水路設備用の複合構造物及びその製造方法
【課題】改質硫黄固化体層及びセメント層の二層構造を有し、耐酸性、耐塩性等に優れると共に、製造コストの増大を抑制して比較的容易に製造することにできる、水路設備用の複合構造物を提供する。
【解決手段】水路設備用の複合構造物の一例としての水路用のボックスカルバート1は、溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなる内側層3と、この内側層3の外側にセメントコンクリートを打設して形成されたコンクリート層5と、を備える。そして、改質硫黄固化体からなる内側層3が水路内面として用いられる。
【解決手段】水路設備用の複合構造物の一例としての水路用のボックスカルバート1は、溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなる内側層3と、この内側層3の外側にセメントコンクリートを打設して形成されたコンクリート層5と、を備える。そして、改質硫黄固化体からなる内側層3が水路内面として用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路設備用の複合構造物及びその製造方法に関し、特に水路設備の耐酸性や耐塩性などを向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セメントコンクリートからなるコンクリート構造物の表面に被覆層を形成して耐酸性などを向上させることが知られている。例えば特許文献1には、コンクリート層と改質硫黄含有層との二層構造を有する水路設備用の複合構造物が記載されている。
特許文献1に記載の複合構造物は、コンクリート構造物の水路部表面に型枠を設置し、溶融状態にある改質硫黄含有材料を型枠内に導入し、その後、冷却固化して脱型することによって製造され、又は、コンクリート構造物の水路部表面に溶融状態にある改質硫黄含有材料を吹き付けて冷却することによって製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−204933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術は、溶融状態にある改質硫黄含有材料を用いるため、改質硫黄含有材料を所定の温度(例えば、120℃〜160℃)に加熱保持できる設備・装置が必要となる。また、複合構造物の製造時に、溶融状態にある改質硫黄含有材料が比較的低温のコンクリート構造物の表面に接触することになるため、コンクリート構造物の表面との接触面に部分的な空洞等が生じるおそれがある。これを防止するためには、例えばコンクリート構造物の表面を加熱できる設備・装置が必要となる。
【0005】
このように、上記従来の技術は、コンクリート構造物を製造する場合に比べて、追加の設備・装置が必要になると共に、加熱温度などの管理項目や製造工程の増加を招くことになるため、製造容易性や製造コストの面で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、耐酸性、耐塩性等に優れると共に、製造コストを抑制して比較的容易に製造することのできる、水路設備用の複合構造物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による水路設備用の複合構造物は、溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなる内側層と、前記内側層の外側にセメントコンクリートを打設して形成されたコンクリート層と、を備え、前記内側層を水路内面又は槽内面として用いる。
【0008】
ここで、前記内側層の前記コンクリート層側の面には、前記セメントコンクリートとの接着性を改善する接着性改善処理が施されているのが好ましい。また、前記内側層は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材がその端面同士を接合させるように配置されて形成されたものとすることができる。
【0009】
また、前記改質硫黄固化体からなる外側層をさらに備え、前記コンクリート層が前記内側層と前記外側層との間に前記セメントコンクリートを打設して形成されたものとすることができる。この場合、前記外側層の前記コンクリート層側の面には前記接着性改善処理が施されているのが好ましく、また、前記外側層は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材がその端面同士を接合させるように配置されて形成されたものとすることができる。
【0010】
好ましくは、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材の各接合部において、隣接する一方の部材の端面に形成された凸部と他方の部材に形成された凹部とが嵌合している。あるいは、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材の各接合部には、隣接する二つの部材によって前記コンクリート層側の面又は前記コンクリート層とは反対側の面に溝が形成され、この形成された溝にコーキング材が充填されている。コーキング材としては、例えば耐酸性のものを用いる。
【0011】
また、前記接着性改善処理は、(a)前記コンクリート層側の面にアンカーを設けること、(b)前記コンクリート層側の面にアンカーを設けると共に該アンカーに鉄筋を固定すること、(c)前記コンクリート層側の面を粗化すること、(d)前記コンクリート層側の面に凹凸を形成すること、及び、(e)内蔵された鉄筋のかぶり厚を確保するスペーサの一部を前記コンクリート層側の面から突出させること、の少なくとも1つとすることができる。
【0012】
本発明による水路設備用の複合構造物の製造方法は、溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなり、水路内面又は槽内面として用いる内側層を設置する工程と、設置された前記内側層の外側にセメントコンクリートを打設し硬化させてコンクリート層を形成する工程と、を含む。
【0013】
ここで、前記改質硫黄固化体からなる外側層を、前記内側層の外側に所定の隙間を有して設置する工程をさらに含み、前記コンクリート層を形成する工程が、設置された前記内側層と前記外側層との間に前記セメントコンクリートを打設し硬化させて前記コンクリート層を形成するようにすることができる。
【0014】
また、前記コンクリート層を形成する工程において、前記内側層及び前記外側層の少なくとも一方を埋設型枠として用いることができる。
【0015】
さらに、前記内側層を設置する工程は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置して前記内側層を形成し、前記内側層を形成する複数の部材の各接合部に目地処理を施す工程をさらに含むものとすることができる。同様に、前記外側層を設置する工程は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置して前記外側層を形成し、前記外側層を形成する複数の部材の各接合部に目地処理を施す工程をさらに含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
改質硫黄固化体は、コンクリートに比べて、耐酸性、耐塩性、機械的強度、遮水性等に優れている。本発明によれば、改質硫黄固化体からなる内側層を水路内面又は槽内面として用いるので、水路設備の耐酸性、耐塩性等を向上させることができる。また、本発明によれば、新たな設備・装置を導入することなく、例えばコンクリート構造物の製造に用いていた設備・装置を利用して、耐酸性、耐塩性に優れた水路設備用の複合構造物を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態によるボックスカルバートの概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態によるボックスカルバートの内側層を示す図である。
【図3】内側層を形成する複数の部材(板状部材)の各接合部の一例を示す図である。
【図4】第1実施形態によるボックスカルバートの製造方法を示す図である。
【図5】内側層のコンクリート層側の面に施された接着性改善処理の例を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるボックスカルバートの概略構成を示す図である。
【図7】第2実施形態によるボックスカルバートの製造方法を示す図である。
【図8】内側層、外側層の他の構成例を示す図である。
【図9】同じく内側層、外側層の他の構成例を示す図である。
