説明

水系メーキャップ化粧料

【課題】 本発明は、水系化粧料に求められるみずみずしい使用感やさっぱりとした仕上がり感、伸び拡がりの軽さを損なうことなく、化粧持続性が良好で、きしみ感や、白浮きを改善し、しかも経時安定性に優れる水系メーキャップ化粧料を提供するものである。
【解決手段】 本発明は、次の成分(a)〜(e);(a)カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体、ペクチン及びジェランガムから選ばれる1種又は2種以上の水系粘性付与剤、(b)平均粒径が2〜50μmで吸油量が60ml/100g以上である多孔質粉体、(c)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体、(d)分散剤、(e)水、を配合したことを特徴とする水系メーキャップ化粧料に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系化粧料に求められるみずみずしい使用感やさっぱりとした仕上がり感、伸び拡がりの軽さを損なうことなく、化粧持続性が良好で、きしみ感や、白浮きを改善し、しかも経時安定性に優れる水系メーキャップ化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水系の化粧料は、みずみずしい使用感を有することから、スキンケア製品、メーキャップ製品問わず、幅広く用いられている。その中でもメーキャップ化粧料は、一般的に顔料を含有するが、水中に顔料を均一に分散させることは難しく、界面活性剤を用いて分散性を向上させたり、水溶性高分子を用いて系の粘度を調整して分散性を向上させたりしていた。しかし、凝集性の強い粉体は界面活性剤を用いても分散が向上しなかったり、水溶性高分子を用いた水性ゲル化剤の中には、粉体を配合することで、ゲルの収縮を生じ、経時安定性が悪化したり、界面活性剤や水溶性高分子のベタつきを生じ、使用感が悪化することがあった。
これらの点を改善する技術として、水溶性高分子、平均粒径が2〜50μmで吸油量が60ml/100g以上である多孔質粉体、フッ素化合物処理粉体、分散剤及び/又は水溶性溶媒、水を配合する技術が開発されてきた(例えば、特許文献1参照)。
しかし、前記の技術では、化粧料を塗布する際に、フッ素化合物処理粉体特有のきしみ感を生じる場合があった。さらに、酸化チタンや酸化亜鉛等の白色顔料は凝集性が高いため、水中で凝集が起こり、外観にその白さは表われないが、塗布動作により凝集物が崩壊し、化粧料の外観と比べて、肌上で白さが浮き立ってしまう、いわゆる白浮きする場合があった。また、非乳化型水系二層メーキャップ化粧料においては、水溶性高分子を特定して、親水性煙霧状無水ケイ酸、皮膜形成剤、水溶性塩、疎水化処理板状粉体とを組み合わせることで、きしみ感を改善する技術が研究されてきた(例えば、特許文献2参照)。
一方、特定のフッ素化合物を用いることにより、湿分や皮膚からの油分によって塗布色がかわらないことは知られているが(例えば、特許文献3参照)、特に白浮きやきしみ感防止については、全く知られていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2000−119158号公報
【特許文献2】特開2007−119410号公報
【特許文献3】特表2003−518024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、二層型のメーキャップ化粧料においては、きしみ感を解決する技術が検討されてきたが、顔料を含む粉体を水系に均一に分散させて、しかもきしみ感や白浮きを防止する技術は開発されてこなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、フッ素化合物処理粉体はきしみ感が生じると考えられていたが、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで処理した粉体を用いて、特定の多孔質粉体と組合せることで、水系粘性付与剤を溶解又は膨潤した水中に分散剤を用いて分散させた水系メーキャップ化粧料が、きしみ感や白浮きを防止することができ、しかも経時安定性に優れ、且つ、水系化粧料に求められるみずみずしい使用感やさっぱりとした仕上がり感、伸び拡がりの軽さを損なうことなく、化粧持続性が良好あることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(a)〜(e);
(a)カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体、ペクチン及びジェランガムから選ばれる1種又は2種以上の水系粘性付与剤
(b)平均粒径が2〜50μmで吸油量が60ml/100g以上である多孔質粉体
(c)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体
(d)分散剤
(e)水
を配合したことを特徴とする水系メーキャップ化粧料に関するものである。
【0007】
また、本発明は、成分(a)の水系粘性付与剤が、カラギーナン、ローカストビーンガム及びキサンタンガムから選ばれる1種又は2種以上の水系粘性付与剤であることを特徴とする水系メーキャップ化粧料である。
【0008】
また、本発明は、成分(d)分散剤が、HLB12以上の非イオン性界面活性剤であることを特徴とする水系メーキャップ化粧料である。
【0009】
また、本発明は、成分(c)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体の処理される粉体が白色顔料であることを特徴する水系メーキャップ化粧料である。
