説明

永久磁石およびその製造方法、モータ用永久磁石および永久磁石モータ

【課題】 モータ用磁石に好適な低保磁力、高角型比を有するSmCo系磁石およびその製造方法を提供する。さらには、上記特性の永久磁石を用いてなる可変磁束型永久磁石モータを提供する。
【解決手段】 室温での保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が80%以上であることを永久磁石として次の一般式を満たすものを使う。
一般式: Sm1−xNd(Co1−a―b−c−dFeCu (I)
MはTi,Zr,Hfから選ばれる少なくとも1種、SmとNdの和を1としたときの原子比が0<x≦0.4、0.3<a≦0.38、0.02≦b≦0.07、0.01<c≦0.04、7.3≦z≦8.3を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は永久磁石、特にモータ用に適した低保磁力、高角形比を具備した永久磁石およびその製造方法に関する。さらに、これらの磁石を用いた永久磁石モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石として、アルニコ磁石、フェライト磁石、Sm−Co磁石、Nd−Fe−B磁石などが知られている。これら永久磁石は、その仕様に応じた適正な磁石が、VCM、スピンドルモータなどの各種モータ、計測器、スピーカー、医療用MRI等の他、各種電気機器のキー部品に使用されている。
これらの磁石は、多量のFeまたはCoと、希土類元素とを含有している。Fe,Coは飽和磁束密度の増大に寄与する。一方、希土類元素は、結晶場中の4f電子の挙動に由来する非常に大きな磁気異方性をもたらすため、保磁力の増大に寄与し、良好な磁石特性を実現している。
近年、各種電気機器の小形化、省エネルギー化の要求が高まっている。これら機器のキー部品材料である永久磁石にもより高い最大エネルギー積[(BH)max]、大きな保磁力と磁石特性の温度特性改善が求められてきた。
永久磁石の応用分野として、特にモータが省エネの観点から注目されている。これに使用すると従来の誘導型に比べ、損失を大幅に低減できるため、車載、家電応用など、各種用途の省エネ技術として広がってきている。
一般に、永久磁石モータは大きく分けて2種類のタイプがある。回転子鉄心の外周に永久磁石を貼り付けた表面磁石型永久磁石モータと永久磁石を回転子鉄心の中に埋め込んだ埋め込み型永久磁石モータである。可変速駆動用モータには埋め込み型永久磁石モータが適している。
【0003】
図1を用いて、埋め込み型永久磁石モータ(IPM)の回転子の構成を説明する。図1において、11は回転子、12は回転子鉄心、14は高保磁力永久磁石を示している。回転子鉄心12の外周部に長方形の空洞を等配で極数の数だけ設ける。図1に示す回転子11は4極の回転子11である。回転子鉄心12に4個の空洞が設けられ、各空洞に永久磁石14が挿入される。永久磁石14は回転子の半径方向、又は、永久磁石14の断面の長方形におけるエアギャップ面に対向する辺(図1では長辺)に直角方向に磁化される。永久磁石14は負荷電流により減磁しないように保磁力の高いNdFeB永久磁石等が主に適用される。回転子鉄心12は空洞を打抜いた電磁鋼板を積層して形成する。このようなモータとして特開平11−136912号公報(特許文献1)に記載されている永久磁石式リラクタンス型回転電機が挙げられる。
永久磁石式回転電機では、永久磁石の鎖交磁束が常に一定の割合で発生している。このため、永久磁石による誘導電圧は回転速度に比例して高くなる。低速から高速まで磁化を変化させながら運転する場合は、高速回転では永久磁石による誘導電圧が極めて高くなる。その結果、永久磁石による誘導電圧がインバータの電子部品に印加し、電子部品の耐電圧以上になると部品が絶縁破壊する。そのため、永久磁石の磁束量が耐電圧以下になるように削減された設計が行うことが考えられるが、永久磁石式回転電機の低速域での出力及び効率が低下する。
低速から高速まで定出力に近い磁化を変化させながら運転を行う場合、永久磁石の鎖交磁束は一定である。このため、高速回転域では回転電機の電圧が電源電圧上限に達して出力に必要な電流が流れなくなる。その結果、高速域では出力が大幅に低下し、さらには高速までの広範囲で駆動できなくなるため、最近では磁化を変化させながら運転する範囲を拡大する方法として弱め磁束制御が適用されはじめた。弱め磁束制御は、d軸電流による減磁界を高保磁力永久磁石に作用させ、可逆の範囲で永久磁石の磁気的な動作点を移動させて磁束量を変化させる。このため、永久磁石には減磁界により不可逆減磁しないように高保磁力のNdFeB磁石を適用する。
【0004】
d軸電流の減磁界により永久磁石の鎖交磁束が減少するので、鎖交磁束の減少分が電圧上限値に対する電圧の余裕分をつくる。そして、電流を増加できるので高速域での出力が増加する。また、電圧余裕分だけ回転速度を上昇させることができ、磁化を変化させながら運転できる範囲が拡大される。
しかし、永久磁石に減磁界を与え続ける必要があり、出力には寄与しないd軸電流を常時流し続けるため銅損が増加して効率は悪化する。さらに、d軸電流による減磁界は高調波磁束を生じ、高調波磁束等で生じる電圧の増加は弱め磁束制御による電圧低減の限界をつくる。これらより埋め込み型永久磁石式回転電機に弱め磁束制御を適用しても基底速度の3倍以上の可変速運転は困難である。さらに、前記の高調波磁束により鉄損が増加し、高調波磁束による電磁力で振動を発生する。
また、ハイブリッド自動車用駆動モータに埋め込み型永久磁石モータを適用した場合、エンジンのみで駆動される状態ではモータは連れ回される。中・高速回転ではモータの永久磁石による誘導電圧が電源電圧以上になり、弱め磁束制御でd軸電流を流し続ける。この状態では、モータは損失のみを発生するので総合運転効率が悪化する。
【0005】
このため、上述したような従来技術の問題点に対して、特開2006−280195号公報(特許文献2)では低速から高速までの広範囲で磁化を変化させながらの運転を可能とし、低速回転域の高トルク化と中・高速回転域での高出力化、効率の向上、信頼性向上を提供することのできる全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ(永久磁石式回転電機)が提案されている。
すなわち、この永久磁石式モータは図2(特許文献2の図1)に示したような、固定子巻線を設けた固定子と、回転子鉄心中に前記固定子巻線の電流で作る磁界により不可逆的に磁束密度が変化する程度の保磁力を有する低保磁力永久磁石と前記低保磁力永久磁石の2倍以上の保磁力を有する高保磁力永久磁石とを配置した回転子とを備えたものである。すなわち、低速から高速までの広範囲で可変速運転を可能とし、低速回転域の高トルク化と中・高速回転域での高出力化、効率の向上、信頼性向上を実現した永久磁石式回転電機を提供できる。この永久磁石モータに用いられる磁石は高保磁力磁石がNdFeB磁石であり、低保磁力磁石はアルニコ磁石、あるいはFeCrCo磁石が示されている。
