説明

水素の貯蔵及び/又は発生

適当な溶媒中に電子供与体及び電子受容体を含んだ水素貯蔵及び/又は発生配合及び組成物、並びに、水素を貯蔵及び/又は発生させるための関連する方法及びシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年12月14日出願の米国仮出願第61/286,104号の優先権を主張し、米国仮出願第61/286,104号の全体を引用によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本開示は、水素の貯蔵及び/又は発生、並びに、関連する配合、組成物、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
水素は、炭素質材料及び他の高多孔性又は金属合金材料等、固体状態の材料中に貯蔵され得る。
【0004】
特には、水素を貯蔵するのに適当なほとんどの材料は、水素の貯蔵のために高圧及び低温を必要とする。その後、水素は、典型的には、熱又は化学反応によって貯蔵材料から発生し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで提供されるのは、水素の貯蔵及び/又は放出のための配合、装置、組成物、方法及びシステムであり、これらは、種々の態様において、水素が貯蔵及び/又は放出され得る効率的な方法を提供する。
【0006】
第1の側面によれば、水素貯蔵配合及び当該配合を含んだ装置が記載される。水素貯蔵配合は、溶媒中に供給された電子供与体及び電子受容体を含む。水素貯蔵配合において、電子供与体は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属及び/又はそれらの合金を含む電子供与金属を含み、電子受容体は、有機ラジカル及び/又は多環式芳香族炭化水素を含む。水素貯蔵配合において、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部は、溶媒に溶解し、それによって、水素と反応して溶媒中に水素を貯蔵することのできる化学種を発生する。いくつかの態様では、水素貯蔵配合は、当該配合中の化学種と反応して金属ヒドリド有機錯体を形成する水素を更に含む。水素貯蔵配合は、適当な水素貯蔵装置中に含まれていてもよい。
【0007】
第2の側面によれば、水素貯蔵配合中に水素を貯蔵する方法と、それによって得ることのできる水素貯蔵配合とが記載される。当該方法は、水素を、本明細書に記載された溶媒中に供給された電子供与体及び電子受容体を含む水素貯蔵配合と接触させることを含み、ここにおいて、当該配合は、水素と反応することができる化学種を含んでいる。当該方法において、接触は、水素を当該配合中に貯蔵するための水素と当該化学種との反応を許容する条件で、一定時間行われる。
【0008】
第3の側面によれば、水素貯蔵配合から水素を放出する方法が記載される。当該方法は、水素貯蔵配合圧力において、本明細書に記載された水素を含み、本明細書に記載された水素貯蔵配合を提供することと、水素貯蔵配合圧力を低下させて水素を放出することとを含む。
【0009】
第4の側面によれば、適当な溶媒中に水素を貯蔵する方法と、それによって得ることのできる溶液が記載される。当該方法は、水素を、水素と溶媒との反応を許容する条件で、一定時間、溶媒に接触させることを含む。当該方法において、溶媒は、電子受容体を更に含んだ溶液中に、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部を溶解させることができ、電子供与体は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属及び/又はこれらの合金を含んだ電子供与金属を含み、電子受容体は、多環式芳香族炭化水素及び/又は有機ラジカルを含む。
【0010】
第5の側面に従うと、溶液から水素を放出する方法が記載される。当該方法は、始動圧力で本明細書に記載された水素を含む溶液を提供することと、当該始動圧力を低下させて水素を放出することとを含む。
【0011】
第6の態様によれば、水素発生配合及び水素発生器が記載される。水素発生配合は、本明細書に記載された溶媒中に供給された、本明細書に記載された電子供与体と電子受容体とを含む。水素発生配合において、電子供与金属と電子受容体とは、水又は不安定なプロトンを含んだ有機分子と反応して水素を発生させることができる。
【0012】
第7の側面によれば、水素発生方法及びシステムが提供される。当該方法は、本明細書に記載された水素発生配合を、不安定なプロトンを含んだ化合物と接触させることを含み、当該接触は、水素を発生させるための、電子供与金属及び電子受容体と不安定なプロトンを含んだ化合物との反応を許容する条件で、一定時間行われる。当該システムは、本明細書に記載された溶媒中に供給された、本明細書に記載された電子供与体及び電子受容体のうちの少なくとも2つと;本明細書に記載された方法において同時に組み合わせるか又は逐次的に使用するための、不安定なプロトンを含んだ1以上の化合物とを含む。
【0013】
第8の側面によれば、水素貯蔵及び/又は発生配合を提供する方法及びシステムが記載される。当該方法は、本明細書に記載された溶媒中で、本発明に記載された電子供与体と電子受容体とを接触させることを含む。当該方法において、当該接触は、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部を溶媒に溶解させるように行われ、それによって、水素と反応して溶媒中に水素を貯蔵することができるか又は不安定なプロトンを含んだ化合物と反応して水素を発生させることのできる化学種を発生させる。いくつかの態様において、当該方法は、化学種を水素と接触させて、溶媒及び/又は配合内に金属ヒドリド錯体を形成することを更に含む。当該システムは、電子供与体及び電子受容体と、本明細書に記載された、当該方法において同時に組み合わせて又は逐次的に使用するための溶媒とを含み、本明細書に記載された水素貯蔵及び/又は水素発生システムを提供する。
【0014】
本明細書で記載する、配合、組成物、装置、方法及びシステムは、水素貯蔵及び/又は発生が望まれる用途に関連して使用することができる。典型的な用途は、燃料、特に、燃料電池、電池、特には、携帯電話機への適用のための小型エネルギー担体、及び、水素オンデマンドシステムを含む、所謂、水素経済と関連した更なる用途を含み、これらは当業者によって識別可能である。更なる用途は、(例えば、塩素が関与する)化学反応の結果として水素が製造される産業プロセスを含み、当該プロセスでは、製造した水素を貯蔵する水素貯蔵が望まれる。
【0015】
本開示の1以上の態様の詳細は、添付の図面及び以下の説明に示される。他の特徴、目的及び利点は、当該説明及び図面、並びに、特許請求の範囲から明らかである。
【0016】
本明細書に組み込まれ、且つ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示の1以上の態様を説明し、詳細な説明及び実施例と共に本開示の原理及び実施を説明する機能を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本明細書に記載された態様に従う、SES中に水素を貯蔵する典型的なシステムの略図を示す。水素は、タンク(100)に貯蔵される。水素は、バルブ(150)を介してシステムに入ることができ、システムへ入る水素の圧力は、外気へのバルブ(155)と連結するバラトロン(140)によって測定される。最高で300mlまでの水素を格納スペース(160)に貯蔵することができる。圧力容器(110)は、SESを収容している。バルブ(170)及び(180)は、水素が圧力容器に入るのを可能にする。バラトロン(130)は、圧力容器中の圧力変化を測定する。バルブ(190)は、回収装置(120)へのSESの回収を可能にする。
【図2】図2は、本明細書に記載された態様に従って行われる水素貯蔵を説明する略図を示す。特には、THF(210)中の水素、THF−ナフタレン−K(220)中の水素及びTHF−ナフタレン−Li(230)中の水素に関して、圧力(atm)に対する水素吸収(y軸、重量%)について報告する。
【図3】図3は、本明細書に記載された態様に従う、水素選択透過膜を有する水素貯蔵及び発生反応器の略図を示す。
【図4】図4は、本明細書に記載された態様に従う、水素選択透過膜を有する水素発生反応器の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
水素の貯蔵及び/又は放出のための配合、装置、組成物、方法並びにシステムが説明されるが、これらは、種々の態様において、溶媒中に供給された電子供与体と電子受容体、及び/又は、単独の溶媒に基づいている。
【0019】
「電子供与体」の語は、還元剤を指す。「還元剤(”reducing agent”及び”reduction agent”)」の語は、物質と反応し、当該物質に電子を与え、及び/又は、当該物質の酸化状態を減少させる物質を指す。電子供与体が電子を提供するクラスを、電子受容体と称する。
【0020】
「電子受容体」の語は、酸化剤を指す。「酸化剤("oxidation agent”及び”oxidizing agent”)」の語は、物質と反応し、当該物質に電子を失わせ、及び/又は、当該物質の酸化状態を増加させる物質を指す。電子受容体が電子を受容するクラスを、電子供与体と称する。
【0021】
本明細書で使用する「溶媒」の語は、固体、液体又は気体溶質を溶解させて、溶液をもたらす液体、固体又は気体を指す。液体溶媒は、電子供与金属から電子受容体への電子移動を促進すべく、電子受容体(例えば、多環式芳香族炭化水素等)及び電子供与金属を溶解させることができる。溶媒は、本開示の可溶性水素貯蔵配合において、電子供与金属及び電子受容体を溶解させて電子供与金属イオン及び溶媒和電子を溶媒中に形成するために特に有用である。溶媒としては、有機分子を含んだ溶媒である「有機溶媒」が挙げられる。いくつかの態様において、溶媒は液体溶媒である。水素は、溶液中で、固体状態の結晶中よりも速く拡散することが予想される。いくつかの態様において、溶液が攪拌され、振とうされ、超音波処理され、又は、放射線照射されて水素ガスとの接触表面を増加させる場合、硬い構造の固体とは異なり、拡散が一層速い。
【0022】
本明細書で説明する配合、組成物、装置、方法及びシステムにおいて、電子供与体は、電子供与金属を含む。「電子供与金属」の語は、1以上の電子を他へと移動させる金属を指す。本明細書に記載された電子供与金属としては、限定するものではないが、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びランタニド金属(ランタノイド金属としても既知)が挙げられる。本明細書で使用する「アルカリ金属」の語は、周期表の第1族(IUPAC式)を形成する化学元素を指し、当該元素としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)が挙げられる。「アルカリ土類金属」の語は、周期表の第2族(IUPAC式)を形成する化学元素:ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra)を指す。本明細書で使用する「ランタニド金属」の語は、ランタンからルテチウムまでの、原子番号57〜71を有する15個の元素を指す。
【0023】
本明細書に記載された電子供与金属としては、限定するものではないが、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)を含むホウ素族(第13族)の金属、ゲルマニウム、ケイ素及び炭素等の半金属(第14族元素)、並びに、当業者によって識別可能な更なる半金属が挙げられる。
【0024】
一態様において、電子供与体は、元素周期表の同じ又は異なる族からの1以上の電子供与金属を、当業者が識別することができる組み合わせで含んでいてもよい。特には、一態様において、電子供与金属は、1以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属又は当業者が識別することができるそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0025】
本明細書に記載された配合、組成物、装置、方法及びシステムにおいて、電子受容体は、多環式芳香族炭化水素及び/又は有機ラジカルを含む。
【0026】
「多環式芳香族炭化水素」(「PAH」と略す)の語は、2以上の芳香環を含んだ炭化水素を指す。多環式芳香族炭化水素中の環は、六角形(6つの辺を有する環)、五角形(5つの辺を有する環)、四角形(4つの辺を有する環)及び三角形(3つの辺を有する環)の形状である。本願中の特定の多環式芳香族炭化水素における環の総数は、2〜200の範囲、特には、2〜100の範囲、特には、2〜50の範囲、特には、2〜20の範囲、及び、特には、2〜10の範囲である。本明細書に記載された多環式芳香族炭化水素は、電子受容体として機能し得る。
【0027】
一態様において、多環式芳香族炭化水素(PAH)は、1以上の複素環及びヘテロ原子置換を含み得る。1以上のSi、B又はNによる炭素原子の置換は、PAHの電子構造及びその電子受容体としての性質に影響を及ぼす。Si−、B−及びN−を含んだPAH、並びに、特には多環式芳香族炭化水素置換されたPAHは、増強された溶媒和電子形成能力を有し、ひいては、水素貯蔵を助ける。
【0028】
いくつかの態様では、本明細書に記載されたPAHは、一般式:
a(1−x)ax,(I)
[式中、Aは、Si、B及び/又はNであり、0.005<x<0.9であり、a及びbは、化学量論係数である]を有してもよい。PAHが式(I)の化合物である態様のうちのいくつかにおいて、xは、0.01〜0.75、特には、0.05〜0.50であり、更に特には、0.1〜0.3であってよい。PAHが式(I)の化合物である態様のうちのいくつかにおいて、モル比H/C=b/aは、0〜0.8、特には、0.05〜0.75、更に特には、0.1〜0.5であってよい。
【0029】
多環式芳香族炭化水素としては、限定するものではないが、グラフェン、フラーレン(例えば、C60、C70等)、アズレン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アントラセン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、クリセン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、トリフェニレン、アンタントレン、ベンゾピレン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]フルオランテン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、コランニュレン、コロネン、ジコロニレン(Dicoronylene)、ヘリセン、ヘプタセン、ヘキサセン、オバレン、ペンタセン、ピセン、ペリレン及びテトラフェニレンが挙げられる。上記PAHの誘導体もまた、本発明の水素貯蔵及び発生に適用することができ、当該誘導体としては、式(I)中の水素を、限定するものではないが、アルキル基等の有機ラジカルによって、及び/又は、限定するものではないが、アルコール基、酸性基、ケトン基、アミン基等の有機官能基によって置換することにより得られるものが挙げられる。
【0030】
「オルガノラジカル」又は「有機ラジカル」の語は、不対電子を有する有機分子を指す。有機ラジカルは、有機ラジカルのハライド類似体の形態で、溶液又は溶媒に提供され得る。有機ラジカルとしては、アルキルハライドとして溶液又は溶媒に供給され得るアルキルラジカルが挙げられる。有機ラジカルは、電荷移動、部分電子移動又は完全電子移動反応を介して電子供与金属と反応し、有機金属試薬を形成し得る。有機ラジカルは、電子受容体として機能し得る。「有機金属試薬」の語は、炭素原子と電子供与金属との間の1以上の直接的な結合を有する化合物を指す。有機ラジカルとしては、限定するものではないが、ブチル、エチル、メチル、フェニル及びアセチルラジカルが挙げられる。有機ラジカルは、当業者によって識別可能な、モノラジカル(例えば、ブチルリチウム等において)又は多重ラジカル(例えば、ジフェニル−リチウム及びエチル−メチル−リチウム等において)として存在し得る。
【0031】
一態様において、電子受容体は、1以上のPAH、特には、式(I)のPAH、及び/又は、1以上の有機ラジカルを、当業者が識別することができる組み合わせで含み得る。
【0032】
本明細書に記載された配合、組成物、装置、方法及びシステムにおいて、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部は、溶媒中に溶解され、それによって、水素と反応して水素を溶媒中に貯蔵及び/又は発生させることのできる化学種を発生させる。特には、電子受容体が多環式芳香族炭化水素である態様において、化学種は、金属イオン及び溶媒和電子を含む。電子受容体が有機ラジカルである態様において、化学種は、有機金属を含む。
【0033】
いくつかの態様において、本明細書に記載された配合、組成物、装置、方法及びシステムは、水素の貯蔵及び発生のための1以上の触媒を更に含み得る。本明細書で使用する「触媒」の語は、反応速度に適切に影響し、そして特には、反応速度を高める任意の化合物を指す。いくつかの態様において、本明細書に記載された配合、装置、組成物、方法及びシステムにおいて適当な触媒は、白金系触媒、鉄、マンガン、ニッケル及びコバルト系触媒、可溶及び不溶性遷移金属酸化物触媒(MOx)、可溶及び不溶性遷移金属塩化物(CoCl2、FeCl3、NiCl2、MnCl2)、チタン、ジルコニウム、モリブデン、タングステン及びニオブ系触媒を含む。更なる触媒は、本開示に従って使用することができ、当業者が本開示を読むことにより識別することができる。
【0034】
特には、電子受容体が、多環式芳香族炭化水素、特には、多環式芳香族炭化水素である態様において、本開示の配合及び組成物は、溶媒和電子の溶液の形態であってよい。「溶媒和電子」の語は、溶液中で溶媒和する電子を指す。溶媒和電子は、溶媒又は溶質分子には結合せず、むしろ、溶媒及び/又は溶質分子間の空間を占有する。溶媒和電子を含んだ溶液は、溶媒和電子の存在のため、より高い濃度において青色若しくは深緑色又は銅色であってよい。溶媒和電子の溶液を含んだ溶媒和電子溶液は、技術水準である、固体状態の水素貯蔵及び発生システムと比較して、水素貯蔵及び発生能力を著しく増加させ得る(重量%及び体積%で)。
【0035】
「溶媒和電子溶液」又は「SES」の語は、水素貯蔵及び発生に関与する化学種が、少なくとも部分的に液体の形態で供給される溶液を指す。溶媒和電子溶液システムは、水素貯蔵及び発生に関与しない要素、例えば、支持電解質、溶解触媒、担持触媒、機械装置(例えば、機械的若しくは磁気攪拌子など)、音響若しくは超音波振動発生器、電磁波発生器並びに溶媒等を含んでいてもよい。「溶媒和電子溶液」は、いくつかの不溶性凝集体種を含んでいてもよい。典型的なSESは、[参考文献1]〜[参考文献11]に記載され、それらの各々は、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
電子受容体が有機ラジカルである態様において、本開示の配合及び組成物は、有機金属溶液の形態であってよい。「有機金属溶液」の語は、アルキルラジカル等の有機種と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ホウ素族金属及び半金属等の強力な電子供与性金属と、溶媒とからなる化合物を指す。典型的な適当な化合物には、有機リチウム、有機シラン(例えば、ジシラン、シラノール、シラザン、シリケート、シロキサン、トリアルコキシシラン、当業者によって識別可能な他のもの)、有機アルミニウム、有機ゲルマニウム、及び、当業者によって識別可能な更なる化合物が含まれる。ヘキサン中のN−ブチルリチウムは、水素貯蔵及び発生のための「有機金属溶液」の一例である。本開示に示されるN−ブチルリチウム及び/又は更なる有機金属化合物のための他の適当な溶媒は、当業者によって識別することができる。「有機金属溶液」は、水素貯蔵及び発生に関与しない要素、例えば、支持電解質、溶解触媒、担持触媒、機械装置(例えば、機械的又は磁気攪拌子、音響又は超音波振動発生器、電磁波発生器等)及び溶媒を含んでいてもよい。「有機金属溶液」は、いくつかの不溶性凝集体種を含んでいてもよい。
【0037】
「凝集体/凝集」及び「凝固/凝固物」の語は、同等に使用され、溶媒和電子溶液及び有機金属溶液が、固体沈殿物種を溶液中で形成する現象を表す。水素は、溶媒和電子溶液及び有機金属溶液が凝集又は凝固したときであっても、溶媒和電子溶液及び有機金属溶液に貯蔵され、且つ、当該溶液から発生する。
【0038】
一態様において、本明細書に記載されたSES及び有機金属溶液は、混合され、1以上のSESと1以上の有機金属溶液とを含んだ配合を形成し得る。
【0039】
いくつかの態様において、本明細書に記載されたSES及び有機金属溶液は、効果的な水素の貯蔵、放出及び発生が可能であり、それによって、水素貯蔵及び発生物質のクラスが、周囲温度及びより低圧においても、高い水素貯蔵及び発生能力を有することを可能にする。更に、一態様において、本明細書に記載されたSES及び有機金属溶液は、従来の固体状態の水素貯蔵技術に対して、高い貯蔵及び発生能力と改良した安全性とを組み合わせた水素貯蔵及び発生システムを提供する。
【0040】
いくつかの態様において、本明細書に記載されたSES及び有機金属溶液は、非常に用途が広い。SES及び有機金属溶液は、周囲温度及び比較的低い水素圧で多量の水素を貯蔵及び発生させることができる。気液反応の場合、溶媒和電子溶液中での水素貯蔵及び発生の反応速度論は、機械的エネルギー、例えば、溶液攪拌、超音波振動、電磁場照射又は当該分野で既知の、気相と液相との間の接触面を増加させて溶液中の水素ガスの溶解及び移送を促進する他の全ての機械的及び照射手段等によって向上される。さらに、溶媒和電子溶液中に貯蔵される水素の量は、増加した水素圧及びより低い反応温度に伴って増加する。それに対して、溶媒和電子溶液から発生する水素の量は、より低い水素ガス圧及びより高い反応温度に伴って増加するであろう。
【0041】
種々の態様において、本明細書に記載された水素貯蔵及び/又は発生配合は、電子供与体及び電子受容体を、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部を溶媒に溶解させ得る条件で、一定時間接触させ、それによって、水素と反応して、水素を溶媒中に貯蔵することのできる化学種を発生させることにより、提供され得る。
【0042】
いくつかの態様において、溶媒、電子供与体及び電子受容体は、当業者が本開示を読むことにより識別することができる手順に従って、標準的な温度及び圧力、場合によっては、不活性雰囲気(例えば、グローブボックス)下で混合することができる。
【0043】
配合がSESの形態である一態様において、金属:電子受容体:溶媒のモル比が、約1〜6:0.01〜10:1〜15である。配合がMORの形態である一態様において、金属:電子受容体:溶媒のモル比は、約1〜6;0.1〜10:1〜15である。
【0044】
本明細書に記載された配合、方法及びシステムにおいて適当なSESを提供する典型的な手順を、例1〜3において説明する。
【0045】
本明細書に記載された配合、方法及びシステムにおいて適当な有機金属溶液を提供する典型的な手順を、例4において説明する。
【0046】
いくつかの態様において、本明細書に記載された配合は、水素を貯蔵する方法及び/又はシステムにおいて使用される。方法は、水素を、本明細書に記載された溶媒中に供給された電子供与体及び電子受容体を含んだ水素貯蔵配合と接触させることを含み、当該配合は、水素と反応することのできる化学種を含む。当該方法において、当該接触は、水素を化学種と反応させて水素を当該配合中に貯蔵し得る条件で、一定時間、行われる。本明細書で使用する「接触」又は「接触させる」の語は、直接的又は間接的に、少なくとも2つの部分が互いに物理的な結合を生ずることを指す。従って、接触には、当該部分を共に容器内に設置する等の物理的行為を含む。
【0047】
配合がH中に存在する、本明細書に記載されたいくつかの態様において、Hは、貯蔵中にSES又は有機金属溶液(MOR)に溶解することが予想され、これは、下記の組成に関する反応式に従って、脱貯蔵(de-storage)の間に放出される。
【化1】

