説明

水素アニール処理方法及び水素アニール処理装置

【課題】減圧水素アニール処理を安全に行える様にする。
【解決手段】反応室2と、該反応室に水素ガスを導入する水素ガス導入ライン18と、前記反応室に接続された減圧排気ライン5と該減圧排気ラインに設けられ前記反応室を減圧にするための排気装置と、該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ライン48とを具備し、減圧状態の前記反応室内に前記水素ガス導入ラインから水素ガスを導入しつつ被処理基板を減圧アニール処理し、該減圧アニール処理後の該反応室内の残存ガスを前記排気装置が減圧排気ラインを介して前記排気装置の下流側へ吸引排気する工程と、前記排気装置の下流側に前記排気希釈ライン48から前記不活性ガスを供給し前記残存ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する工程とを有することで安全な減圧水素アニール処理を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置製造工程の1つである水素アニール処理を行う為の水素アニール処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デバイスの配線はAl膜、Cu膜から形成される。Al膜、Cu膜に酸素が残存すると、微細な配線の為経時変化を起こして断線の原因となることがある。この為、被処理基板について水素アニール処理によるAl膜、Cuの膜還元処理を行っている。
【0003】
上記したデバイスの配線には安価で加工性が良いことからAl配線が多用されている。
ところが、Al自体は導体抵抗が大きい為、より高速処理が可能なデバイスを製作するには、Cu又はCu合金の配線が有利である。然し、Cuは酸化し易い為、配線にCu又はCu合金を用いる場合は、水素アニール処理がより重要となる。
【0004】
従来の水素アニール処理装置としては、特開平5−291268号にも見られる様に、常圧での水素アニール処理がある。以下図5に於いて、特開平5−291268号に示されるアニール処理装置の概要を説明する。
【0005】
反応炉1の内部には反応室2が画成され、該反応室2にはボート3が挿脱される様になっている。前記反応室2には水素ガス導入管4が連通すると共に真空排気管5が連通し、該真空排気管5はバルブ6を介して真空排気装置7が接続されている。前記真空排気管5の上流側にバルブ8を介して水素燃焼パイプ9が連通し、該水素燃焼パイプ9は燃焼箱10に連通し、前記水素燃焼パイプ9の先端は燃焼ノズル11となっている。前記燃焼箱10には水素火種ライン12が連通し、該水素火種ライン12の先端は前記燃焼ノズル11近傍に導かれて種火が灯されている。又、前記燃焼箱10には排気ダクト13が連通し、図示しない排気装置に接続されている。図中、14は前記燃焼箱10の内部を大気に開放するダンパである。
【0006】
上記水素アニール処理装置に於いて、水素アニール処理が行われる場合、前記バルブ6が開かれ、前記反応室2内の空気が前記真空排気装置7により排気され、次に前記バルブ6が閉じられ、前記バルブ8が開かれる。前記水素ガス導入管4より前記反応室2に水素が常圧状態で導入され、水素アニール処理が行われる。
【0007】
又、処理後の余剰の水素ガスは前記燃焼箱10に排気される。前記水素燃焼パイプ9を経て前記燃焼ノズル11から排出される水素は、前記種火で着火され前記燃焼箱10内で燃焼する。該燃焼箱10内で排気水素が燃焼することで、前記排気ダクト13からは水素が除去された或は所定濃度以下とされた排気ガスが排出される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水素アニール処理を行う目的として、上記した金属導体膜中の酸素を除去する事(還元)を主たる目的として行う場合と、金属導体膜、特にCu膜中の不純物を除去し電気的特性を向上する目的、及び下地とCu膜との密着性の向上を図る目的で行われる場合とがある。
【0009】
還元を目的とした場合には、常圧状態で処理する方が効果的であり、これは多層配線に
対する還元処理を行う場合である。
【0010】
電気的特性の向上、下地との密着性の向上については、減圧下(例えば50Torr程度)で処理することが効果的である。
【0011】
