説明

水溶性アルテミシニン誘導体、その調製方法、薬学組成物及び用途

本発明は、以下の化学構造式で示された構造を持つ水溶性アルテミシニン誘導体、その調製方法、薬学組成物とその用途に関する。


薬理実験により該化合物と薬学組成物は、著しく免疫抑制作用を持つことが明らかになっている。人体免疫の機能亢進による疾患(紅斑性狼瘡、慢性関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患)の治療、及び細胞や臓器移植後抗移植の拒絶反応に用いる新しい免疫抑制剤に応用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テルペノイド(terpenoid)化合物の化学合成及びその免疫抑制作用に関する。より詳しくは、新型アルテミシニン(Artemisinin)類化合物とその調製方法、及び免疫抑制剤としての薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アルテミシニンは漢方薬のセイコウ(植物クソニンジンArtemisia annua L.)から抽出された抗マラリアの活性成分であり、ペルオクソ基を含む珍しいセスキテルペンラクトンである。該物質は強力な抗マラリア機能を持つだけでなく、免疫抑制効果を持つことも発見された。該物質の誘導体であるアルテスネイト(artesunate)は、より強力な免疫抑制効果を有し、紅斑性狼瘡やいくつかの皮膚病に有効で、かつ良い治療効果を示している(余其斌等、「アルテスネイトの紅斑性狼瘡の治療56例」、「中華皮膚科雑誌」、1997, 39: 51;陳華等、「アルテスネイトを用いた湿疹―皮膚炎及び光過敏性皮膚炎治療の臨床観察」、「蚌埠医学院院報」、1991, 16: 251)。しかし、患者にとっては、長期の静脈注射をしなければならず、且つアルテスネイトのナトリウム塩水溶液は使用直前に調製する必要があるので、非常に使用不便であった。また、従来の臨床に広く用いられている免疫抑制剤のシクロスポリン(cyclosporin)Aは、値段が高く、腎臓や肝臓に毒性を与えるので、患者にとって該薬物を使い続けることが困難であった。従って、本発明者はより効果の高い、且つより安全な免疫抑制剤を提供するための研究を進めてきた。
【0003】
【化1】

【0004】
本発明者は、研究を通じてカルボキシル酸の官能基を含むアルテミシニン誘導体が非常に強力な免疫抑制効果を持つことを発見した(中国発明特許、出願番号:200510023824.1)。しかし、それらの水溶性が低いので、生物利用度が高くない可能性がある。したがって、本発明者はより好ましい免疫抑制剤を探し続けてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水溶性アルテミシニン誘導体を提供することを目的としている。
【0006】
本発明は、該誘導体類の調製方法を提供することをもう一つの目的としている。
【0007】
本発明は、該誘導体類の用途を提供することをもう一つの目的としている。
【0008】
本発明は、該誘導体類の薬学組成物を提供することをもう一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、以下の化学構造式(1)で示された化合物、その異性体及び薬用塩を提供する。
【化2】

化学構造式(1)において、
n=0の場合に、X=Y=H、Z=NH2であり;
n=1の場合に、X=OH、Y=H、Z=NH2、NHMe、NHEt、NHPr(n)、NHBu、NHCH2CH2OH、
【化3】

であり;
n=1の場合に、X=OH、Y=CH3、フェニル基などであり;
Z=NH2、NHR(R=C1-C4アルキル基)、NHCH2CH2OH、NR’2(R’=C1-C4アルキル基),
【化4】

である。
【0010】
化学構造式(1)で示された化合物の異性体は、立体異性体と光学異性体を含むが、それらに限らない。
【0011】
化学構造式(1)で示された化合物の薬用塩は、塩酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、マレイン酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸等との付加塩(addition salt)を含むが、それらに限らない。
【0012】
本発明の化学構造式(1)で示された化合物においては、以下の条件を満たす化合物が好ましい、
その中で、n=0、X=Y=H、Z=NH2;或いは
n=1;X=OH;Y=H;Z=NHC4H9(t)、
【化5】