【図10】内側層、外側層を形成する複数の部材の各接合部の他の例を示す図である。
【図11】内側層、外側層を形成する複数の部材の各接合部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水路用ボックスカルバートの概略構成を示している。本実施形態によるボックスカルバート1は、例えば地中に埋設されて函軸(図中Xと記す)方向、換言すれば、長さ方向に順次連結されて水路を構成する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態によるボックスカルバート1は、略角筒状の形態、すなわち、中空の矩形断面を有しており、改質硫黄固化体からなる内側層3と、この内側層3の外側に設けられたコンクリート層5とを備える。つまり、本実施形態によるボックスカルバート1は、改質硫黄固化体層及びコンクリート層の二層構造を有している。
【0020】
内側層3は、ボックスカルバート1の水路内面を形成するものであり、その層厚は10〜30mm程度である。内側層3は、図2に示すように、改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置されて形成されている。より具体的には、函軸方向Xに延びる複数の板状部材3aを用い、各板状部材3aの函軸方向Xに平行な端面(側面)同士を接合させるように配置して内側層3を形成している。
【0021】
図3は、内側層3を形成する複数の板状部材3aの各接合部を示す断面図である。
図3に示すように、各板状部材3aの函軸方向Xに平行な二つの端面にはそれぞれ階段状の段差が設けられており、各接合部において、隣接する一方の板状部材3a(L)の端面に形成された凸部31L(又は凹部33L)と、他方の板状部材3a(R)の端面に形成された凹部33R(又は凸部31L)とが嵌合するようになっている。そして、好ましくは、各接合部において、隣り合う2つの板状部材3a,3aは、例えばエポキシ系接着剤によって接着固定される。但し、上記嵌合形態は一例であり、一方の板状部材の端面に形成された凸部と他方の板状部材の端面に形成された凹部とが嵌合するようになっていればよい。
【0022】
コンクリート層5は、ボックスカルバート1の本体部となるものであり、内側層3の外側に、例えば所定の型枠等を用いてセメントコンクリートを打設し、養生・硬化させることによって形成される。すなわち、本実施形態においては、まず改質硫黄固化体からなる複数の板状部材3aによって内側層3が形成され、その後、内側層3の外側にセメントコンクリートを打設することによってコンクリート層5が形成される。
【0023】
本実施形態では複数の板状部材3aによって内側層3を形成しているため、コンクリート層5の形成時(すなわち、セメントコンクリートの打設時)に振動を与えることは好ましくない。そこで、本実施形態においては、打設時の振動締め固め作業が不要である自己充填コンクリート(高流動コンクリート)によってコンクリート層5を形成している。但し、通常のセメントコンクリートを除外するものではなく、内側層3を改質硫黄固化体によって一体に形成したり、複数の板状部材3aの保持性能を高めたりすることで、通常のセメントコンクリートによってもコンクリート層5を形成できることはもちろんである。
【0024】
ここで、ボックスカルバート1の内側層3として用いる改質硫黄固化体について説明する。改質硫黄固化体は、溶融状態にある改質硫黄(溶融改質硫黄)に骨材を混ぜて固化させたものであり、具体的には、以下のようにして製造される。
【0025】
まず、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合して溶融改質硫黄を製造する。硫黄は、例えば天然産又は石油や天然ガスの脱硫によって生成されたものであり、硫黄改質剤は、溶融硫黄を重合することによって改質する。硫黄改質材としては、例えば炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン及びそのオリゴマー、シクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。なお、硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、好ましくは、1.0〜20質量%である。
【0026】
製造された溶融改質硫黄は、溶融状態を保つことのできる温度に保持された状態で骨材と混合される。骨材は、溶融改質硫黄との混合に適した温度(例えば、130〜140℃程度)に加温しておくのが好ましい。骨材としては、一般にコンクリートで用いられる骨材、例えば、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属の製造時に生成される副生物、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、石英質岩石、粘土鉱物、活性炭、ガラス粉末や他の無機系、有機系等の微粉末も使用可能である。
【0027】
溶融改質硫黄と骨材とを、公知の溶融混合装置などを用いて混合することによって改質硫黄資材が製造され、この改質硫黄資材を型枠に流し込み、冷却、固化させることで改質硫黄固化体が製造される。なお、改質硫黄固化体は、コンクリートと同様に、型枠に応じて所望の形態とすることができ、また、鉄筋を内蔵させたり、アンカーを設けたりすることができる。本実施形態においては、ボックスカルバート1の内側層3を形成するための部材(例えば、上記板状部材3a)として改質硫黄固化体をあらかじめ成型しておく。
【0028】
図4は、本実施形態によるボックスカルバート1の製造方法を示している。
まず、図4(a)に示すように、例えば内型枠(図中破線で示す)11の外周面に改質硫黄固化体からなる板状部材3aを配置して内側層3を形成する。具体的には、各板状部材3aをそれぞれの端面同士を接合させるように配置しつつ、各板状部材3aの内側面を内型枠の外周面に接着剤によって貼り付ける。
【0029】
ここで、接着剤としては、脱型時に接着力が弱まる(又は無くなる)接着剤、例えばロウ類を主成分とし脱型温度で溶融する接着剤を用いるのが好ましい。脱型を容易にするためである。
但し、各板状部材3aを内型枠11の外周面に固定できればよく、接着剤によって貼り付けることに代えて、例えば内型枠の内側に吸引装置等を設け、各板状部材3aを吸引して内型枠の外周面に固定するようにしてもよい。
【0030】
また、各板状部材3aの外側面、すなわち、コンクリート層5と接触する面には、セメントコンクリートとの接着性を改善するための接着性改善処理が施されているのが好ましい。接着性改善処理は、セメントコンクリートとの接着性を改善するものであればどのような処理であってもよく、板状部材3aの成型時、板状部材3aを内型枠11に設置する前、又は、板状部材3aを内型枠11に設置した後に施すことができる。
【0031】
具体的な接着性改善処理としては、例えば、図5(a)に示すように各板状部材3aの外側面にアンカー35を設ける、図5(b)に示すように各板状部材3aの外側面にアンカー35を設けると共に該アンカー35に鉄筋37を固定する、図5(c)に示すように各板状部材3aの外側面をブラスト処理などによって粗化する、図5(d)に示すように各板状部材3aの外側面を凹凸に形成する、図5(e)に示すように各板状部材3aが鉄筋を内蔵する場合に該内蔵された鉄筋のかぶり厚を確保するために設置したスペーサ39の一部を外側面から突出させる、及び、これらの組み合わせが挙げられる。なお、各板状部材3aの外側面を凹凸に形成する場合には、図5(d)に示すように、凸部の断面形状が、板状部材3aの内側面から離れるほど幅が広くなる台形となっているのが好ましい。単に接着面積を増加させるだけなく、形状によってコンクリート層5をはがれ難くするためである。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、コンクリート層5を形成するための外型枠(図中一点鎖線で示す)13を、各板状部材3aの外側に、所定の隙間g1(コンクリート層5の厚さに相当する)を有して設置する。図では省略するが、必要に応じて、外型枠11を設置する前にコンクリート層5に内蔵させる鉄筋を設置するようにしてもよい。
【0033】
そして、各板状部材3aの外側、すなわち、各板状部材3aと外型枠との間にセメントコンクリートを打設し、養生・硬化させてコンクリート層5を形成する。上述したように、本実施形態では自己充填コンクリートを用いており、振動締め固め作業が不要である。また、各板状部材3aの外側面には接着性改善処理が施されており、これにより、改質硫黄固化体からなる内側層3とコンクリート層5とが強固に接着接合される。ここで、内側層3(板状部材3a)は、埋設型枠として用いられる。
