水耕栽培用の養液槽
【課題】 養液循環型の水耕栽培用に使用する長尺の養液槽では、各作物が循環養液中の養分を吸収することにより、養液槽における養液下流側に位置するほど養液の養分濃度が薄くなり、養液槽の位置によって作物の成長度合いにかなりの差が出る。
【解決手段】 水耕栽培用の養液Wを貯留する長尺の槽本体20を有し、槽本体20内の養液Wを循環させるようにして使用される水耕栽培用の養液槽において、槽本体20には前半部に前側栽培部20Aと後半部に後側栽培部20Bを設ける一方、槽本体20の前半部の底壁22部分に、給液溜部23に供給された高濃度養液の一部を受け入れてその高濃度養液のまま前側栽培部20Aの終端部まで流通させる区画養液通路28を設けることにより、槽本体の後側栽培部20Bに供給する養液の養分濃度を高めることができる。
【解決手段】 水耕栽培用の養液Wを貯留する長尺の槽本体20を有し、槽本体20内の養液Wを循環させるようにして使用される水耕栽培用の養液槽において、槽本体20には前半部に前側栽培部20Aと後半部に後側栽培部20Bを設ける一方、槽本体20の前半部の底壁22部分に、給液溜部23に供給された高濃度養液の一部を受け入れてその高濃度養液のまま前側栽培部20Aの終端部まで流通させる区画養液通路28を設けることにより、槽本体の後側栽培部20Bに供給する養液の養分濃度を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、水耕栽培用の養液槽に関し、特にハウス栽培施設において使用される長尺の養液槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培用の養液槽を使用したハウス栽培施設として、本願出願人は、特開2005−198555号公報(特許文献1)に示されるものや、図13〜図15に示す特願2005−205331号(特許文献2)に示されるもの等を既に提案している。
【0003】
これらのハウス栽培施設では、図13(特許文献2のもの)に示すように、ハウス1内に長尺の養液槽2,2・・を複数列(図示例では5列)設置している。各養液槽2は、長さが50m程度の長尺のものが使用されている。各養液槽2の底壁22には、図14に示すように、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部26と筋状山部27とを交互に複数列形成している。そして、この養液槽2では、各筋状谷部26,26・・に対応する位置で槽長さ方向に所定小間隔をもって多数の作物A(図15の丸印部分)が栽培される。
【0004】
各養液槽2内に貯留される養液W(図14)は、それぞれ養液循環装置5で循環させるようにしている。即ち、各養液槽2には、一端側に給液溜部23と他端側に排液溜部24を有しており、養液循環装置5(ポンプ51、吸引管52)により、養液槽2内の養液W(図14)を排液溜部24の排液口24aから吸引して給液溜部23に戻すことで、養液を循環させるようになっている。
【0005】
養液槽2内の養液量は、作物Aによる吸収や蒸発によって徐々に減少していくが、このハウス栽培施設では、各養液槽2内の養液量を水位センサー(高水位センサー18,低水位センサー19)で検出して、養液槽2内の養液量が所定水位まで低下すると、養液補給装置3により養液を補給するようになっている。即ち、養液補給装置3は、低水位センサー19が低水位を検出すると、当該養液槽2に属する電磁弁34が開放されて貯留タンク31内の養液を給液管32及び分岐管33を介して給液口23aから給液溜部23に補給し、高水位センサー18が高水位を検出すると電磁弁34が閉じて補給停止するようになっている。尚、貯留タンク31内の養液が減少すると、調合タンク41内で調合された高濃度養液(養分濃度の濃い養液)が給液管42を通して貯留タンク31内に補給される。
【0006】
ところで、図13に示すように、養液槽2として長さが50m程度の長尺のものを使用すると、ハウス1内に設置される養液槽2の本数を少なくできて、養液循環装置5の個数や養液補給装置3の分岐管33、電磁弁34等の個数が削減でき、ハウス栽培施設全体の設備コストを低減できるという利点がある。
【0007】
反面、長尺(例えば50m程度)の養液槽2であって養液循環式のものでは、養液Wが給液溜部23側から排液溜部24側に移動するのにつれて順次作物Aに養液中の養分が吸収されていくので、図15の下段のグラフに示すように、養液槽2の下流側になるほど養分濃度が薄くなり(養分濃度線を参照)、給液溜部23位置の養分濃度D1と排液溜部24位置の養分濃度D2とではかなり大きな差が出る。
【0008】
【特許文献1】特開2005−198555号公報
【特許文献2】特願2005−205331号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記(図13)のように、長尺(例えば50m程度)の養液槽2を使用した養液循環式のハウス栽培においては、養液槽2における給液溜部23寄り位置と排液溜部24寄り位置とでは、図15に示すように養液Wの養分濃度差がかなり大きくなることで作物の成長に差が出てしまう。従って、養液槽2における給液溜部23寄り位置で栽培した作物(符号A1の作物)と排液溜部24寄り位置で栽培した作物(符号Anの作物)とでは、品質(玉太り)や収穫量に差が出るという問題があった。
【0010】
そこで、本願発明は、上記のように、養液循環式に使用され且つ長尺(例えば50m程度の長さ)の養液槽であっても、給液溜部寄り位置(高濃度養液が供給される位置)の養分濃度と排液溜部寄り位置(作物が養分を吸収した後の位置)の養分濃度との差を小さくし得るようにすることにより、作物の成長を均一化する(成長差を小さくする)ことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、水耕栽培用の養液槽を対象にしている。
【0012】
本願請求項1の発明
本願請求項1の発明の養液槽は、水耕栽培用の養液を貯留する長尺の槽本体を有し、該槽本体内の養液を槽本体の一端側にある給液溜部と槽本体の他端側にある排液溜部との間で循環させるようにして使用されるものである。
【0013】
この請求項1の養液槽の大きさは、特に限定するものではないが作業性の面で槽幅が1m前後で、ハウス長さに応じて適宜の長尺長さ(例えば30〜50mの長さ)のものが使用される。又、養液槽の周壁の高さは、特に限定するものではないが170〜180mm程度のものを使用できる。養液槽の材料としては、例えば鉄板やステンレス鋼板等の金属板、プラスチック板(強化繊維プラスチック板(FRP)を含む)等が使用できる。
【0014】
この養液槽の槽本体内には、前半部の所定長さ範囲に前側栽培部と後半部の所定長さ範囲に後側栽培部を設けている。この前側栽培部及び後側栽培部には、槽幅方向を複数列に分割するような区分け用の筋状凹凸部を設けることができる。尚、槽本体における前側栽培部の終端と後側栽培部の始端との間には、槽長さ方向に小長さ範囲(例えば10〜30cm程度の長さ)のフラット部(無凹凸部)を設ける。
【0015】
そして、この請求項1の養液槽には、槽本体の前半部の底壁部分に、給液溜部に供給された高濃度養液の一部を受け入れてその高濃度養液のまま前側栽培部の終端部まで流通させる区画養液通路を設けている。尚、本願でいう高濃度養液とは、養分濃度の濃い養液のことである。
【0016】
この請求項1の養液槽に使用される区画養液通路は、槽本体の前半部の底壁部分に設けられたものであって、槽本体の給液溜部にある高濃度養液の一部を受け入れて前側栽培部の終端部まで流通させ得るものであれば適宜の構造のものを採用できる。例えば、該区画養液通路として、槽本体の底壁上面を前側栽培部の全長に亘って下向き開口の長尺箱型部材で被覆してトンネル状に区画したもの、あるいは槽本体の底壁上面に前側栽培部の全長に亘る長さのパイプを設置したもの、等を採用できる。又、この区画養液通路は、槽幅方向に所定小間隔をもって複数列設けることができる。
【0017】
この請求項1の養液槽は、長尺ハウス内で水耕栽培するのに適したもので、1つのハウス内に複数列設置される。又、各養液槽には、養液を循環させる養液循環装置が装備されるとともに、減少する養液を補充するための養液補給装置も装備される。尚、養液補給装置で補給される養液には高濃度の養分を含んでおり、該補給養液が槽本体の給液溜部(槽始端部)に供給されると、その高濃度養液が給液溜部にある既存の養液と混合される。従って、給液溜部において混合された養液中には、比較的高濃度の養分を含んでいる。
【0018】
養液槽には、前半部の前側栽培部及び後半部の後側栽培部に、それぞれ前後・左右に所定小間隔をもって多数の作物が植え付けられる。そして、養液循環装置及び養液補給装置を作動させながら養液槽上で作物を栽培するが、養液循環装置が作動すると、槽本体の排液溜部(槽終端部)にある養液が吸引されて、槽本体内の養液が給液溜部(槽始端部)側から排液溜部(槽終端部)側に流動する。
【0019】
養液槽上の各作物は、槽本体内の養液(水分及び養分)を吸収して成長するが、槽本体が長尺であるので、養液が槽本体の全長を通過する間の滞留時間が長くなり、その間に作物が養液中の養分を吸収する量が多くなる。換言すれば、槽本体の排液溜部(槽終端部)寄り位置になるほど養液中の養分濃度が薄くなる。
【0020】
ところで、この請求項1の養液槽には、槽本体の前半部に区画養液通路を設けており、槽本体内を養液が流れると、給液溜部(槽始端部)において高濃度養液の一部が区画養液通路の始端部から該区画養液通路内に流入する。この区画養液通路内に流入した高濃度養液は、前側栽培部において作物に吸収されることなく(従って高濃度のままである)、区画養液通路内を通って前側栽培部の終端部から放出される。すると、前側栽培部と後側栽培部との間において、前側栽培部の作物に養分を吸収された養液(やや低濃度になっている)と区画養液通路を通ってきた高濃度養液とが混合される。この混合養液は、給液溜部にある養分濃度(初期濃度)より低いものの、前側栽培部で作物に吸収された養液の養分濃度より高くなっている。尚、以下の説明では、この混合養液の養分濃度を便宜上、中間濃度ということがある。そして、この混合養液が後側栽培部に流れることにより、後側栽培部の作物は上記中間濃度の混合養液を吸収して成長する。
