説明

汚泥の炭化処理方法並びにその装置

【課題】 再燃炉から排気される排ガスに含まれる熱を乾燥機、炭化炉または再燃炉のいずれか一つまたは複数の熱源として供するシステムにおいて、エネルギー効率を大幅に向上することのできる、新規な汚泥の炭化処理方法並びにその装置の開発を技術課題とした。
【解決手段】 炭化炉2から排気される炭化排ガスG2を、再燃炉3において燃焼処理することにより、有害物質を無害化処理した再燃排ガスG3として外部に排気するものであり、再燃排ガスG3に含まれる熱を、乾燥機1、炭化炉2または再燃炉3のいずれか一つまたは複数の熱源として供するものであり、前記乾燥機1として、乾燥気体から被処理物に間接的に熱を伝導する伝導伝熱式の装置を用いることを特徴として成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばし尿処理施設、下水処理施設や各種生産工場から排出される汚泥等の処理に関するものであって、特に処理装置全体でのエネルギー効率を大幅に向上することができる汚泥の炭化処理方法並びにその装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりし尿、下水処理施設や各種生産工場から排出される水分を多く含んだ汚泥や都市ゴミ等の廃棄物を処理するにあたっては、処理の効率化を図るため、このものに乾燥処理を施して水分を除去した後、引続いて乾燥し、更に炭化処理を施すといった処理手法が採られている。
一例として汚泥の乾燥、炭化処理を行う場合には図3に示すような炭化処理装置S′が用いられており、事前に脱水処理が施された汚泥M0を乾燥機1′に投入して乾燥処理を行い、ここで得られた乾燥物M1を炭化炉2′に投入して炭化物M2を得るものである。
そして前記炭化炉2′として用いられるロータリーキルン型または回転ドラム型の装置から排気される排ガスを、再燃炉3′において燃焼処理することにより、有害物質を無害化処理した再燃排ガスG3′とし(例えば特許文献1参照)、この高温の再燃排ガスG3′が乾燥機1′の熱風として供されている。
【0003】
ところで前記乾燥機1′としては、熱風を回転ドラム内に供給するとともに、この回転ドラム内に供給された汚泥M0を攪拌することにより、熱風と汚泥M0との接触を図り、汚泥M0に含まれる水分を蒸発させるいわゆる回転ドラム式の装置あるいはロータリーキルン式の装置が広く採用されている。
この種の乾燥機1′が採用される理由としては、汚泥M0等の粘性が高い被処理物を扱う場合、攪拌翼によって被処理物が分散させられるため、高温(図3に示す構成では700〜800℃)の加熱媒体と被処理物との接触面積が増大して効率の良い乾燥を行うことができるからである。そして炭化処理装置S′全体のエネルギー効率を向上させるためには、高温の加熱媒体により効率の良い乾燥を行うことのできる乾燥機1′を用いることが効果的であるというのが斯界の常識であった。
なお前記回転ドラム式の乾燥機1′あるいはロータリーキルン式の乾燥機1′は、比較的安価であるためイニシャルコストを抑えることができ、このこともこれらの乾燥機1′が広く採用されている要因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4255066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような背景を認識して成されたものであって、特に再燃炉から排気される排ガスに含まれる熱を乾燥機、炭化炉または再燃炉のいずれか一つまたは複数の熱源として供するシステムにおいて、エネルギー効率を大幅に向上することのできる、新規な汚泥の炭化処理方法並びにその装置の開発を技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち請求項1記載の汚泥の炭化処理方法は、被処理物を乾燥機を用いて乾燥した後、更に炭化炉を用いて炭化物とする方法において、前記炭化炉から排気される炭化排ガスを、再燃炉において燃焼処理することにより、有害物質を無害化処理した再燃排ガスとして外部に排気するものであり、前記再燃排ガスに含まれる熱を、前記乾燥機、炭化炉または再燃炉のいずれか一つまたは複数の熱源として供するものであり、前記乾燥機として、加熱媒体から被処理物に間接的に熱を伝導する伝導伝熱式の装置を用いることを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項2記載の汚泥の炭化処理方法は、前記要件に加え、前記乾燥機として、機枠上に具えられた本体シェル内に多管式加熱管が具えられ、この多管式加熱管を、その内部に加熱媒体としての蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル内に滞留させつつ前記多管式加熱管に接触させて被処理物の乾燥を行う装置を用いることを特徴として成るものである。