[式中、Mは、電子供与金属(例えば、Li)、PAH(例えば、ナフタレン)であり、ORは、有機ラジカル(例えば、ブチル)であり、Solv.は、溶媒であり、特には、有機溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)であり、M(PAH)(Solv.)2p及びM(OR)2pは、金属ヒドリド有機錯体であり、<反応式1>において、m、n及びqは、約0.1<n<約15、約0.075<m<約7.5、約1<q<約50、約0.05n<p<10nであり、<反応式1’>において、m及びnは、約1<n<6、約0.1<m<約10、約0.05n<p<10nである]
【0048】
本明細書で使用する「金属ヒドリド錯体」の語は、金属ヒドリドよりも弱いM−H結合を含む錯体を指す。本明細書で使用する「金属ヒドリド有機錯体」は、金属ヒドリド錯体を示し、これは、有機的部分(例えば、PAH又はOR)を更に含む。金属ヒドリド錯体を特徴付ける、MとHとの間のより弱い結合に関する可能な説明は、限定することを意図するものではなく本明細書中に説明目的のためだけに含まれるが、M−H結合は、溶媒及び/又は溶媒中の溶媒和電子によって弱められるというものである。
【0049】
従って、いくつかの態様において、SES又はMORに貯蔵される水素は、金属ヒドリドよりも容易に回収され、これは、通常は、必須ではなく、高温で加熱することを必要とする。いくつかの態様では、SES又はMOR中の水素は、従来の金属ヒドリドと比較して、周囲温度及び/又はより低温で回収され得る。
【0050】
一態様において、Mは、1以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属及び/又はランタニド金属であってよい。一態様において、Mは、1以上のアルミニウム、亜鉛、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、ランタン、ユーロピウム、ストロンチウム又はこれらの金属の合金であってよい。いくつかの態様において、電子供与金属は、金属ヒドリド、金属アルミノヒドリド、金属ボロヒドリド、金属アルミノボロヒドリド又は金属ポリマーとして供給されてもよい。金属ヒドリドは、当該分野、例えば、本明細書の記載と矛盾しない程度で、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、A. Hajos,「錯体ヒドリド」, Elservier, Amsterdam,1979年において既知である。一態様において、Mは、Li及び/又はKであってもよい。
【0051】
いくつかの態様では、溶媒中の電子供与金属イオンの濃度は、約0.1M以上であり、任意に、いくつかの用途については、0.2M以上、任意にいくつかの用途については約1Mである。特に、配合又は組成物がSES溶液の形態であるいくつかの態様において、SES溶液中で過剰な金属を使用することもできる。それらの態様のうちのいくつかにおいて、過剰な金属は、一旦SESが水素と組み合わされると、溶媒和電子のための「タンク(reservoir)」として機能し、故に、貯蔵される水素の量を増加させる。従って、いくつかの態様において、金属Mは、固体状態の形態(例えば、大きな塊、ホイル及び粉末の形態)で、SESに添加することができる。次いで、SESは、金属及び溶媒和電子によって飽和され得る。水素が添加される場合、金属ヒドリド錯体が形成される。過剰に添加した金属は、SES中に溶解し、より多くの溶媒和電子を発生させ、従って、より多くの水素が、金属ヒドリド錯体の形態で貯蔵されるのを可能にする。それらの態様のうちのいくつかにおいて、添加したMの量は、溶媒1リットル当たり0.1〜50モル、特には、1〜50モル、特には、5〜50モルの範囲である。
【0052】
いくつかの態様では、溶媒中の電子供与金属イオンの濃度は、約0.1M〜10Mの範囲から選択され、任意にいくつかの用途については、約0.2M〜約5Mの範囲から選択され、任意にいくつかの用途については、約0.2M〜約2Mの範囲から選択される。
【0053】
適当な多環式芳香族炭化水素(PAH)の範囲には、1以上のアズレン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、アセナフテン、アセナフチレン、アントラセン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾ[a]フェナントレン、クリセン、フルオランテン、ピレン、テトラセン、トリフェニレン、アンタントレン、ベンゾピレン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[e]フルオランテン、ベンゾ[ghi]ペリレン、ベンゾ[j]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、コランニュレン、コロネン、ジコロニレン(Dicoronylene)、ヘリセン、ヘプタセン、ヘキサセン、オバレン、ペンタセン、ピセン、ペリレン及びテトラフェニレン並びにこれらのPAHの混合物が含まれる。それらの態様のうちのいくつかにおいて、PAHは、式(I)の化学量論に従って置換される。
【0054】
一態様において、有機金属溶液は、アルキルラジカルと、強力な電子供与金属、例えば、アルカリ金属(即ち、アルキル−アルカリ金属)、アルカリ土類金属(即ち、アルキル−アルカリ土類金属)、ホウ素及びアルミニウム等と、溶媒とを含む。ヘキサン中のN−ブチルリチウムは、水素貯蔵及び発生のための「有機金属溶液」の一例である。
【0055】
「アルキル−アルカリ金属」の語は、アルキル有機ラジカルとアルカリ金属原子との組み合わせを指し、ここで、アルキルラジカルは、脂肪族炭化水素から得られる、一般式C2z+1[但し、z≧1]の一連の分岐した又は分岐していない1価の基を示す。典型的なアルキル−アルカリ金属は、メチルリチウム、メチルナトリウム、メチルカリウム、メチルルビジウム、メチルセシウム、メチルフランシウム、エチルリチウム、エチルナトリウム、エチルカリウム、エチルルビジウム、エチルセシウム、エチルフランシウム、プロピルリチウム、プロピルナトリウム、プロピルカリウム、プロピルルビジウム、プロピルセシウム、プロピルフランシウム、ブチルリチウム、ブチルナトリウム、ブチルカリウム、ブチルルビジウム、ブチルセシウム、ブチルフランシウム、ペンチルリチウム、ペンチルナトリウム、ペンチルカリウム、ペンチルルビジウム、ペンチルセシウム、ペンチルフランシウム、ヘキシルリチウム、ヘキシルナトリウム、ヘキシルカリウム、ヘキシルルビジウム、ヘキシルセシウム、ヘキシルフランシウム、ヘプチルリチウム、ヘプチルナトリウム、ヘプチルカリウム、ヘプチルルビジウム、ヘプチルセシウム、ヘプチルフランシウム、オクチルリチウム、オクチルナトリウム、オクチルカリウム、オクチルルビジウム、オクチルセシウム、オクチルフランシウム、ノニルリチウム、ノニルナトリウム、ノニルカリウム、ノニルルビジウム、ノニルセシウム、ノニルフランシウム、デシルリチウム、デシルナトリウム、デシルカリウム、デシルルビジウム、デシルセシウム、デシルフランシウム、ウンデシルリチウム、ウンデシルナトリウム、ウンデシルカリウム、ウンデシルルビジウム、ウンデシルセシウム、ウンデシルフランシウム、ドデシルリチウム、ドデシルナトリウム、ドデシルカリウム、ドデシルルビジウム、ドデシルセシウム及びドデシルフランシウムを含む。
【0056】
いくつかの態様において、溶媒中の電子受容体の濃度は、約0.1M以上、任意にいくつかの用途については、0.2M以上、任意にいくつかの用途については、1M以上である。いくつかの態様では、溶媒中の電子受容体の濃度は、0.1M〜15Mの範囲から選択され、任意にいくつかの用途については、0.2M〜5Mの範囲から選択され、任意にいくつかの用途については、0.2M〜2Mの範囲から選択される。
【0057】
様々な溶媒が、本明細書中に記載されたSES並びに水素貯蔵及び発生システムとともに使用され得る。いくつかの用途には、顕著な量の(例えば、約0.1〜15Mの溶液を生成する)電子供与金属及び電子受容体を溶解することができる溶媒が好ましい。
【0058】
例えば、いくつかの態様では、溶媒は、水、テトラヒドロフラン(THF)、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、エチレンカルボネート、プロピレンカルボネート、ベンゼン、二硫化炭素、四塩化炭素、ジエチルエーテル、エタノール、クロロホルム、エーテル、ジメチルエーテル、ベンゼン、プロパノール、酢酸、アルコール、イソブチルアセテート、n−ブチル酸、酢酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルメート、エチルアミン、イソプロピルアミン、ヘキサメチルホスホトリアミド、ジメチルスルホキシド、テトラアルキル尿素、トリフェニルホスフィンオキシド又はこれらの混合物である。いくつかの態様において、混合物のうちの1つの溶媒が電子受容体を溶媒和させることができ、混合物のうちの別の溶媒が支持電解質を溶媒和させることができるような溶媒の混合物が望ましい。一態様において、溶媒は、THF、ベンゼン及び/又はナフタレン或いはこれらの混合物であってよい。一態様において、ナフタレン、アントラセン及びピレン又はこれらの混合物である。電子供与金属がアルカリ金属を含む一態様では、溶媒は、THF、ナフタレン及びテトラセンであってよく、これらを使用して、アルカリ金属又はそれらの混合物を溶解させることができる。
【0059】
いくつかの態様において、SES及びMOR溶液に適当な溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、フラン、ピロリドン、ジオキサン、ジエチルエーテル、ピロール、ピロリン、ピロリジン、チオフェン、チオエーテル、テトラヒドロチオフェン、ジエチルスルフィド、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、n−メチルホルムアミド、アセタミド、ホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、n−メチルピロリドン(NMP)、イソブチルアセテート、エチルアセテート、ベンゼン、ヘキサン、四塩化炭素、ジオキシメタン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、トルエン及びアセトンを含む。
【0060】
いくつかの態様において、適当な溶媒は、1以上の無機溶媒を含む。典型的な適当な無機溶媒は、テトラボロヒドリドBH、テトラアルミノヒドリドAlH、シリカ−アルミノヒドリド(例えば、SiAl1−y、ボロ−シリカヒドリドSi1−y及び/又はボロ−アルミノヒドリドBAl1−y、式中、0<y<lである)を含む。適当な更なる無機溶媒は、当業者が本開示を読むことにより識別することができる。
【0061】
一態様において、M(PAH)及び特にPAHは、多量ではあるが、溶液が凝固しないような量で溶媒中に溶解する。例えば、凝固が望まれない態様において、金属:PAH:溶媒の最適モル濃度は、Li/ナフタレン/THFを含んだ典型的なSESについて、約1〜6:1〜3:2〜12.33、好ましくは、約1〜4:1〜2:4〜12.33、より好ましくは、約1〜2:1〜2:6〜12.33と決定された。当業者は、金属及びPAHをSESに溶解させる任意の濃度が水素の貯蔵を可能にすることを理解するであろう。
【0062】
一態様において、溶媒中に溶解したM(OR)の量は、多量であるが、溶液が凝固しないような量である。例えば、凝固が望まれない態様において、金属:OR:溶媒の最適モル濃度は、Li/ブチル/ヘキサンを含んだ典型的なMORについて、約1〜3:1〜3:2〜8、好ましくは、約1〜2:1〜2:4〜8、より好ましくは、約1〜2:1〜2:6〜8と決定された。当業者は、金属及び有機ラジカルをMORに溶解させる任意の濃度が、水素貯蔵を可能にすることを理解するであろう。
【0063】
いくつかの態様において、MORのための典型的な溶媒は、ジブチルエーテル、ジオキシメタン、ジエチルエーテル、ベンゼン、シクロヘキサン、ペンタン、THF、ヘプタン、ヘキサン及びトルエンである。
【0064】
配合において水素の貯蔵を可能にする条件下、一定時間、水素を当該配合に接触させる一態様においては、水素が、単一工程によって当該配合に直接的に導入され、且つ、貯蔵され得る。時間、温度及び圧力は、使用される特定の配合によって決まり、当業者が本開示を読むことにより識別することができる。
【0065】
それらの態様のうちのいくつかにおいて、水素導入が、適度な圧力、例えば約10atmで行われ得るが、水素は、それよりも低いか又は高い圧力で貯蔵されてもよい。いくつかの態様において水素圧は、約1〜200atmの範囲である。それらの態様のうちいくつかにおいて、水素圧は、約5〜100atmの範囲である。それらの態様のうちいくつかにおいて、水素圧は、約10〜50atmの範囲である。
【0066】
いくつかの態様において、水素貯蔵は、室温で行われ得るが、水素貯蔵は、それよりも低温又は高温で行われてもよい。特には、いくつかの態様において、水素貯蔵は、実質的に溶媒の融点と沸点との間に含まれる温度で行われ得る。例えば、溶媒がTHF(限定するものではないが、一般的にはSESに関して)である一態様では、水素貯蔵は、約−108.4℃〜約+66℃の温度で行われ得る。溶媒がエキサン(exane)(限定するものではないが、一般的にはMORに関して)である一態様では、水素貯蔵は、約−95℃〜約+69℃の温度で行われ得る。適当な更なる温度は、当業者が識別することができ、例えば、種々の溶媒若しくはそれらの混合物の融点と沸点との間に含まれる温度、又は、当業者が特定できる他の適当な温度である。
【0067】
一態様において、水素を導入する方法では、接触は、単一工程で行われ得る。それらの実施形態のいくつかにおいて、圧力及び/又は温度は、接触の間、実質的に一定に維持される。
【0068】
一態様において、水素は、多段階プロセスで導入され得る。それらの態様のうちのいくつかにおいて、水素を第1圧力で接触し、そして、水素が通常は第1圧力よりも実質的に低い第2圧力において貯蔵されるように、接触は、水素圧を安定化させる条件で一定時間行われる。次いで、更なる量の水素を、典型的には、第2圧力以上の第3圧力で添加し、接触は、通常は実質的に第3圧力以下の第4圧力で水素圧を安定化させる条件で、一定時間行われる。当該プロセスは、何回か繰り返され、その回数は、当業者に理解される通り、望まれる水素貯蔵及び使用される特定の配合によって決定され得る。
【0069】
パラメータの性質に関して本明細書で使用する「実質的に」の語は、パラメータの値を示し、これは、特定された性質に著しい影響を与えない特定された範囲の値の変化であるパラメータ値を示す。当業者は、示される特定のパラメータ及び性質に基づき、これらの変化を識別することができる。
【0070】
いくつかの態様において、SES中の水素貯蔵が金属なしに生ずる配合、方法及びシステムが記載される(例5)。いくつかの態様において、SES中の水素貯蔵が金属としてカリウムを使用して行われる配合、方法及びシステムが提供される(例6)。いくつかの態様において、SES中の水素貯蔵が金属としてリチウムを使用して行われる配合、方法及びシステムが提供される(例7)。
【0071】
いくつかの態様において、水素は、本明細書に記載された水素を典型的には金属ヒドリド錯体内に含んだ水素貯蔵配合を提供し、水素貯蔵配合は配合圧力で提供され、そして、水素を放出するように配合圧力を減少させることにより、水素貯蔵配合から放出することができる。
【0072】
SES及び/又はMORの形態の配合において、当該配合は典型的には、本明細書に記載された金属ヒドリド有機錯体内に水素を含む。それらの形態のうちのいくつかにおいて、金属ヒドリド有機錯体からの水素の放出を対象とする、組成に関する逆反応式は、反応式1及び1’の双方において、Hの脱貯蔵の間に起こることが予測される。
【0073】
配合圧力が、例えば、初期の配合圧力から初期圧力よりも実質的に低い最終配合圧力へと減少し、配合からの水素放出に関連する一態様において、水素は、一段階プロセスで放出される。初期配合圧力が、複数の中間配合圧力を介して初期配合圧力よりも実質的に低い最終配合圧力まで減少する態様において、水素は、多段階プロセスで放出され得る。特には、これらの態様のうちのいくつかにおいて、初期配合圧力は、まず、初期配合圧力よりも実質的に低い第1中間配合圧力まで減少する。次いで、第1中間配合圧力は、第1中間配合圧力よりも実質的に低い第2中間配合圧力まで減少する。次いで、第2中間配合圧力は、更なる数の中間配合圧力を介して、最終配合圧力まで低下し、更なる数の中間配合圧力は、特定の配合及び望まれる水素放出に基づき当業者によって識別され得る。
【0074】
SES又はMOR中の金属ヒドリド有機錯体から水素を放出する典型的な手順は、例において説明される(例8、9及び11を参照のこと)。貯蔵された水素を含んだ配合から水素を放出するのに適当な更なる手順は、攪拌、及び、当業者が本開示を読むことにより識別することのできる追加の方法を含む。
【0075】
各々の工程において温度が実質的に一定に維持され、圧力が定速で減少する一態様において、水素の放出は、室温及び一段階又は多段階の手順に従う圧力で行われ得る。更なる温度及び圧力、並びに、温度変化及び圧力変化は、特定の配合及び望まれる放出を考慮して、当業者が識別することができる。特に、いくつかの態様では、温度と圧力との適当な組み合わせが選択され、溶媒の蒸発を最小化する。
【0076】
いくつかの態様において、水素放出に適当な温度は、溶媒の融点と沸点との範囲内である。溶媒が、融点及び沸点がそれぞれ−108.4℃(融点)又は66℃(沸点)のTHFである態様において、適当な温度は、−108.4℃よりも低く、66℃よりも高いと予測される。例えば、THF系のSESでは、適当な温度範囲は、約−50℃〜約+50℃、特には、約−30℃〜約+40℃であると予測される。異なる溶媒を含んだ配合に関する更に適当な温度は、当業者が識別可能である。溶媒が、融点及び沸点がそれぞれ−95℃(融点)又は69℃(沸点)のヘキサンである態様において、適当な温度は、−95℃未満であり、69℃を超えると考えられている。例えば、ヘキサン系MORにおいて、適当な温度範囲は、約−50℃〜約+50℃であり、特には約−20℃〜約+50℃であると考えられている。異なる溶媒を含んだ配合に更に適当な温度は、当業者が識別することができる。
【0077】
SES又はMOR中の水素貯蔵及び放出のための典型的な手順は、例8、9及び11で記載する。
【0078】
水素が放出されるいくつかの態様では、蒸発した溶媒からの水素の分離は、放出によって又はその後に、当該配合で使用される他の分子及び特には特定の溶媒若しくはそれらの混合物を更に含んだ混合物から水素を選択するのに適した適当なフィルターを使用して行われ得る。いくつかの典型的な態様において、水素を選択的に透過させるセラミック膜を使用して、水素と溶媒分子とを物理的に分離させることができる(例8及び9を参照)。
【0079】
いくつかの態様において、水素は、本明細書に記載された適当な溶媒中に貯蔵され、且つ、放出され得る。それらの態様において、水素貯蔵は、水素と溶媒とを反応させ得る条件で、一定時間、水素を溶媒に接触させることによって行われ得る。本明細書に記載された溶媒のいずれかを使用して、本明細書に記載された方法に従って、水素を貯蔵することができる。電子供与体及び電子供与体の非存在下、水素が溶媒中に貯蔵される典型的な態様は、例5に記載される。それらの態様のうちのいくつかにおいて、水素は、本明細書に記載された水素の貯蔵方法によって得ることのできる溶液から放出され得る。特には、いくつかの態様において、それらの溶媒からの放出は、本明細書に記載された水素を含んだ溶液を始動圧力で提供し、当該始動圧力を低下させて水素を放出することによって行われ得る。
【0080】
いくつかの態様において、水素を発生させるのに適当な配合、方法及びシステムが提供され得る。水素発生配合は、本明細書に記載された溶媒中に、本明細書に記載された電子供与体及び電子受容体を含む。水素発生配合において、電子供与金属と電子受容体とは、水又は他の分子、特に、不安定なプロトンを含んだ有機分子と反応し、水素を発生させることができる。
【0081】
一態様において、SES又はMORを使用して、本明細書に記載された方法及びシステムにおいて水素を発生させることができる。当該方法は、水又は不安定なプロトンを含んだ有機分子を、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を有機芳香族溶媒中に含んだ溶媒和電子溶液に接触させることを含み、当該接触は、水素金属ヒドロキシド及び金属オキシドを発生させる条件で、一定時間行われる。
【0082】
いくつかの態様において、水素貯蔵及び発生又はHO、アルコール若しくは不安定なプロトンを含んだ他の分子からの放出が行われる方法が提供される。いずれかの理論に限定されることなく、特にはいくつかの態様において、水素は、下記の組成に関する反応式:
【化2】