これは、水素アニール処理の前工程であるエッチング等で、残留不純物、添加物が付着していることがあり、これらはデバイス特性上悪影響があるとされている。これらの物質は蒸気圧が低く蒸圧しにくい物質であり、除去する条件としては減圧状態とするのが良く、更に水素を供給することで前記残留不純物を除去した後が水素原子に置換され、その為に分子結合が強くなり、その結果密着性も向上すると考えられている。即ち、減圧下で水素アニール処理を行った場合、還元処理が行えると共に電気的特性の向上、下地との密着性の向上が図れる。従って、より品質が要求される場合には減圧水素アニール処理が行わ
れている。
【0012】
上述した様に、水素アニール処理を行う場合、目的に応じ常圧処理を行った方が良い場合と、減圧処理を行った方が良い場合とがある。
【0013】
ところが、上記した水素アニール処理装置は常圧でのみ水素アニール処理を行うものであり、減圧水素アニール処理は行えない。従って、減圧水素アニール処理を行う為の水素アニール処理装置を別途設備しなければならない。
【0014】
又、上記の水素アニール処理装置に於いて、減圧処理を行う為反応室を減圧にして使用すると、前記燃焼箱10が常圧で水素ガスを燃焼させる方式であるので、燃焼箱から反応室へ雰囲気が逆流する可能性があり、逆流した場合は未反応水素ガスと大気中の酸素とが反応して爆発するということも考えられ、又、燃焼箱内の水素ガス燃焼用の火が逆流し、爆発することも考えられ、未反応水素ガスの処理が難しいとされ、減圧水素アニール処理装置が実用化されたものはなかった。
【0015】
本発明は斯かる実情に鑑み、減圧水素アニール処理装置を実現すると共に減圧水素アニール処理と常圧水素アニール処理との両処理を同一の水素アニール処理装置で行える様にし、設備費の低減を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、反応室と、該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと、前記反応室に接続された減圧排気ラインと、該減圧排気ラインに設けられ、前記反応室を減圧する為の排気装置と、該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと、前記反応室に接続された常圧排気ラインと、該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と、前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインとを具備し、前記減圧排気ラインと前記常圧排気ラインと前記連絡ラインとを切替えることにより、前記排気装置を駆動させ、前記減圧排気ラインから排気するこ
とで前記反応室が減圧された状態で、前記水素ガス導入ラインから水素ガスを前記反応室へ供給しつつ前記排気希釈ラインから前記排気装置の下流側に前記不活性ガスを供給し、排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する減圧水素アニール処理と前記常圧排気ラインから排気する常圧水素アニール処理と前記連絡ラインから排気する休止状態とを選択して行う水素アニール処理方法に係るものである。
又本発明は、反応室と、該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと、前記反応室に接続された減圧排気ラインと、該減圧排気ラインに設けられ、前記反応室を減圧する為の排気装置と、該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し、排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと、前記反応室に接続された常圧排気ラインと、該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と、前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインと、前記常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記連絡ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁とを具備することを特徴とする水素アニール処理装置に係るものである。
