説明

水系エマルジョン型感熱接着剤、感熱ラベルおよびラベル付き容器

【課題】作業性、貼付安定性、保存安定性に優れ、なおかつ、貼付後長期間経過した場合であっても、剥離した際には容器に糊残りを生じない優れた糊残り抑止性を有する接着剤層を形成する水系エマルジョン型感熱接着剤、該感熱接着剤を用いた感熱ラベル、ラベル付き容器を提供する。
【解決手段】水系エマルジョン型感熱接着剤は、ベースポリマー、固体可塑剤、及び、感圧接着剤の保存安定性向上と糊残り抑止性が向上する特定の化合物を含有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系エマルジョン型感熱接着剤に関する。詳しくは、ディレード型感熱接着剤であって、接着剤の保存安定性に優れ、かつ、優れた糊残り抑止性が持続する接着剤層を形成しうる水系エマルジョン型感熱接着剤に関する。また、該感熱接着剤を用いた感熱ラベルおよびラベル付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水や清涼飲料水等を販売する際に、ポリエチレンテレフタレート(PET)製ボトル等のプラスチック製容器が広く用いられており、これらの容器には、商品名やデザイン、内容物に関する説明等の印刷が施されたラベルが装着されることが多い。かかるラベルとしては、例えば、全面もしくは両端に感熱接着剤(感熱性接着剤)を塗工したラベルを巻き付けて装着するタイプの感熱ラベルも用いられている。
【0003】
このような感熱ラベルは、貼付時に接着剤層(糊)部分を加熱することで粘着性を発現させることができるため、使用時までは粘着性を有しておらず、剥離紙を用いずに保管ができるという利点がある。また、上記感熱接着剤の中でも、ディレード型感熱接着剤は、加熱により一旦粘着性を発現すると、加熱をやめた後も一定時間粘着性が持続するので、特に貼付安定性に優れるという利点を有する。かかるディレード型感熱接着剤は、一般に、熱可塑性樹脂(ベースポリマー)、固体可塑剤を構成成分としてなる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記感熱ラベルに用いられる感熱接着剤には、加熱により速やかに粘着性を発揮する熱応答性や、容器の使用時にラベルの剥がれなどのトラブルが生じないために容器やラベル基材等に強固に接着する特性が求められる。しかし、その反面、リサイクルの観点から、容器の使用後にはラベルを容易に剥離でき、しかも剥離時には容器側に粘着剤が残留しない(いわゆる「糊残り」の生じない)特性が要求される。すなわち、感熱接着剤には、熱応答性や接着性、糊残りの抑止、という様々な特性が求められている。
【0005】
しかしながら、上記のように固体可塑剤を含む感熱接着剤を用いたラベルでは、ラベル装着当初は良好な糊残り抑止性を示す場合であっても、接着剤層中で経時で固体可塑剤が結晶化することにより、長期間が経過した後では糊残りが生じやすくなってしまうという問題が生じていた。また、感熱接着剤を長期保存する際には、接着剤中に分散した固体可塑剤が凝集又は再結晶化し、保存安定性が低下するという問題が生じていた。さらに、感熱接着剤の熱応答性や接着性を向上させるためには、固体可塑剤の粒径(分散径)を小さくすることが有効であるが、そのような固体可塑剤を微分散させた感熱接着剤では、上記の経時での糊残り抑止性の低下や保存安定性の低下の問題はより顕著であり、熱応答性、接着性と糊残り抑止性の持続性や保存安定性を高いレベルで両立させることは困難であった。
【0006】
【特許文献1】特開2002−20705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ディレード性により優れた作業性、貼付安定性を発揮する感熱接着剤であって、保存安定性に優れ、なおかつ、ラベルとして貼付後長期間経過した場合であっても、剥離した際には容器に糊残りを生じない優れた糊残り抑止性を有する接着剤層を形成する水系エマルジョン型感熱接着剤を提供することにある。また、該感熱接着剤を用いた感熱ラベルおよび該ラベルを装着したラベル付き容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂、固体可塑剤および特定の化合物を必須成分とすることにより、接着剤中および接着剤層中の固体可塑剤が経時で再結晶化することを抑制でき、保存安定性に優れ、なおかつ、長期間糊残り抑止性が持続する感熱接着剤層を形成しうる水系エマルジョン型感熱接着剤が得られることを見出し、本発明を完成した。また、該感熱接着剤を用いた感熱ラベルおよびラベル付き容器が得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂、固体可塑剤、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、nは0〜2の整数、Xは第1族元素(水素を除く)または第2族元素、R1〜R8はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、下記式(2)
【化2】

(式中、nは0〜2の整数、Xは第1族元素(水素を除く)または第2族元素、R1〜R8はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、下記式(3)
【化3】

(式中、pは1〜3の整数、qは1〜20の整数、R9〜R14はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、下記式(4)
【化4】

