぼ直角に流れ方向を変換される。その後、突出部160の角部で下流側に向けてほぼ直角に方向を変える。この際、端面部161に衝突した主流Faの一部は、バイパス流路の出口側に向けて流れ、これがバイパス流Fbと衝突することになる。その結果、バイパス流路の出口近傍の圧力が高まり、バイパス流路からのバイパス流Fbの流出が阻害されることになる。このように、バイパス流路の出口近傍の圧力が高まり、出口が塞がれる結果となるので、バイパス流路への流水の流入が抑制され、その分、発電に寄与する主流Faの流量が増加し、発電効率を向上させることができる。
【0097】
また、本具体例においても、動翼羽根部126と一体に旋回流捕捉部126bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路123の出口幅よりも広い動翼流路127の入口幅を確保することができる。
そのため、静翼121を通過した水流が径方向外側に進んで動翼リング128内周面に衝突するまでの距離を長くすることができるので、動翼リング128内周面衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼121を通過した水流が動翼リング128内周面に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができる。
【0098】
そして、突出部160を設ける効果と、旋回流捕捉部126bとを設ける効果とを享受することができるので、発電効率をさらに向上させることができる。また、少ない流量でもさらに効率よく動翼を回転させることができる。
[第5の具体例]
図19は、第5の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
本具体例では、バイパス流路への流水の流入を抑制する手段として、バイパス流路の出口近傍(バイパス流と主流との合流部)に主流Faが衝突する突出部170を設けている。
【0099】
突出部170は、主流Faが流れる動翼流路127の最外周端127aよりも径方向内側に突出して設けられている。また、その上流側の端面部171が動翼流路127に対向している。端面部171は、その外側部172よりも内側部173の方が、動翼流路127に向かって突出している。
【0100】
端面部171の外側部172は、中心軸135の軸方向に対してほぼ垂直な円環状の平坦面からなっている。また、筒体115のフランジ部117の上流側端面とほぼ同一平面上に設けられている。端面部171の内側部173は、外側部172に続いて設けられ、径方向内側(中心軸135側)に向かうにしたがって動翼流路127側に近づくように傾斜し、動翼流路127に向かうにつれて断面積が漸次減少するような形状を呈している。内側部173は、外側部172に対して所定の傾斜角度(図19では、例えば45°程度)動翼流路127側に傾いている。
【0101】
本具体例においても、突出部170は、中心軸135の支持部材134の一構成要素であるスリーブ144に設けているが、これに限定されるわけではない。例えば、突出部170を独立した部材で構成することもできるし、筒体115のフランジ部117を径方向内側に伸ばして突出部としてもよい。
【0102】
また、内側部173の傾斜角度は適宜変更することができる。また、斜面も直線状である必要はなく、曲線または直線と曲線を組み合わせたようなものであってもよい。また、図示したものは、断面形状が直角三角形であるが、直角三角形以外の三角形や、台形など斜面を複数有するものなどとすることもできる。また、各面の寸法比率も適宜変更することができる。ただし、バイパス流路の出口近傍の圧力を高めるのに適した形状や寸法比率とすることが好ましい。
【0103】
次に、突出部170の作用について説明する。
【0104】
動翼流路172から流出した主流Faは、突出部170に衝突し、径方向内側に向けて流れ方向が変換される。この際、図19に矢印で示したように、衝突した主流Faは端面部171の内側部173の斜面に沿って一度上流側に流れた後、内側部173の頂点付近で折り返して下流に流れることになる。
【0105】
本具体例においても、端面部171に衝突した主流Faの一部がバイパス流路の出口側に向けて流れ、これがバイパス流Fbと衝突することになる。すなわち、バイパス流路から流出した流れは、動翼流路172から流出する流れに対向する流れ成分を有する。その結果、バイパス流路の出口近傍の圧力が高まり、バイパス流路からのバイパス流Fbの流出が阻害されることになる。
【0106】
また、本具体例においては、突出部170の端面部171に、主流にとって下り勾配となる内側部173が設けられている。そのため、主流Faの衝突時にその主流Faのバイパス流路側への流れが促され、バイパス流路の出口近傍の圧力をより高めることができる。また、バイパス流Fbが出口に向けて流れる流路に、そのバイパス流の流れにとって上り勾配となる内側部173があるため、これがバイパス流Fbの抵抗ともなる。そのため、バイパス流Fbの流出がより阻害されるので、バイパス流路への流水の流入もより抑制される。
【0107】
また、本具体例においても、動翼羽根部126と一体に旋回流捕捉部126bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路123の出口幅よりも広い動翼流路127の入口幅を確保することができる。
