説明

水素貯蔵物質としての有機−遷移金属複合体及びその製造方法

【課題】本発明は、水素貯蔵物質として、安全で且つ可逆的に高容量の水素貯蔵が可能な有機−遷移金属複合体とその製造方法を提供する。
【解決手段】これを実現するための本発明による水素貯蔵物質は、ヒドロキシグループ(-OH)を含む有機物質と遷移金属を含む化合物と結合しながら生成される複合体に関するもので、一分子当たり遷移金属が一つ以上結合することにより、より効率的に水素を貯蔵できる物質に関する。前記ヒドロキシグループ(-OH)を含む有機物質は、エチレングリコール、トリメチレングリコール、グリセロールなどを含むアルキル誘導体、及びヒドロキノン、フロログルシノールなどのヒドロキシグループを含むアリール誘導体が例として挙げられる。また、遷移金属としては、水素とクバス結合(Kubas binding)が可能なチタニウム(Ti)、バナジウム(V)、スカンジウム(Sc)などが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素を吸着して貯蔵する水素貯蔵物質及びその製造方法に関し、さらに具体的には、従来の貯蔵物質に比べ、マイルドな条件(例えば、貯蔵は、25℃で30気圧、放出は、100℃で2気圧)で使用することができて、貯蔵量を画期的に増大させることができる水素貯蔵物質及びその製造方法に関する。また、本発明は、水素貯蔵物質として、安全で且つ可逆的に高容量の水素貯蔵が可能な有機−遷移金属複合体と製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、炭酸ガスを排出しない清浄エネルギー源として使用するために、たくさんの研究が続けられてきた。しかし、未来のエネルギー源に実用化するためには、水素の生産、水素の貯蔵、水素エネルギーを電気エネルギーに切り替える水素燃料電池など、三つの技術の開発が必要である。特に、揮発油や軽油などを使用する各種車両を水素エネルギー車両に切り替えるためには、多い量の水素を安全且つ便利に貯蔵して、車に搭載可能な水素貯蔵技術が絶対的に必要である。
【0003】
現在まで水素を貯蔵する手段として様々な技術が開発されており、水素を高圧(350気圧あるいは700気圧)に圧縮するか、水素を極低温(−253℃以下)に冷却し液体にして貯蔵することは、安全性の問題(爆発の危険など)を有している。安全性の心配がない他の接近方法として、水素を他の固形物質に吸着させて貯蔵する研究が続けられてきたが、従来の技術は、以下のようである。
【0004】
第一に、金属水素化合物(metal hydride)を利用する方法として、金属内部に水素を注入させて、図1(a)のように、金属と水素が化学結合し、水素が貯蔵される。この方法は、過去数十年間、多くの学者により研究されてきて、この方法と関連し、L. SchlapbachとA. Zuttelが(Nature 414, 353, (2001))に発表した内容は、リチウムボロハイドライド(LiBH4)を始めとして、これまで開発された物質が網羅されている。しかし、金属と水素原子の強い化学結合のため、水素を再び外して使うためには、高い温度が必要であって、このような過程を繰り返すと、金属物質の構造自体が変わってしまい、水素貯蔵機能が退化する短所がある。
【0005】
第二に、金属−有機物質骨格(metal-organic framework)を使う方法として、例えば、図2(b)のように、1,4−ベンゼンジカルボキシレート酸化亜鉛[Zn4O(BDC)3, (BDC=1.4-benzenedicarboxylate)]のような物質内の微細な隙間に水素を貯蔵する方法があって、これに関しては、N. L. Rosiらによる研究開発成果がScience 300, 1127, (2003)に開示されている。しかし、これも、最大水素貯蔵量が少なくて、金属水素化合物と同様な様々な短所がある。
【0006】
第三に、ナノ構造を有した物質表面に吸着させる方法として、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube)またはカーボンナノファイバー(Carbon nanofiber)またはグラファイトナノファイバー[Graphite nanofibers(GNFs)]を利用する方法が提示された。例えば、図1の(c)に示されたように、Y. ZhaoらがPhysical Review Letters, 94, 155504, (2005)に発表した内容を見ると、フラーレン上にSc原子を付着すると、その上に水素分子が多く吸着されることが予測されて、図1の(d)に示されたように、T. YildirimとS. CiraciによりPhysical Review Letters, 94, 175501, (2005)に発表された内容によると、炭素ナノチューブ上にTi原子を付着すると、同様に、その上に水素分子がよく付着することが予測された。この方法の最大水素貯蔵量は、以前の方法より高いが、実際自動車に使用する場合、まだ十分ではなく、フラーレンや炭素ナノチューブを固定して配列する問題は、まだ考慮されていない状況であるため、実用化を考える段階ではない。また、J. Phys. Chem.B, 102, 4253, (1998)でグラファイトナノファイバーに67.5%の水素が貯蔵できると発表し、ChenらがScience 285, 91, (1999)でアルカリ金属を炭素ナノチューブにドーピングして14〜20%の水素を貯蔵できると報告したが、水分の含有問題、実験方法の誤差などにより再現性が疑われ、さらに、その貯蔵原理は、まだ論難が続けられている。
【0007】
第四に、高分子金属錯化合物を利用する方法に、2価の遷移金属(X)と有機配位子(L)の[X(CF3SO3)2L2]nで表現される高分子金属錯体を利用するものとして日本特開2005−232033があって、ジ−4,4’−ビピリジルビストリフルオロカーボンサルフェート銅{[Cu(CF3SO3)2(bpy)2]n}のような物質を合成して、この物質のメタンガス吸着特性を利用して、ガスの分離、貯蔵装置に応用する例を提示したが、数メガパスカル(MPa)の高圧領域で吸着特性を示し、実用化が考え難い。
【0008】
第五に、貴金属、炭素または高分子多孔質体表面の皮膜を形成して酸素を遮断、選択的に水素を透過して、多孔性物質に金属微粒子を満たし、選択的に水素を透過貯蔵する方法として、日本特開2004−275951があって、硫酸ニッケル(NiSO4)結晶のような遷移金属塩を溶解して、これを多孔性のゼオライトに浸漬して製造し、その水素貯蔵量を測定したが、数メガパスカル(MPa)の高圧領域で質量百分率1%水準の吸着を示し、実用化が難しい。
【0009】
第六に、水素を吸着できる高分子を金属酸化物に含ませて、水素化−脱水素化をして貯蔵する方法として、米国公開特許2007−039473があるが、バナジウム酸ナトリウム(NaVO3)水溶液を利用して、ゾル−ゲル(sol-gel)置換法でバナジウムオキシド(V2O5)パウダーを生成させるもので、アニリンを共に反応させて高分子化して、ニッケル(Ni)のような物質でドーピング処理して製造し、1000psi以上の高圧で吸着を示すため、実用化が考え難い。
【0010】
第七に、拡張されたパイ−コンジュゲート基質に遷移金属触媒を利用して、水素化−脱水素化反応を利用して水素を貯蔵する方法として、米国特許登録71015330、韓国公開特許2006−0022651があって、コロネン(Coronene)のような芳香族化合物とチタニウムジハイドライド(TiH2)のような遷移金属化合物を混合して、高温(200℃)、高圧(82bar)雰囲気でミリング(milling)して水素化させて、高温(150℃)、低圧(1bar)雰囲気でミリング(milling)して、脱水素化させる過程により、化学的な水素結合と、結合を切る過程を経るようになる。この方法は、水素化のために、82barの圧力と200℃の温度で2時間ボールミル(Ball milling)作業を行って、脱水素化のために、150℃の温度で7時間のボールミル(Ball milling)作業を行う、比較的厳しい条件が必要である。また、コロネン(Coronene)が水素化されることによる水素核磁気共鳴(1H NMR)結果、メチレン水素の共鳴が現れると提示しているため、パイ-コンジュゲートシステムに水素が化学的な結合をすることにより、反応時間が非常に長くなるため、実用化が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、水素貯蔵物質として、安全で且つ可逆的に高容量の水素貯蔵が可能な有機−遷移金属ハイドライド複合体(complex)を提供することにある。