又本発明は、反応室と、該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと、前記反応室に接続された減圧排気ラインと、該減圧排気ラインに設けられ、前記反応室を減圧する為の排気装置と、該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し、排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと、前記反応室に接続された常圧排気ラインと、該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と、前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインと、前記常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記連絡ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁と、前記排気装置の下流側に設けられたガス濃度検知器と、前記排気希釈ラインに設けられた流量コントローラとを具備し、放出される水素濃度が4%以下となる様不活性ガス供給流量を制御する水素アニール処理装置に係るものである。

【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、減圧水素アニール処理が可能となり、被処理基板からの脱ガス、不純物離脱が効果的に行われ、デバイスの電気的特性が向上する。
【0018】
又、反応室と、該反応室に水素ガスを導入する水素ガス導入ラインと、前記反応室に接続された常圧排気ラインと減圧排気ラインとを具備し、前記排気ラインを切替えることで減圧水素アニール処理と常圧水素アニール処理とを選択して行うことができるので、還元が必要なデバイス、不純物除去が必要なデバイスなど被処理物に応じた処理方法が選択でき製品品質の向上が図れる。
【0019】
反応室と、該反応室に水素ガスを導入する水素ガス導入ラインと、前記反応室に接続された常圧排気ラインと減圧排気ラインと、前記常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁とを具備するので、減圧水素アニール処理と常圧水素アニール処理とを1台の水素アニール処理装置で行えるので設備する水素アニール処理装置の台数が少なくてすみ、設備費が低減できる等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1に於いて、図5中に示したものと同一のものには同符号を付してある。
【0022】
反応炉1は反応管15、均熱管16、ヒータ17が同心多重に設けられた構成であり、前記反応管15の内部に反応室2が画成される。
【0023】
該反応室2に連通する様に、前記反応管15にガス導入管18が接続されると共に排ガス管19が接続されている。
【0024】
前記ガス導入管18は上流側で分岐され、分岐した一方は水素ガス導入管21として図示しない水素ガス供給源に接続され、分岐した他方は窒素ガス導入管22として図示しない窒素ガス供給源に接続されている。
【0025】
前記水素ガス導入管21は更に分岐し、水素火種ライン12として燃焼箱10に導かれる。前記水素火種ライン12の分岐点より下流側の位置に水素ガス給停弁23、流量コントローラ24が前記水素ガス導入管21に順次設けられ、前記水素火種ライン12には下流側に向かって火種ライン開閉弁25、流量コントローラ26が設けられる。
【0026】
前記窒素ガス導入管22は更に2つの窒素ガス希釈ライン27,28に分岐し、一方の窒素ガス希釈ライン27は前記反応管15と均熱管16との間の空間に導かれ、他方の窒素ガス希釈ライン28は前記均熱管16とヒータ17との間の空間に導かれている。前記窒素ガス希釈ライン27,28の分岐点より下流側の位置に窒素ガス給停弁29、流量コントローラ31が順次設けられ、又前記窒素ガス希釈ライン27には第1希釈ライン開閉弁32が設けられ、前記窒素ガス希釈ライン28には第2希釈ライン開閉弁33が設けられている。前記窒素ガス導入管22の窒素ガス給停弁29より上流側位置と前記水素火種
ライン12の火種ライン開閉弁25と流量コントローラ26間の位置とを窒素ガスバイパスライン34により接続し、該窒素ガスバイパスライン34にはバイパス開閉弁35を設ける。
【0027】