[式中、M、PAH、Sol、OR、n、m及びqは、反応式<反応式1>及び<反応式1’>について上述した値のいずれかであってよく、<反応式2>及び<反応式3>において、m、n、及びqは、約0.1<n<約15、約0.075<m<約7.5、約1<q<約50、約0.05n<p<10n、0≦s≦約2、0≦t≦4であり、<反応式2’>及び<反応式3’>において、m及びnは、約1<n<6、約0.1<m<約10及び約0.05n<p<10n、0≦s≦約2、0≦t≦4である]に従って、例えば水及びアルコールとの反応によってSES及びMOR溶液から放出されると考えられる。
【0083】
反応式<反応式2>及び<反応式2’>において、MO(OH)は、金属の酸化生成物を示し、いくつかの態様において、酸化生成物は、酸化物、水酸化物若しくは酸化水酸化物又はこれらの混合物であってよい。
【0084】
いくつかの態様では、水素発生又はHO、アルコール若しくは不安定なプロトンを含んだ他の有機分子からの放出が、SES形態の配合又は組成物を使用して行われる方法が提供される。これらの態様のうちのいくつかでは、いずれの理論にも限定されることなく、水素発生は、典型的なH2O及びアルコールに関して本明細書に示された組成に関する反応式に従い得る。
【化3】