【0010】
また、本発明は、成分(c)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体の配合量が0.3〜10質量%(以下単位「%」と示す。)であることを特徴とする水系メーキャップ化粧料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水系メーキャップ化粧料は、水系化粧料に求められるみずみずしい使用感やさっぱりとした仕上がり感、伸び拡がりの軽さを損なうことなく、化粧持続性が良好で、きしみ感や、白浮きを改善し、しかも経時安定性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水系とは、連続相が水であり、水に粉体を分散した単純水系や水中油型化粧料も含む。
【0013】
本発明に使用される成分(a)カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体、ペクチン及びジェランガムから選ばれる1種又は2種以上の水系粘性付与剤は、水に溶解又は膨潤したときに粘性を示す物質であり、みずみずしい使用感に寄与することができる。具体的には、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン等のカラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体、ペクチン、ジェランガムが挙げられ、これらを必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。
市販品としては、例えば、カラギーナンとしては、カラギーナンJ(旭東化学産業社製)、GENU VISCO TYPE J−J(CPケルコ社製)、ローカストビーンガムとしては、GENU GUM TYPE RL−200J(CPケルコ社製)、キサンタンガムとしては、GRINSTED XANTHAN CLEAR 80(DANISCO社製)、カルボキシビニルポリマーとしては、CARBOPOL 940(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体としては、CARBOPOL 1342(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)、ペクチンとしては、ゲニュペクチンLM−104AS−J(CPケルコ社製),ジェランガムとしては、ケルコゲル LT100(大日本住友製薬社製)等が挙げられる。尚、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、アルギニン等の対アルカリを加えて中和、増粘させて含有することが好ましい。
【0014】
成分(a)の水系粘性付与剤は、きしみ感のなさに加え、経時安定性とみずみずしい使用感の点においては、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガムが好ましい。
【0015】
本発明の水系メーキャップ化粧料における成分(a)の配合量は、水系粘性付与剤の種類に関連するが、みずみずしい使用感とゲルの経時安定性の点において、0.01〜5%が好ましく、0.1〜2%がより好ましい。
【0016】
本発明に用いられる成分(b)の多孔質粉体は、平均粒径が2〜50μmであり、吸油量が60ml/100g以上のものである。
平均粒径は、(株)堀場製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA LA−910)により測定した場合に平均粒径が2〜50μmであり、更に3〜30μmが好ましい。前記平均粒径が2μm未満であると、伸び広がりが重くなり、50μmを超えると、肌上でざらつきを感じるため好ましくない。
吸油量は、JIS K5101法(煮アマニ油)により測定した場合に60ml/100g以上であり、上限値は、特に限定されないが、概ね、500ml/100g程度であり、更に、100〜400ml/100gが好ましい。前記吸油量が60ml/100g未満であると、経時安定性が悪くなるため好ましくない。
【0017】
成分(b)の多孔質粉体の形状は、特に限定されないが、使用性の観点より、球状から楕円状が好ましい。
【0018】
成分(b)の多孔質粉体の組成は、前記粒径と吸油量を有するものであれば、無機粉体、有機粉体、又は有機と無機の複合粉体の何れでも良い。具体的には、無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸アルミニウム、シリコーン樹脂、ナイロン、絹、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、セルロース等が挙げられる。成分(c)の市販品としては、例えば無水ケイ酸としては、サンスフェア H−121(AGCエスアイテック社製)が挙げられる。これらを1種又は2種以上用いることができる。この中でも、無水ケイ酸が、伸び拡がりの軽さと経時安定性が特に良好である。
【0019】
本発明の水系メーキャップ化粧料における、成分(b)の配合量は、きしみ感や経時安定性、伸び広がりの軽さやみずみずしい使用感の点において、0.1〜40%が好ましく、0.5〜30%が特に好ましい。
【0020】
本発明に用いられる成分(c)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで表面処理した粉体は、粉体に下記化学式(1)で示されるトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを表面処理して得られるものである。
