説明

水系接着剤組成物

【課題】樹脂エマルジョン/ゴムラテックスの消費量を減らすことができ、初期接着力および常態接着力に優れ、従来の塗工程でそのまま使用することができ、かつ、比較的長期間の貯蔵安定性を有する水系接着組成物を提供する。
【解決手段】樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)、マイクロバルーン(B)ならびに増粘剤(C)を含む水系接着剤組成物であって、該水系接着剤組成物の20℃での粘度が10000〜100000mPa・sであり、かつ、該組成物の比重が0.6〜1.0である水系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系接着剤組成物に関する。より詳細には、バルーンを配合した水系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、オフィス等の建材用途や車両用途等に使用する接着剤は、従来はクロロプレンゴム系溶剤型接着剤等のトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を含有する溶剤系接着剤が主であった。
【0003】
しかし、近年、このような有機溶剤の使用には、人体に対する毒性、揮発の危険性、環境への汚染性等の問題が存在することが指摘されていることから無溶剤化の方向にあり、溶剤を含有する溶剤系接着剤から溶剤を含有しない水系接着剤へと代替が進んでいる。
【0004】
特許文献1には、ポリクロロプレンラテックスと、無機充填剤とチタネート系カップリング剤を必須成分とする耐熱性に優れる水系接着剤が記載されている。
【0005】
特許文献2には、ポリクロロプレンラテックスと、粘着付与樹脂と、水分散型イソシアネート化合物を含有する水系接着剤が記載されている。
【0006】
特許文献3には、未発泡の熱膨張性マイクロカプセルが分散されていることを特徴とするクロロプレンラテックス水系接着剤が記載されている。
【0007】
特許文献4には、ハロゲン含有ポリオレフィンとスチレン−ブタジエンゴムからなるラテックスを主成分とする金属とゴムとの水系接着剤組成物が記載されている。
【0008】
特許文献5には、アクリロニトリルゴムラテックスおよび/またはアクリルゴムラテックスを含有するエポキシ樹脂水性分散体の二液接着剤組成物が記載されている。
【0009】
これらの水系接着剤の接着力は、溶剤系接着剤のそれに遜色がないものであり、性能面での不満は解消されつつある。
【0010】
従来使用されてきた溶剤系接着剤と水系接着剤とを比較すると、溶剤系接着剤には、コスト的に極めて有利であり、しかも、非常に長きにわたって使用されてきたため、接着剤を使用する現場が溶剤系接着剤に慣れているという利点がある。
【0011】
従って、溶剤系接着剤を水系接着剤で代替しようとする場合には、物性的に代替可能であることは当然であるが、コスト的な課題を解決しつつ、従来と同じ使い勝手で使用できるようにしなければならない。
【0012】
コストを下げようとして、水系接着剤組成物の成分中のコスト的に比較的大きな部分を占める樹脂エマルジョン/ゴムラテックスの消費量を減らそうとするのは、当業者にとって自然なことである。
そして、樹脂エマルジョン/ゴムラテックスの消費量を減らすための方法として、接着剤塗布量を単純に下げる、充填剤を配合する等の方法が考えられる。
【0013】
しかし、接着剤塗布量を単純に下げた場合、十分な接着力および接着信頼性を得ることが著しく困難である。接着力を担保するためには、単位面積あたりの塗布量(体積)が、ある程度は必要であり、従来、既に十分な接着力および接着信頼性を担保するために、過不足無い塗布量(体積)が設定されていたからである。
【0014】
そして、水系接着剤組成物に充填剤を配合することは、接着剤のコストを下げるため、接着剤の体積収縮率を下げるため、または、接着剤を硬くするため等の理由から、重質炭酸カルシウム、シリカ、カオリン・クレー、硫酸バリウム等を充填剤として配合することは従来行われてきたことである。
【0015】
ところが、このような充填剤を配合すると、前記したような効果が得られるが、同時に、接着力の低下、粘度の上昇、比重の増加等の好ましくない副効果も得られる。
【0016】
比重の増加を抑えるためには、比重が小さな充填剤を使用することが考えられる。実際、エポキシ樹脂やウレタン樹脂に、プラスチックバルーンやガラスバルーン等の比重が小さな充填剤を混合した組成物が知られている。
【0017】
しかし、水系接着剤組成物を軽量化しようとして充填剤を配合したものはこれまで無かった。水系接着剤組成物にバルーンを混入してもすぐに浮いて分離してしまうことから、バルーンを長期間安定に均一に分散することはできないと考えられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2001−26756号公報
【特許文献2】特開2001−64616号公報
【特許文献3】特開2007−91779号公報
【特許文献4】特開2000−53939号公報
