説明

汚泥脱水剤及び汚泥脱水処理方法

【課題】
圧入式スクリュープレス型脱水機を用いて汚泥脱水処理に対し、脱水初期での水切れが良く、圧搾による脱水の際に凝集フロックに働く剪断力に対して、優れた耐性を有する強い凝集フロックを形成することができる汚泥脱水剤、及び該汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水処理方法を提供する。
【解決手段】
架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)、非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)、及びアミジン系ポリマー(C)からなる混合物であって、該混合物の全質量に対し、該架橋型カチオン性ポリマー(A)を10〜40質量%、該非架橋型カチオン性ポリマー(B)を20〜60質量%、該アミジン系ポリマー(C)を10〜40質量%含有することを特徴とする汚泥脱水剤、及び該汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥脱水剤及び圧入式スクリュープレス型脱水機を用いて難脱水性の汚泥の脱水処理を行う場合の汚泥脱水処理方法に関するものであり、詳しくは架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)と非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)とアミジン系ポリマー(C)との混合物からなる汚泥脱水剤、この汚泥脱水剤を汚泥に添加混合し、脱水機により脱水する汚泥の脱水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型の圧入式スクリュープレス型脱水機は、消費電力が少なくコンパクトで場所を要しないことから、中小規模の下水処理場で採用されつつある。圧入式スクリュープレス型脱水機では汚泥の脱水が外筒全面のパンチングメタルで行われるため、脱水ケーキの含水率が下がりやすく、下水消化汚泥のような難脱水性の汚泥に対しても効果を発揮するという特徴を有する。そのため、圧入式スクリュープレス型脱水機は、遠心型脱水機、ベルトプレス型脱水機などの時代から、次世代に向けた脱水機として注目されている。
【0003】
圧入式スクリュープレス型脱水機により汚泥を脱水する場合、内部のスクリューにより凝集フロックが圧搾され脱水が行われる。このとき、単位時間の汚泥処理量を向上させるためには、使用される脱水剤に対し脱水初期の濾過行程において濾水性が良好となる、水切れの良い凝集性能が要求される。公知技術では、架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)と、非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)と、アミジン系ポリマー(C)とを、それぞれ単独の1剤として、あるいはこれらの2剤を組み合わせ混合し添加することで、水切れの良い凝集フロックが形成されることを開示している(特許文献1〜6)。しかし、圧入式スクリュープレス型脱水機では、圧搾の際に凝集フロックに強い剪断力が働くため、その剪断力に対して優れた耐性を有する凝集フロックを形成することが汚泥脱水剤に求められるが、公知技術では必ずしも十分な性能を満たしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80256号公報
【特許文献2】特開2004−25095号公報
【特許文献3】特開2009−39650号公報
【特許文献4】特開2009−39652号公報
【特許文献5】特開2009−39651号公報
【特許文献6】特開2009−39653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧入式スクリュープレス型脱水機を用いて汚泥脱水処理を行う際に用いられる汚泥脱水剤には、脱水初期での水切れが良く、圧搾による脱水の際に凝集フロックに働く剪断力に対して、優れた耐性を有する強い凝集フロックを形成するような凝集性能が要求される。しかし、下水消化汚泥のような繊維分の低い難脱水性の汚泥においては、上記のような強い凝集フロックを形成することは容易ではなく、より高性能な汚泥脱水剤が待ち望まれていた。架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)及びアミジン系ポリマー(C)によれば、強い凝集フロックが形成されるものの、圧入式スクリュープレス型脱水機の圧搾に対して十分な耐性を持たせることは難しい。そこで、難脱水性の汚泥に対してもより優れた耐性の凝集フロックの形成し得る汚泥脱水剤について検討した結果、上記の架橋型カチオン性ポリマー(A)及びアミジン系ポリマー(C)の2剤に加えて、所定量の非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)を併用して汚泥に添加することで、より優れた耐性を持つ強い凝集フロックを形成することができることを見出した。
【0006】
本発明は、かかる知見に基づくものであり、架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)、非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)、及びアミジン系ポリマー(C)からなる混合物を汚泥に添加混合し、脱水処理を行う際に、水切れが良好で、圧搾による脱水の際に働く剪断力に対して十分な耐性を有する強い凝集フロックを形成するような汚泥脱水剤及びこれを用いた汚泥の脱水処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)、非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)、及びアミジン系ポリマー(C)からなる混合物であって、該混合物の全質量に対し、該架橋型カチオン性ポリマー(A)を10〜40質量%、該非架橋型カチオン性ポリマー(B)を20〜60質量%、該アミジン系ポリマー(C)を10〜40質量%含有することを特徴とする汚泥脱水剤及び該脱水剤を用いた汚泥脱水処理方法に存する。