【0021】
このように、請求項1の養液槽では、槽本体の長さ方向中間部において養分濃度の高い初期養液(給液溜部の養液)を補充できるようになっているので、後側栽培部における養液の養分濃度を回復させることができる。
【0022】
又、この区画養液通路は、槽本体の底壁部分に設けているので、該区画養液通路が槽本体の両側部からはみ出すことがなく、該区画養液通路をコンパクトに設置できる。
【0023】
本願請求項2の発明
本願請求項2の発明は、上記請求項1の養液槽において、槽本体の前側栽培部の底壁に、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部と筋状山部とを交互に複数列形成するとともに、区画養液通路として、槽本体前半部の筋状山部内の空所に筋状山部の全長に亘って貫通する養液流通用のパイプを設置している。
【0024】
この請求項2の養液槽では、槽本体の前側栽培部の底壁に槽幅方向の断面が上下に凹凸する凹凸形成部があるが、この凹凸形成部の各筋状山部内には、下方に開口する空所が形成されている。そして、この請求項2では、筋状山部内の空所に区画養液通路となるパイプを設置している。又、この区画養液通路(パイプ)は、全部の筋状山部に設けてもよいし、一部の筋状山部にのみ設けてもよい。
【0025】
この請求項2の養液槽でも、請求項1のものと同様に、養液補給装置により槽本体の給液溜部(槽始端部)に高濃度養液が補給されて、該給液溜部にある養液が比較的高濃度(養分が濃い)になる。そして、槽本体内の養液を養液循環装置で循環させると、給液溜部にある高濃度養液の一部が区画養液通路(パイプ)内を通って高濃度のまま前側栽培部の終端部から放出されるようになっている。従って、前側栽培部の終端部と後側栽培部の始端部との間において、前側栽培部の作物に養分を吸収された養液(やや低濃度になっている)と区画養液通路を通ってきた高濃度養液とが混合され、その混合養液の養分濃度がいくらか高くなるという作用が得られる。
【0026】
又、この請求項2の養液槽では、槽本体の前側栽培部の底壁が筋状谷部と筋状山部により凹凸形状になっており、且つ区画養液通路となるパイプが筋状山部内の空所にあって槽本体の下面側に露出している。従って、養液槽の前側栽培部では、養液が接触する部分(槽本体底壁の凹凸部分及び区画養液通路のパイプ)の表面積が広くなる。このように、養液槽における養液が接触する部分の表面積を広くしたものでは、後述の実施例のように、この養液槽をハウス内で使用し、且つ夏期の高温時に養液を冷却器で冷却しながら栽培するようにしたものにおいて、冷却した養液とハウス内の高温空気とを熱交換させる(ハウス内温度を下げる)際の熱交換効率が向上するという作用が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本願請求項1の発明の効果
本願請求項1の発明は、長尺(例えば30〜50m)の槽本体を有し、槽本体内の養液を循環させるようにして使用される養液槽において、槽本体の前半部の底壁部分に、給液溜部に供給された高濃度養液の一部を高濃度養液のまま前側栽培部の終端部(後側栽培部の始端部直前)まで流通させる区画養液通路を設けて構成されている。
【0028】
ところで、養液循環型の長尺養液槽で作物を栽培する場合には、養液が槽本体内を流動中に作物が養液中の養分を吸収し、槽本体の排液溜部(槽終端部)側に近づくほど養液中の養分濃度が薄くなる。
【0029】
そこで、本願請求項1の養液槽では、区画養液通路により、給液溜部(槽始端部)にある高濃度養液の一部を高濃度のままで槽長さ方向の中間部(前側栽培部の終端部)まで流通させて、そこの養液(養分濃度が初期濃度より薄くなっている)と混合させることができるので、後側栽培部に流す養液の養分濃度を回復させることができる。従って、養液循環型で長尺の養液槽を使用して水耕栽培するものにおいて、槽長さ方向の養分濃度の差を小さくでき、それによって槽長さ方向の栽培場所による作物の成長差を小さくできる(品質や収穫量等の均一化を達成できる)という効果がある。
【0030】
又、この請求項1の養液槽で使用されている区画養液通路は、槽本体の底壁部分に設けているので、該区画養液通路が槽本体の両側部からはみ出すことがない。従って、該区画養液通路をコンパクトに設置できるとともに該区画養液通路が作業の邪魔にならないという効果もある。
【0031】
本願請求項2の発明の効果
本願請求項2の発明は、上記請求項1の養液槽において、槽本体の前側栽培部の底壁に、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部と筋状山部とを交互に複数列形成するとともに、区画養液通路として、槽本体前半部の筋状山部内の空所に筋状山部の全長に亘って貫通する養液流通用のパイプを設置している。
【0032】
従って、この請求項2の養液槽でも、区画養液通路による上記請求項1の効果を有している。
【0033】
又、この請求項2の養液槽では、槽本体前半部の底壁部分が筋状谷部と筋状山部により凹凸形状になっており、且つ区画養液通路となるパイプが筋状山部内の空所にあって槽本体の下面側に露出しているので、養液が接触する部分(槽本体底壁の凹凸部分及び区画養液通路のパイプ)の表面積が広くなる。従って、この請求項2の養液槽をハウス内で使用し、且つ夏期の高温時に養液を冷却器で冷却しながら栽培するようにしたものでは、冷却した養液とハウス内の高温空気との熱交換効率が良好になり、ハウス内温度を下げるのに効果がある。
【実施例】
【0034】
以下、図1〜図12を参照して本願実施例の水耕栽培用の養液槽を説明すると、図1〜図9には第1実施例の養液槽の使用例を示し、図10〜図12には第2実施例の養液槽の使用例を示している。
【0035】
図1は第1実施例の養液槽2を使用したハウス栽培施設の概略平面図であり、図2は図1のII−II拡大断面図である。この実施例のハウス栽培施設は、図1及び図2に示すように、作物栽培用ハウス1内に合計5列の養液槽2,2・・を設置している。
【0036】
ハウス1は、立地条件等によって適宜の大きさのものが建築されるが、この実施例のハウス1は、比較的大型で、例えば長さ(図1の左右長さ)が50m、幅(図1の上下長さ)が12m、高さの平均が5m程度の大きさの容積を有している。尚、ハウス1におけるこれらの寸法は、一実施例であって特に限定するものではない。
【0037】
ハウス1の外周壁11及び屋根12には、それぞれ透明板(アクリル板やガラス板)が用いられていて、ハウス内に採光できるようにしている。従って、特に夏期の日中にはハウス1内がかなりの高温状態になる。尚、ハウス1には、外周壁11の数箇所に側面窓13,13を設ける一方、屋根12の数箇所にも天窓14を設けており、特に夏期においては、側面窓13や天窓14を開放してハウス1内を換気できるようにしている。
【0038】
ハウス1内に設置される養液槽2は、この実施例では、槽本体20として幅が1m、長さが46m、高さが175mm程度の大きさの長尺矩形のものが採用されている。そして、この実施例のハウス栽培施設では、ハウス1内に5本の養液槽2,2・・を所定幅(約1m幅)の作業スペースを隔てて平行に設置している。尚、養液槽2(槽本体20)の大きさ、及びハウス1内に養液槽設置本数等は、上記記載のものに限定するものではなく、ハウス1の立地条件によって適宜に設計変更可能である。
【0039】
又、各養液槽2,2・・は、それぞれフレーム状の支持台9,9・・により地面から所定高さだけ離間した位置で水平に設置されている。従って、各養液槽2,2・・の下方には空気が通過し得るとともに、養液槽2の下面のほぼ全面に空気が接触するようになっている。
【0040】
各養液槽2,2・・の槽本体20は、この実施例では4mm厚さ程度の強化繊維プラスチック板(FRP)で製作されており、図4〜図8に示すように枠状の周壁21と底壁22とで薄型容器状に成形されている。尚、養液槽2の槽本体20は、金属板等の適宜の材質のものに変更することができる。
【0041】
各養液槽2,2・・槽本体20は、一端側(図1における左端側)の所定小長さ範囲(約60cm)が給液溜部23となり、他端側(図1における右端側)の所定小長さ範囲(約60cm)が排液溜部24となっている。この給液溜部23及び排液溜部24の底面は、平坦面となっている。給液溜部23には給液口23aが開口しており、排液溜部24には排液口24aが開口している。
【0042】
養液槽2の槽本体20には、前半部に前側栽培部20Aと後半部に後側栽培部20Bとが設けられている。この前側栽培部20Aと後側栽培部20Bとの間は、後述するように養液の合流部20Cとなるもので、この合流部20Cの底面は、図5及び図8に示すように小長さ範囲(例えば10〜20cm)だけ平坦面となっている。尚、前側栽培部20Aと後側栽培部20Bは、この実施例では相互に同長さ(それぞれ約22mの長さ)を有しているが、他の実施例では両栽培部20A,20Bの長さに差をもたせることもできる。
【0043】
槽本体20における前側栽培部20Aには、図4〜図6及び図8に示すように、底壁22の上面に複数列(図示例では4列)の区画養液通路28,28・・が形成されている。この第1実施例の各区画養液通路28,28・・には、図6及び図8に示すように、下方及び前後両端部が開放する長尺箱型部材28aを使用している。この長尺箱型部材28aは、左右の側壁間隔が110mmで高さが95mmの断面門型形状であって、前側栽培部20Aの全長(約22m)に亘る長さを有している。尚、この長尺箱型部材28aは、槽本体20と同材料(例えばFRP)で製作したものが採用できる。
【0044】
そして、この長尺箱型部材28aは、合計4本使用し、開口部を下向きにした状態でそれぞれ槽幅方向に等間隔をもって槽長さ方向に平行に配置している。各長尺箱型部材28aの下端部は、槽本体底壁22の上面に適宜の手段で固着されている。この各区画養液通路28,28・・の設置状態では、図6及び図8に示すように、各長尺箱型部材28aの上面が、槽本体20内に貯留される養液Wの最低水位L2の液面より低くなっている。
【0045】
