説明

水現像性凸版印刷用感光性樹脂組成物及びそれから得られる水現像性凸版印刷用感光性樹脂原版

【課題】 高性能の印刷版をえるために感光性樹脂自身によってインカールすることを解決した凸版印刷用感光性樹脂組成物および凸版印刷用感光性樹脂原板を提供する。
【解決手段】 少なくとも可溶性高分子化合物、光重合性化合物及び光重合性開始剤を含有する凸版印刷用感光性樹脂組成物において、該可溶性高分子化合物が6−ナイロンを構成成分する水溶性又は水分散性ポリアミドであり、且つ感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率が2質量%以下であることを特徴とする凸版印刷用感光性樹脂組成物及びそれから得られる水現像性凸版印刷用感光性樹脂原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水現像性凸版印刷用感光性樹脂組成物およびそれを用いて得られる凸版印刷用感光性樹脂原版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、印刷版に用いられる感光性樹脂凸版組成物として、一般に、可溶性高分子化合物、光重合性不飽和化合物および光重合開始剤を必須成分として含有し、必要に応じて、安定剤、可塑剤等の添加剤が配合されている。
【0003】
従来、この感光性樹脂組成物層に透明な画像質量部を有するネガフィルム(またはポジフィルム)を通して活性光線を照射し、露光質量部の感光層を硬化させた後、非露光質量部の感光層を適当な溶剤で溶解除去して乾燥及び後露光する製版工程により、印刷用のレリーフ版を作成することは広く知られている。
前記の感光性樹脂組成物としては可溶性ポリアミド、ポリエーテルウレアウレタン、完全鹸化または質量部分鹸化ポリ酢酸ビニルなどを可溶性ポリマーとして使用するものが提案されており、可溶性ポリアミドやポリエーテルウレアウレタンを使用する感光性凸版組成物は耐摩耗性に優れるために特に好ましく使用される。それらの感光性樹脂凸版組成物を用いた感光性樹脂凸用原版では、印刷性向上として感光性樹脂層を高反発弾性化した感光性樹脂凸用原版(特許文献1、特許文献2)では高速印刷適性を改善している。
【0004】
最近では感光性樹脂凸用原版に対するユーザーの要求が、さらに微細なパターンを再現する方向へ進んでおり、写真の印刷等に使用する最小ハイライトについても200線の5%以下の印刷物がスムーズに再現することを要求されるようになっている。
微細なハイライト網点印刷性の要求に対応する従来技術としては、感光樹脂層の光透過率の異なる多層構造にすることで画像再現性を向上させた感光性樹脂凸用原版(特許文献3)、感光性樹脂層の多層化によりレリーフ形状をシャープにした感光性樹脂凸用原版(特許文献4)などがあげられ、印刷物のハイライト網点の5%から1%までのハイライト網点印刷物の再現性を満足しうる感光性樹脂凸用原版が得られている。
上記の通りに凸版印刷用感光性樹脂原版の微細な画像再現性は大幅に向上しているが、凸版用印刷版の積層体としてはインールという大きな課題が残っている。
つまり、印刷原版から得られた印刷版は両面テープで版胴などに貼り付けられて使用されるが、印刷版がインールすることで、特にベタ部の縁部が持ち上がった状態になる。そのために、持ち上がった状態を修正するために高印圧で印刷せざるおえず、結果として微細な画像が圧力で変形により非常に大きな太りとなる。
印刷版のインールに対しては、支持体の剛性を大きくすることや支持体上にクッション層を設けるなどインカールを緩和する改善が検討されてきたが、満足できるものではなく、感光性樹脂そのものによってインカールを解決した凸版印刷用感光性樹脂原板が待たれていた。
【特許文献1】特開平04−97154号公報
【特許文献2】特開平05−11447号公報
【特許文献3】特開2002−23349号公報
【特許文献4】特開平06−313966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は高性能の印刷版をえるために感光性樹脂自身によってインカールを解決した凸版印刷用感光性樹脂組成物および凸版印刷用感光性樹脂原板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる目的を達成するために好適な樹脂組成物の組成について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、(1)少なくとも可溶性高分子化合物、光重合性化合物及び光重合性開始剤を含有する凸版印刷用感光性樹脂組成物において、該可溶性高分子化合物が6