説明

水質浄化装置及び該装置を用いた水質浄化方法

【課題】本発明は、人工池、水路、池、河川、湖沼等の水域において、高い水質を保持し、植物の生息空間を備え、かつ、美的景観を創製できる水質浄化装置、及び該装置を用いた水質の浄化方法を提供する。
【解決手段】処理水域(5)と、該処理水域(5)中に該処理水域からの水が直接浸入しないように配置された植栽基盤(1)を有する区画(2)と、該処理水域(5)から取り込んだ循環水を濾過する濾過装置(10)と、該濾過装置(10)で濾過された循環水を減菌する減菌装置(11)と、該処理水域から取り込んだ水を該処理水域(5)及び/又は植栽基盤(1)を有する区画(2)に循環できる水循環路とを備え、該水循環路中に循環水を該濾過装置(10)及び/又は減菌装置(11)で処理できるように切り替え可能なバルブが設けられた水質浄化装置、並びに該水質浄化装置を用いた処理水域の水質浄化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工池、水路、池、河川、湖沼等の水域における、修景的な美観を創製又は維持しつつ、高効率に水質浄化を行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水質浄化方法として、狭領域の例では水生植物を水面に浮かべる植栽水質浄化方法などが知られている。
【0003】
また、池、河川等において、自然の生態系を破壊することなく水質の改善を図るものとして、椰子繊維及び生分解性ポリマーを充填した容器からなる水質浄化装置が報告されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、上記の植栽水質浄化方法や水質浄化装置では、水中の富栄養化物(窒素、リン等)を除去することは可能であるものの、物理的な汚濁物や同じ植物性のプランクトンの発生を完全に抑制することは事実上困難であり、夏季においては、アオコ・アオミドロ等の藻類が大量に発生することになり、衛生や景観が損なわれるという問題があった。そのため、居住空間や商業施設などの衛生面や景観面が重要視される場所では、ほとんど導入されていないのが実情である。
【0005】
一方、地下街、遊戯施設、外構などに創出される人工池や流れ、演出の滝などにおいては、透明感のある衛生的な水を必要とするため、主に銅イオン、紫外線、オゾン、次亜塩素酸等の薬剤を用いた減菌処理を行う場合がほとんどである。しかし、その減菌効果は、自生或いは植栽された水生植物に対しても同様に作用するため、水生植物を共存させることはできない。そのため、単なる演出としての水流だけとなり、生物の生息を許容する空間を共存させることが困難であり、造園や修景ができないのが実態である。つまり、植栽水質浄化手段と薬剤による減菌処理設備を備えた水質浄化手段とは併存が困難であった。
【0006】
そのため、透明性の高い水質を保持し、生物の生息を許容する空間を備え、かつ、美的景観を創製できる水質浄化手段はこれまで存在していなかった。
【特許文献1】特開2000−202491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、人工池、水路、池、河川、湖沼等の水域において、高い水質を保持し、生物の生息を許容する空間を備え、かつ、美的景観を創製できる水質浄化装置、及び該装置を用いた水質の浄化方法を提供することにある。
【0008】
具体的には、水質の富栄養化の主な原因である窒素分及びリン分を除去して水質を改善し、また物理的汚濁物質を機械ろ過設備で除去するとともに、薬剤投与によりアオコやアオミドロ等の発生を抑制し、しかも、植栽による美的景観の維持を同時に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意研究を行った結果、処理水域(5)と、該処理水域(5)中に該処理水域からの水が直接浸入しないように配置された植栽基盤(1)を有する区画(2)と、該処理水域(5)から取り込んだ循環水を濾過する濾過装置(10)と、該濾過装置(10)で濾過された循環水を減菌する減菌装置(11)と、該処理水域から取り込んだ水を該処理水域(5)及び/又は植栽基盤(1)を有する区画(2)に循環できる水循環路とを備え、該水循環路中に循環水を該濾過装置(10)及び/又は減菌装置(11)で処理できるように切り替え可能なバルブが設けられた水質浄化装置を用いて水質浄化処理を行うことにより、該処理水域において、高い水質を保持し、植物の生息空間を備え、かつ、美的景観を創製できることを見出した。