【特許文献5】特開2000−265146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本発明は、樹脂エマルジョン/ゴムラテックスの消費量を減らすことができ、初期接着力および常態接着力に優れ、従来の塗工程でそのまま使用することができ、かつ、比較的長期間の貯蔵安定性を有する水系接着組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)、マイクロバルーン(B)ならびに増粘剤(C)を含む水系接着剤組成物であって、該組成物の20℃における粘度が10000〜100000mPa・sであり、かつ該組成物の比重が0.6〜1.0である水系接着剤組成物が樹脂エマルジョン/ゴムラテックスの消費量を減らすことができ、初期接着力および常態接着力に優れ、従来の塗工程でそのまま使用することができ、かつ、比較的長期間の貯蔵安定性を有することを知得し、本発明を完成させた。
【0021】
すなわち、本発明は次のものである。
〔1〕樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)、マイクロバルーン(B)ならびに増粘剤(C)を含む水系接着剤組成物であって、該水系接着剤組成物の20℃での粘度が10000〜100000mPa・sであり、かつ該組成物の比重が0.6〜1.0である水系接着剤組成物。
〔2〕前記マイクロバルーン(B)を前記樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)の固形分100質量部に対して0.1〜50質量部含む、上記〔1〕に記載の水系接着剤組成物。
〔3〕前記マイクロバルーン(B)の比重が0.05〜0.7である、上記〔1〕または〔2〕に記載の水系接着剤組成物。
〔4〕前記マイクロバルーン(B)の平均粒径が30〜200μmである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
〔5〕前記マイクロバルーン(B)が、プラスチックバルーン、ガラスバルーン、セラミックバルーンおよびシラスバルーンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
【0022】
〔6〕前記水系接着剤組成物の20℃での粘度が15000〜100000mPa・sであり、前記マイクロバルーン(B)を前記樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)の固形分100質量部に対して0.1〜15質量部含み、前記マイクロバルーン(B)がプラスチックバルーンであり、該プラスチックバルーンの平均粒径が30〜99μmであり、かつ、該プラスチックバルーンが球状無機微粉末で表面処理されている、上記〔1〕に記載の水系接着剤組成物。
〔7〕前記球状無機微粉末が球状炭酸カルシウムおよび/または球状シリカである、上記〔6〕に記載の水系接着剤組成物。
〔8〕前記プラスチックバルーンの比重が0.1〜0.2である、上記〔6〕または〔7〕に記載の水系接着剤組成物。
【0023】
〔9〕前記樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)が、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスである、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
〔10〕前記スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスのスチレン−ブタジエン部分とアクリル部分との質量比が、スチレン−ブタジエン部分/アクリル部分=95/5〜60/40である、上記〔9〕に記載の水系接着剤組成物。
〔11〕前記樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)が、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、イソプレンラテックス、アクリル樹脂エマルジョンおよび酢酸ビニル樹脂エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
〔12〕前記増粘剤(C)が、無水ケイ酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびこれらの誘導体からなる群から選択される、上記〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、樹脂エマルジョン/ゴムラテックスの消費量を減らすことができ、初期接着力および常態接着力に優れ、従来の塗工程でそのまま使用することができ、かつ、比較的長期間の貯蔵安定性を有する水系接着組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
〈1.樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)〉
本発明の水系接着剤組成物に用いられる樹脂エマルジョンは、樹脂の水分散系であれば特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、酢酸ビニル−アクリル共重合体、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等のエマルジョンが挙げられる。
【0026】