特許文献2に、低保磁力永久磁石としてアルニコ磁石(AlNiCo)またはFeCrCo磁石、高保磁力永久磁石としてのNdFeB磁石を示している。アルニコ磁石の保磁力(磁束密度が0になる磁界)は60〜120kA/mである。NdFeB磁石の保磁力950kA/mに対して1/15〜1/8になる。また、FeCrCo磁石の保磁力は約60kA/mであり、NdFeB磁石の保磁力950kA/mに対して1/15になる。アルニコ磁石とFeCrCo磁石は、NdFeBの高保磁力磁石と比較してかなり低保磁力である。この低保磁力を利用して、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータを作製する。実施形態では、低保磁力永久磁石の8〜15倍の保磁力を有する高保磁力永久磁石を適用しており、これにより優れた特性の回転電機を得ることとしている。
【0006】
一方、高保磁力の開発を目的としたSmCo磁石が公開されている。
特公平2−27426号公報(特許文献3)には、最大エネルギー積が向上するSmCo系磁石として、下記一般式で示される希土類金属含有永久磁石合金が開示されている。
Sm1−αCeα(Co1−x−y−u−v−wFeCuTiZrMn
上記一般式において、0.1≦α≦0.90、0.10≦x≦0.30、0.05≦y≦0.15、0.002≦u≦0.03、0.002≦v≦0.03、0.005≦w≦0.08、0.01≦u+v+w≦0.10、5.7≦z≦8.1
すなわち、特にTi,Zr,Mnを必須元素として用い、1050〜1250℃の焼結につづき、1050〜1200℃で溶体化処理を行い、ついで400〜900℃で2〜20時間時効処理することで6.5kOe以上の高保磁力が得られるとしている。
また、特公平1−22970号公報(特許文献4)には、永久磁石特性の向上、すなわち高保磁力(≧6.5kOe)と、安定化を図った製造方法が開示されている。
すなわち、希土類元素Rと遷移金属元素MからなるR2M17系永久磁石合金(ただし、RはY,La,Ce,Pr,Nb,Smおよびミツシユメタルの1種又は2種以上の組合せ、MはCuとCo,FeもしくはNiのうち1種又は2種以上の組合せおよび上記Mの一部をMn,Zrの各元素のうち1種以上の元素と置換した組合せ)を溶解して鋳造する。次いで、1100〜1250℃、1〜10時間のインゴツト溶体化処理を施し、金属組織的にR2M17相単相となし、これを粉砕後に圧縮成型して成型体となす。次いで、成型体を50〜350Torrの減圧アルゴンガス雰囲気において1100〜1250℃の温度範囲で焼結する。さらに1100〜1200℃の温度範囲で焼結後、溶体化処理後に100℃/min以上の急速冷却を施し、時効処理を行なうことにより希土類コバルト系永久磁石を製造することを特徴とする。この特許文献4では、時効処理として、1段の場合は800℃で4時間、多段熱処理の場合は、800℃で2時間、700℃で4時間、600℃で8時間、500℃で16時間である。いずれの条件でも高保磁力化(≧6.5kOe)を図っている。
【0007】
また、特公昭62−45686号公報(特許文献5)には、高性能(高保磁力)でかつ安価な永久磁石の提供を目的としたCeリッチ希土類コバルト磁石を時効処理で400〜650℃で一旦保持した後、300℃まで2時間以上要して行う工程を含むことが開示されている。即ち、(イ)一般式:Ce1−uSm(Co1−x−y−wCuFe、(式中のMはZrおよびTiの少なくとも1種であり、0.05≦u<0.5、0.09≦x≦0.14、0.05≦y≦0.25、0.003≦w≦0.015、5.8≦z≦6.8である)で示される合金粉末の成型物を1100〜1200℃で焼結する工程、(ロ)1100℃から600℃までを5〜50分を要して冷却する工程、および(ハ)400℃〜650℃に保持した該焼結体を300℃まで2時間以上要して時効処理する工程からなる希土類含有永久磁石材料の製造方法である。
【0008】
また、特公昭62−9658号公報(特許文献6)には、高い保磁力、高エネルギー積を有する希土類コバルト永久磁石材料を提供するとともに、時効処理を省略することを目的として、以下の技術が開示されている。すなわち、希土類元素Rと遷移金属MからなるR17系磁石合金(但し、RはY、La、Ce、Pr、Nb、Sm及びミツシユメタルの1種または2種以上の組合せ、MはCuとCo、FeもしくはNiのうち、1種または2種以上の組合せ及び該Mの一部をMn、Ti、Nb、Zr、Ta、Hfの各元素のうち、1種以上の元素と置換した組合せ)を溶解して鋳造する。1150℃〜1210℃、1時間〜12時間の溶体化処理を施したのち、急速冷却を行って、金属相RM相を90%以上生成させる。さらに、該合金を粉砕、圧縮成型する。この圧縮成型体を真空中または不活性雰囲気中で焼結後、800℃以下まで20〜500℃/minの冷却速度で冷却することにより時効処理を省略するといった製造方法が開示されている。
また、特公昭60−53107号公報(特許文献7)には保磁力の向上を目的とした技術の開示がなされている。すなわち、希土類成分R(Y、Sm、Pr、Nd、Ce等の一種または二種以上の組合せ)と遷移金属成分M(Co、Fe、Mn、Ni、Cu等)から成るRM5であらわされる組成物を焼結したのち、10℃/分以下の速度で室温まで徐冷し、さらに850℃付近の温度で時効処理を施した後、時効処理温度から室温まで急冷することを特徴とする希土類磁石の製造方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−136912号公報
【特許文献2】特開2006−280195号公報
【特許文献3】特公平2−27426号公報
【特許文献4】特公平1−22970号公報
【特許文献5】特公昭62−45686号公報
【特許文献6】特公昭62−9658号公報
【特許文献7】特公昭60−53107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
いずれの特許文献も、高保磁力化を目指したものである。よって、今回適用する全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータにおける低保磁力磁石のコンセプトを十分発揮できるものではない。一方、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータに適用する低保磁力磁石は、アルニコ磁石を用いた場合よりも、さらに広い範囲の磁束制御による効率向上が求められていた。
モータ、特に全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータのさらなる高出力、効率向上、信頼性向上のため、所定の動作条件での最適磁束量の設定ができる必要がある。本発明は、このような設定に適した、特に低保磁力磁石に最適な永久磁石およびその製造方法を提供することを目的とする。本発明は、洗濯機、エアコンなどの家電用途、車載用途、電車用途など各種容量のモータの高効率化に極めて有効な、高残留磁束密度をもつ永久磁石を提供するものである。さらに、上記のような応用に好適な永久磁石モータ及びモータ用永久磁石を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の永久磁石は、以下の一般式を満たすとともに、室温の保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が80%以上であることを特徴とする。
一般式: Sm1−xNd(Co1−a―b−c−dFeCu (I)
MはTi,Zr,Hfから選ばれる少なくとも1種、SmとNdの和を1としたときの原子比が0<x≦0.4、0.3<a≦0.38、0.02≦b≦0.07、0.01<c≦0.04、7.3≦z≦8.3を満たす。