【0008】
本発明の好適な態様の汚泥脱水剤として、前記非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)は、カチオン性構成単位として、下記一般式(1)で表される構成単位を30〜90モル%、非イオン性構成単位として、(メタ)アクリルアミドモノマー構成単位を70〜10モル%含むコポリマーであり、且つ、該カチオン性構成単位は少なくともジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級塩モノマー構成単位を全構成単位中30〜90モル%、並びにジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級塩モノマー構成単位を全構成単位中0〜20モル%含有する汚泥脱水剤が挙げられ、また、前記架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)は粉末状であり、その60質量%以上の粒径が0.1〜2mmである汚泥脱水剤も好適である。
【0009】
【化1】


(式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、R3は、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、R4は、炭素数が1〜4のアルキル基又はベンジル基であり、Xは、酸素原子又はNHであり、Y-は、Cl-、Br-、又は1/2SO42-であり、nは1〜3の整数である。)
【0010】
本発明の好適な汚泥脱水処理方法は、前記の本発明汚泥脱水剤を繊維分が1〜15質量%/TSの難脱水性汚泥に添加混合し、脱水機を用いて脱水する方法であり、また、本発明の汚泥脱水処理方法は、前記脱水機が圧入式スクリュープレス型脱水機であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の汚泥脱水剤は、難脱水性汚泥に添加混合することで、脱水初期での水切りが良好で、圧搾脱水の際のせん断力に対する耐性が強い凝集フロックを形成させることができ、これにより汚泥の脱水処理を効率良く行うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
<汚泥脱水剤>
本発明の汚泥脱水剤(以下、「本汚泥脱水剤」ということもある)は、架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)(以下、「架橋型カチオン性ポリマー(A)」という)と、非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)(以下、「非架橋型カチオン性ポリマー(B)」という)と、アミジン系ポリマー(C)の混合物からなる汚泥脱水剤であり、該混合物の全質量に対し、前記架橋型カチオン性ポリマー(A)を10〜40質量%、前記非架橋型カチオン性ポリマー(B)を20〜60質量%、前記アミジン系ポリマー(C)を10〜40質量%含む(各ポリマーの質量の合計(A)+(B)+(C)が汚泥脱水剤の全質量に対して100質量%となる)ことを特徴とする。
【0013】
架橋型カチオン性ポリマー(A)は、カチオン性モノマーであるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのアルキルクロライド4級塩、若しくはジメチル硫酸3級塩に由来するカチオン性構成単位、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリアミドのアルキルクロライド4級塩若しくはジメチル硫酸3級塩に由来するカチオン性構成単位を有するものであり、アミジン構成単位を含まない。
前記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートは、特に制限はなく、各々のアルキル基の炭素数が1〜3のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。各々のアルキル基の炭素数が1〜3のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、エチルプロピルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、メチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、エチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
前記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドは、特に制限はなく、各々のアルキル基の炭素数が1〜3のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましい。各々のアルキル基の炭素数が1〜3のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルエチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルプロピルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、エチルプロピルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、メチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、エチルプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、エチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0015】
