説明

水溶性切削廃液の処理方法

【課題】水−グリコール系切削媒体を用いた脆性材料の切削乃至は切断工程において排出される水溶性切削廃液の再生処理に際し、かかる廃液の臭気成分を効果的に除去せしめて、そのような切削媒体を有利に回収することの出来る手法を提供すること。
【解決手段】水−グリコール系切削媒体を用いた脆性材料の切削乃至は切断工程において排出される水溶性切削廃液の再生処理に際し、かかる水溶性切削廃液に対して、直接に、又は該水溶性切削廃液の固液分離工程で生じた濾液に対して、アンモニア誘導体を添加せしめ、該切削廃液又は該濾液中に存在する臭気成分と反応させて、かかる切削廃液又は濾液の臭気を除去するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性切削廃液の処理方法に係り、特に、水−グリコール系切削媒体を用いた脆性材料の切削乃至は切断工程において排出される水溶性切削廃液の再生処理に際し、かかる切削廃液の臭気を効果的に除去せしめ得る処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シリコンインゴットや化合物半導体、希土類磁石、セラミック等の脆性材料を切断する際には、SiC等の砥粒を分散させたスラリー状の切削媒体を用いたワイヤソーや、かかる砥粒をワイヤに固着した固定砥粒ワイヤによるワイヤソーが、使用されてきている。そして、そこにおいて、スラリー状の切削媒体としては、水−グリコール系水溶性溶媒に、界面活性剤等の添加剤とSiC砥粒を分散させたもの(遊離砥粒)が、水溶性切削液として使用されているのであり、また、固定砥粒ワイヤソーによる切削時においても、切断に伴なう熱を吸収し、固定砥粒の摩耗を抑止するために、水−グリコール系水溶性溶媒に界面活性剤等を添加した、水溶性切削液が使用されている。更に、そのような水溶性切削液は、上記した切断加工に用いられることにより、遊離砥粒や被削材の切削粉を含有するスラリー状の廃液となって、排出されることとなる。
【0003】
ところで、従来、かかる使用済みの切削液であるスラリー状廃液は、焼却処理や産業廃棄物として埋立処理、活性汚泥法による処理等により処分されたり、燃料として利用されたりしているが、環境問題やコスト等の観点から、それを再生利用することが種々検討され、また、実用化にも至っている。
【0004】
例えば、特開2009−172712号公報(特許文献1)には、水溶性分散媒を含む遊離砥粒スラリー廃液に、無機系凝集剤を添加して溶解させる一方、更にアルカリを添加して、無機系凝集剤の金属水酸化物を生成せしめて、凝集を行なった後、スラリー廃液に生じた凝集物を固液分離すると共に、その固液分離にて得られる濾液を、蒸留精製することにより、又は、吸着剤にて処理し、不純物を吸着除去することにより、水溶性分散媒(切削液)を回収する方法が、明らかにされている。
【0005】
しかしながら、かかる回収方法において対象とされる水溶性切削液の廃液は、脆性材料の切削乃至は切断工程から排出されたときには、既に、独特の臭気を発するものとなっており、そして、この臭気は、上述の如き回収工程における蒸留精製操作によっても除去することが出来ず、そのために、作業環境の悪化をもたらすことが明らかとなった。
【0006】
また、特開2010−30033号公報(特許文献2)においては、砥粒と水溶性クーラントを含むスラリーを用いた、シリコンインゴットの切断の際に排出される使用済みスラリーを、少なくとも蒸留工程に付し、得られた蒸留クーラントから、再生クーラントを得るクーラント再生方法であって、前記蒸留クーラントが、5重量%以上の水と80重量%以上のプロピレングリコールとを含有する、クーラント再生方法が明らかにされているが、そこでも、使用済みの回収スラリーを蒸留するに際しての臭気の問題は、依然として内在しているのであり、更に、そこで得られた蒸留クーラントを活性炭処理したり、酸添加・アルカリ添加したり、還元したりしても、臭気の除去は困難であった。
【0007】