【0012】
また、本発明は、前記有機−遷移金属ハイドライド複合体を高い収率で、安定的に製造できる製造方法を提供することに他の目的がある。
【0013】
また、本発明は、前記有機−遷移金属ハイドライド複合体の前駆体である有機−遷移金属ハライド複合体及びその製造方法を提供することにまた他の目的がある。
【0014】
また、本発明は、前記有機−遷移金属ハイドライド複合体を含む水素貯蔵物質及び前記水素貯蔵物質を含む水素貯蔵装置を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述の問題点を解決するために案出されたもので、ヒドロキシ基を有する有機物質と遷移金属化合物との結合により製造された有機金属複合体及びその製造方法に関する。
【0016】
本発明による有機−遷移金属ハイドライド複合体は、下記化学式1で表現される。
[化学式1]
A−(OMH)
(前記化学式1において、Aは、有機分子であり、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価−1である整数であって、nは、1〜1000の整数である。)
【0017】
より詳細には、ヒドロキシ基を有する有機化合物と遷移金属化合物を反応させて製造された有機−遷移金属化合物に水素供給源を反応させて製造された有機−遷移金属ハイドライド複合体に関する。
【0018】
また、本発明は、前記有機−遷移金属ハイドライド複合体を含む水素貯蔵物質及び前記水素貯蔵物質を含む水素貯蔵装置に関する。
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
ここで使用される技術用語及び科学用語に関し、特に定義がなければ、この発明の属する技術分野で通常の知識を有した者が通常的に理解している意味を有する。
【0021】
また、従来と同一な技術的構成及び作用に対する反復的な説明は省く。
【0022】
本発明による有機−遷移金属ハイドライド複合体は、下記化学式1の構造を有する。
[化学式1]
A−(OMH)
(前記化学式1において、Aは、有機分子であり、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価−1である整数であって、nは、1〜1000の整数である。)
【0023】
より好ましくは、 前記化学式1の有機−遷移金属ハイドライド複合体は、下記化学式2または化学式3の化合物を含む。
[化学式2]
R−(OMH)
[化学式3]
Ar−(OMH)
【0024】
前記化学式2において、Rは、C2〜C20の直鎖または分岐鎖脂肪族アルキル、またはC5〜C7の脂環族アルキルであり、前記Rは、炭素鎖内に不飽和結合を含むことができ、前記化学式3において、Arは、一つ以上の芳香族環を含むもので、より具体的には、C6〜C20の芳香族環または芳香族環を有する融合環から選択されて、前記芳香族環または融合環をなす炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置換可能であり、前記化学式2または化学式3において、前記RまたはArは、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、前記化学式2及び化学式3において、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価から1を引いた(Mの原子価−1)整数であり、nは、1〜10の整数である。好ましくは、Mの原子価範囲は、2〜7であり、これによって、mは、1〜6の整数である。
【0025】
より好ましくは、前記化学式3のArは、下記構造の芳香族環または融合環から選択されて、下記構造の芳香族環または融合環は、上述のような−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能である。
【化3】

【0026】
前記化学式1乃至3において、Mは、原子価2以上の元素から選択される1種以上であって、一つの化合物内に単一金属元素または異なる種類の金属元素を含むことができ、Ti、VまたはScから選択される1種以上であることが、クバス結合(Kubas binding)により水素を吸着することができ、水素貯蔵物質として使用するにさらに好ましく、mは、2〜4であることがより好ましく、mが3であることが最も好ましく、nは、2〜6であることがより好ましい。
【0027】
本発明は、前記化学式1の有機−遷移金属ハイドライド複合体またはこれの混合物を含有する水素貯蔵物質を提供して、水素(H2)が吸着された場合、下記化学式14で示すことができる。
[化学式14]
A−(OM(H))
(式中、A、M、m及びnは、上記の定義と同一であり、qは、1〜10の整数である。)
【0028】
また、本発明は、前記有機−遷移金属ハイドライド複合体またはこれの混合物を水素貯蔵物質として含む水素貯蔵装置を提供する。
【0029】
また、本発明は、水素貯蔵用有機−金属ハイドライド複合体の前駆体として下記化学式4で表現される有機−金属ハライド複合体を提供する。
[化学式4]
A−(OMX)
(式中、A、M、m及びnは、化学式1における定義と同一であり、Xは、ハロゲン元素であって、F、Cl、Br、Iから選択される。)
【0030】
上記化学式4の有機−金属ハライド複合体は、下記化学式5または下記化学式6の化合物を含む。
[化学式5]
R−(OMX)
[化学式6]
Ar−(OMX)
(前記化学式5において、Rは、C2〜C20の直鎖または分岐鎖脂肪族アルキル、またはC5〜C7の脂環族アルキルであり、前記Rは、炭素鎖内に不飽和結合を含むことができ、
前記化学式6において、Arは、C6〜C20の芳香族環または芳香族環を有する融合環から選択されて、前記芳香族環または融合環をなす炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置換可能であり、
前記化学式5または化学式6において、前記RまたはArは、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、
前記化学式5及び化学式6において、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価−1である整数であり、Xは、ハロゲン元素であって、nは、1〜10の整数である。)
【0031】
前記化学式5または6において、Mは、Ti、VまたはScから選択される1種以上であり、mは、3であって、nは、2〜6であることがより好ましく、前記化学式6において、Arは、下記構造式から選択されることがより好ましい。
【化4】

【0032】
また、本発明は、ヒドロキシ基を有する下記化学式7の化合物と、下記化学式10の金属ハライドを反応させて製造されることを特徴とする、化学式4の有機−金属ハライド複合体の製造方法を提供する。
[化学式4]
A−(OMX)
[化学式7]
A−(OH)
[化学式10]
MXm+1
前記化学式4、化学式7及び化学式10において、A、M、m及びnは、化学式1における定義と同一であり、Xは、ハロゲン元素であって、F、Cl、Br、Iから選択される。)
【0033】
本発明による有機−遷移金属ハライド複合体の製造方法の一側面で、前記化学式4の化合物は、下記化学式5から選択されて、前記化学式7の化合物は、下記化学式8から選択される。
[化学式5]
R−(OMX)
[化学式8]
R−(OH)
(前記化学式5及び化学式8において、Rは、C2〜C20の直鎖または分岐鎖脂肪族アルキル、またはC5〜C7の脂環族アルキルであり、前記Rは、炭素鎖内に不飽和結合を含むことができ、前記Rは、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、Xは、ハロゲン元素であり、mは、Mの原子価−1である整数であって、nは、1〜10の整数である。)