C−(CF−(CH−Si−(OCHCH ・・・(1)
また、INCI名(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)で表すと、パーフルオロオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0021】
成分(c)の表面処理に用いられる粉体としては、成分(b)を除く通常化粧料に用いられるものであればいずれのものでもよく、板状、紡錘状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級などの粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、合成セリサイト、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、酸化鉄処理雲母、酸化鉄処理雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、二酸化珪素・酸化チタン被覆雲母、酸化チタン処理ガラス末、酸化鉄酸化チタン処理ガラス末、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン、ナイロン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、無水ケイ酸等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることができる。また、これら粉体は1種又は2種以上の複合化したものを用いても良い。
【0022】
トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランの粉体への表面処理方法は特に限定されないが、例えば特開2007−238690号公報に記載の方法に従って処理することができる。例えば、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランをミキサー内で添加することにより粉体と混合した後、熱処理を行い必要に応じて粉砕することにより目的とする表面処理粉体を得ることができる。あるいは、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランをアセトン、トルエン等の有機溶媒に加熱溶解もしくは分散し、その中に粉体を加えて混合した後に有機溶媒を除去し、乾燥後粉砕することにより目的とする表面処理粉体を得ることができる。
また、本発明の効果を損なわない範囲でトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン以外のフッ素化合物やシリコーン系油剤、炭化水素等、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、金属石ケン、界面活性剤などの他のコーティング剤で前処理または同時に処理しても良い。
【0023】
成分(c)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランの粉体への処理量は処理粉体質量に対して0.05〜20%が好ましく、0.1〜15%の範囲がより好ましい。この範囲であれば処理剤同士の縮合や未反応の処理剤の残存による感触や流動性への悪影響などが起きることなく、粉体に対して撥水撥油性を付与し、水系メーキャップ化粧料中への分散性を良好にすることができる。
【0024】
本発明の水系メーキャップ化粧料における成分(c)は必要に応じて1種又は2種以上を用いることができ、配合量は、きしみ感や白浮きの点において好ましくは0.1〜15%であり、更に好ましくは0.3〜10%である。
【0025】
本発明に用いられる成分(d)の分散剤は、成分(c)を成分(e)の水中に分散させるためのもので、経時安定性に寄与するものである。具体的には、界面活性剤が挙げられるが、例えば非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン6モル付加ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン20モル付加ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン20モル付加ソルビタントリオレート、デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルジイソステアレート、ポリオキシエチレン10モル付加モノステアレート、ポリオキシエチレン40モル付加モノステアレート等や、陰イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン4モル付加セチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレン8モル付加アルキル(C12−15)エーテルリン酸等、両性界面活性剤である大豆リン脂質や水素添加大豆リン脂質等が挙げられ、これらを必要に応じて1種又は2種以上用いることができる。