モノマーは、カチオン性モノマー1種を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。またカチオン性モノマーの他に非イオン性モノマーを併用しても良い。非イオン性モノマーとしてはアクリルアミドが挙げられる。架橋型カチオン性ポリマー(A)におけるカチオン性構成単位の含有量は30〜90モル%が好ましく、60〜80モル%がより好ましい。含有量が30〜90モル%であれば、汚泥脱水剤の添加量を削減できる。
【0016】
架橋型カチオン性ポリマー(A)の製造方法は、特に制限されず、通常の公知の方法が採用される。例えば、上記のモノマーを水に溶解させたモノマー水溶液を均一なシート状にし、光開始剤を用いて可視光又は紫外光を照射して共重合させる水溶液光重合方法により得られる。生成ポリマーは、通常、含水ゲル状のポリマー、すなわち、架橋型カチオン性ポリマー(A)の含水物として得られる。得られた含水ゲル状ポリマーは、通常、ミートチョッパー等で解砕し、乾燥した後、要すれば更に粉砕し、所定の目開きの篩板等の濾過部材を通過させることにより、微細化される。
【0017】
架橋型カチオン性ポリマー(A)を得る方法、特に架橋させる方法としては、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
(a)重合性モノマーの重合により得た水溶性ポリマーを、加熱などにより後架橋(自己架橋)させる方法
(b)重合性モノマーと共に多官能基を有する架橋性モノマーを用いて重合し、重合時に架橋させる方法
重合時に架橋する方法としては、主成分としてのエチレン性不飽和結合を有する重合性モノマーと一緒に多官能性のモノマー(架橋性モノマー)を用いる方法が一般的である。架橋性モノマーはエチレン性不飽和結合を2以上有するモノマーであれば特に制限はなく、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルアミン等が挙げられる。
【0018】
以上説明した(a)及び(b)の方法等を用いて架橋されたポリマーを得ることができるが、この架橋型ポリマーを高分子凝集剤とした場合、これらの架橋の度合いが小さすぎれば架橋型としての高分子凝集剤の性質が得られず、大きすぎれば水に対する膨潤度が小さくなるため、高分子凝集剤としての機能が弱くなる。本発明の架橋型カチオン性ポリマー(A)を得るためには、方法(b)を用いることがポリマーの架橋度を制御するために好ましい。通常、架橋剤又は架橋性モノマーの添加量としては、ポリマー又は原料全モノマーに対して1〜5000ppmが好ましく、3〜1000ppmがより好ましい。
【0019】
前記架橋型カチオン性ポリマー(A)の好ましい形態は粉末状であり、その60質量%以上の粒径が0.1〜2mmであるのが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。粒径が0.1〜2mmであれば、汚泥脱水剤を水に容易に分散させることができる。形態を粉末状にすることは、製造上比較的容易であるだけでなく、3種類のポリマー((A)、(B)、(C))を粉末の状態で容易に混合することができる。
所望の粒径の粉末状ポリマーは、重合後の含水ゲルポリマーを解砕し、乾燥した後、更に粉砕して得た粉末状のポリマーを、所定の目開き(メッシュ)の篩等で篩分けすることにより取得することができる。
【0020】
本発明における非架橋型カチオン性ポリマー(B)は、カチオン性構成単位として、基本的には前記一般式(1)で表される構成単位を含有するポリマーであり、例えばカチオン性モノマーであるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのアルキルクロライド4級塩若しくはジメチル硫酸3級塩に由来するカチオン性構成単位、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリアミドのアルキルクロライド4級塩若しくはジメチル硫酸3級塩に由来するカチオン性構成単位を含有する。
カチオン性モノマーとしては、特に制限されず前記架橋型カチオン性ポリマー(A)におけるモノマーとして具体的に例示したジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、及びジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドが使用されるが、前記ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートのアルキルクロライド4級塩若しくはジメチル硫酸3級塩の方が好ましく、中でも特にジメチルアミノメチル(メタ)アクリレートのアルキルクロライド4級塩若しくはジメチル硫酸3級塩の方がより好ましい。モノマーは、カチオン性モノマー1種を単独で用いても良く、2種類以上を併用しても良い。
【0021】
非架橋型カチオン性ポリマー(B)におけるカチオン性構成単位の含有量は30〜90モル%が好ましく、70〜85モル%がより好ましい。また、該カチオン性構成単位は少なくともジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級塩モノマー構成単位を全構成単位中30〜90モル%、並びにジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級塩モノマー構成単位を全構成単位中0〜20モル%含有することが好ましく、このような構成単位を含有する非架橋型カチオン性ポリマー(B)は、圧搾による脱水の際に働くせん断力に対して十分な耐性を有する強い凝集フロックを形成し得る。