−ナイロンを構成成分とする水溶性又は水分散性共重合ポリアミドであり、且つ感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率が2質量%以下であることを特徴とする水現像性凸版印刷用感光性樹脂組成物、(2)感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタム及び残存溶剤量の合計量が4質量%以下であり、前記残存溶剤がアルコール又は/及び水であることを特徴とする(1)の水現像性凸版印刷用感光性樹脂組成物、(3)(1)又は(2)の凸版印刷用感光性樹脂組成物より得られたことを特徴とする水現像性凸版印刷用感光性樹脂原版である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインカールを解決した凸版印刷用感光性樹脂組成物およびそれから得られた凸版印刷用感光性樹脂原板は、製版工程によって得られた1%から5%までのハイライト網点印刷版の印刷物に対する再現性を大幅に向上しうる極めて優れた印刷原板の性能を有するものであり、産業界に対する寄与は大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に使用する可溶性高分子化合物とは6−ナイロンを構成成分とする水溶性又は水分散性ポリアミドのことであり、6−ナイロンと親水性成分を含有する共重合ポリアミドである。本発明のポリアミドは、アミド結合以外にエステル結合やウレタン結合を含有していても良い。
具体的な共重合ポリアミドとしては、側鎖にスルホン酸基またはスルホネート基を有するポリアミドを可溶性高分子化合物とする感光性樹脂組成物(特許文献1)、ポリエチレングリコールセグメントを含有する共重合ポリアミドを可溶性高分子化合物とする感光性樹脂組成物(特許文献2)、ポリエチレングリコールセグメントを含有する共重合ポリエステルアミドを可溶性高分子化合物とする感光性樹脂組成物(特許文献3)、塩基性窒素原子を有するポリアミドを可溶性高分子化合物とする感光性樹脂組成物(特許文献4)などが挙げられる。
【特許文献1】特開昭48−72250号公報
【特許文献2】特開昭55−74537号公報
【特許文献3】特開昭58−117537号公報
【特許文献4】特開昭50−7605号公報 前記ポリアミドの中でも塩基性窒素含有共重合ナイロンやポリエーテル含有ポリアミドが好ましい。
【0009】
本発明は、印刷版のインカールを低減するために感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率をコントロールすることが必要である。感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率としては、2質量%以下が好ましく、さらに好ましくは1%以下である。感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率が、2質量%を超えるとインカールが大きくなるために好ましくない。
本発明において、感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率が2質量%以下とする方法としては、重合時間を長くしてε−カプロラクタムの反応を進める方法や重縮合した後にε−カプロラクタムを溶解しうる水又は溶剤で抽出する方法がある。具体的な水又は溶剤で抽出する方法としては、重合後の水中キャスト時にストランドを細くして十分な時間を取る方法やチップ化された後に水又は溶剤で抽出する方法が望ましい。
【0010】
次に、本発明の感光性樹脂組成物中に含有する残存溶剤量について説明する。
本発明はインカール性を小さくするために、感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率が特定の範囲とすると共に感光性樹脂組成物中に含有する残存溶剤量も特定の範囲とすることで、印刷版としてインカールの少ない優れた感光性樹脂原版を得るものである。
感光性樹脂組成物中に存在するε−カプロラクタムは現像時に現像水に抽出されることで体積収縮を起こすために特定の範囲内に含有させる必要がある。驚くべきことにさらに感光性樹脂組成物中に含有する残存溶剤を特定の範囲内とすることで、非常に優れたインカールの少ない平面性に優れた印刷版を得ることができる。
【0011】
本発明は、インカールの少ない印刷版を得るために感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率が特定の範囲とすると共に感光性樹脂組成物中に含有する残存溶剤量も特定の範囲とする必要があり、ε−カプロラクタム又は/及び残存溶剤量の合計量は4質量%以下が好ましく、さらに好ましくは3質量%以下である。その合計量は4質量%を超えるとカール度が2cm以上を超えるので、装着性の面より好ましくない。