【0008】
更にまた請求項3記載の汚泥の炭化処理方法は、前記要件に加え、前記炭化炉はロータリーキルン型または回転ドラム型の装置であり、前記再燃排ガスに含まれる熱によって昇温された乾燥排ガスを、前記炭化炉における被処理物の投入口側および/または排出口側に供給することを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項4記載の汚泥の炭化処理方法は、前記要件に加え、前記再燃排ガスに含まれる熱を、廃熱ボイラにおいて蒸気を生成する際の熱源として供するものであり、この蒸気を前記乾燥機に供給される加熱媒体として用いることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項5記載の汚泥の炭化処理装置は、被処理物を乾燥機を用いて乾燥した後、更に炭化炉を用いて炭化物とする装置において、前記炭化炉から排気される炭化排ガスを、再燃炉において燃焼処理することにより、有害物質を無害化処理した再燃排ガスとして外部に排気する構成と、前記再燃排ガスに含まれる熱を、前記乾燥機、炭化炉または再燃炉のいずれか一つまたは複数の熱源として供する構成とを具えて成り、前記乾燥機として、加熱媒体から被処理物に間接的に熱を伝導する伝導伝熱式の装置が具えられていることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項6記載の汚泥の炭化処理装置は、前記請求項5記載の要件に加え、前記乾燥機は、機枠上に具えられた本体シェル内に多管式加熱管が具えられ、この多管式加熱管を、その内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル内に滞留させつつ前記多管式加熱管に接触させて被処理物の乾燥を行う装置であることを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項7記載の汚泥の炭化処理装置は、前記請求項5または6記載の要件に加え、前記炭化炉はロータリーキルン型または回転ドラム型の装置であり、前記再燃排ガスに含まれる熱によって昇温された乾燥排ガスを、前記炭化炉における被処理物の投入口側および/または排出口側に供給することができるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0013】
更にまた請求項8記載の汚泥の炭化処理装置は、前記請求項5、6または7記載の要件に加え、前記再燃排ガスに含まれる熱を、廃熱ボイラにおいて蒸気を生成する際の熱源として供するとともに、この蒸気を加熱媒体として乾燥機に供給することができるように構成されていることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の要件を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0014】
まず請求項1記載の発明によれば、伝導伝熱式の乾燥機から排気される乾燥排ガスの流量は、いわゆるロータリーキルン型または回転ドラム式の装置等のものよりも大幅に少なくなるため、再燃炉の負荷が低減することとなり、この結果、再燃炉の燃料消費量を大幅に低減することができる。
【0015】
また請求項2記載の発明によれば、外気とのシール個所がコンパクトに済む、多管式加熱管を具えて構成された乾燥機を採用することにより、リーク空気が抑制され、また汚泥から蒸発する水分を運ぶのに必要最低限のキャリヤガスを導入するだけで済むため、それにより乾燥排ガスの流量が、いわゆるロータリーキルン型または回転ドラム式の装置等のものよりも大幅に少なくなるため、この結果、炭化炉及び再燃炉で必要となる熱量を減ずることができる。