更に、非架橋型カチオン性ポリマー(B)は、上記カチオン性モノマーの他に非イオン性モノマーを併用しても良い。非イオン性モノマーとしてはアクリルアミドが挙げられる。非架橋型カチオン性ポリマー(B)における非イオン性構成単位の含有量は70〜10モル%が好ましく、30〜10モル%がより好ましい。
【0022】
非架橋型カチオン性ポリマー(B)の製造方法は特に制限されず、架橋型カチオン性ポリマー(A)と同様に上記のモノマーを水に溶解させたモノマー水溶液を均一なシート状にし、光開始剤を用いて可視光又は紫外光を照射して共重合させる水溶液光重合方法により製造される。生成ポリマーは、通常、含水ゲル状のポリマー、すなわち、非架橋型カチオン性ポリマー(B)の含水物が得られる。得られた非架橋型カチオン性ポリマー(B)の形態は、粉末状が好ましい。得られた含水ゲル状ポリマーは、通常、ミートチョッパー等で解砕し、乾燥した後、要すれば更に粉砕し、所定の目開きの篩等の濾過部材を通過させることにより、微細化される。ただし、これらポリマーの形態は粉末状に限定されず、エマルジョンであっても良い。
【0023】
本発明におけるアミジン系ポリマー(C)は、下記一般式(2)で表されるアミジン構成単位及び/又は下記一般式(3)で表されるアミジン構成単位を含有する。その含有量は30〜90モル%が好ましく、40〜80モル%がより好ましい。含有量が30〜90モル%であれば、水切れの良好な凝集フロックが形成される。
【0024】
【化2】

【化3】

(ただし、式(2)、(3)中、R5、R6はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、X-は陰イオンである。)
-としては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオンが挙げられる。中でも塩化物イオンが好ましい。
【0025】
アミジン系ポリマー(C)の製造方法としては、特に制限はされないが、1級アミノ基又は変換反応により1級アミノ基が生成し得る置換アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマーと、アクリロニトリル又はメタアクリロニトリル等のニトリル類とのコポリマーを製造し、酸加水分解後、該コポリマー中のシアノ基と1級アミノ基を反応させてアミジン化する方法により得られる。
【0026】
1級アミノ基又は変換反応により1級アミノ基が生成し得る置換アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、一般式CH2=CR7−NHCOR8(式中、R7は水素原子又はメチル基を、R8は炭素数1〜4のアルキル基又は水素原子である。)で表わされる化合物が好ましい。コポリマー中において、かかる化合物に由来する置換アミノ基は、加水分解あるいは加アルコール分解により容易に1級アミノ基に変換される。更にこの1級アミノ基は、隣接したシアノ基と反応してアミジン化する。該化合物としては、N−ビニルホルムアミド(R7=H、R8=H)、N−ビニルアセトアミド(R7=H、R8=CH3)等が挙げられる。
前記エチレン性不飽和モノマーとニトリル類との使用割合は、モル比で通常、20:80〜80:20、好ましくは40:60〜60:40である。
また、アミジン系ポリマー(C)としては、入手し易い市販品から選択使用しても良い。
【0027】
本発明に用いられるアミジン系ポリマー(C)は、最も典型的には、上記で説明したところに従い、N−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルとを共重合させ、生成したコポリマーを、通常、水懸濁液として塩酸の存在下、加熱して置換アミノ基と隣接するシアノ基からアミジン構成単位を形成させることにより製造されるのが好ましい。そして、共重合に供するN−ビニルホルムアミドとアクリロニトリルとのモル比、及びコポリマーのアミジン化条件を選択することにより、各種の組成を持つアミジン系ポリマー(C)が得られる。
【0028】
本発明の汚泥脱水剤は、上記架橋型カチオン性ポリマー(A)、非架橋型カチオン性ポリマー(B)、及びアミジン系ポリマー(C)の各ポリマーの混合物からなるが、脱水初期での水切れが良好で、圧搾による脱水に耐えられるような強い凝集フロックを形成し得るために、該(A)〜(C)の各ポリマーを、所定の混合比で含有させることが必要である。即ち、混合比は、(A)〜(C)各ポリマーの質量の合計である全質量に対し、架橋型カチオン性ポリマー(A)10〜40質量%、非架橋型カチオン性ポリマー(B)20〜60質量%、アミジン系ポリマー(C)10〜40質量%である。また、前記各ポリマーの混合比は、架橋型カチオン性ポリマー(A)20〜35質量%、非架橋型カチオン性ポリマー(B)30〜45質量%、アミジン系ポリマー(C)20〜35質量%であることがより好ましい。このような混合比である、架橋型カチオン性ポリマー(A)20〜35質量%、非架橋型カチオン性ポリマー(B)30〜45質量%、アミジン系ポリマー(C)20〜35質量%の場合には、脱水初期での水切れが良く、圧搾時の剪断力に対して優れた耐性を有する凝集フロックを形成し得るのでより効率的である。
【0029】
本発明の汚泥脱水剤による脱水初期での良好な水切れ、強度が高い凝集フロックの形成は、上記ポリマー(A)〜ポリマー(C)のいずれのポリマーが欠けても達せられず、また、ポリマー(A)〜ポリマー(C)の各ポリマーのいずれかのポリマーが所定の混合比を外れた場合も生成したフロックが小さくてその強度が弱く、濾過性能も低く脱水ケーキの含水率が高くなる。
本発明の汚泥脱水剤は、各ポリマーを混合した1剤型薬剤として使用することが好ましい。
