説明

水難溶性のポリマー及び活性薬剤の混合物を含む医薬組成物

本発明は、少なくとも1種のカチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーと、少なくとも1種の水不溶性ポリマーと、脱塩水中での溶解度が3.3g/l以下の少なくとも1種の活性薬剤との混合物を含む医薬組成物であって、水不溶性ポリマー及び活性薬剤を最高3.5:1質量部の比率で含み、かつ、pH1.2に緩衝化された媒体に含まれる活性薬剤を、pH1.2に2時間維持した後でpH1.2の活性薬剤単独の溶解度値の少なくとも16倍に相当する溶解度値で溶存する形態にて放出する特性を有することを特徴とする医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水難溶性のポリマー及び有効成分の混合物を含む様々な医薬組成物に関する。
【0002】
技術水準
欧州特許第0058765B1号は、胃液に可溶な膨潤可能なコーティング組成物、並びに剤形のコーティング方法におけるその使用について記載しており、特に、アルキル基中に第三級アミノ基を有するアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートで部分的に又は完全に構成される水溶性(メタ)アクリレートコポリマーについて記載している。
【0003】
米国特許第6,391,338号は、有効成分及びEUDRAGIT(登録商標)Eタイプのポリマーのフラッシュフロー法又は押出法による、基本的に水不溶性であるこの有効成分、例えば、イブプロフェン、イトラコナゾール、及びニフェジピンの溶解性の改良又はバイオアベイラビリティの増加について記載している。処理中、有効成分はより高いエネルギー状態(固体分散)に変換され、次いで溶存状態のナノ粒子の形態で放出され得る。
【0004】
米国特許第6,319,520号は、少なくとも1種の有効成分と、ポリメタクリレートの群からの1種以上のpH非依存性ポリマーとの熱成形性混合物から成る、有効成分の徐放のための医薬組成物について記載している。この医薬組成物は、射出成形、射出共成形、押出成形、又は共押出成形により製造することができる。好ましい(メタ)アクリレートコポリマーは、EUDRAGIT(登録商標)RL及びRSであり、これらはまた、場合によりEUDRAGIT(登録商標)E、あるいはEUDRAGIT(登録商標)L100、L100−55、及び/又はS100と一緒に使用してもよい。例えば、ベンフルオレクスヒドロクロライド、二水素リルメニジン、フェンスピリドヒドロクロライドを含む有効成分は、押出成形又は射出成形によって、EUDRAGIT(登録商標)RL、RS、及びその混合物と共に処理される。
【0005】
国際公開第01/39751A1号は、射出成形による成形品の製造方法について記載している。その工程段階は、
a)ラジカル重合によるアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル30〜80質量%と、アルキル基中に第三級アミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー70〜20質量%とから成る(メタ)アクリレートコポリマーを溶融する工程(この(メタ)アクリレートコポリマーは、1:1〜1:20の比率の可塑剤及び乾燥剤1〜70質量%(可塑剤は少なくとも1質量%存在する)、及び0.05〜5質量%の離型剤との混合物中に含まれ、加えて、更なる一般的な添加剤又は賦形剤、並び場合により有効医薬成分が、この混合物中に含まれてもよく、この混合物は溶融前に、120℃において少なくとも1.9barの蒸気圧を有する低沸点構成成分を、0.5質量%を超えて含んでいる)
b)少なくとも120℃の熱可塑性状態にあるこの混合物の脱ガス工程(この溶融状態により、120℃において少なくとも1.9barの蒸気圧を有する低沸点構成成分の含有量が0.5%以下に低下する)
c)溶融状態で脱ガスされた混合物を、温度が(メタ)アクリレートコポリマーのガラス転移温度以下である少なくとも10℃の射出成形金型の成形キャビティに射出する工程、溶融混合物を冷却する工程、並びに得られた成型品を金型から取り除く工程で構成される。
【0006】
この(メタ)アクリレートコポリマーは、好ましくはEUDRAGIT(登録商標)Eであってもよく、有効成分の放出を制御するための更なるポリマーとの混合物中に含まれてもよい。更なるポリマーの含有量は、20%以下であるべきで、好ましくは10質量%以下、具体的には0〜5質量%であるべきである。混合物のための更なるポリマーとしては、EUDRAGIT(登録商標)NE30D、EUDRAGIT(登録商標)RS、及びEUDRAGIT(登録商標)RLが挙げられる。この工程は、いずれの有効成分に対して適用され得るもので、ラニチジンはその1例である。
【0007】
国際公開第01/43935A2号は、射出成形により成型品を製造するため、
A)以下の混合物を溶融する工程
a)ラジカル重合によるアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル40〜100質量%及びアルキル基中に第三級アミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー0〜60質量%から成る(メタ)アクリレートコポリマーであって、以下を含む
b)0.1〜3質量%の離型剤、
並びに場合により、
c)0〜50質量%の乾燥剤
d)0〜30質量%の可塑剤
e)0〜100質量%の添加剤又は賦形剤
f)0〜100質量%の有効医薬成分
g)0〜20質量%の更なるポリマー又はコポリマー
(ここで、成分b)〜g)の量は(メタ)アクリレートコポリマーa)に対しての量であり、また、混合物は、溶融前に、120℃で少なくとも1.9barの蒸気圧を有する低沸点構成成分を、0.5質量%を超えて含んでいる)
B)少なくとも120℃の熱可塑性状態にあるこの混合物の脱ガス工程(この溶融状態により、120℃で少なくとも1.9barの蒸気圧を有する低沸点構成成分の含有量が0.5%以下に低下する)
C)溶融状態で脱ガスされた混合物を、温度が(メタ)アクリレートコポリマーのガラス転移温度以下である少なくとも10℃の射出成形金型の成形キャビティに射出する工程、溶融混合物を冷却する工程、並びに得られた成型品を金型から取り除く工程
を包含する方法について記載している。
【0008】
この混合物は、更なるポリマー又はコポリマーg)0〜20質量%を含んでもよい。有効成分の放出を制御するため、個々の場合において、更なるポリマーを加えることは有利であり得る。しかしながら、混合物中における更なるポリマーの含有量は、(メタ)アクリレートコポリマーに対して、20質量%を超えず、好ましくは10質量%以下であり、具体的には0〜5質量%である。
【0009】
そのような更なるポリマーの例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルメタクリレート及び/又はエチルアクリレートと2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(EUDRAGIT(登録商標)E100)とのカチオン性(メタ)アクリレートコポリマー、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPMC)、メチルメタクリレートとエチルアクリレートとの中性(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)NE30Dから形成された乾燥物質)、メチルメタクリレートとブチルメタクリレートとのコポリマー(PLASTOID(登録商標)B)、又はモノマーとしてトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドを含む、第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)RL及びEUDRAGIT(登録商標)RS)が挙げられる。
【0010】
国際公開第2004/019918号は、(a)ラジカル重合によるアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−エステル、及び官能性第三級アミノ基を有する更なる(メタ)アクリレートモノマー、(b)少なくとも14のHLB値を有する(a)に対して3〜25質量%の乳化剤、及び(c)(a)に対して5〜50質量%のC12〜C18−モノカルボン酸又はC12〜C18−ヒドロキシル化合物、のみから実質的に構成され、成分(a)、成分(b)、及び成分(c)が、組み合わされ、あるいは同時に又は連続的に混合され、場合により更なる有効医薬成分及び/又は更なる一般的な添加剤と共に、加熱可能なミキサー内で溶融されて混合され、その溶融物が冷却されて顆粒又は粉末に細分される、化粧品又は栄養補助食品のための経口用剤形又は経皮用剤形のコーティング組成物及びバインダーとして好適な顆粒又は粉末の製造方法について記載している。この工程によって得られた顆粒及び粉末は、特に、感湿有効医薬成分(例えば、アセチルサリチル酸、カルベノキソロン、セファロチン、エピネフリン、イミプラミン、ヨウ化カリウム、ケトプロフェン、レボドパ、ニトラゼバム、ニトロプルシド、オキシテトラサイクリン−HCl、プロメタジン、オメプラゾール、他のベンズイミダゾール誘導体、ラニチジン又はストレプトマイシンなど)の製剤化に好適である。
【0011】
課題及び解決手段
米国特許第6,391,338号は、有効成分及びEUDRAGIT(登録商標)Eタイプのポリマーのフラッシュフロー法又は押出法による、基本的に水不溶性であるこの有効成分、例えば、イブプロフェン、イトラコナゾール、及びニフェジピンの溶解性の改良又はバイオアベイラビリティの増加について記載している。処理中、有効成分はより高いエネルギー状態(固体分散)に変換され、次いで溶存状態にてナノ粒子の形態で放出され得る。これは、多くの場合、良い結果につながる科学的に顕著なアプローチである。
【0012】
米国特許第6,391,338号に従って配合された医薬組成物は、含有する有効成分(この有効成分は、一般的に酸性pHでEUDRAGIT(登録商標)Eマトリクス中の溶解後に、脱塩水中において3.3g/l以下の溶解度を有する)を、初期において脱塩水中の有効成分の少なくとも2倍の溶解度値に相当する濃度の溶存形態にて放出する特性を有している。
【0013】
しかしながら、本発明者は、この効果の継続が比較的短い期間のみであることを見出した。有効成分の濃度は、初期にある程度溶解して上昇した後、脱塩水中の有効成分の溶解度値の2倍を限度として再び低下する。溶解した有効成分の測定は、有効成分のタイプ又は有効成分の特徴に従って、例えば、UV測定やHPLCなどのようなクロマトグラフィー法又は分光法により、あるいは他の方法によってモニターすることができる。本発明者は、有効成分の初期の高いエネルギー状態は、EUDRAGIT(登録商標)Eマトリクスの溶解後に再び急速に低下し、有効成分は、せいぜい極めて限られた量がかろうじてバイオアベイラブルであるような難溶性又は不溶性の形態に変換され、場合によっては結晶化、凝集化、及び/又は沈殿するのではないかと考える。したがって、有効成分のこの量が十二指腸に送られた場合に、その極めて限られた量が利用されるのみであって、元々所望する血中レベルに達しないリスクがある。