【0034】
コンクリート層5が十分に硬化した後、蒸気などで所定温度(例えば60℃)に加温しつつ脱型し、必要に応じて、内側層3を形成する複数の板状部材3aの各接合部に、内側から目地処理を施すことによって本実施形態によるボックスカルバート1を得る。なお、目地処理は、外型枠13を設置する前又はコンクリート層5を形成する前に外側から施すようにしてもよい。また、目地処理は、耐酸性コーキング材(例えば、エポキシ系コーキング材)を用いて行うことが好ましい。
【0035】
以上のようにして製造されたボックスカルバート1は、図1に示すように、改質硫黄固化体からなる内側層3及びコンクリート層5の二層構造を有しており、改質硫黄固化体からなる内側層3が水路内面として用いられる。そして、内側層3の外側面、すなわち、コンクリート層5と接する面には接着性改善処理が施されている。
【0036】
改質硫黄固化体は、コンクリートに比べて、耐酸性、耐塩性、機械的強度(例えば圧縮強度、割裂強度、曲げ強度)、遮水性等に優れている。本実施形態によるボックスカルバート1は、改質硫黄固化体からなる内側層3を水路内面として用いるので、コンクリート製のボックスカルバートに比べて、耐久性を向上させることができる。特に、雨水や汚水の流下に使用されたり、海水が混入するおそれのある場所で使用されたりする場合に、水路断面積の変化等を抑制できると共に、耐久年数を大幅に増加させることができる。
【0037】
本実施形態によるボックスカルバート1は、改質硫黄固化体からなる内側層3の外側にセメントコンクリートを打設してコンクリート層5を形成している。このため、溶融状態にある改質硫黄資材を取り扱う必要がなく、従来のコンクリート構造物を製造する設備・装置を利用することによって製造することができる。従って、製造コストや製造工程などの増加を抑制しつつ、改質硫黄固化体からなる内側層3及びコンクリート層5の二層構造を有するボックスカルバートを容易に製造することができる。
【0038】
ここで、内側層3の外側面には接着性改善処理が施されており(図5(a)〜(e)を参照)、異なる材料からなる内側層3とコンクリート層5とを強固に接着接合することができる。
【0039】
また、内側層3は、改質硫黄固化体からなる複数の板状部材3aがその端面同士を接合させるように配置されて形成されている。このため、比較的小さい板状部材3aを貯蔵等しておけば済むので、部品貯蔵スペースが比較的小さくて済む。
【0040】
さらに、複数の板状部材3aの各接合部において、一方の板状部材の端面に形成された凸部と他方の板状部材の端面に形成された凹部とが嵌合するようになっており、ボックスカルバート1において、コンクリート層5を改質硫黄固化体からなる内側層3によって確実に覆うことができる。これにより、内側層3を複数の板状部材3aによって形成した場合であっても、水路を流れる汚水などにコンクリート層5が触れることが抑制される。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態による水路用のボックスカルバートを説明する。
図6は、第2実施形態によるボックスカルバートを示している。第2実施形態によるボックスカルバートは、上記第1実施形態によるボックスカルバート(図1参照)に対して、コンクリート層の外側にさらに改質硫黄固化体からなる外側層を備える。すなわち、図6に示すように、第2実施形態によるボックスカルバート21は、改質硫黄固化体からなる内側層23と、該内側層の外側のコンクリート層25と、該コンクリート層25の外側の改質硫黄固化体からなる外側層27とを備えた三層構造を有している。
【0042】
内側層23は、ボックスカルバート21の水路内面を形成するものであり、その層厚は10〜30mm程度である。また、外側層27は、ボックスカルバート21の外面を形成するものであり、その層厚は、内側層23と同様に10〜30mm程度である。なお、内側層23及び外側層27の構成等は、上記第1実施形態における内側層3と同様であるのでその説明は省略する。
【0043】
コンクリート層25は、ボックスカルバート21の本体部となるものであり、上記第1実施形態におけるコンクリート層5と同様に、セメントコンクリートを打設し、養生・硬化させることによって形成される。但し、本実施形態におけるコンクリート層25は、改質硫黄固化体からなる板状部材23a,27aによって内側層23及び外側層27を形成し、その後、内側層23と外側層27との間にセメントコンクリートを打設することで形成される。ここで、セメントコンクリートとして自己充填コンクリートを用いる点は上記第1実施形態と同様である。また、内側層23(板状部材23a)及び外側層27(板状部材27a)のコンクリート層25側の面には、接着性改善処理(図5(a)〜(e)を参照)が施されている。
【0044】
図7は、本実施形態によるボックスカルバート21の製造方法を示している。
まず、図7(a)に示すように、内型枠(図中破線で示す)41の外周面に改質硫黄固化体からなる板状部材23aを配置して内側層23を形成する。具体的には、各板状部材23aの端面同士を接合させるように配置して各板状部材23aの内側面を内型枠41の外周面に接着剤によって貼り付ける。接着剤として脱型時に接着力が弱まる(又は弱くなる)ものを用いる点、接着剤に代えて他の方法によって各板状部材23aを内型枠の外周面に固定してもよい点、及び、各板状部材23aの外側面の接着性改善処理が施されている点、については上記第1実施形態と同様である。
【0045】
次に、図7(b)に示すように、外型枠(図中一点鎖線で示す)43を設置し、その内周面に改質硫黄固化体からなる板状部材27aを配置して外側層27を形成する。具体的には、各板状部材27aの端面同士を接合させるように配置して各板状部材27aの外側面を外型枠53の内周面に接着剤によって貼り付ける。
【0046】
外型枠43は、内型枠41に設置された各板状部材23aから所定の隙間g2(例えば、コンクリート層25の厚さ+外側層27の厚さ)を有して配置されている。この場合においても、接着剤として脱型時に接着力が弱まる(又は弱くなる)ものを用いる。また、接着剤に代えて、他の方法によって各板状部材27aを外型枠の内周面に固定するようにしてもよい。さらに、各板状部材27aの内側面、すなわち、コンクリート層25と接触する面には、内側層23を形成する各板状部材23aと同様、接着性改善処理が施されている。なお、内側層23を形成する板状部材23aと外側層27を形成する板状部材27aとは共通のものを用いることができる。
【0047】
そして、板状部材23aによって形成された内側層23と、板状部材27aによって形成された外側層27との間にセメントコンクリートを打設し、養生・硬化させてコンクリート層25を形成する。セメントコンクリートとして自己充填コンクリートを用いる点、必要に応じてコンクリート層25に内蔵させる鉄筋を設置してもよい点等については、上記第1実施形態と同様である。また、各板状部材23aの外側面及び各板状部材27aの内側面には接着性改善処理が施されており、これにより、改質硫黄固化体からなる内側層23及び外側層27と、コンクリート層25とが強固に接着接合される。
【0048】
その後、コンクリート層25が十分に硬化したら、蒸気などで所定温度(例えば60℃)に加温しつつ脱型し、必要に応じて、内側層23を形成する複数の板状部材23aの各接合部に内側から目地処理を施すことによって本実施形態によるボックスカルバート21を得る。なお、目地処理は、外型枠43を設置する前又はコンクリート層25を形成する前に外側から施すようにしてもよい。さらに、必要に応じて、外側層27を形成する複数の部材27aの各接合部に外側から目地処理を施すようにしてもよい。目地処理は、耐酸性コーキング材(例えば、エポキシ系コーキング材)を用いて行うことが好ましい。
【0049】
以上のようにして製造されたボックスカルバート21は、図6に示すように、改質硫黄固化体からなる内側層23、コンクリート層25及び改質硫黄固化体からなる外側層27の三層構造を有しており、改質硫黄固化体からなる内側層23が水路内面として用いられる。そして、内側層23の外側面及び外側層27の内側面、すなわち、改質硫黄固化体からなる層のコンクリート層25と接する面には接着性改善処理が施されている。
【0050】
本実施形態によるボックスカルバート21によれば、改質硫黄固化体からなる内側層23を水路内面として用いると共にコンクリート層25からなる本体部の外面を改質硫黄固化体からなる外側層27によって覆っているので、上記第1実施形態によるボックスカルバート1と同様の効果を有することに加えて、ボックスカルバート21の耐久性をさらに向上させることができる。すなわち、水路内面のみならず、外面についても雨水や海水などによる劣化、腐食が抑制される。