【0010】
かかる知見に基づきさらに研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、以下の水質浄化装置及び該水質浄化装置を用いた浄化方法を提供する。
【0012】
項1. 処理水域(5)と、該処理水域(5)中に該処理水域からの水が直接浸入しないように配置された植栽基盤(1)を有する区画(2)と、該処理水域(5)から取り込んだ循環水を濾過する濾過装置(10)と、該濾過装置(10)で濾過された循環水を減菌する減菌装置(11)と、該処理水域から取り込んだ水を該処理水域(5)及び/又は植栽基盤(1)を有する区画(2)に循環できる水循環路とを備え、該水循環路中に循環水を該濾過装置(10)及び/又は減菌装置(11)で処理できるように切り替え可能なバルブが設けられた水質浄化装置。
【0013】
項2. 前記植栽基盤を有する区画の底部に循環水の供給口(3)が設けられている項1に記載の水質浄化装置。
【0014】
項3. 前記植栽基盤が、椰子繊維及び生分解ポリマーを配合してなる項1又は2に記載の水質浄化装置。
【0015】
項4. 前記椰子繊維が、0.1〜0.7g/cm3の密度で植栽基盤内に内包されている項3に記載の水質浄化装置。
【0016】
項5. 前記生分解性ポリマーが、植栽基盤内土壌に内包されている項3に記載の水質浄化装置。
【0017】
項6. 前記植栽基盤に水性植物が植栽されている項1〜5のいずれかに記載の水質浄化装置。
【0018】
項7. 前記減菌装置が薬剤注入による減菌装置である項1〜6のいずれかに記載の水質浄化装置。
【0019】
項8. さらに処理水域中に含まれる薬剤の濃度を検知するセンサー(28)と、該センサーにより該処理水域中の薬剤の濃度が規定値の範囲内で維持されるよう薬剤の注入量を制御する制御装置(12)と、を備えてなる項1〜7のいずれかに記載の水質浄化装置。
【0020】
項9. 項1〜8のいずれかに記載の水質浄化装置を用いて処理水域の水質を浄化する方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水質浄化装置を用いれば、水質の富栄養化の主な原因である窒素分及びリン分を除去して水質を改善し、また物理的汚濁物質を機械ろ過設備で除去するとともに、薬剤投与によりアオコやアオミドロ等の発生を抑制し、しかも、植栽による美的景観の維持を同時に行うことが可能となる。しかも、所定の制御装置を用いて装置を可動することにより、メンテナンスも極めて簡便であるという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明の水質浄化装置は、処理水域(5)と、該処理水域(5)中に該処理水域からの水が直接浸入しないように配置された植栽基盤(1)を有する区画(2)と、該処理水域(5)から取り込んだ循環水を濾過する濾過装置(10)と、該濾過装置(10)で濾過された循環水を減菌する減菌装置(11)と、該処理水域から取り込んだ水を該処理水域(5)及び/又は植栽基盤(1)を有する区画(2)に循環できる水循環路とを備え、該水循環路中に循環水を該濾過装置(10)及び/又は減菌装置(11)で処理できるように切り替え可能なバルブが設けられた水質浄化装置である。
【0024】
つまり、処理水域(5)中に該処理水域から取り込んだ水を、水循環路中を経て、再び該処理水域(5)に戻したり、或いは植栽基盤(1)を有する区画(2)に導入でき、その水循環路中で必要に応じて該濾過装置(10)による循環水の濾過や減菌装置(11)による減菌処理が可能な水質浄化装置である。
【0025】
本発明の水質浄化装置の一典型例である図1を参照しながら説明する。
【0026】
本発明の水質浄化装置が使用される水域(「処理水域」と呼ぶ)は、特に限定はないが、効果が顕著に現れやすい点から閉鎖系水域(例えば、人工池、水路、池、湖沼等)が好ましい。
【0027】