そのため、静翼121を通過した水流が径方向外側に進んで動翼リング128内周面に衝突するまでの距離を長くすることができるので、動翼リング128内周面衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼121を通過した水流が動翼リング128内周面に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができる。
【0108】
そして、突出部170を設ける効果と、旋回流捕捉部126bとを設ける効果とを享受することができるので、発電効率をさらに向上させることができる。また、少ない流量でもさらに効率よく動翼を回転させることができる。
【0109】
[第6の具体例]
図20は、第6の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
本具体例では、バイパス流路への流水の流入を抑制する手段として、バイパス流路の出口近傍(バイパス流と主流との合流部)に主流Faが衝突する突出部180を設けている。
【0110】
突出部180は、主流Faが流れる動翼流路127の最外周端127aよりも径方向内側に突出している。また、その上流側(動翼流路127側)の端面部181が動翼流路127に対向している。端面部181は、その外側部182よりも内側部183の方が、動翼流路127に向かって突出している。
【0111】
端面部181の外側部182は、中心軸135の軸方向に対してほぼ垂直な円環状の平坦面からなっている。また、筒体115のフランジ部117の上流側端面とほぼ同一平面上に設けられている。内側部分183は、外側部182よりも動翼流路127側に突出したスリーブ144の上流側端部に設けられている。内側部分183と外側部182との間に、中心軸135の軸方向に対してほぼ平行な壁面184が形成されている。壁面184は、外側部182に対してほぼ垂直に形成されている。また、外側部182よりも動翼流路127に近い上流側に、壁面184に対してほぼ垂直に内側部183が形成されている。すなわち、外側部分182、壁面184および内側部183によって、バイパス流路の出口近傍に段差が形成されている。
【0112】
本具体例では、バイパス流路における出口近傍の流路は、中心軸135の軸方向に対してほぼ垂直な方向から、上流側(動翼流路127側)に向けてほぼ直角に方向変換されている。また、バイパス流路の出口は、図20において真上を向いている。また、バイパス流路の出口は、動翼流路127に対向している。
【0113】
なお、本具体例において、内側部分183は、中心軸135の支持部材134の一構成要素であるスリーブ144に設けているが、これに限定されるわけではない。例えば、内側部183を独立した部材で構成することもできるし、筒体115のフランジ部117の径方向内側の端部を動翼流路127側に突出させてもよい。
【0114】
また、壁面184も含めた端面部181の形状や寸法も図示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。例えば、ほぼ直角な平面を組み合わせて構成されることに限らず、曲面または平面と曲面とを組み合わせたようなものであってもよい。また、内側部183の上流側への突出高さも適宜変更することができる。ただし、バイパス流路の出口近傍の圧力を高めるのに適した形状や寸法とすることが好ましい。
【0115】
次に、突出部180の作用について説明する。
【0116】
動翼流路172から流出した主流Faは、突出部180に衝突する。そして、図20に矢印で示したように、衝突した主流Faは壁面84に沿って一度上流側に上昇した後、内側部183を乗り越えるようにして下流に流れる。
【0117】
本具体例においても、端面部181に衝突した主流Faの一部がバイパス流路の出口側に向けて流れ、これがバイパス流Fbと衝突することになる。その結果、バイパス流路の出口近傍の圧力が高まり、バイパス流路からのバイパス流Fbの流出が阻害されることになる。
【0118】
また、本具体例においては、動翼流路127を流れた主流の一部が壁面184に沿ってバイパス流路側に導かれ、主流のバイパス流路側への流れが促されるようになる。その結果、バイパス流路の出口近傍の圧力をより高めることができる。また、出口へと向けて流れるバイパス流Fbにとってその流れを遮る壁面184があるため、これがバイパス流Fbの抵抗ともなる。そのため、バイパス流Fbの流出がより阻害されるので、バイパス流路への流水の流入もより抑制され、さらに発電効率を向上させることができる。
【0119】
図21は、前述した突出部の効果を説明するためのグラフ図である。
【0120】
図21の左側縦軸は羽根車効率、右側縦軸は筒体115内に導かれた流水のバイパス流路への流入割合(バイパス流Fbの割合)、横軸は前述の端面部の傾斜角度(中心軸135の軸方向に対してほぼ垂直な方向から上流側に傾いている角度)を示している。例えば、端面部の傾斜角度が0°とは図18で説明した場合、45°とは図19で説明した場合、90°とは図20で説明をした場合をそれぞれ示している。また、傾斜角度が−45°とは、軸方向に対してほぼ垂直な方向から下流側に45°傾いている場合を表す。また、図21に示したデータは、シミュレーションによるものであり、その条件は、発電機に供給する流水量を毎分1.8リットル、動翼の回転数を2400rpmとした。