室温での保磁力は0.7kOe以上2.3kOe以下であることが好ましい。前記一般式(I)で、a値が0.31≦a≦0.35、b値が0.03≦b≦0.06、c値は0.015≦c≦0.03であることが好ましい。また、第2,3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08であることが好ましい。
【0012】
また、これらの一般式で表される磁石は、CaCu相、ThZn17相、TbCu相の3相を具備することが好ましい。また、永久磁石は焼結体であることが好ましい。また、前記一般式(I)の永久磁石は、モータに搭載される永久磁石に好適である。特に、保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が80%以上で、かつ第2,3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08を具備する永久磁石は、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータに好適である。これにより、動作条件に適した磁束量に制御することができるモータが実現できる。
【0013】
また、本発明の永久磁石の製造方法は、以下の一般式を満たす合金粉末を磁場中成形することにより成形体を調整する成形工程、前記成形体を不活性雰囲気中1000℃以上1200℃以下の温度で10分以上20時間以下焼結および溶体化することにより焼結体を得る焼結工程、前記焼結体を600℃以上850℃以下の温度で10分以上20時間以下の熱処理をするとともに、熱処理後の冷却速度0.5〜10℃/minで300℃以上550℃までの範囲まで冷却する時効処理工程とを具備することを特徴とするものである。なお、溶体化処理と時効処理の間は、連続的に行っても、一旦室温まで冷却した後に時効処理を行っても良い。
一般式: Sm1−xNd(Co1−a―b−c−dFeCu (I)
MはTi,Zr,Hfから選ばれる少なくとも1種、SmとNdの和を1としたときの原子比が0<x≦0.4、0.3<a≦0.38、0.02≦b≦0.07、0.01<c≦0.04、7.3≦z≦8.3を満たす。
室温での保磁力は0.7kOe以上2.3kOe以下であることが好ましい。前記一般式(I)で、a値が0.31≦a≦0.35、b値が0.03≦b≦0.06、c値は0.015≦c≦0.03であることが好ましい。また、第2,3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08であることが好ましい。
時効処理の温度範囲は、好ましくは700〜850℃である。また、時効処理によってCaCu相、ThZn17相、TbCu相の3相を具備する相構成にすることが好ましい。また、永久磁石の保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が80%以上であることが好ましい。
また、前記焼結工程後、室温あるいは前記熱処理温度までを冷却速度0.5〜100℃/minで冷却することが好ましい。
【0014】
本発明に係るモータ用永久磁石は、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータに用いられるモータ用永久磁石であって、
室温の保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比80%以上で、かつ第2、3象限の平均リコイル透磁率が1.00以上1.08以下の希土類磁石であることを特徴とする。
本発明に係る永久磁石モータは、室温の保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比80%以上で、かつ第2、3象限の平均リコイル透磁率が1.00以上1.08以下である、磁化状態を変化させるための第1の希土類永久磁石と、
前記第1の希土類永久磁石よりも室温の保磁力が高い第2の希土類永久磁石と
を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明によれば、以下の一般式を満たす合金粉末を磁場中成形することにより成形体を調整する成形工程、成形体を不活性雰囲気中1000℃以上1200℃以下の温度で10分以上20時間以下焼結および溶体化することにより焼結体を得る焼結工程、焼結体を600℃以上750℃以下の温度で10分以上20時間以下熱処理するとともに、熱処理後の冷却速度0.5〜10℃/minで300℃以上550℃まで冷却する時効処理工程を具備することを特徴とする永久磁石の製造方法が提供される。
一般式: Sm1−xNd(Co1−a―b−c−dFeCu (I)
MはTi,Zr,Hfから選ばれる少なくとも1種、SmとNdの和を1としたときの原子比が0<x≦0.4、0.3<a≦0.38、0.02≦b≦0.07、0.01<c≦0.04、7.3≦z≦8.3を満たす。
また、本発明によれば、保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比80%以上で、かつ第2、3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08を具備し、希土類元素ではSm、Nd、遷移金属ではコバルトを主として含有していることを特徴とする全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータ用永久磁石が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低保磁力および高角形比を具備した永久磁石を提供できるので、モータ、特に全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータの低保磁力側磁石に好適である。また、本発明の製造方法であれば低保磁力および高角形比の永久磁石を効率よく製造することができる。さらには、これらの磁石を用いることにより、高効率永久磁石モータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】永久磁石モータの一例を示す図。
【図2】本発明の永久磁石を用いたモータの一例を示す図。
【図3】実施形態に係る永久磁石モータを示す断面図。
【図4】別の実施形態に係る永久磁石モータを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の永久磁石は以下の一般式を満たすとともに、室温での保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が80%以上であることを特徴とするものである。
一般式: Sm1−xNd(Co1−a―b−c−dFeCu (I)
MはTi,Zr,Hfから選ばれる少なくとも1種、SmとNdの和を1としたときの原子比が0<x≦0.4、0.3<a≦0.38、0.02≦b≦0.07、0.01<c≦0.04、7.3≦z≦8.3を満たす。