植栽基盤(1)を設けた区画(2)は、処理水域(5)からの水がその区画内に直接浸入しないように隔離されている。図1では、該区画(2)が処理水域中で浮遊した状態で示されるが、この状態に限定されるものではなく、例えば処理水域(5)の底部に区画(2)を固定したものであってもよい。区画(2)と処理水域(5)が隔離されているのは、例えば、薬剤を含む循環水が処理水域(5)に供給された場合、処理水域に供給された直後の濃度の高い薬剤含有水が、区画(2)内に浸入して水生植物に直接接触しないようにするためである。これにより、区画(2)に設けられた植栽基盤(1)上の植栽は薬剤によって影響受けることがなくなり、区画(2)は生物の生息が可能な空間となる。
【0028】
植栽基盤(1)としては、水生植物の育成の基盤となり得るものであり、かつ、窒素やリン等の富栄養化物質を除去する微生物の成育し易い環境を提供できるものであれば特に限定はない。例えば、繊維質(特に、椰子繊維)及び生分解性ポリマーを充填した基盤である。
【0029】
その具体例としては、次のようなものが例示される。前記構成において、繊維質としては、椰子繊維が挙げられる。椰子繊維は、この椰子繊維の持つ固有の物理的組成である繊維表面に、バクテリアが付着棲息するのに適した粗荒性を有すると共に、その内層部にはハニカム形状を有している。また、化学的には、リグニン成分を多量に含有(約46%含有)しているため、耐久性(耐腐食性)及び耐圧性に優れると共に、含有成分中に鉄分が多いため、リン分に対して大きな吸着能力を兼ね備えている。このように、椰子繊維は、水質浄化に好適な材料であるが、一般の水質は、時間帯や季節間等で大幅に変動しており、この水質変動にバクテリアの棲息量も連動対応しているのが実態である。
【0030】
従って、実際の水質浄化に当たっては、下水処理の活性汚泥法で見られるように、常に多量のバクテリアを高密度に棲息させることが重要なポイントであるため、水質の不安定さに備え、多量のバクテリアが棲息するのに必要な飼料を常時補給するために、生分解性ポリマーで補えるよう椰子繊維と組み合わせて容器に充填されている。
【0031】
該容器としては、処理用水と容器内充填物の椰子繊維に棲息するバクテリアが、より多くしかも緩やかに接触できるようにするため、穴開き容器が好ましい。該容器の開口率は、該容器の表面積に対し30〜90%が好ましい。開口率が30%より小さいと、酸素供給量が大幅に低下して容器内の嫌気性化が急速に進み、硫化水素等の有害ガス発生の要因となる。また、90%より大きいと、椰子繊維の保持が困難となり、椰子繊維の流出を招いてしまうので好ましくない。また、該容器は、穴開け加工や射出成型等によって得られ、更に該容器の形状は、球状、円柱状、円錐状、立方体状あるいは直方体状等、適宜選択することができる。
【0032】
容器内へ充填する椰子繊維としては、バラ繊維、不織布等その形状は該容器の形状に応じ適宜選択することができ、特に制限されるものではない。また、充填密度は0.1〜0.7g/cmが好ましい。充填密度が0.1g/cmより小さいと、酸素流通量が多くなるため容器内全体が好気性化し、窒素化合物の浄化サイクルが進行し難くなってしまう。また、0.7g/cmより大きいと、酸素供給量が少なくなるため好気性バクテリアの棲息エリアが少なくなり、効率的な窒素化合物処理に支障をきたしてしまうので好ましくない。このような充填密度で椰子繊維を容器内に充填することにより、容器表面近くの椰子繊維には、酸素供給が充分に行われ、好気性バクテリア(ニトロソモナス)が大量に棲息し、窒素化合物を効率よく処理することができる。
【0033】
更に、容器中心部は、酸素供給が不充分となり、嫌気性バクテリア(チオバチルス)の棲息域となる。即ち一容器内に、好気性バクテリアと嫌気性バクテリアの二層構造が形成されることになり、窒素化合物の浄化サイクルである「硝化サイクル」が急速に進行し、水質の富栄養化の主要因である窒素分が分解、無害化除去され浄化が促進される。
【0034】
また、前記構成において、容器内へ充填する生分解性ポリマーとしては、3−ヒドロキシ酪酸・3−ヒドロキシ吉草酸共重合体、ポリ−ε−カプロラクタム、ポリブチレンサクシネート・アジペート等を挙げることができ、更にその形状は、シート状、スティック状等、適宜選択することができる。生分解性ポリマーを充填することにより、バクテリアが多量に棲息するのに必要な飼料供給源を安定して確保できるので、自然条件下での水中の水質変動(時間帯や季節変動等)による飼料不足よって、容器内に多量に棲息するバクテリアを維持できなくなるといった問題を解消することができ、安定した水質浄化効果を得ることができる。
【0035】