各区画養液通路28,28・・は、始端部が槽本体20の給液溜部23に開口している一方、終端部が上記合流部20Cに開口している。そして、後述するように、槽本体20内の養液Wを循環させると、給液溜部23の養液Wの一部が各区画養液通路28,28・・の始端部内に流入し、その流入養液が該各区画養液通路28,28・・内を通ってその終端部から合流部20Cに放出されるようになっている。尚、この実施例では、槽本体20の前側栽培部20Aに合計4本の区画養液通路28,28・・を設けているが、必要に応じて4本のうちのいくつかの区画養液通路を閉鎖して使用することもできる。
【0046】
各区画養液通路28,28・・(各長尺箱型部材28a,28a・・)間、及び両端の各区画養液通路28,28と左右の各周壁21,21との間には、それぞれ幅が110mm程度の筋状谷部26,26・・が形成されている。この各筋状谷部26,26・・は、前側栽培部20Aにおける養液Wの主要な流路となるとともに、図6に示すように作物Aの根Bを繁茂させるスペースとなる。尚、隣接する各筋状谷部26,26間には、それぞれ長尺箱型部材28aからなる仕切り壁があるので、各筋状谷部26内で繁茂する作物Aの根Bが隣の筋状谷部26内に侵入することがない(隣の作物の根Bと絡むことがない)。
【0047】
槽本体20の後側栽培部20Bの底壁22には、図5、図7〜図8に示すように、それぞれ槽長さ方向に長い筋状谷部26と筋状山部27とを交互に複数列形成している。この筋状谷部26と筋状山部27は、図7に示すように、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽幅方向に連続して形成している。この実施例では、槽本体20の槽幅が1mで、筋状谷部26及び筋状山部27の各幅をそれぞれ110mm程度に設定しており、従って1つの槽本体20につき筋状谷部26が5列と筋状山部27が4列形成されている。又、各筋状山部27,27・・の高さ(筋状谷部26の底部から筋状山部27の頂面までの高さ)は、95mmに設定している。従って、この実施例では、凹凸状底壁22の表面積が平坦底壁の表面積に比して176%程度になる。尚、この後側栽培部20Bの各筋状山部27,27・・は、前側栽培部20Aの各区画養液通路28,28・・と対応する位置で且つその長尺箱型部材28aと同幅で同高さに設定している。
【0048】
各養液槽2,2・・の給液溜部23には、図5及び図6に示すように、それぞれ槽本体20内に収容される養液Wの水位を計測する高水位センサー18と低水位センサー19とが設けられている。高水位センサー18は、槽本体20内の養液Wが補給を要しない所定高水位(図6の水位L1)になったときに検出し、低水位センサー19は、該槽本体20内の養液Wが補給を要する所定低水位(図6のL2)になったときに検出するものである。尚、この両水位センサー18,19は、後述する養液補給装置3の電磁弁34を制御する信号をコントローラ10(図4)に送信する。
【0049】
各養液槽2,2・・内には、養液補給装置3により養液Wが補給される。この養液補給装置3は、図1及び図3に示すように、養液Wを貯留する貯留タンク31と、貯留タンク31内の養液Wを供給する給液管32と、該給液管32からそれぞれ各養液槽2,2・・に分岐させた各分岐管33,33・・と、各分岐管33,33・・に取付けた各電磁弁34,34・・と、養液Wを調合する調合タンク41と、調合タンク41内の養液Wを貯留タンク31に供給する給液管42と、該給液管42に設けたポンプ43及び電磁弁44を有している。
【0050】
調合タンク41では、水に作物の養分(窒素を含む)を混合して養液Wを作るが、ここで作られる養液Wは、養分濃度の濃いものである。
【0051】
貯留タンク31には、貯留養液量を検出する水位センサー35(図3)が設けられている。この水位センサー35は、貯留タンク31内の高水位M1と低水位M2をそれぞれ検出でき、水位センサー35が高水位M1を検出している状態ではコントローラ10からの信号でポンプ43を停止し電磁弁44を閉にする一方、水位センサー35が低水位M2を検出するとコントローラ10からの信号で電磁弁44を開にしポンプ43を作動させるようになっている。尚、ポンプ43の停止時には調合タンク41から貯留タンク31への養液補給は停止し、ポンプ43の作動時(電磁弁44が開)には調合タンク41から貯留タンク31に高濃度養液Wが供給される。
【0052】
貯留タンク31は、ハウス1内において各養液槽2,2・・より高位置に設置されていて、水頭差によって貯留タンク31内の養液Wを各養液槽2,2・・側に自然流下させ得るようになっている。
【0053】
各分岐管33,33・・の先端は、それぞれ養液槽2,2・・の各給液溜部23にある給液口23aに接続されている。
【0054】
各分岐管33,33・・の各電磁弁34,34・・は、それぞれ各養液槽2,2・・の各両水位センサー18,19からの信号で開閉制御される。即ち、特定の養液槽2の低水位センサー19(図6)が低水位L2を検出したときに、コントローラ10からの信号で当該養液槽2に対応する電磁弁34が開弁し、貯留タンク31からの高濃度養液Wが給液管32、分岐管33を介して養液槽2の給液口23aから給液溜部23内に供給される。そして、養液槽2内の養液Wが増加して高水位L1に達すると、それを高水位センサー18が検出して、コントローラ10からの信号で当該養液槽2に対応する電磁弁34が閉弁し、養液槽2内への養液Wの供給を停止するようになっている。
【0055】
尚、貯留タンク31内及び調合タンク41内には、それぞれブロア36,45による曝気が行われ、該曝気で各タンク31,41内の養液Wを撹拌することにより、養液成分が分離しないようにしている。尚、この各曝気は、タイマーで所定時間ごと間欠作動させてもよい。
【0056】
各養液槽2,2・・には、養液Wを常に筋状山部27,27・・を若干超える高さ(図6の高水位L1と低水位L2の間)まで貯留している。そして、各養液槽2,2・・内の養液Wは、それぞれ養液循環装置5,5・・で個別に循環させるようにしている。
【0057】
各養液循環装置5には、図4に示すように、ポンプ51により、養液槽2内の養液Wを排液溜部24の排液口24aから吸引管52を介して吸引し、後述する養液活性器6及び冷却器7を通して放液管72から養液槽2の給液溜部23上に供給するようになっている。尚、排液溜部24の排液口24aから養液Wを吸引すると、そこの水位が低くなって給液溜部23側の養液Wが排液溜部24側に自然流動していき、該養液Wが養液槽2、吸引管52、ポンプ51、養液活性器6、冷却器7を順次通って循環するようになる。
【0058】
養液活性器6内にはセラミックのような浄化材が収容されており、ポンプ51から吐出された養液Wが養液活性器6内を通過中に、該養液Wが浄化材により浄化されるようになっている。
【0059】
養液活性器6を通った養液Wは、連通管62を通って冷却器7内に導入された後、該冷却器7から吐出管71を通して放液管72から養液槽2の給液溜部23上に放液される。冷却器7は、該冷却器7に導入された養液Wの温度を作物の育成に適した21℃前後に冷却するものである。連通管62には、養液活性器6から冷却器7に導入される養液Wの温度を検出する温度センサー63が設けられている。この温度センサー63からの温度信号は、図4に示すようにコントローラ10に入力される。そして、温度センサー63の検出温度が設定温度(例えば21℃)より高いときには、コントローラ10からの信号で冷却器7を作動させる(冷却器7内に導入された養液Wを冷却する)一方、温度センサー63の検出温度が設定温度より低いときには、コントローラ10からの信号で冷却器7の作動を停止させるようになっている。尚、この実施例では、温度センサー63を養液活性器6と冷却器7との間の連通管62(冷却器7への導入側管路)に設けているが、他の実施例では冷却器7を通過した吐出管71中の養液温度を温度センサー63で検出するようにしてもよい。
【0060】
このように、循環する養液Wを冷却器7に通すことで、養液槽2の給液溜部23に常に温度21℃前後の養液Wを放液できる。尚、この低温度の養液Wは、後述するように養液槽2内を流動中にハウス内の高温空気と熱交換して養液温度が若干上昇するが、冷却器7に戻されたときに再度21℃前後まで冷却されるので、養液槽2を循環する養液の温度を作物の育成に適した温度に維持することができる。
【0061】
このハウス栽培施設で実際に作物を栽培するには、図4、図6〜図7に示すように、養液槽2上に作物保持台8が載せられる。この作物保持台8には、各筋状谷部26,26・・に対応する位置に、それぞれ槽長さ方向に所定間隔(例えば20cm)をもって多数の穴81,81・・を設けている。尚、この作物保持台8は、前側栽培部20A及び後側栽培部20Bの両方に設置される。
【0062】
そして、作物Aを栽培する場合には、図6及び図7に示すように、保持台8の各穴81,81・・にそれぞれ作物A,A・・を植え付ける。この場合、作物Aが成長するのに伴って根Bも筋状谷部26内で繁茂するが、隣接する各筋状谷部26,26間には筋状山部27があるので、作物Aの根Bが隣の筋状谷部26に侵入することはない。従って、槽幅方向に隣接する筋状谷部26,26に植え付けた作物A,Aの根B,B同士が絡み合うことがない。
【0063】
ところで、この実施例のハウス栽培施設では、槽本体20内の養液が所定の低水位まで減少する度に、貯留タンク31内の高濃度養液が給液口23aから槽本体20の給液溜部23に補給される(図5の矢印W1)ので、その高濃度養液W1が養液循環装置5により給液溜部23に戻される低濃度養液(符号W2)と混合され、該給液溜部23には比較的高濃度の養分を含む養液(図9の下段のグラフに示す養分濃度E1)が貯留されることになる。他方、養液槽2上の各作物Aは、槽本体20内の養液(水分及び養分)Wを吸収して成長するが、槽本体20が長尺であるので、養液Wが槽本体20の全長を通過する間の滞留時間が長くなり、その間に作物Aが養液W中の養分を吸収する量が多くなる。換言すれば、槽本体20の排液溜部24寄り位置になるほど養液中の養分濃度が薄くなる。即ち、通常は図15の下段のグラフに示す養分濃度変化線のように、養液槽の下流側になるほど養分濃度が低くなる(終端部では養分濃度D2)。この場合、養液槽の始端寄り位置で栽培される作物と養液槽の終端寄り位置で栽培される作物とでは、養液中の養分濃度の差によって成長度合いに大きな差が出ることが考えられる。