また、本発明の汚泥脱水剤に使用するポリマー(A)とポリマー(B)としては、ポリマー(B)において所定割合で含有する一般式(1)で表される構成単位が、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級塩モノマー構成単位を全構成単位中30〜90モル%、ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級塩モノマー構成単位を全構成単位中0〜20モル%含有するものと、ポリマー(A)として、ポリマー(B)を構成するモノマーと同種のモノマーを用い、架橋剤の存在下に共重合して得られたポリマーを組合せて使用するのがフロックの強度、脱水ケーキの含水率の点で有利である。
【0030】
本発明の汚泥脱水剤によれば、下水消化汚泥のような難脱水性の汚泥において、長期間安定して十分な粒径と強度を持つ凝集フロックを形成させることができる。さらにその後、含水率が十分に低い脱水ケーキを得ることができる。
【0031】
<汚泥脱水処理方法>
本発明の汚泥脱水処理方法(以下、「本汚泥脱水処理方法」という)は、前述した本発明の汚泥脱水剤を用いて汚泥脱水処理を行う方法である。本汚泥脱水処理方法が対象とする汚泥としては、JIS規格に記載された分析方法を用いて測定された汚泥の繊維分が1〜15質量%/TSであると効果が得られ、5〜10質量%であるとより大きな効果が得られる。具体的には下水消化汚泥、余剰汚泥、畜産汚泥、及び腐敗が進行した混合生汚泥のような難脱水性の汚泥が好適である。本汚泥脱水剤を前記汚泥に加えることで、脱水初期の水切れが良く、圧搾による脱水の際に凝集フロックに働く剪断力に対して、優れた耐性を有する強い凝集フロックを形成することができる。
【0032】
本汚泥脱水剤の汚泥への添加方法及び凝集フロックの形成方法としては、本汚泥脱水剤を用いる以外は公知の方法が適用できる。すなわち、本汚泥脱水剤を公知の方法で汚泥に添加することで凝集フロックを形成させることができる。
本汚泥脱水剤の添加方法としては、本汚泥脱水剤を水に0.2〜0.3質量%の濃度で溶解させた後、汚泥に添加することが好ましい。また、本汚泥脱水剤は、架橋型カチオン性ポリマー(A)、非架橋カチオン性ポリマー(B)、及びアミジン系ポリマー(C)を混合した1剤型薬剤として添加することが好ましい。場合によっては、本汚泥脱水剤を粉末状のまま汚泥に添加しても良い。
また、本汚泥脱水剤に加えて、本汚泥脱水剤の水への溶解性を向上させるために酸性物質を添加しても良い。酸性物質としては、例えば、スルファミン酸が挙げられる。
【0033】
凝集を形成した後は、脱水装置を用いて凝集フロックを脱水し、脱水ケーキを得ることにより汚泥脱水処理を完了することができる。
脱水機としては、例えば、フィルタープレス型脱水機、スクリュープレス型脱水機、圧入式スクリュープレス型脱水機、真空型脱水機、ベルトプレス型脱水機、遠心型脱水機、多重円板型脱水機が挙げられる。本汚泥脱水方法では、安定して凝集フロック粒径と凝集フロック強度を保ちやすく、脱水初期の水切れが良好で、圧搾時の強いせん断力に対して優れた耐性を有する凝集フロックを形成することが可能である点から、圧入式スクリュープレス型脱水機が好ましい。
【0034】
本汚泥脱水剤の添加量は、汚泥の質、濃度などにより異なり一概には言えないが、大まかな目安として、汚泥の乾燥固形物100質量部に対して0.1〜3.0質量部が好ましく、0.5〜2.0質量部がより好ましい。本汚泥脱水剤の前記添加量が0.1質量部以上であれば、十分な粒径及び強度を有する凝集フロックが形成されやすい。また、本汚泥脱水剤の前記添加量が3.0質量部以下であれば、本汚泥脱水剤が過剰となることで形成される凝集フロックの粒径が小さくなったり、処理速度が遅くなったり、脱水ケーキの含水率が高くなったりすることを抑制しやすい。
【0035】
また、本汚泥脱水方法においては、本汚泥脱水剤に加えて、無機凝結剤及び/又は有機凝結剤(以下、これらをまとめて単に「凝結剤」という)を併用しても良い。本汚泥脱水剤は、凝結剤と併用しても、汚泥に対する脱水効果を十分に発揮できる。
無機凝結剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第2鉄、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、ポリ鉄(ポリ硫酸鉄、ポリ塩化鉄等)が挙げられる。
有機凝結剤としては、例えば、ポリアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアルキルアミノアルキルメタクリレートのアルキルクロライド4級塩、カチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0036】
凝結剤は、特に制限はないが、汚泥脱水剤を添加する前の工程で添加することが好ましい。凝結剤の添加量は本汚泥脱水剤100質量部に対して、5〜3000質量部が好ましい。凝結剤の前記添加量が5質量部未満であると、凝結剤を併用した効果が得られにくく、汚泥によっては本汚泥脱水剤の性能が発揮されにくくなる。また、凝結剤の添加量が3000質量部を超えると、特に無機凝結剤では添加量の増加に伴って脱水ケーキの含水率が増加する傾向がある。
【0037】
以上説明した本汚泥脱水処理方法によれば、廃水処理施設より生じる汚泥などの脱水処理において、粒径が大きく強度の高い凝集フロックを安定して形成させることができ、脱水初期の水切れが良好で、圧搾時の強い剪断力に対して優れた耐性を有する凝集フロックが得られる。
本発明の該汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水処理方法は、長期間安定して充分な粒径と強度をもつ凝集フロックを形成させることができ、SS量が少ない処理液及び含水率の低い脱水ケーキが得られるため、下水消化汚泥、余剰汚泥、畜産汚泥、及び腐敗が進行した混合生汚泥のような難脱水性の汚泥の脱水処理に好適に使用できる。