【0014】
有効成分は、胃において、あるいは胃を通過した後に放出され即座に再び吸収されることが意図され、治療作用のためにある特定の血中レベルに達しなければならないが、有効成分が水難溶性の場合、あまりに急速に再結晶化したり、再沈殿してしまうため、増加したはずのバイオアベイラビリティが再び失われてしまい、しばしば、必要な血中レベルに達しないという問題がある。
【0015】
国際公開第01/39751A1号は、射出成形による成形品の製造方法について記載している。特に、第三級アミノ基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを射出成形可能な形態で提供するという目的は、対応する成型品が医薬的品質であるように達成されるべきである。また、第三級アミノ基を有する(メタ)アクリレートコポリマー単独でも、あるいはEUDRAGIT(登録商標)NE、EUDRAGIT(登録商標)RS又はRLとの混合物を処理することも可能であると言及されている。しかし、そのような混合物単独又は有効成分との組み合わせの例は含まれていない。国際公開第01/39751A1号は、上記の問題に対して、水難溶性の有効成分の溶解性が比較的長期間持続するための改良についての解決策を当業者に提供してはいない。
【0016】
国際公開第01/43935A2号は、射出成形による成型品の製造方法について記載している。特に、アニオン基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを射出成形可能な形態で提供するという目的は、対応する成型品が医薬的品質であるように達成されるべきである。また、アニオン基を有する(メタ)アクリレートコポリマー単独でも、あるいはEUDRAGIT(登録商標)NE、EUDRAGIT(登録商標)RS又はRLとの混合物を処理することも可能であると言及されている。しかし、そのような混合物単独又は有効成分との組み合わせの例は含まれていない。国際公開第01/43935A2号は、上記の問題に対して、水難溶性の有効成分の溶解性が比較的長期間持続する改良についての解決策を当業者に提供してはいない。
【0017】
それゆえ、本発明の意図は、先行技術から進み、水難溶性の有効成分に対し、pH1.2の胃液のような環境における有効成分の溶解性及び関連するバイオアベイラビリティを高め、少なくとも120分間にわたって全体又は少なくとも一部が安定した状態であるための剤形を提供することにある。胃液のような試験環境は、溶解性の高められた状態がin vitroにおいてpH1.2で120分後に安定した方法により達成され得る場合、in vivoでもより高いpH値の腸部分に送られた後に不利な条件で著しく変化することはないと想定され得るような高い要件を表している。
【0018】
本発明の目的は、
少なくとも1種のカチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーと、少なくとも1種の水不溶性ポリマーと、脱塩水中での溶解度が3.3g/l以下である少なくとも1種の有効成分との混合物を含む医薬組成物であって、
水不溶性ポリマー及び有効成分が、最高3.5:1質量部の比率で存在し、医薬組成物が、含まれる有効成分をpH1.2に緩衝化された媒体中で、pH1.2に2時間維持した後でpH1.2の有効成分単独の溶解度値の少なくとも16倍に相当する濃度で溶存する形態にて放出する特性を有することを特徴とする、医薬組成物によって達成される。
【0019】
本発明は更に、本発明の医薬組成物を製造するための2つの代替方法に関する。
【0020】
本発明は更に、本発明の医薬組成物を含む剤形を製造する方法、及びその結果として得られる剤形に関する。本発明は更に、剤形を製造するための本発明の医薬組成物の使用に関する。
【0021】
発明の実施
本発明は、少なくとも1種のカチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーと、少なくとも1種の水不溶性ポリマーと、脱塩水中での溶解性が3.3g/l以下である少なくとも1種の有効成分との混合物を含む、好ましくは粉末の形態における医薬組成物であって、
水不溶性ポリマー及び有効成分を最高3.5:1質量部の比率で含み、かつ、pH1.2に緩衝化された媒体(SGFsp、パンクレアチンを含まない人工胃液)中に含まれる有効成分を、pH1.2に2時間維持した後でpH1.2の有効成分単独の溶解度値の少なくとも16倍に相当する濃度で溶存する形態にて放出する特性を有することを特徴とする医薬組成物に関する。
【0022】
カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマー
カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーとは、カチオン基を有し、少なくとも特定のpHの範囲において水溶性である(メタ)アクリレートコポリマーを意味するものと理解される。一般的に、医薬組成物は1種のカチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーのみを含む。しかしながら、適切であれば、2種類以上のカチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーがお互いに隣り合って存在することも、あるいは混合物において存在することも可能である。
【0023】
米国特許第6,391,338号と類似する溶融押出法の場合、カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーは、場合により水難溶性の有効成分をポリマー混合物中における高い溶解性の状態に変換する機能を有する。
【0024】
好ましいカチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーの例としては、特に以下のようなモノが挙げられる。
【0025】
EUDRAGIT(登録商標)Eタイプ
カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーは、アルキル基中に第三級アミノ基を有するアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートで部分的又は完全に構成されてもよい。好適な(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、欧州特許第0058765B1号により公知である。
【0026】
カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、ラジカル重合によるアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル30〜80質量%、及びアルキル基中に第三級アミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー70〜20質量%で構成されてもよい。
【0027】
官能性第三級アミノ基を有する好適なモノマーは、米国特許第4705695号第3欄第64行目〜第4欄第13行目に詳細に記載されている。その例としては、特にジメチルアミノエチルアクリレート、2−ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノベンジルアクリレート、ジメチルアミノベンジルメタクリレート、(3−ジメチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルアクリレート、(ジメチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルメタクリレート、(3−ジエチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルアクリレート、及び(ジエチルアミノ−2,2−ジメチル)プロピルメタクリレートが挙げられる。特に好ましくは、ジメチルアミノエチルメタクリレートである。
【0028】
コポリマー中における、第三級アミノ基を有するモノマーの含有率は、有利には20〜70質量%であり、好ましくは40〜60質量%である。アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステルの割合は、70〜30質量%である。その例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート及びブチルアクリレートが挙げられる。
【0029】
第三級アミノ基を有する好適な(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、メチルメタクリレート20〜30質量%、ブチルメタクリレート20〜30質量%、及びジメチルアミノエチルメタクリレート60〜40質量%から形成されていてもよい。
【0030】
第三級アミノ基を有する特に好適な市販の(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、メチルメタクリレート25質量%、ブチルメタクリレート25質量%、及びジメチルアミノエチルメタクリレート50質量%から形成されている(EUDRAGIT(登録商標)E100又はEUDRAGIT(登録商標)E PO(粉末形態))。EUDRAGIT(登録商標)E100及びEUDRAGIT(登録商標)E POは、約pH5.0以下で水溶性であり、そのため胃液に可溶性でもある。
【0031】
水不溶性ポリマー
水不溶性ポリマーは、1〜14のpH範囲全体において水不溶性で、水のみに膨潤するポリマーを意味するものと理解される。一般的に、医薬組成物中には1種のみの水不溶性ポリマーが存在する。しかしながら、適切であれば、2種類以上の水不溶性ポリマーがお互いに隣り合って存在することも、あるいは混合物中に存在することも可能である。
【0032】
水不溶性ポリマーは、水難溶性の有効成分を医薬組成物から放出された後に長期にわたって溶解性を高めた状態で安定させ、それによって溶解性を減少させる凝集体、再結晶化、又は沈殿の形成を遅延又は防止する機能を有することが期待される。
【0033】
好ましい水不溶性ポリマーの例としては、特に、以下のような中性(メタ)アクリレートコポリマー及び第四級アミノ基を有する(メタ)アクリレートコポリマーが挙げられる。
【0034】
中性(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)NEタイプ又はEudragit(登録商標)NMタイプ)