【0051】
ここで、本実施形態においては、内型枠41、外型枠43に設置された各板状部材23a,27a(すなわち、内側層23及び外側層27)が埋設型枠として機能する。このため、内型枠41、外型枠43は、各板状部材23a,27aを保持することができればよく、より簡易な構成のものとすることができる。この結果、型枠費用を大幅に低減することができる。
【0052】
なお、以上説明した第1、第2実施形態では、内側層3,23及び外側層27を、ボックスカルバート1,21の函軸方向Xに延びる複数の板状部材3a,23a,27aによって形成しているが、これに限るものではない。内側層3,23及び外側層27は改質硫黄固化体によって形成されていればよく、その大きさ・形態等は問わない。
【0053】
すなわち、内側層及び/又は外側層を改質硫黄固化体によって一体形成してもよいし、板状部材よりも小さい部材によって内側層、外側層を形成するようにしてもよい。また、必要に応じて、積層することも可能である。さらに、図8に示すように、函軸方向Xにて複数(図では二つ)に分割された各部材の函軸方向Xに直交する端面同士を接合させるように配置して内側層、外側層を形成したり、図9に示すように、函軸方向Xに直交する方向にて複数(図では二つ)に分割された各部材の函軸方向Xに平行な端面同士を接合させるように配置して内側層、外側層を形成したりしてもよい。さらにまた、内側層、外側層の全てを改質硫黄固化体で形成するのではなく、雨水、汚水、海水などに接触するおそれのない箇所については部分的にコンクリート層が露出するようにしてもよい。
【0054】
また、上記第1、第2実施形態では、改質硫黄固化体からなる複数の部材をその端面同士を接合させるように配置して内側層、外側層を形成すると共に、各接合部において、隣接する一方の部材の端面に形成された凸部と、他方の部材の端面に形成された凹部とを嵌合させているが(図3を参照)、これに代えて、次のように形成することもできる。
すなわち、図11,12に示すように、各接合部のコンクリート層側の面又はコンクリート層とは反対側の面に、隣接する二つの部材によって溝が形成されるようにし、この形成された溝に耐酸性コーキング材を充填するようにしてもよい。この場合、形成された溝に耐酸性コーキング材を充填することが各接合部に目地処理を施すことに相当する。ここで、コンクリート層側の面に溝が形成される場合にはセメントコンクリートを打設する前に該溝に耐酸性コーキング材を充填し、コンクリート層とは反対側の面に溝が形成される場合には脱型後に該溝に耐酸性コーキング材を充填することになる。
【0055】
さらに、上記第1、第2実施形態では本発明を適用したボックスカルバートについて説明しているが、本発明は、水(雨水、汚水及び海水等を含む)に接触させる面を有する水路設備用の構造物に広く適用できるものである。ここで、水路設備とは、水路及び水路に関連する設備のことをいい、水に接触させる面とは、例えば水路内面及び(貯水)槽内面などが該当する。また、水路設備用の構造物としては、例えば、管渠、側溝(例えばU字溝)、水路用ボックスカルバート、集合枡、貯水槽、マンホールなどが該当する。
【符号の説明】
【0056】
1…ボックスカルバート、3…内側層、3a…板状部材、5…コンクリート層、11…内型枠、13…外型枠、21…ボックスカルバート、23…内側層、23a…板状部材、25…コンクリート層、27…外側層、27a…板状部材、31…凸部、33…凹部、35…アンカー、37…鉄筋、39…スペーサ、41…内型枠、43…外型枠
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路設備用の複合構造物及びその製造方法に関し、特に水路設備の耐酸性や耐塩性などを向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、セメントコンクリートからなるコンクリート構造物の表面に被覆層を形成して耐酸性などを向上させることが知られている。例えば特許文献1には、コンクリート層と改質硫黄含有層との二層構造を有する水路設備用の複合構造物が記載されている。
特許文献1に記載の複合構造物は、コンクリート構造物の水路部表面に型枠を設置し、溶融状態にある改質硫黄含有材料を型枠内に導入し、その後、冷却固化して脱型することによって製造され、又は、コンクリート構造物の水路部表面に溶融状態にある改質硫黄含有材料を吹き付けて冷却することによって製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−204933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術は、溶融状態にある改質硫黄含有材料を用いるため、改質硫黄含有材料を所定の温度(例えば、120℃〜160℃)に加熱保持できる設備・装置が必要となる。また、複合構造物の製造時に、溶融状態にある改質硫黄含有材料が比較的低温のコンクリート構造物の表面に接触することになるため、コンクリート構造物の表面との接触面に部分的な空洞等が生じるおそれがある。これを防止するためには、例えばコンクリート構造物の表面を加熱できる設備・装置が必要となる。
【0005】
このように、上記従来の技術は、コンクリート構造物を製造する場合に比べて、追加の設備・装置が必要になると共に、加熱温度などの管理項目や製造工程の増加を招くことになるため、製造容易性や製造コストの面で改良の余地があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、耐酸性、耐塩性等に優れると共に、製造コストを抑制して比較的容易に製造することのできる、水路設備用の複合構造物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による水路設備用の複合構造物は、溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなる内側層と、前記内側層の外側にセメントコンクリートを打設して形成されたコンクリート層と、を備え、前記内側層を水路内面又は槽内面として用いる。
【0008】
ここで、前記内側層の前記コンクリート層側の面には、前記セメントコンクリートとの接着性を改善する接着性改善処理が施されているのが好ましい。また、前記内側層は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材がその端面同士を接合させるように配置されて形成されたものとすることができる。
【0009】
また、前記改質硫黄固化体からなる外側層をさらに備え、前記コンクリート層が前記内側層と前記外側層との間に前記セメントコンクリートを打設して形成されたものとすることができる。この場合、前記外側層の前記コンクリート層側の面には前記接着性改善処理が施されているのが好ましく、また、前記外側層は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材がその端面同士を接合させるように配置されて形成されたものとすることができる。
【0010】
好ましくは、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材の各接合部において、隣接する一方の部材の端面に形成された凸部と他方の部材に形成された凹部とが嵌合している。あるいは、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材の各接合部には、隣接する二つの部材によって前記コンクリート層側の面又は前記コンクリート層とは反対側の面に溝が形成され、この形成された溝にコーキング材が充填されている。コーキング材としては、例えば耐酸性のものを用いる。
【0011】
また、前記接着性改善処理は、(a)前記コンクリート層側の面にアンカーを設けること、(b)前記コンクリート層側の面にアンカーを設けると共に該アンカーに鉄筋を固定すること、(c)前記コンクリート層側の面を粗化すること、(d)前記コンクリート層側の面に凹凸を形成すること、及び、(e)内蔵された鉄筋のかぶり厚を確保するスペーサの一部を前記コンクリート層側の面から突出させること、の少なくとも1つとすることができる。
【0012】
本発明による水路設備用の複合構造物の製造方法は、溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなり、水路内面又は槽内面として用いる内側層を設置する工程と、設置された前記内側層の外側にセメントコンクリートを打設し硬化させてコンクリート層を形成する工程と、を含む。