【0038】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の記載によって限定されるものではない。なお、本実施例における「%」は特に断りのない限り「質量%」を示す。
以下の製造例で得られた各ポリマーについては、下記に示す0.5%塩粘度、及び0.5%不溶解分量の測定を行った。該測定には、粉末状の汚泥脱水剤を用いた。
【0039】
[0.5%塩粘度の測定]
製造例で得られたポリマーの2.25gとスルファミン酸の0.25gを4%NaCl水溶液に溶解し、0.5%ポリマー水溶液の500gを調製した。B型粘度計(東機産業社製)を用い、温度25℃、回転速度60rpmの条件で、前記0.5%ポリマー水溶液の攪拌を開始してから5分後の0.5%塩粘度を測定した。
[0.5%不溶解分量の測定]
前記0.5%ポリマー水溶液の全量(500g)を、直径20cm、80メッシュの篩で濾過し、篩上の残留物(不溶解分)の水分を拭き取り、その質量を測定した。
【0040】
本実施例で用いた原料を以下に示す。
[モノマー]
カチオン性モノマー:
N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩(以下、「DME」という)、大阪有機化学工業社製、80%水溶液。
N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩(以下、「DMC」という)、大阪有機化学工業社製、80%水溶液。
非イオン性モノマー:
アクリルアミド(以下、「AAM」という)、ダイヤニトリックス社製、50%水溶液。
アクリロニトリル(以下、「AN」という)、関東化学社製、99%水溶液。
N−ビニルホルムアミド(以下、「NVF」という)、ダイヤニトリックス社製、91%水溶液。
架橋性モノマー:
ポリエチレングリコール#600ジアクリレート(NKエステル A−600)(以下、「架橋剤」という)、新中村化学工業社製、100%。
【0041】
[開始剤]
DAROCUR 1173(以下、「D−1173」という)、Ciba社製、100%。
2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩(V−50)(以下、「V−50」という)、和光純薬社製、10%水溶液。
[連鎖移動剤]
次亜リン酸(以下、「HPA」という)、関東化学社製。
【0042】
<架橋型カチオン性ポリマー(A)の合成>
[製造例1]
AAMの264.0g、DMEの660.0gを、内容積2000mL褐色耐熱瓶に投入し、架橋剤の0.048g及びHPAの0.024gと蒸留水を加え、総質量が1200gのモノマー水溶液(DME:AAM=80.0:20.0(モル%)、モノマー濃度55%)を調製した。このモノマー水溶液を1mol/L硫酸により、pH4.5となるようにPHを調整した。更に、D−1173を、モノマー水溶液の総質量に対して、20ppmとなるように投入し、これに窒素ガスを30分間吹き込みながらモノマー水溶液の温度を20℃に調節した。その後、モノマー水溶液をステンレス反応容器に移し、容器の下方から17℃の水を噴霧しながら、ケミカルランプを用いて、容器の上方から5W/m2の照射強度で、表面温度計が40℃になるまで光を照射した。表面温度計が40℃に到達した後は、0.5W/m2の照射強度で30分間光を照射した。さらにモノマーの残存量を低減させるために、照射強度を50W/m2にして10分間光を照射した。これにより、含水ゲル状のポリマーを得た。
【0043】
得られた含水ゲル状のポリマーを容器から取り出し、小型ミートチョッパーを用いて解砕した後、温度60℃で16時間乾燥した。その後、ウィレー型粉砕機を用いて乾燥したポリマーを粉砕した。カチオン性ポリマー(A)(ポリマーA−1)を得た。このとき、粉砕したポリマーは粉砕室の下部に挿入された篩板を通り収集され、この篩板の目開きのサイズを2.0mmとした。
【0044】
ポリマーA−1を10メッシュ(網目の径:2.0mm)及び150メッシュ(網目の径:0.1mm)の篩を用いて粉末状ポリマーを篩い分けした。150メッシュの篩上に残ったポリマーのポリマーA−1全質量に対する割合は、75%であった。
【0045】
[製造例2]
製造例1において、粉砕室の下部に挿入された篩板の目開きのサイズを2.0mmから3.0mmに変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、架橋型カチオン性ポリマー(A)(ポリマーA−2)を得た。
【0046】
ポリマーA−2を10メッシュ(網目の径:2.0mm)及び150メッシュ(網目の径:0.1mm)の篩を用いて粉末状ポリマーを篩い分けした。150メッシュの篩上に残ったポリマーのポリマーA−2全質量に対する割合は、50%であった。
【0047】
<非架橋型カチオン性ポリマー(B)の合成>
[製造例3]
製造例1において、架橋剤を添加しなかった(添加量0g)以外は、製造例1と同様の操作を行い、非架橋型カチオン性ポリマー(B)(ポリマーB−1)を得た。
【0048】
[製造例4]
製造例3において、各モノマーを表1に記載の割合に変更した以外は、製造例3と同様の操作を行い、非架橋型カチオン性ポリマー(B)(ポリマーB−2)を得た。
【0049】
[製造例5]
製造例3において、各モノマーを表1に記載の割合に変更した以外は、製造例3と同様の操作を行い、非架橋型カチオン性ポリマー(B)(ポリマーB−3)を得た。
【0050】
[製造例6]