成分(d)の市販品としては、例えば非イオン性界面活性剤では、ポリオキシエチレン6モル付加ソルビタンモノオレートとしては、レオドール TW−O 106V(花王社製)、ポリオキシエチレン20モル付加ソルビタンモノオレートとしては、ノニオン OT−221R(日油社製)、ポリオキシエチレン20モル付加ソルビタントリオレートとしては、レオドール TW−O 320V(花王社製)、デカグリセリルモノステアレートとしてはニッコール デカグリン 1−SV(日本サーファクタント工業社製)、デカグリセリルジステアレートとしてはニッコール デカグリン 2−SV(日本サーファクタント工業社製)、デカグリセリルジイソステアレートとしてはニッコール デカグリン 2−ISV(日本サーファクタント工業社製)、ポリオキシエチレン10モル付加モノステアレートとしては、ニッコール MYS−10V(日本サーファクタント工業社製)、ポリオキシエチレン40モル付加モノステアレートとしては、ニッコール MYS−40V(日本サーファクタント工業社製)、陰イオン性界面活性剤では、ポリオキシエチレン4モル付加セチルエーテルリン酸としては、HOSTAPHAT KW340D、ポリオキシエチレン8モル付加アルキル(C12−15)エーテルリン酸としてはニッコール DDP−8(日本サーファクタント工業社製)、両性界面活性剤では、大豆リン脂質としては、レシチン CLO(J−オイルミルズ社製)、水素添加大豆リン脂質としてはニッコール レシノール S−10E(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。これらの中でも、HLB12以上の非イオン性界面活性剤が好ましく、さらに、HLBが12以上であるポリオキシエチレン20モル付加ソルビタンモノオレート、デカグリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレン40モル付加モノステアレートが、成分(c)の分散性が高く、経時安定性が良好で白浮きがなく好ましい。
【0026】
本発明の水系メーキャップ化粧料における成分(d)分散剤の配合量は、成分(c)の配合量に関連するが、粉体の分散性、経時安定性、白浮きのなさの点で、0.01〜10%が好ましく、0.1〜5%が特に好ましい。
【0027】
本発明の水系メーキャップ化粧料において、成分(e)水は、媒体として必須の成分である。成分(e)水の配合量は、経時安定性ときしみ感のなさの点において、30〜80%が好ましく、40〜70%が特に好ましい。
【0028】
本発明の水系メーキャップ化粧料には、上記必須成分の他に通常、化粧料に使用される成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
尚、本発明に用いられる粉体は全てトリデカフルオロオクチルトリエトキシシランで処理したものを使用する必要はなく、本発明の効果を妨げない範囲で未処理の粉体や一般油剤、他のフッ素系油剤、シリコーン系油剤、界面活性剤で処理したものを組み合わせて使用することもできる。
その他の分としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、流動パラフィンやトリグリセライド等の油剤や固体油が挙げられる。
また、紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系や、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられ、保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンチレングリコール、フェノキシエタノール等がそれぞれ挙げられる。
【0029】
本発明の水系メーキャップ化粧料は、通常公知の方法により調製されるものであり、例えば、成分(e)の水に水系粘性付与剤を溶解又は膨潤させた後、成分(b)の多孔質粉体と成分(c)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体を成分(d)の分散剤で分散させて得る方法、多孔質粉体とトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体とを分散剤や水溶性溶媒を用いて水中に分散させた後に、水系粘性付与剤を溶解又は膨潤させる方法、水に水系粘性付与剤を溶解又は膨潤させた後、多孔質粉体とトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体を分散剤で分散させ、その後に油剤を添加し分散する方法等が挙げられる。
【0030】
本発明の水系メーキャップ化粧料は、ファンデーション、日焼け止め、頬紅、下地化粧料、口紅、アイシャドウ、アイブロウ、マスカラ、アイライナー等が挙げられるが、特にファンデーション等や日焼け止め、下地化粧料が好ましい。
【0031】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
本発明の実施例及び比較例に用いた成分(c)のトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体は、イソプロピルアルコールに粉体を添加分散し、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを添加する。そして、約80℃に加熱し混合することで表面処理し、次に、乾燥して溶剤を揮発させ、最後に粉砕処理を行って得たものである。
また、パーフルオロアルキルリン酸エステル処理粉体は、パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩(旭硝子社製アサヒガードAG530)を水に分散させ、粉体と混合し、塩酸を用いて溶液を酸性として静置後、洗浄、濾過、乾燥し調製した。
シリコーン処理粉体は、ジメチルポリシロキサンを2−プロパノールに分散させ、粉体と混合し、2−プロパノールを減圧留去し、焼き付け処理して調製した。
【0033】
実施例1〜15及び比較例1〜6:水系ファンデーション