【0034】
前記化学式8の化合物は、エチレングリコール、トリメチレングリコール、グリセロール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、1−ブテン−1,4−ジオール、1,2−オクタンジオール、7−オクテン−1,2−ジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、4,4’−ビシクロヘキシルジオール、1,2−ドデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−ヘプタントリオール、または1,2,3−オクタントリオールから選択して使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明による有機−遷移金属ハライド複合体の製造方法のまた他の側面で、前記化学式4の化合物は、下記化学式6から選択されて、前記化学式7の化合物は、下記化学式9から選択される。
[化学式6]
Ar−(OMX)
[化学式9]
Ar−(OH)
(前記化学式6及び化学式9において、Arは、C6〜C20の芳香族環または芳香族環を有する融合環から選択されて、前記芳香族環または融合環をなす炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置換可能であり、前記芳香族環または融合環は、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、Xは、ハロゲン元素であり、mは、Mの原子価−1である整数であり、nは、1〜10の整数である。)
【0036】
前記化学式6または化学式9において、Arは、下記構造の芳香族環または芳香族融合環から選択されて、前記化学式9の化合物としては、下記構造の芳香族環または芳香族融合環にヒドロキシ基が結合された化合物を使用することができ、具体的な化合物名としては、ヒドロキノン、フロログルシノールなどが挙げられる。
【化5】

【0037】
本発明による有機金属ハライド複合体の製造方法は、下記反応式で表現できる。
[反応式1]

【0038】
前記化学式7のヒドロキシ基を有する化合物及び前記化学式10の化合物をそれぞれ溶媒に溶解した後、化学式7の化合物溶液を化学式10の化合物溶液に投入して反応させることにより、化学式4の有機−遷移金属ハライド複合体を製造することができる。前記溶媒は、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが使用できる。この際、化学式7の有機物質注入速度を調節することにより、ダイマー(dimer)あるいはトリマー(trimer)などを生成する副反応を抑制する。また、化学式10の金属ハライドは、空気や水分との接触に敏感に反応して、安定した形態のメタルオキシド形態への変形が懸念されるため、全ての合成と精製過程は、窒素気流下で行って、有機溶媒は、適切な方法の精製過程を経て使用することが好ましい。反応温度は、60〜120℃、より好ましくは、80〜100℃でハイドロハライド(HX)気体の生成有無によって反応を終結し、反応時間は、3〜24時間、より好ましくは、10〜20時間進行する。その後、未反応物と副産物を除去するために、適切な有機溶媒で精製段階を進行して、回転蒸発器または減圧蒸留を通じて有機溶媒を除去した後、真空状態で1時間以上、より好ましくは、5時間以上乾燥して、有機−遷移金属ハライド複合体を収得する。
【0039】
また、本発明は、水素供給源存在下で、下記化学式11の有機−遷移金属複合体のリガンド(L)と水素(H)との置換反応により前記化学式1の有機−遷移金属ハイドライド複合体を製造することを特徴とする有機−遷移金属ハイドライド複合体の製造方法を提供して、これは、下記反応式2で表現できる。
[化学式11]
A−(OML)
[反応式2]

【0040】
前記化学式11及び反応式2において、A、M、m及びnは、上記の定義と同一であり、Lは、離脱基(Leaving group)であって、水素(H)の置換反応により離脱できる離脱基であれば、その種類に制限を置く必要はない。前記Lは、ハロゲン元素(X)、−OR、−NHR、−SO、−NOなどが挙げられて、前記R及びRは、互いに独立して、C1〜C10の直鎖または分岐鎖アルキル基から選択される。pは、(Mの原子価−1)/(Lの結合数)で定められる値であって、Lの結合数は、金属と結合できる結合(bonding)の数を意味するもので、ハロゲン元素(X)、−OR、−NHR、−NOは、Lの結合数が1であり、SO2−である場合は、結合数が2となる。Mの原子価が2〜7の範囲を有する場合、Lの結合数が1である場合、pは、1〜6の整数であり、結合数が2である場合、pは、0.5、1、1.5、2、2.5または3の値を有する。例えば、Mが4価のTiイオンであり、Lが2価のアニオンであるSO2−の場合、qが4である化合物は、A−OTi(SO)であり、前記化学式6のように表現すると、A−(OTi(SO)1.5)である。
【0041】
前記化学式11の化合物は、下記化学式12または化学式13の化合物を含む。
[化学式12]
R−(OML)
(前記化学式12のR、M及びnは、化学式5における定義と同一であり、L及びpは、化学式11における定義と同一である。)
[化学式13]
Ar−(OML)
(前記化学式13のAr、M及びnは、化学式6における定義と同一であり、L及びpは、化学式11における定義と同一である。)
【0042】
前記化学式11の化合物は、金属アルコキシド、金属アルキルアミド化合物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属ハロゲン化物から選択される金属化合物と、ヒドロキシ化合物(A−(OH))との反応により製造できる。前記Lは、ハロゲン元素(X)であることがより好ましく、Lがハロゲン元素である場合、前記化学式6の有機−遷移金属複合体は、前記化学式4の有機−遷移金属ハライド複合体で表現できる。
【0043】
以下、前記化学式11の有機−遷移金属複合体の中、Lがハロゲン元素である化学式4の有機−遷移金属ハライド複合体である場合を例として挙げて、有機−遷移金属ハイドライド複合体の製造方法を説明する。
【0044】
有機−遷移金属ハライド複合体のハライドをハイドライドに置換する合成方法としては、水素供給源と触媒を同時に使用する水添脱ハロゲン化(hydrodehalogenation)反応、またはラジカル還元剤とラジカル開始剤を同時に使用するラジカル水添脱ハロゲン化(radical hydrodehalogenation)反応が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ハロゲン元素(X)を水素(H)に置換する公知の合成方法を使用することができる。
【0045】
まず、水添脱ハロゲン化(hydrodehalogenation)反応は、水素供給源としてHガスと、水素供与物質(Hydrogen donor)としてNaHPO(次亜リン酸ナトリウム)、NaHPO(亜リン酸ナトリウム)、NaHPO(リン酸ナトリウム)またはNaHPO(過リン酸ナトリウム)などのホスファイト類、リチウムボロハイドライド(LiBH)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH)、ナトリウムボロハイドライド(NaBH)、ナトリウムアルミニウムハイドライド(NaAlH)、マグネシウムボロハイドライド(Mg(BH)、マグネシウムアルミニウムハイドライド(Mg(AlH)、カルシウムボロハイドライド(Ca(BH)、カルシウムアルミニウムハイドライド(Ca(AlH)、リチウムハイドライド(LiH)、ナトリウムハイドライド(NaH)、カリウムハイドライド(KH)、マグネシウムハイドライド(MgH)、またはカルシウムハイドライド(CaH)から選択される金属ハイドライド類、ホルム酸、ヒドラジン塩酸塩などの有機塩、C3〜C10の2−アルカノール(2-hydroxy alkane)から選択される1種以上を使用して、より好ましくは、NaOH、KOHからの一つ以上のヒドロキシド(hydroxide)系列の中和剤と貴金属触媒下で、液状の水添脱ハロゲン化反応を1〜12時間行って、高い収率で有機−遷移金属ハイドライド複合体を製造することができる。