【0121】
図21から分かるように、バイパス流路の出口近傍に主流Faが衝突する突出部を設け、これに備えられた端面部の傾斜角度を大きくするほどバイパス流路への流入割合(バイパス流Fbの量)を減らすことができる。また、羽根車効率も高くすることができる。これは、発電効率を大幅に向上できることをも意味する。
【0122】
また、本具体例においても、動翼羽根部126と一体に旋回流捕捉部126bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路123の出口幅よりも広い動翼流路127の入口幅を確保することができる。
そのため、静翼121を通過した水流が径方向外側に進んで動翼リング128内周面に衝突するまでの距離を長くすることができるので、動翼リング128内周面衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼121を通過した水流が動翼リング128内周面に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができる。
【0123】
そして、突出部180を設ける効果と、旋回流捕捉部126bとを設ける効果とを享受することができるので、発電効率をさらに向上させることができる。また、少ない流量でもさらに効率よく動翼を回転させることができる。
【0124】
[第7の具体例]
図22は、第7の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
図23は、本具体例に係る動翼部分の模式斜視図である。
【0125】
本具体例では、動翼流路127の内周側壁面に、下流側に向かうにしたがって径方向外側に末広がりとなる傾斜面127bを設けている。そのため、バイパス流路の出口近傍に向かって少なくとも動翼流路127における一部の流路断面積が漸減している。
【0126】
傾斜面127bは、動翼流路127を流れる主流Faがバイパス流路の出口近傍に向かうような傾斜角度を有する。図22の場合においては、バイパス流路の出口近傍は、動翼流路127の最外周端127aの下流側端面近傍となる。
【0127】
なお、傾斜面127bの傾斜角度、形状、寸法などは図示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。例えば、傾斜面127bは直線状である必要はなく、曲線または直線と曲線とを組み合わせたようなものであってもよい。また、図24に示すように複数の傾斜面127b、127cを組み合わせたものでもよい。また、必ずしも動翼流路127の入口部断面積が出口部断面積よりも大きくなるとは限らない。つまり、動翼125の内径が下流側に向けて漸増する部分が設けられていればよい。ただし、バイパス流路の出口近傍に主流Faが向かい、バイパス流路の出口近傍の圧力を高めるのに適した傾斜角度、形状、寸法とすることが好ましい。
【0128】
本具体例において、動翼流路127に流入した主流Faは、傾斜面127bに案内されてバイパス流路の出口近傍に向けて動翼流路127から流出する。そして、その主流Faの一部がバイパス流路の出口近傍にある部材と衝突し、その流れ方向を変換しつつ下流側に向かって流れる。
【0129】
本具体例においても、主流Faがバイパス流路出口近傍に衝突することで出口近傍の圧力を高めることができる。また、その一部がバイパス流路の出口側に向けて流れようとするため、これがバイパス流Fbと衝突することになる。その結果、バイパス流路の出口近傍の圧力がより高まり、バイパス流路からのバイパス流Fbの流出がより阻害されることになる。
【0130】
図25は、本具体例に係る動翼部分の効果を説明するためのグラフ図である。
図25の左側の棒グラフは本具体例に係る傾斜面127bを有する場合、右側の棒グラフは傾斜面を有さない場合である。また、各棒グラフの右側はバイパス流路への流入割合(バイパス流Fbの割合)、左側は羽根車効率を表している。
【0131】
図25から分かるように、本具体例によれば、バイパス流路への流入割合(バイパス流Fbの割合)を減らし、かつ、羽根車効率を改善することができる。これは、発電効率を向上させることができることを意味する。
【0132】
また、本具体例においても、動翼羽根部126と一体に旋回流捕捉部126bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路123の出口幅よりも広い動翼流路127の入口幅を確保することができる。
そのため、静翼121を通過した水流が径方向外側に進んで動翼リング128内周面に衝突するまでの距離を長くすることができるので、動翼リング128内周面衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼121を通過した水流が動翼リング128内周面に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができる。
【0133】
そして、傾斜面127bを設ける効果と、旋回流捕捉部126bとを設ける効果とを享受することができるので、発電効率をさらに向上させることができる。また、少ない流量でもさらに効率よく動翼を回転させることができる。
【0134】
[第8の具体例]
図26は、第8の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