【0013】
ここで、前記改質硫黄固化体からなる外側層を、前記内側層の外側に所定の隙間を有して設置する工程をさらに含み、前記コンクリート層を形成する工程が、設置された前記内側層と前記外側層との間に前記セメントコンクリートを打設し硬化させて前記コンクリート層を形成するようにすることができる。
【0014】
また、前記コンクリート層を形成する工程において、前記内側層及び前記外側層の少なくとも一方を埋設型枠として用いることができる。
【0015】
さらに、前記内側層を設置する工程は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置して前記内側層を形成し、前記内側層を形成する複数の部材の各接合部に目地処理を施す工程をさらに含むものとすることができる。同様に、前記外側層を設置する工程は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置して前記外側層を形成し、前記外側層を形成する複数の部材の各接合部に目地処理を施す工程をさらに含むものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
改質硫黄固化体は、コンクリートに比べて、耐酸性、耐塩性、機械的強度、遮水性等に優れている。本発明によれば、改質硫黄固化体からなる内側層を水路内面又は槽内面として用いるので、水路設備の耐酸性、耐塩性等を向上させることができる。また、本発明によれば、新たな設備・装置を導入することなく、例えばコンクリート構造物の製造に用いていた設備・装置を利用して、耐酸性、耐塩性に優れた水路設備用の複合構造物を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態によるボックスカルバートの概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態によるボックスカルバートの内側層を示す図である。
【図3】内側層を形成する複数の部材(板状部材)の各接合部の一例を示す図である。
【図4】第1実施形態によるボックスカルバートの製造方法を示す図である。
【図5】内側層のコンクリート層側の面に施された接着性改善処理の例を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるボックスカルバートの概略構成を示す図である。
【図7】第2実施形態によるボックスカルバートの製造方法を示す図である。
【図8】内側層、外側層の他の構成例を示す図である。
【図9】同じく内側層、外側層の他の構成例を示す図である。
【図10】内側層、外側層を形成する複数の部材の各接合部の他の例を示す図である。
【図11】内側層、外側層を形成する複数の部材の各接合部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による水路用ボックスカルバートの概略構成を示している。本実施形態によるボックスカルバート1は、例えば地中に埋設されて函軸(図中Xと記す)方向、換言すれば、長さ方向に順次連結されて水路を構成する。
【0019】
図1に示すように、本実施形態によるボックスカルバート1は、略角筒状の形態、すなわち、中空の矩形断面を有しており、改質硫黄固化体からなる内側層3と、この内側層3の外側に設けられたコンクリート層5とを備える。つまり、本実施形態によるボックスカルバート1は、改質硫黄固化体層及びコンクリート層の二層構造を有している。
【0020】
内側層3は、ボックスカルバート1の水路内面を形成するものであり、その層厚は10〜30mm程度である。内側層3は、図2に示すように、改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置されて形成されている。より具体的には、函軸方向Xに延びる複数の板状部材3aを用い、各板状部材3aの函軸方向Xに平行な端面(側面)同士を接合させるように配置して内側層3を形成している。
【0021】
図3は、内側層3を形成する複数の板状部材3aの各接合部を示す断面図である。
図3に示すように、各板状部材3aの函軸方向Xに平行な二つの端面にはそれぞれ階段状の段差が設けられており、各接合部において、隣接する一方の板状部材3a(L)の端面に形成された凸部31L(又は凹部33L)と、他方の板状部材3a(R)の端面に形成された凹部33R(又は凸部31L)とが嵌合するようになっている。そして、好ましくは、各接合部において、隣り合う2つの板状部材3a,3aは、例えばエポキシ系接着剤によって接着固定される。但し、上記嵌合形態は一例であり、一方の板状部材の端面に形成された凸部と他方の板状部材の端面に形成された凹部とが嵌合するようになっていればよい。
【0022】
コンクリート層5は、ボックスカルバート1の本体部となるものであり、内側層3の外側に、例えば所定の型枠等を用いてセメントコンクリートを打設し、養生・硬化させることによって形成される。すなわち、本実施形態においては、まず改質硫黄固化体からなる複数の板状部材3aによって内側層3が形成され、その後、内側層3の外側にセメントコンクリートを打設することによってコンクリート層5が形成される。
【0023】
本実施形態では複数の板状部材3aによって内側層3を形成しているため、コンクリート層5の形成時(すなわち、セメントコンクリートの打設時)に振動を与えることは好ましくない。そこで、本実施形態においては、打設時の振動締め固め作業が不要である自己充填コンクリート(高流動コンクリート)によってコンクリート層5を形成している。但し、通常のセメントコンクリートを除外するものではなく、内側層3を改質硫黄固化体によって一体に形成したり、複数の板状部材3aの保持性能を高めたりすることで、通常のセメントコンクリートによってもコンクリート層5を形成できることはもちろんである。
【0024】
ここで、ボックスカルバート1の内側層3として用いる改質硫黄固化体について説明する。改質硫黄固化体は、溶融状態にある改質硫黄(溶融改質硫黄)に骨材を混ぜて固化させたものであり、具体的には、以下のようにして製造される。
【0025】
まず、硫黄と硫黄改質剤とを溶融混合して溶融改質硫黄を製造する。硫黄は、例えば天然産又は石油や天然ガスの脱硫によって生成されたものであり、硫黄改質剤は、溶融硫黄を重合することによって改質する。硫黄改質材としては、例えば炭素数4〜20のオレフィン系炭化水素又はジオレフィン系炭化水素、具体的には、リモネン、ピネン等の環状オレフィン系炭化水素、スチレン、ビニルトルエン、メチルスチレン等の芳香族炭化水素、ジシクロペンタジエン及びそのオリゴマー、シクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、シクロオクタジエン等のジエン系炭化水素等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。なお、硫黄改質剤の使用割合は、硫黄と硫黄改質剤との合計量に対して、通常0.1〜30質量%、好ましくは、1.0〜20質量%である。
【0026】
製造された溶融改質硫黄は、溶融状態を保つことのできる温度に保持された状態で骨材と混合される。骨材は、溶融改質硫黄との混合に適した温度(例えば、130〜140℃程度)に加温しておくのが好ましい。骨材としては、一般にコンクリートで用いられる骨材、例えば、例えば、天然石、砂、れき、硅砂、鉄鋼スラグ、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、金属の製造時に生成される副生物、石炭灰、燃料焼却灰、電気集塵灰、溶融スラグ類、貝殻及びこれらの混合物等からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。また、シリカヒューム、アルミナ、石英粉、石英質岩石、粘土鉱物、活性炭、ガラス粉末や他の無機系、有機系等の微粉末も使用可能である。
【0027】
溶融改質硫黄と骨材とを、公知の溶融混合装置などを用いて混合することによって改質硫黄資材が製造され、この改質硫黄資材を型枠に流し込み、冷却、固化させることで改質硫黄固化体が製造される。なお、改質硫黄固化体は、コンクリートと同様に、型枠に応じて所望の形態とすることができ、また、鉄筋を内蔵させたり、アンカーを設けたりすることができる。本実施形態においては、ボックスカルバート1の内側層3を形成するための部材(例えば、上記板状部材3a)として改質硫黄固化体をあらかじめ成型しておく。
【0028】
図4は、本実施形態によるボックスカルバート1の製造方法を示している。