【0016】
更にまた請求項3記載の発明によれば、炭化炉内における投入口付近および/または排出口付近を高温状態とすることができるため、被処理物の炭化を効率的に調整しつつ、炭化を良好に促進することが可能となる。
【0017】
更にまた請求項4記載の発明によれば、再燃排ガスに含まれる熱を用いた蒸気の生成を高効率で行うことができる。
【0018】
また請求項5記載の発明によれば、伝導伝熱式の乾燥機から排気される乾燥排ガスの流量は、いわゆるロータリーキルン型または回転ドラム式の装置等のものよりも大幅に少なくなるため、再燃炉の負荷が低減することとなり、この結果、再燃炉の燃料消費量を大幅に低減することができる。
【0019】
更にまた請求項6記載の発明によれば、外気とのシール個所がコンパクトに済む、多管式加熱管を具えて構成された乾燥機を採用することにより、リーク空気が抑制され、また汚泥から蒸発する水分を運ぶのに必要最低限のキャリヤガスを導入するだけで済むため、それにより乾燥排ガスの流量が、いわゆるロータリーキルン型または回転ドラム式の装置等のものよりも大幅に少なくなるため、この結果、炭化炉及び再燃炉で必要となる熱量を減ずることができる。
【0020】
更にまた請求項7記載の発明によれば、炭化炉内における投入口付近および/または排出口付近を高温状態とすることができるため、被処理物の炭化を効率的に調整しつつ、炭化を良好に促進することが可能となる。
【0021】
更にまた請求項8記載の発明によれば、再燃排ガスに含まれる熱を用いた蒸気の生成を高効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の汚泥の炭化処理装置を示すブロック図である。
【図2】乾燥機を一部破断して示す側面図である。
【図3】既存の汚泥の炭化処理装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の「汚泥の炭化処理装置」(以下、炭化処理装置Sと呼ぶ。)を実施するための形態は以下の実施例に示すものを最良の形態の一つとするとするとともに、この技術思想に基づき改変される形態も含むものである。
以下、本発明の炭化処理装置Sについて説明した後、この装置の作動態様と併せて本発明の「汚泥の炭化処理方法」について説明する。
【実施例】
【0024】
図1中、符号Sで示すものが本発明の炭化処理装置であり、この装置は汚泥M0を一旦、乾燥処理して水分を減少させた乾燥物M1とし、続いて加熱することにより炭化物M2とするものである。
具体的には炭化処理装置Sは、乾燥機1と、炭化炉2と、再燃炉3とを主要機器として具えて成るものであり、前記炭化炉2から排気される炭化排ガスG2を、再燃炉3において燃焼処理することにより、有害物質が無害化された再燃排ガスG3として外部に排気することができるような構成が採られたものである。
また炭化処理装置Sは、前記再燃排ガスG3に含まれる熱を回収し、この熱を前記乾燥機1、炭化炉2または再燃炉3のいずれか一つまたは複数の熱源として供することができるように構成されている。
以下、炭化処理装置Sの構成要素について詳しく説明する。
【0025】
まず前記乾燥機1は、被処理物である汚泥M0と加熱媒体Aとが直接接することなく、加熱媒体Aから被処理物に間接的に熱を伝導する伝導伝熱式の装置であって、この実施例では一例として多管式加熱管11が具えられた装置が採用されるものとした。
具体的には図2に示すように、機枠F上に具えられた本体シェル10内に多管式加熱管11が具えられ、この多管式加熱管11を、その内部に加熱媒体A(加熱用蒸気)を流すとともに回転させ、前記本体シェル10内に被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル10内に滞留させつつ前記多管式加熱管11に接触させて被処理物の乾燥を行う装置である。
【0026】
前記本体シェル10は、一例として長楕円状の横断面を有する中空部材であり、投入口101、溢出口102、キャリヤガス口103、排気口104が形成される。