である。
【0013】
本発明は、化学構造式(1)で示された化合物、その異性体及び薬用塩を提供する。それらはすべてジヒドロアルテミシニン(2)を原料として、酸触媒の条件で置換アルコールと反応させる。置換アルコールとしては、例えばハロゲンヒドリンである場合に、アミン類と反応させ、目標化合物(1、n=0)を生成させる。置換アルコールが二価アルコールである場合に、まずヒドロキシアルテミシニンエーテルを生成させ、次にそれをp-トルエンスルホン酸エステルに変え、更にアミン類と反応させ、目標化合物(1、n=0)を生成させる。置換アルコールがエポキシプロピルアルコールである場合、得られたアルテミシニンのエポキシプロピルエーテルをアミン類と反応させ、目標化合物(1、n=1)を生成させる。置換アルコールがアリルアルコールである場合、更にアルテミシニンのエポキシプロピルエーテルに酸化する必要があり、その次にアミン類と反応させ、目標化合物(1、n=1)を生成させる。遊離アミンを含む目標化合物は、アルコール等の有機溶媒の中で無機酸又は有機酸と反応させ、相応する塩を調製できる。本発明の方法で得られた化学構造式(1)の化合物は、通常の方法を用い精製することができる。
【0014】
具体的な調製方法について、本発明者の特許(ZL 89 1 09562.4、ZL 93 1 12454.9)と発表した論文(J. Med. Chem. 2000, 43 (8):1635-1640)を参考できる。
【0015】
さらに本発明は、免疫抑制効果を持つ薬学組成物を提供する。前記薬学組成物は、安全、有効な投与量範囲内の前記化学構造式1で示された化合物又は薬用塩及び薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0016】
「安全、有効な投与量」とは、化合物の用量が症状を明らかに改善でき、且つ激しい副作用が生じない量を指す。化合物の安全、有効な投与量は治療対象の年齢、体重、治療適応症、投与ルート、治療経過及びなんらかの関連治療などの具体的な状況により決められる。一般的に成人は10mg/日から800mg/日であり、一回又は数回に分けて投与し、児童は適当に減量する。
【0017】
置換されたアミノアルテミシニンエーテル(重量%) 1-55%
賦形剤(重量%) 15-40%
補助剤(重量%) 20-65%
【0018】
本発明の組成物は、経内服、経胃腸外、経鼻、経舌、経目、経呼吸道又は経直腸で投与されることができる。特に錠剤又は腸溶性丸、注射剤(injection)、舌下錠剤、貼付剤、坐薬、クリーム剤、軟膏剤又は皮膚用ゲル剤等であることが好ましい。
【0019】
「薬学的に受容可能なキャリア」とは、一種類又は多種類の相容性固体や液体充填剤又は賦形剤を指す。これらは人に適用可能な上、また十分の純度を有し、且つ毒性が十分低かなければならない。ここで「相容性」とは、組成物中の各成分が本発明の化合物及びそれらの間に混ぜ合わせることができ、且つ化合物の薬効を著しく低下しないことを指す。薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば糖類(例えばグルコース、スクロース、乳糖など)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、ポテトデンプンなど)、セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、酢酸エステルセルロース、微晶質セルロースなど)、ポリエチレングリコール、ゼラチン、滑石粉、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油(例えばダイズ油、ゴマ油、ラッカセイ油、オリーブ油など)が挙げられ、また乳化剤(例えばトウィーン(登録商標))、湿潤剤(wetting agent)(例えばドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、防腐剤、無発熱原水(nonpyrogenic water)なども挙げられる。本発明に係る組成物はキャリアの選択に対し、化合物の投与方式により決められている。
【0020】
実施例14では、牛II型コラーゲンに誘導されたマウス関節炎を予防と治療し、且つ発病した関節の腫脹を抑制できることを示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明者は以下のような方法を用い、本発明の化合物について体外と体内における免疫抑制活性のスクリーニング及び研究を行った(参考書:「現代薬理実験方法」、張均田編、北京医科大学/中国協和医科大学聯合出版社、1998年出版)。
【0022】
一、 実験材料
実験動物:純粋種Balb/cオスのマウス、6-8週齢。