中性又は基本的に中性のメタクリレートコポリマーは、少なくとも95質量%程度まで、特に少なくとも98質量%程度まで、好ましくは99質量%程度まで、具体的には少なくとも99質量%まで、より好ましくは100質量%程度までの、中性基、特にC1〜C4−アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーで構成される。
【0035】
中性基を有する好適な(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートが挙げられる。好ましくは、メチルメタクリレート、エチルアクリレート及びメチルアクリレートである。
【0036】
アニオン基を有するメタクリレートモノマー、例えば、アクリル酸及び/又はメタクリル酸は、5質量%未満、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%又は0.05〜1質量%以下の少量で存在してもよい。
【0037】
好適な例は、エチルアクリレート20〜40質量%、メチルメタクリレート60〜80質量%、並びに0〜5質量%未満の、好ましくは0〜2質量%、あるいは0.05〜1質量%のアクリル酸及び/又はメタクリル酸で構成された中性又は実質的に中性の(メタ)アクリレートコポリマーである(EUDRAGIT(登録商標)NEタイプ)。
【0038】
EUDRAGIT(登録商標)NE及びEudragit(登録商標)NMは、エチルアクリレート30質量%及びメチルメタクリレート70%のコポリマーである。
【0039】
好ましいのは、国際公開第01/68767号に従って、15.2〜17.3のHLB価を有する非イオン性乳化剤1〜10質量%を使用し分散液として製造された中性又は本質的に中性のメチルアクリレートコポリマーである。後者は、乳化剤により結晶構造の形成を伴う相分離が生じないという利点がある(Eudragit(登録商標)NM)。
【0040】
しかしながら、欧州特許出願公開第1571164A2号により、対応する、0.05〜1質量%とわずかな割合のモノオレフィン性不飽和C3〜C8カルボン酸を有する実質的に中性の(メタ)アクリレートコポリマーも、比較的少量、例えば、0.001〜1質量%のアニオン性乳化剤の存在下において乳化重合により製造することができる。
第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートコポリマー(EUDRAGIT(登録商標)RS/RLタイプ)
更なる好適な水不溶性(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、欧州特許出願公開第181515号又は独国特許第1617751号により公知である。それらは、pHに関係なく、それぞれ水不溶性で水中において膨潤するのみであり、薬物コーティングに好適である。製造方法の1つは、モノマー混合物中に溶解したフリーラジカルを形成する開始剤の存在下においての塊状重合である。同様に、溶液重合又は沈殿重合によって更なるポリマーを製造することも可能である。更なるポリマーを、この方法により微粉末の形態で得ることができ、これは塊状重合の際には粉砕により、溶液重合及び沈澱重合の際には、例えば噴霧乾燥により、実施することができる。
【0041】
水不溶性(メタ)アクリレートコポリマーは、ラジカル重合によるアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル85〜98質量%及びアルキル基中に第四アミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー15〜2質量%で構成される。
【0042】
好ましいアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート及びメチルアクリレートが挙げられる。
【0043】
第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、2−トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライドが特に好ましい。
【0044】
対応するコポリマーは、例えばメチルメタクリレート50〜70質量%、エチルアクリレート20〜40質量%、及び2−トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド7〜2質量%から形成することができる。
【0045】
特に好適なコポリマーは、メチルメタクリレート65質量%、エチルアクリレート30質量%、及び2−トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド5質量%を含む(EUDRAGIT(登録商標)RS)。
【0046】
更なる好適な(メタ)アクリレートコポリマーは、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル85〜93質量%未満及びアルキル基中に第四級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマー7〜15質量%から形成されていてもよい。このような(メタ)アクリレートモノマーは市販されており、遅延性コーティング用に使用されることもある。
【0047】
特に好適なコポリマーは、例えば、メチルメタクリレート60質量%、エチルアクリレート30質量%、及び2−トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド10質量%を含有する(EUDRAGIT(登録商標)RL)。
【0048】
特に、言及された(メタ)アクリレートコポリマーの有用な混合物として、EUDRAGIT(登録商標)RS及びEUDRAGIT(登録商標)RLの特定の混合物(例えば、9:1〜1:9質量部の比率)も挙げられる。
【0049】
ポリ酢酸ビニル/ポリ酢酸ビニルコポリマー、エチルセルロース及びメチルセルロース
また、医薬組成物は、水不溶性ポリマーとして、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、例えば、Kollicoat(登録商標)SR30D又はKollidon(登録商標)SRタイプ、エチルセルロース、又はメチルセルロースを含有してもよい。
【0050】
比率
医薬組成物中の水溶性(メタ)アクリレートコポリマー、並びに水不溶性ポリマーは、お互いの比率が40:60〜99:1質量部、好ましくは50:50〜95:5質量部、具体的には70:30〜92:8質量部で含まれてもよい。驚くことに、水溶性(メタ)アクリレートコポリマーへの水不溶性ポリマーの少量の添加でさえ、本発明の効果を達成するためには十分である。
【0051】
脱塩水中で3.3g/l以下の溶解度を有する有効成分に対する水不溶性ポリマーの比率は、高すぎると、pH1.2での120分後において16倍の溶解度という所望の改良が達成できないため、高すぎてはならない。水不溶性ポリマー及び有効成分は、有効成分1質量部に対して水不溶性ポリマー最高3.5質量部の比率で存在すべきであり、好ましくは最高3.5:1〜0.25:1質量部であり、具体的には最高2.5:1〜0.25:1質量部である。
【0052】
複数の水不溶性ポリマー及び/又は複数の有効成分がお互いに隣り合って存在している場合、その比率は、それらの各合計に基づく。
【0053】
有効成分
医薬組成物は、少なくとも1種の、一般的には1種のみの有効成分を含むが、適切であれば、2種以上の有効成分を組み合わせて含む。したがって、含まれる有効成分は、単一の有効成分のみから成ってもよく、又は適切であれば、複数の別々の有効成分から成ってもよい。
【0054】
有効成分は、脱塩水中で3.3g/l以下、好ましくは、2.2g/l以下、具体的には1.1g/l以下の溶解度を有する。
【0055】
有効成分は、例えば、BCSクラスII及びIV(Amidon教授による生物薬学的分類システム(Biopharmaceutical classification system):Amidon et al.,Pharm.Res.12,413−420(1995))に属すものでもよく、及び/又は、抗アンドロゲン、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗リウマチ薬、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、片頭痛薬、神経弛緩薬、抗生物質、エストロゲン、ビタミン、向精神薬、ACE阻害剤、β遮断剤、カルシウムチャネル遮断薬、利尿薬、強心配糖体、抗てんかん薬、利尿薬/抗緑内障薬、尿酸抑制剤、H2受容体遮断薬、及びウイルス抑止剤から成る群から選択されてもよい。
【0056】
BCSクラスII及びIVの有効成分は、脱塩水中で3.3g/l以下の溶解度を有する。BCSクラスIIの有効成分は透過性に優れ、BCSクラスIVの有効成分は低透過性である。したがって、溶液中での有効成分の可用性が有効成分のバイオアベイラビリティの唯一の制限を成すので、本発明の利点は、特に、BCSクラスIIの有効成分に対して示されるものである。しかしながら、溶液中の有効成分の可用性を高めることは、有効成分がBCSクラスIVの場合、これらの有効成分の細胞への吸収性(透過性)の制限にもかかわらず、少なくとも徐々にでもバイオアベイラビリティにおいて特定の改良を達成するための手助けとなり得る。
【0057】
有効成分として、例えば、ビカルタミド、アナストロゾール、アルベンダゾール、アミトリプチリン、アルテメテル、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、クロファジミン、ダプソン、ジロキサニド、エファビレンツ、葉酸、フロセミド、グリベンクラミド、グリセオフルビン、ハロペリドール、イベルメクチン、イブプロフェン、インジナビル、ロピナビル、ルメファントリン、メベンダゾール、メフロキン、ニクロサミド、ネルフィナビル、ニフェジピン、ニトロフラントイン、フェニトイン、ピランテル、ピリメタミン、レチノール、リトナビル、スピロノラクトン、スルファジアジン、スルファサラジン、スルファメトキサゾール、トリクラベンダゾール、トリメトプリム、バルプロ酸、ベラパミル、ワルファリン、ナリジクス酸、ネビラピン、プラジカンテル、リファンピシン、グリメピリド、ニルタミド、ブロモクリプチン、ケトチフェン、レトロゾール、ナラトリプタン、ガンシクロビル、オルリスタット、ミソプロストール、グラニストロン、ピオグリタゾン、ラミブジン、ロシグリタゾン、ジドブジン、エナラプリル、アテノロール、ナドロール、フェロジピン、ベプリジル、ジゴキシン、ジギトキシン、カルバマゼピン、アセタゾラミド、アロプリノール、シメチジン、ラニチジン、又はオクスカルバゼピンが含まれ得る。
【0058】
水への溶解性
本発明は、脱塩水中での溶解度が3.3g/l以下、好ましくは3.3g/l以下、特に1.1g/l以下である有効成分に関する。
【0059】