[<反応式4>及び<反応式4’>において、m、n及びqは、約0.1<n<約15、約0.075<m<約7.5、約1<q<約50、約0.05n<p<10n、0≦s≦約2、0≦t≦4であり、MO(OH)は、金属酸化物生成物の一般表記であり、いくつかの態様において、酸化物(k=0)、水酸化物(s=0)、金属酸化物−水酸化物(k>0及びs>0)又はそれらの組み合わせであってよい]
【0085】
本明細書に記載された配合及び組成がMORの形態である態様において、いずれの理論にも限定されないが、水素発生は、下記の組成に関する反応式:
【化4】

[<反応式5>及び<反応式5’>において、m及びnは、約1<n<6、約0.1<m<約10、約0.05n<p<10n、0≦s≦約2、0≦t≦4であり、当該接触は、THF又は本明細書に記載された適当な他の溶媒中で行われる]に従って行われ得る。
【0086】
いくつかの態様において、不安定なプロトンを有する他の化合物を、適所に、又は水若しくはアルコール単独に加えて、或いは、適当な混合物中で使用することができる。不安定な水素(プロトン)を含んだ有機化合物又は官能基の非包括的なリストには、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、ヒドロペルオキシド、アミド、アミン、イミン、スルホン酸、チオール、ホスフィン、ホスホン酸及びホスフェートが含まれる。SES又はMORに接触させて投入される場合、典型的には、これらの官能基の1つ又は組み合わせを有する有機及び無機化合物の全てが、水素生成のための良好な反応物質である。不安定な水素(プロトン)を含んだ無機反応物質液体の非包括的なリストには、水、過酸化水素(H)、水中の無機酸溶液、水中の無機塩基溶液が含まれる。当業者は、更なる適切な有機化合物及び無機化合物を識別することができる。
【0087】
いくつかの態様において、水素を発生させる接触は、本明細書に記載された配合及び組成物に関連して使用される、SES/MORと、不安定なプロトンを含んだ有機及び無機反応物質の組み合わせとの間で行われる。一態様において、接触は、例えば、Gaを被覆したAl金属に水を添加することにより行われてもよい。NaBHに添加した水は、更に、水素化ホウ素中の結合した水素を放出させる。
【0088】
金属酸化物及び/又は金属水酸化物及び/又は金属酸化物−水酸化物化合物は、水又はアルコールのSES及び/又はMORとの反応の結果、形成され、水素を発生し得る。
【0089】
水素の貯蔵及びHO、アルコール又は他の有機分子からの発生に関する典型的な記載は、(例10)及び(例11)に記載される。
【0090】
いくつかの態様において、装置の2つの別々の区画(例えば、タンク又は他の適当な容器)において、SES/MOSを一方に、不安定なプロトンを有する1以上の化合物を他方に保存し、制御された環境及び制御された流量で混合し、水素を発生させることができる。SES/MORと、不安定なプロトンを含んだ化合物との間の接触は、当業者が識別することのできる異なる方法で達成され得る。
【0091】
例えば、いくつかの態様において、HO又は不安定なプロトンを含んだ他の化合物が、SES/MORの容器に制御された速度で導入され得る(例10を参照)。それらの態様のうちいくつかにおいて、水素は、反応式4及び4’並びに5及び5’に従って直ちに発生させることができる。特に、H発生速度は、不安定プロトンを含んだ化合物(例えば、水又はアルコール)の導入速度に、通常比例する。それらの態様のうちのいくつかにおいて、反応は、典型的には熱を発する。
【0092】
更に典型的な態様において、SES/MOR及び不安定プロトンを有する化合物は、第3の容器に一緒に導入され、第3の容器内でHが生成する。H生成速度は、典型的には、SES/MOR及び不安定なプロトンを含んだ化合物の導入速度に比例し、その組成比は、反応式4、4’、5及び5’に従って決定され得る。
【0093】
更なる典型的な態様において、SES/MOR及び不安定なプロトンを含んだ化合物は、容器の圧力よりも高い圧力で同じ容器に一緒に噴霧される。いくつかの態様において、当該方法は、内燃車両エンジンにおけるガス及び空気注入と同様にして行われる。それらの態様において、噴霧における擬似蒸気中の反応物質間の効率的な接触には、高圧が、典型的に有利に働く。
【0094】
水素が放出されるいくつかの態様において、蒸発した溶媒からの水素の分離は、放出によって又はその後に、当該配合で使用する他の分子、特には特定の溶媒若しくはその混合物を更に含んだ混合物から水素を選択するのに適した適当なフィルターを使用して行われ得る。いくつかの典型的な態様において、水素を選択的に透過させるセラミック膜を使用して、水素と溶媒分子とを物理的に分離させることができる。
【0095】
水素が発生するいくつかの態様において、蒸発した溶媒からの水素の分離は、放出によって又はその後に、当該配合で使用される他の分子、特には特定の溶媒若しくはその混合物を更に含んだ混合物から水素を選択するのに適した適当なフィルターを使用して行われ得る。いくつかの典型的な態様において、水素を選択的に透過させるセラミック膜を使用して、水素と溶媒分子とを物理的に分離させることができる(例10及び11を参照のこと)。
【0096】
一態様において、水素を貯蔵又は発生させる配合は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属又はそれらの合金である電子供与金属を含んだ電子供与体と;溶媒中に供給された、多環式芳香族炭化水素又は有機ラジカルである電子受容体と;を含み、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部は、溶媒に溶解し、それによって、溶媒中に電子供与金属イオン及び溶媒和電子を、又は、溶媒中に有機金属を、それぞれ発生させてもよい。
【0097】
一態様において、水素を貯蔵又は発生させる配合は、溶媒中に供給された、リチウムである電子供与金属を含んだ電子供与体と;溶媒中に供給された、多環式芳香族炭化水素である電子受容体と;を含み、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部は、溶媒に溶解し、それによって、金属イオン及び溶媒和電子を溶媒中に発生させてもよい。
【0098】
一態様において、水素を貯蔵又は発生させる配合は、溶媒中に供給された、ナトリウムである電子供与金属を含んだ電子供与体と;溶媒中に供給された、多環式芳香族炭化水素である電子受容体と;を含み、それによって、ナトリウムイオン及び溶媒和電子を溶媒中に発生させてもよい。
【0099】
一態様において、水素を貯蔵又は発生させる配合は、溶媒中に供給された、カリウムである電子供与金属を含んだ電子供与体と;溶媒中に供給された、多環式芳香族炭化水素である電子受容体と;を含み、それによって、カリウムイオン及び溶媒和電子を溶媒中に発生させてもよい。
【0100】
一態様において、水素を貯蔵又は発生させる配合は、溶媒中に供給された、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属又はそれらの合金である電子供与金属と;溶媒中に供給された、多環式芳香族炭化水素又は有機ラジカルである電子受容体と;少なくとも部分的に溶媒に溶解した金属を含んだ支持電解質と;を含み、それによって、電子供与金属イオン及び溶媒和電子を溶媒中に発生させてもよい。
【0101】
いくつかの態様において、本明細書に記載されたSES及びMOR並びにそれらの混合物は、時間とともに凝集し、溶液内に固体状態の相を形成する傾向がある。かかる凝集は、本開示に従う溶媒和電子溶液及び有機金属溶液の水素貯蔵及び発生能力に影響を及ぼさない。凝集体は、多量の液体溶媒を含んでいるので、高濃縮の溶媒和電子溶液及び有機金属溶液である。高濃度の溶媒和電子溶液及び有機金属溶液並びに凝集体は、当該溶液及び当該凝集体中に貯蔵及び発生した水素の重量及び体積割合を増加させるために望ましい。
【0102】
いくつかの態様において、溶媒和電子溶液が、水素貯蔵及び発生システムにおいて使用され、当該溶媒和電子溶液は、溶媒中に供給された、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属又はそれらの合金である電子供与金属を含んだ電子供与体と;溶媒中に供給された、多環式芳香族炭化水素又は有機ラジカルである電子受容体と;を含み、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部は、溶媒に溶解し、それによって、電子供与金属イオン及び溶媒和電子を溶媒中に発生させる。一態様において、溶媒和電子溶液は、電子供与金属の供給源を更に含み、電子受容体又は溶媒は、操作上、溶媒和電子溶液に結合している。
【0103】
いくつかの態様において、本明細書に記載された水素の配合、組成物、方法及びシステムは、電子受容体として有機ラジカルを含み、ヘキサン中のブチルリチウム(BuLi)溶液、ヘキサン中のブチルナトリウム(BuNa)、ヘキサン中のジブチルマグネシウム及びヘキサン中のジエチルマグネシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含んだ有機金属溶液の形態である。
【0104】
いくつかの態様において、本明細書に記載された、水素貯蔵及び発生のための配合及び組成物中の有機ラジカルは、電荷移動、部分電子移動又は完全電子移動反応を介して、電子供与金属と反応し、有機金属試薬を形成する。有用な有機ラジカルとしては、例えば、アルキルラジカル(例えば、ブチルラジカル、フェニルラジカル、ビフェニルラジカル又はアセチルラジカル等)、アリルラジカル、アミノラジカル、イミドラジカル及びホスフィノラジカルが挙げられる。
【0105】
本明細書に開示される通り、本明細書に記載された電子供与体と電子受容体と溶媒とは、水素を貯蔵、放出及び/又は発生させる、本明細書に記載された方法のいずれかを含んだシステムの一部として提供することができる。システムは、複数の部分のキットの形態で提供され得る。
【0106】
複数部分のキットにおいて、当該方法を行うための電子供与体、電子受容体及び溶媒並びに他の試薬は、独立してキットに含まれ得る。1以上の電子供与体、電子受容体及び溶媒は、当業者が識別できる1以上の組成物中に単独で又は混合物で含まれ得る。1以上の電子供与体、電子受容体及び溶媒の各々は、適当な媒体とともに組成物中に存在し得る。
【0107】
更なる試薬には、本明細書に記載された任意の態様に従う接触を増強するか又は有利に働くのに適当な分子、並びに/或いは、圧力、温度、場合によっては他の適当な条件の検出を可能にする分子、標準及び/又は装置を含み得る。
【0108】
特には、当該キットの構成要素は、本明細書に記載された方法を実施するために適当な指示及び他の必要な試薬を具備していてもよい。キットは、通常、別々の容器に組成物を含む。試験を行うための指示、例えば、書面若しくは音声指示、紙上又はテープ若しくはCD−ROM等の電子的なサポートが、通常、キット中に含まれるであろう。キットは更に、使用する特定の方法に応じて、他の密封された試薬及び物質(例えば、洗浄緩衝液等)を含み得る。
【0109】
いくつかの態様において、本明細書に記載された電子供与体、電子受容体及び溶媒は、当業者が識別することのできる適当な賦形剤又は希釈剤とともに、組成物中に含まれ得る。
【0110】
本明細書に記載された配合、組成物、方法及びシステムは、水素貯蔵、芳香族化合物中への水素、CO2、メタン等の気体の貯蔵における研究を含む、数々の用途に使用され得る。いくつかの態様において、本明細書に記載された配合、組成、方法及びシステムは、これらの水素貯蔵物質中への水素ガスのより高い吸収を可能にすると考えられている。水素自動車において、例えば、多量の水素が自動車に動力を供給すべく、安全に貯蔵される必要があり、より良好な水素貯蔵物質は、自動車をより長く走らせるであろう。更には、COガスが大気中から回収され、フレームワーク中に貯蔵され、温室効果を低減する可能性がある。
【0111】
本明細書に記載された他の産業プロセス、配合、組成物、方法及びシステムは、有用であると予想されており、これは、塩素を取り扱うプロセス(例えば、PVCの製造)を含み、多くの場合、〜99%の純度で廃棄物水素を生ずる。この廃棄物水素は、典型的には、圧縮による貯蔵のコストのために燃やされるが、本明細書に記載する通り、代わりに貯蔵することができる。
【0112】
本開示の更なる利点及び特徴は、説明のみを目的とした実験セクションを参照して、以下の詳細な開示からより明らかとなるであろう。
【実施例】
【0113】
本明細書に記載された組成物、方法、システムについて、以下の例で更に説明されるが、例は、説明を目的として提供され、限定を意図するものではない。
【0114】
特には、以下の例は、典型的なSES並びに関連する方法及びシステムについて説明する。当業者は、本開示の態様に従う更なる溶液、方法及びシステムに対して、このセクションで詳細に記載する特徴を採用するための、適用性及び必要な変更について理解するであろう。
【0115】
例1:溶媒和電子溶液
アルカリ金属(AM)及び他の電子供与金属イオンは、ナフタレン等の多環式芳香族炭化水素(PAH)を含む種々の分子を含んだ溶媒和電子(SE)溶液を形成する。多くの多環式芳香族炭化水素は、室温で固体であり、従って、適切な溶媒中に溶解させて提供することができる。溶媒和電子錯体は、電子供与金属を、多環式芳香族炭化水素溶液、例えばナフタレンのテトラヒドロフラン溶液に溶解することにより形成することができる。溶液は、溶媒和電子錯体に特有の青緑色を有する。
【0116】
アルカリ金属(AM)及び他の電子供与金属イオンは、種々の溶媒を含んだ有機金属溶液を形成し、溶媒としては、ヘキサン、ベンゼン、シクロヘキサン及びジエチルエーテル等の炭化水素が挙げられる。
【0117】
例2:溶媒和電子溶液の実施
リチウムは、多環式芳香族炭化水素の高い電子親和性のため、ナフタレン又はビフェニル等の多環式芳香族炭化水素を含んだ溶液中に溶解し得ることが知られている。ビフェニル及びナフタレンの双方についての、溶媒和電子を形成する反応は、下記の組成に関する反応式<反応式6>及び<反応式7>に示される。しかしながら、かかるリチウム溶液は、特に空気及び水との非常に高い反応性のため、商業的水素貯蔵及び発生の用途には使用されない。
【化5】