【0064】
これに対して、この第1実施例の養液槽2には、前側栽培部20Aに区画養液通路28,28・・が設けられており、槽本体20内の養液を循環させると、給液溜部23にある高濃度養液が図5に実線矢印W3で示すように前側栽培部20Aの実質栽培部(筋状谷部26)を通って流動する一方、該給液溜部23にある高濃度養液の一部が点線矢印W4で示すように各区画養液通路28,28・・内を流通する。尚、給液溜部23にある養液の初期濃度は、図9の下段のグラフのE1である。そして、前側栽培部20Aの実質栽培部(筋状谷部26)を通る養液W3は、図9の下段のグラフの養分濃度変化線で示すように、前側栽培部20Aの作物が養液中の養分を吸収して順次養分濃度が低下していく(前側栽培部20Aの終端部では養分濃度E2になる)が、各区画養液通路28,28・・内を通る養液W4は、給液溜部23にあった初期濃度(高濃度)E1のままである。
【0065】
そして、各区画養液通路28,28・・内を通る高濃度養液W4は、該区画養液通路の終端部から合流部20Cに放出されるが、該合流部20Cにおいて、前側栽培部20Aの作物に養分を吸収された養液W5(養分濃度E2)と区画養液通路28を通ってきた高濃度養液W3(養分濃度E1)とが混合される。この混合養液W6は、給液溜部23にある養分濃度(初期濃度E1)より低いものの、前側栽培部20Aで作物に吸収された養液W5の養分濃度E2より高くなっており(養分濃度がE3となる)、その混合養液W6が後側栽培部20Bに流れるようになる。
【0066】
従って、後側栽培部20Bの各作物は、混合養液W6(養分濃度E3)を吸収して成長するので、前側栽培部20Aの作物と後側栽培部20Bの作物との成長度合いの差が小さくなり、品質や収穫量等を均一化に近づけ得るようになる。尚、後側栽培部20Bの各作物(終端までの各作物)によって養分を吸収された養液W7の養分濃度は、図9の下段グラフにおいてE4となり、図15(従来例)の最終養分濃度D2よりかなり高くなる。
【0067】
又、この実施例の養液槽2では、各区画養液通路28,28・・を槽本体20の底壁22部分に設けているので、該区画養液通路28が槽本体20の両側部からはみ出すことがなく、該区画養液通路28をコンパクトに設置できる(作業の邪魔にならない)という利点がある。
【0068】
ところで、夏期の晴天時には、ハウス1内の温度が外気温度より高くなる傾向が強く、ハウス内温度が異常高温になると、作物に各種の障害(例えば、葉焼け、落花、玉焼け等の障害)が発生することがある。
【0069】
そこで、本願実施例のハウス栽培施設では、養液Wを21℃前後まで冷却しながら各養液槽2,2・・内を循環させるようにしているが、このようにすると低温の養液Wで養液槽2自体も冷やされ、該養液Wの水面及び養液が接触している各養液槽2,2・・の外表面とハウス1内の高温空気が熱交換し、養液Wの水温で各養液槽2,2・・付近の温度を低下させるようになる。尚、槽外表面が冷たくてハウス内温度が高いと、槽外表面に結露し、その結露水が気化するときの気化熱を奪って養液槽近傍の空気温度を低下させる作用もある。
【0070】
又、この第1実施例の各養液槽2,2・・では、後側栽培部20Bの底壁22にそれぞれ複数条の筋状谷部26,26・・と筋状山部27,27・・とからなる凹凸形成部が形成されていて、各槽本体20,20・・の後半部の表面積が大きくなっている。従って、各槽本体20,20・・の外表面からハウス1内の空気と熱交換する面積が広くなり、各槽本体外表面とハウス内空気との熱交換効率(ハウス内温度の低下作用)が一層良好となる。又、夏期の晴天時には、ハウス1の側面窓13や天窓14を開放するが、その場合、各窓から外気が風となってハウス1内に吹き込み、その風で各槽本体20,20・・の近傍の冷却空気が撹拌されて、ハウス1内の温度を均一化させるようになる。
【0071】
図10〜図12に示す第2実施例の養液槽2は、上記第1実施例における区画養液通路28部分の変形例を示している。この第2実施例の養液槽2も、第1実施例と同様に図1〜図3に示すハウス栽培施設に使用されるものであり、ハウス1内に養液槽2を複数列(5列)設置して使用する。又、槽本体20の給液溜部23側には、図示省略しているが図4と同様に養液循環装置5に養液活性器6及び冷却器7を接続している。
【0072】
図10〜図12の第2実施例の養液槽2では、槽本体20の前側栽培部20Aの底壁22に、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部26Aと筋状山部27Aとを交互に複数列形成している。又、槽本体20の後側栽培部20Bの底壁22にも、第1実施例の養液槽2と同様(図7と同じ)の筋状谷部26と筋状山部27とが交互に複数列形成されている。
【0073】
前側栽培部20Aの各筋状山部27A,27A・・内には、図11に示すように下面側が開放された空所Sが形成されており、該各空所S,S・・の内壁面全体が空気に接触している。
【0074】
この第2実施例では、槽本体前半部に設けられる区画養液通路28として、各筋状山部27A,27A・・内の空所Sにそれぞれ筋状山部27Aの全長に亘って貫通する養液流通用のパイプ28bを設けて構成されている。
【0075】
この各パイプ28b,28b・・は、図12に示すように、一端(入口)が槽本体20の給液溜部23に開口している一方、他端(出口)が槽本体20の合流部20Cに開口している。そして、槽本体20内の養液Wを循環させると、給液溜部23にある高濃度養液Wの一部が、各パイプ28b,28b・・の入口から侵入して該各パイプ28b内を通り、該各パイプ28bの出口から合流部20Cに放出されるようになっている。従って、この第2実施例の区画養液通路28でも、給液溜部23にある高濃度養液Wの一部を高濃度のまま合流部20Cまで流通させて、該合流部20Cにおいて前側栽培部20Aを通過した養液(養分濃度が薄くなっている養液)と混合させ得るようになっている(合流部20C以降における養分濃度を高めることができる)。
【0076】
又、この第2実施例の養液槽2でも、各区画養液通路28(パイプ28b)を槽本体20の底壁22部分に設けているので、該区画養液通路28が槽本体20の両側部からはみ出すことがなく、該区画養液通路28をコンパクトに設置できる(作業の邪魔にならない)という利点がある。
【0077】
さらに、この第2実施例の養液槽2では、区画養液通路28となるパイプ28bが筋状山部27A内の空所Sに挿通されているので、該パイプ28bの外表面も空気に接触しており、養液槽2における空気に接触する表面積が広くなっている。即ち、槽本体20の前側栽培部20Aにおいては、その底壁22の凹凸形成部分(各筋状谷部26Aと各筋状山部27A)の下面、及び各パイプ28bの外表面がそれぞれ空気に接触している。又、この第2実施例の養液槽2では、槽本体20の後側栽培部20Bにおいても筋状谷部26と筋状山部27とが複数列設けられていて、その凹凸形成部の下面側の広面積部分が空気に接触している。
【0078】
この第2実施例のように、槽本体20内を循環させる養液Wを冷却器7(図4)で温度21℃程度まで冷却するようにしたものにおいて、上記のように養液槽2における空気と接触する面積が広くなると、養液槽2の空気接触面(低温度である)とハウス内の高温空気との熱交換効率が向上し、ハウス内の温度を一層効果的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本願第1実施例の養液槽を使用したハウス栽培施設の概略平面図である。
【図2】図1のハウス栽培施設のII−II拡大断面図である。
【図3】図2のハウス栽培施設で使用されている養液補給装置の説明図である。
【図4】本願第1実施例の養液槽の前側部分の拡大平面図である。
【図5】本願第1実施例の養液槽の一部を省略した平面図である。
【図6】図5のVI−VI拡大断面図である。
【図7】図5のVII−VII拡大断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII拡大断面図である。
【図9】本願第1実施例の養液槽における養液の養分濃度変化を示す説明図である。
【図10】本願第2実施例の養液槽の一部を省略した平面図である。
【図11】図10のXI−XI拡大断面図である。
【図12】図10のXII−XII拡大断面図である。
【図13】既出願の養液槽を使用したハウス栽培施設の概略平面図である。
【図14】図13の養液槽のXIV−XIV拡大断面図である。
【図15】図13の養液槽における養液の養分濃度変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1はハウス、2は養液槽、3は養液補給装置、5は養液循環装置、6は養液活性器、7は冷却器、10はコントローラ、20は槽本体、20Aは前側栽培部、20Bは前側栽培部、20Cは合流部、22は底壁、23は給液溜部、23aは給液口、24は排液溜部、24aは排液口、26,26Aは筋状谷部、27,27Aは筋状山部、28は区画養液通路、28aは長尺箱型部材、28bはパイプ、Sは空所、Wは養液である。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、水耕栽培用の養液槽に関し、特にハウス栽培施設において使用される長尺の養液槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培用の養液槽を使用したハウス栽培施設として、本願出願人は、特開2005−198555号公報(特許文献1)に示されるものや、図13〜図15に示す特願2005−205331号(特許文献2)に示されるもの等を既に提案している。
【0003】
これらのハウス栽培施設では、図13(特許文献2のもの)に示すように、ハウス1内に長尺の養液槽2,2・・を複数列(図示例では5列)設置している。各養液槽2は、長さが50m程度の長尺のものが使用されている。各養液槽2の底壁22には、図14に示すように、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部26と筋状山部27とを交互に複数列形成している。そして、この養液槽2では、各筋状谷部26,26・・に対応する位置で槽長さ方向に所定小間隔をもって多数の作物A(図15の丸印部分)が栽培される。