【0046】
前記反応は、反応物である有機−遷移金属ハライド複合体が空気あるいは水分に露出時、安定化した形態の金属酸化物に転換される問題点を克服するために、Hガスと水素供与物質を同時に供給して、反応液中に水素の供給量を極大化する。水素供与物質の場合、1)常温で比較的取り扱いが容易で、α−炭素の隣で離脱基(Leaving group)として作用するメチル基により比較的容易に離れる特性を有したα−水素を含む2−アルカノール(2-hydroxy alkane)と、2)強塩基条件で貴金属触媒の作用下で、加水分解反応により多い量の水素を発生させる金属ハイドライド類から一つ以上とを同時に選択して使用することがより好ましい。前記2−アルカノール(2-hydroxy alkane)としては、2−プロパノールまたは2−ブタノールがより好ましく、前記金属ハイドライド類としては、リチウムボロハイドライド(LiBH4)、ナトリウムボロハイドライド(NaBH4)、またはマグネシウムボロハイドライド(Mg(BH4)2)から選択される1種以上を使用することがより好ましく、ナトリウムボロハイドライドを使用することが最も好ましい。
【0047】
前記水添脱ハロゲン化反応は、より具体的には、下記の段階を含んでなされる。
a)窒素下で、有機−遷移金属ハライド複合体、金属ハイドライド類として、リチウムボロハイドライド(LiBH4)、ナトリウムボロハイドライド(NaBH4)、またはマグネシウムボロハイドライド(Mg(BH4)2)から選択される1種以上、及び2−アルカノールとして2−プロパノールまたは2−ブタノールを混合して反応液を製造する段階、及び
b)貴金属触媒を前記反応液に投入して、水素ガス供給下で還流反応させる段階。
【0048】
前記貴金属触媒は、Pt、Pd、RuまたはRhから選択される1種以上を使用することができ、水添脱ハロゲン化反応に大きい活性を有するPd、またはナトリウムボロハイドライドの加水分解反応に大きい活性を有するPtを使用することがより好ましい。また、前記貴金属触媒は、大量生産工程に適用及び触媒回収作業を簡便にするために、不均一触媒の形態、即ち、担体上に担持された固体触媒形態で適用することがさらに好ましく、前記担体は、グラファイトなどの炭素物質、シリカ、アルミナ、チタニアなどから選択して使用できる。前記貴金属触媒の担持量は、担体及び貴金属触媒の重量を合わせた総重量に対して1〜20重量%、より好ましくは、1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。これは、前記貴金属触媒の担持量が1重量%未満である場合、触媒活性点(active site)が足りなくて反応がよく進行されない問題点が発生する可能性があり、前記含量が20重量%を超過して高い場合、高価の貴金属触媒の使用による費用増加の問題が発生するからである。
【0049】
また、前記b)段階において、金属ハイドライドからの不安定な水素発生の抑制及び前記反応の途中に生成されるHXの中和剤として、ヒドロキシド(hydroxide)化合物をさらに添加することが好ましく、前記ヒドロキシド化合物としては、NaOH、KOHなどが挙げられる。
【0050】
前記水添脱ハロゲン化反応では、水素貯蔵物質である有機−遷移金属ハイドライド複合体の安定的な製造のために、反応物質である有機−遷移金属ハライド複合体、水素供与物質、中和剤、貴金属触媒のそれぞれに対する反応液中の含量、及び加えられるHガスの圧力などの製造変因に基づいて製造条件を確立した。
【0051】
前記有機−遷移金属ハライド複合体の反応液中の含量は、0.0001乃至1M、より好ましくは、0.001〜0.5M、さらに好ましくは、0.01〜0.1Mとなるようにするが、これは、前記反応容器内の含量が0.0001M未満の場合、水添脱塩素化反応の十分な進行が難しい問題点が生じえて、前記含量が1Mを超過して高い場合、反応後の生成物洗浄過程において、副産物の洗浄がよくできない問題が生じ得るからである。
【0052】
前記金属ハイドライドの反応液中の含量は、0.0001乃至30M、より好ましくは、0.001〜15M、さらに好ましくは、0.01〜3Mになるようにするが、これは、前記反応容器内の含量が0.0001M未満の場合、水添脱塩素化反応の十分な進行が難しい問題点が発生する可能性があって、前記含量が30Mを超過して高い場合、反応後の生成物洗浄過程において、 副産物の洗浄がよくできない問題が生じ得るからである。
【0053】
前記2−アルカノールの反応液中の含量は、0.0001乃至30M、より好ましくは、0.001〜10M、さらに好ましくは、0.01〜3Mになるようにするが、これは、前記反応容器内の含量が0.0001M未満の場合、水添脱塩素化反応の十分な進行が難しい問題点が発生する可能性があって、前記含量が30Mを超過して高い場合、反応後の生成物洗浄過程において、副産物の洗浄がよくできない問題が生じ得るからである。
【0054】
前記ヒドロキシド化合物の反応液中の含量は、0.0001〜18M、より好ましくは、0.001〜6M、さらに好ましくは、0.01〜1.8Mとなるように添加する。これは、前記反応容器内の含量が0.0001M未満の場合、副産物として生成されるHClの中和反応がよく起こらず、触媒の被毒現象が深化されて、これにより、水添脱ハロゲン化反応の完結が難しい問題点が生じ得て、前記含量が18Mを超過して高い場合、過度なるNaの生成により塩が形成されて、これを分離する部分で問題が生じる可能性があるからである。
【0055】
前記貴金属触媒の反応液中の含量は、好ましくは、有機−遷移金属ハライド複合体量に対して、0.01〜50mol%、より好ましくは、1〜50mol%である。前記貴金属触媒の含量が0.01mol%未満の場合は、反応がよく進行されない可能性があり、前記貴金属触媒含量が50mol%を超過する場合、それ以上の効果増加があまりないばかりか、費用面で不利であるからである。
【0056】
前記b)段階において、水素ガスの供給圧力は、1〜30bar、より好ましくは、1〜20bar、さらに好ましくは、1〜10barであるが、これは、前記圧力が1bar未満の場合、反応速度の低下が発生し得て、前記含量が30barを超過して高い場合、反応物の分解が起こる可能性があるからである。
【0057】
前記b)段階において、還流反応時間は、1〜48時間、より好ましくは、1〜24時間、さらに好ましくは、1〜12時間進行して、これは、前記反応時間が1時間未満の場合、反応の未完結状態が発生する可能性があり、前記反応時間が48時間を超過する場合、反応物の分解が起こる可能性があるからである。
【0058】
次に、ラジカル還元剤とラジカル開始剤を同時に使用するラジカル水添脱ハロゲン化反応について説明する。
【0059】
ラジカル水添脱ハロゲン化反応は、水素供給源としてラジカル還元剤を使用して、前記ラジカル還元剤は、TMSCH、BuSnH、PhSnH、またはMeSnHから1種以上を選択して使用できる。前記ラジカル水添脱ハロゲン化反応は、ラジカル還元剤と共にラジカル開始剤を使用して、前記ラジカル開始剤としては、AIBNまたはVAZO(1,1-azobis(cyclohexane carbonitrile))が挙げられる。
【0060】
前記ラジカル水添脱ハロゲン化反応は、ハライドをラジカル化した後、還元剤を介してハイドライドに置換させることにより、有機−遷移金属ハイドライド複合体を製造することができる。前記ラジカル水添脱ハロゲン化反応は、上述の水添脱ハロゲン化反応と同様に窒素気流下で進行して、溶媒を使用する場合、適切な方法によって精製されたものを使用し、金属酸化物が生成される副反応を抑制することが好ましい。また、使用可能な溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられる。
【0061】
また、本発明は、下記の製造段階を含む有機−金属ハイドライド複合体の製造方法を提供する。