水質浄化装置を使用するに当たっては、所望の容器に椰子繊維及び生分解性ポリマーを充填した後、水量に応じて該容器を複数セットし、集中的にセット組み設置もしくは、散設置して使用する。
【0036】
また、この容器上に、水性植物として、水草、水蓮、黄ショウブ等の植物を植え付けることにより、美観的観点から見た目にもよくなり、更に好気姓バクテリアによって分解された窒素化合物は最終的に硝酸態窒素となるので、この硝酸態窒素を植物により吸収させることにより、水質浄化効果を更に向上させることができる。
【0037】
この植栽基盤(1)を有する区画(2)には、濾過装置(10)を経た後の循環水が供給され、供給された循環水は水生植物で浄化される。該区画(2)において該循環水の供給される部分は特に限定はないが、通常該区画(2)の底部であり(図1)、該底部には該循環水を供給する供給口(3)が設けられている。循環水は供給口(3)から供給されて、植栽基板(1)に浸潤しそこで浄化される。過剰に供給された水は、浄化された後処理水域(5)にあふれ出る。循環水を連続的にこの該区画(2)に供給すれば、該循環水は該区画の上部からあふれて処理水域に流れ出る。該循環水は、植栽基盤(1)を設けた該区画(2)で水質浄化され、浄化された循環水は再び処理水域(5)に戻されることになる。しかも、該区画(2)では水性植物が植栽されるため、美観を作り出すという役割も有している。
【0038】
なお該区画(2)の形状は特に限定はなく、任意に選択することができる。また、処理水域中での該区画の設置方法も、処理水域からの水が浸入しないように隔離されていれば特に限定はなく、任意に選択することができる。設置方法としては、処理水域の底部に固定されたものであっても、処理水域中に浮遊した容器状の形態をもったものでもよい。
【0039】
水循環装置(7)は、該処理水域(5)から取り込んだ循環水を、水循環路(18〜26)を通って該植栽基盤を有する区画(2)及び/又は該処理水域に循環させる。水循環装置(7)は、通常、処理水域(5)の近傍に設置される。
【0040】
該処理水域(5)から、ポンプ(6)で吸引された水は、水循環路(18)を通って集毛器(或いは除塵装置)(8)に通される。この集毛器(8)では、水中に浮遊する比較的大きな物質の除去、池の修景美感保護及びポンプ、配管設備などの閉塞防止の機能を有するために設けられる。
【0041】
該集毛器(8)を出た循環水は、濾過ポンプ(9)により加圧され、水循環路(19)を経てバルブ(20)に送られる。平常時又は水質が低下した場合は、バルブ(20)を濾過装置(10)側に開けて濾過を行う。この濾過装置(10)では、原水(池の水等)中に含まれる微細な物質(シルト、汚泥、植物性プランクトン等)が取り除かれる。濾過装置(10)には、例えば、ろ過砂利、アンスラサイト、セラミック材、シャモット、硅砂等を充填させたものを用いることができる。
【0042】
該濾過装置(10)を出た濾過された循環水は、バルブ(22)を経てバルブ(23)に送られる。該循環水は、バルブ(23)により、該植栽基盤(1)を有する区画(2)に通じる水循環路(24)及び/又は該処理水域に通じる水循環路(25)に分流される。
【0043】
水循環路(24)を通った水は、植栽基盤(1)を有する区画(2)の底部に設けられた循環水供給口(3)から区画(2)内に供給される。
【0044】
水循環路(25)を通った水は、そのまま循環水供給口(15)から処理水域(5)へ供給される。或いは、夏季等においてアオコなどにより処理水域(5)の水質が低下した場合には、循環される循環水を減菌し得る減菌装置(11)により減菌処理を行うこともできる。減菌装置(11)としては、薬剤の注入、紫外線照射、オゾン滅菌等の水中の細菌類、菌類等を減ずることができる装置である。図1には、減菌装置(11)として薬剤注入装置が例示され、該薬剤注入装置に貯蔵された薬剤はバルブ(25a)から水循環路(25)に注入される。薬剤注入装置とは、薬液タンクと定量ポンプにより構成された機器であり、薬液を設定された量、自動的に注入する装置である。ここで、注入される薬剤としては、例えば、次亜塩素酸(HOCl)、次亜臭素酸(HOBr)などが例示される。
【0045】
また、本発明の装置には、自動給水装置(13)が設けられていてもよく、処理水域(5)(池等)の水の蒸発、飛散による水位の低下を水位計(17)で感知し、その信号を受けて、主に自動弁を開閉して自動給水する装置である。