本発明の水系接着剤組成物に用いられるゴムラテックスは、ゴムの水分散系であれば特に限定されない。例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CP)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)、SBR−アクリル共重合体等の、主鎖に不飽和炭素結合をもつゴムのラテックス、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、エチレン−プロピレン共重合体(EPM)等の、ポリメチレン型の飽和主鎖をもつゴムのラテックス、エチレノキシド−エピクロロヒドリン共重合体(ECO)等の主鎖に炭素と酸素をもつゴムのラテックス、シリコーンゴム(VMQ)等の主鎖にケイ素と酸素をもつゴムのラテックス、ポリエステルウレタン(AU)、ポリエーテルウレタン(EU)等の主鎖に炭素、酸素および窒素をもつゴムのラテックス等が挙げられる。
【0027】
樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックスは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明の水系接着剤組成物に用いる樹脂エマルジョン/ゴムラテックスとしては、主鎖に不飽和炭素結合をもつゴムのラテックスが好ましく、クロロプレンエマルジョン、SBRラテックスおよびSBR−アクリル共重合体ラテックスからなる群から選ばれる1つ以上のゴムラテックスがより好ましく、SBR−アクリル共重合体ラテックスがさらに好ましい。これらは常態接着力が特に優れているからである。
【0029】
SBRラテックス中に含まれるスチレン成分として、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン等が挙げられ、ブタジエン成分として、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。SBRラテックスのスチレン比率は、50質量%未満が好ましく、5〜45質量%の範囲がより好ましく、5〜30質量%の範囲がさらに好ましい。この範囲であると、凝集力が強く、常態接着力に優れるからである。
【0030】
スチレン−ブタジエン共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。
【0031】
SBR−アクリル共重合体ラテックス中に含まれるアクリル成分として、(メタ)アクリル酸およびこれとアルキルアルコールのエステル、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルが例示される。SBR−アクリル共重合体ラテックス中に含まれる、SBR成分の含有率対アクリル成分の含有率は、70/30〜90/10である。SBR成分中のスチレン成分、ブタジエン成分およびそれらの含有率はSBRラテックスの場合と同様である。この範囲であると、粘着力および凝集力が強く、初期接着力および常態接着力に優れるからである。
【0032】
クロロプレンエマルジョンの市販品としては、例えば、住化バイエルウレタン(株)製のグレードC74が、SBRラテックスの市販品としては旭化成ケミカルズ(株)製のグレード2610が、SBR−アクリル共重合体ラテックスの市販品としては旭化成ケミカルズ(株)製のグレードL7430、L7689、A7531、L8900等が挙げられる。
【0033】
また、ラテックス水分散体中の(共)重合体固形分は、特に限定されないが、30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
【0034】
〈2.マイクロバルーン(B)〉
本発明の水系接着剤組成物に用いられるマイクロバルーンは、有機系バルーンでも、無機系バルーンでもよい。
【0035】
有機系マイクロバルーンとしては、プラスチックバルーンが例示される。プラスチックバルーンとしては、例えば、フェノール、尿素、スチレン、サラン;塩化ビニル、塩化ビニリデン;アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ノルボルナン等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン系モノマー;酢酸ビニル;ブタジエン;ビニルピリジン;クロロプレンの、ホモ重合体またはこれらからの2種以上の共重合体からなるものが挙げられる。中でもポリアクリロニトリルを含有するものが好ましい。
【0036】
無機系マイクロバルーンとしては、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーンが挙げられる。
【0037】
有機系マイクロバルーンおよび無機系マイクロバルーンは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
マイクロバルーンは中空体であればその形状は特に限定されないが、例えば、球形のものが挙げられる。
【0039】
マイクロバルーンの平均粒径は、300μm以下のものであれば特に限定されないが、30〜200μmであるものが好ましく、30〜180μmであるものがより好ましく、30〜99μmであるものがさらに好ましい。平均粒径がこのような範囲の場合、水系接着剤組成物とよく混和することができ、また、単位面積あたりの接着体積を確保できる。
【0040】
マイクロバルーンの比重は、0.8以下であれば特に限定されないが、0.05〜0.7が好ましく、0.05〜0.5がより好ましく、0.05〜0.45がさらに好ましく、比重0.08〜0.42のものがいっそう好ましく、0.1〜0.2のものがよりいっそう好ましい。
【0041】
マイクロバルーンは、有機系表面処理剤または無機系表面処理剤で表面処理することができる。
【0042】