(式中、rは6〜8の整数を表す)
から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする水系エマルジョン型感熱接着剤を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、前記式(1)〜(4)から選ばれた少なくとも一種の化合物を、固体可塑剤100重量部に対して0.3〜20重量部含有する前記の水系エマルジョン型感熱接着剤を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、固体可塑剤の平均粒径が0.1〜10μmである前記の水系エマルジョン型感熱接着剤を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、ラベル基材に接着剤層が積層されている感熱ラベルであって、接着剤層が前記の水系エマルジョン型感熱接着剤で形成されていることを特徴とする感熱ラベルを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、前記の感熱ラベルが容器に装着されているラベル付き容器を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水系エマルジョン型感熱接着剤は、ディレード性であるため、作業性、ラベルの貼付安定性に優れる。また、長期保存しても接着剤中の固体可塑剤が経時で再結晶化・再凝集しにくく、保存安定性に優れる。さらに、該接着剤より形成される接着剤層は、接着剤層中の固体可塑剤が経時で再結晶化しにくく、貼付後長時間経過した後にも糊残りを生じないためリサイクル性に優れる。また、固体可塑剤を微分散化状態を維持できるため、接着剤層の熱応答性および接着性を向上させることができる。従って、PETボトルなどに用いられる感熱ラベル用の感熱接着剤として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の水系エマルジョン型感熱接着剤(以下、「水系エマルジョン型感熱接着剤」を単に「感熱接着剤」又は「接着剤」と称する場合がある)は、熱可塑性樹脂、固体可塑剤、及び、上記式(1)〜(4)から選ばれた少なくとも一種の化合物(以下、「化合物(A)」と称する場合がある)を必須の構成成分として含有する。本発明の感熱接着剤で形成された接着剤層(以下、単に「感熱接着剤層」又は「接着剤層」と称する場合がある)は、熱により活性化してタックを発現し、かつ、一定期間粘着性を持続するディレード性を有する。上記特性を有する接着剤層は、加熱して活性化するまで常温ではほとんどタックがないため剥離紙が不要であり、環境適性や取扱性に優れている。また、加熱後放熱しても長時間粘着性が持続するためラベルの装着工程などにおいて取り扱いやすく、作業性及び生産性が向上する点においても有利である。ホットメルト型接着剤による接着剤層などのディレード性を有しない接着剤層の場合には、放熱すると接着性を失うので加熱に続いてすぐにラベル装着を行う必要があるため、作業性、生産性が低下する場合がある。
【0016】
本発明の感熱接着剤に用いられる熱可塑性樹脂(ベースポリマー)は、接着剤の主剤であり、接着剤の接着性、接着剤層の柔軟性、凝集力などの基本的特性に大きく影響する成分である。上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、感熱接着剤のベースポリマーとして一般的に用いられる熱可塑性樹脂を用いることが可能で、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エラストマーなどのゴム系樹脂などが挙げられる。
【0017】
上記オレフィン系樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのα−オレフィンの他、例えば、エチレン−酢酸ビニル系共重合体(EVA);エチレン−アクリル酸系共重合体(EAA);エチレン−メタクリル酸系共重合体(EMAA);エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のエチレン−アクリル酸エステル系共重合体;エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)等のエチレン−メタクリル酸エステル共重合体などのエチレン−カルボン酸系共重合体、エチレン−カルボン酸エステル系共重合体が含まれる。中でも、エチレン−カルボン酸系共重合体、エチレン−カルボン酸エステル系共重合体が好ましく、特にエチレン−酢酸ビニル系共重合体が好ましく用いられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
エチレン−酢酸ビニル系共重合体は、エチレンおよび酢酸ビニルを必須の単量体成分とする共重合体であり、本発明の効果を妨げない範囲内であれば、上記エチレン、酢酸ビニル以外の、共重合成分を用いてもよい。上記共重合成分としては、例えば、塩化ビニルなどのビニル系モノマー、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸などの不飽和無水カルボン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミドなどの不飽和アミド又はイミド;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸亜鉛などの不飽和カルボン酸塩などが挙げられる。これらの共重合成分は1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
上記ゴム系樹脂としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、アクリレート−ブタジエンゴム(ABR)などのブタジエン系ゴム、エチレンプロピレン(ジエン)ゴム(EPM、EPDM)などのオレフィン系ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられる。中でも、スチレン−ブタジエンゴム、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体などのブタジエン系ゴムが好ましく、最も好ましくは、スチレン−ブタジエンゴム(スチレン−ブタジエン共重合エラストマー)である。さらに、スチレン−ブタジエンゴムなどのブタジエン系ゴムは、反応性官能基を導入した変性物であってもよい。該反応性官能基としては、例えば、ポリエステルのエステル結合部分と反応または相互作用(水素結合など)する官能基等であり、カルボキシル基(カルボン酸無水物も含む)、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基などが挙げられる。中でも、接着性向上の観点から、ジカルボン酸無水物基(無水ジカルボン酸変性)が好ましく、マレイン酸無水物基(無水マレイン酸変性)が特に好ましい。なお、上記「変性」という場合には、「反応性官能基がポリマー主鎖にグラフト化により導入されたもの」及び「共重合により導入されたもの」の両方を含むものとする。
【0020】
上記アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル)を単量体成分として構成される樹脂である。アクリル系樹脂を構成する単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C1-12アルキルエステル等];(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物;2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル[好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-8アルキルエステル等]などが挙げられる。
【0021】
また、上記のほか、必要に応じて、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;エチレン等の重合性不飽和化合物を単量体成分として用いることもできる。これらの単量体成分は1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
上記アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸などのアクリル系樹脂;スチレン−(メタ)アクリル酸などのスチレン−アクリル系樹脂;酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸などの酢酸ビニル−アクリル系樹脂;エチレン−スチレン−(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル−スチレン−(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0023】
上記ポリエステル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、多塩基酸成分と多価アルコール成分とで構成される種々のポリエステルが挙げられる。