AAMの785.4g、DMEの334.1gを、内容積2000mL褐色耐熱瓶に投入し、HPAの0.072gと蒸留水を加え、総質量が1200gのモノマー水溶液(DME:AAM=20.0:80.0(モル%)、モノマー濃度55%)を調製した。このモノマー水溶液を1mol/L硫酸により、pH4.5となるようにPHを調整した。更に、D−1173を、モノマー水溶液の総質量に対して、75ppmとなるように投入し、これに窒素ガスを30分間吹き込みながらモノマー水溶液の温度を20℃に調節した。その後、モノマー水溶液をステンレス反応容器に移し、容器の下方から17℃の水を噴霧しながら、ケミカルランプを用いて、容器の上方から5W/m2の照射強度で、表面温度計が40℃になるまで光を照射した。表面温度計が40℃に到達した後は、0.5W/m2の照射強度で30分間光を照射した。更にモノマーの残存量を低減させるために、照射強度を50W/m2にして10分間光を照射した。これにより、含水ゲル状のポリマーを得た。以下、製造例1と同様の操作を行い、非架橋型カチオン性ポリマー(B)(ポリマーB−4)を得た。
【0051】
[製造例7]
DMCの1185.0gを、内容積2000mL褐色耐熱瓶に投入し、HPAの0.018gと蒸留水を加え、総質量が1200gのモノマー水溶液(DMC=100.0(モル%)、モノマー濃度79%)を調製した。このモノマー水溶液を1mol/L硫酸により、pH4.5となるようにPHを調整した。更に、D−1173を、モノマー水溶液の総質量に対して、500ppmとなるように投入し、これに窒素ガスを30分間吹き込みながらモノマー水溶液の温度を20℃に調節した。その後、モノマー水溶液をステンレス反応容器に移し、容器の下方から17℃の水を噴霧しながら、ケミカルランプを用いて、容器の上方から5W/m2の照射強度で、表面温度計が40℃になるまで光を照射した。表面温度計が40℃に到達した後は、4W/m2の照射強度で30分間光を照射した。更にモノマーの残存量を低減させるために、照射強度を50W/m2にして10分間光を照射した。これにより、含水ゲル状のポリマーを得た。以下、製造例1と同様の操作を行い、非架橋型カチオン性ポリマー(B)(ポリマーB−5)を得た。
【0052】
製造例1〜7で得られた各ポリマーにおける各々のモノマーに由来する構成単位の割合を、各モノマーの仕込み量から計算した。また、0.5%塩粘度、0.5%不溶解分量を測定した。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
<アミジン系ポリマー(C)の合成>
[製造例8]
攪拌機、窒素導入管、冷却管を備えた内容積50mLの四つ口フラスコにANとNVFの混合物(モル比55:45)6gと蒸留水34gとの混合物を入れた。窒素ガス中攪拌しつつ60℃に昇温し、V−50の0.12gを添加し、更に3時間保持し、水中にポリマーが析出した懸濁物を得た。該懸濁物に蒸留水20g添加し、更に濃塩酸をポリマーのホルミル基に対し2当量添加し100℃で4時間保持し、黄色の高粘度液を得た。これを多量のアセトンに添加し、ポリマーを析出させ、細断し、60℃で1中夜乾燥後粉砕してアミジン系ポリマー(C)(ポリマーC)を得た。
【0055】
ポリマーCを重水に溶解させ、NMRスペクトロメーター(日本電子社製、270MHz)にて13C−NMRスペクトルを測定した。13C−NMRスペクトルの各繰り返し単位に対応したピークの積分値より各単位の組成を算出した。なお、前記一般式(2)及び(3)の構造単位は区別することなく、その総量として求めた。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

各モノマーの構成単位の略号は下記を示す。
アミジン:アミジン塩酸塩単位
NVF:N−ビニルホルムアミド単位
AN:アクリロニトリル単位
VAM:ビニルアミン塩酸塩単位
【0057】
以下、実施例及び比較例について説明する。
[実施例1〜11]
下水処理場での消化汚泥(pH=7.3、TS=1.6%、繊維分=7.8%/TS)を用い、次のように脱水試験を実施した。
500mLビーカーに前記汚泥の300mLを採取した。次いで、表1に記載のポリマーを表3に記載の各混合比率で0.3%に溶解して汚泥脱水剤水溶液を調製し、該汚泥脱水剤水溶液を表3に記載の濃度になるよう添加した後、スパチュラで攪拌速度:180回転/分、攪拌時間:60秒間撹拌混合して凝集フロックを形成させ、汚泥の脱水処理を行った。
【0058】
[比較例1〜8]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表3に示す通りに変更した以外は、実施例1〜11と同様にして凝集フロックを形成させ、汚泥の脱水処理を行った。
【0059】
[評価方法]
実施例及び比較例における脱水処理の評価は、以下に示す通りに行った。
(凝集フロック粒径、濾過性能、濾過水のSS量)
各例において凝集フロックを形成させた後に攪拌を止め、凝集フロック粒径を目視により測定した。その後、予め濾布を敷いたヌッチェに凝集した汚泥を移し、濾過性能(10秒間の濾過水量)を測定した。このとき、60秒間濾過した後の濾過水のSS量を目視により以下の基準で評価した。
【0060】
− :濾過水がほとんど透き通っており、浮遊物はほぼ見られない(SS量目安:50ppm以下)。
+ :濾過水に一部濁りが見られ、浮遊物がわずかに存在する(SS量目安:50〜100ppm)。
++ :濾過水に部分的に濁りが見られ、浮遊物がところどころ存在する(SS量目安:100〜200ppm)。
+++ :濾過水に多数の濁りが見られ、浮遊物が全体的に存在する(SS量目安:200〜500ppm)。
++++:濾過水に全体的に多数の濁りが見られ、浮遊物が全体的に存在し、一部粗大な大きさで存在する(SS量目安:500〜1000ppm)。
× :濾過水が完全に濁り、粗大な浮遊物が多数存在する(SS量目安:1000ppm以上)。
【0061】
(凝集フロック強度、脱水ケーキの含水率)
さらに、濾過濃縮した汚泥(凝集フロック)を濾布上で50回転がし、凝集フロックの強度(団粒性)を以下の基準で評価した。