有機系表面処理剤としては、例えば、脂肪酸、樹脂酸および脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0043】
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸のような直鎖飽和脂肪酸;セトレイン酸、ソルビン酸のような不飽和脂肪酸;安息香酸、フェニル酢酸のような芳香族カルボン酸が挙げられる。
【0044】
樹脂酸としては、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸、ピマル酸、レボピマル酸、イソピマル酸が挙げられる。
【0045】
脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8以上の高級脂肪酸のエステルが挙げられる。炭素数8以上の高級脂肪酸のエステルとしては、例えば、パルチミン酸ラウリル、パルチミン酸ステアリル、ステアリン酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、トリパルミチン、トリステアリンが挙げられる。
【0046】
無機系表面処理剤としては、例えば、炭酸カルシウム(重質または軽微質)、硫酸バリウム、タルク、酸化チタン、チタン、クレー、シリカを挙げることができる。なお、無機系表面処理剤のうち、微粉末であるものについて、本明細書では「無機微粉末」という。
【0047】
表面処理剤の量は、表面処理後のマイクロバルーン中、1.0〜10質量%であるのが好ましい。
【0048】
プラスチックバルーンは比重が小さく、軟らかく、弾性があり、製造・使用時のせん断力で破壊されにくい等の利点を有する。プラスチックバルーンの比重としては、本発明の組成物に使用した場合に、比重が小さな組成物を得ることができ、塗布量を下げても十分な接着効果を得ることができる。
【0049】
プラスチックバルーンは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン−アクリロニトリル二元共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−二元共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル−ジビニルベンゼン三元共重合体で形成されたものが好ましい。
【0050】
プラスチックバルーンの市販品としては、例えば、松本油脂製薬(株)製のマツモトマイクロスフェアーMFLシリーズ(MFL−80GCA、MFL−100SCA、MFL−30CA、MFL−60CA、MFL−100CA、MFL−100SCAB、MFL−80GTA、MFL−30STI等)を例示することができる。
【0051】
プラスチックバルーンは、表面処理(「表面コーティング」または「表面被覆」と言い換えてもよい。)されたものが好ましく、無機微粉末で表面処理されたものがより好ましい。好ましい無機微粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、球状炭酸カルシウムおよび球状シリカなどを挙げることができ、これらを単独でまたは2種類以上を組み合わせて、プラスチックバルーンの表面処理をすることができる。また、脂肪酸エステル等の有機系表面処理剤で、さらに表面処理をしてもよい。
【0052】
前記球状炭酸カルシウムとしては、具体的には、例えば、タマパールTP−SO10(奥多摩工業株式会社製)やHPC−Sタイプ(北海道石灰化工業株式会社)などを挙げることができる。
【0053】
前記球状シリカとしては、具体的には、例えば、FBやFBX(電気化学工業株式会社製)やHPS−3500、HPS−1000、HPS−0500(東亞合成株式会社製)などを挙げることができる。
【0054】
無機微粉末で表面処理されたプラスチックバルーン(「無機微粉末表面処理済プラスチックバルーン」という。)としては、マツモトマイクロスフェアーMFLシリーズの無機微粉末で表面処理されたプラスチックバルーンが好ましいが、マツモトマイクロスフェアーMFLシリーズのプラスチックバルーンを無機微粉末で表面処理したものもまた好ましい。このような無機微粉末表面処理済プラスチックバルーンとしては、例えば、マツモトマイクロスフェアー MFL−60CA、MFL−100CAまたはこれらを無機微粉末で表面処理したものが好ましく、MFL−100CAを球状シリカで表面処理したものが特に好ましい。
【0055】
本発明の水系接着剤組成物をギアポンプを用いて搬送する場合には、プラスチックバルーンを使用した水系接着剤組成物であることが好ましい。プラスチックバルーンは割れにくいので、比較的高い回転数(例えば、20rpm)でポンプを回すことができ、搬送性が向上するからである。
【0056】
ガラスバルーンは、比重が比較的小さく、熱膨張係数が小さく、吸水性がほとんどなく、耐熱性・耐火性に優れ、不活性であり、硬く、比較的割れにくい等の利点を有する。ガラスバルーンの比重としては、本発明の組成物に使用した場合に、比重が小さな組成物を得ることができ、塗布量を下げても十分な接着効果を得ることができる。ガラスバルーンの市販品としては、例えば、富士シリシア化学(株)製のフジバルーンシリーズ(H−40、H−30、S−35、S−40、S−45等)を例示することができる。
【0057】