図27は、比較例を説明するための模式断面図である。
【0135】
まず、図27に示す比較例について説明をする。
図27に示す比較例においては、静翼121の静翼流路123の最外周端123aと、動翼125の動翼流路127の最外周端127aとが、中心軸135の軸方向に対してほぼ平行に同一線上に並ぶように設けられている。
【0136】
前述したように、静翼流路123から流出した流水は、旋回流となっているので、水平方向(径方向)に向かう成分を多く有している。そのため、図27に矢印で示したような向きの主流Faを生じ、これがバイパス流路の入口近傍に衝突することになる。このように、バイパス流路の入口近傍で主流Faの衝突が起こると入口近傍の圧力が高まり、バイパス流路への流入が助長されることになる。バイパス流路の入口近傍で主流Faの衝突が起こると、動翼流路127内における圧力損失も大きくなり、例えば、前述の図18〜図20で説明をした突出部を設けたとしてもその効果が減少することになる。また、動翼リング128の内周面に衝突する時の速度が速いので圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失が大きくなる。
【0137】
これに対し、図26に示す本具体例では、静翼流路123の最外周端123aよりも、動翼流路127の最外周端127aの方が、径方向外側に突出している。
【0138】
そのため、静翼流路123から流出した流水が旋回流となり水平方向(径方向)にふくらむように流れようとしても、バイパス流路の入口近傍よりも下流側の動翼流路127の最外周端127aで衝突が起こるようになる。そのため、バイパス流路の入口近傍の圧力上昇が抑制され、バイパス流路への流入が抑制されることになる。また、動翼流路127内における圧力損失をも抑制することができる。そのため、例えば、前述の図18〜図20で説明をした突出部の効果を充分に発揮させることもできる。その結果、主流Faの流量の減少を抑制することができるので、発電効率を向上させることができる。
【0139】
尚、説明の便宜上、図26では、図27に比べて静翼流路123の最外周端123bを径方向内側に設けるようにしているが、静翼流路123の最外周端位置を変えずに動翼流路127の最外周端位置を外側(径方向外側)に設けるようにしてもよい。
【0140】
図28は、本具体例に係る水栓用発電機の効果を説明するためのグラフ図である。
図28の左側の棒グラフは図26で説明をした本具体例に係るものの場合、右側の棒グラフは図27で説明をしたものの場合である。また、各棒グラフの右側はバイパス流路への流入割合(バイパス流Fbの割合)、左側は羽根車効率を表している。
【0141】
図28から分かるように、本具体例によれば、バイパス流路への流入割合(バイパス流Fbの割合)を1/3程度と大幅に減らし、かつ、羽根車効率をも2倍近くまで改善することができる。これは、発電効率を大幅に向上させることができることを意味する。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができることをも意味する。
【0142】
[第9の具体例]
図29は、第9の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式図である。
図29(a)は発電機要部の模式断面図、図29(b)は動翼251を上方から見た場合の模式図、図29(c)は動翼251を側方から見た場合の模式図である。尚、図29(a)、(b)中の矢印は、動翼251の回転方向を示している。
【0143】
本具体例では、動翼251の外周側面、および上流側端面における外周側部分に螺旋状に伸びている突起251a、251bをそれぞれ設けている。図29(a)に示すように、突起251a、251bはバイパス流路内に位置する。このとき、図中矢印の方向に動翼251が回転するものとすれば、動翼251の外周側面に対向するバイパス流路内にある流水は、突起251aと突起251aとの間に形成された螺旋状の溝に案内されて上流側に向かって流れる。
【0144】
また、動翼251の上流側端面における外周側部分に対向するバイパス流路内にある流水は、突起251bと突起251bとの間に形成された螺旋状の溝に案内されて径方向内側(中心軸35側)に向かって流れる。そのため、動翼251の外周側面から上流側端面にかけてのバイパス流路内にある流水がバイパス流路入口に向かって流れることになり、バイパス流路への流水の流入が抑制されることになる。
【0145】
その結果、主流Faの流量の減少を抑制することができ、発電効率を向上させることができる。また、本具体例においては、バイパス流路を経由してマグネットMに向かうゴミなどをも排出することができるので、回転不良などの故障をも抑制することもできる。
【0146】
また、本具体例においても、動翼羽根部126と一体に旋回流捕捉部126bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。また、旋回流捕捉部126bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路123の出口幅よりも広い動翼流路127の入口幅を確保することができる。