(i)ヒドロキシ基を有する下記化学式7の化合物と、下記化学式10の遷移金属ハライドを反応させて、化学式4の有機−遷移金属ハライド複合体を製造する段階、及び
(ii)水素供給源存在下で、下記化学式4の有機−遷移金属ハライド複合体から下記化学式1の有機−遷移金属ハイドライド複合体を製造する段階。
[化学式1]
A−(OMH)
[化学式4]
A−(OMX)
[化学式7]
A−(OH)
[化学式10]
MXm+1
(上記化学式1、4、7または10において、Aは、RまたはArから選択されて、Rは、C2〜C20の直鎖または分岐鎖脂肪族アルキル、またはC5〜C7の脂環族アルキルであり、前記Rは、炭素鎖内に不飽和結合を含むことができ、Arは、C6〜C20の芳香族環または芳香族環を有する融合環から選択されて、前記芳香族環または融合環をなす炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置換可能であり、前記R及びArは、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、Xは、ハロゲン元素であり、mは、Mの原子価−1の整数であって、nは、1〜10の整数である。)
【0062】
前記(ii)段階において、有機−遷移金属ハライド複合体のハライドをハイドライドに置換する合成方法としては、水素供給源と触媒を同時に使用する水添脱ハロゲン化反応またはラジカル還元剤とラジカル開始剤を同時に使用するラジカル水添脱ハロゲン化反応が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、ハロゲン元素(X)を水素(H)に置換する公知の合成方法を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1(a)、(b)、(c)、(d)は、従来技術による3種類の水素貯蔵物質の化学構造図である。
【図2】本発明の一実施例によるトリメチレングリコール有機分子にチタニウム原子が結合された構造を有する新しい水素貯蔵物質の化学構造図である。
【図3】本発明の一実施例によるトリメチレングリコール有機分子にチタニウム原子が結合された構造を有する新しい水素貯蔵物質に水素分子が最大限吸着された様子を示す化学構造図である。
【図4】水添脱塩素化(hydrodehalogenation)反応について簡略に示した図である。
【図5】1,4−ビス(トリクロロチタニウム)フェノキシド(1,4-Bis(trichlorotitanium)phenoxide)のH−NMRスペクトルである。
【図6】1,4−ビス(トリクロロチタニウム)フェノキシド(1,4-Bis(trichlorotitanium)phenoxide)の35Cl−NMRスペクトルである。
【図7】1,4−ビス(トリクロロチタニウム)フェノキシド(1,4-Bis(trichlorotitanium)phenoxide)のEDS分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の好ましい一実施例に対する構成及び作用を図面に基づいて詳細に説明する。但し、このような説明は、当該発明の属する技術分野で通常の知識を有した者が容易に実施するためのもので、これにより本発明の権利範囲が限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]Bis(titanium(IV)hydride)propenoxideの製造
【化6】

【0066】
(1)Bis(trichlorotitanium)propenoxideの製造
窒素気流下で2口丸フラスコ250mlにチタニウム(IV)クロライド(2.9ml,0.026mol)とトルエン(40ml)を加えた。そして、テトラヒドロフラン(30ml)によく溶けているトリメチレングリコール(trimethyleneglycol)(0.988g, 0.013mol)を徐々に滴下した。90℃で24時間還流した後、反応を終了した。常温まで冷やした後、反応物をろ過して溶媒を除去した後、ヘキサン(100ml)とエチルアセテート(100ml)で洗浄し、残余反応物を除去して、真空状態で乾燥し、95%の収率で1,5-Bis(trichlorotitanium)propenoxideを得た。
Yield :95% 1H NMR(DMSO-d6) d: 1.6 (bs, 2H) 3.4 (bs, 4H). ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C3H6(OTiCl3)2-H]+ 380.4(9.9), 381.0 (9.4), 381.1 (100), 382.0 (23), 382.4 (10.1) Anal. Calc. for C6H3O3Ti3Cl9: C, 9.47 H, 1.57. Found: C, 9.56 H, 1.6%.
【0067】
(2)Bis(titanium(IV)hydride)propenoxideの製造
このように得られたBis(trichlorotitanium)propenoxide(0.06g, 0.18mmol)は、窒素気流下で3口丸フラスコ100mlに加えて、ナトリウムボロハイドライド(3g)、2−プロパノール50mlを加えた後、65℃で12時間攪拌する。別に用意しておいたフラスコに触媒のカーボン担持されたパラジウム(Pd/C(Pd含量:5wt%), 0.1g)とナトリウムヒドロキシド水溶液(1M, 20ml)を加えた。20分間攪拌した後、予め用意しておいたBis(trichlorotitanium)propenoxide溶液を徐々に添加する。この際、水素ガスを5barの圧力で注入する。65℃で12時間還流した後、反応を終了した。反応物を常温まで冷やした後、ろ過を通じて溶媒を除去した後、蒸留水500mlを反応混合物に加えた。ジクロロメタン200mlで3回抽出した後、硫酸ナトリウム10gを加えて、回転攪拌機で30分間回転させた後、抽出混合物をろ過した。回転蒸発器を利用してジクロロメタンを除去した後、残りを真空状態で乾燥し、80%の収率でBis(titanium(IV)hydride)propenoxideを得た。
Yield:80% ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C3H6(OTiH3)2-H]+ 173.5(9.9), 173.8(9.4), 174.3(100), 175.0(10.1) Anal. Calc. for C3H12O2Ti2: C, 20.45 H, 6.81. Found: C, 20.5 H, 6.9%.
【0068】
[実施例2]1,2,3-Tris(titanium(IV)hydride)propenoxideの製造
【化7】

【0069】
(1) 1,2,3-Tris(trichlorotitanium)propenoxideの製造
まず1,2,3-Tris(trichlorotitanium)propenoxideの製造のために、窒素気流下で2口丸フラスコ250mlにチタニウム(IV)クロライド(2.9ml, 0.026mol)とトルエン(40ml)を加えた。そして、テトラヒドロフラン(30ml)によく溶けているグリセロール(1,2,3-Propanetriol)(1.196g, 0.013mol)を徐々に滴下した。90℃で24時間還流した後、反応を終了した。常温まで冷やした後、反応物をろ過して、溶媒を除去した後、ヘキサン(100ml)とエチルアセテート(100ml)で洗浄し、残余反応物を除去して真空状態で乾燥し、90%の収率で1,2,3-Tris(trichlorotitanium)propenoxideを得た。
Yield : 90% 1H NMR(DMSO-d6) d: 3.5(bs, 1H) 4.3(bs, 4H). ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C3H5(OTiCl3)3-H]+ 547.5(9.9), 547.6 (9.4), 548.0(100), 548.2(23), Anal. Calc. for C3H5O3Ti3Cl9: C, 6.56 H, 0.912. Found: C, 6.6H, 0.98%.