【0024】
上記多塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−スチルベンジカルボン酸、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、及びこれらの置換体等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ドコサン二酸、1,12−ドデカンジオン酸、及びこれらの置換体等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の脂環式ジカルボン酸などのジカルボン酸成分が挙げられる。また、必要に応じて、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸;安息香酸、ベンゾイル安息香酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸等の多価カルボン酸などを含んでもよい。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0025】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2,4−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;2,2−ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のビスフェノール系化合物のエチレンオキシド付加物、キシリレングリコール等の芳香族ジオールなどが挙げられる。また、必要に応じて、ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどを含んでもよい。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
上記ポリエステル系樹脂を水分散性とする場合には、スルホテレフタル酸などのスルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合してもよい。
【0027】
上記熱可塑性樹脂は市販品を用いることもできる。このような市販品としては、例えば、住友化学(株)「スミカフレックス」(EVA)、電気化学工業(株)「デンカEVAテックス」(EVA)、日本エイアンドエル(株)「ナルスター SRシリーズ」(スチレン−ブタジエンゴム)、「サイアテックス NAシリーズ」(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)などが挙げられる。
【0028】
上記熱可塑性樹脂は異なる樹脂を混合して用いてもよい。特に、アクリル系樹脂とオレフィン系樹脂、又は、エチレン−酢酸ビニル系共重合体とゴム系樹脂を併用する場合には、ラベル基材や容器材料として使用されるポリオレフィン系樹脂(特にポリプロピレン系樹脂)やポリエステル系樹脂(特にポリエチレンテレフタレート系樹脂)に対して優れた接着性を発揮しうるため好ましい。中でも、上記接着性の観点から、アクリル系樹脂とオレフィン系樹脂の混合比率は、固形分換算の重量比で、前者/後者=10/90〜90/10が好ましく、より好ましくは20/80〜80/20である。また、エチレン−酢酸ビニル系共重合体とゴム系樹脂の混合比率は、固形分換算の重量比で、前者/後者=20/80〜80/20が好ましく、より好ましくは25/75〜75/25である。ポリエステル系樹脂およびポリオレフィン系樹脂に対して特に優れた接着性を有する場合には、例えば、ポリオレフィン系樹脂からなるラベル基材に対する接着剤としても、ポリエステル系樹脂からなる容器に対する接着剤としても用いることができるため、ラベル製造工程において、異なる2種類の接着剤を用いる必要がなく、コスト面や生産性の観点で好適である。
【0029】
本発明の感熱接着剤に用いられる固体可塑剤は、常温では非粘着性であるが、加熱により融解して、接着剤の固化速度を調節し、ディレード性の付与、すなわち上記熱可塑性樹脂を可塑化させて粘着性を発現、持続させる役割を有する。このような固体可塑剤としては、公知の固体可塑剤を用いることが可能であり、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP:融点66℃)、フタル酸ジヒドロアビエチル、イソフタル酸ジメチル等のフタル酸エステル系化合物;三安息香酸トリメチロールエタン、三安息香酸トリメチロールプロパン(融点88℃)、三安息香酸グリセリド(融点73℃)、四安息香酸ペンタエリトリットなどの安息香酸エステル系化合物;八酢酸スクロース、ケテン酸トリシクロヘキシル、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピロネート)](融点77℃)、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(2,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](融点103℃)などの脂肪酸エステル系化合物;、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホン酸アミドなどのスルホン酸エステル系化合物;リン酸エステル系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、トリアゾール系化合物、ハイドロキノン系化合物などから選ぶことができる。中でも、DCHPや三安息香酸グリセリドが好ましく、特にDCHPが好ましく用いられる。
【0030】
上記固体可塑剤の融点は、特に限定されないが、50〜120℃がが好ましく、より好ましくは55〜110℃、さらに好ましくは60〜105℃である。融点が50℃未満ではブロッキングが発生しやすくなる場合があり、120℃を超えると、高温にまで加熱しないと接着性、ディレード性を発揮しないため、基材フィルムが収縮したり、高温の熱源が必要となる場合がある。
【0031】
上記固体可塑剤は、例えば、大阪有機化学工業(株)製「DCHP」などの市販品を用いることも可能である。
【0032】
上記固体可塑剤の平均粒径は、特に限定されないが、熱応答性や接着性を向上させる観点から、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.2〜5μm、さらに好ましくは0.3〜2μmである。平均粒径が10μmを超えると感熱応答性や接着性が劣る場合がある。なお、上記「平均粒径」とは、感熱接着剤中での平均粒子径(平均分散径)である。
【0033】
上記固体可塑剤の粒径は、例えば、ニーダー、コロイドミル、ビーズミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェイカー、サンドミル、ロールミルなどを用いて、固形分を粉砕し、水などの分散媒に分散させることで調節することができる。
【0034】
本発明の感熱接着剤において、上記熱可塑性樹脂と上記固体可塑剤の含有比率(固形分換算の重量比)は、前者/後者[熱可塑性樹脂の含有量(固形分)/固体可塑剤の含有量(固形分)]が70/30〜30/70の範囲にあることが好ましく、より好ましくは65/35〜35/65である。固体可塑剤の比率が上記範囲より少ない場合には感熱接着性やディレード性が低下する場合がある。一方、熱可塑性樹脂の比率が上記範囲より少ない場合には、ポリエステルやポリオレフィンなどの被着体に対する接着性が低下したり、接着剤の凝集力が低下して糊残りが生じやすくなる場合がある。
【0035】
また、上記上記熱可塑性樹脂と上記固体可塑剤の合計含有量(固形分)は、感熱接着剤の全固形分に対して、65重量%以上であることが好ましく、より好ましくは80重量%以上である。熱可塑性樹脂と固体可塑剤の合計量が65重量%未満では、接着力が低下する場合がある。
【0036】
本発明の感熱接着剤に用いられる下記式(1)〜(4)から選ばれた少なくとも一種の化合物(A)は、感熱接着剤中または感熱接着剤層中で、経時で固体可塑剤が再凝集や再結晶化することを抑制する役割を担う。これにより、長期保管中に感熱接着剤の感熱応答性が低下する、感熱ラベルの感熱接着剤層中で固体可塑剤が再結晶化して糊残りの原因となるなどの問題を防止することができ、感熱接着剤の保存安定性、糊残り抑止性が向上する。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0037】
上記式(1)中、nは0〜2の整数であり、好ましくは1である。Xは第1族元素(水素を除く)または第2族元素であり、好ましくはNa、K、Caである。R1〜R8はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基であり、好ましくは水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基である。なお、R1〜R8のうち、少なくとも2つ以上がアルキル基又はアリール基であることが好ましい。式(1)の化合物としては、例えば、下記式(5)
【化5】