まず、室温の保磁力は0.5kOe以上2.5kOe以下である。保磁力が0.5kOe未満では、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータにおける磁束制御範囲が狭くなる。保磁力が2.5kOeを超えると、この磁石の磁化を反転させるのに多大な電気エネルギーを必要とするため、省エネ効果が大きく低減する。そのため、好ましくは0.7〜2.3kOeであり、さらに好ましくは0.8〜2.1kOeである。また、角型比は80%以上である。角型比を80%未満にすると、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータにおける、磁束制御範囲が狭くなるため、高効率運転できる範囲が狭くなる。角型比の好ましい値は90〜100%である。なお、本発明の角型比は10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した値である。10kOeを選択したのは以下の理由からである。本発明の永久磁石は保磁力が5kOe以下と低保磁力であるため、10kOeの磁場中ではほぼ磁気的に飽和しており、角型比の定義に適しているためである。永久磁石の場合、通常は残留磁化の2乗を4で割った値が最大エネルギー積の理論値である。また、実際の最大エネルギー積の値をこの値で割ったものが角型比とされている。一方、本発明の永久磁石は保磁力を比較的小さい値に制御しているため、角型性を表す新たな指標として、軟磁性材料で適用する角型比を参考に用いた。
【0019】
また、第2,3象限の平均リコイル透磁率1.00〜1.08であることが好ましい。リコイル透磁率が1.00未満は原理的にあり得ない。リコイル透磁率が1.08を超えると、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータの磁束制御量が低減してしまい、高効率運転できる範囲が狭くなる。好ましいリコイル透磁率は1.07以下である。
リコイル透磁率は試料振動型磁力計を用いて第2、3象限での磁化の磁場による変化、たとえば15kOeから磁場ゼロに至る変化から求める。具体的には、パルス磁場60kOeで着磁した試料を着磁した方向とは逆に―15kOeまで磁場を加え、そこから0まで磁場の強さを変化させて磁化測定を行なう。この後、―14kOeまで磁場を印加したのち、同様に磁場ゼロまで変化させ、磁化を測定する。これを、1kOeごとに繰り返し、第3象限から第2象限の範囲で測定する。リコイル透磁率は直線と近似し、各磁場(−15kOe、−14kOe、…)と磁場ゼロにしたときの磁化の差を磁場変化量で割った値である。それらを平均したものが平均リコイル透磁率である。第2、3象限で磁束がゼロとなった点から(保磁力)、磁場を反転させて磁場ゼロに至るまでの範囲での透磁率(=[磁束変化量]/[磁場変化量])で平均リコイル透磁率を代表させることもできる。
保磁力、角型比は通常の測定で求められる。保磁力は、最大磁場10kOeでフルループ測定したときの保磁力である。角型比は10kOeでの磁化に対する残留磁化である。
【0020】
次に一般式に示した各元素について説明する。
SmはCoとともに本発明の永久磁石の基本となる必須元素である。Ndは高残留磁束密度を得るのに有効な元素であるが、その量xは0.4以下であり、この量を超えると保磁力が小さくなってしまう。また、この量を超えると角型性が低下してしまうとともに、リコイル透磁率が大きくなり、可変磁束型永久磁石モータの磁束制御には不十分となる。
x値は0<x≦0.4、好ましくは0.1≦x≦0.4である。
なお、Sm,Ndのほかに、11.5kG以上の残留磁束密度を実現する範囲内で、Ce、Prやミッシュメタル、ジジムなど分離前の希土類元素を添加してもよい。Ce、Prやミッシュメタル、ジジムを添加する場合は0.1〜1at%の範囲が好ましい。
Feは飽和磁化、および残留磁束密度の増大に寄与する元素である。11.5kG以上の高飽和磁束密度を得るには、その量aは0.3を超えた組成で有効となり、0.38を超えると角型性の低下とリコイル透磁率が増大する。a値の好ましい範囲は、0.31≦a≦0.37である。Cuは保磁力を制御するための必須元素であり、時効処理でTbCu相をCaCu相とThZn17相に2相分離させることを促進させる元素である。その量bは0.02≦b≦0.07である。0.02以上あれば、その機能を発揮し、一方0.07を超えると残留磁束密度が低下する。さらに好ましくは、0.02≦b≦0.6である。また、Fe量を0.3<aとすることにより希土類元素やM元素等の高価な元素の使用量を減らすことができるのでコスト低減効果もある。
【0021】
M元素はTi,Zr及びHfよりなる群から選ばれる少なくとも1種である。M元素は高温相であるTbCu相の安定化を促進する元素である。この元素により広い範囲で溶体化後、TbCu相の単相が得られやすくなる。その結果、600℃以上850℃以下の温度で、10分〜20時間時効処理を行うことにより、TbCu相の一部がCaCu相とThZn17相に2相分離し、最初に形成されているTbCu相を残しつつ、保磁力の制御を行い、3相を具備する構造とすることが好ましい。その量cが0.01未満では効果が現れ難い。量cが0.03を超えると高残留磁束密度が得られにくくなる。
z値は希土類元素に対するCo、Feなど合計の原子比である。この値によって時効処理によってTbCu相から析出する2相(CaCu相とThZn17相)の割合が異なる。この3相を具備する構成で保磁力を制御する。z値が7.3未満では高残留磁束密度は得られにくく、一方、z値が8.3を超えると、角型比が低下、およびリコイル透磁率が大きくなるため、制御できる磁束量が低下する。z値の好ましい範囲は、6.1以上8.2以下である。
【0022】
上記一般式のSmCo系磁石に、0.001〜0.01wt%のB、および不可避不純物として、Cが0.05wt%以下、Oが0.5wt%以下、Al,Si,Caがそれぞれ0.06wt%以下、Snが0.005wt%以下含まれていても、本発明の特性を妨げるものではない。また、一般的に磁石特性向上に用いる遷移金属(例えば、V,Cr,Mn,Ni,Nb,Ta,Mo,W)も高残留磁束密度が得られる範囲で添加してもよい。遷移金属を添加する場合は0.1〜1at%の範囲が好ましい。
本発明の磁石は上記組成に加え、酸素が5000wtppm以下、水素が2000wtppm以下、窒素が1000wtppm以下入っていても良い。特に、水素は水素粉砕などプロセス上水素を用いる場合に、多少残留する場合があるが、特性面には問題ない。また、その他の成分(不純物含む)を合計で0.1wt%以下含有していても良い。
【0023】
本発明の永久磁石の製造方法は特に限定されるものではないが、効率よく得る方法として次のものが挙げられる。母合金は、所定の比率に調製後、高周波溶解などの方法により溶解し、鋳造あるいはストリップキャストにより作製する。鋳造法の場合は、冷却速度を十分とるために、水冷鋳型や水冷金属板上に鋳込むことが好ましい。また、ストリップキャストの場合、得られるフレークの板厚はおおよそ70μm以上2mm以下が好ましい。さらに好ましくは、100μm以上1mm以下が主体となることである。粉砕は例えばジェットミルを用いて微粉砕すればよく、その粉砕粉の平均粒径は1〜15μmが好ましい。平均粒径が1μm以下では十分な焼結密度が得られにくくなるとともに、酸化されやすくなる。一方、平均粒径が15μmを超えると、角型性が低下し始める。好ましくは2〜12μmであり、さらに好ましくは3〜10μmである。一方、水素を用いた水素粉砕でも良いが、この手法では所定の平均粒径にまで到達しないことがある。このため、複数回水素吸蔵放出を繰り返す、あるいは水素粉砕の後、ボールミルのような湿式法あるいはジェットミルのような乾式法でさらに粉砕することでもよい。
【0024】