【0070】
(2)1,2,3-Tris(titanium(IV)hydride)propenoxideの製造
このように得られた1,4-Bis(trichlorotitanium)phenoxide(0.52g, 0.95mmol)は、窒素気流下で3口丸フラスコ100mlに加えて、トルエン50mlとトリストリメチルシリルメタン(TMS3CH)(0.1g 1mmol)、AIBN(0.05g)を加えた後、攪拌する。100℃で24時間還流した後、反応を終了した。反応物を常温まで冷やした後、ろ過を通じて溶媒を除去した後、蒸留水500mlを反応混合物に加えた。ジクロロメタン200mlで3回抽出した後、硫酸ナトリウム10gを加えて、回転攪拌機で30分間回転させた後、抽出混合物をろ過した。回転蒸発器を利用してジクロロメタンを除去した後、残りを真空状態で乾燥し、70%の収率で1,2,3-Tris(titanium(IV)hydride)propenoxideを得た。
Yield:85% ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C3H5(OTiH3)3-H]+ 241.3(9.9), 241.5(9.4), 242.1(100), 242.5(23), 242.7(10.1) Anal. Calc. for C3H5O3Ti3H9: C, 14.8 H, 5.78. Found: C, 15.2 H, 5.99%.
【0071】
[実施例3]Bis(titanium(IV)hydride)ethoxideの製造
【化8】

【0072】
(1)Bis(trichlorotitanium)ethoxideの製造
Bis(trichlorotitanium)ethoxideの製造のために、窒素気流下で2口丸フラスコ250mlにチタニウム(IV)クロライド(2.9ml, 0.026mol)とトルエン(40ml)を加えた。そして、テトラヒドロフラン(30ml)によく溶けているエチレングリコール(0.724ml, 0.013mol)を徐々に滴下した。90℃で24時間還流した後、反応を終了した。常温まで冷やした後、反応物をろ過して、溶媒を除去した後、ヘキサン(100ml)とエチルアセテート(100ml)で洗浄し、真空状態で乾燥して、90%の収率でBis(trichlorotitanium)ethoxide を得た。
Yield: 90% 1H NMR(DMSO-d6) d: 3.41 (bs, 4H). ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C2H4(OTiCl3)2-H]+ 373.5(9.9), 373.7 (9.4), 374.5 (100), 374.9 (23), 375.8(10.1) Anal. Calc. for C2H4O2Ti2Cl6: C, 6.5 H, 1.1. Found: C, 6.6 H, 1.15%.
【0073】
(2)Bis(titanium(IV)hydride)ethoxideの製造
このように得られたBis(trichlorotitanium)ethoxide(0.35g,0.95mmol)は、窒素気流下で3口丸フラスコ100mlに加えて、トルエン50mlとトリストリメチルシリルメタン(TMS3CH)(0.1g 1mmol)、AIBN(0.05g)を加えた後、攪拌する。100℃で24時間還流した後、反応を終了した。反応物を常温まで冷やした後、ろ過を通じて溶媒を除去した後、蒸留水500mlを反応混合物に加えた。ジクロロメタン200mlで3回抽出した後、硫酸ナトリウム10gを加えて、回転攪拌機で30分間回転させた後、抽出混合物をろ過した。回転蒸発器を利用してジクロロメタンを除去した後、残りを真空状態で乾燥し、70%の収率でBis(titanium(IV)hydride)ethoxideを得た。
Yield: 70% ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C2H4(OTiH3)2-H]+ 373.5(9.9), 373.7 (9.4), 374.5 (100), 374.9 (23), 375.8 (10.1) Anal. Calc. for C2H4O2Ti2H6: C, 14.8 H, 6.17 Found: C, 15.1 H, 6.2%.
【0074】
[実施例4]1,3,5-Tris(titanium(IV)hydride)phenoxideの製造
【化9】

【0075】
(1)1,3,5-Tris(trichlorotitanium)phenoxideの製造
窒素気流下で2口丸フラスコ250mlにチタニウム(IV)クロライド(2.9ml, 0.026mol)とトルエン(40ml)を加えた。そして、テトラヒドロフラン(30ml)によく溶けているフロログルシノール(1,3,5-trihydroxy benzene)(1.63g, 0.013mol)を徐々に滴下した。90℃で24時間還流した後、反応を終了した。常温まで冷やした後、反応物をろ過して、溶媒を除去した後、ヘキサン(100ml)とエチルアセテート(100ml)で洗浄し、残余反応物を除去して、真空状態で乾燥し、95%の収率で1,3,5-tris(trichlorotitanium)phenoxideを得た。
Yield :95% 1H NMR(DMSO-d6) d: 6.52 (bs, 3H). ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C6H3(OTiCl3)3-H]+ 571.3(9.9), 572.0 (9.4), 572.3 (100), 572.4 (23), 573.1 (10.1) Anal. Calc. for C6H3O3Ti3Cl9: C, 12.58; H, 0.52. Found: C, 12.35; H, 0.58%.
【0076】
(2)1,3,5-Tris(titanium(IV)hydride)phenoxideの製造
このように得られた1,3,5-tris(trichlorotitanium)phenoxide(0.22g, 0.18mmol)は、窒素気流下で3口丸フラスコ100mlに加えて、ナトリウムボロハイドライド(3g)、2−プロパノール50mlを加えた後、65℃で12時間攪拌する。別に用意しておいたフラスコに触媒のカーボン担持されたパラジウム(Pd/C(Pd含量:5wt%), 0.1g)とナトリウムヒドロキシド水溶液(1M, 20ml)を加えた。20分間攪拌した後、予め用意しておいたtris(trichlorotitanium)phenoxide 溶液を徐々に添加する。この際、水素ガスを5barの圧力で注入する。65℃で12時間還流した後、反応を終了した。
【0077】
反応物を常温まで冷やした後、ろ過を通じて溶媒を除去した後、蒸留水500mlを反応混合物に加えた。ジクロロメタン200mlで3回抽出した後、硫酸ナトリウム10gを加えて、回転攪拌機で30分間回転させた後、抽出混合物をろ過した。回転蒸発器を利用してジクロロメタンを除去した後、残りを真空状態で乾燥し、80%の収率で1,3,5-Tris(titanium(IV)hydride)phenoxideを得た。
Yield: 80% ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C6H3(OTiH3)3-H]+ 275.8(9.9), 275.9 (9.4), 276.1(100), 276.6 (23), 276.8 (10.1) Anal. Calc. for C6H3O3Ti3H9: C, 26.08; H, 4.34. Found: C, 26.3; H, 4.5%.