なお、そこでは、蒸留クーラントを、水素化ホウ素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リチウムアルミニウムハイドレート、ナトリウムボロンハイドライド等を用いて還元処理することにより、グリコールの酸化物を除去することが明らかにされているが、チオ硫酸ナトリウムの水溶液は、それ自体特異臭を有するだけでなく、反応性に乏しく、また、他の還元剤にあっても、水と反応して、可燃性ガスである水素を発生する等の危険性を有しており、実用上において問題を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−172712号公報
【特許文献2】特開2010−30033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、水−グリコール系切削媒体を用いた脆性材料の切削乃至は切断工程において排出される水溶性切削廃液の再生処理に際し、かかる廃液の臭気成分を効果的に除去せしめて、そのような切削媒体を有利に回収することの出来る手法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明者等は、そのような脆性材料の切削乃至は切断工程から排出される水溶性切削廃液について、種々検討した結果、かかる切削廃液中の臭気成分が、切削時の摩擦熱によって、水溶性切削液中のグリコールや界面活性剤(アルキルグリコールエーテル等)が酸化されて生じた、アルデヒド基やケトン基を有する低分子揮発成分等であることを突き止め、この低分子揮発成分は、蒸留操作や吸着操作では除去することが出来ず、また、蒸留精製時には、臭気が増大することとなることも見出したのであり、そして、更に鋭意検討の結果、そのような臭気成分(アルデヒド基・ケトン基含有低分子揮発成分)を、アンモニア誘導体との反応により、効果的に除去せしめ得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、上記した課題の解決のために、水−グリコール系切削媒体を用いた脆性材料の切削乃至は切断工程において排出される水溶性切削廃液の再生処理に際し、該水溶性切削廃液に対して、直接に、又は該水溶性切削廃液の固液分離工程で生じた濾液に対して、アンモニア誘導体を添加せしめ、該切削廃液又は該濾液中に存在する臭気成分と反応させて、かかる切削廃液又は濾液の臭気を除去するようにしたことを特徴とする水溶性切削廃液の処理方法を、その要旨とするものである。
【0012】
なお、かかる本発明に従う水溶性切削廃液の処理方法の望ましい態様の一つによれば、前記臭気成分は、アルデヒド基及び/又はケトン基を有する低分子揮発成分であり、更には、前記アンモニア誘導体は、ヒドラジド類であり、また、かかるヒドラジド類は、カルボン酸ヒドラジド類であることが、望ましいものである。
【0013】
また、本発明に従う処理方法においては、有利には、前記アンモニア誘導体が、前記臭気成分の0.5倍モル量〜5倍モル量の割合において添加され、そして、望ましくは、アンモニア誘導体と臭気成分との反応が、切削廃液又は濾液を40℃以上に加熱した状態下において進行せしめられることとなる。また、そのような反応は、有利には、切削廃液又は濾液を酸性状態にして進行せしめられ、更には、アンモニア誘導体を水溶液の形態において添加して、進行せしめられるのである。
【0014】
さらに、本発明の望ましい態様においては、前記水溶性切削廃液は、遊離砥粒又は固定砥粒ワイヤソーによる切削乃至は切断に使用されたクーラント廃液である。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明に従う水溶性切削廃液の処理方法によれば、再生処理されるべき切削廃液に対して、直接に、又はそれの固液分離工程で生じた濾液に対して、添加せしめられたアンモニア誘導体が、かかる切削廃液又は濾液中に存在する臭気成分と効果的に反応することによって、そのような切削廃液又は濾液の臭気が、有利に除去せしめられ得ることとなるのであり、これによって、切削廃液の再生処理、更には、水−グリコール系切削媒体の回収工程における臭気に基づくところの作業環境の悪化を、効果的に改善せしめ得ることとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ところで、本発明において処理対象とされる水溶性切削廃液は、従来と同様な使用済みの水−グリコール系切削媒体であって、具体的には、水−グリコール系切削媒体を用いた脆性材料の切削乃至は切断工程において排出される廃液であって、そこには、水やグリコールの他、予め添加された界面活性剤、無機系増粘剤等の添加剤、SiC等の砥粒、ワイヤソーの摩耗粉、脆性材料の切削屑、更には切削/切断時に生じた臭気成分等の変性成分等が混入したものである。なお、水−グリコール系切削媒体における水やグリコールは、公知の割合において含有せしめられている。