有効成分の水への溶解度は、DAB 10(Deutsches Arzneibuch[German Pharmacopoeia],10th edition 3rd revision 1994,Deutscher Apothekerverlag,Stuttgart及びGovi Verlag,Frankfurt am Main,2nd revision(1993),IV Allgemeine Vorschriften[IV General methods],p.5−6,"Loeslichkeit und Loesungsmittel"["Solubility and solvents"];Ph.Eur.4.07,2004も参照のこと)に従って定義され得る。
【0060】
pH1.2における溶解度
pH1.2での溶解度(すなわち、溶存形態で存在する有効成分の量)は、例えば、pH1.2に緩衝化された媒体(SGFsp、パンクレアチンを含まない人工胃液)にて、USP(パドル式、100rpm)に従い、クロマトグラフィー及び/又は分光法により決定することができる。本発明により配合した有効成分と配合していない有効成分の120分後の値を比較する。これは、平均的な胃通過時間の条件をシミュレーションするものである。この比較で、本発明により配合した有効成分の溶解度は、少なくとも16倍、好ましくは少なくとも18倍、具体的には少なくとも20倍に増加する。
【0061】
USP(パドル式)に従った方法論は、当業者に十分周知である(例えば、USP 28−NF23,General Chapter<711>,Dissolution,Apparatus 2(paddle),Method<724>,"Delayed Release (Enteric Coated) Articles−GeneralGeneral Drug Release Standard",Method B(100rpm,37℃)を参照のこと)。
【0062】
医薬組成物の製造方法
「溶媒法」
本発明は、さらに、含まれる有効成分をpH1.2に緩衝化された媒体中で、pH1.2に2時間維持した後でpH1.2の有効成分単独の溶解度値の少なくとも16倍に相当する濃度で溶存する形態にて放出する特性を有する固体形態において医薬組成物の製造方法であって、最初、カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマー、有効成分、及び水不溶性ポリマーで構成される有機溶媒又は溶媒混合物の溶液を得て、次いでその溶媒を、例えば、溶媒留去又は減圧適用によって、例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥によって、除去することにより、上記の特性を有する固体を得ることを特徴とする方法に関する。
【0063】
また、適切であれば、有機溶媒は、他の有機溶媒及び/又は水との溶媒混合物であってもよい。水が含まれる場合、含有量が高くても、それに関わらず全ての構成成分である2つのポリマータイプ及び有効成分は、依然として溶液の状態になり得る。好適な溶媒としては、例えば、アセトン、イソプロパノール、又はエタノール、あるいはそれらの混合物が挙げられる。好適な例は、6:4質量部のイソプロパノール/アセトン混合物である。また、エタノール/水混合物(好ましくは水50質量%以下)も、好適な例である。
【0064】
この方法は、有効成分が水難溶性であり、そのため比較的効率的に有機溶媒に溶解し得るという事実を利用している。また、カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーも同様に有機溶媒に溶解可能である。例えば、EUDRAGIT(登録商標)Eタイプのポリマーも、固体含有量12.5%の有機溶液である好適な形態にて市販されている。一方、不水溶性ポリマーは、容易に有機溶媒に溶解する。これにより、3つの成分全てによる溶液を製造することが可能であり、その場合、有効成分は、固体中の溶媒を除去した後でも溶存状態のままである。理由は不明であるが、混合物中に水不溶性ポリマーが含有される場合、有効成分は腸液に類似の媒体(pH7.2)中において放出された後でも、有効成分の元々の溶解度が閾値(4時間後の有効成分の脱塩水中での溶解度値の少なくとも2倍に相当)以下に再低下しない。
【0065】
溶媒方法には、実施が簡単であるという利点がある。
【0066】
「溶融押出法」
溶融押出法は、溶媒法より好ましく、その理由の1つは、手続き、健康保護及び環境保護の理由から問題が多い溶媒の取り扱いが省かれることにある。
【0067】
本発明によれば、本発明は、含まれる有効成分をpH1.2に緩衝化された媒体中で、pH1.2に2時間維持した後でpH1.2の有効成分単独の溶解度値の少なくとも16倍に相当する濃度で溶存する形態にて放出する特性を有する押出物の形態で医薬組成物の製造方法であって、カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマー、有効成分、及び水不溶性ポリマーが混合され、60〜220℃の範囲の温度、好ましくは80〜180℃の範囲の温度で溶融押出されることを特徴とする方法に関する。
【0068】
溶融押出法は、押出機、特に二軸押出機によって実施することができる。押出機又は二軸押出機が脱ガス領域を備えている場合、好適である。カチオン性水可溶性ポリマー及び水不溶性ポリマーは、固体として、又はポリマー溶液として、あるいはポリマー分散として、組み込むことができる。有効成分は、固体として又は溶液として、あるいは懸濁液として、加えることができる。押出物は、好ましくは、筒状の細長いストランド顆粒を得るために、ストランドカット法及びホットカット法により処理されるか、又は丸いペレット得るために冷却しながらホットカットにより処理される。欧州特許出願公開第1563987A1号は、丸いペレットを製造するための好適な装置(ペレタイザー)について記載している。顆粒は、好ましくは、例えば粒子径が1mm以下、好ましくは50〜500μmの範囲の粉末に粉砕され得る。
【0069】
剤形の製造方法
本発明はさらに、本発明の医薬組成物を含む本発明の剤形の製造方法であって、医薬組成物が上記の溶媒法又は溶融押出法によって製造され、さらに顆粒、ペレット、又は粉末に処理され、適切であれば、薬学的に一般的な賦形剤により配合され、それ自体公知の方法、例えば、混合、圧縮、粉体層形成、及び/又は封入により、剤形、例えば、錠剤、又は好ましくは多粒子剤形、特にペレット含有錠剤、小型錠剤、カプセル剤、サシェット、又は再構成可能粉末へと処理されることを特徴とする方法に関する。
【0070】
錠剤及び多粒子剤形の製造
本発明の医薬組成物は、特に、錠剤型の剤形の製造及び多粒子剤形における使用に好適である。本発明の医薬組成物は、有効成分を粉体形態で含む実質的にすべて公知の医薬製剤において、有効成分の代わりに、好ましくは粉末形態で含まれ、直接使用され得る。このように、例えば、国際公開第01/68058号又は同第2005/046649号に記載されているように、中性核(ノンパレイユ)を粉末形態の医薬組成物又は粉体層形成法におけるバインダーでコーティングすることができる。続いて、コーティングされたコアは、国際公開第01/68058号又は同第2005/046649号において処方されているように、更なる賦形剤及びポリマー層と共に最終的な剤形に配合される。
【0071】
多粒子剤形に対しては、中性核がなくても、粉末形態の医薬組成物を、有効成分の放出を制御するための適切なポリマー性コーティング層を備え得る有効成分含有粒子又はペレットへと丸めて圧縮することで、バインダーにより処理することが可能である。有効成分含有粒子と共に一般的な医薬バインダーで圧縮することによるタブレットに製剤する多粒子剤形の製造については、例えば、Beckert et al.(1996),"Compression of enteric−coated pellets to disintegrating tablets",International Journal of Pharmaceutics 143,p.13−23及び国際公開第96/01624号において詳細に記載されている。
【0072】
有効成分含有ペレットのフィルムコーティングは、一般的に、流動床システムにおいて適用される。フィルム形成物は、一般的に、好適な方法により可塑剤及び離型剤と混合される。この方法において、フィルム形成物は、溶液又は懸濁液であってもよい。フィルム形成のための賦形剤は、同様に溶解又は懸濁されていてもよい。有機溶媒又は水系溶媒、あるいは分散剤が使用され得る。加えて、分散を安定化するために、安定剤を使用することができる(例えば:Tween80、又は他の好適な乳化剤又は安定剤)。
【0073】
離型剤の例としては、モノステアリン酸グリセリン、又は他の好適な脂肪酸誘導体、シリカ誘導体あるいはタルクが挙げられる。可塑剤の例としては、プロピレングリコール、フタル酸塩、ポリエチレングリコール、セバシン酸塩、又はクエン酸、並びに文献に記載された他の物質も挙げられる。
【0074】
有効成分とコーティング材料の相互作用を防ぐためにこれらを分離する分離層は、有効成分含有層と、場合により存在してもよい腸液可用性コポリマー層との間に適用できる。この層は、不活性フィルム形成物(例えば、HPMC又はHPCなど)、あるいは、例えば、タルク又は他の好適な医薬物質から構成され得る。フィルム形成物及びタルクもしくは同様の物質の併用も同様に可能である。
【0075】
また、例えばアニオン性(メタ)アクリレートコポリマーを含み得る中性コポリマー分散剤で部分的又は完全に構成された分離層を適用することも可能である。
【0076】
コーティングされた粒子から錠剤を製造するための混合物は、ペレットを、錠剤化のための好適なバインダーと混合することにより、必要であれば崩壊促進物質及び、必要であれば潤滑剤を添加して製造される。混合は、好適な装置で実施することができる。好適でない混合機は、コーティング粒子に損傷を与えるようなもの、例えば、プロシェア混合機などである。好適な短時間での崩壊を達成するために、コーティング粒子への賦形剤の添加には特定の順序が必要とされる場合がある。潤滑剤又は離型剤ステアリン酸マグネシウムを含むコーティング粒子を予備混合することで、その表面が疎水化され、それによって接着するのを防ぐことができる。
【0077】
錠剤化に好適な混合物は、一般的に、崩壊補助剤、例えば、コリドンCL3〜15質量%、及び潤滑剤及び離型剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム0.1〜1質量%を含む。バインダーの含有量は、必要とされるコーティング粒子の比率によって決まる。
【0078】
一般的なバインダーとしては、例えば、Cellactose(登録商標)、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、Ludipress(登録商標)、乳糖又は他の好適な糖質、硫酸カルシウム、あるいはデンプン誘導体が挙げられる。好ましいのは、低嵩密度の物質である。
【0079】
一般的な崩壊補助剤(崩壊剤)としては、架橋されたデンプン又はセルロース誘導体、あるいは架橋されたポリビニルピロリドンが挙げられる。セルロース誘導体も同様に好適である。好適なバインダーを選択することにより、崩壊補助剤の使用を省くことができる。