まず、図4(a)に示すように、例えば内型枠(図中破線で示す)11の外周面に改質硫黄固化体からなる板状部材3aを配置して内側層3を形成する。具体的には、各板状部材3aをそれぞれの端面同士を接合させるように配置しつつ、各板状部材3aの内側面を内型枠の外周面に接着剤によって貼り付ける。
【0029】
ここで、接着剤としては、脱型時に接着力が弱まる(又は無くなる)接着剤、例えばロウ類を主成分とし脱型温度で溶融する接着剤を用いるのが好ましい。脱型を容易にするためである。
但し、各板状部材3aを内型枠11の外周面に固定できればよく、接着剤によって貼り付けることに代えて、例えば内型枠の内側に吸引装置等を設け、各板状部材3aを吸引して内型枠の外周面に固定するようにしてもよい。
【0030】
また、各板状部材3aの外側面、すなわち、コンクリート層5と接触する面には、セメントコンクリートとの接着性を改善するための接着性改善処理が施されているのが好ましい。接着性改善処理は、セメントコンクリートとの接着性を改善するものであればどのような処理であってもよく、板状部材3aの成型時、板状部材3aを内型枠11に設置する前、又は、板状部材3aを内型枠11に設置した後に施すことができる。
【0031】
具体的な接着性改善処理としては、例えば、図5(a)に示すように各板状部材3aの外側面にアンカー35を設ける、図5(b)に示すように各板状部材3aの外側面にアンカー35を設けると共に該アンカー35に鉄筋37を固定する、図5(c)に示すように各板状部材3aの外側面をブラスト処理などによって粗化する、図5(d)に示すように各板状部材3aの外側面を凹凸に形成する、図5(e)に示すように各板状部材3aが鉄筋を内蔵する場合に該内蔵された鉄筋のかぶり厚を確保するために設置したスペーサ39の一部を外側面から突出させる、及び、これらの組み合わせが挙げられる。なお、各板状部材3aの外側面を凹凸に形成する場合には、図5(d)に示すように、凸部の断面形状が、板状部材3aの内側面から離れるほど幅が広くなる台形となっているのが好ましい。単に接着面積を増加させるだけなく、形状によってコンクリート層5をはがれ難くするためである。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、コンクリート層5を形成するための外型枠(図中一点鎖線で示す)13を、各板状部材3aの外側に、所定の隙間g1(コンクリート層5の厚さに相当する)を有して設置する。図では省略するが、必要に応じて、外型枠11を設置する前にコンクリート層5に内蔵させる鉄筋を設置するようにしてもよい。
【0033】
そして、各板状部材3aの外側、すなわち、各板状部材3aと外型枠との間にセメントコンクリートを打設し、養生・硬化させてコンクリート層5を形成する。上述したように、本実施形態では自己充填コンクリートを用いており、振動締め固め作業が不要である。また、各板状部材3aの外側面には接着性改善処理が施されており、これにより、改質硫黄固化体からなる内側層3とコンクリート層5とが強固に接着接合される。ここで、内側層3(板状部材3a)は、埋設型枠として用いられる。
【0034】
コンクリート層5が十分に硬化した後、蒸気などで所定温度(例えば60℃)に加温しつつ脱型し、必要に応じて、内側層3を形成する複数の板状部材3aの各接合部に、内側から目地処理を施すことによって本実施形態によるボックスカルバート1を得る。なお、目地処理は、外型枠13を設置する前又はコンクリート層5を形成する前に外側から施すようにしてもよい。また、目地処理は、耐酸性コーキング材(例えば、エポキシ系コーキング材)を用いて行うことが好ましい。
【0035】
以上のようにして製造されたボックスカルバート1は、図1に示すように、改質硫黄固化体からなる内側層3及びコンクリート層5の二層構造を有しており、改質硫黄固化体からなる内側層3が水路内面として用いられる。そして、内側層3の外側面、すなわち、コンクリート層5と接する面には接着性改善処理が施されている。
【0036】
改質硫黄固化体は、コンクリートに比べて、耐酸性、耐塩性、機械的強度(例えば圧縮強度、割裂強度、曲げ強度)、遮水性等に優れている。本実施形態によるボックスカルバート1は、改質硫黄固化体からなる内側層3を水路内面として用いるので、コンクリート製のボックスカルバートに比べて、耐久性を向上させることができる。特に、雨水や汚水の流下に使用されたり、海水が混入するおそれのある場所で使用されたりする場合に、水路断面積の変化等を抑制できると共に、耐久年数を大幅に増加させることができる。
【0037】
本実施形態によるボックスカルバート1は、改質硫黄固化体からなる内側層3の外側にセメントコンクリートを打設してコンクリート層5を形成している。このため、溶融状態にある改質硫黄資材を取り扱う必要がなく、従来のコンクリート構造物を製造する設備・装置を利用することによって製造することができる。従って、製造コストや製造工程などの増加を抑制しつつ、改質硫黄固化体からなる内側層3及びコンクリート層5の二層構造を有するボックスカルバートを容易に製造することができる。
【0038】
ここで、内側層3の外側面には接着性改善処理が施されており(図5(a)〜(e)を参照)、異なる材料からなる内側層3とコンクリート層5とを強固に接着接合することができる。
【0039】
また、内側層3は、改質硫黄固化体からなる複数の板状部材3aがその端面同士を接合させるように配置されて形成されている。このため、比較的小さい板状部材3aを貯蔵等しておけば済むので、部品貯蔵スペースが比較的小さくて済む。
【0040】
さらに、複数の板状部材3aの各接合部において、一方の板状部材の端面に形成された凸部と他方の板状部材の端面に形成された凹部とが嵌合するようになっており、ボックスカルバート1において、コンクリート層5を改質硫黄固化体からなる内側層3によって確実に覆うことができる。これにより、内側層3を複数の板状部材3aによって形成した場合であっても、水路を流れる汚水などにコンクリート層5が触れることが抑制される。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態による水路用のボックスカルバートを説明する。
図6は、第2実施形態によるボックスカルバートを示している。第2実施形態によるボックスカルバートは、上記第1実施形態によるボックスカルバート(図1参照)に対して、コンクリート層の外側にさらに改質硫黄固化体からなる外側層を備える。すなわち、図6に示すように、第2実施形態によるボックスカルバート21は、改質硫黄固化体からなる内側層23と、該内側層の外側のコンクリート層25と、該コンクリート層25の外側の改質硫黄固化体からなる外側層27とを備えた三層構造を有している。
【0042】
内側層23は、ボックスカルバート21の水路内面を形成するものであり、その層厚は10〜30mm程度である。また、外側層27は、ボックスカルバート21の外面を形成するものであり、その層厚は、内側層23と同様に10〜30mm程度である。なお、内側層23及び外側層27の構成等は、上記第1実施形態における内側層3と同様であるのでその説明は省略する。
【0043】
コンクリート層25は、ボックスカルバート21の本体部となるものであり、上記第1実施形態におけるコンクリート層5と同様に、セメントコンクリートを打設し、養生・硬化させることによって形成される。但し、本実施形態におけるコンクリート層25は、改質硫黄固化体からなる板状部材23a,27aによって内側層23及び外側層27を形成し、その後、内側層23と外側層27との間にセメントコンクリートを打設することで形成される。ここで、セメントコンクリートとして自己充填コンクリートを用いる点は上記第1実施形態と同様である。また、内側層23(板状部材23a)及び外側層27(板状部材27a)のコンクリート層25側の面には、接着性改善処理(図5(a)〜(e)を参照)が施されている。
【0044】
図7は、本実施形態によるボックスカルバート21の製造方法を示している。
まず、図7(a)に示すように、内型枠(図中破線で示す)41の外周面に改質硫黄固化体からなる板状部材23aを配置して内側層23を形成する。具体的には、各板状部材23aの端面同士を接合させるように配置して各板状部材23aの内側面を内型枠41の外周面に接着剤によって貼り付ける。接着剤として脱型時に接着力が弱まる(又は弱くなる)ものを用いる点、接着剤に代えて他の方法によって各板状部材23aを内型枠の外周面に固定してもよい点、及び、各板状部材23aの外側面の接着性改善処理が施されている点、については上記第1実施形態と同様である。
【0045】
次に、図7(b)に示すように、外型枠(図中一点鎖線で示す)43を設置し、その内周面に改質硫黄固化体からなる板状部材27aを配置して外側層27を形成する。具体的には、各板状部材27aの端面同士を接合させるように配置して各板状部材27aの外側面を外型枠53の内周面に接着剤によって貼り付ける。