そのため、静翼121を通過した水流が径方向外側に進んで動翼リング228内周面に衝突するまでの距離を長くすることができるので、動翼リング228内周面衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼121を通過した水流が動翼リング228内周面に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができる。
そして、突起251a、251bを設ける効果と、旋回流捕捉部126bとを設ける効果とを享受することができるので、発電効率をさらに向上させることができる。また、少ない流量でもさらに効率よく動翼を回転させることができる。
【0147】
尚、螺旋状に伸びている突起は、動翼251の外周側面及び上流側端面の少なくとも一方にあればよい。また、突起251a、251bの形状、寸法、配置、ピッチなども図示したものに限定されるわけではなく、適宜変更することができる。
【0148】
[第10の具体例]
図30は、第10の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
なお、図1に関して説明をしたものと同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図30に示すように、静翼流路71における幅方向(径方向)の中心C1よりも、動翼流路72における幅方向(径方向)の中心C2の方が径方向外側に位置している。静翼流路71の出口は、間隙(例えば0.55mm)を隔てて、動翼流路72の入口に対向している。動翼流路72の入口幅bは、静翼流路71の出口幅aより大きい。
【0149】
本具体例においては、静翼羽根部18と筒体13内周面とによって囲まれる空間が静翼流路71として機能し、前述したように流水がその静翼流路71を流れることで旋回流が形成される。この旋回流は、動翼羽根部19・旋回流捕捉部19bとマグネットM1内周面とによって囲まれる空間である動翼流路72に流入し、動翼15に回転力を与える。
【0150】
前述したように、動翼流路72に流入する流水は旋回流であるため、動翼流路72の径方向外側に設けられたマグネットM1に衝突する成分(水平方向(径方向)成分)を多くもっている。
そこで、動翼流路72の中心C2を静翼流路71の中心C1よりも径方向外側に位置させるようにしている。そのため、静翼流路71から流出して径方向外側に広がった流れの中心を、動翼流路72の中心C2に合わせることができるので、効率良く水流を動翼15で受けることができる。
【0151】
また、動翼羽根部19と一体に旋回流捕捉部19bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。この場合、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路71の出口幅aよりも広い動翼流路72の入口幅bを確保することができる。
そのため、静翼14を通過した水流が径方向外側に進んでマグネットM1に衝突するまでの距離を長くすることができるので、マグネット衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼14を通過した水流がマグネットM1に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができ、発電効率の向上を図ることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0152】
[第11の具体例]
図31は、第11の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
なお、図11に関して説明をしたものと同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0153】
本具体例においても、動翼流路72の中心C2を静翼流路71の中心C1よりも径方向外側に位置させている。そのため、静翼流路71から流出して径方向外側に広がった流れの中心を、動翼流路72の中心C2に合わせることができるので、効率良く水流を動翼15で受けることができる。
【0154】
また、動翼羽根部19と一体に旋回流捕捉部19bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。この場合、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路71の出口幅aよりも広い動翼流路72の入口幅bを確保することができる。
そのため、静翼14を通過した水流が径方向外側に進んでマグネットM2に衝突するまでの距離を長くすることができるので、マグネット衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼14を通過した水流がマグネットM2に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができ、発電効率の向上を図ることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0155】
[第12の具体例]
図32は、第12の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
なお、図15に関して説明をしたものと同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0156】