【0017】
そして、本発明にあっては、そのような水溶性切削廃液の再生処理乃至は有効成分の回収に際して、かかる水溶性切削廃液中に存在する臭気成分を除去するために、所定のアンモニア誘導体が添加せしめられることとなるのであるが、そのようなアンモニア誘導体の添加は、水溶性切削廃液に対して直接に行なわれる他、水溶性切削廃液を固液分離して得られる濾液に対して、それが蒸留精製操作に付される前に、実施される。これによって、かかるアンモニア誘導体が、切削廃液や濾液中に存在する臭気成分、即ち、グリコール類や界面活性剤(アルキルグリコールエーテル等)の酸化によって生じたアルデヒド基やケトン基等を有する低分子揮発成分と反応せしめられることにより、臭気のない成分に変換させられるのである。
【0018】
ここにおいて、切削廃液や濾液中の臭気成分と反応せしめられるアンモニア誘導体としては、例えば、ヒドロキシルアミン又はその塩、ヒドラジン又はアルキルヒドラジン類、ヒドラジド化合物等を挙げることが出来、それらの中でも、臭気や安全性等の観点から、ヒドラジド化合物が好適に用いられることとなる。
【0019】
また、ヒドラジド化合物としては、例えば、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、4−ヒドロキシベンゾヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド等を挙げることが出来る。そして、これらの中でも、本発明にあっては、ジヒドラジド化合物が好ましく用いられ、特に、アジピン酸ジヒドラジドが、好ましく用いられる。また、上記のヒドラジド化合物は、単独で、又は2種以上を組み合わせて、用いることも可能である。
【0020】
かくの如きアンモニア誘導体の添加量は、切削廃液や濾液中に存在する臭気成分の含有量に応じて、適宜に調整されるものであるが、一般に、臭気成分の0.5倍モル量〜5倍モル量の割合において、適宜に決定されることとなる。具体的には、アンモニア誘導体としてヒドラジド化合物を用いる場合にあっては、臭気成分中のアルデヒド基やケトン基の量に対して、ヒドラジド基が、0.5〜5倍モル量、好ましくは0.8〜4倍モル量の割合において、加えられることとなる。なお、そのようなアンモニア誘導体の添加量が過少となると、臭気成分を充分に反応、分解させることが出来ず、臭気が残留するという問題があり、また、その添加量が過多となると、経済的に不利となる等の問題が惹起されるようになる。
【0021】
さらに、そのようなアンモニア誘導体と臭気成分との反応は、切削廃液又は濾液を40℃以上に加熱した状態下において進行せしめられることが望ましく、加熱還流下での反応蒸留に至るまでの温度下において実施されることにより、それらアンモニア誘導体と臭気成分との反応が、有利に進行せしめられ得るのである。また、それらアンモニア誘導体と臭気成分との反応は、かかる切削廃液又は濾液をpH7未満の酸性状態とすることにより、有利に進行させられ得るのであり、その場合においては、10℃程度までの反応温度も採用可能となる。そして、そのような酸性状態は、適当な酸や酸性化合物を添加することにより、容易に実現可能である。
【0022】
なお、そのようなアンモニア誘導体と臭気成分との反応時間としては、アンモニア誘導体の添加量や臭気成分の存在量、更には反応温度等によって、適宜に選定されるものであるが、一般に、0.5時間以上、好ましくは1時間以上が採用され、その上限としては、実用的な観点から、一般に、24時間以下、好ましくは10時間以下とされることとなる。
【0023】