【0080】
一般的な潤滑剤及び離型剤としては、ステアリン酸マグネシウム又は他の脂肪酸の好適な塩、あるいはこの目的において文献に記載された物質(例えば、ラウリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルク等)が挙げられる。好適な装置(例えば、外部潤滑を備えた錠剤圧縮機など)又は好適な製剤が使用されている場合、混合物中の潤滑剤及び離型剤の使用は省くことができる。
【0081】
場合により、混合物に流動性改良のための賦形剤を加えることができる(例えば、高分散シリカ誘導体、タルク等)。
【0082】
錠剤化は、一般的な錠剤圧縮機、偏心圧縮機、又は回転式錠剤圧縮機により、圧縮圧5〜40kNの範囲で、好ましくは10〜20kNの範囲で実施することができる。また、錠剤圧縮機は外部潤滑システムを備えることができる。
【0083】
賦形剤
一般的な賦形剤又は添加剤は、好ましくは、それ自体公知の方法で、顆粒、ペレット、又は粉末の製造中に本発明の組成物に添加される。使用される全ての賦形剤は、無論、基本的に毒物学的に異議を挟む余地のないものでなければならず、特に患者に対し危険なく薬物中において使用可能でなければならない。
【0084】
一般的な添加剤の薬物コーティングへの使用量及び使用方法は、当業者にとって周知である。一般的な添加剤は、例えば離型剤、顔料、安定剤、酸化防止剤、細孔形成剤、透過促進剤、つや出し剤、芳香物質又は着香剤であってもよい。これらは、加工賦形剤として作用し、かつ確実で再現性のある製造方法ならびに良好な長期貯蔵安定性を保証するべきであるか、又は剤形において更なる有利な特性を達成すべきである。それらは、処理前にポリマー製造物へ添加され、コーティングの透過性に影響を及ぼし得るものであり、適切な場合には、付加的な制御パラメーターとして機能し得る。
【0085】
・離型剤:
離型剤は、一般的に親油性の特性を有し、そして一般的に噴霧懸濁液に添加される。それらは、フィルム形成中における核の凝集を防ぐ。タルク、ステアリン酸マグネシウム、又はステアリン酸カルシウム、あるいは破砕シリカ、カオリン又は3〜8のHLB値を有する非イオン性乳化剤が好ましい。離型剤の一般的な使用量は、有効成分、水溶性(メタ)アクリレートコポリマー、及び水不溶性ポリマーの合計に対して0.5〜100質量%である。
【0086】
・顔料:
使用される顔料は、毒性がなく、医薬的目的に対して好適である。この問題に関して、例えば、Deutsche Forschungsgemeinschaft[German Research Institute],Farbstoffe fuer Lebensmittel[Dyes for Foods],Harald Boldt Verlag KG,Boppard(1978);Deutsche Lebensmittelrundschau 74,4,p.156(1978);German Medicament Dyes Act of 25.08.1980を参照のこと。好適な顔料としては、例えば、酸化アルミニウム顔料又はオレンジイエロー、コチニールレッド、酸化アルミニウムを基とする有彩顔料又はアゾ染料、スルホン酸染料、オレンジイエローS(E110,C.I.15985,FD&Cイエロー6)、インジゴカルミン(E132,C.I.73015,FD&Cブルー2)、タルトラジン(E102,C.I.19140,FD&Cイエロー5)、ポンソー4R(E125,C.I.16255,FD&CコチニールレッドA)、キノリンイエロー(E104,C.I.47005,FD&Cイエロー10)、エリトロシン(E127,C.I.45430,FD&Cレッド3)、アゾルビン(E122,C.I.14720,FD&C カルモイシン)、アマランス(E123,C.I.16185,FD&Cレッド2)、ブリリアントアシッドグリーン(E142,C.I.44090,FD&CグリーンS)が挙げられる。
【0087】
記載されている顔料のE番号は、EU番号付けに基づいている。また、この点に関しては、"Deutsche Forschungsgemeinschaft,Farbstoffe fuer Lebensmittel",Harald Boldt Verlag KG,Boppard(1978);"Deutsche Lebensmittelrundschau"74,4,p.156(1978);German Medicament Dyes Act of 25.08.1980も参照のこと。FD&C番号は、米食品医薬品局、食品安全・応用栄養学センター、化粧品着色料局:連邦規制基準−Title 21 Color Additive Regulations Part 82,Listing of Certified Provisionally Listed Colors and Specifications(CFR 21 Part 82)に記載の、米国食品医薬品局(FDA)による食品、医薬品、及び化粧品に関する承認に基づいている。
【0088】
・可塑剤
また、更なる添加剤は可塑剤であってもよく、一般的な添加量は、0〜50質量%、好ましくは5〜20質量%である。
【0089】
可塑剤は、種類(親油性又は親水性)及び添加量に応じてポリマー層の機能に影響を及ぼし得る。可塑剤は、ポリマーとの物理的相互作用によってガラス転移温度を低下させ、その添加量に応じてフィルム形成を促進する。好適な材料は、一般的に、100〜20,000の分子量を有し、分子中に特定の1つ以上の親水基、例えば、ヒドロキシ、エステル、又はアミノ基を有する。
【0090】
好適な可塑剤の例としては、クエン酸アルキル、グリセリルエステル、フタル酸アルキル、セバシン酸アルキル、スクロースエステル、ソルビタンエステル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、及びポリエチレングリコール200〜12000が挙げられる。好ましい可塑剤は、クエン酸トリエチル(TEC)、クエン酸アセチルトリエチル(ATEC)、及びセバシン酸ジブチル(CBS)である。また、その例としては、クエン酸塩、フタル酸塩、セバシン酸塩、又はヒマシ油のような一般的に室温で液体のエステルが挙げられる。クエン酸エステル及びセバシン酸エステルの使用が好ましい。
【0091】
製剤への可塑剤の添加は、公知の方法により、水溶液に直接又は混合物の熱前処理後に実施できる。また、可塑剤の混合物を使用することもできる。
【0092】
剤形
本発明はさらに、本発明の医薬組成物を含む剤形に関する。
【0093】
使用
本発明はさらに、剤形を製造するための本発明の医薬組成物の使用に関する。医薬組成物は、有効成分の粉末の代わりに、好ましくは粉末形態において、含まれてもよい。本発明の製剤において、この粉末は、含まれる有効成分をpH1.2に緩衝化された媒体中で、pH1.2に2時間維持した後でpH1.2の有効成分単独の溶解度値の少なくとも16倍に相当する濃度で溶存する形態にて放出する特性を有する。これにより、それ自体難溶性の有効成分を、溶解性を高めた状態で全てのタイプの剤形中に導入することが可能になる。
【0094】
本発明の有利な作用
本発明の医薬組成物の有利な効果は、特に、水難溶性の有効成分を溶解性に優れた状態に変換し、そして、先行技術との違いは(実施例1を参照)、この状態が120分にわたってpH1.2で安定して継続することにある。pH1.2で120分間という条件は、平均的な胃通過時間をシミュレートするものである。この方法では、有効成分の溶解性を最初に高めた後、胃滞留時間の間に再結晶化することを低減させる、あるいは防止することさえも可能である。これにより、時間の関数としてのバイオアベイラビリティが、特に腸管での輸送の際において著しく増加する。
【0095】
胃液のような環境は、高い試験要件を表すため、溶解性の高められた状態がpH1.2で120分後においてもこの試験で安定して達成される場合には、pH値の高い腸部へ輸送された後でさえ、著しく不利には変化しないとされる。
【0096】
そのため、本発明の医薬組成物は、胃において放出されるべき有効成分にとって好適であるだけでなく、実質的に全ての他の剤形、例えば、胃耐性コーティング剤形及び/又は、製剤が胃内に有効成分を実際に放出するのを抑制する剤形に対しても好適である。これにより、有効成分が水難溶性の場合であっても、これまでよりも良好な方法で、治療的に要求される比較的高い血中レベルに達することが可能であり、また、それらを長時間にわたって維持することも可能である。
【0097】
医薬組成物は、有効成分が粉末形態で処理されるような実質的にすべての製剤において、好ましくは粉末形態において、使用することができる。溶解性が高められることにより、原則として、この方法における新規の治療法の可能性が開かれることになる。
【0098】
本発明の有利な効果は、例えば、以下の実施例を参考として説明され得る。
【0099】
実施例
A)ポリマー
EUDRAGIT(登録商標)Eは、メチルメタクリレート25質量%、ブチルメタクリレート25質量%、及びジメチルアミノエチルメタクリレート50質量%から成る水溶性コポリマーである。
【0100】
EUDRAGIT(登録商標)NEは、エチルアクリレート30質量%及びメチルメタクリレート70質量%から成る水不溶性コポリマーである。
【0101】
EUDRAGIT(登録商標)RLは、メチルメタクリレート60質量%、エチルアクリレート30質量%、及び2−トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド10質量%から成る水不溶性コポリマーである。
【0102】
Kollicoat(登録商標)SRは、水不溶性ポリマー(ポリ酢酸ビニルコポリマー)である。
【0103】
Kollicoat(登録商標)IR(酢酸ビニル−エチレングリコールブロックコポリマー)は、水溶性ポリマーである。
【0104】
PEG6000:ポリエチレングリコール6000(水溶性ポリマー)。
B)Examples1〜14での押出物の製造
試料は、二軸押出機(Leistritz MICRO 18 GL 40 D Pharma)溶融押出によって作製した。温度は、少なくとも1つの領域が有効成分の融点より高くなるように選択した。押出は、70〜170℃の範囲で実施した。
【0105】
フェロジピン、水溶性(メタ)アクリレートコポリマーのEUDRAGIT(登録商標)E、及び適切であれば「第2」のポリマーを、固体用又は液体用秤量装置によって秤量し、押出機で混合し溶融させて押出成形した。 本発明の実施例では、「第2」のポリマーは水不溶性であり、有効成分に対して最高3.5:1の比率で含まれる。回転速度は200〜250rpmとした。得られた溶融物は、空冷式牽引ベルトによって引き出し、次いでストランド造粒機で粉砕した。続いて、顆粒を6000l/minにて、250μmのメッシュを入れたRetsch超遠心粉砕機で粉砕し、ふるい分けした(<250μm)。
【0106】
個々の押出物の組成(質量%)
第1表:
【表1】