【0004】
各養液槽2内に貯留される養液W(図14)は、それぞれ養液循環装置5で循環させるようにしている。即ち、各養液槽2には、一端側に給液溜部23と他端側に排液溜部24を有しており、養液循環装置5(ポンプ51、吸引管52)により、養液槽2内の養液W(図14)を排液溜部24の排液口24aから吸引して給液溜部23に戻すことで、養液を循環させるようになっている。
【0005】
養液槽2内の養液量は、作物Aによる吸収や蒸発によって徐々に減少していくが、このハウス栽培施設では、各養液槽2内の養液量を水位センサー(高水位センサー18,低水位センサー19)で検出して、養液槽2内の養液量が所定水位まで低下すると、養液補給装置3により養液を補給するようになっている。即ち、養液補給装置3は、低水位センサー19が低水位を検出すると、当該養液槽2に属する電磁弁34が開放されて貯留タンク31内の養液を給液管32及び分岐管33を介して給液口23aから給液溜部23に補給し、高水位センサー18が高水位を検出すると電磁弁34が閉じて補給停止するようになっている。尚、貯留タンク31内の養液が減少すると、調合タンク41内で調合された高濃度養液(養分濃度の濃い養液)が給液管42を通して貯留タンク31内に補給される。
【0006】
ところで、図13に示すように、養液槽2として長さが50m程度の長尺のものを使用すると、ハウス1内に設置される養液槽2の本数を少なくできて、養液循環装置5の個数や養液補給装置3の分岐管33、電磁弁34等の個数が削減でき、ハウス栽培施設全体の設備コストを低減できるという利点がある。
【0007】
反面、長尺(例えば50m程度)の養液槽2であって養液循環式のものでは、養液Wが給液溜部23側から排液溜部24側に移動するのにつれて順次作物Aに養液中の養分が吸収されていくので、図15の下段のグラフに示すように、養液槽2の下流側になるほど養分濃度が薄くなり(養分濃度線を参照)、給液溜部23位置の養分濃度D1と排液溜部24位置の養分濃度D2とではかなり大きな差が出る。
【0008】
【特許文献1】特開2005−198555号公報
【特許文献2】特願2005−205331号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記(図13)のように、長尺(例えば50m程度)の養液槽2を使用した養液循環式のハウス栽培においては、養液槽2における給液溜部23寄り位置と排液溜部24寄り位置とでは、図15に示すように養液Wの養分濃度差がかなり大きくなることで作物の成長に差が出てしまう。従って、養液槽2における給液溜部23寄り位置で栽培した作物(符号A1の作物)と排液溜部24寄り位置で栽培した作物(符号Anの作物)とでは、品質(玉太り)や収穫量に差が出るという問題があった。
【0010】
そこで、本願発明は、上記のように、養液循環式に使用され且つ長尺(例えば50m程度の長さ)の養液槽であっても、給液溜部寄り位置(高濃度養液が供給される位置)の養分濃度と排液溜部寄り位置(作物が養分を吸収した後の位置)の養分濃度との差を小さくし得るようにすることにより、作物の成長を均一化する(成長差を小さくする)ことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、水耕栽培用の養液槽を対象にしている。
【0012】
本願請求項1の発明
本願請求項1の発明の養液槽は、水耕栽培用の養液を貯留する長尺の槽本体を有し、該槽本体内の養液を槽本体の一端側にある給液溜部と槽本体の他端側にある排液溜部との間で循環させるようにして使用されるものである。
【0013】
この請求項1の養液槽の大きさは、特に限定するものではないが作業性の面で槽幅が1m前後で、ハウス長さに応じて適宜の長尺長さ(例えば30〜50mの長さ)のものが使用される。又、養液槽の周壁の高さは、特に限定するものではないが170〜180mm程度のものを使用できる。養液槽の材料としては、例えば鉄板やステンレス鋼板等の金属板、プラスチック板(強化繊維プラスチック板(FRP)を含む)等が使用できる。
【0014】
この養液槽の槽本体内には、前半部の所定長さ範囲に前側栽培部と後半部の所定長さ範囲に後側栽培部を設けている。この前側栽培部及び後側栽培部には、槽幅方向を複数列に分割するような区分け用の筋状凹凸部を設けることができる。尚、槽本体における前側栽培部の終端と後側栽培部の始端との間には、槽長さ方向に小長さ範囲(例えば10〜30cm程度の長さ)のフラット部(無凹凸部)を設ける。
【0015】
そして、この請求項1の養液槽には、槽本体の前半部の底壁部分に、給液溜部に供給された高濃度養液の一部を受け入れてその高濃度養液のまま前側栽培部の終端部まで流通させる区画養液通路を設けている。尚、本願でいう高濃度養液とは、養分濃度の濃い養液のことである。
【0016】
この請求項1の養液槽に使用される区画養液通路は、槽本体の前半部の底壁部分に設けられたものであって、槽本体の給液溜部にある高濃度養液の一部を受け入れて前側栽培部の終端部まで流通させ得るものであれば適宜の構造のものを採用できる。例えば、該区画養液通路として、槽本体の底壁上面を前側栽培部の全長に亘って下向き開口の長尺箱型部材で被覆してトンネル状に区画したもの、あるいは槽本体の底壁上面に前側栽培部の全長に亘る長さのパイプを設置したもの、等を採用できる。又、この区画養液通路は、槽幅方向に所定小間隔をもって複数列設けることができる。
【0017】
この請求項1の養液槽は、長尺ハウス内で水耕栽培するのに適したもので、1つのハウス内に複数列設置される。又、各養液槽には、養液を循環させる養液循環装置が装備されるとともに、減少する養液を補充するための養液補給装置も装備される。尚、養液補給装置で補給される養液には高濃度の養分を含んでおり、該補給養液が槽本体の給液溜部(槽始端部)に供給されると、その高濃度養液が給液溜部にある既存の養液と混合される。従って、給液溜部において混合された養液中には、比較的高濃度の養分を含んでいる。
【0018】
養液槽には、前半部の前側栽培部及び後半部の後側栽培部に、それぞれ前後・左右に所定小間隔をもって多数の作物が植え付けられる。そして、養液循環装置及び養液補給装置を作動させながら養液槽上で作物を栽培するが、養液循環装置が作動すると、槽本体の排液溜部(槽終端部)にある養液が吸引されて、槽本体内の養液が給液溜部(槽始端部)側から排液溜部(槽終端部)側に流動する。
【0019】
養液槽上の各作物は、槽本体内の養液(水分及び養分)を吸収して成長するが、槽本体が長尺であるので、養液が槽本体の全長を通過する間の滞留時間が長くなり、その間に作物が養液中の養分を吸収する量が多くなる。換言すれば、槽本体の排液溜部(槽終端部)寄り位置になるほど養液中の養分濃度が薄くなる。
【0020】
ところで、この請求項1の養液槽には、槽本体の前半部に区画養液通路を設けており、槽本体内を養液が流れると、給液溜部(槽始端部)において高濃度養液の一部が区画養液通路の始端部から該区画養液通路内に流入する。この区画養液通路内に流入した高濃度養液は、前側栽培部において作物に吸収されることなく(従って高濃度のままである)、区画養液通路内を通って前側栽培部の終端部から放出される。すると、前側栽培部と後側栽培部との間において、前側栽培部の作物に養分を吸収された養液(やや低濃度になっている)と区画養液通路を通ってきた高濃度養液とが混合される。この混合養液は、給液溜部にある養分濃度(初期濃度)より低いものの、前側栽培部で作物に吸収された養液の養分濃度より高くなっている。尚、以下の説明では、この混合養液の養分濃度を便宜上、中間濃度ということがある。そして、この混合養液が後側栽培部に流れることにより、後側栽培部の作物は上記中間濃度の混合養液を吸収して成長する。
【0021】
このように、請求項1の養液槽では、槽本体の長さ方向中間部において養分濃度の高い初期養液(給液溜部の養液)を補充できるようになっているので、後側栽培部における養液の養分濃度を回復させることができる。
【0022】
又、この区画養液通路は、槽本体の底壁部分に設けているので、該区画養液通路が槽本体の両側部からはみ出すことがなく、該区画養液通路をコンパクトに設置できる。
【0023】
本願請求項2の発明
本願請求項2の発明は、上記請求項1の養液槽において、槽本体の前側栽培部の底壁に、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部と筋状山部とを交互に複数列形成するとともに、区画養液通路として、槽本体前半部の筋状山部内の空所に筋状山部の全長に亘って貫通する養液流通用のパイプを設置している。
【0024】
この請求項2の養液槽では、槽本体の前側栽培部の底壁に槽幅方向の断面が上下に凹凸する凹凸形成部があるが、この凹凸形成部の各筋状山部内には、下方に開口する空所が形成されている。そして、この請求項2では、筋状山部内の空所に区画養液通路となるパイプを設置している。又、この区画養液通路(パイプ)は、全部の筋状山部に設けてもよいし、一部の筋状山部にのみ設けてもよい。
【0025】
この請求項2の養液槽でも、請求項1のものと同様に、養液補給装置により槽本体の給液溜部(槽始端部)に高濃度養液が補給されて、該給液溜部にある養液が比較的高濃度(養分が濃い)になる。そして、槽本体内の養液を養液循環装置で循環させると、給液溜部にある高濃度養液の一部が区画養液通路(パイプ)内を通って高濃度のまま前側栽培部の終端部から放出されるようになっている。従って、前側栽培部の終端部と後側栽培部の始端部との間において、前側栽培部の作物に養分を吸収された養液(やや低濃度になっている)と区画養液通路を通ってきた高濃度養液とが混合され、その混合養液の養分濃度がいくらか高くなるという作用が得られる。
【0026】