◎:濾布上で転がすことにより水が切れ、凝集フロックが数個の団子状になる。
○:濾布上で転がすことにより水が切れ、凝集フロックが一塊状になる。
△:濾布上で転がすことにより水が切れるが、凝集フロックが崩れ塊状にならない。
×:濾布上で転がすことにより、凝集汚泥が崩れて流れ、ドロドロになる。
その後、0.1MPaの圧力でプレス脱水し、脱水ケーキを得た。この脱水ケーキの含水率を、常法((財)日本下水道協会編、「下水道試験法上巻1997年度版」p296−297)により測定した。
実施例及び比較例における各試験結果を表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
表3に示すように、本発明の汚泥脱水剤を用いた実施例1〜11では、粗大なフロックを生成させることができた。また、特に実施例1、2、9〜11では、生成フロックの強度が非常に高く、濾過性能も非常に優れており、得られた脱水ケーキの含水率が低かった。さらに、非架橋型カチオン性ポリマー(B)として、DMEを75〜80モル%、DMCを0〜10モル%含有するポリマーを混合した汚泥脱水剤を用いた実施例1、2では、脱水性能に特に優れ、脱水ケーキの含水率が非常に低かった。
【0064】
一方、ポリマー(A)、ポリマー(B)、ポリマー(C)の混合比が本願発明の所定割合の範囲から外れた汚泥脱水剤、及びこれら3種のポリマーのいずれか1つ以上を欠いた汚泥脱水剤を用いた比較例1〜8では、いずれも生成したフロックが小さく、生成フロックの強度が弱く、濾過性能が低く、脱水ケーキの含水率が高かった。
【0065】
[実施例12〜22]
下水処理場での混合生汚泥(pH=5.9、TS=4.2%、繊維分=18.5%/TS)を用いて、実施例1〜11と同様の脱水試験を実施した。
【0066】
[比較例9〜16]
汚泥脱水剤に用いたポリマーを表4に示す通りに変更した以外は、実施例1〜11と同様にして凝集フロックを形成させ、汚泥の脱水処理を行った。
実施例及び比較例における各試験結果を表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
表4に示すように、本発明の汚泥脱水剤を用いた実施例12〜22では、粗大なフロックを生成させることができた。また生成フロックの強度が高く、濾過性能も優れており、得られた脱水ケーキの含水率が低かった。また、表3に示した実施例1〜11のフロック粒径、フロックの強度、濾過性能、脱水ケーキの含水率の結果と比較した場合、汚泥脱水剤の脱水処理効果がやや小さいことから、本発明の汚泥脱水剤は繊維分の少ない消化汚泥に対しより有効であることがわかる。
【0069】
一方、ポリマー(A)、ポリマー(B)、ポリマー(C)の混合比が請求項記載の範囲から外れた汚泥脱水剤、及びこれら3種のポリマーのいずれか1つ以上を欠いた汚泥脱水剤を用いた比較例9〜16では、いずれも生成したフロックが小さく、生成フロックの強度が弱く、濾過性能が低く、脱水ケーキの含水率が高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)、非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)、及びアミジン系ポリマー(C)からなる混合物であって、該混合物の全質量に対し、該架橋型カチオン性ポリマー(A)を10〜40質量%、該非架橋型カチオン性ポリマー(B)を20〜60質量%、該アミジン系ポリマー(C)を10〜40質量%含有することを特徴とする汚泥脱水剤。
【請求項2】
前記非架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(B)は、カチオン性構成単位として、下記一般式(1)で表される構成単位を30〜90モル%、非イオン性構成単位として、(メタ)アクリルアミドモノマー構成単位を70〜10モル%含むコポリマーであり、且つ、該カチオン性構成単位は少なくともジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル4級塩モノマー構成単位を全構成単位中30〜90モル%、並びにジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級塩モノマー構成単位を全構成単位中0〜20モル%含有することを特徴とする請求項1記載の汚泥脱水剤。
【化1】


(式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、R3は、水素原子又は炭素数が1〜4のアルキル基であり、R4は、炭素数が1〜4のアルキル基又はベンジル基であり、Xは、酸素原子又はNHであり、Y-は、Cl-、Br-、又は1/2SO42-であり、nは1〜3の整数である。)
【請求項3】
前記架橋型カチオン性ポリマー(アミジン構成単位を含まない)(A)は粉末状であり、その60質量%以上の粒径が0.1〜2mmであることを特徴とする請求項1又は2記載の汚泥脱水剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の汚泥脱水剤を繊維分が1〜15質量%/TSの難脱水性汚泥に添加混合し、脱水機を用いて脱水することを特徴とする汚泥脱水処理方法。
【請求項5】
前記脱水機が、圧入式スクリュープレス型脱水機であることを特徴とする請求項4に記載の汚泥脱水処理方法。

【公開番号】特開2011−224420(P2011−224420A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93718(P2010−93718)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(301057923)ダイヤニトリックス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】