【0107】
本発明例:実施例2〜4、7〜10
非発明例:実施例1、5、6、11〜14
実施例1〜14
粉砕顆粒からの有効成分フェロジピンの放出:
粉砕顆粒からの有効成分の放出は、パドル装置(DT 700 Dissolution tester、 Erweka)USP 26 メソッド2で実施した。各場合において、試料をフェロジピン10mgに相当するように秤量した。媒体としてSGFsp(パンクレアチンを含まない人工胃液、USP)(pH1.2、37℃±0.5)500mlを使用し、攪拌機の回転スピードは100rpmとした。試料5mlを特定の間隔で採取し、膜フィルター(Rezist(登録商標)30/0.45μm PTFE、Schleicher & Schuell)を通して濾過し、メタノールで1:1希釈した。最初の2mlは破棄した。採取した分の容積については、温度管理した新鮮な媒体を補充した。放出されたフェロジピンの量は、HPLCによって測定した。(使用したカラム:RP 18(Lichrospher 100.5μm、125x4、Merck)、溶離:アセトニトリル:メタノール:リン酸緩衝液(pH3)、流速:1ml/分、波長:362nm)
pH1.2におけるフェロジピンの溶解度の測定:
フェロジピンは、水中において<1mg/l(0.0001g/1)の溶解度を有する。比較のため、pH1.2に緩衝化された媒体(SGFsp pH1.2)におけるフェロジピンの溶解度を測定した。そのため、10mgを、媒体20ml中において37℃で24時間オービタルシェーカーに付した。濃度はHPLCによって測定した。フェロジピン単独で、本発明の製剤なしに、0.5mg/lの溶解度を測った。
【0108】
実施例1〜14の表に、時間の関数としてpH1.2におけるフェロジピンの溶解度値を示す。また、3つの平行実験(容器1〜3)を行った。
【0109】
実施例1(非発明例):
90/10のEUDRAGIT(登録商標)E及びフェロジピン(非発明例)で構成された押出物
【表2】