ここで前記投入口101は、本体シェル10上部の複数個所に形成されるものであり、まず図1中、左側上部に形成される排気口104付近に第一の投入口101aが形成される。また前記排気口104よりも中央寄りの部分に第二の投入口101bが形成され、更にこの第二の投入口101bと、図2中、右側上部に形成されるキャリヤガス口103との間に第三の投入口101cが形成される。なおこの実施例では投入口101を三カ所に形成するようにしたが、乾燥機1の仕様に応じて一カ所、 二カ所または四カ所以上に投入口101を形成するようにしてもよい。
【0027】
また前記本体シェル10及び多管式加熱管11は、水平な状態で機枠Fに設置されるか、または排気口104側が、キャリヤガス口103側よりもいくぶんか高くなるように傾斜して機枠Fに設置される。
更にまた前記本体シェル10は二重ジャケット構造とされ、投入口101a付近に形成される蒸気供給口105から、溢出口102の下方に形成されるドレン口106に至る蒸気の通過経路が形成されるものであり、本体シェル10内を昇温することができるような構成が採られている。なお、このような二重ジャケット構造に替えてトレース配管等を設置することもできる。
また前記溢出口102は、前記本体シェル10の高所側面に形成されるものであり、更に溢出口102を覆うようにシュート12が具えられ、このシュート12に形成される乾燥物排出口121にロータリーバルブ122が具えられる。
【0028】
次に前記多管式加熱管11は、複数のチューブを円筒状に配して成るチューブ束116の両側部に鏡板112を具えるとともに、この鏡板112の中心に軸体113を具えて成り、前記機枠Fに具えた軸受ブロック114によって軸体113を回転可能に支持して成るものである。なお多管式加熱管11を回転させるための駆動装置として機枠F上にモータ(図示省略)が具えられる。
そして前記軸体113の両端にはロータリージョイント115(115a、115b)が取り付けられ、チューブ束116と接続される。また軸体113と本体シェル10との間には、外気との遮断のためのシール機構13が設けられている。
なおチューブ束116の側周部には、複数のリフタ117及び適宜の角度を持たせた送り羽根118が取り付けられたアングル111が多数(この実施例では12本)具えられるものであり、これらによって被処理物(汚泥M0)は掻き上げられて前記チューブ束116の各チューブに接触するとともに投入口101側から溢出口102側に進むこととなる。
【0029】
また乾燥機1の運転時には、キャリヤガスがキャリヤガス口103より本体シェル10内に供給されるものであり、多管式加熱管11の加熱により被処理物としての汚泥M0から揮発する揮発成分は、前記キャリヤガスにより排気口104を経て本体シェル10外に運び去られることとなる。
なお乾燥機1としては、上述した多管式加熱管11が具えられた装置の他、加熱媒体Aから被処理物に間接的に熱を伝導する伝導伝熱式の装置であれば異なる構成のものを採用することができる。
【0030】
次に前記炭化炉2について説明すると、このものは前記乾燥機1から送られて来る乾燥物M1を炭化物M2とするためのであり、燃焼炉20から回転胴25に熱風を供給することにより、回転胴25内において被処理物の加熱処理を施すように構成された装置である。
前記燃焼炉20は適宜の耐火材で内張りされており、バーナ21によって燃料を燃焼させることにより、所望の温度の熱風を生成する装置である。
また前記回転胴25は一例として、四基の支持ローラ25a上に載置され、可変速モータによって回転駆動されるものであり、この回転胴25の両端は適宜蓋部材によって境界部がシールされた状態で塞がれている。また回転胴25にはリフタが具えられており、このリフタにより被処理物が掻き上げられる。
そして回転胴25の両端を塞ぐ蓋体には、投入口22及び給気口23並びに給気口24、排気口28及び排出口29が形成されている。
【0031】
次に前記再燃炉3について説明すると、このものは前記炭化炉2から送られて来る炭化排ガスG2を再燃排ガスG3とするための装置であり、燃焼胴30内にバーナ31から熱風を供給することにより、燃焼胴30内において炭化排ガスG2を燃焼させることができるように構成された装置である。なお前記燃焼胴30には、給気口32及び排気口33が形成されている。
【0032】