【0046】
また、減菌装置(11)として薬剤注入装置が採用される場合、水循環装置(7)は、さらに処理水域中に含まれる薬剤の濃度を検知するセンサー(28)と、該センサーにより検知された薬剤の濃度が規定値の範囲内で維持されるよう薬剤の注入量を制御する制御装置(12)とを備えている。
【0047】
水生植物の生育環境として、水中に生息する富栄養化物を分解するバクテリアを極力維持させるために、過剰の薬剤投与は控える必要がある。そのために、水中の濁度を測定するセンサーを水中に設置し、水中の電気伝導率をチェックした時に規定値を超える状況にある場合にのみ、薬剤を投与するように制御装置(12)で制御されている。なお、濁度は、透過散乱光測定法、即ち、水中の透過光と散乱光の強度比より測定する。或いは、粒子数計測法、即ち、水中の濁り粒子数をレーザー光により測定する。
【0048】
また、該制御装置(12)は、水循環路に設けられた各種バルブの開閉、濾過装置(10)、自動給水装置(13)等とも結ばれており、環境の変化に応じて最適な条件で水質浄化ができるようにされている。
【0049】
次に、本発明の水質浄化装置の具体的な作動状況を、図2〜4に示す。
【0050】
図2は、平常時、即ち、生物浄化と機械ろ過を併用している時の一般的な作動状況であり、循環水は濾過装置(10)を通過した後、水循環路(24)と(25)に分けられる。水循環路(25)では減菌処理(例えば、薬液注入)を行わない。水循環路(24)を経て、植栽基盤(1)を有する区画(2)に供給された水は、生物浄化を経て、処理水域中に循環される。また、水循環路(25)を経た水は、直接処理水域中に循環される。
【0051】
図3は、水質の安定する冬季の作動状況である。この場合は、循環水は濾過装置(10)を通過させずに、そのまま水循環路(24)と(25)に分けられる。水循環路(25)では減菌処理(例えば、薬液注入)を行わない。水循環路(24)を経て、植栽基盤(1)を有する区画(2)に供給された水は、生物浄化を経て、処理水域中に循環される。また、水循環路(25)を経た水は、直接処理水域中に循環される。これにより、透明感のある水景を維持することができる。ここで、水を循環させるのは、水そのものの腐敗を防止するためである。
【0052】
図4は、夏季においてアオコ等による水質低下が見られたときの作動状況である。この場合は、循環水は濾過装置(10)を通過した後、水循環路(25)に通され、これに減菌装置(11)(例えば、薬液注入装置)からバルブ(25a)を介して薬剤が注入されて、処理水域中に供給される。なお、水循環路(24)には、水は供給されない。これは、区画(2)中の水性植物や植栽基盤(1)中の微生物を保護するためである。
【0053】
なお、注入薬剤の濃度が水性植物や微生物に対して悪影響を与えない程度の低濃度であれば、循環水を水循環路(24)に通しても差し支えない。
【0054】
以上のように、本発明の水質浄化装置は、処理水域(5)と植栽基盤(1)を有する区画(2)との間を隔離させて、植栽基盤(1)へ実質的に薬剤を循環させないことを特徴とし、更に、前記植栽基盤(1)内に循環水を供給して水生植物の育成を補助することにより、水質浄化と景観作りを兼ね備えることをそれぞれ特徴とする。
【0055】
また、本発明の水質浄化装置は、通常は水域全体に行き渡る水流を確保した上で、水生植物による水質浄化と景観の創出を行う。その水流の循環過程に物理ろ過設備を配置し、水中の汚濁物を強制的に除去することで透明度が維持される。さらに、植物による水質浄化だけでは抑えきれない植物性プランクトン(主にアオコ・アオミドロ類)を抑えるために、一時的に植栽基盤に繋がる経路をタイマーとバルブ開閉によって閉鎖できる仕組とし、植栽基盤への循環を閉鎖すると同時に、それ以外の循環経路に薬剤を投与することで植物性プランクトンを減少又は死滅させる。なお、水域内の水質は季節や地域特性に左右される要素が多いため、薬剤投与の時間や濃度は複数のパターンを設定できるようにすることができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を比較例と共に実施例によって更に詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
実施例1