【0110】
ここでの最大溶解度は、5分が経過した後に達成されたが、その後は著しく低下している。
【0111】
実施例2:
9.5/85.7/4.8のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びEUDRAGIT(登録商標)NEで構成された押出物
【表3】

【0112】
実施例3:
9.1/81.8/9.1のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びEUDRAGIT(登録商標)NEで構成された押出物
【表4】

【0113】
実施例4:
8.3/75/16.7のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びEUDRAGIT(登録商標)NEで構成された押出物
【表5】

【0114】
実施例5(非発明例)
7.14/64.28/28.58のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びEUDRAGIT(登録商標)NEで構成された押出物
【表6】

【0115】
実施例6(非発明例)。
【0116】
【表7】

【0117】
6.25/56.25/37.5のフェロジピン/EUDRAGIT(登録商標)E/EUDRAGIT(登録商標)NEで構成された押出物
実施例7:
9.1/81.8/9.1のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びKollicoat(登録商標)SRで構成された押出物
【表8】

【0118】
実施例8:
8.3/75/16.7のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びKollicoat(登録商標)SRで構成された押出物
【表9】

【0119】
実施例9:
9.1/81.8/9.1のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びEUDRAGIT(登録商標)RLを含む押出物
【表10】

【0120】
実施例10:
8.3/75/16.7のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びEUDRAGIT(登録商標)RLを含む押出物
【表11】

【0121】
実施例11(非発明例)
9.1/81.8/9.1のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びPEG 6000を含む押出物
【表12】