また、本発明において、アンモニア誘導体は、水溶性切削廃液の固液分離工程に先立って、そのような切削廃液に対して直接に添加され、或いは、そのような固液分離工程で生じた濾液に対して、添加せしめられるものであるが、かかる水溶性切削廃液の固液分離工程においては、従来と同様な操作や装置が、採用されるのである。具体的には、従来から固液分離装置として使用されている公知の構造のものを適宜に用いて、切削廃液に対する固液分離操作が実施されるのであり、例えば、フィルタプレス機、加圧濾過装置、減圧濾過装置、遠心分離機等を、単独で又は適宜に組み合わせて用いて、切削廃液の固液分離が行なわれるのである。なお、この固液分離工程においては、公知の凝集剤を切削廃液に適宜に添加しても良く、また、使用済廃液の粘度を下げるため、又は凝集剤の溶解が有利に行なわれ得るようにするために、水を適宜に加えることも可能である。特に、かかるアンモニア誘導体の添加に際しては、それを水溶液の形態とした状態で切削廃液や濾液に加えることが望ましく、そうすることによって、反応効率を高めることが可能となる。
【0024】
そして、そのような固液分離工程は、本発明に従うアンモニア誘導体を添加するための濾液を得るべく採用される他、本発明に従って、アンモニア誘導体が添加されて、臭気成分が除去せしめられた切削廃液に対しても、同様に適用され、それによって、切削廃液中に共存する微細な粒子が固形分として取り出されて、かかる切削廃液の再生が図られ得るのである。
【0025】
なお、このようにして得られた、アンモニア誘導体の添加により臭気成分の除去された濾液や、アンモニア誘導体の添加により臭気成分が除去された切削廃液の固液分離操作にて得られた濾液は、何れも、その臭気が効果的に消失せしめられており、それによって、回収液として、そのまま使用され得るものであるが、また、それらの濾液を、必要に応じて、蒸留精製や吸着処理等の公知の処理を施して、グリコール等を取り出すようにすることも、可能である。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。なお、以下の実施例中の部及び百分率は、特に断りのない限りにおいて、何れも、重量基準にて、示されるものである。
【0027】
先ず、水溶性切削液の廃液として、ワイヤソーでシリコンインゴットを切削した際に生じた、以下の如き組成の廃液を準備した。なお、かかる廃液を、ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製、GC−2014)にて測定した結果、臭気成分としてヒドロキシアセトンを0.1%含有していることが、明らかとなった。また、この廃液のpHを測定したところ、8.5であった。
−使用済水溶性切削液の組成−
・固形分(砥粒SiC、Si切削粉等):約50%
・水分:10%
・プロピレングリコール:40%
・臭気成分(ヒドロキシアセトン):0.1%
【0028】
<実施例1>
上記の使用済み水溶性切削液(切削廃液)の500部に、無機系凝集剤として、硫酸アルミニウム含水塩(14〜18水和物)の5部を加え、30分間攪拌して溶解せしめた。次いで、そこにアルカリとして、水酸化カルシウムの1.7部を添加し、60分間攪拌して、凝集を行なった。そして、その凝集させた切削廃液を、内径:150mmの吸引ロート(ビフネルロート)と濾紙(No.5C)を用いて、減圧濾過した。
【0029】
次いで、かかる減圧濾過により得られた濾液に対して、アンモニア誘導体であるアジピン酸ジヒドラジドを1.2部加え、60℃で4時間、加温攪拌することにより、アジピン酸ジヒドラジドと臭気成分(ヒドロキシアセトン)とを、反応せしめた。そして、その得られた反応液中の臭気成分(ヒドロキシアセトン)の含有量を、上述したガスクロマトグラフにて測定し、その結果を、下記表1に示した。
【0030】
<実施例2>
前記の使用済み水溶性切削液(切削廃液)の500部に、無機系凝集剤として、酸性化合物でもある硫酸アルミニウム含水塩(14〜18水和物)の5部を加え、更に、アジピン酸ジヒドラジドの2.0部を加えて、60℃の温度で60分間攪拌することにより、かかる切削廃液中に存在する臭気成分(ヒドロキシアセトン)とアジピン酸ジヒドラジドとを、酸性状態下で反応せしめた。
【0031】
次いで、かかる反応の終了した切削廃液に対して、アルカリとして、水酸化カルシウムの1.7部を添加して、60℃で60分間、攪拌することにより、凝集を行なった。そして、その凝集させた切削廃液を、内径:150mmの吸引ロート(ビフネルロート)と濾紙(No.5C)を用いて減圧濾過し、その得られた濾液について、上述のガスクロマトグラフにて臭気成分の測定を行ない、その結果を、下記表1に示した。