そしてこれら乾燥機1、炭化炉2及び再燃炉3は図1に示すように周辺機器を介在させて接続されることにより、炭化処理装置Sが構成されるものであり、この構成について、初めに乾燥機1から排気される乾燥排ガスG1の流れに沿って説明する。
具体的には乾燥機1の排気口104に、バグフィルタ、サイクロン等が適用された集塵機4が接続され、更にこの集塵機4にコンデンサ5が接続されるものであり、前記排気口104から排気される乾燥排ガスG1中のダスト並びに過剰な水分を除去することが可能となっている。
なお前記コンデンサ5は、筐体50の外周部に巻回された冷却管51にクーリングタワー52から冷媒を供給することによって筐体内の乾燥排ガスG1を冷却し、蒸気成分を凝縮させる装置である。
【0033】
そして前記コンデンサ5の排気部は熱交換器6における給気口61に接続されるとともに、排気口62は炭化炉2における給気口23及び給気口24に接続される。
なおこの実施例では熱交換器6として二種類の気体を独立して昇温することができる装置が採用されるものとした。具体的には筐体60に対して給気口61及び排気口62が形成されるとともに、これら給気口61及び排気口62は伝熱管63によって接続されている。更に筐体60に対しては給気口64及び排気口65が形成されるとともに、これら給気口64及び排気口65は伝熱管66によって接続されている。そして筐体60には導入口67及び排出口68が形成されるものであり、導入口67から筐体60内に導入された加熱気体(この実施例では再燃ガスG3)と、前記伝熱管63及び伝熱管66内に位置する被加熱気体との間で熱交換が行われるものである。
【0034】
そして炭化炉2の排気口28は、再燃炉3における給気口32に接続されており、炭化排ガスG2が再燃炉3に供給されるように構成されている。また再燃炉3における排気口33は熱交換器6における導入口67に接続されており、再燃排ガスG3が熱交換器6に供給されるように構成されている。
更に熱交換器6の排出口68は、廃熱ボイラ7における給気口71に接続され、更に排気口72がバグフィルタ、サイクロン等が適用された集塵機8に接続されている。
なお前記熱交換器6における給気口64には外気が供給され、伝熱管66を通過することにより昇温された気体が、前記炭化炉2における給気口23、給気口24に供給されるように構成されている。
【0035】
ここで前記廃熱ボイラ7は、いわゆる水管式、煙管式いずれのタイプのものも採用することができるが、この実施例では水管式のものを採用した。具体的には筐体70に給気口71及び排気口72が形成されて筐体70内に高温の気体が供給されるように構成されており、更に筐体70内に水管73が具えられるものであり、給水口74から水管73内に供給された水が、水管73の外周部に接する高熱の気体(再燃排ガスG3)によって昇温され、蒸気となって排気口75から排出されるように構成されたものである。
そして以上述べた構成が採られることにより、乾燥機1から排気された乾燥排ガスG1は、炭化炉2において炭化排ガスG2となり、次いで再燃炉3に至り、ここで燃焼処理されることにより、有害物質が無害化された再燃排ガスG3となり、次いで温度が低下させられるとともにダストが除去された状態で外部に排気されることとなるものである。
【0036】
次に乾燥機1に対して加熱媒体Aとしての蒸気を供給するための構成について説明する。具体的には、乾燥機1におけるロータリージョイント115bから排出される凝縮水をドレン回収ユニット9に回収した後、前記廃熱ボイラ7によって加熱することにより蒸気を生成するものであり、この蒸気を加熱媒体Aとしてロータリージョイント115aに供給するものである。なお前記ドレン回収ユニット9には外部から水を供給することも可能である。
またこの実施例では、廃熱ボイラ7における排気口75と乾燥機1におけるロータリージョイント115aとを結ぶ管路を分岐するものであり、まず熱交換器6Bにおける伝熱管6bに接続するとともに、伝熱管6bの他端を前記ドレン回収ユニット9に接続するようにした。そして前記熱交換器6Bに供給された外気が、伝熱管6bを通じて蒸気との間で熱交換が行われて昇温された状態で、キャリヤガス口103に供給されるものとした。
また排気口75とロータリージョイント115aとを結ぶ管路を更に分岐して、蒸気供給口105に接続する。
【0037】