で表される化合物が挙げられる。上記式(5)の化合物は、(株)ADEKA製、商品名「アデカスタブNA−11」として入手可能である。
【0038】
上記式(2)中、nは0〜2の整数であり、好ましくは1である。Xは第1族元素(水素を除く)または第2族元素であり、好ましくはNa、K、Caである。R1〜R8はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基であり、好ましくは水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基である。なお、R1〜R8のうち、少なくとも2つ以上がアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0039】
上記式(3)中、pは1〜3の整数であり、好ましくは2又は3である。qは1〜20の整数であり、好ましくは5〜15である。R9〜R14はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基であり、好ましくは水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基である。式(3)の化合物としては、例えば、下記式(6)、(7)
【化6】

【化7】

で表される化合物が挙げられる。上記式(6)の化合物は、花王(株)製、商品名「エマルゲンA−60」、「エマルゲンA−90」、「エマルゲンA−500」、上記式(7)の化合物は、花王(株)製、商品名「エマルゲンB−66」として入手可能である。なお、上記式(6)中、sは1〜20の整数であり、上記式(7)中、tは1〜20の整数である。
【0040】
上記式(4)中、rは6〜8の整数である。式(4)の化合物としては、例えば、下記式(8)
【化8】

で表されるα−シクロデキストリンや、下記式(9)
【化9】

で表されるβ−シクロデキストリンが挙げられる。
【0041】
化合物(A)としては、特に式(1)又は式(2)の化合物が好ましい。また、上記化合物(A)は、1種のみを用いてもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、式(1)の化合物と式(3)の化合物、又は、式(2)の化合物と式(3)の化合物を組み合わせて用いる場合に糊残り抑止性が特に良好となるため好ましい。
【0042】
上記の化合物(A)の含有量(固形分)は、固体可塑剤(固形分)100重量部に対して、0.3〜20重量部が好ましい。化合物(A)の含有量が0.3重量部未満では固体可塑剤の再結晶化を抑止する効果が小さく、保存安定性や糊残り抑止性が低下する場合があり、20重量部を超えると粘度が増加したり、接着性が低下したりする場合がある。なお、2種類以上の化合物(A)を用いる場合には、全ての化合物(A)の合計量が上記関係を満たすことが好ましい。なお、上記化合物(A)の含有量は、0.5重量部以上がより好ましく、さらに好ましくは1重量部以上である。また、15重量部以下がより好ましく、さらに好ましくは10重量部以下である。
【0043】
本発明における感熱接着剤には、必要に応じて、粘着付与剤を添加しても良い。粘着付与剤は、接着性を向上させる作用を示し、例えば、ロジン系樹脂(ロジン、重合ロジン、及び水添ロジン等のロジン類、及びロジン誘導体(ロジン類をグリセリンやペンタエリスリトール等の多価アルコールでエステル化したロジンエステル系化合物、ロジン類にフェノールやレゾール型フェノール樹脂などの変性フェノールが付加されたロジンフェノール系化合物など)、樹脂酸ダイマーなど)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂など)、石油樹脂(脂肪族系、芳香族系、脂環族系)、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。粘着付与剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なかでも、テルペン系樹脂、ロジン誘導体(特にロジンフェノール系化合物)などが好ましく用いられる。
【0044】
上記粘着付与剤は、市場でも入手可能であり、例えば、ヤスハラケミカル(株)製「YSポリスター」、荒川化学(株)製「パインクリスタル」、「タマノルE−200NT(軟化点150℃)」、ヤスハラケミカル(株)製「ナレットR−1050(軟化点105℃)」等が挙げられる。
【0045】
上記粘着付与剤(固形分)の含有量は、熱可塑性樹脂と固体可塑剤の合計量(固形分)100重量部に対し、0〜40重量部が好ましく、より好ましくは3〜35重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。粘着付与剤の含有量が多すぎると糊残りが生じたり、粘着力が低下する場合があり、少なすぎると添加の効果が得られない場合がある。
【0046】
本発明では、感熱接着剤にブロッキング防止剤等を添加してもよい。このようなブロッキング防止剤には、例えば、シリコーンオイル、水溶性有機化合物、炭酸カルシウム、クレイ、タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、アルミナゾル、コロイダルシリカなどの無機粒子;パラフィン、ポリプロピレン(PP)ワックス、ポリエチレン(PE)ワックス、アクリルビーズ、脂肪酸アマイド、フッ素ワックスなどの有機化合物からなる粒子等を利用できる。
【0047】
本発明の感熱接着剤は、上記の他に、必要に応じて、乳化剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤などの公知の添加剤を含有してもよい。
【0048】
本発明における感熱接着剤において、固形分の合計含有量は、特に限定されないが、接着剤の総重量(分散媒(水等)なども含めた重量)に対して、30重量%以上であることが好ましく、より好ましくは35〜80重量%、さらに好ましくは40〜70重量%である。固形分の合計含有量が30重量%未満では、乾燥性が悪く、また、良好な接着性、感熱性が得られない場合がある。
【0049】
本発明における感熱接着剤が接着性(粘着性)を発現する温度、すなわち感熱接着剤の活性化温度は、好ましくは50〜120℃程度、さらに好ましくは60〜110℃程度である。活性化温度が50℃未満の感熱接着剤を用いた場合は、ラベルをロール状で保管する時などにラベル同士がブロッキングしやすく、活性化温度が高すぎると加工時にラベル基材が収縮、変形したり、高温の熱源が必要となる場合がある。上記範囲の活性化温度を有する感熱接着剤を用いれば、常温ではブロッキングが生じないため取り扱いが容易であり、感熱ラベルの被着体への装着が容易にできる。該活性化温度は、熱可塑性樹脂や固体可塑剤、粘着付与剤などの各成分の種類や量、その他の添加物等を適宜選択することにより調整できる。なお、本発明において、接着剤層の活性化温度とは、JIS K 6854−3に準じて測定したときに0.5N/15mm以上の接着強度を生じる温度である。感熱接着剤は、一般に、上記活性化温度より高い温度で加熱されることにより、粘着性を発現する。
【0050】
本発明における感熱接着剤は、上記構成成分(熱可塑性樹脂、固体可塑剤、化合物(A)やその他の添加剤など)を用いて公知の方法で製造することができる。感熱接着剤は、構成成分である熱可塑性樹脂及び固体可塑剤が、平均粒径(分散径)が10μm以下程度の微粒子の状態で、分散媒に分散された水系エマルジョンの形態で用いられる。固体可塑剤は、前述のとおり、例えば、ニーダー、コロイドミル、ビーズミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェイカー、サンドミル、ロールミルなどを用いて、固形分を上記の好ましい範囲の粒径に粉砕し、分散媒に分散させた状態で用いられる。また、粘着付与剤は、水分散体もしくは水系エマルジョンのものが用いられる。感熱性粘着剤はこれらを混合撹拌して調製できる。前記分散媒としては、水系であれば特に限定されないが、例えば水;炭素数1〜4の低級アルコールなど水溶性有機化合物;及びこれらの混合物を利用できる。前記エマルジョンには、必要に応じて、乳化剤、分散剤、消泡剤、沈降防止剤、安定剤等が添加されてもよい。
【0051】
感熱接着剤は、例えば、熱可塑性樹脂のエマルジョン、固体可塑剤のエマルジョン、化合物(A)、粘着付与剤(エマルジョン)及びその他の構成成分を、撹拌混合槽等の容器へ同時に投入するか、逐次又は連続して撹拌下に投入し、均一に撹拌混合することにより得ることができる。また、これらの成分は同時にエマルジョン化してもよい。