RPMI-1640培養液(Gibco、pH7.2)の中に10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン(streptomycin)、10mMのHEPES及び50μMの2-MEを添加した。
イリタント:植物レクチン(Concanavalin A, ConA)、細菌リポ多糖(lipopolysaccharide, LPS, Escherichia Coli 055:B5由来)、使う前にRPMI-1640培養液で適当な濃度まで希釈した。
【0023】
二、 実験方法
[一] リンパ球の毒性実験
1、頚椎脱臼法でマウスを死亡させ、無菌状態でその脾臓を取り出し、研磨して単細胞の懸濁液に調製した。MTT溶解液(10%SDS、50%ジメチルホルムアミド、pH7.2)を用いて赤血球を取り除いた後、10%FBSを含むRPMI-1640培養液でその細胞濃度を5×106/mLになるように調製した。
【0024】
2、96穴の培養プレートに80μLの細胞懸濁液、40μLのサンプル、40μLの10%FBS含有培養液を添加した。対照の穴に80μLの培養液を添加し、合計体積を160μLにし、且つ空白の対照を設定した。
【0025】
3、37℃、5%CO2の培養器に入れて48時間培養した。培養終了前の6-7時間の際に、1穴毎に5mg/mLのMTT 16μLを添加した。
【0026】
4、培養が終わった時に、1穴毎に80μLのMTT溶解液(10%SDS、50%ジメチルホルムアミド、pH7.2)を添加し、さらに、培養器の中に6-7時間放置した後、酵素標識キットを用いて570nmにおけるOD570値を測定した。
【0027】
[二] リンパ球の増殖実験
1、頚椎脱臼法でマウスを死亡させ、無菌状態でその脾臓を取り出して単細胞の懸濁液に調製した。10%FBSを含むRPMI-1640培養液でその細胞濃度を4×106/mLになるように調製した。
【0028】
2、96穴の培養プレートに100μLの細胞懸濁液、50μLのサンプル溶液、50μLのConA又はLPS溶液を添加した。対照の穴に50μLの10%FBS含有培養液を添加し、合計体積を200μLになるようにした。
【0029】
3、37℃、5%CO2の培養器で48時間培養した。培養終了前の7-8時間の際に、1穴毎に0.5μCi [3H]-チミジン(25μL/穴)を添加した。
【0030】
4、培養が終わった後、細胞収集器(HARVESTER96(登録商標), TOMTEC)を用い細胞をガラス繊維膜上に収集し、シンチ液を添加した。液体シンチカウンタ(MicroBetaTrilux(登録商標), PerkinElmer)を用い、細胞増殖の状況を反映するために、細胞DNA中の[3H]-チミジンの混合量を測定した。
【0031】
[三] 同種異体の混合リンパ球の増殖反応(MLR)
1、頚椎脱臼法でC57BL/6及びBalb/cのマウスを死亡させ、無菌状態でその脾臓を取り出し、研磨して単細胞の懸濁液に調製し、赤血球を取り除いた後、10%子牛血清を含むRPMI-1640培養液でその細胞濃度を6×106/mLになるように調製した。
【0032】
2、C57BL/6の脾臓細胞を反応細胞として、またBalb/cの脾臓細胞(コバルト60により照射、3000rads)を刺激細胞として、二種類の細胞を同じ体積で混合させた。
【0033】
3、96穴の培養プレートに100μLの細胞懸濁液、100μLのサンプルを添加した。対照の穴に100μLの10%血清含有培養液を添加し、且つ対照として二種類の細胞の単独培養を行った。
【0034】
4、37℃、5%CO2の培養器で3、4、5日間培養した。培養終了前日、3Hの希釈液25μL(即ち、3.8×1010Bqの[3H]-チミジン)を添加した。
【0035】
5、培養が終わった時、培養プレートを-20℃の冷蔵庫に冷凍保存した。
【0036】
6、細胞収集器(HARVESTER96(登録商標), TOMTEC)を用い細胞をガラス繊維膜上に収集した。また、液体シンチカウンタ(MicroBeta Trilux(登録商標), PerkinElmer)を用いて、細胞増殖の状況を反映するために、細胞DNA中の[3H]-チミジンの混合量を測定した。
【0037】
[四] 遅延型過敏反応の動物モデル(DTH)
1、0日目に、10匹のBalb/cマウス(メス、6-8週齢)を1組とし、そのうしろ足ごとを20μLの0.5%DNFBでアレルギー化させた。次の日にアレルギー化を強化させた(DNFBを油剤(アセトン:オリーブオイル=4:1)の中に溶ける)。
【0038】
2、7-9日目に、マウス右耳の内外両側をそれぞれ10μLの0.4%DNFBで攻撃させた。
【0039】
3、攻撃の1日前に一回腹腔の胃灌流を行い、また攻撃直前に一回腹腔の胃灌流を行った。24時間後更に一回投与した。
【0040】