【0122】
実施例12(非発明例)
8.3/75/16.7のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びPEG 6000を含む押出物
【表13】

【0123】
実施例13(非発明例)
9.1/81.8/9.1のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びKollicoat(登録商標)IRを含む押出物
【表14】

【0124】
実施例14(非発明例)
8.3/75/16.7のフェロジピン、EUDRAGIT(登録商標)E及びKollicoat(登録商標)IRを含む押出物
【表15】

【0125】
pH1.2で120分後におけるフェロジピンの溶解性向上に関する実施例1〜14の総括
結果を下の第2表に要約する。
【0126】
第2表
【表16】

【0127】
*)報告の「第2」のポリマーの比率であるが、実施例11〜14は水溶性ポリマーである。
【0128】
本発明の実施例2〜4、7〜10:
全ての実施例において、pH1.2で120分後における溶解性は、pH1.2でフェロジピン単独の場合の少なくとも16倍増加することが確認された。
【0129】
非発明の実施例1、5、6、11〜14:
実施例1:本発明の水不溶性ポリマーを添加しない場合、当初は良好な溶解性を示すが(実施例1の5分後の個々の値を参照のこと)、120分後では7.4倍まで低下する。
【0130】
実施例5及び6:有効成分1質量部に対して3.5を超える比率で水不溶性ポリマーを使用する場合、溶解性の向上は、有効成分単独の場合の16倍未満である。
【0131】
実施例11〜14:水不溶性ポリマーの代わりに水溶性ポリマーを使用した場合、溶解性の向上は、有効成分単独の場合の16倍未満である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のカチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーと、少なくとも1種の水不溶性ポリマーと、脱塩水中での溶解度が3.3g/l以下である少なくとも1種の有効成分との混合物を含む医薬組成物であって、
水不溶性ポリマー及び有効成分が最高3.5:1質量部の比率で存在し、医薬組成物が、含まれる有効成分をpH1.2に緩衝化された媒体中で、pH1.2に2時間維持した後でpH1.2の有効成分単独の溶解度値の少なくとも16倍に相当する濃度で溶存する形態にて放出する特性を有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマー及び前記水不溶性ポリマーが、お互いの比率が40:60〜99:1質量部において含まれることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーが、アルキル基中に第三級アミノ基を有するアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレートで部分的又は完全に構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーが、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル30〜80質量%及びアルキル基中に第三級アミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー70〜20質量%で構成されるポリマーであることを特徴とする、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記水溶性(メタ)アクリレートコポリマーが、メチルメタクリレート20〜30質量%、ブチルメタクリレート20〜30質量%、及びジメチルアミノエチルメタクリレート60〜40質量%で構成されるポリマーであることを特徴とする、請求項3又は4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記水不溶性ポリマーが、アクリル酸又はメタクリル酸のC1〜C4−アルキルエステル98〜88質量%及び第四級アミノ基を有する(メタ)アクリレートモノマー2〜12質量%で構成されたポリマーであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記水不溶性ポリマーが、エチルアクリレート20〜40質量%、メチルメタクリレート60〜80質量%、及びアクリル酸及び/又はメタクリル酸0質量%〜5質量%未満で構成されるコポリマーであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記水不溶性ポリマーが、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、エチルセルロース、又はメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記有効成分が、BCSクラスII及びIV(Amidon教授による生物薬剤学的分類システム)の群、及び/又は、抗アンドロゲン、抗うつ薬、抗糖尿病薬、抗リウマチ薬、グルココルチコイド、細胞増殖抑制剤、片頭痛薬、神経弛緩薬、抗生物質、エストロゲン、ビタミン、向精神薬、ACE阻害剤、β−遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、利尿薬、強心配糖体、抗てんかん薬、利尿薬/抗緑内障薬、尿酸抑制剤、H2受容体遮断薬、及びウイルス抑止剤から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記有効成分が、ビカルタミド、アナストロゾール、アルベンダゾール、アミトリプチリン、アルテメテル、クロルプロマジン、シプロフロキサシン、クロファジミン、ダプソン、ジロキサニド、エファビレンツ、葉酸、フロセミド、グリベンクラミド、グリセオフルビン、ハロペリドール、イベルメクチン、イブプロフェン、インジナビル、ロピナビル、ルメファントリン、メベンダゾール、メフロキン、ニクロサミド、ネルフィナビル、ニフェジピン、ニトロフラントイン、フェニトイン、ピランテル、ピリメタミン、レチノール、リトナビル、スピロノラクトン、スルファジアジン、スルファサラジン、スルファメトキサゾール、トリクラベンダゾール、トリメトプリム、バルプロ酸、ベラパミル、ワルファリン、ナリジクス酸、ネビラピン、プラジカンテル、リファンピシン、グリメピリド、ニルタミド、ブロモクリプチン、ケトチフェン、レトロゾール、ナラトリプタン、ガンシクロビル、オルリスタット、ミソプロストール、グラニストロン、ピオグリタゾン、ラミブジン、ロシグリタゾン、ジドブジン、エナラプリル、アテノロール、ナドロール、フェロジピン、ベプリジル、ジゴキシン、ジギトキシン、カルバマゼピン、アセタゾラミド、アロプリノール、シメチジン、ラニチジン、又はオクスカルバゼピンであることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
粉末形態で存在することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
含まれる前記有効成分をpH1.2に緩衝化された媒体中で、pH1.2に2時間維持した後pH1.2の前記有効成分単独の前記溶解度値の少なくとも16倍に相当する濃度で溶存する形態にて放出する特性を有する粉状化された又は粉砕された押出物の形態である請求項1から11までのいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法において、
前記カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーと、前記有効成分と、前記水不溶性ポリマーとを混合し、60〜220℃の範囲の温度で溶融押出し、かつ該押出物を顆粒へと粉末化又は粉砕することを特徴とする方法。
【請求項13】
含まれる前記有効成分をpH1.2に緩衝化された媒体中で、pH1.2に2時間維持した後pH1.2の前記有効成分単独の前記溶解度値の少なくとも16倍に相当する濃度で溶存する形態にて放出する特性を有する固体の形態である請求項1から11までのいずれか1項に記載の医薬組成物を製造する方法において、最初に、前記カチオン性水溶性(メタ)アクリレートコポリマーと、前記有効成分と、前記水不溶性ポリマーとで構成される有機溶媒又は溶媒混合物の溶液を得て、次いで該有機溶媒を、例えば溶媒留去又は減圧の適用により除去することにより、前記特性を有する固体を得ることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の医薬組成物を含む剤形の製造方法において、請求項11又は13に従って製造された医薬組成物を、さらに顆粒、ペレット、又は粉末へと加工し、適切であれば、薬学的に一般的な賦形剤により配合し、それ自体公知の方法、例えば、混合、圧縮、粉体層形成、及び/又は封入により、剤形、例えば、錠剤、又は好ましくは多粒子剤形、特にペレット含有錠剤、小型錠剤、カプセル剤、サシェット、又は再構成可能粉末へと加工することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の医薬組成物を含む剤形。
【請求項16】
剤形を製造するための、請求項1から11までのいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。

【公表番号】特表2009−525300(P2009−525300A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552772(P2008−552772)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050465
【国際公開番号】WO2007/090721
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】