【0052】
本発明の感熱接着剤においては、化合物(A)の効果により、接着剤中に分散した固体可塑剤が経時で再凝集や再結晶化して大粒径化することが抑制されている。このため、固体可塑剤の大粒径化に伴う熱応答性や接着性の低下がなく、接着剤の保存安定性が向上する。一般に、固体可塑剤の粒径は小さいほど、即ち、微分散であるほど接着剤層の熱応答性や接着性は向上するが、保存時に凝集を起こしやすくなり、保存安定性が低下する傾向にある。本発明によれば、固体可塑剤を小粒径化(微分散化)した場合であっても、再凝集や再結晶化が生じにくく良好な保存安定性を維持できるため、熱応答性、接着性と保存安定性を高いレベルで両立させることが可能となる。
【0053】
本発明の感熱ラベルは、ラベル基材に、上記感熱接着剤で形成された接着剤層が少なくとも1層積層された層構成を有している。接着剤層は、上記感熱接着剤を、ラベル基材の少なくとも片面に、例えばバーコーター、グラビアコーター、フレキソコーター、ロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、刷毛塗り、ダイコートなどの公知の塗布方法によって塗布・乾燥することにより形成できる。特にグラビアコーター(グラビア印刷)やフレキソコーター(フレキソ印刷)を用いると、所望の箇所に部分的に接着剤層を設けることが可能であり好ましい。
【0054】
接着剤層の厚みとしては、接着性や外観、コスト等を考慮して適宜選択すればよく特に限定されないが、乾燥後の厚みが1〜30μmが好ましく、より好ましくは5〜15μmである。接着剤層の厚みが30μmより厚い場合、凝集破壊が生じ糊残りを生じ易くなったりする場合や、乾燥性が低下し接着剤層塗布時の生産性が低下する場合があり、1μmより薄い場合には、接着性が低下する場合がある。なお、上記接着剤層の厚みは、マイクロゲージや3次元顕微鏡により測定することができる。
【0055】
本発明の感熱ラベルは、接着剤層が上記構成の感熱接着剤で形成されているため、加熱により速やかに粘着性を発現できる。また、接着剤層中の固体可塑剤が経時で再結晶化しにくい。このため、結晶部分での粘着剤層の凝集力が低下することなどに起因する糊残りが生じにくく、さらにその効果が長時間持続する。また、粘着剤層の加熱による可塑化効果も長時間持続するため、粘着剤層形成後長期保管した後にも優れた感熱接着性を発揮しうる。さらに、上記のように固体可塑剤を微分散化させた場合には、感熱応答性および接着性が特に向上する。
【0056】
本発明の感熱ラベルにおけるラベル基材は、耐熱性、取り扱い性、印刷適性などを考慮して適宜選択でき、プラスチックフィルム、プラスチックシート;コート紙等の耐水性を有する紙、和紙、合成紙等の紙;アルミニウム箔等の金属箔;不織布やこれらの複合体などを用いることができる。中でも、強度などの物性や取り扱い性などの観点から、プラスチックフィルムが好ましく、中でも透明プラスチックフィルムが好ましい。前記プラスチックフィルムとしても、要求物性、用途、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)などのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体などのポリスチレン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アラミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、アクリル等の樹脂を素材とするフィルムが挙げられる。中でも、本発明の感熱接着剤層との接着性、コスト、取り扱い性、支持体として強度や柔軟性等の観点から、ポリエステル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂が好ましく、さらに好ましくはポリオレフィン系樹脂である。これらは単独で用いてもよいし、2以上を混合、共重合、積層などして用いてもよい。
【0057】
上記の中でも、特に、PETボトルなどの比重1以上の容器に装着するラベルのラベル基材は、比重1未満の素材、例えばポリオレフィン系樹脂、好ましくはポリプロピレン系樹脂等で構成されていることが好ましい。このような場合には、ラベルを装着した容器の使用後、比重差を利用することにより該容器本体(又はその粉砕物)と簡単に分離でき、ラベル及び容器本体のリサイクルが容易となる。このとき、熱アルカリ水を用いると、ラベルの剥離と分離が同時にでき好ましい。
【0058】
上記ラベル基材として用いられるプラスチックフィルムは、単層フィルムであってもよいし、要求物性、用途などに応じて、複数のフィルム層を積層した積層フィルムであってもよい。また、積層フィルムの場合、異なる樹脂からなるフィルム層を積層していてもよい。例えば、中心層と表層を有する3層又は5層積層フィルムで、中心層がポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂からなり、表層がポリエステル系樹脂からなるフィルム等であってもよい。
【0059】
また、ラベル基材として用いられるプラスチックフィルムは、要求物性、用途などに応じて、無延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムのいずれを用いてもよい。例えば、巻き付けにより装着又は加圧に貼着するラベルのラベル基材には、無延伸フィルム又は二軸延伸フィルム等、非熱収縮性フィルムが用いられ、特に二軸延伸されたポリプロピレンフィルム(OPP)及びPETフィルム等が用いられる。また、シュリンクラベル等の熱収縮性を有するラベルのラベル基材(熱収縮性フィルム)には、少なくとも一方向に延伸処理が施されたフィルムが用いられる。
【0060】
ラベル基材の厚みは、機械的強度、ラベルの取扱性などを損なわない範囲で適宜選択できるが、例えば5〜100μm程度、好ましくは8〜60μm程度である。巻き付け装着又は加圧により貼着するラベルのラベル基材が無延伸フィルム又は二軸延伸フィルムである場合には、一般には5〜60μm程度、好ましくは8〜50μm程度である。シュリンクラベルのラベル基材(熱収縮性フィルム)である場合には、一般には20〜100μm程度、好ましくは25〜60μm程度の厚みである。
【0061】
ラベル基材の熱収縮率は、ラベルの種類によっても異なり、特に限定されないが、ラベル基材が非収縮性フィルムの場合、90℃の熱水に5秒間浸漬の条件で、MD方向、TD方向共に5%未満が好ましく、より好ましくは1%未満である。前記熱収縮率が5%以上であると、ラベルが貼着時の熱により収縮して皺やずれを生じることがある。一方、ラベル基材が熱収縮性フィルムである場合、主にMD方向に延伸された熱収縮性フィルム(TD方向よりMD方向に大きく収縮するフィルム)を用いることが好ましく、当該熱収縮性フィルムの熱収縮率としては、90℃の熱水に10秒間浸漬の条件で、例えばMD方向10〜60%、TD方向は−3〜20%程度である。熱収縮性フィルムを巻き付けラベルとして使用する場合、使用時はMD方向を容器の周方向として巻き付けられて用いられる。また、TD方向に大きく収縮するフィルムを用いてもよく、その場合にはTD方向が容器の周方向として使用される。
【0062】
上記ラベル基材は、市販品を用いることも可能である。市販のプラスチックフィルムとしては、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとしては、東レ(株)製「ルミラー」、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムとしては、東レ(株)製「トレファン」、グンゼ(株)製「A1」、東セロ(株)製「U−1」などを用いることが可能である。
【0063】
本発明の感熱ラベルには、上記接着剤層以外にも印刷層が設けられていることが好ましい。上記印刷層は、商品名やイラスト、取り扱い注意事項等を表示した層であり、凸版輪転印刷、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷やフレキソ印刷等の慣用の印刷方法により形成することができる。本発明では、印刷層と接着剤層を一工程で形成でき、印刷速度が速く、生産効率を向上しうる点で、グラビア印刷、フレキソ印刷が好ましく用いられる。印刷層は、例えば顔料、バインダー樹脂からなり、前記バインダー樹脂としては、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系、セルロース系、ニトロセルロース系などの一般的な樹脂が使用できる。印刷層の厚みとしては、特に制限されず、例えば0.1〜10μm程度である。