【0118】
4つのリチウムナフタレン系の溶媒和電子溶液を、THF溶媒中で調製し、表1中の1〜4のラベルを付した。
【0119】
【表1】

【0120】
各々の溶液におけるLi、ナフタレン及びTHFの質量及びモル量を、モル比とともに表に示す。3つのLi/ナフタレンモル比:1、2、及び4を目標とした。表中の「凝固」及び「不溶」の語は、それぞれ、溶液の凝固又はリチウムの溶媒和電子液への不完全な溶解のため、固相が観察された溶液を指す。
【0121】
クラウンエーテルは、LiFを含む無機フッ化物の溶解を増強する有利な化学的及び物理的性質を示すカチオン受容体のクラスを指す。これらの化合物は、溶液中で金属イオンと錯体形成するのに有用である。本開示におけるクラウンエーテルカチオン受容体としては、限定するものではないが、ベンゾ−15−クラウン−5、15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキシル−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジ−t−ブチルベンゾ−18−クラウン−6、4,4i(5i)-ジ−tert−ブチルジベンゾ−24−クラウン−8、4−アミノベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、4−tert−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、4−tert−ブチルシクロヘキサノ−15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキサノ−15−クラウン−5、ジ−2,3−ナフト−30−クラウン−10、4,4’(5’)−ジ−tertブチルジベンゾ18−クラウン−6、4’−(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、4,4’(5’)−ジ−tertブチルジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、4,10−ジアザ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−21−クラウン−7、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、ジシクロヘキサノ−21−クラウン−7、ジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、2,6−ジケト−18−クラウン−6、2,3−ナフト−15−クラウン−5、4’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5、テトラアザ−12−クラウン−4テトラヒドロクロライド、テトラアザ−12−クラウン−4テトラヒドロゲンサルフェート、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン、12−クラウン−4、15−クラウン−5及び21−クラウン−7が挙げられる。
【0122】
(iv)イオン液体
金属オキシド溶解に有用なイオン液体としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:
【0123】
アセテート:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート及びメチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロアセテート。
【0124】
アミド及びイミド:1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、490015 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムジシアンアミド、2,3−ジメチル−1−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−(2−エトキシエチル)−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド及びN−エトキシメチル−N−メチルモルホリニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド。
【0125】
ボレート:1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、N−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス[オキサレート(2−)]ボレート、490051 N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス[オキサレート(2−)−0,0+]ボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート及び1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート。
【0126】
シアネート:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド、N−ブチル−3−メチルピリジニウムジシアンアミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムジシアンアミド及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート。
【0127】
ハロゲニド:1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミド、N−ブチル−3−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、490087 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアイオダイド、N−ブチル−3−メチルピリジニウムクロライド及びN−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド。
【0128】
その他:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリシアノメタン、N−ブチル−3−メチルピリジニウムジシアンアミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムジシアンアミド及び1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロゲンサルフェート。
【0129】
ホスフェート及びホスフィネート:N−ブチル−3−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トルフルオロホスフェート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1,3−ジメチルイミダゾリウムジメチルホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジエチルホスフェート及びグアニジウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート。
【0130】
サルフェート及びスルホナート:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホナート、N−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヒドロゲンサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムオクチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホナート及びN−ブチル−3−メチルピリジニウムメチルサルフェート。
【0131】
アンモニウム:N−エチル−N,N−ジメチル−2−メトキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、エチル−ジメチル−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、エチル−ジメチル−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムジメチルホスフェート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロアセテート、メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナート、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラメチルアンモニウムビス(オキサレート(2−))−ボレート及びテトラメチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート。
【0132】
グアニジウム:グアニジウムトリフルオロメタンスルホナート、グアニジウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート及びヘキサメチルグアニジウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート。
【0133】
イミダゾール:1−ベンジル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホナート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムビス(トリスフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムアイオダイド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、2,3−ジメチル−1−プロピルイミダゾリウムビス(トルフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート及び1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド。
【0134】
ホスホニウム:トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス[オキサレート(2−)]ボレート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート及びトリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート。
【0135】
ピリジン:N−ブチル−3−メチルピリジニウムブロミド、N−ブチル−3−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、N−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート、N−ブチル−3−メチルピリジニウムクロライド、N−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド、N−ブチル−3−メチルピリジニウムジシアンアミド、N−ブチル−3−メチルピリジニウムメチルサルフェート、N−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート及びN−ブチルピリジニウムクロライド。
【0136】
ピロリジン:1−ブチル−1−メチルピロリジニウムブロミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス[オキサレート(2−)]ボレート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムクロライド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムジジアンアミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムジジアンアミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロアセテート及び1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホナート。
【0137】
クラウンエーテルは、(Li/Na)の溶解を増強するのに有利な化学的及び物理的性質を示す、カチオン受容体のクラスである。これらの化合物は、溶液中での金属イオンとの錯体形成に有用である。有用なクラウンエーテルカチオン受容体としては、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6及び他のベンゾ−クラウン−エーテル並びにシクロヘキシル−クラウンエーテル誘導体が挙げられる。
【0138】
例3:種々の濃度の金属供与体、金属受容体及び溶媒を含んだ典型的な溶媒和電子溶液
種々のリチウムナフタレンテトラヒドロフラン
【化6】

溶液を以下のようにして調製した。
【0139】
溶液1(1:1:12.33溶液):12.8g(0.1モル)のナフタレンをアルゴン雰囲気中、磁気的攪拌下、乾燥THF90mlに添加する。ナフタレンは直ちにTHFに溶解する。次いで、アルゴン中での攪拌を維持しながら、リチウムホイル0.7g(0.1モル)を溶液に添加する。リチウムをナフタレン−THF溶液中に溶解し、約1〜2時間後SESを形成する。SESは暗色を呈する。THFを添加し、SES総量を100mlとする。溶液1は、1モル/lのLi、1モル/lのナフタレン及び12.33モル/lのTHFを含み、故に、表示は1:1:12.33である。
【0140】
溶液2(2:1:12.33)
リチウム1.4gを0.7gの代わりに使用すること以外、溶液1と同じ条件で、溶液2を調製する。
【0141】
溶液3(1:2:12.33)
ナフタレン25.6gを12.8gの代わりに使用すること以外、溶液1と同じ条件で、溶液3を調製する。
【0142】
溶液4(2:2:12.33)
ナフタレン25.6gを12.8gの代わりに使用し、リチウム1.4gを0.7gの代わりに使用すること以外、溶液1と同じ条件で、溶液4を調製する。
【0143】
溶液5(4:2:12.33)
リチウム2.8gを1.4gの代わりに使用すること以外、溶液4と同じ条件で、溶液5を調製する。
【0144】
溶液6(6:3:12.33)
ナフタレン38.45gを12.8gの代わりに使用し、リチウム4.2gを0.7gの代わりに使用すること以外、溶液1と同じ条件で、溶液6を調製する。
【0145】
25℃におけるナフタレンのTHFへの溶解度は、6.639モル/lと決定されている[参考文献12]。出願人の結果は、最大で2Liモルまでがナフタレン1モルと反応し得ることを示す。従って、モル組成Li13.278Naph6.639THF12.33は、最も高いLi及びナフタレン濃度によって達成されると予想される。更に、リチウムに関しては、25℃で、13.28モル−Li/リットル−THFである。最大で約15モル/リットルが、より高い温度で達成され得る。
【0146】
溶液7:カリウム−ナフタレン−THF(2:1:12.33):約7.8gのカリウムを、0.7gのリチウムの代わりに使用すること以外、溶液1と同じ条件で、溶液7を調製した。溶液は、黒色であった。
【0147】
例4:典型的な金属有機ラジカル溶液
金属有機ラジカル溶液は、種々の会社より、化学薬品からすぐに使用できる状態で購入することができる。購入することのできる典型的な有機ラジカル溶液は、有機リチウム溶液、例えば、ジエチルエーテル中メチルリチウムリチウムアイオダイド錯体1.0M(CHILi)、ジエチルエーテル中のリチウムアイオダイド溶液0.5Mとの錯体としてのメチル−d−リチウム(CDLi・LiI)、メチルリチウムリチウムブロマイド錯体溶液(CHLi・BrLi)、ジエトキシメタン中のメチルリチウム溶液3.0M(CHLi)、ジエチルエーテル中のメチルリチウム溶液1.6M CHLi、2−メチルテトラヒドロフラン/クメン中のメチルリチウム溶液3%(CHLi)、ベンゼン:シクロヘキサン中のエチルリチウム溶液0.5M(CLi)、ペンタン中のイソプロピルリチウム溶液0.7M(CLi)、THF中の2−チエニルリチウム溶液1.0M(CLiS)、シクロヘキサン中のブチルリチウム溶液2.0M(CLi)、ヘプタン中のブチルリチウム溶液purum〜2.7M(CLi)、ヘキサン中のブチルリチウム溶液10.0M(CLi)、ヘキサン中のブチルリチウム溶液2.5M(CLi)、ヘキサン中のブチルリチウム溶液1.6M(CLi)、ペンタン中のブチルリチウム溶液2.0M(CLi)、ヘキサン中のブチルリチウム溶液〜1.6M(CLi)、トルエン中のブチルリチウム溶液テクニカル(technical)〜2.5M(CLi)、ヘプタン中のイソブチルリチウム溶液テクニカル(technical)〜16%(〜1.7M)(CLi)、シクロヘキサン中のsec−ブチルリチウム溶液1.4M(CLi)、ヘプタン中のtert−ブチルリチウム溶液purum 1.6〜3.2M(CLi)、ペンタン中のtert−ブチルリチウム溶液1.7M(CLi)、ペンタン中のtert−ブチルリチウム溶液テクニカル(technical)〜1.7M(CLi)、リチウムアセチリドエチレンジアミン錯体テクニカル(technical)≧90%(T)(CLiN)、リチウムアセチリド、エチレンジアミン錯体90%(CLiN)、リチウムアセチリド、トルエン中のエチレンジアミン錯体25重量%スラリ(CLiN)、ペンタン中の(トリメチルシリル)メチルリチウム溶液1.0M(C11LiSi)、シクロペンタンジエニルリチウム97%(CLi)、THF中のリチウム(トリメチルシリル)アセチリド溶液purum〜0.5M(CLiSi)、THF中のリチウム(トリメチルシリル)アセチリド溶液0.5M(CLiSi)、シクロヘキサン/トルエン中のネオペンチルリチウム溶液0.6M(C11Li)、ヘプタン中のペンチルリチウム溶液2.2M(C11Li)、ジブチルエーテル中のフェニルリチウム溶液1.8M(CLi)、ヘキサン中のヘキシルリチウム溶液2.3M(C13Li)、THF中のリチウムフェニルアセチリド1.0M溶液(CLi)、ヘプタン中の2−(エチルヘキシル)リチウム溶液30〜35重量%(C17Li)、リチウムテトラメチルシクロペンタジエニド(C13Li)及びリチウムペンタメチルシクロペンタジエニド(C1015Li)等である。これらの有機リチウム溶液は、シグマアルドリッチから購入することができ、本願の出願日において、以下のウェブページの製品要覧に列挙される:sigmaaldrich.com/chemistry/chemistry-products.html?TablePage=16245216。
【0148】
出願人は、ブチルリチウムのヘキサン溶液10Mを使用した。溶液は、種々の実験セットにおいて希釈され、5M、2M及び1Mの溶液を作製した。
【0149】
有機金属化合物のアルドリッチカタログからの有機ラジカル溶液の更なる例は、有機ケイ素、例えば、ジシラン:1,1,2,2−テトラメチルジシラン98%(C14Si)、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン97%(C18Si)、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン97%(C22Si)、1,2−ビス(2−メトキシフェニル)−1,1,2,2−テトラメチルジシラン96%(C1826Si)、1,2−ジメチル−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン97%(C2626Si)、ヘキサメチルジシラン98%(C18Si)、ヘキサメチルジシランワッカー品質(Wacker quality)≧98.0% (GC) (C18Si)、ペンタメチルジシラン97%(C16Si)、シラノール:メチルシラノール≧98.5%(GC)(C10OSi)、2−フリルジメチルシラノレートナトリウムCNaOSi、ジメチル(2−チエニル)シラノール97% (C10OSSi)、tert−ブチルジメチルシラノールpurum ≧98.0%(GC)(C16OSi)、tert−ブチルジメチルシラノール99%(C16OSi)、トリエチルシラノールpurum ≧98.0%(GC)C16OSi、トリエチルシラノール97%C16OSi、(3,4−ジヒドロ−2H−ピラン−6−イル)ジメチルシラノール95% C14Si、ジメチルフェニルシラノレートヒドレートナトリウム97%C11NaOSi・xHO、ジメチルフェニルシラノール95%C12OSi、(4−メトキシフェニル)ジメチルシラノール96%C14Si、トリイソプロピルシラノール98%C22OSi、1,4−ビス(ヒドロキシジメチルシリル)ベンゼン95%C1018Si、(N−Boc−2−ピロリル)ジメチルシラノール97%C1119NOSi、ジフェニルシランジオール95%C1212Si、成膜システムにおける使用のために包装されたトリス(tert−ブトキシ)シラノール,微量金属に基づき99.999%C1228Si、成膜システムにおける使用のために包装されたトリス(tert−ペントキシ)シラノール,微量金属に基づき≧99.99%C1534Si、トリフェニルシラノール98%C1816OSi、シラザン:1,1,3,3−テトラメチルシジラザン97%C15NSi、ヘキサメチルジシラザンC19NSi、ヘキサメチルジシラザン半導体等級PURANAL(商標)(Honeywell 17713) C19NSi、ヘキサメチルジシラザンpuriss. p.a.,GC用,≧99.0%(GC)C19NSi、ヘキサメチルジシラザンpurum, ≧98.0%(GC)C19NSi、ヘキサメチルジシラザンワッカー品質,≧97.0%(GC)C19NSi、ヘキサメチルジシラザンReagentPlus(登録商標),99.9% C19NSi、ヘキサメチルジシラザン試薬等級,≧99%C19NSi、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン97%C21Si、1,3−ジエチル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン>98.0% C23NSi、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシラザン テクニカル(technical),≧90% C21Si、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジフェニルジシラザン 96% C1623NSi、l,3−ジメチル−l,l,3,3−テトラフェニルジシラザンpurum,≧98.0%(NT)C2627NSiシリケート:テトラメチルオルトシリケート成膜等級,≧98%,≧99.9% 微量金属基づきC12Si、テトラメチルオルトシリケートpuriss.,≧99.0%(GC)C12Si、テトラメチルオルトシリケート≧99%C12Si、テトラメチルオルトシリケートpurum,≧98.0%(GC)C12Si、テトラメチルオルトシリケート98% C12Si、テトラメチル−d12オルトシリケート99原子% D C12Si、テトラエチルオルトシリケート 99.999%微量金属基準 C20Si、テトラエチルオルトシリケート puriss.,≧99.0%(GC)C20Si、テトラエチルオルトシリケートReagentPlus(登録商標),≧99%C20Si、テトラエチルオルトシリケート試薬等級,98%C20Si、テトラキス(ジメチルシリル)オルトシリケートpurum,≧97.0%(GC)C28Si、テトラキス(ジメチルシリル)オルトシリケート96%C28Si、テトラアリルオルトシリケート テクニカル(technical), ≧85%(GC)C1220Si、テトラプロピルオルトシリケート≧98%,成膜等級C1228Si、テトラプロピルオルトシリケート95%C1228Si、テトラブチルオルトシリケートpurum,≧97.0%(GC)C1636Si、テトラブチルオルトシリケート97% C1636Si,;シロキサン メトキシトリメチルシランpurum,≧97.0%(GC)C12OSi、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン ワッカー品質,≧98.0%(GC)C14OSi、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン 97% C14OSi、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン≧99.5%,≧99.999%微量金属基準 C16Si、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンテクニカル(technical),≧95%(GC)C16Si、2−クロロエトキシトリメチルシラン98% C13ClOSi、ペンタメチルジシロキサン≧95.0% C16OSi、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサン96%C20Si、ジメトキシ−メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン≧97.0%(GC)C13Si、(クロロメチル)−イソプロポキシ−ジメチルシラン97%C15ClOSi、(クロロメチル)メチルジエトキシシラン97%C15ClOSi、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン99% C16ClOSi、イソプロポキシトリメチルシラン98%C16OSi、トリメチル(プロポキシ)シラン98% C16OSi、ヘキサメチルジシロキサン puriss.,≧98.5%(GC)C18OSi、ヘキサメチルジシロキサンNMR等級,≧99.5% C18OSi、ヘキサメチルジシロキサン≧98% C18OSi、ポリ(ジメチルシロキサン)ダウコーニングコーポレーション200(登録商標)液体,粘度0.65cSt(25℃)C18OSi、ヘキサメチルシクロトリシロキサン98%C18Si、1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン 97% C18Si、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン95% C20Si、1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン97% C22Si、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン 97% C18OSi、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン 97% C22Si、1,7−ジクロロ−オクタメチルテトラシロキサン 95% C24ClSi、オクタメチルトリシロキサン 98% C24Si、ポリ(ジメチルシロキサン) ダウコーニングコーポレーション200(登録商標)液体,粘度1.0cSt(25℃)C24Si、オクタメチルシクロテトラシロキサン 98% C24Si、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン テクニカル(technical), ≧95%(GC)C26Si、2,4,6−トリエチル−2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン 97% C24Si、トリス(トリメチルシロキシ)シラン≧98% C28Si、1,3−ジメチルテトラビニルジシロキサン 97% C1018OSi、トリアルキルシロキサン: トリメトキシシラン 95% C10Si、トリメトキシシラン テクニカル(technical),≧90%(GC)C10Si、トリメトキシメチルシラン 成膜等級, ≧