更にまたこの実施例では、補助ヒータ7Bとしてボイラが具えられるものであり、前記ドレン回収ユニット9から供給される水を加熱して蒸気を生成し、この蒸気を前記ロータリージョイント115a、熱交換器6B及び蒸気供給口105に供給することができるようにした。
また、これらロータリージョイント115a、熱交換器6B及び蒸気供給口105と、排気口75及び補助ヒータ7Bとを結ぶ管路は分岐されるとともに、炭化炉2に接続されるものであり、この分岐路にはバルブが具えられている。
なお補助ヒータ7Bは主として、炭化処理装置Sの起動時等に用いられるものであり、定常運転時には主として廃熱ボイラ7が用いられる。
【0038】
本発明の「汚泥の炭化処理装置」は、一例として上述したように構成されるものであり、以下、この装置の作動状態を説明するとともに、本発明の「汚泥の炭化処理方法」について説明する。
【0039】
(1)〔起動時の加熱媒体の生成〕
初めに補助ヒータ7Bに水を供給して加熱蒸気を生成するものであり、一例として158℃(0.5MPaG)の飽和水蒸気である加熱媒体Aが生成される。また、この加熱媒体Aを熱交換器6Bに供給して外気を加熱して高温の空気とするものであり、これをキャリヤガス口103に供給して、汚泥M0から蒸発する水分を運ぶためのキャリヤガスとして供する。
【0040】
(2)〔乾燥物の生成〕
次いで前記加熱媒体Aを、乾燥機1におけるロータリージョイント115aに供給するとともに、適宜脱水処理の施された汚泥M0(一例として70〜85%W. B. )を投入口101a、101b、101cを通じて本体シェル10内に投入する。
またキャリヤガス口103から本体シェル10内に前記キャリヤガスが導入される。
そして汚泥M0を本体シェル10内に滞留させつつ多管式加熱管11に接触させることにより、汚泥M0中の水分が蒸発して乾燥が行われるものであり、この際、加熱媒体Aから汚泥M0に間接的に熱が伝導されるものである。
やがて汚泥M0は水分の蒸発が進行し、乾燥物M1(一例として10〜30%W. B. )となって乾燥物排出口121から排出され、炭化炉2における投入口22から回転胴25内に供給される。
【0041】
(3)〔乾燥排ガスの流れ〕
一方、汚泥M0から蒸発した水分は前記キャリヤガスにより運ばれて、排気口104から排気される乾燥排ガスG1(一例として100℃)となり、集塵機4においてダストが除去されるとともに、コンデンサ5において適宜の湿度に調節された後、熱交換器6における給気口61に供給される。
熱交換器6において乾燥排ガスG1は、伝熱管63を通過する際に、再燃排ガスG3(一例として800℃)との間で熱交換が行われて昇温された状態(一例として500℃)で炭化炉2における給気口23、給気口24に供給される。なお前記再燃排ガスG3については後程詳しく説明する。
また熱交換器6における給気口64に外気が(一例として20℃)が供給されるものであり、この外気は伝熱管66を通過する際に、再燃排ガスG3(一例として800℃)との間で熱交換が行われて昇温された状態(一例として500℃)で、炭化炉2における給気口23及び給気口24並びに再燃炉3における給気口32に供給される。
【0042】
(4)〔炭化物の生成〕
そして炭化炉2においては、回転胴25内において乾燥物M1が、回転胴25の回転にともないリフタにより掻き上げられて落下し、分散状態とされるとともに、熱交換器6において一例として500℃に昇温された乾燥排ガスG1並びに燃焼炉20から供給される熱風と接することとなり、やがて炭化物M2となって排出口29から排出される。
このように炭化炉2において、再燃排ガスG3に含まれる熱が熱源として供されるものである。
また炭化炉2における投入口22側と、排出口29側との双方に乾燥排ガスG1が供給されるため、炭化炉2内における投入口22付近および/または排出口29付近を高温状態とすることができ、汚泥M0または乾燥物M1の性状が変動しても、被処理物の炭化を効率的に調整でき、炭化を良好に促進することが可能となる。
【0043】
(5)〔炭化排ガスの流れと再燃排ガスの生成〕
一方、排気口28から排気された炭化排ガスG2(一例として700℃)は、再燃炉3における給気口32に供給される。