【0064】
本発明の感熱ラベルにおいて、接着剤層、印刷層はラベル基材の全面に設けられている必要はなく、ラベル基材の一部に設けられていてもよい。中でも、接着剤層は、全面に設けられている場合、または、ラベルの、巻き付けた後に容器の周方向となる方向の両端となる部分に、巻き付けた後に容器の高さ方向となる方向に帯状に設けられている場合が好ましい。後者のように、接着剤層をラベル幅方向の両端部に帯状に設ける場合には、ラベルの一端部を容器に貼り付け、ラベルを巻き回して、他端部を前記一端部上のラベル表面に重ね合わせて貼り合わせて装着するタイプのラベル(巻き付けラベル)として好ましく用いられる。
【0065】
接着剤層と印刷層の積層構成は、特に限定されず、印刷層の上に接着剤層が設けられていてもよいし(ラベル基材/印刷層/接着剤層)、ラベル基材の上に接着剤層のみが設けられた部分(ラベル基材/接着剤層)と印刷層のみが設けられた部分(ラベル基材/印刷層)が別々に存在してもよく、また、それらの積層構成が組み合わせられていてもよい。特に、ラベル基材の一方の面側に印刷層が積層され、反対面側に接着剤層が積層された、印刷層/ラベル基材/接着剤層からなる層構成のラベルが好ましく用いられる。なお、本発明の効果を発揮する観点から、感熱ラベルは、接着剤層が最表層となる部分が少なくとも一部分含む層構成を有している。接着剤層が最表層となる部分がない場合には、本発明の効果を発揮することができない。特に、本発明の感熱ラベルは、接着剤層が最表層となる部分を、少なくとも隔離した2箇所有していることが好ましい。
【0066】
なお、本発明の感熱ラベルには、印刷層とラベル基材の密着性向上の観点から、印刷層とラベル基材の間にプライマーコート層を設けてもよい。該プライマーコート層は公知のプライマー、例えば、アクリル系プライマー、ポリエステル系プライマー、イソシアネート系プライマー(二液混合型プライマー等)などで形成できる。プライマーコート層の厚みは、透明性やラベルの取り扱い性を損なわない範囲で適宜選択でき、例えば、0.1〜3.0μmが好ましい。
【0067】
また、本発明の感熱ラベルには、印刷層を保護したり、滑り性、光沢を付与する観点から、オーバーコート層が設けられてもよい。オーバーコート層は、通常容器に装着した際に外側(容器に接しない側)に設けられ、透明な紫外線硬化型ニス、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、必要に応じて滑剤を添加したシリコーン樹脂等をコーティング、印刷等することにより形成できる。なお、オーバーコート層は接着剤層と接触する領域を避けて形成されていることが好ましい。オーバーコート層の厚みは、特に限定されないが、0.1〜3.0μmが好ましい。
【0068】
本発明の感熱ラベルには、前記のラベル基材、印刷層、接着剤層やプライマーコート層、オーバーコート層の他にも、コーティング層、樹脂層、アンカーコート層、オーバーラミネート層などを設けることができ、不織布、紙、プラスチック等の層を必要に応じて設けてもよい。
【0069】
本発明の感熱ラベルは、固体可塑剤の平均粒径が小さい場合には、特に良好な接着性を有する。接着性は、活性化温度以上(例えば活性化温度+5〜+20℃)に加熱することにより活性化させたラベルを、容器やラベル基材、または、容器やラベル基材の表面と同様の素材及び物性を有するプラスチックシートに接着したサンプルについて、JIS K 6854−3(T型剥離)に準じた試験により(剥離速度300mm/min)、容器表面に対する接着強度やラベル基材に対する接着強度として評価できる(サンプルの作製条件などは後述の「糊残り抑止性」の試験方法と同様である)。前記方法に基づく接着剤層のプラスチックシートに対する接着強度は、0.5〜3N/15mmが好ましく、より好ましくは0.7〜3N/15mmである。前記接着強度が0.5N/15mm未満の場合には、接着性が不足し、感熱ラベルを容器に密着できないなどの装着不良が生じやすい。一方、3N/15mmを超えると、使用後に感熱ラベルを容器から剥離することが困難になったり、糊残りが生じることがあり好ましくない。上記の中でも、容器に用いられる素材(特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET))に対する接着強度およびラベル基材に用いられる素材(特に好ましくはポリプロピレン(PP))に対する接着強度が上記範囲にあることが好ましい。また、初期の接着力(ラベルを接着した直後の接着力)及び経時後の接着力(例えば、ラベルを接着した後、23℃、55%RHの環境下で3週間保管後の接着力)の両方が上記範囲にあることが好ましい。
【0070】
本発明の感熱ラベルは、被着体への貼付後、長時間経過した後も良好な糊残り抑止性を有する。糊残り抑止性は、容器、または、容器表面と同じ素材及び物性のプラスチックシートを用いて上記T型剥離試験に準じてラベルを貼付、剥離した後、プラスチックシートへの糊残りの有無を目視で観察することにより評価できる(詳細は後述の試験方法による)。通常、固体可塑剤を添加しディレードタック性を付与した感熱接着剤層は、経時で接着剤層中の固体可塑剤が再結晶化するため結晶部分で凝集力が低下して、糊残りを生じやすくなるが、本発明においては、化合物(A)の添加により接着剤層中の固体可塑剤が結晶化が抑制されるため、経時での糊残りの増加が生じず、ディレードタック性と糊残り抑止性の持続性を両立させることができる。
【0071】
本発明の感熱ラベルは、接着剤層を被着体に貼り付けて利用することができる。被着体としては、特に限定されず、プラスチック、ガラス、金属などの何れであってもよいが、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなるプラスチックを素材とするものが好ましい。なかでも、PET等のポリエステル系樹脂を素材とする被着体が好ましい。
【0072】
上記被着体としては、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳瓶、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などの容器が含まれる。容器の形状は、特に限定されず、円筒状、角形のボトルや、カップタイプなど様々な形状が含まれる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなるプラスチック製容器が好ましく、なかでもポリエステル系樹脂製容器が好ましい。
【0073】
本発明の感熱ラベルに用いられる感熱接着剤は、接着性と糊残り抑止性を兼ね備えるため、ラベルの一端を被着体に直接接着後、被着体に巻き付け、他端をラベルの一端部分上(ラベル表面)に接着する巻き付けラベルとして好ましく用いることができ、この用途に用いる場合、ボトルに接着する側に用いる接着剤(優れた接着性、糊残り抑止性を要求される)としても、ラベル表面に接着する側に用いられる接着剤(優れた接着性、易剥離性を要求される)のどちらの接着剤としても使用できる。このため、ラベル製造工程において、異なる2種類の接着剤を用いる必要がなく、コスト面や生産性の観点で好適である。本発明の感熱接着剤は、特に、ポリオレフィン系樹脂からなるラベル基材を有する感熱ラベルとして用い、ポリエステル系樹脂からなる容器に装着する場合に好ましく用いることができる。
【0074】
本発明のラベル付き容器は、本発明の感熱ラベルが、上記容器に装着されてなる。感熱ラベルは容器の全表面に装着されていてもよく、一部に装着されていてもよい。容器への感熱ラベルの装着は公知乃至慣用の方法で行うことができる。ラベルの装着は、例えば、感熱ラベルの接着剤層側の面を容器表面に重ね、ラベル基材側から熱板を押し当てたり、加熱ドラムへ感熱ラベルをラベル基材側から吸引させ、ドラムからの熱又は赤外線等の熱源により、接着剤層へ熱をあてることにより接着剤層を活性化させた後、加圧により容器に貼着するなどの方法で、通常、ラベラー(ラベル自動貼付機:例えば、特開平8−58755号公報、特開平11−321831号公報、特開2000−25725号公報に記載されているものが使用できる)を使用して行われる。加熱温度は、接着剤層の活性化温度に応じて適宜選択され、例えば70〜150℃が好ましく、より好ましくは80〜120℃である。