セラミックバルーンは、比重が比較的小さく、中空バルーンに比べ強度が優れる、熱膨張係数が小さく、吸水性がほとんどなく、耐熱性・耐火性に優れ、不活性であり、硬く、比較的割れにくい等の利点を有する。本発明の組成物に使用した場合に、比重が小さな組成物を得ることができ、塗布量を下げても十分な接着効果を得ることができる。セラミックバルーンの市販品としては、例えば、林化成(株)製のセラミックバルーン SLシリーズ(SLG、SL300,SL150,SL125,SL75等)を例示することができる。
【0058】
シラスバルーンは、比重が小さく、不活性で、不燃性であり、耐熱性・耐火性に優れる等の長所を有する。本発明の組成物に使用した場合に、比重が小さな組成物を得ることができ、塗布量を下げても十分な接着効果を得ることができる。シラスバルーンの市販品としては、例えば、エスケーライフ社製シラスバルーンファイブスターシリーズ(Hタイプ、Aタイプ等)を例示することができる。
【0059】
マイクロバルーンの配合量は、樹脂エマルジョン/ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、2〜25質量部であるのが好ましく、4〜20質量部であるのがより好ましく、5〜15質量部であるのがさらに好ましい。このような範囲とすれば接着力を損なわない。
【0060】
〈3.増粘剤(C)〉
本発明の水系接着剤組成物に用いられる増粘剤は、水溶性高分子化合物であれば特に限定されず、天然系であってもよいし、合成系であってもよい。天然系では、例えば、無水ケイ酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム、カゼイン、アルブミン、アルギン酸、寒天、スメクタイト等が挙げられ、また、合成系では、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル等が挙げられる。
【0061】
増粘剤は、本発明の目的を損なわない範囲の配合量で含有することができる。具体的には、本発明の水系接着剤組成物の粘度が10000〜100000mPa・sの範囲となるように配合することができる。粘度が、10000mPa・s以上であれば、マイクロバルーンを長期間安定に組成物中に分散させることができ、100000mPa・s以下であれば、ローラー塗布工程で従来の手順を変更することなく本発明の組成物を使用することができるからである。
【0062】
例えば、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを使用する場合、樹脂エマルジョン/ゴムラテックスの固形部100質量部に対して、0.1〜0.9質量部配合することができる。
【0063】
〈4.粘着付与樹脂〉
本発明の組成物は、粘着付与樹脂を含有することができる。
粘着付与樹脂は、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスと相溶性があるものであれば、特に制限されない。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂が挙げられる。
【0064】
ロジン系樹脂は、具体的には、ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、ロジン樹脂エステル、重合ロジン樹脂等が例示される。
【0065】
テルペン系樹脂は、具体的には、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂等が例示される。
【0066】
石油樹脂は、具体的には、C5留分系石油樹脂、C9留分系石油樹脂、C5/C9留分系石油樹脂、DCPD系石油樹脂等が例示される。
【0067】
クマロン樹脂は、具体的には、クマロン(1−ベンゾフラン)の重合体、クマロンの誘導体の重合体、クマロン−インデン樹脂(クマロンとインデンの共重合体)、水素化クマロン−インデン樹脂等が例示される。
【0068】
粘着付与樹脂の配合量としては、組成物の性能を低下させない範囲で配合することができるが、樹脂エマルジョン/ゴムラテックス(A)の固形分100質量部に対して5〜35質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。この範囲であると、十分な濡れ性の付与がされ、かつ接着剤皮膜の形成も阻害されず接着力に優れる。
【0069】
粘着付与樹脂を本発明の組成物に含有する場合の配合方法は特に限定されないが、本発明の組成物中に樹脂を均一に分散させるためにエマルジョンとして配合することが好ましい。また、均一に分散させるためには、より微粒子であることが好ましい。粘着付与樹脂をエマルジョンとして配合する場合は、上記の配合量は固形分の量を表す。
【0070】
市販の粘着付与剤(エマルジョン)では、例えば、ロジン系エステルエマルジョンでは、ベース樹脂軟化点が175℃以下、固形分が45〜55質量%、pH5.5〜9.5のものが好ましく、具体的には、ハリマ化成(株)製のロジン系エステルエマルジョン「ハリエスターシリーズ」の、DS−70E、SK−70D、SK−90D−55、SK−508H、SK−816E、SK−822E、SK−218NS、SK−323NS、SK−370N、SK−501NS、SK−385NS等を挙げることができる。
【0071】
また、本発明の組成物に粘着付与樹脂を含有しない場合には、被着体に濡れ性を付与するために、被着体接着面に処理を行うことが好ましい。例えば、被着体接着面をプライマーで処理してから、本発明の水系接着剤組成物を塗布することができる。プライマーは、粘着付与樹脂を水系エマルジョンとして被着体表面に塗布するのが好ましい。