【0012】
感光性樹脂組成物中残存溶剤量を特定の範囲にする方法としては、感光性樹脂組成物溶液を濃縮する段階で濃縮時間や温度でコントロールすれば良く、特に減圧濃縮方法を取ることで溶剤の低含有率化を可能にすることができる。
【0013】
感光性樹脂組成物には可溶性高分子化合物、光重合性不飽和単量体および光重合性開始剤以外に安定剤や可塑剤などの添加剤を必要に応じて含有させることができる。安定剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルや2、6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなどが挙げられ、これらは組成物中に0.001〜5質量%程度含有させるのが好ましい。可塑剤は光硬化物の物性変化を目的に添加され、例えば、エステルやアミドなどの低分子可塑剤、ポリエステルやポリエーテル、液状ゴム類などのオリゴマーが挙げられる。該可塑剤は組成物中に0.1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%含有させるのが好ましい。また、露光、現像後に得られる製品用途に応じて、公知の染料や色素を添加して感光性樹脂組成物を着色することもできる。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、印刷用レリーフ版を得る場合の溶融成形法の他、例えは、熱プレス、注型、或いは、溶融押出し、溶液キャストなど公知の任意の方法により目的の製品に応じた所望の形状物に成形できる。
【0015】
印刷用レリーフ版を得る場合はシート状に成形した成形物(生版)を公知の接着剤を介して、或いは、介さずに支持体に積層して使用することができる。支持体としてはスチール、アルミニウム、ガラス、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、金属蒸着したフィルムなど任意のものが使用できる。シート状成形物(生版)を支持体上に積層した積層体にして供給する場合にはシート状成形物(生版)に接して保護層がさらに積層される。保護層はフイルム状のプラスチック、例えば、ポリエステルの125μm厚みのフイルムに粘着性のない透明で現像液に分散又は溶解する高分子を1〜3μmの厚みで塗布したものが用いられる。この薄い高分子の皮膜を有する保護層をシート状成形物(生版)に接することによって、シート状成形物(生版)の表面粘着性が強い場合であっても次の露光操作時に行う保護層の剥離を容易に行うことができる。
【0016】
このような組成物からなる層単独、もしくはこの層と支持体とからなる感光性原版は、感光性層に透明画像部を有するネガフィルムまたはポジフィルムを密着して重ね合せ、その上方から活性光線を照射して露光をおこなうと、露光部のみが不溶化ならびに硬化する。活性光線は通常300〜450nmの波長を中心とする高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、ケミカルランプなどの光源を用いる。
【0017】
次いで、適当な溶剤、特に本発明では中性の水により非露光部分を溶解除去することによって、鮮明な画像部を有する凸版を得る。このためには、スプレー式現像装置、ブラシ式現像装置などを用いる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また可溶性高分子中のカプロラクタム含有量、感光性樹脂層中の残存溶剤量、カール度は、以下の方法で測定した値である。
(1)カプロラクタム含有量
ポリアミド樹脂を粉砕し、JIS標準ふるい24mesh通過124mesh不通過の粉末を集め、テトラヒドロフランで3時間ソックスレイ抽出し、抽出液中に含まれるカプロラクタムを高速液体クロマトグラフを用いて定量した。測定条件は下記のとおりである。
高速液体クロマトグラフ:ウォーターズ社600Eカラム :GLサイエンス社 ODS−3検出器 :ウォーターズ社484Tunable Absorbance Detector検出波長:254nmインジェクション体積:10μl溶媒 :メタノール/水(20:20(体積比))
流速 :1ml/min。
(2)感光性樹脂層中の残存溶剤含有量
水分含有率 :水分気化装置(平沼産業株式会社製EV−6型)N2 0.3L/min自動水分測定装置(平沼産業株式会社製AQV−1型)試料;400mg〜500mg