本具体例においても、動翼流路72の中心C2を静翼流路71の中心C1よりも径方向外側に位置させている。そのため、静翼流路71から流出して径方向外側に広がった流れの中心を、動翼流路72の中心C2に合わせることができるので、効率良く水流を動翼15で受けることができる。
【0157】
また、動翼羽根部19と一体に旋回流捕捉部19bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。この場合、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路71の出口幅aよりも広い動翼流路72の入口幅bを確保することができる。
そのため、静翼14を通過した水流が径方向外側に進んで筒体13内周面に衝突するまでの距離を長くすることができるので、筒体13内周面衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼14を通過した水流が筒体13内周面に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができ、発電効率の向上を図ることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
なお、本具体例において、動翼15の周面を囲むように旋回流捕捉部19bの外周面に図示しない動翼リングを設けてもよい。このような構成にすれば、動翼リングの外周面と筒体13の内周面との間の隙間が狭められて、動翼流路72よりも径方向外側の流路抵抗をさらに大きくすることができる。そのため、動翼流路72を流れる流量を多くすることができ、水力エネルギーから回転エネルギーへの変換効率を高めることができる。
【0158】
[第13の具体例]
図33は、第13の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
図34は、マグネットを説明するための模式斜視図である。
図35は、ステータを説明するための模式斜視図である。
なお、図1や図11などに関して説明をしたものと同様の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図33に示すように、本具体例に係る水栓用発電機には、主として、筒体213、予旋回静翼14、動翼15、マグネットM2、ステータ209が備えられている。
筒体213は、第1の小径部213a、大径部213b、第2の小径部213cとからなる段付き形状を呈し、その内部が給水流路に連通した状態で、図2、図3に図示される吐水部3bに配設される。この際、筒体213の中心軸方向が、流水の方向に対して略平行となるようにして配設される。また、筒体213は、第1の小径部213aを上流側に、第2の小径部213cを下流側に向けて配設される。
また、図34に示すように、マグネットM2の径外方向の端面(外周面)には、周方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁されている。
【0159】
図35に示すように、ステータ209は、いずれも軟磁性体(例えば、圧延鋼)からなる第1ヨーク231、第2ヨーク232およびこれらに連接するヨーク231b、極歯231a、232aと、これら第1ヨーク31、第2ヨーク32、ヨーク31b、極歯231a、232aで囲まれた空間内に配置されるコイル250とを有する。
【0160】
円環状に巻回されたコイル250は、その内周面部、外周面部および軸方向の両端面部が、第1ヨーク231、第2ヨーク232、ヨーク第3ヨーク233によって囲まれている。
【0161】
第1ヨーク231は、略円環状を呈し、コイル250の内周面部を囲むようにして配置され、その軸方向の一端部には、径外方向に向けて、複数のヨーク231bが一体的に設けられている。第1ヨーク231において、コイル250の内周面部に対向する部分と、ヨーク231bとは、略直角となっている。ヨーク231bは、コイル250の周方向に沿って等間隔で配置されている。ヨーク231bの一端は、さらにコイル250の軸方向に延出して極歯231aを形成している。
【0162】
第2ヨーク232は、略円環状を呈し、コイル250の外周面部を囲むようにして配置され、その軸方向の一端部には、複数の極歯232aが軸方向に向けて一体的に設けられている。極歯232aは、コイル50の周方向に沿って等間隔で配置されるとともに、第1ヨーク231の各極歯231aの間に配置されるようになっている。すなわち、第1ヨーク231の極歯231aと、第2ヨーク232の極歯232aとが、コイル250の周方向に沿って、交互に、且つ互いに離間して並んでいる。また、極歯231a、232aは、コイル250の外周面部を囲むようにして配置された部分(第2ヨーク232)の直上に設けられ、コイル250の中心から各極歯231a、232aまでの距離は略同一となっている。
【0163】
極歯231a、232aは、軸方向に延出するようにして設けられ、その内周面(コイル250の中心方向に位置する側の面)が、マグネットM2の外周面(径外方向の面)と対向するようになっている。また、ヨーク231bは、コイル250の一方の端面部と対向している。コイル250の一方の端面部は、ヨーク231b及び筒体213のフランジ部213dを間に挟んで、マグネットM2の軸方向端面と対向している。
【0164】