前記排ガス管19には前記反応室2の圧力を検出する圧力センサ36が設けられ、又前記排ガス管19は前記圧力センサ36の下流側で分岐し、一方は真空排気管5として真空排気ラインとして機能し、他方は水素燃焼パイプ9として前記燃焼箱10に導かれ、先端部は燃焼ノズル11として前記水素火種ライン12の先端近傍に開口する。
【0028】
前記真空排気管5には上流側より、排気開閉弁37、流量調整弁38、排気ポンプ40を順次設け、該排気ポンプ40の下流側には排気ダクト50が接続されている。又、前記真空排気管5の流量調整弁38と排気ポンプ40との間には第1窒素ガスバラストライン39、第2窒素ガスバラストライン41が連通し、該第1窒素ガスバラストライン39、第2窒素ガスバラストライン41は図示しない窒素ガス供給源に接続されている。
【0029】
前記第1窒素ガスバラストライン39には上流側に向かって第1開閉弁42、第1逆流防止弁43、第1流量制御弁44が順次設けられ、前記第2窒素ガスバラストライン41には上流側に向かって第2開閉弁45、第2逆流防止弁46、第2流量制御弁47が順次設けられている。
【0030】
前記排気ダクト50に排気希釈ライン48が連通し、該排気希釈ライン48の先端には下流側に向かって開口するL型ノズル49が設けられ、前記排気希釈ライン48は図示しない窒素ガス供給源に接続されている。該排気希釈ライン48には窒素ガス供給源側から下流に向かって、流量コントローラ66、開閉弁67、逆流防止弁68が設けられている。
【0031】
前記水素燃焼パイプ9の分岐点より下流側に向かって圧力スイッチ51、開閉弁52が設けられ、前記水素燃焼パイプ9の圧力スイッチ51と開閉弁52間の位置と前記真空排気管5の排気ポンプ40の下流位置とが連絡ライン53により接続され、該連絡ライン53には水素燃焼パイプ9側から開閉弁54、逆流防止弁55が設けられている。
【0032】
前記燃焼箱10は排気ダクト56を介して排気装置(図示せず)に接続され、該排気ダクト56には排気希釈ライン57が接続され、該排気希釈ライン57は図示しない窒素ガス供給源に接続され、該窒素ガス供給源側から流量コントローラ58、逆流防止弁59、開閉弁60が順次設けられている。又、前記燃焼箱10には温度センサ62、炎検知センサ63が設けられており、該両センサにより前記燃焼箱10内で水素ガスの燃焼が行われているかどうかが検出され、前記排気ダクト56にはガス濃度検知器69を設けられ、前記排気ダクト56から排出される排ガス中の水素濃度を検出する。
【0033】
以下、作用について説明する。
【0034】
先ず、図1に於いて、減圧水素アニール処理について説明する。
【0035】
前記第2希釈ライン開閉弁33、第1希釈ライン開閉弁32、窒素ガス給停弁29、火種ライン開閉弁25、バイパス開閉弁35、第2開閉弁45、開閉弁54、開閉弁52、開閉弁60がそれぞれ閉とされ、前記水素ガス給停弁23、排気開閉弁37、第1開閉弁42、開閉弁67が開とされる。
【0036】
前記排気ポンプ40が駆動され、前記反応室2が減圧状態とされる。ここで、減圧状態とは高度な真空状態ではなく、減圧時の圧力が大気圧より低い状態を意味し、減圧の状態は水素アニール処理の状態により決定される。
【0037】
前記水素ガス給停弁23が開かれ、前記流量コントローラ24で流量コントロールされながら、水素ガスが反応室2に導入される。反応後の残存ガスは前記真空排気管5を介して前記排気ポンプ40により吸引排気される。該真空排気管5の圧力は前記圧力センサ36により検出され、又前記流量調整弁38の開閉度の調整、前記第1窒素ガスバラストライン39からの窒素ガスの流入量がコントロールされることで、反応室2の背圧が制御されることで、前記反応室2の圧力がコントロールされる。ここで、減圧水素アニール処理時の反応室内の圧力は、基板上に形成された配線の電気的特性の向上、下地との密着性向
上を図る為に、1〜750Torrの範囲が好ましく、更には50Torr程度がより好ましい。
又、第1窒素ガスバラストライン39から流入する窒素ガスは排気を希釈し、水素ガス濃度を低下させる。
【0038】
水素ガスの自然爆発条件は水素ガス濃度4%から70%である。前記排気ポンプ40から排気されるガス中の水素ガス濃度が4パーセント以下となる様に、前記排気希釈ライン48は前記流量コントローラ66により窒素ガス供給量を調整しつつ排ガスを希釈する。
尚、前記L型ノズル49は下流側に開口しており、排気ダクト50中の排気ガスの流れを乱さない様に考慮されている。