98% C12Si、トリメトキシメチルシラン purum, ≧98.0%(GC) C12Si、トリメトキシメチルシラン 98% C12Si、トリメトキシメチルシラン 95% C12Si、ビニルトリメトキシシラン98%及び更なる有機ケイ素等であり、更なる有機ケイ素は、シグマアルドリッチから購入することができ、本願の出願日において、以下のウェブページ: www.sigmaaldrich.com/chemistry/chemistry-products .html?TablePage= 16245265に列挙されている。
【0150】
本開示において適当な金属有機ラジカル溶液の更なる例は、有機アルミニウムを含み、これは、例えば、ヘキサン中のメチルアルミニウムジクロライド溶液1.0M CHAlCl、トルエン中のメチルアルミノキサン溶液10重量% CHAlO、エチルアルミニウムジクロライド97%CAlCl、ヘキサン中のエチルアルミニウムジクロライド溶液1.0M CAlCl、ヘキサン中のエチルアルミニウムジクロライド溶液1.0M CAlCl、トルエン中のエチルアルミニウムジクロライド溶液25重量%CAlCl、ヘキサン中のエチルアルミニウムジクロライド溶液purum,〜1M、ジメチルアルミニウムクロライド97% CAlCl、ヘキサン中のジメチルアルミニウムクロライド溶液1.0M CAlCl、トリメチルアルミニウム97% CAl、成膜システムにおける使用のために包装されたトリメチルアルミニウムCAl、クロロベンゼン中のトリメチルアルミニウム溶液2M CAl、ヘプタン中のトリメチルアルミニウム溶液purum,〜2M CAl、ヘプタン中のトリメチルアルミニウム溶液2.0M CAl、ヘキサン中のトリメチルアルミニウム溶液2.0M CAl、トルエン中のトリメチルアルミニウム溶液purum,〜2M CAl、トルエン中のトリメチルアルミニウム溶液2.0M CAl、ジエチルアルミニウムクロライド97%C10AlCl、ヘプタン中のジエチルアルミニウムクロライド溶液1.0M C10AlCl、ヘキサン中のジエチルアルミニウムクロライド溶液1.0M C10AlCl、ヘキサン中のジエチルアルミニウムクロライド溶液1.0M C10AlCl、トルエン中のジエチルアルミニウムクロライド溶液25重量% C10AlCl、トルエン中のジエチルアルミニウムシアニド溶液1.0M C10AlN、トルエン中のジエチルアルミニウムシアニド溶液テクニカル(technical),〜1M C10AlN、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド≧99.99%金属基準,≧95%C13OAl、トリエチルアルミニウム93%C15Al、ヘプタン中のトリエチルアルミニウム溶液1.0M C15Al、ヘキサン中のトリエチルアルミニウム溶液1.0M C15Al、ヘキサン中のトリエチルアルミニウム溶液1.0M C15Al、トルエン中のトリエチルアルミニウム溶液25重量% C15Al、ジエチルアルミニウムエトキシド97%C15AlO、トルエン中のジエチルアルミニウムエトキシド溶液25重量%C15AlO、エチルアルミニウムセスキクロライド97%C15AlCl、ジイソブチルアルミニウムクロライド97%C18AlCl、ヘキサン中のジイソブチルアルミニウムフルオライド溶液1.0M C18AlF、トルエン中のテトラエチルジアルミノキサン溶液1.0M C20AlO pricing、トリプロピルアルミニウムC21Al、トリイソブチルアルミニウムC1227Al、ヘキサン中のトリイソブチルアルミニウム溶液1.0M C1227Al、トルエン中のトリイソブチルアルミニウム溶液25重量%C1227Al、トルエン中のトリイソブチルアルミニウム溶液25重量%C1227Al、THF/ヘキサン中のリチウムジイソブチル−tert−ブトキシアルミニウムヒドリド溶液0.25M C1228AlLiO、ビス(トリメチルアルミニウム)−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン付加物C1230Al、トルエン中のテトライソブチルジアルミノキサン溶液10重量%C1636AlO、ジブチルエーテル中のトリフェニルアルミニウム溶液1M C1815Al、ヘキサン中のトリオクチルアルミニウム溶液25重量%C2451Al及びシグマアルドリッチから購入することのできる更なる有機アルミニウム等であるが、更なる有機アルミニウムは、本願出願日において、以下のウェブページ:www.sigmaaldrich.com/chemistry/chemistry-products.html?TablePage= 16244422に列挙されている。
【0151】
本開示において適当な金属有機ラジカル溶液の更なる例は、有機ゲルマニウムを含み、これは、例えば、ジメチルゲルマニウムジクロライド99%CClGe、トリメチルゲルマニウムブロマイド98% CBrGe、クロロトリメチルゲルマン98% CClGe、ジエチルゲルマニウムジクロライド97% C10Ge、テトラメチルゲルマニウム 98% C12Ge、フェニルゲルマニウムトリクロライド98% CClGe、ビス(2−カルボキシエチルゲルマニウム(IV)セスキオキシド) 99% C10Ge、クロロトリエチルゲルマン96% C15ClGe、トリエチルゲルマニウムヒドリド98% C16Ge、ヘキサメチルジゲルマニウム(IV) 工業品質C18Ge、ジフェニルゲルマニウムジクロライド95% C1210ClGe、トリブチルゲルマニウムヒドリド99% C1228Ge、ヘキサエチルジゲルマニウム (IV) 97% C1230Ge、トリフェニルゲルマニウムクロライド99% C1815ClGe、トリフェニルゲルマニウムヒドリドC1816Ge、ヘキサフェニルジゲルマニウム(IV)97% C3630Ge、ヘキサフェニルジゲルモキサン97% C3630GeO及びシグマアルドリッチから購入することのできる更なる有機ゲルマニウム等であり、本願出願日において、以下のウェブページ:www.sigmaaldrich.com/chemistry/chemistry-products.html?TablePage=16251219に列挙されている。
【0152】
例5:Hから、溶媒和電子溶液への水素貯蔵のためのシステム
図1の略図中に示すシステム(10)を使用して、水素貯蔵を行った。図1のシステムは、ガスシリンダー調節器(105)を介し、格納スペース(160)及び一連のバルブ(150)、(155)、(170)及び(180)を介して圧力容器(110)に流体連結した水素タンク(100)を含んでおり、さらに、圧力がバラトロン(130)及び(140)によって検出されている。水素タンク(100)、格納スペース(160)及び圧力容器(110)もまた、バルブ(190)を介して真空ポンプ(120)と流体連結している。図1の図において、格納スペース(160)は容積V1を有し、システムの圧力容器(110)を含むセクションは反応器容積Vsを有し、且つ、通常は本発明に記載されたSESを含み、当該システムのバルブ(170)、(180)及び(190)の間に含まれるセクションは、容積VLを有する。
【0153】
運転中、水素は、外気へのバルブ(155)と連結したバラトロン(140)によって流入水素の圧力が測定される当該システムの一セクションに位置するバルブ(150)を介して、水素タンク(100)からシステムへと導かれる。最大で300mlの水素が、格納スペース(160)に貯蔵される。バルブ(170)及び(180)は、SESを含んだ圧力容器(110)に水素を導く。バラトロン(130)は、圧力容器中の圧力変化を測定する。バルブ(190)は、典型的には、水素を反応器に導入する前に、気体又は他の流体の流路の真空ポンプ(120)によるパージを可能にする。
【0154】
システムは、最初に、アルゴンガスで較正された。定量の水素を水素タンク(100)から圧力容器(110)に導入した。バルブ(150)を介して水素をシステムに導入し、バラトロン(140)によって測定した。格納スペース(160)において、水素は、圧力容器(110)に導入される前に、システム中で貯蔵された。水素が圧力容器(110)に放出される前に圧力容器(110)の内部の容積を測定し、Volsとした。バルブ(170)及び(180)は、格納スペース(160)からの圧力容器(110)への水素の放出を制御した。バラトロン(130)は、圧力容器(110)内の圧力を決定した。水素が圧力容器(110)へと導かれたとき、バラトロン(130)によって測定した圧力の低下は、SESによる水素の吸収又は容器が空の際に行われた予備実験における漏れの存在を示すであろう。
【0155】
容積VolSの圧力容器(110)は、パール(Paar)社製の酸分解ボンベであり、VolLの「T」分岐で外れる。システムにおいて漏れがないことを確認した後、溶液を含んだテフロンビーカーを圧力容器(110)の内部に設置し、パール社製ボンベの容積には、グローブボックス環境からのアルゴンガスを含む。
【0156】
結果を以下の表2及び表3に示し、これらは、V2容積325ml、真空中B2=0及び大気下B=199で行われた測定を示す。V2は、反応器の容積(VolSに反応器への流路の容積VolLを加えたもの)である。Vol1と示された容積は、較正された300ml容積のステンレス鋼の容積にバルブ(150)、(155)及び(170)の間の流路の容積を加えたものである。
【0157】
【表2】