又、この請求項2の養液槽では、槽本体の前側栽培部の底壁が筋状谷部と筋状山部により凹凸形状になっており、且つ区画養液通路となるパイプが筋状山部内の空所にあって槽本体の下面側に露出している。従って、養液槽の前側栽培部では、養液が接触する部分(槽本体底壁の凹凸部分及び区画養液通路のパイプ)の表面積が広くなる。このように、養液槽における養液が接触する部分の表面積を広くしたものでは、後述の実施例のように、この養液槽をハウス内で使用し、且つ夏期の高温時に養液を冷却器で冷却しながら栽培するようにしたものにおいて、冷却した養液とハウス内の高温空気とを熱交換させる(ハウス内温度を下げる)際の熱交換効率が向上するという作用が得られる。
【発明の効果】
【0027】
本願請求項1の発明の効果
本願請求項1の発明は、長尺(例えば30〜50m)の槽本体を有し、槽本体内の養液を循環させるようにして使用される養液槽において、槽本体の前半部の底壁部分に、給液溜部に供給された高濃度養液の一部を高濃度養液のまま前側栽培部の終端部(後側栽培部の始端部直前)まで流通させる区画養液通路を設けて構成されている。
【0028】
ところで、養液循環型の長尺養液槽で作物を栽培する場合には、養液が槽本体内を流動中に作物が養液中の養分を吸収し、槽本体の排液溜部(槽終端部)側に近づくほど養液中の養分濃度が薄くなる。
【0029】
そこで、本願請求項1の養液槽では、区画養液通路により、給液溜部(槽始端部)にある高濃度養液の一部を高濃度のままで槽長さ方向の中間部(前側栽培部の終端部)まで流通させて、そこの養液(養分濃度が初期濃度より薄くなっている)と混合させることができるので、後側栽培部に流す養液の養分濃度を回復させることができる。従って、養液循環型で長尺の養液槽を使用して水耕栽培するものにおいて、槽長さ方向の養分濃度の差を小さくでき、それによって槽長さ方向の栽培場所による作物の成長差を小さくできる(品質や収穫量等の均一化を達成できる)という効果がある。
【0030】
又、この請求項1の養液槽で使用されている区画養液通路は、槽本体の底壁部分に設けているので、該区画養液通路が槽本体の両側部からはみ出すことがない。従って、該区画養液通路をコンパクトに設置できるとともに該区画養液通路が作業の邪魔にならないという効果もある。
【0031】
本願請求項2の発明の効果
本願請求項2の発明は、上記請求項1の養液槽において、槽本体の前側栽培部の底壁に、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部と筋状山部とを交互に複数列形成するとともに、区画養液通路として、槽本体前半部の筋状山部内の空所に筋状山部の全長に亘って貫通する養液流通用のパイプを設置している。
【0032】
従って、この請求項2の養液槽でも、区画養液通路による上記請求項1の効果を有している。
【0033】
又、この請求項2の養液槽では、槽本体前半部の底壁部分が筋状谷部と筋状山部により凹凸形状になっており、且つ区画養液通路となるパイプが筋状山部内の空所にあって槽本体の下面側に露出しているので、養液が接触する部分(槽本体底壁の凹凸部分及び区画養液通路のパイプ)の表面積が広くなる。従って、この請求項2の養液槽をハウス内で使用し、且つ夏期の高温時に養液を冷却器で冷却しながら栽培するようにしたものでは、冷却した養液とハウス内の高温空気との熱交換効率が良好になり、ハウス内温度を下げるのに効果がある。
【実施例】
【0034】
以下、図1〜図12を参照して本願実施例の水耕栽培用の養液槽を説明すると、図1〜図9には第1実施例の養液槽の使用例を示し、図10〜図12には第2実施例の養液槽の使用例を示している。
【0035】
図1は第1実施例の養液槽2を使用したハウス栽培施設の概略平面図であり、図2は図1のII−II拡大断面図である。この実施例のハウス栽培施設は、図1及び図2に示すように、作物栽培用ハウス1内に合計5列の養液槽2,2・・を設置している。
【0036】
ハウス1は、立地条件等によって適宜の大きさのものが建築されるが、この実施例のハウス1は、比較的大型で、例えば長さ(図1の左右長さ)が50m、幅(図1の上下長さ)が12m、高さの平均が5m程度の大きさの容積を有している。尚、ハウス1におけるこれらの寸法は、一実施例であって特に限定するものではない。
【0037】
ハウス1の外周壁11及び屋根12には、それぞれ透明板(アクリル板やガラス板)が用いられていて、ハウス内に採光できるようにしている。従って、特に夏期の日中にはハウス1内がかなりの高温状態になる。尚、ハウス1には、外周壁11の数箇所に側面窓13,13を設ける一方、屋根12の数箇所にも天窓14を設けており、特に夏期においては、側面窓13や天窓14を開放してハウス1内を換気できるようにしている。
【0038】
ハウス1内に設置される養液槽2は、この実施例では、槽本体20として幅が1m、長さが46m、高さが175mm程度の大きさの長尺矩形のものが採用されている。そして、この実施例のハウス栽培施設では、ハウス1内に5本の養液槽2,2・・を所定幅(約1m幅)の作業スペースを隔てて平行に設置している。尚、養液槽2(槽本体20)の大きさ、及びハウス1内に養液槽設置本数等は、上記記載のものに限定するものではなく、ハウス1の立地条件によって適宜に設計変更可能である。
【0039】
又、各養液槽2,2・・は、それぞれフレーム状の支持台9,9・・により地面から所定高さだけ離間した位置で水平に設置されている。従って、各養液槽2,2・・の下方には空気が通過し得るとともに、養液槽2の下面のほぼ全面に空気が接触するようになっている。
【0040】
各養液槽2,2・・の槽本体20は、この実施例では4mm厚さ程度の強化繊維プラスチック板(FRP)で製作されており、図4〜図8に示すように枠状の周壁21と底壁22とで薄型容器状に成形されている。尚、養液槽2の槽本体20は、金属板等の適宜の材質のものに変更することができる。
【0041】
各養液槽2,2・・槽本体20は、一端側(図1における左端側)の所定小長さ範囲(約60cm)が給液溜部23となり、他端側(図1における右端側)の所定小長さ範囲(約60cm)が排液溜部24となっている。この給液溜部23及び排液溜部24の底面は、平坦面となっている。給液溜部23には給液口23aが開口しており、排液溜部24には排液口24aが開口している。
【0042】
養液槽2の槽本体20には、前半部に前側栽培部20Aと後半部に後側栽培部20Bとが設けられている。この前側栽培部20Aと後側栽培部20Bとの間は、後述するように養液の合流部20Cとなるもので、この合流部20Cの底面は、図5及び図8に示すように小長さ範囲(例えば10〜20cm)だけ平坦面となっている。尚、前側栽培部20Aと後側栽培部20Bは、この実施例では相互に同長さ(それぞれ約22mの長さ)を有しているが、他の実施例では両栽培部20A,20Bの長さに差をもたせることもできる。
【0043】
槽本体20における前側栽培部20Aには、図4〜図6及び図8に示すように、底壁22の上面に複数列(図示例では4列)の区画養液通路28,28・・が形成されている。この第1実施例の各区画養液通路28,28・・には、図6及び図8に示すように、下方及び前後両端部が開放する長尺箱型部材28aを使用している。この長尺箱型部材28aは、左右の側壁間隔が110mmで高さが95mmの断面門型形状であって、前側栽培部20Aの全長(約22m)に亘る長さを有している。尚、この長尺箱型部材28aは、槽本体20と同材料(例えばFRP)で製作したものが採用できる。
【0044】
そして、この長尺箱型部材28aは、合計4本使用し、開口部を下向きにした状態でそれぞれ槽幅方向に等間隔をもって槽長さ方向に平行に配置している。各長尺箱型部材28aの下端部は、槽本体底壁22の上面に適宜の手段で固着されている。この各区画養液通路28,28・・の設置状態では、図6及び図8に示すように、各長尺箱型部材28aの上面が、槽本体20内に貯留される養液Wの最低水位L2の液面より低くなっている。
【0045】
各区画養液通路28,28・・は、始端部が槽本体20の給液溜部23に開口している一方、終端部が上記合流部20Cに開口している。そして、後述するように、槽本体20内の養液Wを循環させると、給液溜部23の養液Wの一部が各区画養液通路28,28・・の始端部内に流入し、その流入養液が該各区画養液通路28,28・・内を通ってその終端部から合流部20Cに放出されるようになっている。尚、この実施例では、槽本体20の前側栽培部20Aに合計4本の区画養液通路28,28・・を設けているが、必要に応じて4本のうちのいくつかの区画養液通路を閉鎖して使用することもできる。
【0046】
各区画養液通路28,28・・(各長尺箱型部材28a,28a・・)間、及び両端の各区画養液通路28,28と左右の各周壁21,21との間には、それぞれ幅が110mm程度の筋状谷部26,26・・が形成されている。この各筋状谷部26,26・・は、前側栽培部20Aにおける養液Wの主要な流路となるとともに、図6に示すように作物Aの根Bを繁茂させるスペースとなる。尚、隣接する各筋状谷部26,26間には、それぞれ長尺箱型部材28aからなる仕切り壁があるので、各筋状谷部26内で繁茂する作物Aの根Bが隣の筋状谷部26内に侵入することがない(隣の作物の根Bと絡むことがない)。
【0047】
槽本体20の後側栽培部20Bの底壁22には、図5、図7〜図8に示すように、それぞれ槽長さ方向に長い筋状谷部26と筋状山部27とを交互に複数列形成している。この筋状谷部26と筋状山部27は、図7に示すように、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽幅方向に連続して形成している。この実施例では、槽本体20の槽幅が1mで、筋状谷部26及び筋状山部27の各幅をそれぞれ110mm程度に設定しており、従って1つの槽本体20につき筋状谷部26が5列と筋状山部27が4列形成されている。又、各筋状山部27,27・・の高さ(筋状谷部26の底部から筋状山部27の頂面までの高さ)は、95mmに設定している。従って、この実施例では、凹凸状底壁22の表面積が平坦底壁の表面積に比して176%程度になる。尚、この後側栽培部20Bの各筋状山部27,27・・は、前側栽培部20Aの各区画養液通路28,28・・と対応する位置で且つその長尺箱型部材28aと同幅で同高さに設定している。
【0048】