【0039】
而して、大気に放出しても支障ない状態に希釈された排ガスが前記排気ダクト50を介して放出される。
【0040】
上述の様に、前記流量調整弁38による排気抵抗の調整、第1窒素ガスバラストライン39からの窒素ガスの供給による背圧制御により、前記反応室2を所定の減圧状態に維持し、而も、第1窒素ガスバラストライン39にからの窒素ガスの供給、更に前記排気希釈ライン48からの窒素ガスの供給により、放出ガス中の水素ガス濃度を4%以下に制御できる為、安全に減圧下での水素アニール処理が実現される。
【0041】
図2は休止状態を示している。
【0042】
休止状態では前記排気ポンプ40は停止され、第2希釈ライン開閉弁33、第1希釈ライン開閉弁32、水素ガス給停弁23、火種ライン開閉弁25、排気開閉弁37、第1開閉弁42、開閉弁52が閉とされ、前記窒素ガス給停弁29、バイパス開閉弁35、第2開閉弁45、開閉弁54、開閉弁67、開閉弁60が開とされている。
【0043】
窒素ガスが前記窒素ガス導入管22を経て前記ガス導入管18を流れ、前記反応室2に供給される。前記反応室2の水素ガスが押出され、前記反応室2は窒素ガスで置換される。前記反応室2から排出される窒素ガスは更に、前記水素燃焼パイプ9、連絡ライン53を経て排気ポンプ40の下流側の排気ダクト50に排出され、前記水素燃焼パイプ9内の残存水素ガスを排出する。
【0044】
又、前記第2窒素ガスバラストライン41から真空排気管5の排気ポンプ40上流側に窒素ガスが供給され、真空排気管5を窒素ガスで置換すると共に余剰の窒素ガスは排気ポンプ40を通って排気ダクト50に排出される。尚、休止状態では該排気ポンプ40は停止しており、第2窒素ガスバラストライン41から前記排気ポンプ40を経て排出する窒素ガスの流量は少ない。
【0045】
尚、窒素ガスの供給当初は、排ガス中に水素ガスが含まれており、前記排気希釈ライン48からは、排ガス中の水素ガスの濃度が4%以下となる様に、窒素ガスが供給される。
【0046】
又、前記窒素ガスバイパスライン34を経て前記水素火種ライン12に窒素ガスを流通させ、水素火種ライン12内の水素ガスを排出する。水素火種ライン12を経て窒素ガスは、燃焼箱10に排出され、更に前記排気ダクト56を経て放出される。尚、水素火種ライン12から排出される窒素ガス中に水素ガスが含まれるている場合は、排気ダクト56から排出される時点で前記排気希釈ライン57より窒素ガスが供給され、水素ガスの濃度が確実に4%以下とされる。
【0047】
尚、上記窒素ガス希釈ライン27、窒素ガス希釈ライン28は水素ガスが漏出し、前記反応管15と均熱管16との空間に、又該均熱管16と前記ヒータ17との空間に水素ガス溜った場合に、前記第2希釈ライン開閉弁33、第1希釈ライン開閉弁32を開いて窒素ガスを供給し、水素濃度を安全値迄低下させるものである。前記空間への窒素ガス供給は定期的に流してもよく、或は少量を常時流してもよい。
【0048】
図3により、常圧時での水素アニール処理について説明する。
【0049】
前記第2希釈ライン開閉弁33、第1希釈ライン開閉弁32、窒素ガス給停弁29、バイパス開閉弁35、第2開閉弁45、第1開閉弁42、排気開閉弁37、開閉弁67、開閉弁54がそれぞれ閉とされ、前記開閉弁52、開閉弁60が開とされる。
【0050】
前記水素ガス給停弁23が開かれる。前記流量コントローラ24で流量コントロールされながら、水素ガスが前記反応室2に常圧状態で導入される。又、前記火種ライン開閉弁25が開かれ、水素火種ライン12を経て前記燃焼箱10内に水素ガスが導かれ、種火として点火、燃焼される。
【0051】
前記反応室2に導入され、水素アニール処理後の残存ガスは水素燃焼パイプ9を通って、前記燃焼ノズル11より排気される。未反応の水素ガスは前記種火により着火され燃焼する。
【0052】
燃焼後の排ガスは前記排気ダクト56を介して排出される。該排気ダクト56には前記排気希釈ライン57を介して水素ガス濃度を低減させる為の窒素ガスが供給されており、前記排気ダクト56を流通する排ガス中の水素ガス濃度が前記ガス濃度検知器69により検出され、検出した水素ガス濃度が4%以下となる様供給流量が制御され、又前記ガス濃度検知器69が検出する水素ガス濃度が4%を越える状態となった場合は、排気希釈ライン57より窒素ガスが供給された状態で、前記水素ガス給停弁23、火種ライン開閉弁25が閉とされる等、装置の水素アニール処理のシーケンスが停止される。水素ガス濃度が