【0158】
Vol1を加圧し、V2(VolSに、(170)、(180)及び(190)の間の流路の容積を加えた)を排出した。バルブ(170)をあけ、最終的なバラトロンの測定値を記録した。理想気体の法則、PV=一定を使用して、Vol1が、第1の運転において376ml、表3の較正の間は375mlであると決定した。容積Vol1に375mlを使用した。
【0159】
【表3】

【0160】
容積の較正が完了すると、純粋なTHFについてベースラインの測定を行った。
【0161】
特には、Arグローブボックス内でパール社製の酸分解ボンベステンレス製反応器に液体を入れることにより、THF溶液100mlを試験した。反応器は、弁を閉じ、パージした水素ガス流路に連結することのできるグローブボックスから除去した。水素のアリコートを、水素ガスシリンダーから、較正した容積まで導入した。次いでこれらのアリコートを、周囲温度(典型的には、20〜23℃)でTHF含有反応器に導入した。反応器の圧力を観察した。圧力の低下が起こらなければ、水素の別のアリコートを、先の圧力よりも高い圧力で較正した容積まで導入した。同じ手順に従って、この更なる水素を反応器に導入した。このプロセスは、反応器中の圧力低下によって示される、水素が液体に吸収された兆候が現れるまで継続した。
【0162】
上記アプローチに従って水素が圧力容積(Vs)に提供された後、圧力低下が認められない限り、圧力は、継続的により高い圧力アリコートにおいて継続的に増加した。圧力が数分間に渡って低下し始めると、関連する測定は、液体による水素吸収を示していると考えられた。理想気体の法則PV=nRTを全てのケースに適用して、吸収の程度を決定した。既知の圧力P、容積V及び気体定数R及び温度Tを仮定すると、吸収量nを算出することができる。この量は、液体を含んだSESの質量に規格化することができ、y軸に示すような吸収質量%に換算される。圧力が変化しない場合、水素は吸収されない。圧力容積のガス圧力は、バラトロンゲージによって測定される。データは、(圧力の測定値によって決定される通り)空の容器について更にどれだけ吸収が起こったかの計算を示す。
【0163】
結果を以下の表4及び表5に示し、これらは、シリンダーバルブMV1〜MV2の容積=320ml(Vol1と称す)及び流路+パールの容積284ml(VolSと称す)を使用して行われた測定を示す。バラトロンの0Kpaでの初期真空設定は、Vol1初期=1135オープンバルブMP1及びMP2 605である。
【0164】
表4中の初期データセットは、初期圧力アリコートからの純粋なTHFについて行われた。実験の終わりには、圧力容器は、ガス流路装置からはずされ、グローブボックスに戻された。加圧した容器を開け、THFをガラス容器に注いだとき、気泡が、ガラス側壁及び底に継続的に形成され、ガラス容器の上部に上昇するのを観察することができた。次いで、同じ溶液を、表5に示す第2のベースラインの運転に使用した。THFから水素ガスはおそらく完全にはなくならなかったが、3barの水素圧のすぐ上で、水素ガスの吸収を再び観察することができた。
【0165】
【表4】

【0166】
【表5−1】

【表5−2】

【0167】
表4及び表5の説明において、pvの列は、吸収された水素を示す。この値は、バラトロンゲージに示されるように、単純な圧力低下によって示され得る。このデータセットにおいて、この値はpvとして表され、圧力低下は、全体の容積の容積倍であった。次いで、PV値を、代数に使用し、右の列中の量を得た。
【0168】
ベースライン実験の結果は、図2の図中のトレース(210)によっても説明され、これは、最大で3atmまでは、y軸に向かうH吸収の圧力減少を示さない。3atmを超える最終圧力の水素が導入されたとき、バラトロンのゲージの圧力はゆっくりと減少し、少量の水素ガスが、単独のTHFに吸収されたことを示す。24時間後、最終圧力が測定され、更なる水素が、THFを単独で含んだ反応器に4atmまで導入された。更なる水素ガスの吸収は検出されなかった。
【0169】
図2の図のトレース(200)及び(210)によって説明される結果は、水素圧が平衡化した後の水素吸収をy軸上で示し、低圧では、ガス吸収が観察されないことを示す。特には、トレース(200)を参照して、y軸のゼロ%吸収近傍に沿う運転は、〜3atmの圧力に達するまで吸収がないことを示す。その時点では、トレース(210)に示す通り、吸収が起こると、システムの圧力が減少する。特には、0.18重量%まで増加する水素吸収を示す、(210)で指定したラインによって示される通り、3atmで閾値が生じた。図2においてライン(210)で記載する水素吸収は、表4から外挿される。
【0170】
この実験セットで使用するSESにおいて、溶媒はTHFであった。当業者は、圧力減少及び関連する水素吸収が、ヘキサン又は本明細書に記載された他の任意の溶媒を使用して得られると予測されることを理解するであろう。更なる有機化合物は、更に、水素貯蔵を補助し、更なる有機化合物としては、限定するものではないが、ナフタレン、ジフェニル又は本明細書で記載する多環炭化水素若しくは有機ラジカルが挙げられ、更に、以下の例も例示される。
【0171】
例6:Hから、カリウムを含んだ溶媒和電子溶液への水素貯蔵のためのシステム
例3で説明した通りに調製した、カリウムをTHF中に含んだ溶液7を使用し、更なるデータセットを、例5で記載するシステムによって検出した。システムの較正は例5で行ったのと同様にして行う。
【0172】
特には、SESのTHF溶液100mlを、Arグローブボックス中のパール社製酸分解ボンベステンレス製反応器に液体を設置することにより試験した。バルブを閉じて、反応器を、パージした水素ガス流路と連結され得るグローブボックスから除去した。水素ガスシリンダーから、水素のアリコートを較正した容積まで導入した。次いで、これらのアリコートを、SES及びTHFを含んだ反応器に周囲温度(典型的には20〜23℃)で導入した。反応器の圧力を観察した。圧力低下が起こらない場合は、別の水素アリコートを、較正した容積まで、先の圧力よりもさらに高い圧力で導入した。同じ手順に従って、この更なる水素を反応器に導入した。このプロセスを、反応器内での圧力低下によって示される、水素が液体に吸収される兆候が生ずるまで継続した。
【0173】
カリウム溶媒和電子溶液については、圧力6atmまで吸収は観察されず、その上、吸収は制限された。約8atmでは、より多量の水素が吸収された。圧力容器のいくらかの超音波処理は、水素の吸収を補助した。16時間後、水素吸収は減速し、最終的な吸収は、約〜1.2重量%であった。図2中のライン(220)で示す水素吸収は、表6から外挿される。
【0174】
表6に示すデータ(Kを使用したTHFの実験3)は、シリンダーバルブMV1からMV2の容積=320ml(Vol1と称す)及び流路+パールの容積284ml(VolSと称す)を使用して得られた。
【0175】
バラトロンの0Pkaでの初期真空設定は、Vol1初期=1135ml、開放弁MP1及びMP2=605mlであった。
【0176】
【表6−1】

【表6−2】

【0177】
水素中のカリウムによる水素吸収は、図2のチャート中のトレース(230)によって説明され、y軸に向かうH2吸収の圧力低下を最大約8atmまで示さない。約8atmを超える最終水素圧力を導入した場合、バラトロンゲージの圧力はゆっくりと低下し、少量の水素ガスがカリウム及びTHF混合物中に吸収されたことを示した。4日後、最終圧力を測定し、約2atmで、更なる水素を、THFのみを含んだ反応器に導入した。
【0178】
例7:Hから、リチウムを含んだ溶媒和電子溶液中への水素貯蔵のためのシステム
更なるデータセットを、例3で説明する通り調製した、アルカリ金属リチウムをTHF中に含んだ溶液2を使用して、例5に記載するシステムによって検出した。システムの較正は、例5で行ったのと同様にして行う。更なるデータセットは、例3で説明する通り調製した溶液7を使用して例5で記載するシステムによって検出した。
【0179】
Li:ナフタレン:THF(モル濃度で1:1:2)は、Liを溶解させる点で最も良好な実験結果である。Li:ナフタレン(2:1:12)及び(2:1:3)を有する高Li濃度は、溶液の固体への一定の凝固をもたらした。
【0180】
リチウム溶媒和電子溶液については、吸収が観察されるまでに、11atmを超える圧力が必要とされる。吸収は全体的に緩やかであり、測定を18時間後に停止した。図2のライン(230)として記載される水素の吸収は、表6から外挿される。
【0181】
表7に示すデータ(Kを使用したTHFの実験3)は、シリンダーバルブMV1からMV2の容積=320ml(Vol1と称す)及び流路+パールの容積284ml(VolSと称す)を使用して得られた。
【0182】
バラトロンの0Kpaにおける初期真空設定は、Vol1初期=1135ml、開放弁MP1及びMP2=605mlであった。
【0183】
【表7−1】