本具体例においても、動翼羽根部19と一体に旋回流捕捉部19bを設けるようにしている。また、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされている。この場合、旋回流捕捉部19bの寸法が、旋回流の水平方向(径方向)に向かう成分を考慮したものとされているため、静翼流路71の出口幅aよりも広い動翼流路72の入口幅bを確保することができる。
【0165】
そのため、静翼14を通過した水流が径方向外側に進んでマグネットM2に衝突するまでの距離を長くすることができるので、マグネット衝突時の水流の流速の低減を図ることができる。その結果、静翼14を通過した水流がマグネットM2に衝突する時の圧力損失を原因とする水力エネルギーから回転エネルギーへの変換損失を低減させることができ、発電効率の向上を図ることができる。また、少ない流量でも効率よく動翼を回転させることができる。
【0166】
また、水栓用発電機11は、水栓装置3の水栓金具の内部に設けられることに限られない。例えば、図33に表すように、水栓装置3の水栓金具(本体3a及び吐水部3b)と、これよりも上流側に設けられた止水栓(元栓)105との間を接続する配管(流路)4に設けてもよい。この場合、水栓用発電機11は洗面台等のカウンター2下に配設される。また、水栓装置3の吐水口6へとつながる給水流路を開閉する電磁弁8も水栓金具の内部に設けることに限られない。例えば、図33に表すように、止水栓105と水栓用発電機11との間の配管(流路)4に設けてもよい。
【0167】
水栓用発電機11は、止水栓(元栓)105と水栓装置3の吐水口6との間の流路に設けられ、止水栓105から水栓装置3の吐水口6へと向けて流れる流水の水力によって発電する。水栓装置としては、例えば、キッチン用水栓、リビングダイニング用水栓、シャワー用水栓、トイレ用水栓、洗面所用水栓などを例示することができる。また、水栓装置において、吐出流量は、例えば、毎分100リットル以下、望ましくは毎分30リットル以下に設定される。特に、洗面所用水栓においては、毎分5リットル以下に設定されていることが望ましい。また、トイレ用水栓のような吐出流量が比較的多い場合には、給水管から、水栓用発電機11に流れる水流を分岐させて、水栓用発電機11を流れる流量を毎分30リットル以下に調整することが望ましい。これは、給水管からのすべての水流を水栓用発電機11に流すと、動翼15の回転数が大きくなり、騒音や軸摩耗が増大する可能性が懸念されるからである。また、回転数が増大しても適正回転数以下でなければ、渦電流やコイル熱によるエネルギー損失が生じるため、発電量が増大しないからである。また、水栓金具が取り付けられる水道管の給水圧としては、例えば、日本においては0.05(MPa)程度の低水圧である場合もあり得る。
【0168】
また、水栓用発電機11は、人体検知センサを用いた自動水栓に限らず、例えば、図34に表すように手動操作部や手動スイッチ3cのオン/オフによるワンタッチ水栓、流量をカウントして止水する定量吐水水栓、設定時間を経過すると止水するタイマー水栓などにも適用することができる。
【0169】
また、発電された電力を、例えば、図34に表すように水栓装置3に設けられたライトアップ用の照明101や、その他、アルカリイオン水や銀イオン含有水などの電解機能水の生成、流量表示(計量)、温度表示、音声ガイドなどに用いてもよい。
【0170】
さらには、図35に表すように、例えば、洗面所の天井に設けられた人体検知センサ102に、水栓用発電機11が発電した電力を供給してもよい。その他、水栓用発電機11が発電した電力を、ガスセンサ、マイクロ波センサ、ドア開閉の機械式センサ等の作動に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明の第1の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る発電機付自動水栓装置の取付例を表す模式図である。
【図3】同自動水栓装置の内部構成を表す模式図である。
【図4】同水栓用発電機における静翼、動翼、軸受の斜視図である。
【図5】同水栓用発電機におけるマグネットとヨーク極歯との配置関係を表す模式斜視図である。
【図6】旋回流捕捉部を説明するための模式図である。
【図7】旋回流の成分を説明するための模式図である。
【図8】動翼流路入口幅比率と圧力損失の比との関係を表すグラフ図である。
【図9】動翼流路入口幅比率と損失流出の比との関係を表すグラフ図である。
【図10】動翼流路入口幅比率と羽根車効率の比との関係を表すグラフ図である。
【図11】第2の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
【図12】同水栓用発電機におけるコイルを表す模式斜視図である。
【図13】図12に表されるコイルの分解斜視図である。
【図14】同水栓用発電機におけるマグネットとヨーク極歯との配置関係を表す模式平面図である。
【図15】第3の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
【図16】第4の具体例に係る水栓用発電機の模式断面図である。
【図17】比較例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
【図18】第4の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