磁場中成形は、縦磁場あるいは横磁場でも良く、その際の磁場は配向させるためには強い方が好ましいが、通常使用している20kOeあればよい。また、成形圧力は高いほうが好ましいが、これも通常使用している100kg/cm以上あればよい。
焼結および溶体化処理は、まず室温から1〜50℃/min.の割合で昇温させ、500〜700℃で1〜2時間脱ガスする。脱ガスを行うことにより酸素、水素、窒素等のガス成分の含有量を少なくすることができる。この後、同様の昇温速度で1000〜1200℃の焼結温度までAr雰囲気中で温度を上昇させ、この温度範囲で合計10分以上20時間までの焼結、引き続き溶体化を行った。また、溶体化処理とは単相化を目的とする処理のことで、処理時間は1〜10時間程度が好ましい。また、溶体化処理は焼結温度と同じか20〜30℃程度低い温度で行うことが好ましい。その後は5〜100℃/min.の速度で冷却する。時効は焼結、溶体化に引き続き、600℃以上850℃以下の温度で、10分〜20時間行なえばよく、その後は0.5〜10℃/min.の冷却速度で、300〜550℃の範囲まで冷却し、その後は上記範囲よりも速い速度で冷却する。焼結・溶体化処理と時効処理の間は、いったん室温にまで冷却しても、連続で処理してもよい。また、時効は1段(1温度条件)の処理で保磁力を制御できるが、2段(2つの温度条件)以上の処理でもよい。この場合は、高い温度側から低い温度にステップを経ることが好ましく、この場合2つの温度間の冷却速度は0.5〜10℃/min.で行う。多段の場合、全体の時効時間が20時間以下とすればよい。
また、この冷却速度の制御は、前記600℃以上850℃以下の熱処理温度より200℃以上低い温度まで制御することが好ましい。例えば、600℃で熱処理した場合は400℃以下(300℃以上)の温度まで冷却速度を0.5〜10℃/minに制御することになる。
【0025】
このプロセスでの雰囲気は非酸化雰囲気が好ましく、Ar、窒素、真空中での処理が好ましい。なお、焼結密度は95%以上が好ましい。焼結密度は(アルキメデス法による実測値/理論密度)×100%で求める。
上記焼結工程後、室温あるいは前述の時効処理における熱処理の温度までを冷却速度5℃/min以上100℃/min以下で冷却することが望ましい。冷却速度は、次のステップである時効処理を連続で行う場合、一旦室温まで冷却した後に時効を行う場合で異なる。すなわち、連続処理の場合、冷却速度が速すぎるとオーバーシュートする可能性があるため、5〜10℃/min.が好ましく、後者の場合は、量産性の観点から10〜100℃/min.が好ましい。5℃/min.未満では、時効効果が起きる可能性が生じ、特性制御が困難になる。一方、100℃/min.では、冷却速度が速すぎ、焼結体に歪が入りやすく、クラックなどが入る可能性がある。
【0026】

上記のプロセスで得られた磁石は、高磁気異方性のCaCu相と、高飽和磁化相であるThZn17相主相、および時効処理前に形成しているTbCu相も残留する、3相を具備する構成で上記した磁石特性を満足することが出来る。従って、焼結、溶体化処理でTbCu相の単相化、あるいは主相とすることが重要で、時効処理によりTbCu相を高飽和磁化のThZn17相と高磁気異方性のCaCu相の2相に分離することで、保磁力制御ができる。TbCu相の相割合は、体積比で30%以上が好ましく、さらに好ましくは50%以上である。また、TbCu7相が100%の場合は、保磁力が極めて小さくなる。好ましくは95%以下であり、さらに好ましくは90%以下である。
CaCu相、ThZn17相、TbCu相に加え、ThNi17相が生成する条件は、組成および熱処理条件に依存するが、この相は磁気異方性定数が小さい、あるいは面内磁気異方性をもつため、4相構成でもよいが、その場合は10%以下が好ましい。

TbCu相、CaCu相およびThZn17相の有無はXRD(X線回折法)により求めることができる。本発明では、各相のみ、3相以外の相構成を具備しているものを除外するものではない。また、相割合はX線回折法により求めることができる。
【0027】
評価方法はX線回折法を利用する。即ち、各相のX線回折の特徴ある回折線について、回折強度から求める。すなわち、TbCu相は溶体化後の単相でのX線回折における(200)面の回折を基準とし、これに対する強度低下で相の割合を出す。一方、ThZn17相、CaCu相、ThNi17相はそれぞれの単相を別途作製し、それぞれの(024)面、(110)面と(200)面、(203)面の回折強度に対する相対値で求める。X線回折測定の条件は、50kV,100mAの条件である。また、SEMとEPMAの観察でも同様の結果が得られるため、この手法を用いても良い。
一方、TbCu相が全て2相分離すると、高保磁力Hcとなり、本発明の目的とする、全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータへの適用は困難である。従って、好ましくはTbCu相は20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。
【0028】
保磁力、角形性、リコイル透磁率などの全てを満足するには、上記時効条件が好ましい。より短時間で制御が出来る場合、850℃を超えた高温側での熱処理でも問題ない。量産時の時効での時間制御を考慮すると、850℃未満が好ましい。 得られた磁石は、耐酸化性は優れているが、さらに耐酸化性を持たせるためにNiめっき、Cuめっき、Alめっきなど各種表面処理を行うことにより、幅広い様々な環境下で使用することが出来る。
また、本発明に係る永久磁石を用いた永久磁石モータは、運転モードに適した磁束にするために、一部の磁石の磁化方向を反転させて、磁束量を制御して、高効率化を図るものである。すなわち、永久磁石モータは、室温の保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比80%以上で、かつ第2、3象限の平均リコイル透磁率が1.00以上1.08以下である、磁化状態を変化させるための第1の希土類永久磁石と、第1の希土類永久磁石よりも室温の保磁力が高い第2の希土類永久磁石とを備える。第1の希土類永久磁石は、磁化方向を反転させて磁束を制御する低保磁力磁石である。第1の希土類永久磁石は、全磁石体積の5〜70%の範囲にあることが好ましい。このような範囲にすることにより、モータの出力、効率及び信頼性を向上することができる。好ましくは10〜67%であり、さらに好ましくは、15〜50%である。
【0029】
第1の希土類永久磁石の室温での保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下であることが望ましい。また、第1の希土類永久磁石は、Sm、Ndを含む希土類元素と、Coが主成分の遷移金属元素とを含有する組成を有することが好ましい。さらに好ましい組成は、前述した一般式で表される組成である。
【0030】
第2の希土類永久磁石は、例えば、NdFeB磁石等を挙げることができる。
本発明の永久磁石モータは、インナーロータ型でもアウターロータ型でもどちらでもよく、また表面磁石型(SPM)でも埋め込み磁石型(IPM)のいずれの構成でもよい。表面磁石型(SPM)は、例えば、第1の希土類永久磁石及び第2の希土類永久磁石を含む永久磁石が、回転子の表面もしくは内周面に設置されるものを挙げることができる。埋め込み磁石型(IPM)は、例えば、第1の希土類永久磁石及び第2の希土類永久磁石を含む永久磁石が、回転子に埋め込まれたものを挙げることができる。