【0032】
<実施例3>
前記の使用済み水溶性切削液(切削廃液)の500部に、無機系凝集剤として、硫酸アルミニウム含水塩(14〜18水和物)の5部を加え、30分間攪拌した。その後、そこに、アルカリとして、水酸化カルシウムの1.7部を添加して、60分間攪拌し、凝集を行なった。そして、その凝集させた切削廃液を、内径:150mmの吸引ロート(ビフネルロート)と濾紙(No.5C)を用いて、減圧濾過した。
【0033】
次いで、かかる減圧濾過により得られた濾液に対して、コハク酸ジヒドラジドの1.0部を加え、60℃で6時間、加温攪拌することにより、濾液中の臭気成分とコハク酸ジヒドラジドとの反応を進行せしめた。その後、その得られた反応液について、上記したガスクロマトグラフによる臭気成分の測定を行ない、その結果を、下記表1に示した。
【0034】
<実施例4>
前記の使用済み水溶性切削液(切削廃液)の500部に、無機系凝集剤として、硫酸アルミニウム含水塩(14〜18水和物)の5部を加え、30分間攪拌した。次いで、そこに、アルカリとして、水酸化カルシウムの1.7部を添加し、60分間攪拌して、凝集を行なった。その後、かかる凝集させた切削廃液を、内径:150mmの吸引ロート(ビフネルロート)と濾紙(No.5C)を用いて、減圧濾過した。
【0035】
次いで、かかる得られた濾液に対して、4−ヒドロキシベンゾヒドラジドの2.0部を加え、60℃で4時間、加温攪拌することにより、臭気成分と反応せしめた。そして、その反応の終了後、反応液を、前記ガスクロマトグラフを用いて測定し、臭気成分の含有量を求め、その結果を、下記表1に示した。
【0036】
<実施例5>
先ず、硫酸ヒドロキシルアミンの0.55部を、そのような硫酸ヒドロキシルアミンに対して1.0倍当量となる炭酸カリウムの0.46部と共に、イオン交換水の15部に溶解させることによって、遊離ヒドロキシルアミン水溶液を得た。
【0037】
一方、前記の使用済み水溶性切削液(切削廃液)の500部に、無機系凝集剤として、硫酸アルミニウム含水塩(14〜18水和物)の5部を加え、30分間攪拌した後、そこに、アルカリとして、水酸化カルシウムの1.7部を添加し、60分間攪拌することにより、凝集を行なった。そして、その凝集させた切削廃液を、内径:150mmの吸引ロート(ビフネルロート)と濾紙(No.5C)を用いて、減圧濾過した。
【0038】
次いで、かかる減圧濾過により得られた濾液に対して、先に準備した遊離ヒドロキシルアミン水溶液を添加し、60℃で2時間、加温攪拌を行なって、反応させた後、析出した無機塩を、濾紙(No.5C)を用いて、自然濾過により濾別した。その後、得られた濾液について、先のガスクロマトグラフを用いて測定し、その臭気成分含有量を求め、その結果を、下記表1に示した。
【0039】
<実施例6>
前記の使用済み水溶性切削液(切削廃液)の500部に、アジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液の20部を加えて、10分間攪拌した後、無機系凝集剤として、酸性化合物でもある硫酸アルミニウム含水塩(14〜18水和物)の15部を加え、pH6.0の状態下で、25℃の温度で60分間攪拌することにより、かかる切削廃液中に存在する臭気成分(ヒドロキシアセトン)とアジピン酸ジヒドラジドとを、反応せしめた。
【0040】
次いで、かかる反応の終了した切削廃液に対して、アルカリとして、水酸化カルシウムの1.7部を添加して、25℃で60分間、攪拌することにより、凝集を行なった。そして、その凝集させた切削廃液を、内径:150mmの吸引ロート(ビフネルロート)と濾紙(No.5C)を用いて減圧濾過し、その得られた濾液について、上述のガスクロマトグラフにて臭気成分の測定を行ない、その結果を、下記表1に示した。
【0041】
<比較例1>
前記の使用済み水溶性切削液(切削廃液)の500部に、無機系凝集剤として、硫酸アルミニウム含水塩(14〜18水和物)の5部を加え、30分間攪拌した後、そこにアルカリとして、水酸化カルシウムの1.7部を添加し、更に60分間攪拌して、凝集を行なった。