【0075】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)結晶化抑止性(固体可塑剤エマルジョン)
実施例及び比較例で得た固体可塑剤エマルジョンを、40℃の条件下、4日間保管し、保管後のエマルジョン中の固体可塑剤の平均粒径(平均粒子径)を、レーザー回折法で観察した。なお、測定には日機装(株)MT3300EXIIを用いた。
測定サンプルの平均粒径が、比較例1の固体可塑剤エマルジョンにおける平均粒径未満の場合には、結晶化抑止性(保存安定性)良好(○)と判断し、比較例1の固体可塑剤エマルジョンにおける平均粒径以上の場合には、結晶化抑止性(保存安定性)不良(×)と判断した。
上記固体可塑剤エマルジョンの結晶化抑止性(保存安定性)は、該固体可塑剤エマルジョンを用いた水系エマルジョン型感熱接着剤の結晶化抑止性(保存安定性)を表すモデルである。なお、水系エマルジョン型感熱接着剤自体の結晶化抑止性も上記と同様の方法で測定できる。
【0076】
(2)糊残り抑止性(長期保存後)
実施例及び比較例で得た感熱ラベルより、幅15mm×長さ40mmの短冊状の試験片を作製した。当該試験片の接着剤層側の表面を、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器(東洋製罐(株)製)に、接着面積:10mm(剥離方向)×15mm(幅方向)、温度100℃、圧力0.10MPa、時間0.5秒の条件下で、熱板で圧着した。23±2℃、55±15%RHの環境下、3週間保管した後、容器を切開して、T型剥離試験に用いられる形状のサンプル(短冊状の感熱ラベルと短冊状の容器部材が貼り合わされたサンプル)とし、測定に用いた。
引張試験機(島津製作所製、商品名「オートグラフ」)を用い、上記の感熱ラベルと容器部材の貼付サンプルについて、JIS K 6854−3に準じた方法でT型剥離(剥離速度300mm/min)を行った。
上記剥離後の容器部材(PET)の表面への糊残りの有無を目視観察し、以下の基準で評価した。
糊残りが見られなかった : 糊残り抑止性良好(○)
僅かに糊残りが見られた(貼付面積の10%未満) : 使用可能レベル(△)
糊残りが多く見られた(貼付面積の10%以上) : 糊残り抑止性不良(×)
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例、比較例の各成分の配合量(含有量)、評価結果を表1に示す。なお、表中、各成分の配合量はいずれも、それぞれの成分の固形分(不揮発分)の重量部で表す。
【0078】
実施例1
(固体可塑剤エマルジョン)
表1の配合量に従い、フタル酸ジシクロヘキシル(DCHP)(大阪有機化学工業(株)製)25重量部(固形分換算)を、ビーズミルを用いて、固体可塑剤の粒子を小さくしながら水に分散させ、DCHPの水分散液(固形分濃度50重量%)とした。次いで、上記式(1)で表される化合物((株)ADEKA製、商品名「アデカスタブ NA−11」1.5重量部(固形分換算)を添加、分散して、固体可塑剤エマルジョン(水分散液)を得た。該固体可塑剤エマルジョン製造直後の固体可塑剤の平均粒径(分散径)は0.8μmであった。
この固体可塑剤エマルジョンについて、結晶化抑止性を評価した。表1に示すように、得られた固体可塑剤エマルジョンは、結晶化抑止性が良好で優れた保存安定性を有していた。なお、40℃の条件下、4日間保管後の固体可塑剤の平均粒径は1.0μmであった。
(水系エマルジョン型感熱接着剤)
表1の配合量に従い、熱可塑性樹脂として、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂エマルジョン(住友化学(株)製、商品名「スミカフレックス 900HL」)12.5重量部(固形分換算)およびカルボキシル変性スチレン−ブタジエンラテックス(日本エイアンドエル(株)製、商品名「ナルスター SR−100」)12.5重量部(固形分換算)を、上記固体可塑剤エマルジョンと混合して、本発明の水系エマルジョン型感熱接着剤(固形分濃度:53重量%)を得た。なお、固体可塑剤エマルジョンは製造直後のものを用いて接着剤を作製した。
【0079】
(感熱ラベル)
ラベル基材として、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東レ(株)製、商品名「トレファン」、厚み50μm)を用い、印刷インキとして、ウレタン系溶剤型白インキ(大日精化工業(株)製)を使用して、感熱ラベルを作製した。
上記ラベル基材の一方の面に、上記印刷インキをグラビア印刷により印刷して印刷層(厚み2μm)を形成した。続いて、ラベル基材の一方の面(印刷層側の面)の両端に、上記で得られた感熱接着剤をグラビア印刷により塗布して接着剤層(厚み10μm)を形成し、感熱ラベルを得た。
表1に示すように、得られた感熱ラベルは、優れた糊残り抑止性を有していた。
【0080】
実施例2〜6
表1のとおり、化合物(A)の種類、配合量を表1のとおり変更し、実施例1と同様にして、固体可塑剤エマルジョン、水系エマルジョン型感熱接着剤および感熱ラベルを作製した。実施例3、4では2種類の化合物(A)を混合して用いた。なお、該固体可塑剤エマルジョンの製造直後の固体可塑剤の平均粒径は、実施例1と同じであった。
表1に示すように、得られた固体可塑剤エマルジョン、水系エマルジョン型感熱接着剤および感熱ラベルは、優れた特性を有していた。
【0081】
比較例1
表1に示すように、化合物(A)を用いない以外は、実施例1と同様にして、固体可塑剤エマルジョン、水系エマルジョン型感熱接着剤および感熱ラベルを作製した。なお、該固体可塑剤エマルジョンの製造直後の固体可塑剤の平均粒径は、実施例1と同じであった。
しかし、比較例1で得られた固体可塑剤エマルジョンは、40℃の環境下、4日間保管後の固体可塑剤の平均粒径が2.2μmと実施例1と比べて粗大化しており、結晶化抑止性(保存安定性)が劣っていた。
また、表1に示すように、得られた感熱ラベルは、糊残り抑止性が劣っていた。
【0082】
比較例2〜10
表1に示すように、本発明の化合物(A)以外の化合物を用いた以外は、実施例2と同様にして、固体可塑剤エマルジョン、水系エマルジョン型感熱接着剤および感熱ラベルを作製した。該固体可塑剤エマルジョンの製造直後の固体可塑剤の平均粒径は、実施例1と同じであった。
表1に示すように、得られた固体可塑剤エマルジョン、水系エマルジョン型感熱接着剤および感熱ラベルは、結晶化抑止性(保存安定性)、糊残り抑止性が劣っていた。
【0083】
上記評価に加えて、実施例1と比較例1については、得られた水系エマルジョン型感熱接着剤についても、結晶化抑止性の比較を行った。それぞれの感熱接着剤を、40℃の環境下、4日間保管し、保管後の接着剤中の固体可塑剤の平均粒径の比較を行った。結果、固体可塑剤エマルジョンの結晶化抑止性が良好であった実施例1は、水系エマルジョン型感熱接着剤の状態においても、固体可塑剤の平均粒径は比較例1と比べて小さく、結晶化抑止性が優れていることがわかった。
【0084】
また、実施例1〜6で得られた感熱ラベルを、その一端部をPETボトル(東洋製罐製)表面に重ね、ラベル基材側から熱板(温度100℃)を押し当てることにより接着剤層を活性化し圧着した後、感熱ラベルをボトルに巻回して、他端部を一端部に重ねて、ラベル基材側から熱板を押し当てることにより接着剤層を活性化し圧着することによりラベル付き容器を得た。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に用いた熱可塑性樹脂、固体可塑剤、化合物(A)及び化合物(A)以外の化合物の詳細は以下のとおりである。
[熱可塑性樹脂]
スミカフレックス900HL : 住友化学(株)製、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂エマルジョン(固形分濃度:60%)
ナルスターSR−100 : 日本エイアンドエル(株)製、カルボキシル変性スチレン−ブタジエンラテックス(固形分濃度:51%)
[固体可塑剤]
DCHP : 大阪有機化学工業(株)製、フタル酸ジシクロヘキシル
[化合物(A)]
アデカスタブ NA−11 : (株)ADEKA製、上記式(1)の化合物
エマルゲン A−60 : 花王(株)製、上記式(3)の化合物
α−シクロデキストリン : 和光純薬工業(株)製、上記式(4)の化合物
[化合物(A)以外の化合物]
ゲルオール MD : 新日本理化(株)製、以下の構造式を有する造核剤
【化10】