各養液槽2,2・・の給液溜部23には、図5及び図6に示すように、それぞれ槽本体20内に収容される養液Wの水位を計測する高水位センサー18と低水位センサー19とが設けられている。高水位センサー18は、槽本体20内の養液Wが補給を要しない所定高水位(図6の水位L1)になったときに検出し、低水位センサー19は、該槽本体20内の養液Wが補給を要する所定低水位(図6のL2)になったときに検出するものである。尚、この両水位センサー18,19は、後述する養液補給装置3の電磁弁34を制御する信号をコントローラ10(図4)に送信する。
【0049】
各養液槽2,2・・内には、養液補給装置3により養液Wが補給される。この養液補給装置3は、図1及び図3に示すように、養液Wを貯留する貯留タンク31と、貯留タンク31内の養液Wを供給する給液管32と、該給液管32からそれぞれ各養液槽2,2・・に分岐させた各分岐管33,33・・と、各分岐管33,33・・に取付けた各電磁弁34,34・・と、養液Wを調合する調合タンク41と、調合タンク41内の養液Wを貯留タンク31に供給する給液管42と、該給液管42に設けたポンプ43及び電磁弁44を有している。
【0050】
調合タンク41では、水に作物の養分(窒素を含む)を混合して養液Wを作るが、ここで作られる養液Wは、養分濃度の濃いものである。
【0051】
貯留タンク31には、貯留養液量を検出する水位センサー35(図3)が設けられている。この水位センサー35は、貯留タンク31内の高水位M1と低水位M2をそれぞれ検出でき、水位センサー35が高水位M1を検出している状態ではコントローラ10からの信号でポンプ43を停止し電磁弁44を閉にする一方、水位センサー35が低水位M2を検出するとコントローラ10からの信号で電磁弁44を開にしポンプ43を作動させるようになっている。尚、ポンプ43の停止時には調合タンク41から貯留タンク31への養液補給は停止し、ポンプ43の作動時(電磁弁44が開)には調合タンク41から貯留タンク31に高濃度養液Wが供給される。
【0052】
貯留タンク31は、ハウス1内において各養液槽2,2・・より高位置に設置されていて、水頭差によって貯留タンク31内の養液Wを各養液槽2,2・・側に自然流下させ得るようになっている。
【0053】
各分岐管33,33・・の先端は、それぞれ養液槽2,2・・の各給液溜部23にある給液口23aに接続されている。
【0054】
各分岐管33,33・・の各電磁弁34,34・・は、それぞれ各養液槽2,2・・の各両水位センサー18,19からの信号で開閉制御される。即ち、特定の養液槽2の低水位センサー19(図6)が低水位L2を検出したときに、コントローラ10からの信号で当該養液槽2に対応する電磁弁34が開弁し、貯留タンク31からの高濃度養液Wが給液管32、分岐管33を介して養液槽2の給液口23aから給液溜部23内に供給される。そして、養液槽2内の養液Wが増加して高水位L1に達すると、それを高水位センサー18が検出して、コントローラ10からの信号で当該養液槽2に対応する電磁弁34が閉弁し、養液槽2内への養液Wの供給を停止するようになっている。
【0055】
尚、貯留タンク31内及び調合タンク41内には、それぞれブロア36,45による曝気が行われ、該曝気で各タンク31,41内の養液Wを撹拌することにより、養液成分が分離しないようにしている。尚、この各曝気は、タイマーで所定時間ごと間欠作動させてもよい。
【0056】
各養液槽2,2・・には、養液Wを常に筋状山部27,27・・を若干超える高さ(図6の高水位L1と低水位L2の間)まで貯留している。そして、各養液槽2,2・・内の養液Wは、それぞれ養液循環装置5,5・・で個別に循環させるようにしている。
【0057】
各養液循環装置5には、図4に示すように、ポンプ51により、養液槽2内の養液Wを排液溜部24の排液口24aから吸引管52を介して吸引し、後述する養液活性器6及び冷却器7を通して放液管72から養液槽2の給液溜部23上に供給するようになっている。尚、排液溜部24の排液口24aから養液Wを吸引すると、そこの水位が低くなって給液溜部23側の養液Wが排液溜部24側に自然流動していき、該養液Wが養液槽2、吸引管52、ポンプ51、養液活性器6、冷却器7を順次通って循環するようになる。
【0058】
養液活性器6内にはセラミックのような浄化材が収容されており、ポンプ51から吐出された養液Wが養液活性器6内を通過中に、該養液Wが浄化材により浄化されるようになっている。
【0059】
養液活性器6を通った養液Wは、連通管62を通って冷却器7内に導入された後、該冷却器7から吐出管71を通して放液管72から養液槽2の給液溜部23上に放液される。冷却器7は、該冷却器7に導入された養液Wの温度を作物の育成に適した21℃前後に冷却するものである。連通管62には、養液活性器6から冷却器7に導入される養液Wの温度を検出する温度センサー63が設けられている。この温度センサー63からの温度信号は、図4に示すようにコントローラ10に入力される。そして、温度センサー63の検出温度が設定温度(例えば21℃)より高いときには、コントローラ10からの信号で冷却器7を作動させる(冷却器7内に導入された養液Wを冷却する)一方、温度センサー63の検出温度が設定温度より低いときには、コントローラ10からの信号で冷却器7の作動を停止させるようになっている。尚、この実施例では、温度センサー63を養液活性器6と冷却器7との間の連通管62(冷却器7への導入側管路)に設けているが、他の実施例では冷却器7を通過した吐出管71中の養液温度を温度センサー63で検出するようにしてもよい。
【0060】
このように、循環する養液Wを冷却器7に通すことで、養液槽2の給液溜部23に常に温度21℃前後の養液Wを放液できる。尚、この低温度の養液Wは、後述するように養液槽2内を流動中にハウス内の高温空気と熱交換して養液温度が若干上昇するが、冷却器7に戻されたときに再度21℃前後まで冷却されるので、養液槽2を循環する養液の温度を作物の育成に適した温度に維持することができる。
【0061】
このハウス栽培施設で実際に作物を栽培するには、図4、図6〜図7に示すように、養液槽2上に作物保持台8が載せられる。この作物保持台8には、各筋状谷部26,26・・に対応する位置に、それぞれ槽長さ方向に所定間隔(例えば20cm)をもって多数の穴81,81・・を設けている。尚、この作物保持台8は、前側栽培部20A及び後側栽培部20Bの両方に設置される。
【0062】
そして、作物Aを栽培する場合には、図6及び図7に示すように、保持台8の各穴81,81・・にそれぞれ作物A,A・・を植え付ける。この場合、作物Aが成長するのに伴って根Bも筋状谷部26内で繁茂するが、隣接する各筋状谷部26,26間には筋状山部27があるので、作物Aの根Bが隣の筋状谷部26に侵入することはない。従って、槽幅方向に隣接する筋状谷部26,26に植え付けた作物A,Aの根B,B同士が絡み合うことがない。
【0063】
ところで、この実施例のハウス栽培施設では、槽本体20内の養液が所定の低水位まで減少する度に、貯留タンク31内の高濃度養液が給液口23aから槽本体20の給液溜部23に補給される(図5の矢印W1)ので、その高濃度養液W1が養液循環装置5により給液溜部23に戻される低濃度養液(符号W2)と混合され、該給液溜部23には比較的高濃度の養分を含む養液(図9の下段のグラフに示す養分濃度E1)が貯留されることになる。他方、養液槽2上の各作物Aは、槽本体20内の養液(水分及び養分)Wを吸収して成長するが、槽本体20が長尺であるので、養液Wが槽本体20の全長を通過する間の滞留時間が長くなり、その間に作物Aが養液W中の養分を吸収する量が多くなる。換言すれば、槽本体20の排液溜部24寄り位置になるほど養液中の養分濃度が薄くなる。即ち、通常は図15の下段のグラフに示す養分濃度変化線のように、養液槽の下流側になるほど養分濃度が低くなる(終端部では養分濃度D2)。この場合、養液槽の始端寄り位置で栽培される作物と養液槽の終端寄り位置で栽培される作物とでは、養液中の養分濃度の差によって成長度合いに大きな差が出ることが考えられる。
【0064】
これに対して、この第1実施例の養液槽2には、前側栽培部20Aに区画養液通路28,28・・が設けられており、槽本体20内の養液を循環させると、給液溜部23にある高濃度養液が図5に実線矢印W3で示すように前側栽培部20Aの実質栽培部(筋状谷部26)を通って流動する一方、該給液溜部23にある高濃度養液の一部が点線矢印W4で示すように各区画養液通路28,28・・内を流通する。尚、給液溜部23にある養液の初期濃度は、図9の下段のグラフのE1である。そして、前側栽培部20Aの実質栽培部(筋状谷部26)を通る養液W3は、図9の下段のグラフの養分濃度変化線で示すように、前側栽培部20Aの作物が養液中の養分を吸収して順次養分濃度が低下していく(前側栽培部20Aの終端部では養分濃度E2になる)が、各区画養液通路28,28・・内を通る養液W4は、給液溜部23にあった初期濃度(高濃度)E1のままである。
【0065】
そして、各区画養液通路28,28・・内を通る高濃度養液W4は、該区画養液通路の終端部から合流部20Cに放出されるが、該合流部20Cにおいて、前側栽培部20Aの作物に養分を吸収された養液W5(養分濃度E2)と区画養液通路28を通ってきた高濃度養液W3(養分濃度E1)とが混合される。この混合養液W6は、給液溜部23にある養分濃度(初期濃度E1)より低いものの、前側栽培部20Aで作物に吸収された養液W5の養分濃度E2より高くなっており(養分濃度がE3となる)、その混合養液W6が後側栽培部20Bに流れるようになる。
【0066】
従って、後側栽培部20Bの各作物は、混合養液W6(養分濃度E3)を吸収して成長するので、前側栽培部20Aの作物と後側栽培部20Bの作物との成長度合いの差が小さくなり、品質や収穫量等を均一化に近づけ得るようになる。尚、後側栽培部20Bの各作物(終端までの各作物)によって養分を吸収された養液W7の養分濃度は、図9の下段グラフにおいてE4となり、図15(従来例)の最終養分濃度D2よりかなり高くなる。
【0067】
又、この実施例の養液槽2では、各区画養液通路28,28・・を槽本体20の底壁22部分に設けているので、該区画養液通路28が槽本体20の両側部からはみ出すことがなく、該区画養液通路28をコンパクトに設置できる(作業の邪魔にならない)という利点がある。