【表7−2】

【表7−3】

【0184】
水素中のリチウムによる水素吸収は、図2の図におけるトレース(240)によって示され、y軸に向かうH吸収の圧力低下を約11atmまで示さない。約11atmを超える最終水素圧力が導入される場合、バラトロンゲージの圧力は緩やかに低下し、少量の水素ガスが、カリウム及びTHF混合物中に吸収されたことを示す。約18時間後、最終圧力を測定し、更なる水素を、THFのみを含んだ反応器に約10atmまで導入した。
【0185】
例8:溶媒和電子溶液中に含まれる金属ハライド有機錯体からの水素放出
例6及び7に記載した、SES中に貯蔵された水素は、本明細書で例示する手順に従って、SES内の金属ヒドリド有機錯体から放出され得る。
【0186】
適当な温度は、溶媒の融点及び沸点の範囲内である。THFの場合、これらの温度は、それぞれ−108.4℃及び66℃である。双方の温度は、SES(ORM)の形成のために変化し得ることが予測される。基本的には、THF系SESの融点は、108.4℃未満であり、沸点は66℃を超えるはずである。これらの温度データは、現在利用することができず、公開されている文献にも見出すことができない。THF系SESにおいて、より好ましい温度範囲は、−50℃〜+50℃であり、更により好ましいのは、−30℃〜+40℃である。
【0187】
THF及び他の有機溶媒は、発生の間に水素と混合し得る。水素を選択的に透過させることのできるセラミック膜を使用して、水素と溶媒分子とを物理的に分離させることが提案されている。例えば、かかる膜は、Gavalas et al. の文献[参考文献13]及び[参考文献14]に記載され、各々は、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる。水素貯蔵及び発生の反応器の概略図が、図3に説明される。
【0188】
特に、図3の図において(300):水素流入パイプ、(310):水素侵入ストッパー、(320):溶媒和電子溶液又は金属有機ラジカル、(330):水素貯蔵反応器、(340):水素選択的透過膜、(350):水素漏出ストッパー及び(360)水素排出パイプである。
【0189】
LiHからの水素放出に関連して行われる実験では、180KJ/molのHが必要とされる。試料は900℃まで加熱した。
【0190】
例9:溶媒和電子溶液並びに有機金属溶液中での水素貯蔵及び放出
H2貯蔵は、1段階又は多段階プロセスで行われ得る。図3のパイプ(300)は、水素タンクに連結され、且つ、ストッパー(350)が閉まっている間、ストッパー(310)は開いている。1段階プロセスでは、SES又は有機金属溶液を含んだ反応器に、ある圧力P1まで水素を充填する。水素がSES又は有機金属溶液と反応した後、圧力は、P2<P1へと安定化される。多段階プロセスでは、圧力が、ほぼP2の平衡に達した後、最大で例えばP1まで、より多くの水素が添加され、次いで、水素は、再び、SES/有機金属溶液と反応し、その後、平衡圧力P3に達する。プロセスは、例えば、P1での水素飽和まで繰り返される。
【0191】
一旦、水素漏出ストッパー(図3中の構成要素(150))及びストッパー(310)が閉じられると、水素は、例えば、初期圧力P2(1段階)又はP1(多段階)から放出され得る。
【0192】
例10:溶媒和電子溶液中での水素発生
SES含有金属ヒドリド有機錯体と水又はアルコールとを、2つの別々のコンパートメントに貯蔵し、制御した大気条件下で混合し、水素を発生させた。
【0193】
特には、図4に概略的に示す通り、アルゴンを満たしたグローブボックス中で、10cmのリチウム−ナフタレン−THFのSES(例3の溶液1(1:1:12.33))をガラス反応器に導入した。
【0194】
図4の略図において、反応器は、(400):水(アルコール)タンク、(410):水ストッパー、(420):溶媒和電子溶液又は金属有機ラジカル、(430):水素貯蔵反応器、(440):水素選択的透過膜、(450):水素漏出ストッパー及び(460):水素排出パイプを具備する。
【0195】
水素選択的透過膜(440)は使用しなかった。磁気攪拌子をSES(420)中に導入し、そして、システムは、反応器の上部に、i/2つの円筒形排気筒を具備した円錐形ゴム系密封キャップ、及び、ii/タンク(400)とストッパー(410)とパイプ(415)とを具えた、水(アルコール)導入システムを具備する。パイプ(415)は、第1キャップ排気筒の内部に密封されてつながっている。ストッパー(410)を閉じ、iii/水素排出系は、ストッパー(450)及び排出パイプ(460)を含んでいる。排出パイプ(460)は、第2キャップ排気筒の内部に密封されてつながり、ストッパー(450)が閉められた。
【0196】
次いで、反応器システムをグローブボックスから取り出し、外気雰囲気に曝露した。タンク(400)は、水で満たされた。強力な磁気的攪拌の下、ストッパー(450)を閉めたまま、ストッパー(410)により、水を、非常にゆっくりと、且つ、慎重に導入した。このすぐ後に、SESと水との反応から気泡が形成された。ストッパー(410)を閉じ、次いで、マッチの炎を排出パイプ(460)の端にかざし、そして、ストッパー(450)を注意深く開けた。マッチを消した後でさえも、排出ガス端で炎が見られた。マッチの炎が排出パイプの末端に近づくと、時折、短く軽い音を聞くことができた。炎と軽く短い音とは、空気中での制御された水素の燃焼に特徴的である。事実、反応器内での酸素の不足は、致命的な爆発条件が生ずるのを防ぐ。
【0197】
上記と同様の実験を、水の代わりにエタノールを使用して行なった。同様の結果が得られ、特に水素が形成された。
【0198】
例11:有機金属溶液中での水素貯蔵及び放出
ブチルリチウム1Mのヘキサン溶液100mlを図3に示す反応器中で使用した。ストッパー350を閉じたまま、反応器を、水素で約10atmまで加圧した。ストッパー310を閉じた。反応器中の圧力は、徐々に低下し、水素がMOR溶液に貯蔵されたことを示した。計算された貯蔵水素の量は、3重量%〜5重量%の範囲である。
【0199】
ストッパー350を開けた後、反応器中の圧力が低下することにより、MOR溶液から水素が発生した。
【0200】
例12:有機金属溶液中での水素発生
第1の実験セットにおいて、ブチルリチウム1Mのヘキサン溶液100mlを、図4の反応器内で使用した。タンク400を水で満たした。MOR溶液を磁気によって攪拌した。ストッパー400を開けることによって水を徐々に導入した。水素の気泡がすぐに現れ、例10のような火炎試験によって証明された。
【0201】
第2の試験セットにおいて、ブチルリチウム1Mのヘキサン溶液100mlを、図4の反応器内で使用した。タンク400をエタノールで満たした。MOR溶液を磁気的に攪拌した。ストッパー400を開けることによりエタノールを徐々に導入した。水素の気泡がすぐに現れ、例10のような火炎試験によって証明された。
まとめると、本開示のいくつかの態様において、電子供与体及び電子受容体を適当な溶媒中に含んだ水素貯蔵及び/又は発生配合並びに組成物が記載され、そして、水素を貯蔵及び/又は発生させる関連する方法並びにシステムが説明される。
【0202】
上記例は、当業者に、本開示の配合、装置、組成物、システム及び方法の態様をどのように作製し、使用するかについて、完全な開示及び記載を与えるために提供され、発明者が彼らの開示とみなすものの範囲を制限することを意図しない。明細書に示す全ての特許及び公開は、本開示に関連する当業者の技術水準を示す。
【0203】
背景技術、発明の概要、発明を実施するための形態及び実施例において引用される各々の文献の開示全体(特許、特許公開、学術論文、要約、実験マニュアル、書籍又は他の開示を含む)は、引用によって、本明細書に組み込まれる。本開示で引用される全文献は、個々にその全体が引用によって組み込まれる場合と同程度に、引用によって組み込まれる。しかしながら、引用文献及び本開示との間で矛盾が生ずる場合には、本開示が優先される。
【0204】
本明細書中で使用される用語や表現は、制限の用語としてではなく、説明の用語として使用されており、かかる用語や表現の使用に、示されていたり説明されていたりする特徴又はそれらの部分の均等物を排除する意図はないが、請求される開示の範囲内で種々な変更は可能であることが認識される。従って、本開示は、好ましい態様、典型的な態様及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書で開示される概念の修正及び変更は、当業者によって頼りにされる可能性があり、そして、係る修正及び変更は、添付の特許請求の範囲で規定する通り、本開示の範囲内と認められることが理解されるべきである。
【0205】
更に、本明細書で使用する専門用語は、特定の態様の説明のみを目的としており、限定することを意図していないことが理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する通り、単数形「a」「an」及び「the」には、明確に他の内容を示さない限り、複数の指示対象が含まれる。「複数」の語には、明確に他の内容を示さない限り、2以上の指示対象が含まれる。別の方法で定義しない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語の全ては、本開示が関連する分野の当業者によって通常理解されるのと同様の意味を有する。
【0206】
マーカッシュグループ又は他のグループ化を本明細書中で使用するとき、当該グループの個々の要素全て、グループの組合せ全て、及び、可能性のある副組合せが、本開示の中に独立して個別に含まれることが意図される。本明細書で記載又は例示される構成要素若しくは物質のあらゆる組み合わせは、特に明記しない限り、本開示を実施するために使用される。当業者は、明確に例示されたもの以外の方法、装置の構成要素及び物質を、過度の実験に頼ることなく本開示の実施に採用することができることを理解するであろう。かかる方法、装置の構成要素及び物質の、当該分野で既知の機能的均等物は、本開示に含まれることが意図される。範囲、例えば、温度範囲、周波数範囲、時間範囲又は組成範囲を明細書に示す場合はいつでも、中間の範囲及び副範囲の全て並びに示される範囲内の個々の値全てが、本開示に含まれることが意図される。本明細書で開示した範囲又はグループの任意の1以上の個々のメンバーは、本開示の特許請求の範囲から除かれてもよい。本明細書で説明的に記載する開示は、本明細書で具体的に開示されていない任意の要素又は限定の非存在下で適当に実施することができる。
【0207】
本開示の種々の態様を説明した。本明細書に示される特定の態様は、本開示の有用な態様の例であり、当該開示は、本明細書に示す装置、装置構成要素、方法の工程の多数の変更を用いて実施され得ることは当業者に明らかである。当業者に明らかである通り、本発明の方法に有用な方法に有用な及び装置には、多数の任意の組成、プロセスの要素及び工程が含まれ得る。
【0208】
特に、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更がなされ得ることが理解される。従って、他の態様も、下記の特許請求の範囲の範囲内である。
【0209】
参考文献
[参考文献1] P. P. Edwards, Adv. Inorg. Chem. 1982年, 25, 第135- 185頁.
[参考文献2] P. P. Edwards, Nature 1988年, 331, 564 -565頁.
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[参考文献9] Q-S Li, Z-M Yi, M-G Su and X-F Sun, J. Chem. Eng. Data, 2008年, 53, 第2701-2703頁
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[参考文献12] S. Li, Z.M. Yi, M.G. Su and X.F Sun J. Chem Eng Data 2008年, 53, 第2701-2703頁.
[参考文献13] B. S. Kang and G. R. Gavalas Ind. Eng. Chem. Res. 2002年, 41, 第3145-3150頁
[参考文献14] . R. Gavalas Ind. Eng. Chem. Res. 2008年, 47, 第5797-5811頁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に、電子供与金属を含んだ電子供与体と、多環式芳香族炭化水素及び/又は有機ラジカルを含んだ電子受容体とを含み、
前記電子供与金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属及び/又はそれらの合金を含み、
前記電子供与金属を含んだ前記電子供与体の少なくとも一部が、前記溶媒に溶解し、それによって、水素と反応して前記溶媒中に水素を貯蔵することのできる化学種を発生させる水素貯蔵配合。
【請求項2】
前記電子受容体が、多環式芳香族炭化水素を含み、
前記化学種が、電子供与金属イオン及び溶媒和電子を含む、請求項1に記載の水素貯蔵配合。
【請求項3】
前記電子供与金属M、前記多環式芳香族炭化水素PAH及び前記溶媒Solv.が、
約M(PAH)(Solv.)
[式中、m、n及びqは、約0.1<n<約15、約0.075<m<約7.5、約1<q<約50である]のモル比で含まれる、請求項2に記載の水素貯蔵配合。
【請求項4】
前記多環式芳香族炭化水素が、下記式:
a(1−x)ax,(I)
[式中、Aは、Si、B及び/又はNであり、0<x<1であり、a及びbは、比b/aが0≦b/a≦0.8の化学量論係数である]の多環式芳香族炭化水素である、請求項2又は3に記載の水素貯蔵配合。
【請求項5】
前記電子供与体が、1以上のアルカリ金属を含み、
前記多環式芳香族炭化水素が、ナフタレン、アントラセン及びピレンのうちの1以上を含み、
前記溶媒がテトラヒドロフランを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素貯蔵配合。
【請求項6】
前記アルカリ金属が、リチウム及び/又はカリウムを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素貯蔵配合。
【請求項7】
前記電子受容体が、1以上の有機ラジカルを含み、
前記化学種が、1以上の有機金属を含む、請求項1に記載の水素貯蔵配合。
【請求項8】
前記電子供与金属、前記1以上の有機ラジカル及び前記溶媒が、
(OR)
[式中、m及びnは、約1<n<6、約0.1<m<約10である]のモル比で含まれている、請求項7に記載の水素貯蔵配合。
【請求項9】
水素を更に含み、
前記水素が、前記化学種と反応し、それによって、前記溶媒に含まれる金属ヒドリド錯体を提供する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水素貯蔵配合。
【請求項10】
水素を、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水素貯蔵配合と接触させることを含み、
前記接触が、前記水素と、前記配合の前記溶媒中の前記化学種とが反応し、前記反応した水素を前記溶媒中に貯蔵することのできる条件下で一定時間行われる、水素を水素貯蔵配合中に貯蔵する方法。
【請求項11】
前記水素貯蔵配合が、水素貯蔵配合圧力を有し、
前記水素が、水素圧を有し、
前記接触が、前記水素貯蔵配合圧力よりも実質的に高い水素圧で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水素圧が、約1〜約200atmの範囲に含まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記水素圧が、約5〜約100atmの範囲に含まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記水素圧が、約10〜約50atmの範囲に含まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記接触が、単一工程で行われる、請求項10〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記接触が、2以上の工程で行われ、
各々の工程において、前記水素圧が水素工程圧であり、前記水素配合圧力が水素貯蔵配合工程圧力であり、
前記水素工程圧力及び水素貯蔵配合工程圧力が、実質的に維持されているか又は工程ごとに実質的に上昇する、請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記接触が、実質的に一定の温度で行われる、請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項に記載の方法によって得ることのできる、水素貯蔵配合。
【請求項19】
電子供与金属を含んだ電子供与体と、多環式芳香族炭化水素及び/又は有機ラジカルを含んだ電子受容体とを、溶媒中で接触させることを含み、
前記電子供与金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属及び/又はそれらの合金を含み、
前記接触が、前記電子供与金属を含んだ前記電子供与体の少なくとも一部を前記溶媒中に溶解させ、それによって、水素と反応し、前記溶媒中に水素を貯蔵することのできる化学種を発生させる、水素貯蔵配合を提供する方法。
【請求項20】
前記化学種を水素と接触させ、前記溶媒内で金属ヒドリド錯体を形成することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属及び/又はそれらの合金を含む電子供与金属を含んだ電子供与体と、
多環式芳香族炭化水素及び/又は有機ラジカルを含んだ電子受容体と、
請求項19又は20に記載の方法において同時に組み合わせるか又は逐次的に使用するための溶媒と
を含んだ、水素貯蔵配合を提供するシステム。
【請求項22】
請求項9又は18に記載の水素貯蔵配合を、水素貯蔵配合圧力で提供することと、
前記水素貯蔵配合圧力を低下させて水素を放出することと
を含む、水素貯蔵配合から水素を放出する方法。
【請求項23】
溶媒中に供給された、電子供与金属を含んだ電子供与体と、多環式芳香族炭化水素及び/又は有機ラジカルを含んだ電子供与体とを含み、
前記電子供与金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属及び/又はそれらの合金を含み、
前記電子供与金属及び前記電子受容体が、不安定なプロトンを含んだ化合物と反応して水素を生成することができる、水素貯蔵配合。
【請求項24】
請求項23に記載の水素発生配合と、不安定なプロトンを含んだ化合物とを接触させることを含み、
前記接触が、前記電子供与金属及び前記電子受容体と、水又は不安定なプロトンを含んだ有機分子とを反応させて水素を発生させる条件で、一定時間行われる、水素発生方法。
【請求項25】
溶媒中に供給された、電子供与金属を含んだ電子供与体、及び、多環式芳香族炭化水素及び/又は有機ラジカルを含んだ電子受容体のうちの少なくとも2つと、
請求項24に記載の方法において同時に組み合わせるか又は逐次的に使用するための、不安定なプロトンを含んだ1以上の有機分子と、
を含み、
前記電子供与金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属及び/又はそれらの合金を含む、水素発生システム。
【請求項26】
水素を、前記水素が溶媒と反応することができる条件で、一定時間、前記溶媒に接触させることを含み、
前記溶媒が、電子供与金属を含んだ電子供与体の少なくとも一部を、電子受容体を更に含んだ溶液中に適当に溶解させることができ、
前記電子供与体が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタニド金属、ホウ素族の金属、半金属及び/又はそれらの合金を含む電子供与金属を含み、
前記電子受容体が、多環式芳香族炭化水素及び/又は有機ラジカルを含む、適当な溶媒に水素を貯蔵する方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法によって得ることのできる、水素を含んだ溶液。
【請求項28】
請求項27に記載の水素を含んだ溶液を始動圧力で提供することと、
前記始動圧力を低下させて水素を放出することと
を含んだ、水素を溶液から放出する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−513541(P2013−513541A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543343(P2012−543343)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/060359
【国際公開番号】WO2011/081949
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(508032284)カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー (17)
【出願人】(506214909)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック (9)
【Fターム(参考)】