【0042】
次いで、かかる凝集させた切削廃液を、内径:150mmの吸引ロート(ビフネルロート)と濾紙(No.5C)を用いて減圧濾過し、その濾液を、先のガスクロマトグラフにて測定することにより、臭気成分の含有量を求め、その結果を、下記表1に示した。
【0043】
<比較例2>
前記の使用済み水溶性切削液(切削廃液)の500部に、無機系凝集剤として、硫酸アルミニウム含水塩(14〜18水和物)の5部を加え、30分間攪拌した後、そこにアルカリとして、水酸化カルシウムの1.7部を添加し、更に60分間攪拌して、凝集を行なった。その後、かかる凝集させた切削廃液を、内径:150mmの吸引ロート(ビフネルロート)と濾紙(No.5C)を用いて、減圧濾過した。
【0044】
次いで、かかる減圧濾過により得られた濾液に対して、チオ硫酸ナトリウム・5水和物を3.4部加え、60℃で4時間、加温せしめた後、先のガスクロマトグラフを用いて測定し、臭気成分の含有量を測定し、その結果を、下記表1に併せ示した。
【0045】
【表1】

【0046】
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従う実施例1〜6において得られた濾液中の臭気成分の含有量は、比較例1や比較例2の場合に比べて、極めて低下しており、実際に、それら実施例の濾液からの臭気は、殆ど知覚されなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水−グリコール系切削媒体を用いた脆性材料の切削乃至は切断工程において排出される水溶性切削廃液の再生処理に際し、
該水溶性切削廃液に対して、直接に、又は該水溶性切削廃液の固液分離工程で生じた濾液に対して、アンモニア誘導体を添加せしめ、該切削廃液又は該濾液中に存在する臭気成分と反応させて、かかる切削廃液又は濾液の臭気を除去するようにしたことを特徴とする水溶性切削廃液の処理方法。
【請求項2】
前記臭気成分が、アルデヒド基及び/又はケトン基を有する低分子揮発成分である請求項1に記載の水溶性切削廃液の処理方法。
【請求項3】
前記アンモニア誘導体が、ヒドラジド類である請求項1又は請求項2に記載の水溶性切削廃液の処理方法。
【請求項4】
前記ヒドラジド類が、カルボン酸ヒドラジド類である請求項3に記載の水溶性切削廃液の処理方法。
【請求項5】
前記アンモニア誘導体が、前記臭気成分の0.5倍モル量〜5倍モル量の割合において添加される請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の水溶性切削廃液の処理方法。
【請求項6】
前記アンモニア誘導体と前記臭気成分との反応が、前記切削廃液又は前記濾液を40℃以上に加熱した状態下において進行せしめられる請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の水溶性切削廃液の処理方法。
【請求項7】
前記アンモニア誘導体と前記臭気成分との反応が、前記切削廃液又は前記濾液を酸性とした状態下において進行せしめられる請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の水溶性切削廃液の処理方法。
【請求項8】
前記アンモニア誘導体が、水溶液の形態において添加せしめられる請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の水溶性切削廃液の処理方法。
【請求項9】
前記水溶性切削廃液が、遊離砥粒又は固定砥粒ワイヤソーによる切削乃至は切断に使用されたクーラント廃液である請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の水溶性切削廃液の処理方法。


【公開番号】特開2012−76152(P2012−76152A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220765(P2010−220765)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(591089855)三和油化工業株式会社 (34)
【Fターム(参考)】