【0068】
ところで、夏期の晴天時には、ハウス1内の温度が外気温度より高くなる傾向が強く、ハウス内温度が異常高温になると、作物に各種の障害(例えば、葉焼け、落花、玉焼け等の障害)が発生することがある。
【0069】
そこで、本願実施例のハウス栽培施設では、養液Wを21℃前後まで冷却しながら各養液槽2,2・・内を循環させるようにしているが、このようにすると低温の養液Wで養液槽2自体も冷やされ、該養液Wの水面及び養液が接触している各養液槽2,2・・の外表面とハウス1内の高温空気が熱交換し、養液Wの水温で各養液槽2,2・・付近の温度を低下させるようになる。尚、槽外表面が冷たくてハウス内温度が高いと、槽外表面に結露し、その結露水が気化するときの気化熱を奪って養液槽近傍の空気温度を低下させる作用もある。
【0070】
又、この第1実施例の各養液槽2,2・・では、後側栽培部20Bの底壁22にそれぞれ複数条の筋状谷部26,26・・と筋状山部27,27・・とからなる凹凸形成部が形成されていて、各槽本体20,20・・の後半部の表面積が大きくなっている。従って、各槽本体20,20・・の外表面からハウス1内の空気と熱交換する面積が広くなり、各槽本体外表面とハウス内空気との熱交換効率(ハウス内温度の低下作用)が一層良好となる。又、夏期の晴天時には、ハウス1の側面窓13や天窓14を開放するが、その場合、各窓から外気が風となってハウス1内に吹き込み、その風で各槽本体20,20・・の近傍の冷却空気が撹拌されて、ハウス1内の温度を均一化させるようになる。
【0071】
図10〜図12に示す第2実施例の養液槽2は、上記第1実施例における区画養液通路28部分の変形例を示している。この第2実施例の養液槽2も、第1実施例と同様に図1〜図3に示すハウス栽培施設に使用されるものであり、ハウス1内に養液槽2を複数列(5列)設置して使用する。又、槽本体20の給液溜部23側には、図示省略しているが図4と同様に養液循環装置5に養液活性器6及び冷却器7を接続している。
【0072】
図10〜図12の第2実施例の養液槽2では、槽本体20の前側栽培部20Aの底壁22に、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部26Aと筋状山部27Aとを交互に複数列形成している。又、槽本体20の後側栽培部20Bの底壁22にも、第1実施例の養液槽2と同様(図7と同じ)の筋状谷部26と筋状山部27とが交互に複数列形成されている。
【0073】
前側栽培部20Aの各筋状山部27A,27A・・内には、図11に示すように下面側が開放された空所Sが形成されており、該各空所S,S・・の内壁面全体が空気に接触している。
【0074】
この第2実施例では、槽本体前半部に設けられる区画養液通路28として、各筋状山部27A,27A・・内の空所Sにそれぞれ筋状山部27Aの全長に亘って貫通する養液流通用のパイプ28bを設けて構成されている。
【0075】
この各パイプ28b,28b・・は、図12に示すように、一端(入口)が槽本体20の給液溜部23に開口している一方、他端(出口)が槽本体20の合流部20Cに開口している。そして、槽本体20内の養液Wを循環させると、給液溜部23にある高濃度養液Wの一部が、各パイプ28b,28b・・の入口から侵入して該各パイプ28b内を通り、該各パイプ28bの出口から合流部20Cに放出されるようになっている。従って、この第2実施例の区画養液通路28でも、給液溜部23にある高濃度養液Wの一部を高濃度のまま合流部20Cまで流通させて、該合流部20Cにおいて前側栽培部20Aを通過した養液(養分濃度が薄くなっている養液)と混合させ得るようになっている(合流部20C以降における養分濃度を高めることができる)。
【0076】
又、この第2実施例の養液槽2でも、各区画養液通路28(パイプ28b)を槽本体20の底壁22部分に設けているので、該区画養液通路28が槽本体20の両側部からはみ出すことがなく、該区画養液通路28をコンパクトに設置できる(作業の邪魔にならない)という利点がある。
【0077】
さらに、この第2実施例の養液槽2では、区画養液通路28となるパイプ28bが筋状山部27A内の空所Sに挿通されているので、該パイプ28bの外表面も空気に接触しており、養液槽2における空気に接触する表面積が広くなっている。即ち、槽本体20の前側栽培部20Aにおいては、その底壁22の凹凸形成部分(各筋状谷部26Aと各筋状山部27A)の下面、及び各パイプ28bの外表面がそれぞれ空気に接触している。又、この第2実施例の養液槽2では、槽本体20の後側栽培部20Bにおいても筋状谷部26と筋状山部27とが複数列設けられていて、その凹凸形成部の下面側の広面積部分が空気に接触している。
【0078】
この第2実施例のように、槽本体20内を循環させる養液Wを冷却器7(図4)で温度21℃程度まで冷却するようにしたものにおいて、上記のように養液槽2における空気と接触する面積が広くなると、養液槽2の空気接触面(低温度である)とハウス内の高温空気との熱交換効率が向上し、ハウス内の温度を一層効果的に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本願第1実施例の養液槽を使用したハウス栽培施設の概略平面図である。
【図2】図1のハウス栽培施設のII−II拡大断面図である。
【図3】図2のハウス栽培施設で使用されている養液補給装置の説明図である。
【図4】本願第1実施例の養液槽の前側部分の拡大平面図である。
【図5】本願第1実施例の養液槽の一部を省略した平面図である。
【図6】図5のVI−VI拡大断面図である。
【図7】図5のVII−VII拡大断面図である。
【図8】図5のVIII−VIII拡大断面図である。
【図9】本願第1実施例の養液槽における養液の養分濃度変化を示す説明図である。
【図10】本願第2実施例の養液槽の一部を省略した平面図である。
【図11】図10のXI−XI拡大断面図である。
【図12】図10のXII−XII拡大断面図である。
【図13】既出願の養液槽を使用したハウス栽培施設の概略平面図である。
【図14】図13の養液槽のXIV−XIV拡大断面図である。
【図15】図13の養液槽における養液の養分濃度変化を示す説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1はハウス、2は養液槽、3は養液補給装置、5は養液循環装置、6は養液活性器、7は冷却器、10はコントローラ、20は槽本体、20Aは前側栽培部、20Bは前側栽培部、20Cは合流部、22は底壁、23は給液溜部、23aは給液口、24は排液溜部、24aは排液口、26,26Aは筋状谷部、27,27Aは筋状山部、28は区画養液通路、28aは長尺箱型部材、28bはパイプ、Sは空所、Wは養液である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培用の養液(W)を貯留する長尺の槽本体(20)を有し、該槽本体(20)内の養液(W)を槽本体の一端側にある給液溜部(23)と槽本体の他端側にある排液溜部(24)との間で循環させるようにして使用される水耕栽培用の養液槽であって、
前記槽本体(20)には、前半部の所定長さ範囲に前側栽培部(20A)と後半部の所定長さ範囲に後側栽培部(20B)を設ける一方、
前記槽本体(20)の前半部の底壁(22)部分に、前記給液溜部(23)にある高濃度養液の一部を受け入れてその高濃度養液のまま前記前側栽培部(20A)の終端部まで流通させる区画養液通路(28)を設けている、
ことを特徴とする水耕栽培用の養液槽。
【請求項2】
請求項1において、
槽本体(20)の前側栽培部(20A)の底壁(22)に、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部(26A)と筋状山部(27A)とを交互に複数列形成するとともに、
区画養液通路(28)として、槽本体前半部の筋状山部(27A)内の空所(S)に該筋状山部(27A)の全長に亘って貫通する養液流通用のパイプ(28b)を設置している、
ことを特徴とする水耕栽培用の養液槽。
【請求項1】
水耕栽培用の養液(W)を貯留する長尺の槽本体(20)を有し、該槽本体(20)内の養液(W)を槽本体の一端側にある給液溜部(23)と槽本体の他端側にある排液溜部(24)との間で循環させるようにして使用される水耕栽培用の養液槽であって、
前記槽本体(20)には、前半部の所定長さ範囲に前側栽培部(20A)と後半部の所定長さ範囲に後側栽培部(20B)を設ける一方、
前記槽本体(20)の前半部の底壁(22)部分に、前記給液溜部(23)にある高濃度養液の一部を受け入れてその高濃度養液のまま前記前側栽培部(20A)の終端部まで流通させる区画養液通路(28)を設けている、
ことを特徴とする水耕栽培用の養液槽。
【請求項2】
請求項1において、
槽本体(20)の前側栽培部(20A)の底壁(22)に、槽幅方向の断面が上下に凹凸する形状で槽長さ方向に長い筋状谷部(26A)と筋状山部(27A)とを交互に複数列形成するとともに、
区画養液通路(28)として、槽本体前半部の筋状山部(27A)内の空所(S)に該筋状山部(27A)の全長に亘って貫通する養液流通用のパイプ(28b)を設置している、
ことを特徴とする水耕栽培用の養液槽。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−61002(P2007−61002A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251765(P2005−251765)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(391030077)株式会社ソアテック (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(391030077)株式会社ソアテック (30)
【Fターム(参考)】
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