閉鎖水域(池)において、図1に記載した水質浄化装置を用いて、3月1日から浄化処理を開始し、5月11日(72日目)及び10月8日(222日目)における、植栽植物の評価と池水関連の評価を行った。その結果を表1〜4に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
上記表1〜4より、本発明の水質浄化装置を用いれば、水質の富栄養化の主な原因である窒素分及びリン分を除去して水質を改善し、また物理的汚濁物質を機械ろ過設備で除去するとともに、薬剤投与によりアオコやアオミドロ等の発生を抑制することができる。しかも、植栽による美的景観の維持を同時に行うことが可能となる。さらに、所定の制御装置を用いて装置を可動することにより、メンテナンスも極めて簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の水質浄化装置の模式図である。
【図2】平常時における、本発明の水質浄化装置の一般的な作動状況を示す模式図である。
【図3】水質の安定する冬季における、本発明の水質浄化装置の一般的な作動状況を示す模式図である。
【図4】夏季における水質低下が見られたときの、本発明の水質浄化装置の一般的な作動状況を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1 植栽基板
2 区画(島)
3 循環水供給口(ノズル)
4 水性植物
5 処理水域
6 ポンプ吸込ストレーナー
7 水循環装置
8 集毛器
9 濾過ポンプ
10 濾過装置
11 薬液注入装置(減菌装置)
12 システム制御盤
13 自動給水装置
14 給水管
15 濾過吐水ノズル
16 給水ノズル
17 水位計
18,19,21,24,25,25a,26 水循環路
20,22,23, バルブ
27 オーバーフロー管
28 薬剤濃度センサー
29 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水域(5)と、該処理水域(5)中に該処理水域からの水が直接浸入しないように配置された植栽基盤(1)を有する区画(2)と、該処理水域(5)から取り込んだ循環水を濾過する濾過装置(10)と、該濾過装置(10)で濾過された循環水を減菌する減菌装置(11)と、該処理水域から取り込んだ水を該処理水域(5)及び/又は植栽基盤(1)を有する区画(2)に循環できる水循環路とを備え、該水循環路中に循環水を該濾過装置(10)及び/又は減菌装置(11)で処理できるように切り替え可能なバルブが設けられた水質浄化装置。
【請求項2】
前記植栽基盤を有する区画の底部に、該濾過装置(10)を経た後の循環水の供給口(3)が設けられている請求項1に記載の水質浄化装置。
【請求項3】
前記植栽基盤が、椰子繊維及び生分解ポリマーを配合してなる請求項1又は2に記載の水質浄化装置。
【請求項4】
前記椰子繊維が、0.1〜0.7g/cm3の密度で植栽基盤内に内包されている請求項3に記載の水質浄化装置。
【請求項5】
前記生分解性ポリマーが、植栽基盤内土壌に内包されている請求項3に記載の水質浄化装置。
【請求項6】
前記植栽基盤に水性植物が植栽されている請求項1〜5のいずれかに記載の水質浄化装置。
【請求項7】
前記減菌装置が薬剤注入による減菌装置である請求項1〜6のいずれかに記載の水質浄化装置。
【請求項8】
さらに処理水域中に含まれる薬剤の濃度を検知するセンサー(28)と、該センサーにより該処理水域中の薬剤の濃度が規定値の範囲内で維持されるよう薬剤の注入量を制御する制御装置(12)とを備えてなる請求項1〜7のいずれかに記載の水質浄化装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の水質浄化装置を用いて処理水域の水質を浄化する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−264677(P2008−264677A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110815(P2007−110815)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(507129466)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【出願人】(391051773)株式会社光栄 (2)
【Fターム(参考)】