【0031】
一例として、インナーロータ方式のIPM型の例を図2に示す。図2に示すように、回転子1は、回転子鉄心2、複数の第1の希土類永久磁石(低保磁力永久磁石)3、複数の第2の希土類永久磁石(高保磁力永久磁石)4から構成されている。第1の希土類永久磁石3及び第2の希土類永久磁石4は、回転子鉄心2に埋め込まれ、回転子1の円周方向に配列している。第1の空洞5は、第1の希土類永久磁石3の両端に設けられている。第2の空洞6は、第2の希土類永久磁石4の両端に設けられている。7で示すのは、回転子鉄心2の磁極部である。
また、図3,4には、アウターロータ方式のIPM型の永久磁石モータの実施形態を示す。図3に示すように、本実施形態の永久磁石モータにおける回転子21は、回転子鉄心22、第1の希土類永久磁石23、第2の希土類永久磁石24から構成される。回転子鉄心22は、例えば、珪素鋼板を積層して構成されている。第1の希土類永久磁石23及び第2の希土類永久磁石24は、回転子鉄心22の径方向断面に4個ずつ埋め込まれている。第1の希土類永久磁石23は回転子21のほぼ径方向に沿って配置され、その断面は台形状である。また、第1の希土類永久磁石23の磁化方向はほぼ周方向である。第2の希土類永久磁石24は、ほぼ周方向に配置され、その断面は長方形状である。また、第2の希土類永久磁石24の磁化方向はほぼ径方向である。
【0032】
第1の希土類永久磁石23及び第2の希土類永久磁石24それぞれの両端部には空洞25が設けられている。ボルト穴26は、回転子鉄心22に開口されている。そして、回転子鉄心22の磁極鉄心部27は、2個の第1の希土類永久磁石23と1個の第2の希土類永久磁石24とで取り囲まれるようにして形成される。回転子鉄心22の磁極鉄心部27の中心軸方向がd軸、磁極間の中心軸方向がq軸となる。したがって、第1の希土類永久磁石23は磁極間の中心軸となるq軸方向に配置され、第1の希土類永久磁石23の磁化方向はq軸に対して90°、又は90°方向となる。隣合う第1の希土類永久磁石23において、互いに向かい合う磁極面は同極にしてある。また、第2の希土類永久磁石24は磁極鉄心部27の中心軸となるd軸に対して直角方向に配置され、その磁化方向はd軸に対して0°、又は180°の方向となる。隣合う第2の希土類永久磁石24において、互いに磁極の向きは逆極性にしてある。
このような回転子21は、固定子28の内部に収容されている。この固定子28は、電機子巻線29を固定子鉄心30の内側に形成されたスロットに収容することで構成されている。そして固定子28の内周面と回転子21の外周面とは、エアギャップ31を介して対向させている。
【0033】
一方、図4に示すように、本実施の形態の永久磁石モータにおける回転子41は、回転子鉄心42内に、第1の希土類永久磁石43と、第2の希土類永久磁石44とを埋め込んだ構成である。回転子鉄心42は珪素鋼板を積層して構成されている。第1の希土類永久磁石43及び第2の希土類永久磁石44は、回転子鉄心42の径方向断面に8個ずつ埋め込んである。第1の希土類永久磁石43と第2の希土類永久磁石44との8組それぞれは、回転子41の内径側に凸の形状に設置されている。第1の希土類永久磁石43と第2の希土類永久磁石44の磁化方向はともにほぼ磁石寸法の小さい方向にしてある。第1の希土類永久磁石43と第2の希土類永久磁石44の両端部には必要に応じて、磁石の磁束短絡と、応力緩和のための空洞45を設けてもよい。回転子鉄心42の磁極鉄心部46は、第1の希土類永久磁石43と第2の希土類永久磁石44とで取り囲まれるようにして形成される。なお、47は回転軸である。
このような回転子41は、固定子48の内部に収容されている。固定子48は、電機子巻線49を固定子鉄心50の内側に形成されたスロットに収容することで構成されている。そして固定子48の内周面と回転子41の外周面とは、エアギャップ51を介して対向させている。
本発明で用いられる永久磁石モータは、前述した図2〜図4に示す形態に限定されない。本発明は、複数個の永久磁石が規則的に配列された永久磁石モータに適用可能である。回転子の円周方向に永久磁石を配置し、高保磁力と低保磁力の磁石を交互に、あるいは上記の体積比の範囲内になるように、個数、あるいは寸法(厚み、断面積など)を変えて、最適仕様の永久磁石モータとすることができる。
【0034】
以下に、実施例で発明の効果を示す。
(実施例)
(実施例1〜18)
表1に示す組成について、原料粉末を調製したのち、高周波誘導加熱炉で溶解し、水冷銅板上に鋳込み、母合金とした。得られた試料を粗粉砕の後、ジェットミルで平均粒径3〜5μmに微粉砕し、所定の形状に、磁場20kOe、プレス圧0.5t/cmの条件で磁場中成形した。得られた成形体を、母相の融点より50℃低い温度(1040〜1200℃)で、3時間の条件で焼結し、引き続き焼結温度から20〜30℃低い温度で1時間保持することにより溶体化処理を行い、50℃/minの速度で室温まで冷却した。この後、奇数番号の実施例の時効処理は850℃、3時間の熱処理を行った後、2℃/minの割合で冷却することで行った。偶数番号の実施例の1段目の時効処理は、800℃、4時間の熱処理後、500℃まで2℃/min.の速度で冷却した。偶数番号の実施例の2段目の時効処理は、600℃で2時間保持した後、0.5℃/minの割合で400℃まで冷却した。また、時効処理温度までの昇温速度は30℃/min.で統一した。
また、焼結までの昇温は真空中で5℃/minで行い、600℃で一旦キープして脱ガスを行い、その後は全てAr雰囲気中で行っている。
【0035】
いずれも、試料を100個作製し、磁石特性の評価として、残留磁束密度(Br)、保磁力(Hc)、角型比、リコイル透磁率、Hcレンジを測定した。残留磁束密度(Br)、保磁力(Hc)、角型比、リコイル透磁率については前述の方法を用いて測定し、100個の平均値とした。また、Hcレンジは保磁力のばらつきを示すもので100個測定した保磁力(Hc)の「最大値−最小値」から求めた。その結果を表1に示す。
また、それぞれの試料について、X線回折測定(Cukα、管電圧:50kV,管電流:100mA)を行い、相構成を評価した。表1中、◎(CaCu相、ThZn17相、TbCu相、およびThNi17相の4相を検出)、○(CaCu相、ThZn17相、TbCu相の3相を検出)、×(CaCu相およびThZn17相の2相を検出)、▲(CaCu相、ThZn17相およびThNi17相の3相を検出)、■(ThZn17相を検出)、□(ThNi17相を検出)、△(TbCu相を検出)で表した。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から分かるとおり、本実施例にかかる永久磁石では保磁力は高すぎず、小さすぎず、また保磁力のばらつきも小さく、リコイル透磁率も小さいことが分かった。また、いずれも焼結密度98%以上であった。
(比較例)
表2に比較例を示した。
【0038】
【表2】

【0039】
(比較例1,2,3)
表2に示す組成について、高周波溶解して得た比較例1,2,3のインゴットをブラウンミルで粒子径1〜5μmに粉砕した後、磁場中成形した。この成形体を真空中で焼結した後、冷却し、再度1100℃で溶体化し、850℃、2時間時効処理後、0.5℃/minの速度で500℃まで冷却し、時効処理を行なった。磁気特性を評価した結果、表2に示すとおり、いずれも保磁力が高いものが得られた。
(比較例4,5)