表1及び2に示す組成の水系ファンデーションを下記製造方法で調製し、「きしみ感のなさ」、「白浮きのなさ」、「経時安定性」の各項目について、下記に示す評価方法及び判断基準にて判定し、その結果を併せて表1及び2に示した。尚、その他本発明の水系メーキャップ化粧料に要求される4項目である、みずみずしい使用感、さっぱりした仕上がり感、伸び拡がりの軽さについてと、化粧持続性(化粧後3時間)についても、前記項目と同様に官能評価を行ったが、特に本発明の改善点である「きしみ感のなさ」、「白浮きのなさ」、「経時安定性」について表1及び2に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
*1:GENU VISCO TYPE J−J(CPケルコ社製)
*2:GENU VISCO TYPE RL−200J(CPケルコ社製)
*3:平均粒子経12μm、吸油量140ml/100g
*4:平均粒子経3μm、吸油量86ml/100g
*5:平均粒子経6μm、吸油量60ml/100g
*6:トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理粉体
*7:混合粉体の組成は、ベンガラ 2.5%、黄酸化鉄 12.5%、黒酸化鉄 1.25%、タルク 37.5%、雲母 46.25%で、それぞれトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン3%処理粉体である。
*8:パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩5%処理粉体
*9:混合粉体の組成は、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、タルク、雲母をそれぞれ処理した。混合粉体の組成は、ベンガラ 2.5%、黄酸化鉄 12.5%、黒酸化鉄 1.25%、タルク 37.5%、雲母 46.25%で、それぞれパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩5%処理粉体である。
*10:シリコーン2%処理粉体
*11:混合粉体の組成は、ベンガラ 2.5%、黄酸化鉄 12.5%、黒酸化鉄 1.25%、タルク 37.5%、雲母 46.25%で、それぞれシリコーン2%処理粉体である。
*12:混合粉体の組成は、ベンガラ 2.5%、黄酸化鉄 12.5%、黒酸化鉄 1.25%、タルク 37.5%、雲母 46.25%である。
【0037】
(製造方法)
A:(1)〜(7)を溶解または膨潤する。
B:(8)〜(24)を、均一に混合する。
C:AにBを添加し、均一に混合後(25)を加え、均一に混合する。
D:Cを容器に充填して、水系メーキャップ化粧料を得た。
【0038】
(評価項目)
(イ)きしみ感のなさ
(ロ)白浮きのなさ
(ハ)経時安定性
(評価方法)
1.官能評価
(イ)のきしみ感のなさ、(ロ)の白浮きのなさについては、専門パネル20名による使用テストを行い、パネル各人が下記絶対評価にて7段階に評価し評点を付け、試料毎にパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0039】
7段階絶対評価
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :5.5点を超える :非常に良好
○ :3.5点を超える5.5点以下:良好
△ :1.5点を超える3.5点以下:やや不良
× :1.5点以下 :不良
【0040】
2.経時安定性
(ハ)の経時安定性については、実施例及び比較例の水系メーキャップ化粧料を製造翌日と40℃温度条件下にて、製造後2週間保存したサンプルの外観および離水や分離の有無を観察し、下記判定基準により判定した。
【0041】
判定基準
外観状態(離水や分離の有無) :判定
製造翌日及び40℃保存品共に全く無し :非常に良好:◎
製造翌日はなく40℃保存品に僅かに有るが、使用性には問題無し:良好 :○
製造翌日及び40℃保存品共に離水や分離が有るが程度は低い :やや不良 :△
製造翌日及び40℃保存品共に離水や分離がかなりある :不良 :×
【0042】
表1から明らかなごとく、本発明の実施例1〜15の水系メーキャップ化粧料は、きしみ感や白浮きがなく、経時安定性にも優れるものであった。また、水系メークアップ化粧料に要求される、みずみずしい使用感、さっぱりした仕上がり感、伸び拡がりの軽さについてと、化粧持続性(化粧後3時間)にも優れるものであった。その中でも、カルボキシビニルポリマーやジェランガムを用いた実施例4、5に比べ、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガムを用いた実施例1〜3の方が、きしみ感も全くなく、経時安定性も非常に優れ、みずみずしい使用感も非常に良いものであった。
これに対して、表2より、成分(a)が配合されていない比較例1は、粉体の分散性が悪く、粘性がないので塗布がしづらく、しかもきしみ感や白浮きも全く改善されなかった。伸び拡がりの軽さや化粧持続性についても劣るものであった。
成分(b)が配合されていない比較例2は、きしみ感のなさや伸び拡がりの軽さのみならず、粉体の分散性にも影響し、白浮きのなさを改善することができなかった。
成分(b)の代わりに、粒径の小さい多孔質粉体を配合した比較例3は、化粧持続性については比較的良好であったものの、きしみ感を強く感じ、白浮きの点でも良いものが得られなかった。
成分(c)の代わりに、パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩処理粉体を配合した比較例4は、きしみ感を強く感じ、白浮きの点でも良いものが得られなかった。みずみずしい使用感、さっぱりした仕上がり感、伸び拡がりの軽さについてと、化粧持続性(化粧後3時間)についてはそれほど悪くなかった。