4、攻撃から30-48時間になった後各指標を測定した。
【0041】
[五] 牛II型コラーゲンで誘導されたマウスの関節炎のモデル
牛II型コラーゲン(CII, Collagen Research Center,Tokyo, Japan)を0.1Nの酢酸溶液に溶かし、それを4℃の冷蔵庫に一晩置いた。実験当日に、Mycobacterium tuberculosis strain H37Rvを含むCFA(Wako Pure Chemical industries Ltd., Osaka,Japan)を、同じ体積のCIIと均一になるように十分乳化させた。DBA/1マウスの尾部分に乳化剤25μL(CII 125μgを含む)を皮内注射し、アレルギー化を行なった。3週間後同量の乳化剤を尾部分にて二次免疫を行い、今回のアジュバンドとしてIFAを用いた。二次免疫目の1日前に投与し始め(腹腔注射又は胃灌流)、2週間から3ヶ月まで投与し続けた。段階式採点法を用い、即ち0:腫脹なし;1:足指関節がすこし腫脹すること;2:足指関節及び足指が腫脹すること;3:足関節以下の足指が腫脹すること;4:足関節を含むすべての足指が腫脹すると設定した。動物ごとに四肢採点の合計はCIAの厳重程度を示す。
【0042】
三、実験結果
[一] リンパ球の増殖と毒性実験
免疫応答過程の表現効果は、主にT細胞にメディエート(mediate)された細胞免疫反応とB細胞にメディエートされた体液免疫反応からなる。体外において、T細胞のマイトゲン(mitogen)ConAとB細胞のマイトゲンLPSを用いて直接に細胞を刺激すること及び細胞の活性化分裂増殖により、リンパ球の増殖反応に対する薬物の抑制活性を評価した。まず10μM、1μM、0.1μMの三つの濃度で何度もスクリーニングを行なった。その中で明らかな免疫抑制活性を有する三つの化合物は実施例1、実施例11と実施例14であり、それらは、細胞毒性がない濃度でT細胞増殖(Con A)に対する抑制率がそれぞれ65%、48%、52%であり、B細胞増殖(LPS)に対する抑制率がそれぞれ73%、99%、81%である。実施例2、実施例3と実施例12では、細胞毒性がない濃度でT細胞増殖(Con A)に対する抑制率がそれぞれ48%、47%、47%であり、B細胞増殖(LPS)に対する抑制率がそれぞれ48%、51%、47%である。実施例8、実施例16、実施例17と実施例18では、細胞毒性がない濃度でT細胞増殖(Con A)に対する抑制率がそれぞれ13%、0%、6%、9%であり、B細胞増殖(LPS)に対する抑制率がそれぞれ42%、51%、24%、26%であり、結果としてこの四つの化合物はB細胞増殖に対する抑制活性が強いが、細胞毒性がない場合にT細胞に対する抑制作用が弱い又はないことが示された。以上の結果を踏まえ、実施例1、実施例11と実施例14を選択し、更に体内と体外におけるその免疫抑制の薬理活性を検査した。
【0043】
[二] 同種異体の混合リンパ球の増殖反応(MLR)
異体抗原は、輸血や臓器移植後生体拒絶反応を起す主な原因である。応答リンパ球と異質リンパ球を共同培養した場合に、異質リンパ球において発現した異体抗原は、主に組織適合性抗原MHC-I、MHC-II分子であり、応答T細胞を刺激し免疫増殖反応を起す。MLRに対する薬物の作用によっては、生理に近い免疫系に応答する薬物の薬理効果を評価した。図に示すように、実施例1、実施例11と実施例14では、MLR中の応答リンパ球の増殖を著しく抑制し、それらのEC50はそれぞれ3.48±0.72μM、0.59±0.066μM、0.67±0.012μMである。
【0044】
[三] 遅延型過敏反応の動物モデル(DTH)
更に実施例1、実施例11と実施例14において体内の免疫薬理活性を検査するために、典型のマウスDTH反応モデルを選んで実験に用いた。結果として、実施例1、実施例11と実施例14では、それぞれ50mg/kg、100mg/kg、50mg/kgで内服した時に著しくマウス耳の腫脹(P<0.01)を抑制できることを示し、対照グループと比べ、その抑制率がそれぞれ56.5%、50.5%、52.2%であり、それは5mg/kgのシクロスポリンA(CsA)の抑制率40.6%の薬理活性に相当する。
【0045】
[四] マウス関節炎の動物モデル
実施例1と実施例14は、更にマウス関節炎の動物モデルにおいてその免疫薬理活性を検査した。結果として、実施例1と実施例14では、それぞれ1mg/kg、0.5mg/kgで内服した時にマウス関節の腫脹(P<0.05)を著しく抑制できることを示した。
【実施例】
【0046】
以下、実施例で本発明を更に説明するが、これらの実施例は本発明についてのいかなる限定をするものではない(以下の実施例中の組成物は重量%で示されている)。
【0047】
下記実施例の中に、アルテミシニン母核はQで代表される。
【化6】