【0072】
〈5.充填剤〉
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの表面処理物(例えば、脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物等)が挙げられる。
【0073】
充填剤はそれぞれ単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。
【0074】
充填剤は、粉末のまま、または乳化剤もしくは分散剤でエマルジョンとして配合することができるが、粉末のまま配合することが好ましい。組成物中のゴムラテックスの濃度低下が抑えられる。
【0075】
無機充填剤の配合量としては、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、20〜80質量部が好ましく、30〜70質量部がより好ましく、40〜60質量部がさらに好ましい。この範囲であると、塗工性、初期接着力および常態接着力に優れる。
【0076】
無機充填剤をエマルジョンとして配合する場合は、上記の配合量は固形分の量を表す。
【0077】
〈6.その他配合してもよいもの〉
本発明の組成物は、上記成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加材、例えば、増粘剤、老化防止剤、酸化防止剤、防錆剤、消泡剤、難燃剤、防腐剤、防黴剤、香料、着色剤、湿潤剤等を配合してもよい。
【0078】
〈7.好適な組成〉
本発明の水性接着剤組成物は、特に好ましくは、樹脂エマルジョン/ゴムラテックス(A)として、SBR−アクリル共重合対中のスチレン−ブタジエン成分の質量比対アクリル成分の質量比が70/30〜90/10の範囲であるSBR−アクリル共重合ラテックスと、そのラテックスの固形分100質量部に対して、マイクロバルーン(B)として平均粒径が50〜70μmの範囲であるプラスチックバルーンを4〜20質量部、増粘剤(C)を0.1〜0.9質量部、粘着付与樹脂を10〜30質量部、および充填剤を40〜60質量部含む。この組成とすることによって、得られる水系接着剤組成物の初期接着力、常態接着力、長期貯蔵安定性に優れ、従来のローラー塗布工程を変更することなくそのまま使用することができる。
【0079】
〈8.塗布量〉
本発明の組成物の単位面積あたりの塗布量(体積)は、160〜360cm/mの範囲内であればよいが、240〜280cm/mが好ましく、255〜265cm/mがより好ましい。また、本発明の組成物の単位面積あたりの塗布量(質量)は、比重により異なるが、90〜400g/mの範囲内であればよく、140〜300g/mが好ましく、150〜270g/mがより好ましい。この範囲であれば、十分な接着力を確保できる。
【実施例】
【0080】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0081】
〈1.水系接着剤組成物〉
樹脂エマルジョン/ゴムラテックス(A)としては、第1表に示す市販のゴムラテックスを使用した。
【0082】
【表1】

【0083】
マイクロバルーン(B)としては、第2表に示すものを使用した。
なお、「商品名(グレード)」の欄に記載される商品名は、使用したマイクロバルーンそれ自体の商品名(無機微粉末で表面処理をしたプラスチックバルーンにあっては、表面処理の対象となったプラスチックバルーンの商品名)である。
【0084】
【表2】

【0085】
バルーン2は、MFL−60CAを球状シリカで表面処理したものであり、バルーン4および5は、それぞれ、MFL−100CAを、球状炭酸カルシウムまたは球状シリカで表面処理したものである。
その他のバルーンは、市販のものをそのまま使用した。
【0086】
上記の材料を用いてマイクロバルーンを製造する方法は特に限定的ではなく、常法に従えばよいが、特に好適な方法は、例えば特公昭42−26524号公報に記載のようにして、重合性単量体を揮発性膨張剤および重合開始剤と混合し、この混合物を、必要により乳化分散助剤等を含む水性媒体中で懸濁重合させる方法である。懸濁重合を行う水性媒体の配合処方に球状炭酸カルシウムを用いることにより、マイクロバルーンの表面に球状炭酸カルシウムを付着させることが出来る。
【0087】
増粘剤(C)としては、増粘剤1(ポリオキシメチレン誘導体 M2005A、第一工業製薬社製)、または増粘剤2(ポリアクリル酸 シックナー630、サンノプコ株式会社)を使用した。
【0088】
粘着付与剤としては、粘着付与剤1(ロジン系エマルション「ハリエスター SK−508H」、ハリマ化成社製;固形分54〜56質量%)、または粘着付与剤2(完全無溶剤型ロジン系エマルション「ハリエスター SK−323NS」、ハリマ化成社製;固形分50〜51質量%)を使用した。
【0089】
充填剤としては、充填剤1(重質炭酸カルシウム(無処理)「スーパーSS」、丸尾カルシウム社製)を使用した。
【0090】
実施例1〜18、比較例1〜4の各水系接着剤組成物は、それぞれ、第3表、第4表の水系接着剤組成物の欄に示す各構成成分を、そこに示す配合量(ゴムラテックス(A)のラテックス中の樹脂固形分を100質量部とする相対量;単位=質量部)で配合し、ミキサーにて混合して水系接着剤組成物を製造した。
ただし、粘着付与剤については、エマルション中の粘着付与樹脂固形分量に相当する、固形分換算した値である。
【0091】