アルコール含有率:ガスクロマトグラフ(柳本製作所G−180型)He1.0kg/cm2カラム;Tenax−GC(ジーエルサイエンス(株)製)カラム温度70℃設定試料;適当な溶媒に溶かしてガスクロマトグラフ分析の試料とする。溶媒には測定成分を含まない適性なものを使用する。以下の実施例中のメタノール量の分析にはエタノールを溶媒とし、測定をおこなった。
(3)印刷版のカール度
公知の方法でポリエステル系樹脂とイソシアネート化合物より得られるポリウレタン系接着層を膜厚みが20μmとなるように厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した支持体上に感光性樹脂層を設けた印刷原版を日本電子精機(株)製のA2 サイズ用プリンター(三菱製ケミカルランプ)を使って10分間露光し、その後にカットすることでの直径10cmサンプルを作った。次いで、水道水を現像液とし、ブラシ式ウォッシヤー(140μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)製JW−A2−PD型)を用いて25℃で2分間現像して全面露光したレリーフを得ることができた。得られた直径10cmのレリーフ画像を20℃、32%RHに7日間保管し、カール度評価用サンプルの調整を行った。得られた評価サンプルを水平な平面を有する実験台に静置し、インカール度を測定した。インカール度は内側に変形して反り上がったレリーフの最も高い位置であり、平面から高さ(cm)とした。
【0019】
実施例1
ε−カプロラクタム55.0質量部、N,N‘−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩40.0質量部と1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンとアジピン酸のナイロン塩7.5質量部とを内温が240℃に達した後に240〜260℃に保ち、1時間溶融重縮合して塩基性窒素原子含有共重合ポリアミドを得た。
次に得られた塩基性窒素原子含有共重合ポリアミドを用いて含有するε−カプロラクタムの抽出除去を行った。抽出はポリアミドを粉砕し、テトラヒドロフランを溶剤としてソックスレー抽出器による抽出法によって60分間処理した。処理した後のポリアミドはε−カプロラクタムを0.7質量%含み、処理前の5.3質量%と比較して大幅に減少していた。
【0020】
処理したポリアミドを55.0質量部、N−メチルトルエンスルホン酸アミドを7.7質量部、1,4−ナフトキノンを0.02質量部、メタノール50.0部と水10質量部を攪拌機付き加熱溶解釜中で60℃、2時間混合してポリマーを完全に溶解してから、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのアクリル酸付加物を33.1質量部、メタクリル酸を3.1質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.1部とベンジルジメチルケタールを1.0質量部を混ぜて30分間溶解した。次に徐々に昇温してメタノールと水を留出させて、釜内の温度が110℃になるまで濃縮した。この段階で、感光性樹脂層用の流動性のある粘稠な感光性樹脂組成物が得られた。
【0021】
次に、得られた感光性組成物を厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にポリエステル系接着層を厚さ20μmコーティングしたフィルムに接するように供給し、粘着防止層としたPVAを厚さ2μコートした厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムでカバーするようにラミネーターを用いて全厚みが1080μmのシート状の感光性樹脂原版を成形した。
感光性樹脂原版を7日間以上保管した後に、125μmのポリエステルフイルムを剥離してテストネガフイルム(感度測定用グレイスケールネガフイルムと画像再現性評価用画像のネガフイルム)を真空密着させ、超高圧水銀灯で40秒間露光した。次にブラシ式ウォッシャー(100μmφナイロンブラシ、日本電子精機(株)制作JW−A2−PD型)で水道水を現像液にして、25℃で1分45秒間現像してレリーフ画像を得ることができた。更に70℃で20分間、熱風乾燥した後に超高圧水銀灯で30秒間後露光して得られたレリーフを評価した結果、グレイスケールは17段、200μm独立点、30μm細線が再現されていた。