【0048】
実施例1: 2’-アミノアルテミシニンエチルエーテル(β型)
【化7】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:139―141℃。
元素分析(C21H33 NO9):
計算値: C 56.87 H 7.50 N 3.16
実際の測定値: C 56.84 H 7.59 N 3.10
【0049】
実施例2: 3’-アミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化8】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:146―147℃。
元素分析(C22H35O10N):
計算値: C 55.80 H 7.45 N 2.96
実際の測定値:C 55.92 H 7.43 N 2.94
【0050】
実施例3: 3’-メチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化9】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:145―146℃。
元素分析(C23H37O10N):
計算値: C 56.66 H 7.65 N 2.87
実際の測定値:C 56.67 H 7.63 N 2.89
【0051】
実施例4: 3’-メチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンブチルエーテル(β型)
【化10】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C24H39O10N):
計算値: C 57.47 H 7.84 N 2.79
実際の測定値:C 57.72 H 7.66 N 2.67
【0052】
実施例5: 3’-アミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンブチルエーテル(β型)
【化11】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C23H37O10N):
計算値: C 56.66 H 7.65 N 2.87
実際の測定値:C 56.64 H 7.74 N 2.71
【0053】
実施例6: 3’-ヒドロキシエチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化12】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C24H39O11N):
計算値: C 55.70 H 7.59 N 2.71
実際の測定値:C 55.69 H 7.89 N 2.58
【0054】
実施例7: 3’-フェニル-3’-メチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化13】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C29H41O10N):
計算値: C 61.80 H 7.33 N 2.49
実際の測定値:C 61.64 H 7.41 N 2.48
【0055】
実施例8: 3’-フェニル-3’-アミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化14】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C28H39O10N):
計算値: C 61.19 H 7.15 N 2.55
実際の測定値:C 61.29 H 7.23 N 2.35
【0056】
実施例9: 3’-ヒドロキシエチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルブチルエーテル(β型)
【化15】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C25H41O11N):
計算値: C 56.49 H 7.77 N 2.63
実際の測定値:C 56.21 H 7.94 N 2.95
【0057】
実施例10: 3’-ジメチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンブチルエーテル(β型)
【化16】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C25H41O10N):
計算値: C 58.24 H 8.02 N 2.72
実際の測定値:C 58.06 H 7.99 N 2.67
【0058】
実施例11: 3’-ピロリジン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化17】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:158―160℃。(J. Med. Chem. 2000, 43 (8):1635-1640によると該化合物の溶解点は148-152℃である)
元素分析(C26H41O10N):
計算値: C 59.19 H 7.83 N 2.65
実際の測定値:C 59.14 H 7.86 N 2.66
【0059】
実施例12: 3’-ピペリジン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化18】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:157―159℃。
元素分析(C27H43O10N):
計算値: C 59.87 H 8.00 N 2.59
実際の測定値:C 59.86 H 8.02 N 2.58
【0060】
実施例13: 3’-メチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンブチルエーテル(α型)
【化19】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C24H39O10N):
計算値: C 57.47 H 7.84 N 2.79
実際の測定値:C 57.62 H 7.51 N 2.61
【0061】
実施例14: 3’-tert-ブチルアミン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化20】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:171―173℃。
元素分析(C26H43O10N):
計算値: C 58.96 H 8.18 N 2.64
実際の測定値:C 58.92 H 7.91 N 2.59
【0062】
実施例15: 3’-フェニル-3’-ピロリジン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化21】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い無定形固体である。
元素分析(C32H45O10N):
計算値: C 63.67 H 7.51 N 2.32
実際の測定値:C 63.36 H 7.09 N 2.04
【0063】
実施例16: 3’-フェニル-3’-ピペリジン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化22】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:163―165℃。
元素分析(C33H47O10N):
計算値: C 64.16 H 7.67 N 2.27
実際の測定値:C 64.43 H 7.68 N 2.18
【0064】
実施例17: 3’-フェニル-3’-ジメチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化23】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:166―168℃。
元素分析(C30H43O10N):
計算値: C 62.38 H 7.50 N 2.42
実際の測定値:C 62.05 H 7.68 N 2.41
【0065】
実施例18: 3’-フェニル-3’-ジメチル-tert-ブチルアミノ-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)
【化24】