【表3】

【0092】
【表4】

【0093】
〈2.粘度、比重〉
実施例1〜18および比較例1〜4の各水系接着剤組成物について、粘度を測定し、比重を算出した。
粘度については、JIS K 7117−2:1991に記載の方法に従い、BL形粘度計(No.4ロータ、6rpm)を用いて、20℃における粘度を測定した(単位=mPa・s)。
比重については、JIS K 6833:1994に記載の方法に従い、水系接着剤組成物と水とについて、比重カップ法で100mlあたりの質量を測定し、それをもとに比重を算出した(単位=なし ∵無次元量)。
各水系接着剤組成物の粘度および比重は、第3表(実施例)または第4表(比較例)の該当する欄に示す。
【0094】
〈3.初期接着力・常態接着力〉
実施例1〜18および比較例1〜4の各水系接着剤組成物について、次のとおり試験体を作製し、JIS K 6850:1999に記載の方法に準拠して引張せん断試験を行い、初期接着力および常態接着力を求め、評価した。
《3−1》接着試験体の作製
被着体として、25mm×30mmのサイズの鋼板および50mm×50mmのサイズの基材(サイディングボード)を用いた。
前記した鋼板の片面の25mm×25mmの領域に、上記のようにして得られた水系接着剤組成物を、片面につき、1mあたり130cm塗布体積(130cm/m・面)で、くし目状に塗布した。塗布後、循環式オーブンに入れ、100℃、60秒間の条件で乾燥させた。
また、前記した基材の片面の25mm×25mmの領域に、上記のようにして得られた水系接着剤組成物を、片面につき、1mあたり130cmの塗布体積(130cm/m・面)で、くし目状に塗布した。塗布後、循環式オーブンに入れ、190℃、60秒間の条件で乾燥させた。
第3表(実施例)および第4表(比較例)の単位面積あたりの塗布量(体積)の欄に1mあたりの塗布体積(260cm/m)を、単位面積あたりの塗布量(質量)の欄に1mあたりの塗布質量(単位=g/m、比重×1mあたりの塗布体積)を、それぞれ示す。
《3−2》初期接着力
乾燥後に鋼板と基材を取り出して貼り合わせ、実施例1〜10および比較例1〜3については貼り合わせ1分後に、実施例11〜18および比較例4については貼り合わせ10分後に、引張せん断試験を行い、せん断強さを求めた。
実施例1〜10および比較例1〜3については、せん断強さ45N/(25mm)以上を初期接着力に優れるとして「○」と評価し、それ未満を初期接着力が十分でないとして「×」と評価した。
実施例11〜18および比較例4については、せん断強さ90N/(25mm)以上を初期接着力に優れるとして「○」と評価し、それ未満を初期接着力が十分でないとして「×」と評価した。
第3表(実施例)および第4表(比較例)の初期接着力の欄に、結果と評価を示す。
《3−3》常態接着力
乾燥後に鋼板と基材を取り出して貼り合わせ、20℃、7日間の条件で静置養生をして組成物を硬化させた後に引張せん断試験を行い、せん断強さを求めた。
せん断強さ950N/(25mm)以上を常態接着力に特に優れるとして「◎」と評価し、450N/(25mm)以上900N/(25mm)未満を常態接着力に優れるとして「○」と評価し、450N/(25mm)未満を常態接着力が十分でないとして「×」と評価した。
第3表(実施例)および第4表(比較例)の常態接着力の欄に、結果と評価を示す。
【0095】
〈4.貯蔵安定性〉
製造した水系接着剤組成物を、実施例1〜10および比較例1〜3については20℃で2月間放置した後に、実施例11〜18および比較例4については20℃で3ヶ月間放置した後に、それぞれ観察し、外観上の変化が肉眼的に認められなかったものを貯蔵安定性が優れるとして「○」と評価し、ゲル発生、バルーンの分離、ゲル化等の外観上の変化が肉眼的に認められたものを貯蔵安定性が劣るとして「×」と評価した。
【0096】
〈5.切断時伸び〉
JIS K 6251:2004に記載の方法に従い、実施例11〜18および比較例4の水系接着剤組成物でダンベル3号形試験片を作成し、引張速度200mm/minで試験を行い、標線間距離を測定し、試験開始時の標線間距離と切断時の標線間距離とから切断時伸び(伸び率)を算出した。
第3表(実施例11〜18)および第4表(比較例4)の切断伸びの欄に、伸び率と評価を示す。
伸び率350%以上を伸びが特に優れるとして「◎」と評価し、伸び率200%以上350%未満を伸びが優れるとして「○」と評価し、伸び率200%未満を伸びが十分でないとして「×」と評価した。
【0097】
〈6.搬送性〉
各水系接着剤組成物の搬送性を、加圧型定量ギアポンプによる搬送にバルーンが破壊されずに耐えられるか否かによって評価した。
ギヤポンプ(ZENITH社製)を20rpmで回転させて、水系接着剤組成物を搬送させ、吐出された水系接着剤組成物の比重を測定し、ギアポンプを通過していない水系接着剤組成物の比重と同等であれば搬送性に優れるとして「○」と評価し、ギアポンプを通過していない水系接着剤組成物の比重よりも大きい場合であれば、搬送性が十分でないとして「×」と評価した。
【0098】
〈7.総合評価〉
実施例1〜18および比較例1〜4の試験結果からわかるように、樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)、マイクロバルーン(B)ならびに増粘剤(C)を含む水系接着剤組成物であって、該組成物の20℃での粘度が10000〜100000mPa・sであり、かつ該組成物の比重が0.6〜1.0である水系接着剤組成物は、優れた初期接着力および常態接着力を有し、かつ、貯蔵安定性に優れるという有利な効果を奏するものである。