【0046】
外型枠43は、内型枠41に設置された各板状部材23aから所定の隙間g2(例えば、コンクリート層25の厚さ+外側層27の厚さ)を有して配置されている。この場合においても、接着剤として脱型時に接着力が弱まる(又は弱くなる)ものを用いる。また、接着剤に代えて、他の方法によって各板状部材27aを外型枠の内周面に固定するようにしてもよい。さらに、各板状部材27aの内側面、すなわち、コンクリート層25と接触する面には、内側層23を形成する各板状部材23aと同様、接着性改善処理が施されている。なお、内側層23を形成する板状部材23aと外側層27を形成する板状部材27aとは共通のものを用いることができる。
【0047】
そして、板状部材23aによって形成された内側層23と、板状部材27aによって形成された外側層27との間にセメントコンクリートを打設し、養生・硬化させてコンクリート層25を形成する。セメントコンクリートとして自己充填コンクリートを用いる点、必要に応じてコンクリート層25に内蔵させる鉄筋を設置してもよい点等については、上記第1実施形態と同様である。また、各板状部材23aの外側面及び各板状部材27aの内側面には接着性改善処理が施されており、これにより、改質硫黄固化体からなる内側層23及び外側層27と、コンクリート層25とが強固に接着接合される。
【0048】
その後、コンクリート層25が十分に硬化したら、蒸気などで所定温度(例えば60℃)に加温しつつ脱型し、必要に応じて、内側層23を形成する複数の板状部材23aの各接合部に内側から目地処理を施すことによって本実施形態によるボックスカルバート21を得る。なお、目地処理は、外型枠43を設置する前又はコンクリート層25を形成する前に外側から施すようにしてもよい。さらに、必要に応じて、外側層27を形成する複数の部材27aの各接合部に外側から目地処理を施すようにしてもよい。目地処理は、耐酸性コーキング材(例えば、エポキシ系コーキング材)を用いて行うことが好ましい。
【0049】
以上のようにして製造されたボックスカルバート21は、図6に示すように、改質硫黄固化体からなる内側層23、コンクリート層25及び改質硫黄固化体からなる外側層27の三層構造を有しており、改質硫黄固化体からなる内側層23が水路内面として用いられる。そして、内側層23の外側面及び外側層27の内側面、すなわち、改質硫黄固化体からなる層のコンクリート層25と接する面には接着性改善処理が施されている。
【0050】
本実施形態によるボックスカルバート21によれば、改質硫黄固化体からなる内側層23を水路内面として用いると共にコンクリート層25からなる本体部の外面を改質硫黄固化体からなる外側層27によって覆っているので、上記第1実施形態によるボックスカルバート1と同様の効果を有することに加えて、ボックスカルバート21の耐久性をさらに向上させることができる。すなわち、水路内面のみならず、外面についても雨水や海水などによる劣化、腐食が抑制される。
【0051】
ここで、本実施形態においては、内型枠41、外型枠43に設置された各板状部材23a,27a(すなわち、内側層23及び外側層27)が埋設型枠として機能する。このため、内型枠41、外型枠43は、各板状部材23a,27aを保持することができればよく、より簡易な構成のものとすることができる。この結果、型枠費用を大幅に低減することができる。
【0052】
なお、以上説明した第1、第2実施形態では、内側層3,23及び外側層27を、ボックスカルバート1,21の函軸方向Xに延びる複数の板状部材3a,23a,27aによって形成しているが、これに限るものではない。内側層3,23及び外側層27は改質硫黄固化体によって形成されていればよく、その大きさ・形態等は問わない。
【0053】
すなわち、内側層及び/又は外側層を改質硫黄固化体によって一体形成してもよいし、板状部材よりも小さい部材によって内側層、外側層を形成するようにしてもよい。また、必要に応じて、積層することも可能である。さらに、図8に示すように、函軸方向Xにて複数(図では二つ)に分割された各部材の函軸方向Xに直交する端面同士を接合させるように配置して内側層、外側層を形成したり、図9に示すように、函軸方向Xに直交する方向にて複数(図では二つ)に分割された各部材の函軸方向Xに平行な端面同士を接合させるように配置して内側層、外側層を形成したりしてもよい。さらにまた、内側層、外側層の全てを改質硫黄固化体で形成するのではなく、雨水、汚水、海水などに接触するおそれのない箇所については部分的にコンクリート層が露出するようにしてもよい。
【0054】
また、上記第1、第2実施形態では、改質硫黄固化体からなる複数の部材をその端面同士を接合させるように配置して内側層、外側層を形成すると共に、各接合部において、隣接する一方の部材の端面に形成された凸部と、他方の部材の端面に形成された凹部とを嵌合させているが(図3を参照)、これに代えて、次のように形成することもできる。
すなわち、図11,12に示すように、各接合部のコンクリート層側の面又はコンクリート層とは反対側の面に、隣接する二つの部材によって溝が形成されるようにし、この形成された溝に耐酸性コーキング材を充填するようにしてもよい。この場合、形成された溝に耐酸性コーキング材を充填することが各接合部に目地処理を施すことに相当する。ここで、コンクリート層側の面に溝が形成される場合にはセメントコンクリートを打設する前に該溝に耐酸性コーキング材を充填し、コンクリート層とは反対側の面に溝が形成される場合には脱型後に該溝に耐酸性コーキング材を充填することになる。
【0055】
さらに、上記第1、第2実施形態では本発明を適用したボックスカルバートについて説明しているが、本発明は、水(雨水、汚水及び海水等を含む)に接触させる面を有する水路設備用の構造物に広く適用できるものである。ここで、水路設備とは、水路及び水路に関連する設備のことをいい、水に接触させる面とは、例えば水路内面及び(貯水)槽内面などが該当する。また、水路設備用の構造物としては、例えば、管渠、側溝(例えばU字溝)、水路用ボックスカルバート、集合枡、貯水槽、マンホールなどが該当する。
【符号の説明】
【0056】
1…ボックスカルバート、3…内側層、3a…板状部材、5…コンクリート層、11…内型枠、13…外型枠、21…ボックスカルバート、23…内側層、23a…板状部材、25…コンクリート層、27…外側層、27a…板状部材、31…凸部、33…凹部、35…アンカー、37…鉄筋、39…スペーサ、41…内型枠、43…外型枠
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなる内側層と、
前記内側層の外側にセメントコンクリートを打設して形成されたコンクリート層と、
を備え、
前記内側層を水路内面又は槽内面として用いる、水路設備用の複合構造物。
【請求項2】
前記内側層の前記コンクリート層側の面に、前記セメントコンクリートとの接着性を改善する接着性改善処理が施されている、請求項1に記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項3】
前記内側層は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材がその端面同士を接合させるように配置されて形成されている、請求項1又は2に記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項4】
前記改質硫黄固化体からなる外側層をさらに備え、
前記コンクリート層は、前記内側層と前記外側層との間に前記セメントコンクリートを打設して形成されたものである、請求項1〜3のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項5】
前記外側層の前記コンクリート層側の面に、前記接着性改善処理が施されている、請求項4に記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項6】
前記外側層は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材がその端面同士を接合させるように配置されて形成されている、請求項5に記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項7】
前記改質硫黄固化体からなる複数の部材の各接合部において、隣接する一方の部材の端面に形成された凸部と他方の部材の端面に形成された凹部とが嵌合している、請求項2〜6のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項8】