【0078】
[実施例5]1,4-Bis(titanium(IV)hydride)phenoxideの製造
【化10】

【0079】
(1)1,4-Bis(trichlorotitanium)phenoxideの製造
まず1,4-Bis(trichlorotitanium)phenoxideの製造のために、窒素気流下で2口丸フラスコ250mlにチタニウム(IV)クロライド(2.9ml, 0.026mol)とトルエン(40ml)を加えた。そして、テトラヒドロフラン(30ml)によく溶けているヒドロキノン(1,4-hydroxy benzene)(1.5g, 0.013mol)を徐々に滴下した。90℃で24時間還流した後、反応を終了した。常温まで冷やした後、反応物をろ過して、溶媒を除去した後、ヘキサン(100ml)とエチルアセテート(100ml)で洗浄し、残余反応物を除去して真空状態で乾燥し、90%の収率で1,4-Bis(trichlorotitanium)phenoxide を得た。
Yield: 90% 1H NMR (DMSO-d6) d: 6.48 (bs, 4H). ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C6H4(OTiCl3)2-H]+ 415.2(9.9), 415.3 (9.4), 415.5 (100), 416.1 (23), 416.3 (10.1) Anal. Calc. for C6H4O2Ti2Cl6: C, 17.3; H, 0.96. Found: C, 17.35;H, 0.99%.
【0080】
(2)1,4-Bis(titanium(IV)hydride)phenoxideの製造
このように得られた1,4-Bis(trichlorotitanium)phenoxide(0.074g, 0.18mmol)は、窒素気流下で3口丸フラスコ100mlに加えて、ナトリウムボロハイドライド(3g)、2−プロパノール50mlを加えた後、65℃で12時間攪拌する。別に用意しておいたフラスコに触媒のカーボン担持されたパラジウム(Pd/C(Pd含量:5wt%), 0.1g)とナトリウムヒドロキシド水溶液(1M, 20ml)を加えた。20分間攪拌した後、予め用意しておいたBis(trichlorotitanium)phenoxide 溶液を徐々に添加する。この際、水素ガスを5barの圧力で注入する。65℃で12時間還流した後、反応を終了した。反応物を常温まで冷やした後、ろ過を通じて溶媒を除去した後、蒸留水500mlを反応混合物に加えた。ジクロロメタン200mlで3回抽出した後、硫酸ナトリウム10gを加えて、回転攪拌機で30分間回転させた後、抽出混合物をろ過した。回転蒸発器を利用してジクロロメタンを除去した後、残りを真空状態で乾燥し、83%の収率で1,4-Bis(titanium(IV)hydride)phenoxide を得た。
Yield:83% ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C6H4(OTiH3)2-H]+ 209.7(9.9), 209.9(9.4), 210.2(100), 210.8(23), 211.5(10.1) Anal. Calc. for C6H4O2Ti2H6: C, 34.4; H, 4.76. Found: C, 35.0; H, 4.8%.
【0081】
[実施例6]titanium(IV)hydride phenoxideの製造
(1)Trichlorotitanium phenoxideの製造
まずtrichlorotitanium phenoxideの製造のために、窒素気流下で2口丸フラスコ250mlにチタニウム(IV)クロライド(2.9ml, 0.026mol)とトルエン(40ml)を加えた。そして、トルエン(30ml)によく溶けているフェノール(hydroxy benzene)(1.22g, 0.013mol)を徐々に滴下した。90℃で24時間還流した後、反応を終了した。常温まで冷やした後、反応物をろ過して、溶媒を除去した後、ヘキサン(100ml)とエチルアセテート(100ml)で洗浄し、残余反応物を除去して真空状態で乾燥し、95%の収率でtrichlorotitanium phenoxideを得た。
Yield :95% 1H NMR(DMSO-d6) d: 6.8(ds,2H) 6.84(ds, 1H), 7.24(ds, 2H). ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C6H4(OTiCl3)2-H]+ 245.86(9.9), 245.89 (9.4), 245.9 (100), 246.23 (23), 246.5 (10.1) Anal. Calc. for C6H4O2Ti2Cl6: C, 29.14; H, 2.04. Found: C, 29.5;H, 2.1%.
【0082】
(2)Titanium(IV)hydride phenoxideの製造
このように得られたtrichlorotitanium phenoxide(0.23g,0.95mmol)は、窒素気流下で3口丸フラスコ100mlに加えて、トルエン50mlとトリストリメチルシリルメタン(TMS3CH)(0.1g 1mmol)、AIBN(0.05g)を加えた後、攪拌する。100℃で24時間還流した後、反応を終了した。反応物を常温まで冷やした後、ろ過を通じて溶媒を除去した後、蒸留水500mlを反応混合物に加えた。ジクロロメタン200mlで3回抽出した後、硫酸ナトリウム10gを加えて、回転攪拌機で30分間回転させた後、抽出混合物をろ過した。回転蒸発器を利用してジクロロメタンを除去した後、残りを真空状態で乾燥し、70%の収率でTitanium(IV)hydride phenoxideを得た。
Yield: 70% ESI-MS (positive mode), m/z(relative intensity): [C2H4(OTiH3)2-H]+ 143.0(9.9), 143.11 (9.4), 143.5 (100), 143.6 (23) Anal. Calc. for C6H5OTiH3: C, 50.34 H, 4.89 Found: C, 50.4 H, 4.9%.