そして再燃炉3においては、炭化排ガスG2が、熱交換器6において一例として500℃に昇温された外気並びにバーナ31から供給される熱風と接して燃焼することとなり、有害物質が無害化された再燃排ガスG3(一例として800℃)となって排気口33から排出される。
このように再燃炉3において、再燃排ガスG3に含まれる熱が熱源として供されるものである。
【0044】
(6)〔再燃排ガスの流れ〕
次いで再燃排ガスG3は、前述したように熱交換器6において乾燥排ガスG1及び外気を昇温して温度が低下した後(一例として550℃)、廃熱ボイラ7における給気口71に供給される。
そして廃熱ボイラ7において、再燃排ガスG3と水管73内を通過する水との間で熱交換が行われるものであり、再燃排ガスG3は温度が低下した状態で排気口72からか排出される(一例として350℃)。
更にこの状態の再燃排ガスG3に対して外気(一例として20℃)が混入されることにより、再燃排ガスG3は一例として200℃にまで温度が低下するものであり、集塵機8においてダスト等を除去された後、外部に排気される。
【0045】
(7)〔再燃排ガスに含まれる熱を利用した加熱媒体の生成と乾燥物の生成〕
炭化処理装置Sは、上述した一連の動作が行われることにより定常運転に移行するものであり、ここで定常運転に移行した状態での加熱媒体Aの生成について説明する。
すなわち起動直後においては、補助ヒータ7Bに水を供給して加熱蒸気を生成し、一例として158℃の加熱媒体Aを生成したが、定常運転時には再燃排ガスG3に含まれる熱を廃熱ボイラ7で回収し、これにより加熱用の飽和水蒸気すなわち加熱媒体Aを生成するものである。
具体的には、前記廃熱ボイラ7において高効率で加熱蒸気が生成されるものであり、一例として158℃の加熱媒体Aが生成される。
そして前記加熱媒体Aが乾燥機1に供給されるものであり、乾燥機1において、再燃排ガスG3に含まれる熱が熱源として供されるものである。
【0046】
本発明の炭化処理方法並びにその装置は、一例として以上述べたように実施されるものであり、伝導伝熱式の乾燥機1から排気される乾燥排ガスG1の流量は、図3に示したいわゆるロータリーキルン型または回転ドラム型の乾燥機1′のものよりも大幅に少ないため、再燃炉3の負荷が低減されることとなり、この結果、再燃炉3を含めた炭化処理装置Sの燃料消費量を大幅に低減することができるものである。
特に多管式加熱管11が具えられた乾燥機1が採用される場合には、図2に示すように回転体である多管式加熱管11における本体シェル10の貫通部位は軸体113のみであり、この部分は、例えばグランドパッキン等によりシールされるコンパクトで気密性の高いシール機構13によって構成することができるため、大気圧よりも負圧に維持される本体シェル10内に侵入する外気のリーク空気が大幅に抑制され、またキャリヤガス口103に供給されるキャリヤガスは、汚泥M0から蒸発する水分を運ぶのに必要な最低限のガス量、すなわち熱交換器6Bで加熱される外気量で乾燥が行われることとなる。このため、乾燥排ガスG1の流量が、いわゆるロータリーキルン型または回転ドラム式の装置等のものよりも大幅に少なくなるため、この結果、炭化炉2及び再燃炉3で必要となる熱量を減ずることができる。
図1に示した本発明の炭化処理装置S並びに図3に示した炭化処理装置S′を用いて、同条件の汚泥M0を炭化処理する場合の、燃料消費量、燃料コストを下表1に示すものであり、約21%の削減を実現できることが試算されている。
【0047】
【表1】

【符号の説明】
【0048】
1 (横型連続伝導伝熱式)乾燥機
10 本体シェル
101 投入口
101a 投入口
101b 投入口
101c 投入口
102 溢出口
103 キャリヤガス口
104 排気口
105 蒸気供給口
106 ドレン口
11 多管式加熱管
111 アングル
112 鏡板
113 軸体
114 軸受ブロック
115 ロータリージョイント
115a ロータリージョイント
115b ロータリージョイント
116 チューブ束
117 リフタ
118 送り羽根
12 シュート
121 乾燥物排出口
122 ロータリーバルブ
13 シール機構
2 炭化炉
20 燃焼炉
21 バーナ
22 投入口
23 給気口
24 給気口
25 回転胴
25a 支持ローラ
28 排気口
29 排出口
3 再燃炉
30 燃焼胴
31 バーナ
32 給気口
33 排気口