前記改質硫黄固化体からなる複数の部材の各接合部には、隣接する二つの部材によって前記コンクリート層側の面又は前記コンクリート層とは反対側の面に溝が形成され、この形成された溝にコーキング材が充填されている、請求項2〜7のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項9】
前記接着性改善処理は、前記コンクリート層側の面にアンカーを設けること、前記コンクリート層側の面にアンカーを設けると共に該アンカーに鉄筋を固定すること、前記コンクリート層側の面を粗化すること、前記コンクリート層側の面に凹凸を形成すること、及び、内蔵された鉄筋のかぶり厚を確保するスペーサの一部を前記コンクリート層側の面から突出させること、の少なくとも1つである、請求項2〜8のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項10】
溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなり、水路内面又は槽内面として用いる内側層を設置する工程と、
前記内側層の外側に、セメントコンクリートを打設し硬化させてコンクリート層を形成する工程と、
を含む、水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項11】
前記改質硫黄固化体からなる外側層を、前記内側層の外側に所定の隙間を有して設置する工程をさらに含み、
前記コンクリート層を形成する工程は、前記内側層と前記外側層との間にセメントコンクリートを打設し硬化させて前記コンクリート層を形成する、請求項10に記載の水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項12】
前記コンクリート層を形成する工程において、前記内側層及び前記外側層の少なくとも一方を埋設型枠として用いる、請求項10又は11に記載の水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項13】
前記内側層を設置する工程は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置して前記内側層を形成し、
前記内側層を形成する複数の部材の各接合部に目地処理を施す工程をさらに含む、請求項10〜12のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項14】
前記外側層を設置する工程は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置して前記外側層を形成し、
前記外側層を形成する複数の部材の各接合部に目地処理を施す工程をさらに含む、請求項10〜13のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項1】
溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなる内側層と、
前記内側層の外側にセメントコンクリートを打設して形成されたコンクリート層と、
を備え、
前記内側層を水路内面又は槽内面として用いる、水路設備用の複合構造物。
【請求項2】
前記内側層の前記コンクリート層側の面に、前記セメントコンクリートとの接着性を改善する接着性改善処理が施されている、請求項1に記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項3】
前記内側層は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材がその端面同士を接合させるように配置されて形成されている、請求項1又は2に記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項4】
前記改質硫黄固化体からなる外側層をさらに備え、
前記コンクリート層は、前記内側層と前記外側層との間に前記セメントコンクリートを打設して形成されたものである、請求項1〜3のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項5】
前記外側層の前記コンクリート層側の面に、前記接着性改善処理が施されている、請求項4に記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項6】
前記外側層は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材がその端面同士を接合させるように配置されて形成されている、請求項5に記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項7】
前記改質硫黄固化体からなる複数の部材の各接合部において、隣接する一方の部材の端面に形成された凸部と他方の部材の端面に形成された凹部とが嵌合している、請求項2〜6のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項8】
前記改質硫黄固化体からなる複数の部材の各接合部には、隣接する二つの部材によって前記コンクリート層側の面又は前記コンクリート層とは反対側の面に溝が形成され、この形成された溝にコーキング材が充填されている、請求項2〜7のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項9】
前記接着性改善処理は、前記コンクリート層側の面にアンカーを設けること、前記コンクリート層側の面にアンカーを設けると共に該アンカーに鉄筋を固定すること、前記コンクリート層側の面を粗化すること、前記コンクリート層側の面に凹凸を形成すること、及び、内蔵された鉄筋のかぶり厚を確保するスペーサの一部を前記コンクリート層側の面から突出させること、の少なくとも1つである、請求項2〜8のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物。
【請求項10】
溶融改質硫黄に骨材を混ぜて固化させた改質硫黄固化体からなり、水路内面又は槽内面として用いる内側層を設置する工程と、
前記内側層の外側に、セメントコンクリートを打設し硬化させてコンクリート層を形成する工程と、
を含む、水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項11】
前記改質硫黄固化体からなる外側層を、前記内側層の外側に所定の隙間を有して設置する工程をさらに含み、
前記コンクリート層を形成する工程は、前記内側層と前記外側層との間にセメントコンクリートを打設し硬化させて前記コンクリート層を形成する、請求項10に記載の水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項12】
前記コンクリート層を形成する工程において、前記内側層及び前記外側層の少なくとも一方を埋設型枠として用いる、請求項10又は11に記載の水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項13】
前記内側層を設置する工程は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置して前記内側層を形成し、
前記内側層を形成する複数の部材の各接合部に目地処理を施す工程をさらに含む、請求項10〜12のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物の製造方法。
【請求項14】
前記外側層を設置する工程は、前記改質硫黄固化体からなる複数の部材を、その端面同士を接合させるように配置して前記外側層を形成し、
前記外側層を形成する複数の部材の各接合部に目地処理を施す工程をさらに含む、請求項10〜13のいずれか1つに記載の水路設備用の複合構造物の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−6897(P2011−6897A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150804(P2009−150804)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(597147832)不二コンクリート工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(597147832)不二コンクリート工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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