マレイン酸と反応し塩を生じる。白い結晶である。溶解点:167―169℃。
元素分析(C32H47O10N):
計算値: C 63.45 H 7.82 N 2.31
実際の測定値:C 63.70 H 7.83 N 2.22
【0066】
実施例19: 2’-アミノアルテミシニンエチルエーテル(β型)のマレイン酸塩 錠剤
処方は以下の通りである。
2’-アミノアルテミシニンエチルエーテル(β型)の
マレイン酸塩 35%
デンプン 25%
ヒドロキシメチルセルロースナトリウム 30%
デンプンペースト(10%) 9%
ステアリン酸 1%
【0067】
活性成分を粉砕させ、100メッシュで篩分けた後、ヒドロキシメチルセルロースナトリウムと、10%デンプンペーストと混合させ、顆粒を製造して乾燥させ、乾燥デンプンと潤滑剤を添加し均質に混ぜた後、プレボーミングして調製した。
【0068】
実施例20: 3’-tert-ブチルアミン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)のマレイン酸塩 錠剤
処方は以下の通りである。
3’-tert-ブチルアミン-2’-ヒドロキシ
アルテミシニンプロピルエーテル(β型) 30%
微晶質セルロース 65%
微粉化のポリエチレングリコール4000 5%
活性成分を粉砕させ、篩分け、微結晶セルロースと、潤滑剤と均質に混合させた後、直接にプレボーミングして調製した。
【0069】
実施例21: 2’-アミノアルテミシニンエチルエーテル(β型)のクエン酸塩の腸溶錠(enteric-coated tablets)
処方は以下の通りである。
2’-アミノアルテミシニンエチルエーテル(β型)のクエン酸塩 35%
デンプン 20%
乾燥デンプン 35%
デンプンペースト(10%) 8%
滑石粉 2%
【0070】
活性成分とデンプンを均質になるよう混合させた後、10%デンプンペーストを添加し柔らかい材料を製造し、更に顆粒を製造し、乾燥、整粒し、乾燥デンプンと滑石粉を添加して均質になるように混合させ、プレボーミングして腸溶性の膜(enteric coating)で包んだ。
【0071】
実施例22: 3’-ピロリジン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)のシュウ酸塩の硬いカプセル
処方は以下の通りである。
3’-ピロリジン-2’-ヒドロキシアルテミシニン
プロピルエーテル(β型)のシュウ酸塩 50%
微晶質セルロース 30%
ポリエチレングリコール1500 20%
【0072】
活性成分と補助材料を十分に混合させ、空のカプセルに入れることにより調製した。
【0073】
実施例23: 3’-ピロリジン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)のゲル剤
処方は以下の通りである。
3’-ピロリジン-2’-ヒドロキシ
アルテミシニンプロピルエーテル(β型) 35%
ポリエチレングリコール 65%
【0074】
ポリエチレングリコール300とポリエチレングリコール1500(1:1)を撹拌しながら加熱し、溶解した後、研磨し篩分けられた活性成分を添加し、十分に撹拌してゲルに調製した。
【0075】
実施例24: 2’-アミノアルテミシニンエチルエーテル(β型)のマレイン酸塩 注射剤
【0076】
活性成分を注射用蒸留水で溶かし、ろ過、包封(encapsulation)、滅菌により調製した。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、耳腫脹厚さの差を示した図である。実施例1、実施例11、実施例14では、DTHマウスの耳腫脹の厚さを著しく低下できることを示している。
【図2】図2は、耳片重さの差を示した図である。実施例1、実施例11、実施例14では、DTHマウスの腫脹耳片の重さを著しく低下できることを示している。
【図3】図3は、実施例1における関節炎の採点を示した図である。実施例11では、牛II型コラーゲンに誘導されたマウス関節炎を予防と治療し、且つ発病した関節の腫脹を抑制できることを示している。
【図4】図4は、実施例14における関節炎の採点を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化学構造式1で示された構造を有する水溶性アルテミシニン誘導体、その立体異性体及び光学異性体並びにその薬学的に受容可能な塩:
【化1】