4%以上となる場合は、例えば種火70が消火し、前記燃焼ノズル11から流出する水素ガスの燃焼が停止した場合等がある。
【0053】
而して、常圧での水素アニール処理が行われる。
【0054】
常圧での水素アニール処理が完了すると、図4に示す如く前記第2希釈ライン開閉弁33、第1希釈ライン開閉弁32、水素ガス給停弁23、火種ライン開閉弁25、排気開閉弁37、第1開閉弁42、開閉弁52が閉とされる。
【0055】
前記窒素ガス給停弁29、バイパス開閉弁35、第2開閉弁45、開閉弁67、開閉弁54、開閉弁60が開とされる。
【0056】
前記窒素ガス給停弁29が開とされることで、前記窒素ガス導入管22を通って前記反応室2内に窒素ガスが供給され、反応室2内の水素ガスを窒素ガスに置換する。該反応室2内の水素ガスが窒素ガスに置換される迄の過程で、水素燃焼パイプ9より水素ガスが排出される。前記開閉弁52が閉となっているので、ガスは前記連絡ライン53を経て前記排気ダクト50に排出される。前記排気ダクト50には排気希釈ライン48からL型ノズル49より窒素ガスが供給される。排気ダクト50から排出される排ガス中の水素濃度はガス濃度検知器71により検出され、水素濃度が4%以下迄希釈される様、前記L型ノズ
ル49からの窒素ガス供給流量が前記流量コントローラ66により制御される。
【0057】
又、前記バイパス開閉弁35が開とされることで、前記窒素ガスバイパスライン34を経て水素火種ライン12に窒素ガスが供給され、水素火種ライン12内の水素ガスを窒素ガスにより押出す。水素火種ライン12内の水素ガスがなくなる迄、前記種火70が維持される。又、前記排気ダクト56から排出されるガス中の水素濃度は前記ガス濃度検知器69により検出されており、排出するガス中の水素濃度が4%以下となる様に、前記排気希釈ライン57から供給される窒素ガスの流量が前記流量コントローラ58により制御される。
【0058】
而して、大気に放出しても支障ない状態に希釈された排ガスが前記排気ダクト50及び排気ダクト56を介して放出される。
【0059】
前記反応炉1、水素燃焼パイプ9、水素火種ライン12中の水素ガスが完全に排出された状態では、図2で示した減圧処理後の休止状態と図4で示した常圧処理後の休止状態とは同一となる。
【0060】
上記した減圧水素アニール処理、常圧水素アニール処理のいずれに於いても、前記圧力センサ36による反応室2の圧力、又前記ガス濃度検知器69、ガス濃度検知器71により放出される排ガス中の水素濃度、更に前記温度センサ62、炎検知センサ63による排ガスの燃焼の状態等は常時監視されており、前記各種センサからの検出結果が異常を示した場合は、操作部の表示装置にエラー表示を行い、更に、放出ガスの水素濃度が所定を越える様な場合、或は温度センサ62、炎検知センサ63が水素ガスの燃焼を検知しない場合は、前記水素ガス給停弁23を閉じ、装置が休止状態となる様に制御される。
【0061】
尚、減圧処理に於ける減圧度は前述した如く、1〜750Torrであり、高い真空度は必要とされないので、前記排気ポンプ40の代わりに排気管路にオリフィス部を設け、該オリフィス部に減圧空間(反応室2)を連通し、流体の静圧を利用したコンバム方式の排気装置であってもよい。コンバム方式では数十Torr迄の減圧が可能であり、本発明の減圧処理には充分である。又、排気ポンプの場合、機械的トラブル等によりポンプが停止してしまった際大気が逆流し、爆発の危険があるが、本コンバム方式の場合はその点安全に使用できる。更には、不活性ガスとしては水素ガスの燃焼を抑制するガスで有ればよく、窒素ガスに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態を示す構成骨子図である。
【図2】同前本発明の実施の形態の減圧処理の作用を説明する説明図である。
【図3】同前本発明の実施の形態の常圧処理の作用を説明する説明図である。
【図4】同前本発明の実施の形態の常圧処理の作用を説明する説明図である。
【図5】従来の水素アニール処理装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 反応炉
2 反応室
5 真空排気管
9 水素燃焼パイプ
10 燃焼箱
12 水素火種ライン
18 ガス導入管
19 排ガス管
22 窒素ガス導入管
24 流量コントローラ