表2に示す組成の合金を、アルゴン雰囲気で高周波溶解・鋳造した。表2には原子比に換算した合金の組成比を表示する。得られた合金にアルゴン雰囲気中で1180℃、4時間インゴツト溶体化処理を施した。溶体化処理後、合金を液体窒素にて冷却速度1200℃/min.で急速冷却した。次いで、得られた試料を鉄乳鉢で粗粉砕した後、有機溶剤中でボールミルにより平均粒度4μmの微粉末とした。得られた微粉末を15kOeの磁界中でプレスし、圧縮成型体と成した。
この圧縮成型体を200Torrのアルゴン雰囲気中で1210℃、2時間焼結し、ひき続いて1190℃、2時間の焼結後溶体化処理を施した後、150℃/minの冷却速度で急速冷却した。さらに800℃、4時間の時効処理を施し、比較例4とした。また、1180℃、4時間のインゴツト溶体化処理を施すことなく、上記比較例4と同様の製造方法により比較例5の永久磁石を得た。
比較例4では、保磁力6.2kOeが得られる一方で、比較例5では保磁力2.8kOeが得られた。特に、比較例5では保磁力のばらつきが大きかった。
【0040】
(比較例6,7)
比較例6の永久磁石を以下の方法で作製した。組成式Pr0.5Sm0.5(Co0.67Cu0.10Fe0.20Zr0.038.2で与えられる組成の粉末を無磁場中で成形して得られた成形体を1140℃で1時間焼結し、1100℃より600℃までを15分間で通過するように室温まで冷却した。ついで、この物を600℃に15分間保持し、300℃まで8時間かけて時効したところ、表2に示す特性を得た。すなわち、高保磁力とそのばらつきは比較的大きい。
また、比較例7の永久磁石を以下の方法で作製した。組成式Pr0.3Sm0.7(Co0.6Fe0.20Cu0.1Ti0.038.5で与えられる組成の成型物を無磁場中で成形した。得られた成型物を比較例6と同様に1120℃で1時間焼結した後、1100℃より500℃までを約60分で通過する如く室温まで冷却した。ひき続き、500℃に20分保持した後4時間で300℃まで徐冷した。表2に示したように比較例6は保磁力が高すぎ、また比較例7は保磁力のばらつきが大きい。
(比較例8,9)
比較例8の永久磁石を以下の方法で作製した。表2に示す合金を、アルゴンガス雰囲気中で高周波溶解し、鋳造して得られたインゴツトに1180℃、6時間の溶体化処理を施し、処理後、液体窒素中で急速冷却した。得られた合金を鉄乳鉢中で粗粉砕し、さらに有機溶剤中でボールミル微粉砕を行ない、2〜10μmの粉末とした。この粉末を12kOeの磁界中でプレス成型し、圧縮成型体を得た。
次に、圧縮成型体を水素雰囲気中1200℃、2時間の焼結を行ない、焼結後、100℃/minの冷却速度で800℃以下の温度まで冷却することにより、比較例8の永久磁石を得た。
また、比較例9の永久磁石を以下の方法で作製した。上記と同じ鋳造後のインゴツトに溶体化処理を施さずに、上記と同じ条件の粗粉砕、微粉砕、プレス成型、焼結した後、焼結後の溶体化処理を1160℃、8時間で行い、比較例9の永久磁石を得た。いずれも、試料を100個作製し、磁石特性の評価結果の平均値を表2に示す。
(比較例10,11)
表2に示される組成の合金をアルゴンガス雰囲気中で高周波溶解し、鉄乳鉢中で粗粉砕した。なお、MMはミッシュメタルのことであり組成は重量比でLa60Ce10Pr20Nd10である。
粗粉砕後の粉末をさらにヘキサン溶媒中でボールミル粉砕により平均粒度4μmの微粉末にした。得られた微粉末を12KOeの磁界中で5ton/cmの圧力で金型を用い圧縮成形した。このようにして得た圧縮体を不活性ガス雰囲気中1220℃の温度で2時間焼結し、ひき続いて30℃/minの冷却速度で500℃以下まで冷却した。
また、比較例11では比較例10における焼結後の冷却速度のみを1000℃/minとし、その後800℃で4時間の最適時効処理を行った。いずれも、試料を100個作製し、磁石特性の評価結果の平均値を表1に示すが、比較例10では、保磁力8.8kOe、比較例11では2.3kOeであった。また、比較例10は保磁力が大きかった。
【0041】
(比較例12,13)
比較例12の永久磁石を以下の方法で作製した。組成式Sm(Fe0.14Co0.76Cu0.107.1で示される組成の合金をアルゴンガス雰囲気中で高周波溶解し、鉄乳鉢中で粗粉砕した。粗粉砕後の粉末をさらにヘキサン溶媒中でボールミル粉砕により平均粒度2〜10μmの微粉末にした。得られた微粉末を12KOeの磁界中で5ton/cmの圧力で金型を用い圧縮成形した。このようにして得た圧縮体を不活性ガス雰囲気中1210℃の温度で2時間焼結し、ひき続いて60℃/minの冷却速度で500℃以下まで冷却した。
また、比較例13として、組成式Sm(Co0.90Cu0.107.4で示される組成の合金について比較例12における焼結後の冷却速度のみを1000℃/minとし、その後、800℃×4時間の時効処理を行った。いずれも、試料を100個作製し、磁石特性を評価した結果、保磁力が大きすぎたり、小さすぎたりし、また保磁力のばらつきが大きかった。
(比較例14,15)
比較例14の永久磁石を以下の方法で作製した。組成式Sm(Co0.80Fe0.05Cu0.157.0で示される組成の合金をアルゴンガス雰囲気中で高周波溶解し、鉄乳鉢中で粗粉砕した。粗粉砕後の粉末をさらにヘキサン溶媒中でボールミル粉砕により平均粒度3μmの微粉末にした。この微粉末を12KOeの磁界中で5ton/cmの圧力で金型を用いた圧縮成形した。このようにして得た圧縮体を不活性ガス雰囲気中1190℃の温度で2時間焼結し、ひき続いて200℃/minの冷却速度で500℃以下まで冷却した。
また、比較例15として、Sm(Co0.84Fe0.05Cu0.117.2で示される組成の合金について比較例14における焼結後の冷却速度のみを1000℃/minとし、その後、800℃で2時間の最適時効処理を行った。いずれも、試料を100個作製し、磁石特性を評価した結果、保磁力のばらつきが大きかった。
【0042】
(比較例16〜22)
表2に示す比較例16〜22に示す組成の合金を高周波溶解し、粗粉砕した後、ジェットミルで微粉砕した。得られた微粉末を12kOeの磁界中で5ton/cmの圧力で金型を用い圧縮成形した。このようにして得た圧縮体を不活性ガス雰囲気中で、各合金の融点の30℃下の温度で2時間焼結し、引き続いて30℃/minの冷却速度で500℃以下まで冷却した。その後、800℃で4時間時効処理を行い、5℃/minの条件で冷却した。これらの磁石特性を評価した結果を表2にまとめる。いずれの磁石も製造時の保磁力のばらつきが多く、またリコイル透磁率が大きかった。なお、比較例22は残留磁束密度が大きかったが、保磁力が極めて小さく、さらにリコイル透磁率も高く、本発明のモータに適用できない。
【0043】
(モータへの適用)
実施例1〜18および比較例1〜22を永久磁石モータに組込んだ際の特性を評価した。評価温度は室温である。モータ特性の評価として各実施例および各比較例に係る永久磁石を、図2に示す全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータの低保磁力磁石部に組み込み、また高保磁力磁石としてNdFeB磁石(Hc=21kOe、Br=12.4kG)を用いて、モータの効率評価を行った。なお、表2に比較例23としてアルニコ磁石を示した。本実施例の第一の永久磁石と高保磁力磁石(第二の希土類磁石)の体積率は50%ずつとした。