(式中、
n=0の場合に、X=Y=H、Z=NH2であり;
n=1の場合に、X=OH、Y=H、Z=NH2、NHMe、NHEt、NHPr(n)、NHBu、NHCH2CH2OH、
【化2】

であり;
n=1の場合に、X=OH、Y=CH3、フェニル基、
Z=NH2、NHR(R=C1-C4アルキル基)、NHCH2CH2OH、NR’2(R’=C1-C4アルキル基)、
【化3】

である)。
【請求項2】
n=0の場合に、X=Y=H、Z=NH2であり、即ち2’-アミノアルテミシニンエチルエーテル(β型)及び薬用可能な酸の付加塩であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性アルテミシニン誘導体。
【請求項3】
n=1の場合に、X=OH、Y=H、Z=NH2、NHMe、NHEt、NHPr(n)、NHBu、NHCH2CH2OH、
【化4】

であり;
特に3’-tert-ブチルアミン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型)及び薬用可能な酸の付加塩と、3’-ピロリジン-2’-ヒドロキシアルテミシニンプロピルエーテル(β型) 及び薬用可能な酸の付加塩であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性アルテミシニン誘導体。
【請求項4】
n=1の場合に、X=OH、Y=CH3、フェニル基、
Z=NH2、NHR(R=C1-C4アルキル基)、NHCH2CH2OH、NR’2(R’=C1-C4アルキル基)、
【化5】

であることを特徴とする請求項1に記載の水溶性アルテミシニン誘導体。
【請求項5】
水溶性アルテミシニン誘導体の調製方法であって、
a. ジヒドロアルテミシニンを原料として、酸性条件で置換アルコールであるハロゲンヒドリンと反応させ、得られた化合物をアミン類化合物と反応させ、目標化合物(1、n=0)を生成する工程と、
b. ジヒドロアルテミシニンを原料として、酸性条件で置換アルコールである二価アルコールと反応させると、先にヒドロキシアルテミシニンエーテルを生成し、次にそれをp-トルエンスルホン酸エステルに変え、最後にアミン類と反応させ、目標化合物(1、n=0)を生成する工程と、
c. ジヒドロアルテミシニンを原料として、酸性条件で置換アルコールであるエポキシプロピルアルコールと反応させ、得られたアルテミシニンをアミン類と反応させ、目標化合物(1、n=1)を生成する工程と、
d. ジヒドロアルテミシニンを原料として、酸性条件で置換アルコールであるアリルアルコールと反応させ、先にそれをアルテミシニンエポキシプロピルエーテルに酸化し、次にアミン類と反応させ、目標化合物(1、n=1)を生成する工程
からなる請求項1に記載の水溶性アルテミシニン誘導体の調製方法。
【請求項6】
水溶性アルテミシニン誘導体の組成物であって、
置換されたアミノアルテミシニンエーテル 1-55%
賦形剤 15-40%
補助剤 20-65%
(すべて重量%)からなることを特徴とする請求項1に記載の水溶性アルテミシニン誘導体の組成物。
【請求項7】
薬学的に受容可能な賦形剤として、糖類(グルコース、スクロース、乳糖)、デンプン(トウモロコシデンプン、ポテトデンプン)、セルロース及び誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、酢酸エステルセルロース、微晶質セルロース)、ポリエチレングリコール、ゼラチン、滑石粉、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、植物油(ダイズ油、ゴマ油、ラッカセイ油、オリーブ油)であり、或いは乳化剤(トウィーン(登録商標))、湿潤剤(ドデシル硫酸ナトリウム)、着色剤、調味剤、安定剤、防腐剤、無発熱原水であることを特徴とする請求項6に記載の水溶性アルテミシニン誘導体の組成物。
【請求項8】
紅斑性狼瘡、慢性関節リウマチ、多発性硬化症など自己免疫疾患を含む人体免疫機能亢進による疾患への予防又は治療用薬物の調製に応用できることを特徴とする請求項1に記載の水溶性アルテミシニン誘導体の用途。
【請求項9】
細胞、臓器移植後抗拒絶反応用の免疫抑制剤の調製において応用できることを特徴とする請求項1に記載の水溶性アルテミシニン誘導体の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−502752(P2009−502752A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521778(P2008−521778)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001782
【国際公開番号】WO2007/009388
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(506201884)中国科学院上海薬物研究所 (9)
【Fターム(参考)】