34 窒素ガスバイパスライン
36 圧力センサ
38 流量調整弁
39 第1窒素ガスバラストライン
40 排気ポンプ
41 第2窒素ガスバラストライン
48 排気希釈ライン
49 L型ノズル
50 排気ダクト
59 逆流防止弁
66 流量コントローラ
69 ガス濃度検知器
71 ガス濃度検知器




【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室と、該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと、前記反応室に接続された減圧排気ラインと、該減圧排気ラインに設けられ、前記反応室を減圧する為の排気装置と、該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと、前記反応室に接続された常圧排気ラインと、該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と、前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインとを具備し、前記減圧排気ラインと前記常圧排気ラインと前記連絡ラインとを切替えることにより、前記排気装置を駆動させ、前記減圧排気ラインから排気
することで前記反応室が減圧された状態で、前記水素ガス導入ラインから水素ガスを前記反応室へ供給しつつ前記排気希釈ラインから前記排気装置の下流側に前記不活性ガスを供給し、排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する減圧水素アニール処理と前記常圧排気ラインから排気する常圧水素アニール処理と前記連絡ラインから排気する休止状態とを選択して行うことを特徴とする水素アニール処理方法。
【請求項2】
反応室と、該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと、前記反応室に接続された減圧排気ラインと、該減圧排気ラインに設けられ、前記反応室を減圧する為の排気装置と、該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し、排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと、前記反応室に接続された常圧排気ラインと、該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と、前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインと、前記常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記連絡ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁とを具備することを特徴とする水素アニール処理装置。
【請求項3】
反応室と、該反応室に水素ガスを供給する水素ガス導入ラインと、前記反応室に接続された減圧排気ラインと、該減圧排気ラインに設けられ、前記反応室を減圧する為の排気装置と、該排気装置の下流側に不活性ガスを供給し、排気ガス中の水素濃度を所定値以下に希釈する排気希釈ラインと、前記反応室に接続された常圧排気ラインと、該常圧排気ラインに接続された水素ガス燃焼部と、前記反応室と前記排気装置の下流側とを連絡する連絡ラインと、前記常圧排気ラインと前記減圧排気ラインと前記連絡ラインと前記反応室との接続状態を切替える弁と、前記排気装置の下流側に設けられたガス濃度検知器と、前記排気希釈ラインに設けられた流量コントローラとを具備し、放出される水素濃度が4%以下となる様不活性ガス供給流量を制御する水素アニール処理装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−146704(P2011−146704A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2580(P2011−2580)
【出願日】平成23年1月8日(2011.1.8)
【分割の表示】特願2006−186756(P2006−186756)の分割
【原出願日】平成12年1月20日(2000.1.20)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】