基準とする永久磁石モータは磁石として全てNdFeB磁石(比較例24:低保磁力側も高保磁力側と同じ磁石を使用)を用いた場合の効率を基準とし、実施例、比較例の効率を相対値として示している。評価条件は、モータの高速回転(3000rpm)、中速回転(2000rpm)、低速回転(1000rpm)での効率の平均値である。これらの条件は、トルクを指標とすると低トルク、中トルク、高トルクとなっており、各動作条件での効率が反映されることになる。
結果を表1および表2に併せて示すが、本実施例に係る永久磁石を用いた場合、NdFeB磁石のみの永久磁石モータに比べて、大幅に効率向上しており、またアルニコ磁石を用いた場合に比べても効率が高いことがわかる。
なお、今回実施例として図2に示す構造の全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータへの適用を行ったが、保磁力の高い磁石と比較的保磁力の小さい磁石の組合せで構成される永久磁石モータ用磁石として本実施例の磁気特性をもつ永久磁石を使用するものであれば、特にモータ構造に制限されない。
【符号の説明】
【0044】
1,11,21,41…回転子、2,12,22,42…回転子鉄心、3,23,43…第1の希土類永久磁石(低保磁力永久磁石)、4,24,44…第2の希土類永久磁石(高保磁力永久磁石)、5…第1の空洞、6…第2の空洞、7,27,46…鉄心の磁極部、14…永久磁石、26…ボルト穴、28,48…固定子、29,49…電機子巻線、30,50…固定子鉄心、31,51…エアギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式を満たすとともに、室温での保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が80%以上であることを特徴とする永久磁石。
一般式: Sm1−xNd(Co1−a―b−c−dFeCu (I)
MはTi,Zr,Hfから選ばれる少なくとも1種、SmとNdの和を1としたときの原子比が0<x≦0.4、0.3<a≦0.38、0.02≦b≦0.07、0.01<c≦0.04、7.3≦z≦8.3を満たす。
【請求項2】
前記保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下であることを特徴とする請求項1記載の永久磁石。
【請求項3】
前記一般式のa値が0.31≦a≦0.35、b値が0.03≦b≦0.06であることを特徴とする請求項2記載の永久磁石。
【請求項4】
第2,3象限の平均リコイル透磁率が1.00以上1.08以下であることを特徴とする請求項1記載の永久磁石。
【請求項5】
CaCu相、ThZn17相、TbCu相の3相を具備することを特徴とする請求項4記載の永久磁石。
【請求項6】
CaCu相、ThZn17相、TbCu相、およびThNi17相の4相を具備することを特徴とする請求項4記載の永久磁石。
【請求項7】
焼結体であることを特徴とする請求項1記載の永久磁石。
【請求項8】
モータに搭載されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の永久磁石。
【請求項9】
以下の一般式を満たす合金粉末を磁場中成形することにより成形体を調整する成形工程と、
前記成形体を不活性雰囲気中1000℃以上1200℃以下の温度で10分以上20時間以下焼結および溶体化することにより焼結体を得る焼結工程と、
前記焼結体を600℃以上850℃以下の温度で10分以上20時間以下熱処理するとともに、前記熱処理後の冷却速度0.5℃/min以上10℃/min以下で、300℃以上550℃以下の範囲まで冷却する時効処理工程とを具備することを特徴とする永久磁石の製造方法。
一般式: Sm1−xNd(Co1−a―b−c−dFeCu (I)
MはTi,Zr,Hfから選ばれる少なくとも1種、SmとNdの和を1としたときの原子比が0<x≦0.4、0.3<a≦0.38、0.02≦b≦0.07、0.01<c≦0.04、7.3≦z≦8.3を満たす。
【請求項10】
前記時効処理工程の前記熱処理が600℃以上850℃以下の温度で10分以上20時間以下行われることを特徴とする請求項9記載の永久磁石の製造方法。
【請求項11】
前記時効処理工程によってCaCu相、ThZn17相、TbCu相の3相を具備する相構成にすることを特徴とする請求項9記載の永久磁石の製造方法。
【請求項12】
前記時効処理工程によってCaCu相、ThZn17相、TbCu相およびThNi17相の4相を具備する相構成にすることを特徴とする請求項9記載の永久磁石の製造方法。
【請求項13】
前記焼結工程後、室温あるいは前記熱処理の温度までを冷却速度5℃/min以上100℃/min以下で冷却することを特徴とする請求項9記載の永久磁石の製造方法。
【請求項14】
永久磁石の室温での保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が80%以上であることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1項記載の永久磁石の製造方法。
【請求項15】
永久磁石の室温での保磁力が0.5kOe以上2.5kOe以下、かつ10kOeの磁場での磁化に対する残留磁化の比で表した角型比が80%以上であることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1項記載の永久磁石の製造方法。
【請求項16】
全体または一部の永久磁石の磁化状態を変化させることができるモータに用いられるモータ用永久磁石であって、
前記永久磁石は請求項1ないし7のいずれか1項に記載の永久磁石であることを特徴とするモータ用永久磁石。
【請求項17】
磁化状態を変化させるための請求項16に記載の第1の希土類永久磁石と、前記第1の希土類永久磁石よりも室温の保磁力が高い第2の希土類永久磁石とを備えることを特徴とする永久磁石モータ。
【請求項18】
前記第1の希土類永久磁石の全磁石体積に占める割合は5%以上70%以下であることを特徴とする請求項17記載の永久磁石モータ。
【請求項19】
請求項17または18のいずれか1項記載の永久磁石モータは、インナーロータ方式またはアウターロータ方式であることを特徴とする永久磁石モータ。
【請求項20】
前記第1の希土類永久磁石及び前記第2の希土類永久磁石が円周方向に配列される回転子をさらに備えることを特徴とする請求項17ないし19のいずれか1項に記載の永久磁石モータ。
【請求項21】
前記第1の希土類永久磁石及び前記第2の希土類永久磁石が埋め込まれる回転子をさらに備えることを特徴とする請求項20記載の永久磁石モータ。
【請求項22】
前記第1の希土類永久磁石及び前記第2の希土類永久磁石が表面に設置される回転子をさらに備えることを特徴とする請求項20記載の永久磁石モータ。
【請求項23】
前記第1の希土類永久磁石及び前記第2の希土類永久磁石が内周面に設置される回転子をさらに備えることを特徴とする請求項20記載の永久磁石モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−114236(P2011−114236A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270647(P2009−270647)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】