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明による水素貯蔵物質として有機−金属ハイドライド複合体は、遷移金属と水素とのクバス結合により、常温、常圧に近い状態で水素を貯蔵及び使用することができ、ヒドロキシ基を反応基として利用することにより、一分子当たり数個の遷移金属を結合させることができ、水素貯蔵物質として提示する、全体物質当たり貯蔵された水素の質量百分率と、単位容量当たり水素の質量が優れると予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシ基(−OH)を含む有機分子の酸素(O)原子に遷移金属原子が結合された下記化学式1の有機−遷移金属ハイドライド複合体。
[化学式1]
A−(OMH
(前記化学式1において、Aは、有機分子であり、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価−1である整数であって、nは、1〜1000の整数である。)
【請求項2】
前記有機−遷移金属ハイドライド複合体は、下記化学式2または化学式3の構造であることを特徴とする、請求項1に記載の有機−遷移金属ハイドライド複合体。
[化学式2]
R−(OMH)
[化学式3]
Ar−(OMH)
(前記化学式2において、Rは、C2〜C20の直鎖または分岐鎖脂肪族アルキル、またはC5〜C7の脂環族アルキルであり、前記Rは、炭素鎖内に不飽和結合を含むことができ、
前記化学式3において、Arは、C6〜C20の芳香族環または芳香族環を有する融合環から選択されて、前記芳香族環または融合環をなす炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置換可能であり、
前記化学式2または化学式3において、前記RまたはArは、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、
前記化学式2及び化学式3において、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価-1である整数であり、nは、1〜10の整数である。)
【請求項3】
前記化学式2または3において、Mは、Ti、VまたはScから選択される1種以上であり、mは、3であって、nは、2〜6であることを特徴とする、請求項2に記載の有機−遷移金属ハイドライド複合体。
【請求項4】
前記化学式3において、Arは、下記構造式から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の有機−遷移金属ハイドライド複合体。
【化1】

【請求項5】
下記化学式5または6で表現される有機−遷移金属ハライド複合体。
[化学式5]
R−(OMX)
[化学式6]
Ar−(OMX)
(前記化学式5において、Rは、C2〜C20の直鎖または分岐鎖脂肪族アルキル、またはC5〜C7の脂環族アルキルであり、前記Rは、炭素鎖内に不飽和結合を含むことができ、
前記化学式6において、Arは、C6〜C20の芳香族環または芳香族環を有する融合環から選択されて、前記芳香族環または融合環をなす炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置換可能であり、
前記化学式5または化学式6において、前記RまたはArは、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、
前記化学式5及び化学式6において、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価-1である整数であり、Xは、ハロゲン元素であって、nは、1〜10の整数である。)
【請求項6】
前記化学式5または6において、Mは、Ti、VまたはScから選択される1種以上であり、mは、3であって、nは、2〜6であることを特徴とする、請求項5に記載の有機−遷移金属ハライド複合体。
【請求項7】
前記化学式6において、Arは、下記構造式から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の有機−遷移金属ハライド複合体。
【化2】

【請求項8】
水素供給源存在下で、下記化学式11の有機−遷移金属複合体から下記化学式1の有機−遷移金属ハイドライド複合体を製造することを特徴とする、有機−遷移金属ハイドライド複合体の製造方法。
[化学式1]
A−(OMH)
[化学式11]
A−(OML)
(上記式において、Aは、有機分子であり、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価−1である整数であり、nは、1〜1000の整数であって、Lは、ハロゲン元素(X)、−OR、−NHR、−SO、または−NOから選択されて、前記R及びRは、互いに独立して、C1〜C10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、pは、(Mの原子価−1)/(Lの結合数)で定められる値である。)
【請求項9】
前記化学式1の化合物は、下記化学式2の化合物から選択されて、前記化学式11の化合物は、下記化学式12の化合物から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の有機−遷移金属ハイドライド複合体の製造方法。
[化学式2]
R−(OMH)
[化学式12]
R−(OML)
(前記化学式2及び化学式12において、Rは、C2〜C20の直鎖または分岐鎖脂肪族アルキル、またはC5〜C7の脂環族アルキルであり、前記Rは、炭素鎖内に不飽和結合を含むことができ、前記Rは、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価−1である整数であり、nは、1〜10の整数であって、Lは、ハロゲン元素(X)、−OR、−NHR、−SO、または−NOから選択されて、前記R及びRは、互いに独立して、C1〜C10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、pは、(Mの原子価−1)/(Lの結合数)で定められる値である。)
【請求項10】
前記化学式1の化合物は、下記化学式3の化合物から選択されて、前記化学式11の化合物は、下記化学式13の化合物から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の有機−遷移金属ハイドライド複合体の製造方法。
[化学式3]
Ar−(OMH)
[化学式13]
Ar−(OML)
(前記化学式3及び化学式13において、Arは、C6〜C20の芳香族環または芳香族環を有する融合環から選択されて、前記芳香族環または融合環をなす炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置換可能であり、前記芳香族環または融合環は、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、mは、Mの原子価−1である整数であり、nは、1〜10の整数であって、Lは、ハロゲン元素(X)、−OR、−NHR、−SO、または−NOから選択されて、前記R及びRは、互いに独立して、C1〜C10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、pは、(Mの原子価−1)/(Lの結合数)で定められる値である。)
【請求項11】
前記化学式12の有機−遷移金属複合体は、下記化学式5の化合物であることを特徴とする、請求項9に記載の有機−遷移金属ハイドライド複合体の製造方法。
[化学式5]
R−(OMX)
(上記化学式5において、R、M、m及びnは、請求項9に記載の定義と同一であり、Xは、F、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン元素である。)
【請求項12】
前記水素供給源として、
水素ガスと、
NaHPO(次亜リン酸ナトリウム)、NaHPO(亜リン酸ナトリウム)、NaHPO(リン酸ナトリウム)またはNaHPO(過リン酸ナトリウム)から選択されるホスファイト類、リチウムボロハイドライド(LiBH)、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH)、ナトリウムボロハイドライド(NaBH)、ナトリウムアルミニウムハイドライド(NaAlH)、マグネシウムボロハイドライド(Mg(BH)、マグネシウムアルミニウムハイドライド(Mg(AlH)、カルシウムボロハイドライド(Ca(BH)、カルシウムアルミニウムハイドライド(Ca(AlH)、リチウムハイドライド(LiH)、ナトリウムハイドライド(NaH)、カリウムハイドライド(KH)、マグネシウムハイドライド(MgH)、またはカルシウムハイドライド(CaH)から選択される金属ハイドライド類、ホルム酸、ヒドラジン塩酸塩、C3〜C10の2−アルカノール(2-hydroxy alkane)から選択される1種以上と、
を使用することを特徴とする、請求項8に記載の有機−遷移金属ハイドライド複合体の製造方法。
【請求項13】
(i)ヒドロキシ基を有する下記化学式7の化合物と、下記化学式10の遷移金属ハライドを反応させて、化学式4の有機−遷移金属ハライド複合体を製造する段階と、
(ii)水素供給源存在下で、下記化学式4の有機−遷移金属ハライド複合体から下記化学式1の有機−遷移金属ハイドライド複合体を製造する段階と、
を含む有機−遷移金属ハイドライド複合体の製造方法。
[化学式1]
A−(OMH)
[化学式4]
A−(OMX)
[化学式7]
A−(OH)
[化学式10]
MXm+1
(上記化学式1、4、7または10において、Aは、RまたはArから選択されて、Rは、C2〜C20の直鎖または分岐鎖脂肪族アルキル、またはC5〜C7の脂環族アルキルであり、前記Rは、炭素鎖内に不飽和結合を含むことができ、Arは、C6〜C20の芳香族環または芳香族環を有する融合環から選択されて、前記芳香族環または融合環をなす炭素原子は、窒素、酸素または硫黄から選択されるヘテロ原子で置換可能であり、前記R及びArは、ハロゲン元素、−NO、−NO、−NH、−R、−OR、−(CO)R、−SONH、−SO、−SONa、−(CH)SH、−CNから選択される一つ以上の置換基で置換可能であり、前記置換基において、R乃至Rは、互いに独立して、C1〜C30の直鎖または分岐鎖アルキル基、またはC6〜C20の芳香族基から選択されて、Xは、ハロゲン元素であり、kは、0〜10の整数であって、
Mは、原子価2価以上の遷移金属元素から選択される1種以上であり、Xは、ハロゲン元素であり、mは、Mの原子価-1である整数であって、nは、1〜10の整数である。)
【請求項14】
請求項1乃至4のいずれかに記載の有機−遷移金属ハイドライド複合体を含有する水素貯蔵物質。
【請求項15】
請求項14に記載の水素貯蔵物質を含む水素貯蔵装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−503662(P2010−503662A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528179(P2009−528179)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/KR2007/004404
【国際公開番号】WO2008/032985
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(503434302)財団法人ソウル大学校産学協力財団 (32)
【氏名又は名称原語表記】Seoul National University Industry Foundation
【住所又は居所原語表記】San 4−2, Bongchun−dong, Kwanak−gu, Seoul, Korea
【出願人】(501014658)ハンワ ケミカル コーポレイション (3)
【出願人】(505406671)インダストリー−ユニバーシティー コオペレーション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティー (10)
【Fターム(参考)】