成分(c)の代わりにシリコーン処理粉体を配合した比較例5は、製造直後よりゲル化が生じ、離水と分離が激しく、使用しづらいもので、全ての項目で良いものは得られなかった。
成分(c)の代わりに未処理の粉体を配合した比較例6も、製造直後よりゲル化が生じ、離水と分離が激しく、使用しづらいもので、全ての項目で良いものは得られなかった。
尚、比較例3のパーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩処理粉体は実施例と同等の撥水撥油効果が得られるものを用いた。
【0043】
実施例16:リキッドファンデーション
(成分) (%)
(1)キサンタンガム *13 0.3
(2)ι−カラギーナン *1 0.3
(3)精製水 残量
(4)多孔質粉体(無水ケイ酸) *3 5
(5)多孔質粉体(無水ケイ酸) *4 5
(6)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン *6 10
(7)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理ベンガラ *6 0.2
(8)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理黄酸化鉄 *6 1.4
(9)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理黒酸化鉄 *6 0.1
(10)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理タルク *6 2
(11)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(12)グリセリン 5
(13)1,3−ブチレングリコール 15
(14)エタノール 5
(15)ポリオキシエチレン20モル付加ソルビタントリオレート 1
(16)ジメチルポリシロキサン 1.5
(17)香料 適量
*13:GRINSTED XANTHAN CLEAR 80(DANISCO社製)
【0044】
(製造方法)
A:(1)〜(3)を混合溶解する。
B:(4)〜(15)を均一に混合する。
C:AにBを加え、混合し、(16)〜(17)を加え混合し均一に分散する。
D:Cを容器に充填して、リキッドファンデーションを得た。
実施例16のリキッドファンデーションを実施例1〜15と同様の方法で評価した結果、「きしみ感のなさ」、「白浮きのなさ」、「経時安定性」が改善され、その他本発明の水系メーキャップ化粧料に要求される4項目についても優れたものであった。
【0045】
実施例17:下地化粧料
(成分) (%)
(1)ローカストビーンガム *2 0.5
(2)アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体 *14 0.1
(3)精製水 残量
(4)トリエタノールアミン 0.2
(5)多孔質粉体(無水ケイ酸) *4 5
(6)多孔質粉体(ナイロン粉体) *5 5
(7)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理酸化チタン *6 2
(8)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理ベンガラ *6 0.1
(9)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理黄酸化鉄 *6 0.5
(10)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理黒酸化鉄 *6 0.1
(11)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理タルク *6 2
(12)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(13)1,3−ブチレングリコール 15
(14)エタノール 5
(15)デカグリセリルモノステアレート 1
(16)大豆レシチン 0.4
(17)流動パラフィン 1
(18)香料 適量
*14:CARBOPOL 1342(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
【0046】
(調製方法)
A:(1)〜(3)を膨潤混合し、(4)で中和する。
B:(5)〜(16)を均一に混合する。
C:AにBを加え、混合し、(17)〜(18)を加え混合し均一に分散する。
D:Cを容器に充填して、下地化粧料を得た。
実施例17の下地化粧料を実施例1〜15と同様の方法で評価した結果、「きしみ感のなさ」、「白浮きのなさ」、「経時安定性」が改善され、その他本発明の水系メーキャップ化粧料に要求される4項目についても優れたものであった。
【0047】
実施例18:アイカラー
(成分) (%)
(1)ジェランガム *15 0.5
(2)アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)
共重合体 *14 0.2
(3)キサンタンガム *13 0.5
(4)精製水 残量
(5)トリエタノールアミン 0.2
(6)多孔質粉体(無水ケイ酸) *3 5
(7)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
雲母チタン *16 6
(8)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
赤色226号 *16 0.2
(9)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