一方、カール度測定用レリーフを評価方法に従って作成した、得られた直径10cmレリーフ画像を20℃、32%RHに7日間保管し、カール度評価サンプルの調整を行った。得られた評価サンプルを水平な平面を有する実験台に静置し、インカール度を測定した。測定したインカール度は0.8cmと優れたインカール度であり、印刷機の版胴を想定した直径10cmの金属ロールにポリエステル製両面テープを用いて装着したが、反り返ることはなく、優れた平面性を有する印刷版が得られた。
【0022】
実施例2〜5、8
実施例1と同様にして重合を行い、6ナイロン系ポリアミドを得た。表1の抽出処理を行って得られた共重合ポリアミドを用い、共重合ポリアミド以外を実施例1と同様の成分を同じ比率で溶解・混合して感光性樹脂組成物を得、その感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂印刷原版を作成した。
実施例2〜3ではε−カプロラクタムの抽出条件を変更し、実施例4では〔カプロラクタム含有量+残存溶剤含有量〕の合計量を実施例1とほぼ同じ合計量としてε−カプロラクタム含有量の比率の高い感光性樹脂組成物を得、その感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂印刷原版を作成した。
又、実施例5では重合条件でε−カプロラクタム量を低減した共重合ポリアミドを用いた。実施例8では低ε−カプロラクタム含有量の共重合ポリアミドを用いて〔カプロラクタム含有量+残存溶剤含有量〕の合計量を上限数値で製造した感光性樹脂印刷原版の場合である。
得られた感光性樹脂印刷原版を用いて性能評価を行い、その結果を表1に示す。
【0023】
実施例6〜7
表1のポリマー組成比率(仕込み質量比率)を実施例1と同様にして重合を行い、6ナイロン系共重合ポリアミドを得た。表1の抽出処理を行って得られたポリアミドを用い、ポリアミド以外を実施例1と同様の原料で感光性樹脂組成物を得、その感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂印刷原版を作成した。得られた感光性樹脂印刷原版を用いて性能評価を行い、その結果を表1に示す。
【0024】
比較例1〜4
比較例1、比較例2及び比較例3は実施例1、実施例5及び実施例7においてポリマーのε−カプロラクタム抽出処理を行わずに実施例1と同様にして感光性樹脂印刷原版を作成した。得られた感光性樹脂印刷原版を用いて性能評価を行い、その結果を表1に示す。
一方、比較例4では、実施例1と同様のε−カプロラクタム抽出処理を行ったが、残存溶剤量比率が高い感光性樹脂印刷原版を作成した。得られた感光性樹脂印刷原版を用いて性能評価を行い、その結果を表1に示す。
【0025】
表1の評価結果から組成物中にε−カプロラクタムの含有率が2質量%以下の場合に優れたカール度であり、特にε−カプロラクタムの含有率が2質量%以下で且つ残存溶剤量との合計量が4質量%以下の場合に特に優れたカール度を有することは明らかである。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の感光性樹脂組成物及び凸版印刷用感光性樹脂原板は、感光性樹脂自身によってインカールを解決した高性能な印刷版を製造でき、特にシール印刷分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも可溶性高分子化合物、光重合性化合物及び光重合性開始剤を含有する凸版印刷用感光性樹脂組成物において、該可溶性高分子化合物が6−ナイロンを構成成分とする水溶性又は水分散性共重合ポリアミドであり、且つ感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタムの含有率が2質量%以下であることを特徴とする水現像性凸版印刷用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
感光性樹脂組成物中のε−カプロラクタム及び残存溶剤量の合計量が4質量%以下であり、前記残存溶剤がアルコール又は/及び水であることを特徴とする請求項1の水現像性凸版印刷用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の凸版印刷用感光性樹脂組成物より得られたことを特徴とする水現像性凸版印刷用感光性樹脂原版。

【公開番号】特開2010−134223(P2010−134223A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310609(P2008−310609)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】