【0099】
しかも、実施例11〜18の試験結果について、実施例13〜16と、実施例11、12、17および18とを比較すれば容易に理解できるように、マイクロバルーン(B)が、球状無機微粉末で表面処理された平均粒径が30〜99μmのプラスチックバルーンであり、樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)の固形分100質量部に対して0.1〜15質量部含まれ、20℃粘度が15000〜100000であると、前記した有利な効果に加え、伸びが特に優れ、搬送性にも優れるという別の有利な効果をも奏する。
【0100】
本発明の水系接着剤組成物は、塗布量(単位面積あたりの質量)を下げても十分な接着体積(単位面積あたりの体積)が確保されて優れた接着力を発揮し、しかも貯蔵安定性に優れ、かつ従来の塗工程を変更することなく使用することができるため、従来よりも低コストで、従来と同様に広範な用途、例えば建築部材の接着や車両構成部品の接着等の用途に用いることができ、溶剤を使用しないので環境への汚染性もなく、脱VOC(揮発性有機化合物)の産業界の要求にも応えることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の水系接着剤組成物の用途は、特に限定されないが、たとえば、住宅、オフィス等に用いられる建材用途や車両用途等に使用することができ、特に好ましくは、サイディングボードと鋼板の接着に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)、マイクロバルーン(B)ならびに増粘剤(C)を含む水系接着剤組成物であって、該組成物の20℃での粘度が10000〜100000mPa・sであり、かつ該組成物の比重が0.6〜1.0である水系接着剤組成物。
【請求項2】
前記マイクロバルーン(B)を前記樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)の固形分100質量部に対して0.1〜50質量部含む、請求項1に記載の水系接着剤組成物。
【請求項3】
前記マイクロバルーン(B)の比重が0.05〜0.7である、請求項1または2に記載の水系接着剤組成物。
【請求項4】
前記マイクロバルーン(B)の平均粒径が30〜200μmである、請求項1〜3のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
【請求項5】
前記マイクロバルーン(B)が、プラスチックバルーン、ガラスバルーン、セラミックバルーンおよびシラスバルーンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
【請求項6】
前記水系接着剤組成物の20℃での粘度が15000〜100000mPa・sであり、
前記マイクロバルーン(B)を前記樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)の固形分100質量部に対して0.1〜15質量部含み、
前記マイクロバルーン(B)がプラスチックバルーンであり、
該プラスチックバルーンの平均粒径が30〜99μmであり、かつ、
該プラスチックバルーンが球状無機微粉末で表面処理されている、請求項1に記載の水系接着剤組成物。
【請求項7】
前記球状無機微粉末が球状炭酸カルシウムおよび/または球状シリカである、請求項6に記載の水系接着剤組成物。
【請求項8】
前記プラスチックバルーンの比重が0.1〜0.2である、請求項6または7に記載の水系接着剤組成物。
【請求項9】
前記樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)が、スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスである、請求項1〜8のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
【請求項10】
前記スチレン−ブタジエン−アクリル共重合体ラテックスのスチレン−ブタジエン部分とアクリル部分との質量比が、スチレン−ブタジエン部分/アクリル部分=95/5〜60/40である、請求項9に記載の水系接着剤組成物。
【請求項11】
前記樹脂エマルジョンおよび/またはゴムラテックス(A)が、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、イソプレンラテックス、アクリル樹脂エマルジョンおよび酢酸ビニル樹脂エマルジョンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
【請求項12】
前記増粘剤(C)が、無水ケイ酸、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびこれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1〜11のいずれかに記載の水系接着剤組成物。

【公開番号】特開2010−209326(P2010−209326A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30704(P2010−30704)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】