レオドール SP−O10V : 花王(株)製、以下の構造式を有する界面活性剤(下記の左右の化合物の混合物)
【化11】

Al−PTBBA : 日東化成工業(株)製、以下の構造式を有する造核剤
【化12】

アデカスタブ HP−10 : (株)ADEKA製、以下の構造式を有する酸化防止剤
【化13】

IRGANOX 1425WL : チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、以下の構造式を有する酸化防止剤
【化14】

IRGANOX 1330 : チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、以下の構造式を有する酸化防止剤
【化15】

IRGAFOS 12 : チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、以下の構造式を有する安定剤
【化16】

ペレックスSS−L : 花王(株)製、以下の構造式を有する界面活性剤
(上記式中、Rはドデシル基である。)
【化17】

安息香酸ナトリウム : 和光純薬工業(株)製、以下の構造式を有する保存料
【化18】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、固体可塑剤、及び、下記式(1)
【化1】

(式中、nは0〜2の整数、Xは第1族元素(水素を除く)または第2族元素、R1〜R8はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、下記式(2)
【化2】

(式中、nは0〜2の整数、Xは第1族元素(水素を除く)または第2族元素、R1〜R8はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、下記式(3)
【化3】

(式中、pは1〜3の整数、qは1〜20の整数、R9〜R14はそれぞれ水素原子、アルキル基又はアリール基を表す)、下記式(4)
【化4】

(式中、rは6〜8の整数を表す)
から選ばれた少なくとも一種の化合物を含有することを特徴とする水系エマルジョン型感熱接着剤。
【請求項2】
前記式(1)〜(4)から選ばれた少なくとも一種の化合物を、固体可塑剤100重量部に対して0.3〜20重量部含有する請求項1に記載の水系エマルジョン型感熱接着剤。
【請求項3】
固体可塑剤の平均粒径が0.1〜10μmである請求項1または2に記載の水系エマルジョン型感熱接着剤。
【請求項4】
ラベル基材に接着剤層が積層されている感熱ラベルであって、接着剤層が請求項1〜3のいずれかの項に記載の水系エマルジョン型感熱接着剤で形成されていることを特徴とする感熱ラベル。
【請求項5】
請求項4に記載の感熱ラベルが容器に装着されているラベル付き容器。

【公開番号】特開2009−143988(P2009−143988A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320132(P2007−320132)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】