【図19】第5の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
【図20】第6の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
【図21】前述した突出部の効果を説明するためのグラフ図である。
【図22】第7の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
【図23】第7の具体例に係る動翼部分の模式斜視図である。
【図24】複数の傾斜面を組み合わせた動翼部分の模式斜視図である。
【図25】第7の具体例に係る動翼部分の効果を説明するためのグラフ図である。
【図26】第8の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式断面図である。
【図27】比較例を説明するための模式断面図である。
【図28】第8の具体例に係る水栓用発電機の効果を説明するためのグラフ図である。
【図29】第9の具体例に係る水栓用発電機の要部を説明するための模式図である。
【図30】第10の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
【図31】第11の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
【図32】第12の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
【図33】第13の具体例に係る水栓用発電機の内部を表す模式断面図である。
【図34】マグネットを説明するための模式斜視図である。
【図35】ステータを説明するための模式斜視図である。
【図36】水栓用発電機の設置位置の一具体例を表す模式図である。
【図37】水栓用発電機の設置位置及び発電した電力の使用例の一具体例を表す模式図である。
【図38】水栓用発電機の設置位置及び発電した電力の使用例の一具体例を表す模式図である。
【符号の説明】
【0172】
1 水栓用発電機、9 コイル、13 筒体、14 静翼、15 動翼、18 静翼羽根部、19 動翼羽根部、19b 旋回流捕捉部、126 動翼羽根部、126b 旋回流捕捉部、a 出口幅、b 入口幅、M1 マグネット、M2 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水流路に対して略平行な回転中心を有し、前記回転中心のまわりに回転可能に前記給水流路に設けられ、複数の動翼羽根部を有する動翼と、
前記動翼に対して間隙を隔てて前記動翼の上流側に設けられ、前記動翼に旋回流を与える複数の静翼羽根部を有する静翼と、
前記動翼と一体に回転可能なマグネットと、
前記マグネットの回転により起電力を生じるコイルと、
を備え、
前記動翼羽根部は、前記静翼羽根部よりも径外方向に突出しており、前記静翼の最外周端より径方向外側に位置する部分において、前記静翼で発生させた旋回流を受けること、を特徴とする水栓用発電機。
【請求項2】
前記静翼羽根部の外周端は、前記動翼羽根部の内周端より径方向外側に設けられていること、を特徴とする請求項1記載の水栓用発電機。
【請求項3】
前記静翼羽根部の内周端は、前記動翼羽根部の内周端より径方向外側に設けられていること、を特徴とする請求項1または2に記載の水栓用発電機。
【請求項4】
前記動翼羽根部を介さずに前記動翼羽根部よりも径方向外側を迂回するバイパス流路と前記動翼羽根部を介した動翼流路との合流部に設けられ、前記動翼流路の最外周端よりも前記中心軸に向けた径方向内側に突出して前記動翼流路に対向する突出部と、を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の水栓用発電機。
【請求項5】
水栓装置と、前記水栓装置の上流側に設けられた止水栓との間を接続する給水流路に設けられ、前記給水流路の開閉動作以外に使用する電力を供給可能とすること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の水栓用発電機。
【請求項6】
前記水栓金具内に設けられ、前記給水流路の開閉動作に使用する電力を供給すること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の水栓用発電機。
【請求項7】
前記マグネットは、前記動翼流路を囲むように前記動翼羽根部に固定された筒状を呈し
、前記コイルは、前記マグネットの上流側端面及び下流側端面の少なくともいずれかに対
向して配置されたこと、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の水栓用発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2009−303436(P2009−303436A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157449(P2008−157449)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【特許番号】特許第4251302号(P4251302)
【特許公報発行日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】