4 集塵機(サイクロン、バグフィルタ)
5 コンデンサ
50 筐体
51 冷却管
52 クーリングタワー
6 熱交換器
60 筐体
61 給気口
62 排気口
63 伝熱管
64 給気口
65 排気口
66 伝熱管
67 導入口
68 排出口
6B 熱交換器(エアヒータ)
6b 伝熱管
7 廃熱ボイラ
70 筐体
71 給気口
72 排気口
73 水管
74 給水口
75 排気口
7B 補助ヒータ(ボイラ)
8 集塵機
9 ドレン回収ユニット
A 加熱媒体
F 機枠
G1 乾燥排ガス
G2 炭化排ガス
G3 再燃排ガス
M0 汚泥
M1 乾燥物
M2 炭化物
S 炭化処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を乾燥機を用いて乾燥した後、更に炭化炉を用いて炭化物とする方法において、前記炭化炉から排気される炭化排ガスを、再燃炉において燃焼処理することにより、有害物質を無害化処理した再燃排ガスとして外部に排気するものであり、前記再燃排ガスに含まれる熱を、前記乾燥機、炭化炉または再燃炉のいずれか一つまたは複数の熱源として供するものであり、前記乾燥機として、加熱媒体から被処理物に間接的に熱を伝導する伝導伝熱式の装置を用いることを特徴とする汚泥の炭化処理方法。
【請求項2】
前記乾燥機として、機枠上に具えられた本体シェル内に多管式加熱管が具えられ、この多管式加熱管を、その内部に加熱媒体としての蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル内に滞留させつつ前記多管式加熱管に接触させて被処理物の乾燥を行う装置を用いることを特徴とする請求項1記載の汚泥の炭化処理方法。
【請求項3】
前記炭化炉はロータリーキルン型または回転ドラム型の装置であり、前記再燃排ガスに含まれる熱によって昇温された乾燥排ガスを、前記炭化炉における被処理物の投入口側および/または排出口側に供給することを特徴とする請求項1または2記載の汚泥の炭化処理方法。
【請求項4】
前記再燃排ガスに含まれる熱を、廃熱ボイラにおいて蒸気を生成する際の熱源として供するものであり、この蒸気を前記乾燥機に供給される加熱媒体として用いることを特徴とする請求項1、2または3記載の汚泥の炭化処理方法。
【請求項5】
被処理物を乾燥機を用いて乾燥した後、更に炭化炉を用いて炭化物とする装置において、前記炭化炉から排気される炭化排ガスを、再燃炉において燃焼処理することにより、有害物質を無害化処理した再燃排ガスとして外部に排気する構成と、前記再燃排ガスに含まれる熱を、前記乾燥機、炭化炉または再燃炉のいずれか一つまたは複数の熱源として供する構成とを具えて成り、前記乾燥機として、加熱媒体から被処理物に間接的に熱を伝導する伝導伝熱式の装置が具えられていることを特徴とする汚泥の炭化処理装置。
【請求項6】
前記乾燥機は、機枠上に具えられた本体シェル内に多管式加熱管が具えられ、この多管式加熱管を、その内部に加熱用蒸気を流すとともに回転させ、前記本体シェル内に被処理物を投入し、この被処理物を本体シェル内に滞留させつつ前記多管式加熱管に接触させて被処理物の乾燥を行う装置であることを特徴とする請求項5記載の汚泥の炭化処理装置。
【請求項7】
前記炭化炉はロータリーキルン型または回転ドラム型の装置であり、前記再燃排ガスに含まれる熱によって昇温された乾燥排ガスを、前記炭化炉における被処理物の投入口側および/または排出口側に供給することができるように構成されていることを特徴とする請求項5または6記載の汚泥の炭化処理装置。
【請求項8】
前記再燃排ガスに含まれる熱を、廃熱ボイラにおいて蒸気を生成する際の熱源として供するとともに、この蒸気を加熱媒体として乾燥機に供給することができるように構成されていることを特徴とする請求項5、6または7記載の汚泥の炭化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−239979(P2012−239979A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112503(P2011−112503)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【Fターム(参考)】