青色404号 *16 0.1
(10)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
黒酸化鉄 *6 0.02
(11)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
酸化チタン被覆ガラス末 *17 2
(12)パラオキシ安息香酸メチル 0.1
(13)1,3−ブチレングリコール 10
(14)ポリオキシエチレン40モル付加モノステアレート 1
(15)セスキオレイン酸ソルビタン 0.3
(16)ジメチルポリシロキサン 0.5
(17)パーフルオロポリエーテル 1
(18)香料 適量
*15:ケルコゲル LT100(大日本住友製薬社製)
*16:トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン5%処理粉体
*17:トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン2%処理粉体
【0048】
(製造方法)
A:(1)〜(4)を膨潤混合し、(5)で中和する。
B:(6)〜(14)を均一に混合する。
C:AにBを加え、混合し、(16)〜(18)を加え混合する。
D:Cを容器に充填して、アイカラーを得た。
実施例18のアイカラーを実施例1〜15と同様の方法で評価した結果、「きしみ感のなさ」、「白浮きのなさ」、「経時安定性」が改善され、その他本発明の水系メーキャップ化粧料に要求される4項目についても優れたものであった。
【0049】
実施例19:日焼け止め料
(成分) (%)
(1)カルボキシビニルポリマー *18 0.3
(2)κ−カラギーナン *19 0.5
(3)アクリル酸アルキル共重合体エマルション *20 0.2
(4)精製水 残量
(5)トリエタノールアミン 0.4
(6)多孔質粉体(無水ケイ酸) *3 3
(7)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
酸化チタン *16 5
(8)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理
酸化亜鉛 *21 5
(9)パラオキシ安息香酸メチル 0.2
(10)1,3−ブチレングリコール 10
(11)ポリオキシエチレン20モル付加ソルビタンモノオレート 0.6
(12)大豆リン脂質 0.3
(13)デカメチルシクロペンタシロキサン 3
(14)メトキシケイ皮酸オクチル 5
(15)香料 適量
*18:CARBOPOL 940(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
*19:カラギーナンJ(旭東化学産業社製)
*20:ウルトラゾール V−280C(ガンツ化成社製)(アクリル酸アルキル共重合体エマルション28%含有)
*21:トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン7%処理粉体
【0050】
(製造方法)
A:(1)〜(4)を膨潤混合し、(5)で中和する。
B:(6)〜(12)を均一に混合する。
C:AにBを加え、混合し、(13)〜(15)を加え混合する。
D:Cを容器に充填して、日焼け止め料を得た。
実施例19の日焼け止め料を実施例1〜15と同様の方法で評価した結果、「きしみ感のなさ」、「白浮きのなさ」、「経時安定性」が改善され、その他本発明の水系メーキャップ化粧料に要求される4項目についても優れたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(e);
(a)カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10−30)共重合体、ペクチン及びジェランガムから選ばれる1種又は2種以上の水系粘性付与剤
(b)平均粒径が2〜50μmで吸油量が60ml/100g以上である多孔質粉体
(c)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体
(d)分散剤
(e)水
を配合したことを特徴とする水系メーキャップ化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)の水系粘性付与剤が、カラギーナン、ローカストビーンガム及びキサンタンガムから選ばれる1種又は2種以上の水系粘性付与剤であることを特徴とする請求項1記載の水系メーキャップ化粧料。
【請求項3】
前記成分(d)の分散剤が、HLB12以上の非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水系メーキャップ化粧料。
【請求項4】
前記成分(c)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体の処理される粉体が白色顔料であることを特徴する請求項1〜3のいずれかに記載の水系メーキャップ化粧料。
【請求項5】
前記成分(c)トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理粉体の配合量が0.1〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水系メーキャップ化粧料。

【公開番号】特開2010−100580(P2010−100580A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274693(P2008−274693)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】